(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163723
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】流動焼却炉の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20231102BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F23G5/50 H
F23L15/00 A ZAB
F23G5/50 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074811
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】杉原 全信
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 均
(72)【発明者】
【氏名】古閑 邦彦
【テーマコード(参考)】
3K023
3K062
【Fターム(参考)】
3K023QA11
3K023QA14
3K023QB20
3K023QC01
3K023QC08
3K062AA11
3K062AB01
3K062AC02
3K062BA02
3K062CA01
3K062CB04
3K062DA01
3K062DA07
3K062DB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流動焼却炉に供給する空気の入口温度を制御して、流動焼却炉内へ供給する予熱空気の温度を調節し、焼却システムでの余分な機器・補助燃料・動力・用水の使用を抑える。
【解決手段】焼却対象物を焼却する流動焼却炉2を制御する流動焼却炉の制御装置90において、流動焼却炉と、焼却炉入口空気温度計24と、空気予熱器空気量計測器26、27と空気予熱器30と、過給機50または流動ブロワと、制御装置を備えている流動焼却炉であって、前記空気予熱器は、円筒の筐体からなり、円筒の内部を隔壁板で仕切り上部の並流式の熱交換室と下部の向流式の熱交室を設けて構成され、前記空気予熱器の上部の並流式の熱交換室から流れる予熱空気量と下部の向流式の熱交室から流れる予熱空気量の割合を制御し混合された予熱空気を流動焼却炉に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気について、空気予熱器上流に位置する並流ラインと向流ラインの供給空気量を調節することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項2】
焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気が空気予熱器上流で並流ラインと向流ラインに分岐する供給路の、分岐後の向流ライン側の供給路途中にある調節弁を操作することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の制御方法。
【請求項3】
空気予熱器冷却空気割合の上下限値を外れる場合は、下限値を下回るときは空気予熱器冷却空気割合を増加させ、上限値を上回るときは空気予熱器冷却空気割合を減少させることを特徴とする請求項1又は2記載の流動焼却炉の制御方法。
【請求項4】
空気予熱器冷却空気割合を調節する調節弁の位置は、並流ラインと向流ラインの少なくともどちらかであることを特徴とする請求項1又は3に記載の流動焼却炉の制御方法。
【請求項5】
流動焼却炉からの燃焼排ガスと熱交換を行う空気予熱器への供給空気は、流動ブロワまたは過給式流動焼却炉の焼却システムにおける過給機から供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の流動焼却炉の制御方法。
【請求項6】
焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気について、空気予熱器上流に位置する並流ラインと向流ラインの供給空気量を調節することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項7】
焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気が空気予熱器上流で並流ラインと向流ラインに分岐する供給路の、分岐後の向流ライン側の供給路途中にある調節弁を操作することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする請求項6記載の流動焼却炉の制御装置。
【請求項8】
空気予熱器冷却空気割合の上下限値を外れる場合は、下限値を下回るときは空気予熱器冷却空気割合を増加させ、上限値を上回るときは空気予熱器冷却空気割合を減少させることを特徴とする請求項6又は7記載の流動焼却炉の制御装置。
【請求項9】
空気予熱器冷却空気割合を調節する調節弁の位置は、並流ラインと向流ラインの少なくともどちらかであることを特徴とする請求項6又は8に記載の流動焼却炉の制御装置。
【請求項10】
