(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163719
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231102BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20231102BHJP
H01M 8/04044 20160101ALI20231102BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04029
H01M8/04044
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074803
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 亮一
(72)【発明者】
【氏名】永野 貴大
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA52
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB32
5H127BB37
5H127CC07
5H127EE01
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムの製造性を損なったり、酸化剤ガスの圧損を増加させたりすることなく、カソード系において熱交換器を並列にレイアウトできるようにする。
【解決手段】
カソード系は、燃料電池が積層されたスタックに酸化剤ガスを供給する。冷却系60は、酸化剤ガスと冷媒との間で熱交換させる熱交換器64A,64Bを複数有する。各熱交換器64A,64Bは、他の熱交換器64B,64Aから独立した、他の熱交換器64B,64Aとは別体の部材である。複数の熱交換器64A,64Bは、カソード系40において並列に配置されている。カソード系40は、各熱交換器64A,64Bよりも上流側に分岐部43を有すると共に、各熱交換器64A,64Bよりも下流側に合流部45を有する。熱交換器64A,64Bどうしは、上下前後左右の各方向に、互いにずらして設置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池が積層されたスタックと、前記スタックに燃料ガスを供給するアノード系と、前記スタックに酸化剤ガスを供給するカソード系と、冷却系と、を有する燃料電池システムであって、
前記冷却系は、前記酸化剤ガスと冷媒との間で熱交換させる熱交換器を複数有し、各前記熱交換器は、他の前記熱交換器から独立した部材であって、
複数の前記熱交換器は、前記カソード系において並列に配置されており、前記カソード系は、各前記熱交換器よりも上流側に分岐部を有すると共に、各前記熱交換器よりも下流側に合流部を有し、
前記熱交換器どうしは、上下方向と、上面視における前記燃料電池システムの長手方向としての前後方向と、前記前後方向に直交する水平方向としての左右方向と、の各方向に、互いにずらして設置されている、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記カソード系の配管に沿っての、前記分岐部から各前記熱交換器までの距離は、互いに等しい、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記カソード系の配管に沿っての、各前記熱交換器から前記合流部までの距離は、互いに等しい、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記カソード系の配管に沿っての、前記分岐部から各前記熱交換器を通過して前記合流部に至るまでの距離は、互いに等しい、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池およびその周辺構造を含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、二酸化炭素の排出を低減して地球環境上の悪影響を低減する等の観点から、燃料電池システムの開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムは、例えば、燃料電池が積層されたスタックと、スタックに燃料ガスを供給するアノード系と、スタックに酸化剤ガスを供給するカソード系と、冷却系と、を有する。冷却系は、例えば、酸化剤ガスと冷媒との間で熱交換させる熱交換器を有する。
【0005】
本発明者らは、カソード系において、熱交換器を並列に複数設けることを考えた。この場合、各熱交換器よりも上流側に分岐部を設け、各熱交換器よりも下流側に合流部を設けることになる。この場合においては、製造性の面から、カソード系における分岐部から各熱交換器までの配管の長さと、各熱交換器から合流部までの配管の長さとが、無理なく充分に確保されることが好ましい。さらに、一方の熱交換器側の配管での圧損と、他方の熱交換器側の配管での圧損とが等しくなるように、一方の熱交換器側の配管の長さと、他方の熱交換器側の配管の長さとを、揃えたり、所望の長さに調整したりすることが好ましい。
【0006】
しかしながら、これらの目的のために、分岐部から分岐して延びる2本の配管や、合流部で合流する2本の配管を、無理な角度で曲げると、燃料電池システムの製造性が損なわれたり、酸化剤ガスの圧損が増加したりしてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムの製造性を損なったり、酸化剤ガスの圧損を増加させたりすることなく、カソード系において熱交換器を並列にレイアウトできるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱交換器どうしを、上下前後左右の各方向に、互いにずらして設置すると、燃料電池システムの製造性を損なったり、酸化剤ガスの圧損を増加させたりすることなく、カソード系の配管を効率的にレイアウトできることを見出して、本発明に至った。本発明は、以下の(1)~(4)の構成の燃料電池システムである。
【0009】
(1)燃料電池が積層されたスタックと、前記スタックに燃料ガスを供給するアノード系と、前記スタックに酸化剤ガスを供給するカソード系と、冷却系と、を有する燃料電池システムであって、
前記冷却系は、前記酸化剤ガスと冷媒との間で熱交換させる熱交換器を複数有し、各前記熱交換器は、他の前記熱交換器から独立した部材であって、
