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特開2023-163728二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法
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  • 特開-二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163728
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074818
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】権田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 宏和
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AA04
5H017BB01
5H017BB03
5H017BB06
5H017BB12
5H017CC01
5H017EE06
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH06
5H017HH07
5H017HH08
5H017HH10
(57)【要約】
【課題】耐薬品性を向上させて充放電サイクル特性の低下を防止し、二次電池の集電体の剥離防止、厚さ方向の導電性の向上、及び軽量化に資することのできる安価な二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、導電材料5質量部以上35質量部以下とを含有する成形材料1より相対結晶化度が80%以上の集電体用導電性樹脂フィルム4に成形され、導電材料が、組成質量比率でカーボンナノチューブ30質量%以上99質量%以下と、カーボンナノチューブ以外の導電性材料1質量%以上70質量%以下とからなる。耐薬品性等に優れ、低吸水率のポリアリーレンエーテルケトン樹脂で集電体用導電性樹脂フィルム4を製造するので、集電体用導電性樹脂フィルム4内に電解質成分が浸透することがなく、充放電サイクル特性が低下するおそれを排除できる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、導電材料5質量部以上35質量部以下とを含有する成形材料より相対結晶化度が80%以上の集電体用導電性樹脂フィルムに成形され、
導電材料が、組成質量比率でカーボンナノチューブ30質量%以上99質量%以下と、カーボンナノチューブ以外の導電性材料1質量%以上70質量%以下とからなることを特徴とする二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム。
【請求項2】
厚さが10μm以上500μm以下、JIS K 7112 A法に準拠して測定した場合の比重が1.25以上1.60以下、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cm以下、N-メチル-2-ピロリドンと電解液に浸漬させた場合の質量変化率が2.0%以下である請求項1記載の二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム。
【請求項3】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂の少なくともいずれかである請求項1又は2記載の二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、導電材料5質量部以上35質量部以下とを含有し、この導電材料が、組成質量比率でカーボンナノチューブ30質量%以上99質量%以下と、カーボンナノチューブ以外の導電性材料1質量%以上70質量%以下とからなる成形材料を溶融混練し、
成形材料をダイスにより集電体用導電性樹脂フィルムに押出成形して圧着ロールと冷却ロールの間に挟んで冷却することにより、集電体用導電性樹脂フィルムの相対結晶化度を80%以上とすることを特徴とする二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
冷却した集電体用導電性樹脂フィルムを加熱圧縮成形するとともに、この集電体用導電性樹脂フィルムの加熱温度を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満とし、集電体用導電性樹脂フィルムに加える圧力を、集電体用導電性樹脂フィルムの投影面積に対して0.5kgf/cm以上100kgf/cm以下とする請求項4記載の二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池や全固体電池等に使用される二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ニッケル‐カドミウム蓄電池、ニッケル‐水素蓄電池、ニッケル‐亜鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、及び全固体電池等の充放電可能な高性能の二次電池が脚光を浴びているが、これらの高性能な二次電池の中でも、特にリチウムイオン二次電池と全固体電池が注目されている。リチウムイオン二次電池は、図示しないが、正極と負極、セパレータ、電解質、及び容器等から構成されている。これらのうち、正極(正極板)は、集電板及びその上部に形成された正極活物質を含有した正極合剤より形成される。これに対し、負極(負極板)は、集電板及びその両面に形成された負極合剤よりなる。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池や全固体電池は、エネルギー密度や作動電圧が高く、ライフサイクルが長く、しかも、自己放電性が低いという優れた特徴を有しているので、様々な分野で利用されている。例えば携帯電話、多機能携帯電話、タブレット端末等からなるモバイル情報機器、カメラ、ビデオカメラ、携帯型デジタル音楽プレーヤー等の電子機器、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等からなる自動車、航空機等の電源として多方面で利用されている。
【0004】
ところで、モバイル情報機器や自動車等に使用されるリチウムイオン二次電池や全固体電池には、高エネルギー密度化が要求されるが、この高エネルギー密度化を実現する手法として、電池の軽量化があげられる。この電池の軽量化には、様々な方法が検討されているが、その一つとして、導電性樹脂フィルムの使用があげられる。すなわち、リチウムイオン二次電池の正極と負極の集電体には金属箔が使用されるが、この金属箔の代わりに、金属よりも比重の小さい導電性樹脂フィルムを使用すれば、電池の軽量化に資することができる。