流動焼却炉からの燃焼排ガスと熱交換を行う空気予熱器への供給空気は、流動ブロワまたは過給式流動焼却炉の焼却システムにおける過給機から供給することを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の流動焼却炉の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動焼却炉の空気予熱器における予熱空気温度を制御する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉は、炉に入れた砂等の流動媒体を炉の下部から送り込まれる空気により流動させて流動層(流動床)を生成し、熱せられた流動層内に投入された下水汚泥または都市ゴミ等の焼却対象物を流動媒体とともに撹拌させて焼却する焼却炉である。流動焼却炉内の流動状態は、炉に供給する空気(単に供給空気、燃焼空気、流動空気あるいは予熱空気とも称す。)、焼却対象物や補助燃料等の量、および炉内の温度、圧力に依存して変化し、流動状態を安定させて燃焼状態を最適にすることは、焼却対象物の燃焼効率を上げるために重要である。
【0003】
例えば、流動焼却炉において、炉内の明るさ、焼却対象物の供給量、温度、酸素濃度または炉内の圧力に応じて流動媒体を流動させるために炉内に供給する空気量を調節する手法が提案されている(特許文献1参照)。
また、流動焼却炉において、排ガスの酸素濃度と炉内上部の水分濃度とに基づいて下水汚泥のケーキの含水率の増減を推定し、推定結果に基づいて炉に供給する空気の量、炉内温度、炉に供給する焼却対象物の量等を調節することで、燃焼の安定化を計る手法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3108742号公報
【特許文献2】特開2004-125332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の流動焼却炉に使用されている空気予熱器は、熱源(排ガス)流入部の温度が高くなり、伝熱管取付部(管板)の温度が高くなりすぎてしまうため、一部の燃焼空気を分岐し予熱前の冷却空気とし管板部へ導入し並流熱交換し、残りを向流熱交換し、この2つを混合し、予熱空気としていた。
この過程において管板への冷却空気量は一定であった。
【0006】
このため、焼却対象物の焼却量が少ない低負荷時には、排ガスの発熱量が増えず、排ガスとの熱交換後の予熱空気温度が低くなることから、焼却炉へ供給する補助燃料を多く使用して焼却炉の燃焼温度を確保していた。
逆に、高負荷時には、予熱空気温度が高くなることから、空気冷却器を別途設けての予熱空気の冷却、焼却炉内への注水(動力・用水の使用)や焼却量(焼却対象物、例えば汚泥)を調整していた。
【0007】
本発明は、空気予熱器の予熱空気温度を調節することで余分な機器・補助燃料・動力・用水の使用を抑えることができる流動焼却炉の予熱空気温度の制御手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の流動焼却炉の制御方法及び流動焼却炉の制御装置は次のとおりである。
〔1〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御方法において、焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気について、空気予熱器上流に位置する並流ラインと向流ラインの供給空気量を調節することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする。
〔2〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御方法において、焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気が空気予熱器上流で並流ラインと向流ラインに分岐する供給路の、分岐後の向流ライン側の供給路途中にある調節弁を操作することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする。
〔3〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御方法において、空気予熱器冷却空気割合の上下限値を外れる場合は、下限値を下回るときは空気予熱器冷却空気割合を増加させ、上限値を上回るときは空気予熱器冷却空気割合を減少させることを特徴とする。
〔4〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御方法において、空気予熱器冷却空気割合を調節する調節弁の位置は、並流ラインと向流ラインの少なくともどちらかであることを特徴とする。
〔5〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御方法において、流動焼却炉からの燃焼排ガスと熱交換を行う空気予熱器への供給空気は、流動ブロワまたは過給式流動焼却炉の焼却システムにおける過給機から供給することを特徴とする。