複数の前記熱交換器は、前記カソード系において並列に配置されており、前記カソード系は、各前記熱交換器よりも上流側に分岐部を有すると共に、各前記熱交換器よりも下流側に合流部を有し、
前記熱交換器どうしは、上下方向と、上面視における前記燃料電池システムの長手方向としての前後方向と、前記前後方向に直交する水平方向としての左右方向と、の各方向に、互いにずらして設置されている、
燃料電池システム。
【0010】
本構成によれば、2つの熱交換器は、互いに、上下前後左右の各方向にずれている。これによって、分岐部から各熱交換器までの配管の長さと、各熱交換器から合流部までの配管の長さとを、無理なく充分に確保し易くなる。さらに当該各方向へのずれによって、一方の熱交換器側の配管の長さと、他方の熱交換器側の配管の長さとを、無理なく揃えたり、所望の長さに無理なく調整したり、し易くなる。それによって、分岐部から分岐して延びる2本の配管や、合流部で合流する2本の配管が、無理な角度で曲がることが抑制される。そのため、燃料電池システムの製造性を損なったり、酸化剤ガスの圧損を増加させたりすることなく、カソード系の配管を効率的にレイアウトできる。
【0011】
(2)前記カソード系の配管に沿っての、前記分岐部から各前記熱交換器までの距離は、互いに等しい、前記(1)に記載の燃料電池システム。
【0012】
本構成によれば、分岐部から各熱交換器までの酸化剤ガスの圧損を効率的に揃えることができる。
【0013】
(3)前記カソード系の配管に沿っての、各前記熱交換器から前記合流部までの距離は、互いに等しい、前記(1)又は前記(2)に記載の燃料電池システム。
【0014】
本構成によれば、各熱交換器から合流部までの酸化剤ガスの圧損を効率的に揃えることができる。
【0015】
(4)前記カソード系の配管に沿っての、前記分岐部から各前記熱交換器を通過して前記合流部に至るまでの距離は、互いに等しい、前記(1)又は(2)に記載の燃料電池システム。
【0016】
本構成によれば、各経路における酸化剤ガスの圧損を効率的に揃えることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、前記(1)の構成によれば、燃料電池システムの製造性を損なったり、酸化剤ガスの圧損を増加させたりすることなく、カソード系において熱交換器を並列にレイアウトできる。さらに、前記(1)を引用する前記(2)~(4)の構成によれば、それぞれの追加の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の燃料電池システムを示す構成図である。
【
図2】燃料電池システムのカソード系および冷却系を示す構成図である。
【
図4】カソード系の熱交換性能を示すグラフである。
【
図8】2つの第2熱交換器およびその周辺を示す正面図である。
【
図9】スタックアッシーおよび冷却系配管を示す斜視図である。
【
図10】スタックアッシーに接続部等を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図11】
図10の状態から変圧装置等を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図12】
図11の状態からカソード系配管を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図13】燃料電池システムを側方から見た概略図である。
【
図14】燃料電池システムを正面から見た概略図である。
【
図15】燃料電池システムを斜め下から見た斜視図である。
【
図16】カソード系配管および冷却系配管を示す斜視図である。
【
図17】カソード系配管および冷却系配管を示す側面図である。
【
図18】カソード系配管および冷却系配管を示す底面図である。
【
図19】カソード系配管および冷却系配管を示す正面図である。
【
図20】燃料電池システムの各ポート配置を示す平面図である。
【
図23】燃料電池システム集合体を示す側面図である。
【
図24】燃料電池システム集合体を示す底面図である。
【
図25】変更例の燃料電池システム集合体を示す側面図である。
【
図26】変更例の燃料電池システム集合体を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の燃料電池システム100を示す構成図である。燃料電池システム100は、電動車両に搭載されており、車両走行用のモータ等に電力を供給する。燃料電池システム100は、スタック22と、アノード系30と、カソード系40と、第1冷却系50と、第2冷却系60とを有する。以下、燃料電池システム100の側端部を、「システム側面」という。
【0021】
スタック22は、積層された複数の燃料電池と、それらの燃料電池を収容するケーシングとを備える。燃料電池は、電解質膜と電極カソード電極とアノード電極とを備える。カソード電極とアノード電極とは、電解質膜を挟持している。
【0022】
アノード系30は、燃料ガスとしての水素をアノード電極に供給するためのアノード系配管30pを有する。アノード系30は、システム側面に、アノード系配管30pの上流端としてのアノード系吸気ポート30aを有する。アノード系吸気ポート30aには、水素を蓄える燃料タンク330が接続される。アノード系30は、燃料タンク330からアノード系吸気ポート30aに供給される水素を、加湿してからアノード電極に供給する。
【0023】
カソード系40は、酸化剤ガスとしてのエアをカソード電極に供給するためのカソード系配管40pを有する。カソード系40は、システム側面に、カソード系配管40pの上流端としてのカソード系吸気ポート40aと、カソード系配管40pの下流端としてのカソード系排気ポート40bとを有する。カソード系吸気ポート40aには、エアクリーナ340が接続される。カソード系40は、エアクリーナ340を通過してカソード系吸気ポート40aに供給されるエアを、加湿してからカソード電極に供給する。
【0024】
スタック22内の燃料電池では、アノード電極に供給される水素とカソード電極に供給されるエア中の酸素とが、電気化学反応により消費されて発電が行われる。これに伴い、カソード電極に水が発生する。カソード系40は、カソード電極を通過したエアと、カソード電極で発生した水との少なくとも一部ずつを、カソード系排気ポート40bから燃料電池システム100の外部に排出する。
【0025】
第1冷却系50は、第1冷却対象を冷却し、第2冷却系60は、第2冷却対象を冷却する。第1冷却対象と第2冷却対象との各冷却対象は、スタック22とアノード系30とカソード系40とのうちの少なくともいずれか1つを含む。具体的には、本実施形態では、各冷却対象は、いずれもスタック22とカソード系40とを含む。
