(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163727
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】筆記具のレフィール及び筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 7/02 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B43K7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074817
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000156134
【氏名又は名称】株式会社壽
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】陰山 秀平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊和
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KC03
2C350KC04
(57)【要約】
【課題】高い生産性で生産することができ、かつ湾曲させて使用することができる容量の大きな筆記具のレフィール及び該レフィールを収容した筆記具を提供する。
【解決手段】
可撓性を有する第一の部分と、該第一の部分の断面積よりも大きな断面積を有する第二の部分と、を含み、該第一の部分の断面の図心は該第二の部分の断面の図心から偏心し、該第一の部分及び第二の部分は一体に成形され、該第一の部分の一部はその外径が該第一の部分の他の部分の外径よりも小さく構成された、筆記具のレフィール。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する第一の部分と、
前記第一の部分の断面積よりも大きな断面積を有する第二の部分と、を含み、
前記第一の部分の断面の図心は前記第二の部分の断面の図心から偏心し、
前記第一の部分及び第二の部分は一体に成形され、前記第一の部分の一部はその外径が前記第一の部分の他の部分の外径よりも小さく構成された、筆記具のレフィール。
【請求項2】
前記第二の部分の断面積は前記偏心した第一の部分の断面の図心から該第二の部分の断面の図心へと向かうに従って増大するように構成された、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項3】
前記第一の部分の可撓性は前記第二の部分の可撓性よりも大きい、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項4】
前記その外径が他の部分の外径よりも小さく構成された第一の部分の一部は該第一の部分の後端部に配置された、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項5】
前記第二の部分の側面は平面を含む、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項6】
前記第二の部分の断面形状が扇形である、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項7】
前記扇形の中心角が、120°、180°、240°の何れか一である、請求項6に記載の筆記具のレフィール。
【請求項8】
前記第二の部分の後方に、前記第二の部分の断面積よりもその断面積が小さく構成された接続部を更に含む、請求項1に記載の筆記具のレフィール。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレフィールを複数含む、筆記具。
【請求項10】
前記複数のレフィールの第二の部分の側面の少なくとも一が内周壁に近接するように構成された、請求項9に記載の筆記具。
【請求項11】
前記複数のレフィールの第二の部分の側面が相互に近接するように構成された、請求項9に記載の筆記具。
【請求項12】
その構成が同一である前記レフィールを複数含む、請求項9に記載の筆記具。
【請求項13】
前記複数のレフィールの第一の部分の断面の図心が該複数のレフィールを収容する収容部の断面の図心を中心とする同一円上に配置され、前記その構成が同一である複数のレフィールの第二の部分の側面の少なくとも一が該収容部の断面の図心を通る直線からオフセットして配置された、請求項12に記載の筆記具。