〔6〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御装置において、焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気について、空気予熱器上流に位置する並流ラインと向流ラインの供給空気量を調節することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする。
〔7〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御装置において、焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気が空気予熱器上流で並流ラインと向流ラインに分岐する供給路の、分岐後の向流ライン側の供給路途中にある調節弁を操作することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うことを特徴とする。
〔8〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御装置において、空気予熱器冷却空気割合の上下限値を外れる場合は、下限値を下回るときは空気予熱器冷却空気割合を増加させ、上限値を上回るときは空気予熱器冷却空気割合を減少させることを特徴とする。
〔9〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御装置において、空気予熱器冷却空気割合を調節する調節弁の位置は、並流ラインと向流ラインの少なくともどちらかであることを特徴とする。
〔10〕焼却炉入口温度の制御を行う流動焼却炉の制御装置において、流動焼却炉からの燃焼排ガスと熱交換を行う空気予熱器への供給空気は、流動ブロワまたは過給式流動焼却炉の焼却システムにおける過給機から供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気予熱器に供給する空気を調節弁の開度を調節することで、並流のラインと交流のラインから混合される予熱空気の割合を調節し、空気予熱器から焼却炉へ供給する予熱空気温度を制御することができる。
そのため、焼却炉での補助燃料の使用量を抑制し、焼却炉への注水を抑制し、焼却量の調節機会を低減することができる。
また、空気冷却器のイニシャルコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態における過給式流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
【
図3】空気予熱器から流動焼却炉へ供給される燃焼空気量全体に対する空気予熱器冷却空気割合と焼却炉入口空気温度の関係を表す図である。
【
図4】制御装置が実行する演算の流れを示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態における気泡式流動焼却炉の焼却システムの一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す図、
図2は空気予熱器の構造を示す図である。
図1に示す焼却システム1は、流動焼却炉2、汚泥(ケーキ)供給装置10、水供給装置15、燃料供給装置20、空気予熱器30、集塵機40、過給機50、起動用ブロワ60、白煙防止ファン70、白煙防止(予熱)器75、煙突を備えた排煙処理塔80、制御装置90からなる。
また、焼却システム1は、温度計23、24、圧力計25、空気予熱器空気量計測器26、27、過給機回転数計測機器28を有する。
例えば、本発明の実施態様において流動焼却炉2は、過給式の流動焼却炉である。流動焼却炉2は、昇温された圧縮空気を焼却炉2に供給し、高温・高圧の状態で焼却炉2内の焼却対象物を燃焼することで、燃焼速度を高くすることができ、N
2Oの有害物質の排出量を減らすことができる。
なお、以下の説明では、流動焼却炉2は、単に焼却炉2とも称される。
【0012】
矢印の付いた太い実線は、汚泥(ケーキ)、補助燃料、空気、水又は排ガスの供給路(供給管)を示し、矢印の付いた破線は、バイパス路を示す。
矢印の付いた細い実線(例えば、(1)圧力計25から調節弁48(CV4)に接続されている線、(2)調節弁48(CV4)から過給機回転数計測機器28に、(3)過給機回転数計測機器28から空気予熱器空気量計測器27に、(4)空気予熱器空気量計測器27から調節弁49(CV5)に接続されている線、(5)温度計23から調節弁17(CV2)、調節弁22(CV1)に接続されている線、(6)調節弁17(CV2)から温度計24に接続されている線、(7)温度計24から調節弁47(CV3)に接続されている線、(8)空気予熱器空気量計測器26から調節弁47(CV3)に接続されている線)は、制御装置からこれらの調節弁に制御信号を送る信号線を示す。
例えば、制御装置90は、圧力計25からの圧力値を受け、該圧力値に基づいて開度指令信号を調節弁48(CV4)に送り、前記調節弁48の開度を調節する。
【0013】