【0026】
第1冷却系50は、第1冷却対象を目標温度に近づけるように冷却する調温用の冷却系である。第2冷却系60は、第2冷却対象を、極力温度が低くなるように冷却する冷却専用の冷却系である。
【0027】
第1冷却系50は、第1冷却対象を冷却する冷媒としての冷却水を送る第1冷却系配管50pを有する。第1冷却系50は、システム側面に、第1冷却系配管50pの上流端としての第1冷却系流入ポート50aと、第1冷却系配管50pの下流端としての第1冷却系流出ポート50bと、を有する。第1冷却系流入ポート50aおよび第1冷却系流出ポート50bには、第1ラジエター350が接続される。第1冷却系50は、冷却水を第1冷却対象と第1ラジエター350との間で循環させることによって、第1冷却対象を冷却する。
【0028】
第2冷却系60は、第2冷却対象を冷却する冷媒としての冷却水を送る第2冷却系配管60pを有する。第2冷却系60は、システム側面に、第2冷却系配管60pの上流端としての第2冷却系流入ポート60aと、第2冷却系配管60pの下流端としての第2冷却系流出ポート60bとを有する。第2冷却系流入ポート60aおよび第2冷却系流出ポート60bには、前述の第1ラジエター350とは別の第2ラジエター360が接続される。第2冷却系60は、冷却水を第2冷却対象と第2ラジエター360との間で循環させることによって、第2冷却対象を冷却する。
【0029】
以下、第1冷却系50および第2冷却系60を、まとめて「冷却系50,60」といいい、第1冷却系配管50pおよび第2冷却系配管60pを、まとめて「冷却系配管50p,60p」という。
【0030】
図2は、カソード系40と第1冷却系50と第2冷却系60とを示す構成図である。スタックアッシー20は、スタック22、周辺機器25、センサボード26等を有する。
【0031】
カソード系40は、エアポンプ42、ポンプ駆動装置41等を有する。エアポンプ42は、カソード系40内において、エアを上流側から下流側に圧送するためのポンプである。ポンプ駆動装置41は、エアポンプ42に駆動電圧を供給するための装置である。
【0032】
第1冷却系50は、ウォータポンプ57、フィルタ58、混合バルブ52、第1熱交換器54等を有する。ウォータポンプ57は、第1冷却系50内において、冷却水を循環させるための冷媒ポンプである。フィルタ58は、冷却水内の埃等を除去するためのパーティクルフィルタである。混合バルブ52は、第1冷却系50内における冷却水の循環を制御するためのバルブである。第1熱交換器54は、カソード系配管40p内のエアと第1冷却系配管50p内の冷却水との間で熱交換させる。
【0033】
第1ラジエター350から第1冷却系流入ポート50aに供給された冷却水は、混合バルブ52、ウォータポンプ57、フィルタ58、周辺機器25、スタック22等を通過すると共に、第1熱交換器54等を通過する。その間に、周辺機器25、スタック22等を冷却すると共に、第1冷却器54によってカソード系のエアを冷却する。そのことから、周辺機器25、スタック22、カソード系40等が、第1冷却対象に相当する。その後、当該冷却水は、第1冷却系流出ポート50bから燃料電池システム100の外部に排出されて、第1ラジエター350に戻る。以上によって、第1冷却系50は、冷却水を第1冷却対象と第1ラジエター350との間で循環させる。第1ラジエター350は、冷却水と外気との間で熱交換させる。
【0034】
第2冷却系60も、第1冷却系50の場合と同様に、図示略のウォータポンプ、フィルタ、混合バルブ等を有する。さらに、第2冷却系60は、2つの第2熱交換器64A,64Bを有する。各第2熱交換器64A,64Bは、カソード系配管40p内のエアと、第2冷却系配管60p内の冷却水との間で熱交換させる。各第2熱交換器64A,64Bは、他の前記第2熱交換器64B,64Aから独立した、他の第2熱交換器64A,64Bとは別体の部材である。
【0035】
第2ラジエター360から第2冷却系流入ポート60aに供給された冷却水は、スタック22、センサボード26、ポンプ駆動装置41、エアポンプ42等を通過するすると共に、2つの第2熱交換器64A,64Bを通過する。その間に、スタック22、センサボード26、ポンプ駆動装置41、エアポンプ42等を冷却すると共に、第2冷却器64A,64Bによってカソード系のエアを冷却する。そのことから、スタック22、センサボード26が、第2冷却対象に相当するのに加えて、カソード系40におけるポンプ駆動装置41、エアポンプ42、エア等が、第2冷却対象に相当する。
【0036】
その後、当該冷却水は、第2冷却系流出ポート60bから燃料電池システム100の外部に排出されて、第2ラジエター360に戻る。以上によって、第2冷却系60は、冷却水を第2冷却対象と第2ラジエター360との間で循環させる。第2ラジエター360は、冷却水と外気との間で熱交換させる。
【0037】
次にカソード系40について説明する。車外からエアクリーナ340を通過してカソード系吸気ポート40aに供給されたエアは、順に、エアポンプ42、エア分岐部43、各第2熱交換器64A,64B、エア合流部45、第1熱交換器54、周辺機器25を通過して、スタック22内のカソード電極に至る。その後、当該エアは、カソード電極で発生した水と共に、カソード系排気ポート40bから燃料電池システム100の外部に排出されて車外に排出される。
【0038】
以上の通り、エアは、エア分岐部43で分流してから、各第2熱交換器64A,64Bを通過して、エア合流部45で合流する。つまり、カソード系40において、2つの第2熱交換器64A,64Bは並列に配置されており、カソード系40は、2つの第2熱交換器64A,64Bに並列にエアを通過させる。その理由について、以下に説明する。
【0039】
図3は、カソード系40において、2つの第2熱交換器64A,64Bを、直列に配置した場合と並列に配置した場合との圧損の違いを示すグラフである。横軸は、各1つの第2熱交換器を通過するエア流量を示しており、縦軸は、カソード系40における2つの第2熱交換器64A,64Bを含む部分全体の圧損を示している。直列および並列のいずれの場合でも、エア流量が大きくなるに従い、当該部分全体の圧損は大きくなる。ただし、直列の場合における当該部分全体の圧損は、各第2熱交換器64A,64Bにおける圧損の足し算になることから、各1つの第2熱交換器64A,64Bを通過するエア流量が同じなら、並列の場合における当該部分全体の圧損の2倍となる。