【請求項14】
前記複数のレフィールの第二の部分の断面形状が相互に異なる、請求項9に記載の筆記具。
【請求項15】
前記複数のレフィールの第二の部分の断面積の総計が該複数のレフィールを収容する収容部の断面積の50%以上である、請求項9に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具のレフィール及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒内に複数の筆記軸がその軸方向に移動可能に収容され、筆記軸の後端に操作体が連結され、各操作体が軸筒の後部外周面に形成された縦孔に軸方向に摺動可能に挿入されており、1つの操作体を前進させて該縦孔の前端側に保持させることにより、この操作体に連結された筆記軸の先端を軸筒の先端から突出した状態とする多芯筆記具において、該縦孔の後端は塞がれており、操作体は、縦孔に対してその径方向に出し入れ自在に構成されており、筆記軸は操作体に連結された状態で縦孔を径方向に通過して軸筒に対して出し入れ自在である筆記具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この筆記具では、操作体が、縦孔に対してその径方向に出し入れ自在となっているために、筆記軸の交換時に、縦孔から操作体及びそれに連結された筆記軸を取り出すことができ、且つ縦孔から操作体及び筆記軸を挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-240555号公報 (例えば、段落0011、段落0021参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、筆記具の筆記距離を伸ばすためにインクを収容するレフィールの容量(特に、インク収容部の断面積)を大きくすることが望まれる。
一方で、例えば、多色ボールペン等の筆記具では、レフィールを湾曲させて使用することも望まれる。
さらに、レフィールは高い生産性で生産できることが望ましい。
しかしながら、従来、高い生産性で生産することができ、かつ湾曲させて使用することができる容量の大きな筆記具のレフィール及び該レフィールを収容した筆記具を提供することは困難であった。
【0005】
本開示では、高い生産性で生産することができ、かつ湾曲させて使用することができる容量の大きな筆記具のレフィール及び該レフィールを収容した筆記具を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第一の態様の筆記具のレフィールは、可撓性を有する第一の部分と、該第一の部分の断面積よりも大きな断面積を有する第二の部分と、を含み、該第一の部分の断面の図心は該第二の部分の断面の図心から偏心し、該第一の部分及び第二の部分は一体に成形され、該第一の部分の一部はその外径が該第一の部分の他の部分の外径よりも小さく構成される。
【0007】
本発明に係る第二の態様の筆記具は、上記第一の態様のレフィールを複数含む。
【発明の効果】
【0008】
上記第一及び第二の態様の筆記具のレフィール及び該レフィールを収容した筆記具によれば、高い生産性で生産することができ、かつ湾曲させて使用することができる容量の大きな筆記具のレフィール及び該レフィールを収容した筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明に係る実施形態1の筆記具の外観を示す図
【
図2A】実施形態1の筆記具のレフィールを示す斜視図
【
図2B】実施形態1の筆記具のレフィールを示す正面図
【
図2C】実施形態1の筆記具のレフィールを示す側面図
【
図2D】実施形態1の筆記具のレフィールを示す背面図
【
図2E】実施形態1の筆記具のレフィールの後端部材を示す正面図
【
図3】実施形態1の筆記具において、一つのレフィールが突出した状態を示す図
【
図4A】別のレフィールの例(レフィール210)を示す斜視図
【
図4B】別のレフィールの例(レフィール210)を示す正面図
【
図4C】別のレフィールの例(レフィール210)を示す側面図
【
図4D】別のレフィールの例(レフィール210)を示す背面図
【
図5A】別のレフィールの例(レフィール220)を示す斜視図
【
図5B】別のレフィールの例(レフィール220)を示す正面図
【
図5C】別のレフィールの例(レフィール220)を示す側面図
【