流動焼却炉2は、炉内に流動床3、予熱空気取入口4、始動用バーナ5を備えている。また、汚泥(ケーキ)供給装置10に接続された供給路(汚泥供給管)11から供給される汚泥を取り込む汚泥込み口(図示しない)、水供給装置15に接続された供給路(水供給管)16から供給される水(注水)を取り込む水(注水)取込口(図示しない)、燃料供給装置20に接続された供給路(燃料供給管)21から供給される補助燃料を取り込む燃料取込口(図示しない)が設けられている。
汚泥(ケーキ)供給装置10は、下水処理設備から送られてホッパ(図示しない)に貯められた下水汚泥のケーキを供給管11から焼却炉2に順次供給する。
【0014】
水供給装置15は、接続された供給管16から水(注水)を焼却炉2内へ送り込むことで焼却炉2内の燃焼温度を調節し、燃料供給装置20は、接続された供給管21から補助燃料を焼却炉2内へ送り込むことで焼却炉2内の燃焼温度を調節する。
水供給管16には、調節弁17(CV2)が、燃料供給管21には、調節弁22(CV1)が設けられている。
調節弁17(CV2)及び調節弁22(CV1)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
【0015】
温度計23は、流動焼却炉2内に備えている流動床3の温度を計測する。温度計23は、制御装置90に接続されていて計測された温度値を該制御装置90に出力する。
温度計24は、空気予熱器30から流動焼却炉2内に供給される予熱空気の温度を計測する。温度計24は、制御装置90に接続されていて計測された温度値を該制御装置90に出力する。
【0016】
圧力計25は、流動焼却炉2内の圧力を計測する。圧力計25は、制御装置90に接続されていて計測された圧力値を該制御装置90に出力する。
空気予熱器空気量計測器26は、過給機50から空気予熱器30に供給される圧縮空気量を計測する。空気予熱器空気量計測器26は、制御装置90に接続されていて計測された圧縮空気量値を該制御装置90に出力する。
【0017】
空気予熱器空気量計測器27は、過給機50から供給される圧縮空気量を計測する。空気予熱器空気量計測器27は、制御装置90に接続されていて計測された圧縮空気量値を該制御装置90に出力する。
過給機回転数計測器28は、過給機50の回転数を計測する。過給機回転数計測器28は、制御装置90に接続されていて計測された回転数値を該制御装置90に出力する。
【0018】
図2は、空気予熱器の構造の一例を示す断面図である。
前記空気予熱器30は、円筒の筐体30aからなり、該筐体30aの内部を仕切り板30cで仕切り上部の並流式の熱交換室30dと下部の向流式の熱交室30eを設けて構成される。
30fは高温側管板、30gは低温側管板、30hは伝熱管、30iはバッフルプレート、30jは排ガス排出室、30kは上部の並流式の熱交換室30dに圧縮空気を送る圧縮空気導入ヘッダー、30mは下部の向流式の熱交換室30eに圧縮空気を送る圧縮空気導入ヘッダー、30nは熱流体排出ヘッダー、F1は高温排ガス、F2は低温排ガスである。
流動焼却炉2から供給路58を介して空気予熱器30に供給される高温排ガスF1と上部の熱交換室30dとは高温側管板30fにより隔てられると共に、上記排ガス排出室30jと上部の熱交換室30d及び下部の向流式の熱交換室30eは上記低温側管板30gにより隔てられる。熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内には多数本の伝熱管30hが配管され、その上下端は、上記高温側管板30fおよび上記低温側管板30gにそれぞれ接続されている。伝熱管30hを通じて上記熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内に流入する高温排ガスF1は、流動焼却炉2から供給路58を介して送り込まれる。
また、上記熱交換室の中間部には、仕切り板30cが取り付けられていて、該熱交換室を、上部熱交換室30dと下部熱交換室30eに二分する。これら上部熱交換室30dと下部熱交換室30e内には、数枚のバッフルプレート(邪魔板)30iが配設されている。
上部の並流式の熱交換室は、空気と排ガスの流れが同じ方向になり、熱交換量が少ないので空気予熱器から排出される空気が暖まり難く、一方下部の向流式熱交換室は、空気と排ガスの流れが逆になり、熱交換量が多いので出てくる空気が暖まり易い。
従って、下部の向流式の熱交換室から流れる割合を増やせば、予熱空気温度が上昇し、上部の並流式の熱交換室から流れる割合を増やせば、予熱空気温度が低下する。
【0019】
そして前記供給路29が接続される位置において、上部の並流式の熱交換室から流れてくる予熱空気と下部の向流式熱交換室から流れてくる予熱空気とが混合され、混合された予熱空気が焼却炉へ供給される。
本発明の実施態様である空気予熱器30は、流動焼却炉2から供給路58を介して送り込まれた排ガスと、過給機50から供給路56、分岐供給路56a、分岐供給路56bを介して送り込まれた圧縮空気とが熱交換される。そして熱交換された空気は、供給路29を介して予熱空気取入口4から焼却炉2内へ供給される。
図1におけるF1は、過給機50から空気予熱器30に供給される燃焼空気量全体に対して、上部の熱交換室30dへ流す空気の割合を表す。
【0020】