【0040】
図4は、第2冷却系60において、2つの第2熱交換器64A,64Bを、直列に並べた場合と並列に並べた場合との熱交換性能の違いを示すグラフである。横軸は、
図3の場合と同じく、各1つの第2熱交換器を通過するエア流量を示している。縦軸は、カソード系における当該2つの第2熱交換器64A,64Bを含む部分全体での熱交換性能を示している。直列および並列のいずれの場合でも、エア流量が大きくなるに従い、当該部分全体での熱交換性能は低下する。ただし、直列の場合、下流側の第2熱交換器は、上流側の第2熱交換器で冷やされたエアをさらに冷却することから、当該部分全体での熱交換性能は、並列の場合よりも低下する。
【0041】
以上より、各1つの第2熱交換器64A,64Bを通過するエア流量が同じなら、2つの第2熱交換器64A,64Bを直列に配置するよりも並列に配置した方が、圧損抑制および熱交換性能のいずれの面においても優位であることが分かる。そのことから、本実施形態では、前述の通り、カソード系40において、2つの第2熱交換器64A,64Bを並列に配置している。
【0042】
図5は、第2冷却系60を示す構成図である。第2ラジエター360から、第2冷却系流入ポート60aに流入した冷却水は、冷却水分岐部63で分流する。分流した一方の冷却水は、順に、スタック22、センサボード26、ポンプ駆動装置41、エアポンプ42を通過して、それらを冷却してから、冷却水合流部65に至る。冷却水分岐部63で分流した他方の冷却水は、2つの第2熱交換器64A,64Bを順に通過して、その間にカソード系40のエアを冷却してから冷却水合流部65に至る。つまり、第2冷却系60においては、2つの第2熱交換器64A,64Bが直列に配置されており、第2冷却系60は、2つの第2熱交換器64A,64Bに直列に冷却水を通過させる。冷却水合流部65で合流した冷却水は、第2冷却系流出ポート60bから燃料電池システム100の外部に排出されて第2ラジエター360に戻る。
【0043】
図6は、燃料電池システム100を示す斜視図である。以下、上面視における燃料電池システム100の長手方向の一方を「前Fr」といい、その反対方向を「後Rr」といい、前Fr側から見た正面視における左側を「左L」といい、右側を「右R」という。
【0044】
以上の通り、「前Fr」は、燃料電池システム100の長手方向の一方であることから、「前Fr」は、必ずしも電動車両の車長方向前側である必要はない。具体的には、例えば「前Fr」は、車長方向前側であってもよいし、車長方向後側であってもよいし、車幅方向であってもよいし、車長方向および車幅方向に対して斜めをなす方向であってもよい。
【0045】
第1ラジエター350に接続される第1熱交換器54は、スタックアッシー20よりも後Rr側に配置されている。これによって、第1熱交換器54は、スタック22よりも後Rr側に配置されている。他方、第2ラジエター360と接続される2つの第2熱交換器64A,64Bは、スタックアッシー20よりも前Fr側に配置されている。これによって、2つの第2熱交換器64A,64Bは、スタック22よりも前Fr側にまとめて配置されている。そのため、第1熱交換器54と2つの第2熱交換器64A,64Bとを含む全ての熱交換器54,64A,64Bのうちで、各第2熱交換器64A,64Bにとって最も自身に近接している自身以外の熱交換器は、自身以外の第2熱交換器64B,64Aである。
【0046】
カソード系配管40pに沿っての、エア分岐部43から一方の第2熱交換器64Aまでの距離と、エア分岐部43から他方の第2熱交換器64Bまでの距離とは、互いに等しい。また、カソード系配管40pに沿っての、一方の第2熱交換器64Aからエア合流部45までの距離と、他方の第2熱交換器64Bからエア合流部45までの距離とは、互いに等しい。
【0047】
そのため、カソード系配管40pに沿っての、エア分岐部43から一方の第2熱交換器64Aを通過してエア合流部45に至るまでの距離と、エア分岐部43から他方の第2熱交換器64Bを通過してエア合流部45に至るまでの距離とは、互いに等しい。
【0048】
図7は、燃料電池システム100を前Fr側から見た正面図である。2つの第2熱交換器64A,64Bの配置は、正面視において、互いに、上下方向および左右方向L,Rにずれている。つまり、正面視において、一方の第2熱交換器64Aの重心64Acと、他方の第2熱交換器64Bの重心64Bcとは、互いに上下方向および左右方向L,Rにずれている。
【0049】
エア分岐部43およびエア合流部45のうちの一方は、2つの第2熱交換器64A,64Bよりも左右一方における、上側の第2熱交換器64Bよりも下方に配置されている。エア分岐部43およびエア合流部45のうちの他方は、2つの第2熱交換器64A,64Bよりも左右一方における、下側の熱交換器64Aよりも下方に配置されている。
【0050】
具体的には、当該
図7では、エア合流部45は、2つの第2熱交換器64A,64Bよりも左Lにおける、上側の第2熱交換器64Bよりも下方に配置されている。また、エア分岐部43は、2つの第2熱交換器64A,64Bよりも左Lにおける、下側の熱交換器64Aよりも下方に配置されている。
【0051】
図8は、2つの第2熱交換器64A,64Bおよびその周辺を右R側から見た側面図である。2つの第2熱交換器64A,64Bは、側面視において、互いに、上下方向および前後方向Fr,Rrにずれている。つまり、側面視において、一方の第2熱交換器64Aの重心64Acと、他方の第2熱交換器64Bの重心64Bcとは、互いに上下方向および前後方向Fr,Rrにずれている。
【0052】
以上の通り、2つの第2熱交換器64A,64Bは、上下前後左右の各方向に互いにずれている。
【0053】
図9は、スタックアッシー20および冷却系配管50p,60pを示す斜視図である。スタックアッシー20は、スタック22および周辺機器25を覆うカバー21を有する。カバー21の後端部および前端部には、突起21aが設けられている。センサボード26は、カバー21の上面に取り付けられている。
【0054】
図10は、
図9に示す状態のスタックアッシー20のカバー21の前後両側の突起21aに、後述するフレーム16を接続するための接続部としてのブラケット15を付けた状態を示す斜視図である。ブラケット15は、左右方向L,Rに延在する部材であって、上部には、上方に延在するマウント部15aを有する。そのマウント部15aが、カバー21の突起21aに取り付けられる。
【0055】
図11は、