図5D】別のレフィールの例(レフィール220)を示す背面図
【
図6A】別のレフィールの例(レフィール210、220)が取り付けられた筆記具の断面図
【
図6B】別のレフィールの例(レフィール210、220)が取り付けられた筆記具の断面図
【
図8A】別のレフィールの例(レフィール240、250)が取り付けられた実施形態2の筆記具の断面図
【
図8B】別のレフィールの例(レフィール240、250)が取り付けられた実施形態2の筆記具の断面図
【
図9A】別のレフィールの例(レフィール260、RF)が取り付けられた実施形態2の筆記具の断面図
【
図9B】別のレフィールの例(レフィール260、RF)が取り付けられた実施形態2の筆記具の断面図
【
図10A】別のレフィールの例(レフィール310、320)が取り付けられた断面四角形状の筆記具の断面図
【
図10B】別のレフィールの例(レフィール330)が取り付けられた断面四角形状の筆記具の断面図
【
図11A】別のレフィールの例(レフィール410)が取り付けられた断面六角形状の筆記具の断面図
【
図11B】別のレフィールの例(レフィール420、430、440)が取り付けられた断面六角形状の筆記具の断面図
【
図11C】別のレフィールの例(レフィール410、450)が取り付けられた断面六角形状の筆記具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、以下の説明では、筆記具の軸筒又はレフィールの長手方向の中心軸線を単に軸線といい、該軸線に沿って筆記チップが配置された方向を前、反対側を後という。
【0011】
<実施形態1>
図1A~Dは、実施形態1の筆記具(多芯筆記具1)を示す図であり、それぞれ、
図1A:正面図、
図1B:軸筒の軸線を含む切断面による断面図、
図1C:
図1BのA-A線に沿った断面図、
図1D:
図1BのB-B線に沿った断面図である。また、
図3は、レフィールの一つが前方へスライドされた筆記状態における、軸筒の軸線を含む切断面による断面図である。
多芯筆記具1は、いわゆる多色ボールペンと呼ばれる筆記具であり、軸筒12と、軸筒12の先端に螺合された先具11と、軸筒12の中に収納された複数(ここでは3つ)のレフィール2と、複数のレフィール2の何れかを選択的に出没させるスライド操作機構と、を含む。
【0012】
レフィール2を出没させるスライド操作機構は、軸筒12の後方に配置されるスライドガイド13a~13cと、当該スライドガイド13a~13cをそれぞれ後方側へ付勢する3つのスプリング(スプリング14aのみ図示)と、スライドガイド13a~13cが軸線方向にスライド可能に配される軸筒12に形成された3つのスリットと、を含む。
ユーザーがスライドガイド13aを前方へスライドすると、レフィール2の先端のチップTが先具の先端開口から突出し、スライドガイド13aが軸筒12の径方向内側へ移動して係止されて、多芯筆記具1が筆記可能な状態となる。更にスライドガイド13b、13cの何れかを前方へスライドさせると、スライドガイド13aと接触し、スライドガイド13aを軸筒12の径方向外側へ押し出すことで、スライドガイド13aの係止が解除される。係止が解除されたスライドガイド13aは、スプリング14aの付勢力により後方へとスライドして、収容状態へと戻る。
なお、複数のレフィール2の何れかを選択的に出没させる機構は、本実施例に示すスライド操作機構を含む構成の他、前軸と後軸とを相対的に周方向に回転させる回転操作により作動する回転操作機構等、任意の構成とすることができる。
【0013】
図2A~Dは、実施形態1の多芯筆記具1のレフィールを示す図であり、それぞれ、
図2A:斜視図、
図2B:正面図、
図2C:側面図、
図2D:背面図である。
レフィール2は、
使用する際に湾曲することができる可撓性を有する第一の部分21と、
第一の部分21の断面積よりも大きな断面積を有する第二の部分22と、
第二の部分22の後方に、第二の部分22の断面積よりもその断面積が小さく構成された接続部23と、を含み、
レフィール2の軸線と直交する第一の部分21の断面(断面図)の図心は、レフィール2の軸線と直交する第二の部分22の断面(断面図)の図心から偏心し、第一の部分21及び第二の部分22は一体に成形され、第一の部分の一部(小外径部211)はその外径が第一の部分21の他の部分の外径よりも小さく構成される。
【0014】
第一の部分21は、先端にチップTが取り付けられて内部にインクが充填される円筒状に形成される。