【0005】
そこで、従来においては、二次電池の軽量化を図るため、様々な導電性樹脂フィルムが検討されている(特許文献1、2、3参照)。例えば、特許文献1には、環状オレフィン樹脂、導電性フィラーと共役ジエンゴムあるいは環状オレフィン樹脂、芳香族ビニル‐共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、導電性フィラーと共役ジエンゴムからなる導電性樹脂フィルムが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリエーテルエーテルケトン、及びテトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の樹脂と、ケッチェンブラック、及び多層カーボンナノチューブよりなる群から選択される少なくとも一種の導電性フィラーを含有する導電性樹脂層を有する二次電池用集電体が提案されている。また、特許文献3には、イミド基含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる導電性樹脂層(第一の導電性層)と、イミド基非含有樹脂を含む基材に導電性フィラーが添加されてなる導電性樹脂層及び金属層(第二の導電性層)とからなる双極型リチウムイオン二次電池用の集電体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010‐77236号公報
【特許文献2】特開2012‐248430号公報
【特許文献3】特開2013‐26192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の導電性樹脂フィルムの場合には、耐薬品性に問題があるので、係る導電性樹脂フィルムをリチウムイオン二次電池の集電体として使用すると、導電性樹脂フィルムの内部に電解質成分が浸透し、充放電サイクル特性が低下するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2の二次電池用の集電体の場合には、導電性フィラー成分にケッチェンブラック、及び多層カーボンナノチューブが使用されるが、ケッチェンブラックを導電性フィラー成分として使用すると、ケッチェンブラックを樹脂中に多量に添加することができないので、二次電池用集電体の高導電化を図ることが困難である。また、ケッチェンブラックを添加した集電板は、脆性なので、正極活物質あるいは負極活物質の塗工時、又は二次電池への組立時に破損するおそれがある。
【0010】
また、多層カーボンナノチューブを導電性フィラーとして使用した混合原料により製造される導電性樹脂層は、多層カーボンナノチューブが面方向に配向するため、面方向導電性には優れるものの、厚さ方向の導電性に劣るという問題が生じる。また、樹脂成分にテトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体を採用すると、樹脂の比重が2.1以上2.2以下と高くなるので、集電体の軽量化に資することができないという大きな問題が生じる。さらに、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体は、フッ素樹脂であるため、溶融成形に特殊な鋼材や設備が必要となり、結果として、集電体のコストが増大することとなる。
【0011】
また、特許文献3の双極型リチウムイオン二次電池用の集電体の場合、二種類の異なる樹脂から構成された多層構造で、二種類の樹脂の線膨張係数が異なるため、繰り返しの充放電中の発熱で生じる導電性樹脂の伸縮率の差により、第一、第二の導電性層間で集電体の剥離を招くおそれがある。さらに、係る集電体は、第一、第二の導電性層で使用されている樹脂の吸水率が相違するため、製造後の吸水による膨張率の差でカールしたり、第一、第二の導電性層間で剥離するおそれがある。
【0012】
本発明は上記に鑑みなされたもので、耐薬品性を向上させて充放電サイクル特性の低下を防止し、二次電池の集電体の剥離防止、厚さ方向の導電性の向上、及び軽量化に資することのできる安価な二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意研究した結果、熱可塑性樹脂中で最も耐熱性に優れ、耐薬品性や機械的特性にも優れるポリアリーレンエーテルケトン樹脂と、導電材料中最も導電性に優れる軽量のカーボンナノチューブ、及びこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料との混合に着目した。そして、カーボンナノチューブ含有の成形材料により導電性樹脂フィルムを成形した場合、カーボンナノチューブが押出方向に配向するので、樹脂フィルムの厚さ方向に良好な導電性を得ることができないが、カーボンナノチューブ以外の導電性材料を添加すれば、厚さ方向の導電性を向上させることができるのを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、導電材料5質量部以上35質量部以下とを含有する成形材料より相対結晶化度が80%以上の集電体用導電性樹脂フィルムに成形され、
導電材料が、組成質量比率でカーボンナノチューブ30質量%以上99質量%以下と、カーボンナノチューブ以外の導電性材料1質量%以上70質量%以下とからなることを特徴としている。
【0015】
なお、厚さが10μm以上500μm以下、JIS K 7112 A法に準拠して測定した場合の比重が1.25以上1.60以下、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cm以下、N-メチル-2-ピロリドンと電解液に浸漬させた場合の質量変化率が2.0%以下とすることができる。
【0016】
また、厚さが25μm以上353μm以下、JIS K 7112 A法に準拠して測定した場合の比重が1.33以上1.38以下、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が97mΩ・cm以上732mΩ・cm以下、N-メチル-2-ピロリドンと電解液に浸漬させた場合の質量変化率が0.0%以上2.0%以下とすることもできる。
【0017】
また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂の少なくともいずれかであると良い。
【0018】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2に記載された二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、導電材料5質量部以上35質量部以下とを含有し、この導電材料が、組成質量比率でカーボンナノチューブ30質量%以上99質量%以下と、カーボンナノチューブ以外の導電性材料1質量%以上70質量%以下とからなる成形材料を溶融混練し、