図10に示す状態のスタックアッシー20に、変圧装置19等を付けた状態を示す斜視図である。変圧装置19は、燃料電池システム100の外部から燃料電池システム100に供給される電力を変圧する。
【0056】
図12は、
図11に示す状態のスタックアッシー20および冷却系配管50p,60pの周囲に、カソード系配管40pを取り付けると共に、ブラケット15にフレーム16を取り付けた状態を示す斜視図である。この
図12に示す状態が、本実施形態の燃料電池システム100の完成状態を示している。
【0057】
フレーム16は、スタックアッシー20よりも下方において左右方向L,Rに間隔をおいて前後方向Fr,Rrに延在する2本のフレーム第1部16aと、フレーム第1部16aどうしを繋ぐフレーム第2部16bとを有する。各フレーム第1部16aの前端部および後端部は、それぞれ屈曲して上方に延在しており、それら前端部および後端部の各上端部は、ブラケット15に接続されている。以上によって、フレーム16の前後両端部が、ブラケット15を介してスタックアッシー20に接続されている。
【0058】
図13は、燃料電池システム100を右Rから見た概略図である。以下、エアポンプ42と、ポンプ駆動装置41と、ウォータポンプ57とを、まとめて「電気機器41,42,57」という。
【0059】
右Rから見た側面視において、スタックアッシー20は、前後のブラケット15とフレーム第1部16aとによって、前Fr側と後Rr側と下側との3方から囲まれている。同側面視において、電気機器41,42,57の少なくとも所定部分は、フレーム第1部16aとスタックアッシー20とによって、前後方向Fr,Rrと上下方向との4方から囲まれている。
【0060】
図14は、燃料電池システム100を前Frから見た構成図である。前Frから見た正面視において、電気機器41,42,57の少なくとも所定部分は、左右のフレーム第1部16aとスタックアッシー20とフレーム第2部16bとによって、左右方向L,Rと上下方向との4方から囲まれている。
【0061】
後に参照する
図22は、燃料電池システム100を下から見た底面図である。底面視において、電気機器41,42,57の少なくとも所定部分は、左右のフレーム第1部16aと前後のブラケット15とによって、左右方向L,Rと前後方向Fr,Rrとの4方から囲まれている。
【0062】
図15は、燃料電池システム100を左前の斜め下から見た斜視図である。以上の通り、電気機器41,42,57の少なくとも所定部分は、側面視および正面視においては、フレーム16とスタックアッシー20とによって4方から囲まれており、底面視においては、フレーム16とブラケット15とによって4方から囲まれている。
【0063】
図16は、カソード系配管40pおよび冷却系配管50p,60pを示す斜視図である。スタック22を含むスタックアッシー20の外側に、冷却系配管50p,60pが配置されている。その冷却系配管50p,60pのさらに外側に、カソード系配管40pが配されている。冷却系配管50p,60pは、冷却水を運ぶ一方、カソード系配管40pはエアを運ぶことから、冷却系配管50p,60pの平均管径よりも、カソード系配管40pの平均管径の方が大きい。また、冷却系配管50p,60pは、冷却水を運ぶことから、金属製である一方、カソード系配管40pは、エアを運ぶことから、樹脂およびゴムのうちの少なくとも一方を含む柔軟素材製である。以上のことから、スタック22は、小径で金属製の冷却系配管50p,60pに囲まれており、さらに、その冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分が、大径で柔軟素材性のカソード系配管40pに囲まれている。
【0064】
図17は、
図16を左Lから見た側面図である。側面視において、スタック22は、例えば後Rr、下、前Frの少なくとも3方から、冷却系配管50p,60pによって囲まれている。さらに、同側面視において、冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分は、例えば後Rr、下、前Frの少なくとも3方から、カソード系配管40pによって囲まれている。
【0065】
図18は、
図17を下から見た底面図である。底面視において、スタック22は、例えば後Rr、左L、前Frの少なくとも3方から、冷却系配管50p,60pによって囲まれている。さらに、同底面視において、冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分は、例えば後Rr、左L、前Frの少なくとも3方から、カソード系配管40pによって囲まれている。
【0066】
図19は、
図18を前Frから見た正面図である。正面視において、スタック22は、例えば左L、下、右Rの少なくとも3方から、冷却系配管50p,60pによって囲まれている。さらに、同正面視において、冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分は、例えば左L、下、右Rの少なくとも3方から、カソード系配管40pによって囲まれている。
【0067】
以上のことから、上面視と正面視と側面視とのいずれにおいても、スタック22は、少なくとも3方から、冷却系配管50p,60pに囲まれており、且つ冷却系配管50p,60pにおける冷却系配管50p,60pを囲んでいる部分は、少なくとも3方から、カソード系配管40pに囲まれている。
【0068】
図20は、燃料電池システム100の各ポート配置を示す平面図である。本実施形態では、アノード系吸気ポート30aと、カソード系吸気ポート40aと、カソード系排気ポート40bと、第1冷却系流入ポート50aと、第1冷却系流出ポート50bと、第2冷却系流入ポート60aと、第2冷却系流出ポート60bとの各ポートは、いずれも、燃料電池システム100の水平方向側の端部としてのシステム側面に設けられている。そして、それらの各ポートは、システム側面である燃料電池システム100の前面sFrと後面sRrと左面sLと右面sRとの4面のうちの少なくとも3面に、分散配置されている。
【0069】
さらに、ポンプ駆動装置41および変圧装置19における、燃料電池システム100の外部から電力を受電するための受電ポート41e,19eも、システム側面に設けられている。つまり、以上の各ポート30a,40a,40b,50a,50b,60a,60b,19e、41eが、燃料電池システム100の上面や下面には設けられずに、システム側面に集中配置されている。
【0070】