第一の部分21は、
図3で示されるように、スライド時に先端が中央(先具11の先端開口)へ向かって湾曲することが可能なように、第二の部分22よりも大きな可撓性を有している。また、レフィール2が従来よりも大きな容量を有するように第二の部分22は第一の部分21の断面積よりも大きな断面積を有するように構成される。また、高い生産性を有してレフィール2を生産することができるように第一の部分21及び第二の部分22は一体に成形される。本実施形態では、高い生産性を有する熱可塑性樹脂の射出成型により第一の部分21及び第二の部分22を一体に成形する。更に、レフィール2の可撓性を増大するように、第一の部分21には、その一部の外径が他の部分の外径よりも小さく構成された小外径部211が形成される。本実施形態では、小外径部211は、第一の部分21の後端部に形成される。このように構成すると、更に好適にレフィール2の可撓性を増大することができる。更に本実施形態では、軸線方向に連続して一体に成形された第一の部分21と第二の部分22との接合部に小外径部211が形成される。このように構成すると、更に好適にレフィール2の可撓性を増大することができる。
第一の部分21の断面形状は、本実施形態に示す円筒断面形状の他、例えば、多角形筒断面形状としてもよい。その場合の小外径部の外径は該多角形の外接円/内接円に基づいて定めるものとしてもよい。
また、本実施形態では、小外径部211は、その外径の全周が同一の半径を有して他の部分よりも小さく形成された円筒部であるものと例示しているが、レフィール2の他の部分と比較して大きな可撓性を有するもの(断面二次モーメントが他の箇所より小さいもの)であればよく、例えば周方向の一部(例えば、湾曲の外側(引張荷重)部分のみ凹部として形成してもよい。このように構成する場合には、薄厚部となる小外径部での強度低下を抑制して、射出成型金型からの取り出しや、繰り返し湾曲して使用される筆記に耐えるレフィールの強度を増大することができる。
【0015】
第二の部分22は、第一の部分21と連通し、内部にインクが充填される筒状の部材である。
第二の部分22の断面積は、レフィール2の軸線方向より、該軸線と直交する第一の部分21の断面(断面図)の図心と、レフィール2の軸線と直交する第二の部分22の断面(断面図)の図心とを見たときに、第一の部分21の断面の図心から、第二の部分22の断面の図心へと向かうに従って増大するように構成される。言い換えれば、第二の部分22の断面積は、第一の部分21の軸線から、第二の部分22の軸線へと向かうに従って増大するように構成される。
本実施形態では、第二の部分22はその断面形状が扇状であり(
図1C、1D参照)、扇形の中心角が120°である。これにより、第二の部分22の側面は平面を含んでおり、また、
図1C、1Dに示されるように、第二の部分22の側面の一つ(曲面)が軸筒12の内周壁に近接するように構成される。
なお、第二の部分22は、その容積を大きくすることができるように、第一の部分21の断面の図心から第二の部分22の断面の図心へと向かうに従って第二の部分22の断面積が増大して第一の部分21の断面積よりも大きな断面積となる任意の断面形状とすることができ、例えば多角形状等の断面形状とすることもできる。
【0016】
接続部23は、スライドガイド13a~13cと接続される部材であり、スライドガイド13a~13cの先端側に形成された嵌合突起を内部に受け入れて嵌合する筒状の部材である。また、接続部23は、第二の部分22に嵌合する後端部材E1として形成される。
図2Eは、後端部材E1を示す正面図である。
後端部材E1は、第二の部分22の後端開口内に挿入されて嵌合される嵌合部E11と、フランジ部E12と、接続部23とを含む。
嵌合部E11は、その外形断面形状が、第二の部分22の後端開口の断面形状と略同一に形成され、第二の部分22の後端部に嵌合して組み付けられる。
フランジ部E12は、その外形断面形状が、第二の部分22の後端面の外形断面形状と略同一に形成され、嵌合部E11を第二の部分22の後端開口内に挿入した際に、第二の部分22の後端面と当接する。
本実施形態では、第一の部分21と射出成型によって一体成型された第二の部分22の大きく開口した後端開口内に後方からインク及びインクフォロワ―を充填した後に、後端部材E1を後方から第二の部分22に組み付けることで第二の部分22の後端開口を略閉塞することができるためレフィール2の生産性を向上させることができる。
【0017】