成形材料をダイスにより集電体用導電性樹脂フィルムに押出成形して圧着ロールと冷却ロールの間に挟んで冷却することにより、集電体用導電性樹脂フィルムの相対結晶化度を80%以上とすることを特徴としている。
【0019】
なお、冷却した集電体用導電性樹脂フィルムを加熱圧縮成形するとともに、この集電体用導電性樹脂フィルムの加熱温度を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満とし、集電体用導電性樹脂フィルムに加える圧力を、集電体用導電性樹脂フィルムの投影面積に対して0.5kgf/cm以上100kgf/cm以下とすることが好ましい。
【0020】
ここで、特許請求の範囲における成形材料は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、及びカーボンナノチューブとカーボンナノチューブ以外の導電性材料の混合物とからなる導電材料を溶融混練することで調製することができる。成形材料とポリアリーレンエーテルケトン樹脂とは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の熱分解温度未満で溶融混練することができる。また、カーボンナノチューブは、その特性を活かすため、外径や長さの異なる複数種を混合して使用しても良い。
【0021】
集電体用導電性樹脂フィルムは、一軸延伸タイプ、二軸延伸タイプ、無延伸タイプのいずれでも良い。この集電体用導電性樹脂フィルムには、薄い集電体用導電性樹脂フィルムの他、厚い集電体用導電性樹脂シートが含まれる。さらに、本発明に係る二次電池には、少なくともニッケル‐カドミウム蓄電池、ニッケル‐水素蓄電池、ニッケル‐亜鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、双極型リチウムイオン二次電池、全固体電池等が含まれる。
【0022】
本発明によれば、成形材料として、機械的強度、軽量性や耐薬品性等に優れ、低吸水率のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を用いて集電体用導電性樹脂フィルムを製造するので、例え集電体用導電性樹脂フィルムを集電体として使用しても、集電体用導電性樹脂フィルムの内部に電解質成分が浸透することが少なく、充放電サイクル特性が低下するおそれを払拭することができる。また、成形材料として、カーボンナノチューブの他、このカーボンナノチューブ以外の導電性材料をも用いるので、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ方向の導電性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、集電体用導電性樹脂フィルムの耐薬品性を向上させて充放電サイクル特性の低下を防止することができるという効果がある。また、二次電池の集電体の剥離防止、厚さ方向の導電性の向上、及び軽量化に資することができ、集電体用導電性樹脂フィルムを安価に提供することができるという効果がある。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さが10μm以上500μm以下なので、集電体用導電性樹脂フィルムの引張強度が著しく低下するのを防止したり、集電体用導電性樹脂フィルムを二次電池用集電体として使用しても、軽量化に支障を来すことがない。また、集電体用導電性樹脂フィルムのJIS K 7112 A法に準拠して測定した場合の比重が1.25以上1.60以下なので、集電体用導電性樹脂フィルム中にボイドやクラックの発生するおそれを払拭したり、軽量化に資することができる。
【0025】
また、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cm以下なので、エネルギー密度の低下を抑制することができ、集電体用導電性樹脂フィルムが脆くなるのを防止することができる。また、N-メチル-2-ピロリドンと電解液に浸漬させた場合の質量変化率が2.0%以下なので、優れた耐薬品性を得ることが可能となる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂の少なくともいずれかであるので、優れた機械的強度、軽量性、耐加水分解性、耐熱性、耐薬品性等を得ることができる他、易入手性、製造コストの削減、及び集電体用導電性樹脂フィルムの成形性を向上させることが可能となる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、集電体用導電性樹脂フィルムを溶融押出成形法により製造するので、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上を図ることができ、製造設備の簡略化も期待できる。また、集電体用導電性樹脂フィルムの成形に特殊な鋼材や設備を特に必要としないので、集電体の製造コストの削減が期待できる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、集電体用導電性樹脂フィルムを加熱圧縮成形するので、集電体用導電性樹脂フィルムの抵抗値を低くして導電性を向上させ、導電材料の使用量を削減してコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法の実施形態における溶融混練機を模式的に示す説明図である。
図2】本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法の実施形態における製造装置を模式的に示す説明図である。
図3】本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法の実施例と比較例における集電体用導電性樹脂フィルムの導電性の測定状態を模式的に示す断面説明図である。
図4】本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルムの製造方法の実施例と比較例における集電体用導電性樹脂フィルムの導電性の測定状態を模式的に示す部分平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム4は、図1ないし図4に示すように、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と導電材料3とを含有する成形材料1により相対結晶化度が80%以上の導電性樹脂フィルムに成形され、導電材料3が、面方向の導電性に資するカーボンナノチューブと、厚さ方向の導電性に資するカーボンナノチューブ以外の導電性材料とからなることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0031】