具体的には、燃料電池システム100の前面sFrには、第2冷却系流入ポート60aと第2冷却系流出ポート60bと、カソード系吸気ポート40aとが設けられている。燃料電池システム100の右面sRには、第1冷却系流入ポート50aと第1冷却系流出ポート50bとが設けられている。燃料電池システム100の後面sRrには、アノード系吸気ポート30aとカソード系排気ポート40bとポンプ駆動装置41の受電ポート41eとが設けられている。燃料電池システムの左面sLには、変圧装置19の受電ポート19eが設けられている。
【0071】
図21は、燃料電池システム100を右Rから見た側面図である。ポンプ駆動装置41、エアポンプ42等は、燃料電池システム100の下部に設けられている。
【0072】
図22は、
図21を下から見た底面図である。以下、エアポンプ42の長手方向および幅方向のうちの、前後方向Fr,Rrに対する角度が小さい方を、「ポンプ軸線方向42x」という。また以下では、ポンプ駆動装置41の長手方向および幅方向のうちの、前後方向Fr,Rrに対する角度が小さい方を、「駆動装置軸線方向41x」という。前後方向Fr,Rrは、前述の通り、燃料電池システム100の長手方向である。よって、前後方向Fr,Rrは、「システム軸線方向」と読み替えてもよく、左右方向L,Rは、「システム幅方向」と読み替えてもよい。
【0073】
エアポンプ42とポンプ駆動装置41とは、前後方向Fr,Rrに並べて配置されている。具体的には、ポンプ駆動装置41よりも前Frに、エアポンプ42が設置されている。駆動装置軸線方向41xは、前後方向Fr,Rrである。ポンプ軸線方向42xは、前後方向Fr,Rrおよび駆動装置軸線方向41xに対して傾斜している。
【0074】
エアポンプ42は、エアを吐出する吐出ポート42bを有する。その吐出ポート42bの左L側には、フレーム16における所定部分16zが存在する。ポンプ軸線方向42xは、前後方向Fr,Rrに対して傾斜していることから、吐出ポート42bの軸線およびその延長線42bLは、左右方向L,Rに対して傾斜している。それによって、当該軸線の延長線42bLとフレーム16の当該所定部分16zとの干渉が回避されている。
【0075】
図23は、本実施形態の燃料電池システム集合体500を示す側面図である。燃料電池システム集合体500は、前述の燃料電池システム100を2つ有すると共に、エアクリーナ340を有する。2つの燃料電池システム100は、互いに前Fr側どうしを対向させて前後方向Fr,Rrに並べて配置されている。
【0076】
図24は、
図23を下から見た底面図である。下面視において、一方の燃料電池システム100は、他方の燃料電池システム100を180°回転させた状態となる。これによって、2つの燃料電池システム100は、ポンプ駆動装置41どうしよりもエアポンプ42どうしの方が接近し合うように、前後方向Fr,Rrに並べて、且つ前後方向Fr,Rrにシステム間隔Sをおいて配置されている。
【0077】
各ポンプ42は、システム間隔S側である前Fr側の端部に、エアを吸引するための吸引ポート42aを有する。底面視において、ポンプ軸線方向42xは、前後方向Fr,Rrに対して傾斜していることから、各吸引ポート42aの軸線およびその延長線42aLは、前後方向Fr,Rrに対して傾斜している。同底面視におけるシステム間隔Sにおいて、2つの吸引ポート42aの軸線の延長線42aLどうしはオフセットしている。そして、各エアポンプ42の吸引ポート42aに対して、1つのエアクリーナ340が、システム間隔Sを通過して各吸引ポート42aにまで延びるエア配管341,40pを介して接続されている。なお、ここでのエア配管341,40pは、エアクリーナ340とカソード系吸気ポート40aとを繋ぐエア供給配管341と、カソード系吸気ポート40aと吸引ポート42aとを繋ぐカソード系配管40pと、を含む。
【0078】
以下に、本実施形態の効果をまとめる。
【0079】
図1に示すように、第1冷却系50と第2冷却系60とがあり、第1冷却系50については、第1冷却対象の温度を所定の目標温度に調温する目的で使用し、第2冷却系60については、第2冷却対象を極力低温に冷却する等の目的で使用している。このように2つの冷却系50,60を異なる目的で使用しているため、冷却系50,60が機能的である。
【0080】
図2に示すように、2つの第2熱交換器64A,64Bは、カソード系40において並列に配置されており、カソード系40は、2つの第2熱交換器64A,64Bに並列にエアを通過させる。そのため、1つの第2熱交換器にエアを通過させる場合や、2つの熱交換器64A,64Bに直列にエアを通過させる場合に比べて、
図3に示すように、圧損を抑制することができる。しかも、2つの第2熱交換器64A,64Bを並列に配置した場合には、直列に配置した場合とは違い、上流側の第2熱交換器で冷却したエアを、下流側の第2熱交換器でさらに冷却することにならないので、
図4に示すように、熱交換性能の面でも優位性が得られる。以上、2つの第2熱交換器64A,64Bの並列配置によれば、カソード系40におけるエアの圧損を抑制すると共に、第2熱交換器64A,64Bにおける熱交換性能を向上させることができる。
【0081】
図5に示すように、複数の第2熱交換器64A,64Bは、第2冷却系60において直列に配置されており、第2冷却系60は、複数の第2熱交換器64A,64Bに直列に冷却水を通過させる。つまり、複数の熱交換器64A,64Bは、カソード系40においては並列に配置される一方、第2冷却系60においては直列に配置される。そのため、カソード系40においては、エアの圧損抑制を優先したい一方、第2冷却系60においては、冷却水の圧損抑制よりも、少ない枝分かれで効率的に冷却水を複数の第2熱交換器64A,64Bに供給することを優先したい場合に、好適である。
【0082】
図6に示すように、第2ラジエター360に接続される2つの第2熱交換器64A,64Bが、近接し合うようにまとめて配置されている。それによって、第2ラジエター360と2つの第2熱交換器64A,64Bとを接続する配管の合計の長さを短くすることができる。それによって、第2冷却系60をコンパクトにまとめて、効率的に、冷却系50,60をレイアウトすることができる。
【0083】
具体的には、2つの第2熱交換器64A,64Bは、スタックアッシー20よりも前Frに設置されている。それによって、2つの第2熱交換器64A,64Bを、燃料電池システム100における前部にまとめて配置できる。
【0084】