多芯筆記具1は、上記説明したレフィール2を3つ収容した(その構成が同一であるレフィールを複数含む)、いわゆる3色ボールペンとして構成される。
第二の部分22の断面形状は、各々中心角が120°の扇形として構成され、
図1C、1Dに示されるように、複数のレフィール2が軸筒12内に配置された際に、第二の部分22の側面が相互に近接するように構成される。
【0018】
本実施形態のレフィール2を複数含む多芯筆記具1によれば、レフィール2が第二の部分22を有することにより、各レフィール2の容量を大きくすることができ、筆記距離を長くすることができる。特にゲルインクのボールペンでは、紙へのインクの吸収率が高いため筆記距離が短くなる傾向があるが、インク容量の増大により、各レフィール2の筆記距離を長くすることができる。
本実施形態のレフィール2を複数含む多芯筆記具1では、第二の部分22が軸筒12内の収容部を等分するように配置される構成により、その収容部を効率良く利用することができる。即ち、
図1C、1Dからも理解されるように、軸筒12の収容部である内部空間(その断面)を効率良く利用することができ、筆記具の限られた収容部内で、レフィールの容量を最大化することができる。
なお、軸筒内に配された複数のレフィールの第二の部分の断面積の総計が、軸筒(複数のレフィールを収容する収容部)の断面積の少なくとも50%以上となるように構成することが好ましい。
【0019】
本実施形態のレフィール2を複数含む多芯筆記具1では、各レフィール2が軸筒12内に配された状態で、第一の部分21の各々が、軸筒12の軸線の近くに配置されるように、第一の部分21と第二の部分22の接合部分において、第一の部分21の断面の図心が第二の部分22の断面の図心から偏心して配置される。これにより、レフィール2を突出させるためのスライド操作時に、その先端が軸筒12の軸線(先具11の先端開口)へ向かって湾曲する際の湾曲量や湾曲の曲率を低減することができる。
本実施形態のレフィール2では、容量を増大した第二の部分22を有するため、従来の全長に渡って円筒形状に形成されて可撓性を有するレフィールと比較すると、第二の部分22の可撓性は低くなる。第二の部分22の可撓性の低下を補うため、
図3からも理解されるように、第一の部分21の部分では、比較的短い長さで、軸筒12の軸線(先具11の先端開口)へ向かうように大きく湾曲することとなって、湾曲の曲率が大きくなる傾向となり、部材にかかるストレスが大きくなる傾向がある。
図1Cからも理解されるように、本実施形態のレフィール2では、第一の部分21を軸筒12の軸線(先具11の先端開口)の近くに配置することで、レフィール2が軸筒12の軸線(先具11の先端開口)へ向かって湾曲する際の湾曲量を低減(曲率を小さく)するように構成される。
【0020】
本実施形態のレフィール2は、既存の多色ボールペンのスライドガイドと同じ配置位置となるように接続部23の配置位置が調整された後端部材E1とすること、及び、既存の多色ボールペンの軸筒内に納まるように第二の部分22等を構成することにより、既存の多色ボールペンに組み付けて使用することもできるように構成される。このように構成すると、本実施形態のレフィール2をユーザーが保有する既存の筆記具に組み付けて使用することもできるため、ユーザーの利便性が高い。
【0021】
なお、本実施形態では、その構成が同一である複数のレフィール2を含む多芯筆記具1を例示したが、異なる複数の構成を有するレフィールを複数含む多芯筆記具としてもよい。
図4A~Dは、上述の構成とは異なる他の構成のレフィールの例(レフィール210)を示す図であり、それぞれ、
図4A:斜視図、
図4B:正面図、
図4C:側面図、
図4D:背面図である。また、
図5A~Dは、さらに他の構成のレフィール(レフィール220)の例を示す図であり、それぞれ、
図5A:斜視図、
図5B:正面図、
図5C:側面図、
図5D:背面図である。
レフィール210とレフィール220の第二の部分以外の構成については、上述のレフィール2と同様の構成とすることができるため、同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。なお、接続部23の外形断面形状は、上述のレフィール2と同様に、第二の部分212若しくは第二の部分222の外形断面形状に合わせた形状として形成される。
レフィール210の第二の部分212は、中心角が180°の略扇状の断面形状に形成される。後に詳述するように、第一の部分21を扇形断面形状の中心に寄せて配置するために、第二の部分212の略扇形断面形状の中心部にはその図心から離間する方向へ凸出する凸部が形成される。