成形材料1は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に対して導電材料3が5質量部以上35質量部以下、好ましくは8質量部以上30質量部以下、より好ましくは10質量部以上25質量部以下添加されて調製される。これは、導電材料3の添加量が5質量部未満の場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定したときの抵抗値が1000mΩ・cm以下の導電性を得ることができないので、集電体用導電性樹脂フィルム4に充分な導電性を付与することができず、二次電池の集電体として使用することが困難になるからである。
【0032】
これに対し、導電材料3の添加量が35質量部を越える場合には、成形材料1の溶融粘度が高くなって溶融流動性の低下を招いたり、溶融伸びの低下に伴い集電体用導電性樹脂フィルム4の加工性が低下して孔が開くからである。加えて、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2中に導電材料3を配合することが困難になるからである。さらに、導電材料3の添加量が35質量部を越える場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4から導電材料3が分離して目ヤニの発生原因となり、集電体用導電性樹脂フィルム4の品質低下を招くからである。
【0033】
この点について詳しく説明すると、集電体用導電性樹脂フィルム4をフィルム成形する場合、図2に示す成形用のダイス23の出口(ダイスリップともいう)に目ヤニと呼ばれる多量の付着物が付着して堆積することがある。係る目ヤニが堆積すると、集電体用導電性樹脂フィルム4にダイスラインが生じたり、目ヤニがダイス出口から離れて集電体用導電性樹脂フィルム4に混入し、その結果、集電体用導電性樹脂フィルム4の品質低下を招くのである。
【0034】
導電材料3は、カーボンナノチューブと、このカーボンナノチューブ以外の導電性材料との混合物に調製され、カーボンナノチューブ以外の導電性材料が集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向における導電性を向上させるよう機能する。これらカーボンナノチューブとカーボンナノチューブ以外の材料の組成質量比率は、カーボンナノチューブが30質量%以上99質量%以下、カーボンナノチューブ以外の導電性材料が1質量%以上70質量%以下、好ましくはカーボンナノチューブが40質量%以上95質量%以下、より好ましくは50質量%以上90質量%以下、さらに好ましくはカーボンナノチューブが60質量%以上80質量%以下が良い。この組成質量範囲によれば、集電体用導電性樹脂フィルム4の耐薬品性を低下させることなく、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向に高い導電性を得ることができる。
【0035】
カーボンナノチューブの組成重量比率が30質量%以上なのは、30質量%未満の場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4に充分な導電性を付与することができず、二次電池の集電体として使用することが困難になるからである。これに対し、カーボンナノチューブの組成質量比率が99質量%以下なのは、99質量%を越える場合には、カーボンナノチューブが押出方向に配向するため、厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cmを越え、集電体用導電性樹脂フィルム4に充分な導電性を付与することができず、二次電池の集電体として使用することが困難になるからである。
【0036】
このような成形材料1には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2や導電材料3の他、本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルペンテン(PMP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂等のポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピル共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)樹脂、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂等のフッ素樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、脂肪族ポリケトン樹脂等の熱可塑性樹脂を選択的に添加することができる。
【0037】
成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲において、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2、導電材料3、及び上記熱可塑性樹脂の他、所定の添加物を選択的に添加することができる。具体的には、結晶核剤、耐衝撃改良剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、耐熱向上剤、無機充填剤、有機充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、ナノファイバー等を選択的に添加することができる。
【0038】
成形材料1のポリアリーレンエーテルケトン樹脂2は、アリーレン基、エーテル基、及びカルボニル基からなる結晶性の熱可塑性樹脂であり、例えば特許5709878号公報や特許第5847522号公報、あるいは文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕等に記載された樹脂があげられ、機械的強度、軽量性、低誘電特性、耐加水分解性、耐熱性、耐薬品性等に優れるという特徴を有する。
【0039】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の具体例としては、例えば化学式(1)で表される化学構造式を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)樹脂、化学式(3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、化学式(4)の化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、あるいは化学式(5)の化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等があげられる。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