他方、第1ラジエター350に接続される第1熱交換器54については、第2ラジエター360に接続される2つの第2熱交換器64A,64Bから離間していても、冷却水の配管が長くなってしまうことがない。その点、第1熱交換器54は、スタックアッシー20よりも後Rr側に設けられている。つまり、第1熱交換器54は、2つの第2熱交換器64A,64Bが設けられている側とは反対側に、配置されている。それによって、第1冷却系50および第2冷却系60を、過密を避けて効率的にレイアウトできる。
【0085】
同
図6に示すように、第2熱交換器64A,64Bどうしは、上下前後左右の各方向に、互いにずらして設置されている。それによって、エア分岐部43から各第2熱交換器64A,64Bまでのカソード系配管40pの長さと、各第2熱交換器64A,64Bからエア合流部までのカソード系配管40pの長さとを、無理なく充分に確保し易くなる。さらに当該各方向へのずれによって、一方の第2熱交換器64A側のカソード系配管40pの長さと、他方の第2熱交換器64B側のカソード系配管40pの長さとを、無理なく揃えたり、所望の長さに無理なく調整したり、し易くなる。それによって、エア分岐部43から分岐して延びる2本のカソード系配管40pや、エア合流部45で合流する2本のカソード系配管40pが無理な角度で曲がることを抑制できる。そのため、燃料電池システム100の製造性を損なったり、エアの圧損を増加させたりすることなく、カソード系配管40pを効率的にレイアウトできる。
【0086】
具体的には、カソード系配管40pに沿っての、エア分岐部43から各第2熱交換器64A,64Bまでの距離は、互いに等しい。そのため、エア分岐部43から各第2熱交換器64A,64Bまでのエアの圧損を効率的に揃えることができる。また、カソード系配管40pに沿っての、各第2熱交換器64A,64Bからエア合流部45までの距離は、互いに等しい。そのため、各第2熱交換器64A,64Bからエア合流部45までのエアの圧損を効率的に揃えることができる。また、カソード系配管40pに沿っての、エア分岐部43から各熱交換器64A,64Bを通過してエア合流部45に至るまでの距離は、互いに等しい。そのため、各経路におけるエアの圧損を効率的に揃えることができる。
【0087】
図13に示す側面視において、スタックアッシー20は、前後のブラケット15とフレーム16とによって、前後両側と下側との少なくとも3方から囲まれている。そのため、スタックアッシー20は、前後のブラケット15とフレーム16とによって、衝突等の衝撃から保護される。さらに、同側面視において、電気機器41,42,57の少なくとも所定部分は、フレーム16とスタックアッシー20とによって、前後両側と上下両側との4方から囲まれている。そのため、電気機器41,42,57の当該所定部分は、さらに強固に衝撃から保護される。
【0088】
さらに電気機器41,42,57の少なくとも当該所定部分は、側面視のみならず、
図14に示す正面視においても、フレーム16とスタックアッシー20とによって、左右両側と上下両側との4方から囲まれている。そのため、電気機器41,42,57の当該所定部分は、より強固に保護される。
【0089】
さらに電気機器41,42,57の少なくとも当該所定部分は、側面視および正面視のみならず、
図22に示す底面視においても、フレーム16とブラケット15とによって、左右両側と前後両側との4方から囲まれている。そのため、電気機器41,42,57の当該所定部分は、さらに強固に保護される。
【0090】
ここでいう電気機器41,42,57は、ポンプ駆動装置41とエアポンプ42とウォータポンプ57とを含む。よって、具体的には、ポンプ駆動装置41とエアポンプ42とウォータポンプ57とを、強固に衝撃から保護することができる。
【0091】
図16等に示すように、スタック22は、冷却系配管50p,60pに囲まれており、冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分は、カソード系配管40pに囲まれている。そのため、衝突時などには、まず、外側にある、柔軟かつ大径に形成されがちなカソード系配管40pによって外力が吸収され、その次に、内側にある、硬く且つ小径に形成されがちな冷却系配管50p,60pによって外力が吸収される。それによって、燃料電池を有するスタック22に対する外力を、効率的に抑制できる。そのため、燃料電池の耐衝撃性を効率的に向上させることができる。
【0092】
具体的には、
図17~
図19に示すように、側面視と底面視と正面視とのいずれにおいても、スタック22は、少なくとも3方から冷却系配管50p,60pに囲まれており、且つ冷却系配管50p,60pにおけるスタック22を囲んでいる部分は、少なくとも3方からカソード系配管40pに囲まれている。それによって、燃料電池の耐衝撃性を、より確実に向上させることができる。
【0093】
また実際に、カソード系配管40pは、樹脂およびゴムのうちの少なくとも一方を含む柔軟素材製であり、冷却系配管50p,60pは、金属製である。そのため、衝突時などには、まず、柔軟素材製のカソード系配管40pによって外力が吸収され、その次に、金属製の冷却系配管50p,60pによって外力が吸収される。それによって、燃料電池に対する外力を、より効率的に抑制できる。
【0094】
図20に示すように、アノード系吸気ポート30aと、カソード系吸気ポート40aと、カソード系排気ポート40bと、冷却系流入ポート50a,60bと、冷却系流出ポート50b,60bと、の各ポートが、いずもシステム側面に設けられている。つまり、これらの各ポートは、燃料電池システム100の上面や底面には設けられておらず、システム側面に集約される。それによって、各ポートに対する配線が容易となる。また、燃料電池システム100を上下に重ねる配置が容易になる。また、システム側面に各ポートを設けることで、燃料電池システム100の側方にコネクタを設ける場合等に比べて、燃料電池システム100に対する各配線をコンパクトにまとめることができる。以上によって、電動車両に対する燃料電池システム100の搭載性が向上する。
【0095】
冷却系50,60は、第1冷却系流入ポート50aと、それとは別の第2冷却系流入ポート60aと、第1冷却系流出ポート50bと、それとは別の第2冷却系流出ポート60bとを有する。それらを含む各ポートが、いずれもシステム側面に設けられている。そのため、このように冷却系50,60が、第1冷却系50と第2冷却系60とを有する場合においても、燃料電池システム100の搭載性を向上させることができる。
【0096】