レフィール220の第二の部分222は、中心角が70°の略扇状の断面形状に形成される。後に詳述するように、レフィール220の第二の部分222の略扇形断面形状の半径には、レフィール210の第二の部分212の凸部と対向する凹部が形成される。
【0022】
図6Aと、
図6Bは、レフィール210を1つと、レフィール220を2つ組み付けた多芯筆記具の断面図であり、
図1C、
図1Dに対応する図である。レフィール以外の多芯筆記具としての構成は、上述の多芯筆記具1と同様である。
このように、複数のレフィールの第二の部分の断面形状が相互に異なる、即ち、容量の異なるレフィールを用いることで、例えば、使用頻度の高い黒色インクの容量をより多くなるように構成した3色ボールペンを提供すること等が可能となる。
【0023】
図6A、
図6Bに示されるように、レフィール210の側面とレフィール220の側面との当接位置は、軸筒12の断面の軸線を通る中央線CL上に配置されず、中央線CLからオフセットして配置される。
このように構成すると、断面形状が異なる複数のレフィール210,220の第一の部分21の各々を、軸筒12の軸線の近く且つ軸線を中心とする同一円上に配置することができる。断面形状が異なる複数のレフィール210,220の第一の部分21の各々を、軸筒12の軸線を中心とする同一円上に配置する場合には、該第一の部分21の各々の湾曲に伴うストレスを均一にすることができる。このため、複数のレフィールの軸筒12の軸線から最も離間したレフィールの第一の部分21に負荷される湾曲に伴うストレスが他のレフィールに負荷されるストレスよりも過大となることを防ぐことができる。
また、レフィール210では、第一の部分21を軸筒12の軸線の近くに配置するために、第二の部分212の平面状の側面の中央部を凸部として該平面に形成された側面を超えて外方(断面図の図心から離間する方向)に凸出(
図6A、
図6Bで下部側に膨出)させた断面形状として形成する。また、レフィール220の側面の軸筒12内でレフィール210の凸部に対向する部分には凹部が形成される。この場合には、該凹部はレフィール220の第二の部分222の断面形状を左右対称とするために、レフィール210の凸部と対向する面ではない反対側の側面にも形成するとよい。このように構成すると、一体形成されたレフィール220の第一の部分21と第二の部分222とを共通部品により構成することができる。
図6Aに示す例では、各レフィールの第一の部分21が、軸筒12の軸線の近くに相互に近接して配置され、各第一の部分21の断面の図心を、軸筒12の軸線を中心とする半径1.95mmの同一円上に配置する。
なお、
図6Bに示す例では、既存の構成(中心角120°等分配置)の多芯筆記具に組み付けるために、後端部材は、左右で異なる部材(多芯筆記具1への取付位置に指定がある部材)である、後端部材E2aと、後端部材E2bが組み付けられる。この場合には、レフィール2を既存の構成(中心角120°等分配置)の多芯筆記具に取り付けて使用することができるため好適である。一方、他の実施形態では、後端部材の接続部23を
図6Aに示す第一の部分21の配置(中心角125°,110°配置)と同一の配置とした多芯筆記具とすることで、後端部材を含むレフィールの全体を共通部品(多芯筆記具への取付位置に指定がないレフィール)により構成するものとしてもよい。この場合には、ユーザーがより容易に取付位置の指定がない共通部品で構成されたレフィールを多芯筆記具に取り付けることができる。
また、
図6A、
図6Bに示す例では、レフィール220を共通部品で構成するために、配置された2つのレフィール220の間にV字状の隙間が空く配置となっているが、更に他の実施形態では、共通部品により構成せずに、左右で異なる部品(多芯筆記具への取付位置に指定がある部品)で構成することと引き換えに、V字状の隙間が生じないように構成するものとしてもよい。
【0024】
実施形態1では、レフィールを3つ含む多芯筆記具を例として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、レフィールを2つ含む多芯筆記具であってもよいし、レフィールを4つ以上含む多芯筆記具であってもよい。
以下の実施形態2では、レフィールを2つ含む多芯筆記具について説明する。
【0025】
<実施形態2>
図7A~Dは、実施形態2の筆記具(多芯筆記具200)を示す図であり、それぞれ、