【化4】
【0044】
【化5】
【0045】
これらポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の中では、易入手性、コスト、及び集電体用導電性樹脂フィルム4の成形性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂の少なくともいずれかが好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:Victrex Powderシリーズ、Victrex Granulesシリーズ、ダイスセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイア PEEKシリーズがあげられる。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂の具体例としては、アルケマ社製の製品名:KEPSTANシリーズがあげられる。
【0046】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2は、1種単独でも良いし、2種以上を混合して使用しても良い。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2は、化学式(1)~(5)で表される化学構造を2つ以上有する共重合体でも良い。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2は、通常、粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕に記載された製法があげられる。
【0047】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の温度375℃、荷重50kgfの条件下で直径1.0mm×長さ10mmのダイスを用い、フローテスターで測定した温度375℃における見掛けのせん断粘度は、成形性向上の観点から、1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下、好ましくは5×10Pa・s以上5×10Pa・s以下、より好ましくは1×10Pa・s以上2×10Pa・s以下が良い。これは、1×10Pa・s未満の場合には、見掛けのせん断粘度が低くなり、溶融張力の低下を招き、成形材料1の成形が困難となるので、注意する必要があるからである。また、見掛けのせん断粘度が1×10Pa・sを越える場合には、溶融粘度が高くなったり、溶融伸びが低下し、成形材料1の成形が困難になるので、注意する必要がある。
【0048】
成形材料1のカーボンナノチューブは、円筒形の中空繊維構造に構成され、集電体用導電性樹脂フィルム4の面方向の導電性を向上させたり、軽量化に資するよう機能する。このカーボンナノチューブには、グラファイトの一枚面を巻いた構造の単層カーボンナノチューブ、二層以上で巻いた多層カーボンナノチューブの種類がある。カーボンナノチューブは、その特性を活かすため、外径や長さの異なる複数種のタイプを混合して使用することができる。
【0049】
これら単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブ以外のカーボンナノチューブには、非特許文献1〔カーボンナノチューブの材料化学入門 コロナ社 齋藤弥八編 P7~P9〕に記載のナノグラファイバー、竹形ナノチューブ、カップ積み上げ型ナノチューブ等が該当する。また、非特許文献1〔カーボンナノチューブの材料化学入門 コロナ社 齋藤弥八編 P9~P11〕に記載のナンホーン、ナノコーン、マイクロコイル、及びナノコイル等のカーボンナノチューブの類似物も該当する。これらカーボンナノチューブやその類似物の中では、コストの観点から、多層カーボンナノチューブが最適である。
【0050】
カーボンナノチューブの繊維径(外径)は、特に制限されるものではないが、0.5nm以上200nm以下が望ましい。このようなカーボンナノチューブは、公知の製造方法により製造することができる。例えば、非特許文献1〔カーボンナノチューブの材料化学入門 コロナ社 齋藤弥八編 P11~P12〕に記載の(1)アーク放電法、(2)レーザー蒸発法、(3)基板成長法、担持触媒法、流動触媒法、HiPco法等の化学気相成長法(又は熱分解法)等により製造することができる。また、eDPIS法やスパーグロス法等により製造することも可能である。
【0051】
カーボンナノチューブの具体例としては、例えばスパーグロス法CNT〔独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構製〕、eDIPS‐CNT〔独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構製〕、SWNTシリーズ〔名城ナノカーボン社製:商品名〕、VGCFシリーズ〔昭和電工社製:商品名〕、FloTubeシリーズ〔CNano Technology社製:商品名〕、AMC〔宇部興産社製:商品名〕、Nanocyl NC7000シリーズ〔Nanocyl社製:商品名〕、Baytubes〔BAYER社製:商品名〕、GRAPHISTRENGTH〔アルケマ社製:商品名〕、MWNT7〔保土ヶ谷化学社製:商品名〕、K-Nanosシリーズ〔Kumho社製〕、ハイペリオンCNT〔Hypeprion Catalysis International社製:商品名〕等が該当する。
【0052】
成形材料1のカーボンナノチューブ以外の導電性材料は、金属系あるいは炭素系の導電性材料からなり、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向の導電性を向上させるよう機能する。金属系の導電性材料としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、クロム、ニオブ、クロム、チタン、スズ、バナジウム及びこれらを2種類以上含む合金、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物等があげられる。
【0053】