アノード系吸気ポート30aと、カソード系吸気ポート40aと、カソード系排気ポート40bと、第1冷却水流入ポート50aと、第1冷却系流出ポート50bと、第2冷却水流入ポート60aと、第2冷却系流出ポート60bと、の各ポートは、システム側面としての4面のうちの少なくとも3面に、分散配置されている。そのため、各ポートに対する配線の混雑を抑制できる。
【0097】
さらに、ポンプ駆動装置41は、システム側面に、燃料電池システム100の外部から電力を受電する受電ポート41eを有する。そのため、ポンプ駆動装置41の受電ポート41eについても、他の各ポートと共に、システム側面に集約配置できる。
【0098】
さらに、変圧装置19は、システム側面に、燃料電池システム100の外部から電力を受電する受電ポート19eを有する。そのため、変圧装置19の受電ポート19eについても、他の各ポートと共に、システム側面に集約配置できる。
【0099】
図22に示す底面視において、ポンプ軸線方向42xは、前後方向Fr,Rrおよび駆動装置軸線方向41xに対して傾斜している。そのため、傾斜していない場合に比べて、ポンプ駆動装置41とポンプ42とを電気的に繋ぐ電力配線Eが自然に湾曲し易くなる。その湾曲により、電力配線Eの長さ精度の誤差等を吸収し易くなる。そのため、燃料電池システム100の製造性が向上する。
【0100】
ポンプ駆動装置41は、ポンプ42よりも大きくなりがちである。その点、ポンプ駆動装置41の軸線方向である駆動装置軸線方向41xは、システム軸線方向である前後方向Fr,Rrであるので、前後方向Fr,Rrに対して傾斜している場合に比べて、ポンプ駆動装置41が、燃料電池システム100内にコンパクトに収まり易くなる。
【0101】
エアポンプ42の吐出ポート42bの軸線が、システム幅方向である左右方向L,Rに対して傾斜しており、それによって、吐出ポート42bの軸線の延長線42bLとフレーム16における所定部分16zとの干渉が回避されている。そのため、吐出ポート42bに接続されるカソード系配管40pを曲げることなく、当該カソード系配管40pとフレーム16における当該所定部分16zとの干渉を回避することができる。そのため、エアポンプ42を、燃料電池システム100内に効率的にレイアウトできる。
【0102】
図25に示す変更例の場合のように、2つの燃料電池システム100を同じ方向に向けて並べると共に、
図26に示すようにシステム間隔Sの真横にエアクリーナ340を設けた場合、エアクリーナ340から、各ポンプ42までのエア配管の長さが異なってしまう。それによって、エアの圧損が異なってしまい、各燃料電池システム100の性能が異なってしまうおそれがある。
【0103】
その点、本実施形態では、
図24にように、2つの燃料電池システム100は、前Fr側どうしを対向させて、エアポンプ42どうしが近接し合うように配置されている。それらの各エアポンプ42に対して、1つのエアクリーナ340が、システム間隔Sを通過して各エアポンプ42にまで延びるエア配管を介して接続されている。そのため、1つのエアクリーナ340から各エアポンプ42までの距離および圧損を揃え易くなる。そのため、各燃料電池システム100の性能を揃え易くなる。
【0104】
しかも、システム間隔Sにおいて、2つのエアポンプ42の吸引ポート42aの軸線の延長線42aLどうしがオフセットしている。そのことから、エアクリーナ340と一方のエアポンプ42とを繋ぐエア配管における取り回し部342と、エアクリーナ340と他方のエアポンプ42とを繋ぐエア配管における取り回し部342とが、互いにオフセットする。そのため、取り回し部342どうしの干渉を回避して、両側のエア配管を効率的にレイアウトできる。それによって、システム間隔Sを、前後方向Fr,Rrに小さくして、燃料電池システム集合体500を、前後方向Fr,Rrにコンパクトにまとめることができる。
【0105】
なお、
図22に示す底面視において、駆動装置軸線方向41xに対するポンプ軸線方向42xの角度は、特に限定されないが、以上の効果がより確実に得られるように、5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、15°以上であることがさらに好ましい。他方、当該角度は、燃料電池システム100に対するエアポンプ42の搭載性の面から、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、35°以下であることがさらに好ましい。
【0106】
[変更形態]
以上の実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。アノード系30は、例えば天然ガス等の、水素以外の燃料ガスをアノード電極に供給するようにしてもよい。カソード系40は、例えば酸素等の、エア以外の酸化剤ガスをカソード電極に供給するようにしてもよい。各冷却系50,60は、例えばエチレングリコール、オイル等の、冷却水以外の冷媒を用いるようにしてもよい。
【0107】
第1冷却系50は、第1熱交換器54を複数有していてもよい。第2冷却系60は、第2熱交換器を3つ以上有していてもよい。
【0108】
燃料電池システム100は、電動車両以外の搭載対象に搭載されていてもよい。具体的には、当該搭載対象は、船舶、ドローン等の電動車両以外の移動物であってもよいし、固定物であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
15 接続部としてのブラケット
16 フレーム
16a フレーム第1部
16b フレーム第2部
20 スタックアッシー
22 スタック
30 アノード系
30a アノード系吸気ポート
30p アノード系配管
40 カソード系
40a カソード系吸気ポート
40b カソード系排気ポート
40p カソード系配管
41 ポンプ駆動装置
41x 駆動装置軸線方向
42 エアポンプ
42a 吸引ポート
42aL 吸引ポートの軸線の延長線
42b 吐出ポート
42bL 吐出ポートの軸線の延長線
42x ポンプ軸線方向
50 第1冷却系
50a 第1冷却系流入ポート
50b 第1冷却系流出ポート
54 第1熱交換器
57 冷媒ポンプとしてのウォータポンプ
60 第2冷却系
60a 第2冷却系流入ポート
60b 第2冷却系流出ポート
64A 一方の第2熱交換器
64B 他方の第2熱交換器
100 燃料電池システム
350 第1ラジエター
360 第2ラジエター
500 燃料電池システム集合体
Fr 燃料電池システムの長手方向およびシステム軸線方向としての前
Rr 燃料電池システムの長手方向およびシステム軸線方向としての後
L 燃料電池システムの幅方向およびシステム幅方向としての左
R 燃料電池システムの幅方向およびシステム幅方向としての右