集塵機40は、供給路31から送り込まれた空気予熱器30から排出される排ガスから、該排ガスに含まれる灰等の固形成分を分離して回収し、灰等の固形成分が取り除かれた排ガスを、供給路41を介して過給機50へ送り込み、該送られた排ガスは過給機50から供給路42を介して白煙防止器75に送り込まれる。
【0021】
過給機50は、共通の回転軸51に接続されたタービン52およびコンプレッサ53を有する。タービン52は、集塵機40から供給路41を介して過給機50に送られる排ガスを受けて高速回転することで、コンプレッサ53を高速回転させる。
コンプレッサ53は、過給機50に取り込まれた空気を圧縮し、圧縮した空気を供給路56、分岐供給路56a、分岐供給路56bを介して空気予熱器30に送り込む。空気予熱器30では、排ガスと圧縮空気とが熱交換され、昇温された圧縮空気が供給路29を介して焼却炉2の予熱空気取入口4に送られる。
【0022】
供給路56には、分岐供給路56aと分岐供給路56bの間に調節弁47(CV3)が設けられている。調節弁47(CV3)は制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
この開度の調節により空気予熱器30の上側に供給する分岐供給路56aと空気予熱器30の下側に供給する分岐供給路56bに供給する圧縮空気量が調節される。
【0023】
本発明の特徴は、並流式の上部熱交換室と向流式の下部熱交換室から出てくる空気の量を調節弁47(CV3)でコントロールすることによって、空気予熱器から出てくる混合空気量の温度を焼却炉に供給する空気量に対する予熱空気量の割合(F)で調節することで焼却炉の入口温度T2を設定温度T2spとなるように制御するものである。
【0024】
起動用ブロワ60は、焼却システム1の起動時に取り込んだ空気を供給路61から前記空気供給路56に、供給路62から前記過給機50に供給する。
63は前記供給路62に設けられた逆止弁である。
起動後に流動焼却炉2からの排ガスで過給機50のコンプレッサ53からの流動空気を確保できる段階になったときには、起動用ブロワ60からの大気(空気)供給を停止し、大気を供給路65から前記過給機50に供給するよう切り替える。66は、前記供給路65に設けられた調節弁であり制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
【0025】
白煙防止ファン70は、取り込んだ空気を、供給路71を介して白煙防止器75に送り込む。
白煙防止器75は、大気を取り込む白煙防止ファン70から送り込まれる空気と、供給路42を介して供給される過給機50から排出される排ガスと熱交換して昇温させる。昇温された空気は排煙処理塔80に向けて送られる。
排煙処理塔80では、排ガスに含まれる硫黄酸化物および煤塵などの大気汚染物質を排ガスから除去する。
【0026】
前記供給路41と供給路42との間に設けられたバイパス路43には、過給機排ガスバイパス調節弁48(CV4)が設けられている。
過給機排ガスバイパス調節弁48(CV4)(以下単に調節弁という)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される制御信号に応じて開度が調節される。
この開度の調節により供給路41から過給機50に送られる排ガス量が調節される。例えば、排ガスバイパス調節弁48(CV4)の開度を大きくすると集塵機40から過給機に排ガスを供給する供給路41から過給機50に送られる排ガスの一部が過給機50から白煙防止器75へ排ガスを供給する供給路42へ流れるため、供給路41から過給機50に送られる排ガス量が減少される。
そして供給路41から過給機50に送られる排ガス量に応じて、コンプレッサ53下流の圧縮空気の供給路、空気予熱器30及び焼却炉2内の圧力が調節される。
【0027】
また、空気供給路56と供給路71との間に設けられたバイパス路57には、余剰空気調節弁49(CV5)が設けられている。
余剰空気調節弁49(CV5)は、制御装置90に接続されていて該制御装置90から出力される開度指令の制御信号に応じて開度が調節される。
供給空気の圧力調節の際には、この開度の調節により過給機50から供給路56へ送られる圧縮空気の圧力が調節されて圧縮空気量が調節される。
【0028】
例えば、圧縮空気の質量流量が一定の場合においては、圧力が大きいときは容積流量が少なくなるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度を大きくしてバイパス路53から供給路71へ余剰空気を逃して圧力を開放することで、供給路56から空気予熱器30に送られる圧縮空気の容積流量を増加させるのに対して、圧力が小さいときは容積流量が多くなるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度を小さくしてバイパス路53から供給路71へ余剰空気を逃さず圧力を保持することで、供給路56から空気予熱器30に送られる圧縮空気の容積流量を減少させる。
つまり、流動空気の圧力変化に伴う容積流量の変化により流動空気量が影響を受けるので、余剰空気調節弁49(CV5)の開度調節をすることで、流動空気量を一定範囲にし、流動焼却炉での流動床の流動状態を安定化させ、燃焼状態を適切にすることができるのである。