炭素系の導電性材料としては、例えばファーネスブラック(オイルファーネスブラック及びガスファーネスブラック)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、カーボンナノファイバー、フラーレン、アモルファスカーボン、パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、鱗片状黒鉛を濃硫酸等で化学処理した後に加熱して得られる膨張黒鉛、膨張黒鉛を高温で加熱処理して得られる膨張化黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛があげられる。
【0054】
カーボンナノチューブ以外の導電性材料の形状は、板状、鱗片状、多面体状、球体状、楕円体状等いずれの形状でも構わないが、多面体状、球体状、楕円体状が厚さ方向の導電性を向上できるため好ましい。また、粉体状、顆粒状、塊状、繊維状等を特に問うものではない。また、1種類を単独で使用したり、あるいは2種以上を併用しても良い。
【0055】
カーボンナノチューブ以外の導電性材料の粒子径は、平均粒子径で0.1μm以上10.0μm以下、好ましくは0.5μm以上8.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上8.0μmが良い。これは、平均粒子径が0.1μm未満の場合は、導電性材料の二次凝集が激しく、分散不良を招くため、均一な厚さ方向の導電性が得られないという理由に基づく。また、成形材料1の溶融粘度が増大し、薄膜の集電体用導電性樹脂フィルム4が得られないという理由に基づく。これに対し、導電性材料の平均粒子径が10.0μmを越える場合は、目ヤニが発生したり、機械的強度が低下して集電体用導電性樹脂フィルム4に破断、ワレ、穴あきが発生したりし、集電体用導電性樹脂フィルム4の製造が困難になるという理由に基づく。
【0056】
さらに、導電材料3は、集電体用導電性樹脂フィルム4の特性を損なわない範囲において、例えばシランカップリング剤〔ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、イミダゾールシラン等〕、チタネート系カップリング剤〔イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジ-トリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ‐トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピル(ジオクチルホスファイト)チタネート等〕、アルミネート系カップリング剤〔アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等〕等からなる各種カップリング剤で処理を施すことができる。
【0057】
成形材料1の見掛けの剪断粘度は、温度375℃、荷重50kgfの条件下で直径1.0mm×長さ10mmのダイスを用い、フローテスターで測定した温度375℃における見掛けの剪断粘度が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下、好ましくは1×10Pa・s以上5×10Pa・s以下、より好ましくは5×10Pa・s以上2×10Pa・s以下の範囲が良い。これは、見掛けの剪断粘度が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下の範囲内であれば、集電体用導電性樹脂フィルム4の成形性に優れ、充分な機械的強度が期待できるからである。
【0058】
これに対し、見掛けの剪断粘度が1×10Pa・s未満の場合には、見掛けの剪断粘度が低く、溶融張力の低下を招き、集電体用導電性樹脂フィルム4の成形が困難になる。また、見掛けの剪断粘度が1×10Pa・sを越える場合には、溶融粘度が高く、溶融伸びが低下し、集電体用導電性樹脂フィルム4に孔が開いて破断するおそれがあり、その結果、集電体用導電性樹脂フィルム4の成形に支障を来すこととなる。
【0059】
上記において、集電体用導電性樹脂フィルム4を製造する場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、導電材料3であるカーボンナノチューブ、及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料とを所定の時間、溶融混練して成形材料1を調製し、この成形材料1を樹脂フィルム成形用の溶融押出成形機20に投入して溶融押出成形すれば、厚さ500μm以下、例えば10μm以上500μm以下の集電体用導電性樹脂フィルム4を製造することができる。
【0060】
成形材料1を調製する方法としては、(1)成形材料用の溶融混練機10にカーボンナノチューブとカーボンナノチューブ以外の導電性材料を同時にあるいは別々に投入し、溶融したポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と溶融混練することで成形材料1を調製する方法、(2)攪拌混合機により、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料とを室温(0℃から50℃以下程度の温度)下で攪拌混合して溶融混練機10で溶融混練し、成形材料1を調製する方法があげられる。
【0061】
先ず、(1)の調製方法について詳細に説明すると、この方法の場合には、例えば図1に示す所定の溶融混練機10を用意し、この溶融混練機10にポリアリーレンエーテルケトン樹脂2を投入した後、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料との攪拌混合物をサイドフィーダ法等により新たに投入して既に溶融したポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と溶融混練することで成形材料1を調製する。また例えば、溶融混練機10にポリアリーレンエーテルケトン樹脂2を投入して溶融した後、溶融混練機10に、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料を別々のサードフィーダ法等により新たに投入して既に溶融したポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と溶融混練することで成形材料1を調製する。
【0062】
溶融混練機10としては、バンバリーミキサー、ミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機、あるいは二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機からなる多軸押出成形機等があげられる。これらの中では、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料との良好な混練分散が期待でき、これらの水分、これらから発生する揮発ガスを脱気可能なベント方式の多軸押出成形機の使用が好ましい。