図7A:正面図、
図7B:軸筒の軸線を含む切断面による断面図、
図7C:
図7BのA-A線に沿った断面図、
図7D:
図7BのB-B線に沿った断面図である。
多芯筆記具200は、実施形態1と同様に、いわゆる多色ボールペンと呼ばれる筆記具であり、軸筒12dと、軸筒12dの先端に螺合された先具11と、軸筒12dの中に収納された2つのレフィール230と、2つのレフィール2の何れかを選択的に出没させるスライド操作機構と、を備えている。
なお、実施形態1と同様の構成については実施形態1と同じ符号を使用し、ここでの説明を簡略化若しくは省略する。
【0026】
レフィール230は、
図7C、
図7Dに示されるように、第二の部分の断面形状が、中心角が180°の扇形(即ち半円形状)となるように構成されている。多芯筆記具200では、上記の構成を有するレフィール230が2つ使用されることで、
図7C、
図7Dに示されるように、軸筒12dの内部空間が無駄なく使用され、筆記具という限られた大きさの中で、レフィールの容量を最大化することができる。
【0027】
図8Aと、
図8Bは、レフィールの容量を相違させた例を示す、レフィール240とレフィール250を取り付けた状態の多芯筆記具の断面図である。なお、レフィール以外の多芯筆記具の構成は、実施形態2の多芯筆記具200と同様である。
レフィール240は、第二の部分の断面形状が、中心角が240°の扇形となるように構成され、レフィール250は、第二の部分の断面形状が、中心角が120°の扇形となるように構成される。なお、これらは例示であり、任意の中心角の扇形の断面形状としてもよい。
図9Aと、
図9Bは、第二の部分の断面形状が、中心角が270°の扇形となるように構成されたレフィール260と、第二の部分を有しない従来の全長に渡って円筒形状に形成されたレフィールRFとを組み合わせた例を示し、レフィール260とレフィールRFを取り付けた状態の多芯筆記具の断面図である。なお、レフィール以外の多芯筆記具の構成は、実施形態2の多芯筆記具200と同様である。
【0028】
なお、上記各実施形態では、断面形状が円形の多芯筆記具を例として説明しているが、更に他の実施形態では、任意の断面形状を有する多芯筆記具としてもよい。
図10A、
図10Bは、このような多芯筆記具の一例として、断面形状が四角形の多芯筆記具の例を示す。また、
図11A、
図11B、
図11Cは、断面形状が六角形の多芯筆記具の例を示す。
図10A、
図10B、
図11A、
図11B、
図11Cに示す例では、レフィールの第二の部分が多芯筆記具の収容部の内周壁面に沿う外形形状を有して構成されることにより各々の多芯筆記具においてインクの収容量を増大するように構成される。
【0029】
なお、上記各実施形態では、多芯筆記具として多色ボールペンを例として説明したが、更に他の実施形態では、例えば、シャープペンシルの機能を有するシャープペンシルレフィールを更に含む多機能ボールペン等としてもよい。
また、上記各実施形態のレフィールが有するインクについても、上記各実施形態ではゲルインクボールペンレフィールを例として説明したが、更に他の実施形態では、例えば、水性ボールペンレフィール、油性ボールペンレフィール、マーキングペンレフィールなど、更に他のインクを含むレフィールとしてもよい。
また、上記各実施形態では、筆記具として多芯筆記具を例示したが、更に他の実施形態では、上記各実施形態で開示したレフィールを1つのみ含む筆記具としてもよい。この場合には、長い筆記距離及び高い生産性を有しながら、可撓性を有する第一の部分を好適に湾曲させることができる優れたレフィールにより筆記具を構成することができるから、高い自由度で筆記チップの配置位置及び軸筒の断面形状等のデザインがなされた優れた筆記具を提供することができる。
【0030】
また、上記各実施形態では、接続部が後端部材として第一及び第二の部分とは別体として形成されるものと例示したが、他の実施形態では、上記各実施形態で開示したレフィールを更に他の製造方法により一体として製造してもよい。例えば、ブロー成形や、3Dプリンター等の他の製造方法を利用して上記各実施形態で開示したレフィールの全体を一体として形成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1...多芯筆記具(筆記具)
2...レフィール(筆記具のレフィール)
21...第一の部分
211...小外径部
22...第二の部分
23...接続部