【0029】
制御装置90は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置90は、各種センサ(温度計、圧力計、空気予熱器空気量計測器、過給機回転数計測機器等)からの信号を受け取り、内蔵する制御プログラムにより、前記受け取った信号に対応した制御信号を各種機器(調節弁)に送り各種機器を制御する。
【0030】
図3は、空気予熱器冷却空気割合(F1)と焼却炉入口空気温度の関係を表す図である。
F1は、過給機50から空気予熱器30に供給される燃焼空気量全体に対して、上部の熱交換室30dへ流す空気の割合を表す。
【0031】
例えば、空気予熱器冷却空気割合(F1)は最小15%(Fmin)~最大70%(Fmax)になる。
図3は、一例として空気予熱器冷却空気割合を、Fminが約22%、Fmax40%で運転した例である。
図中の実線は空気予熱器冷却空気割合(F1)を表し、点線は焼却炉入口空気温度である。
図から分かるように空気予熱器冷却空気割合に応じて焼却炉入口空気温度が増減している。つまり、空気予熱器冷却空気割合を調節することで焼却炉入口空気温度を制御することができるのである。
【0032】
図4は、
図1に示す制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
本発明は、焼却炉の入口温度T2の設定温度T2spとなるように調節弁47で制御する(上部熱交換室から供給される空気の熱量と下部熱交換室から供給される空気の熱量との熱量バランスをとる)システムであり、例えば、下記の流れで制御装置が作動する。
スタート:以下の流れで所定の周期で繰り返し実行される。
ステップ1:冷却空気割合F1が冷却空気最大値Fmax≧F1≧冷却空気最小値Fminとなっているか判定する。
ステップ2:F1<F1minを判定する。
ステップ3:ステップ2でYesならば調節弁(CV3)の開度を小さくして、F1を増やす。その後ステップ1へ戻ってF1の調節を繰り返す。
ステップ4:ステップ2でNoならばF1>F1Maxとなるので、調節弁(CV3)の開度を大きくして、F1を減らす。その後ステップ1へ戻ってF1の調節を繰り返す。
ステップ5:焼却炉の入口温度T2が設定温度T2spになっているか判定する。設定温度T2spはある範囲を有してもよい。Yesの場合は終了する。
【0033】
ステップ6:前記ステップ5でNo(T2≠T2sp)の場合で、入口温度T2が設定温度T2spより高いか低いかを判定する。
ステップ7:前記ステップ5で、高い場合、T2>T2spなので、調節弁47(CV3)を閉じ、冷却空気割合F1を増加させ、焼却炉入口温度T2を低下させる。 その後は終了となる。
ステップ8:前記ステップ6で低い場合、T2sp>T2なので、調節弁47(CV3)を開き、冷却空気割合F1を減少させ、焼却炉入口温度T2を上昇させる。その後は終了となる。
【0034】
以上のステップを周期的に行うことで、流動焼却炉内へ供給する予熱空気の温度を調節し、焼却システムでの余分な機器・補助燃料・動力・用水の使用を抑えることができる。
【0035】
なお、本発明を
図1に示す過給式流動焼却炉の焼却システムの場合について説明しているが、本発明は
図5に示す気泡式流動焼却炉の焼却システムの場合についても適用できる。気泡式流動焼却炉は、過給機50の代わりに流動ブロワを設けて、焼却ガスをタービンで回転させてコンプレッサで圧縮空気を生成する過給機による加圧を行わずに炉へ流動空気を送る。過給式流動焼却炉の場合は過給機50から空気予熱器30へ燃焼空気を送るのに対して、気泡式流動焼却炉では流動ブロワから空気予熱器30へ燃焼空気を送るようにする。
【0036】
本発明では、焼却炉入口温度が設定温度かどうかを判定し、設定温度に応じて、流動焼却炉へ供給される供給給気が空気予熱器上流で並流ラインと向流ラインに分岐する供給路の、分岐後の向流ライン側の供給路途中にある調節弁を操作することにより、空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行い、焼却炉入口温度の制御を行うこと説明しているが、調節弁の位置は分岐後の並流ライン側の供給路56a途中であってもよい。調節弁の動作は
図4で示すフローチャートにおいて逆方向となる。また、上述のような空気予熱器で熱交換する熱量の調節を行うことができれば、並流ラインと向流ラインのどちらにも調節弁を設けて開度調節することでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:焼却システム
2:流動焼却炉
10:汚泥供給装置
15:水供給装置
17:調節弁(CV2)
20:燃料供給装置
22:調節弁(CV1)
23:温度計
24:温度計
25:圧力計
26:空気予熱器空気量計測器
27:空気予熱器空気量計測器
28:過給機回転数計測器
30:空気予熱器
40:集塵機
47:調節弁(CV3)
48:調節弁(CV4)
49:調節弁(CV5)
50:過給機
60:起動用ブロワ
70:白煙防止ファン
75:白煙防止器
80:排煙処理塔
90:制御装置