【0063】
多軸押出成形機からなる溶融混練機10は、図1に示すように、台座11上に設置されたシリンダー12と、このシリンダー12に内蔵軸支され、モータの駆動で回転してポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料とを溶融混練して先端部のダイス14からストランド(棒状)等を押し出すスクリュー13と、シリンダー12の上流部に連設されるポリアリーレンエーテルケトン樹脂2用の投入口15と、シリンダー12の下流部に連設されるカーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料投入用のサイドフィーダ16と、シリンダー12のダイス14から押し出され、空気あるいは水により冷却されたストランド等を切断して成形材料1とする回転可能なカッター17とを備えて構成される。サイドフィーダ16は、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料の投入法に応じ、単数が使用されたり、複数が使用される。
【0064】
溶融混練機10の投入口15とサイドフィーダ16とは、投入口15がシリンダー12の上部上流側にホッパーとして設置され、サイドフィーダ16がスクリュー構造に構成されてシリンダー12の上部下流側に搭載されており、投入口15よりも下流に位置するサイドフィーダ16に微粉末のカーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料が同時にあるいは別々に横方向から投入されることにより、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料が溶融したポリアリーレンエーテルケトン樹脂2中に注入され、成形材料1の均一分散性が向上する。また、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料のポリアリーレンエーテルケトン樹脂2との混練時間が短縮されるので、分解防止も期待できる。
【0065】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電材料3とを溶融混練する場合の溶融温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂2が分解しない温度であれば、特に制限されるものではないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の熱分解温度未満の範囲である。
【0066】
具体的には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+10℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+100℃以下、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+20℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+80℃以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+60℃以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトンの融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+50℃以下の範囲である。
【0067】
これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電材料3とを溶融混練して分散させることができないという理由に基づく。逆に、熱分解温度以上の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の分解を招き、好ましくないという理由に基づく。
【0068】
溶融混練されたポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料とは、ダイス14からストランドにして押し出されて成形材料1に調製されるが、ダイス14から導電性樹脂フィルムにして押し出された後、粉状、顆粒状、フレーク状、ペレット状の成形材料1に調製されても良い。また、成形材料1を調製する際、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料のいずれかを所定量以上に分散させ、マスターバッチ化しても良い。
【0069】
次に、(2)の調製方法について詳細に説明すると、この方法でポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びこのカーボンナノチューブ以外の導電材料3とを室温で攪拌混合する場合には、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、万能攪拌ミキサー等の攪拌混合機が使用される。この際、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の形状は、カーボンナノチューブとこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料とより均一に分散することのできる粉体状であるのが好ましい。粉体状に粉砕する方法としては、例えばせん断粉砕法、衝撃粉砕法、衝突粉砕法、冷凍粉砕法、溶液粉砕法等があげられる。
【0070】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料とは、攪拌混合された後、バンバリーミキサー、ミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機あるいは二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機からなる多軸押出成形機等の溶融混練機10により、溶融混練して分散され、成形材料1に調製される。
【0071】
溶融混練機10は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性材料との良好な混練分散が期待でき、これらの水分、これらから発生する揮発ガスを脱気可能なベント方式の多軸押出成形機が好ましい。この溶融混練機10により成形材料1を調製する際、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2と、カーボンナノチューブ及びこのカーボンナノチューブ以外の導電材料3のいずれかを所定量以上に分散させ、マスターバッチ化することができる。
【0072】
成形材料1の溶融押出成形される前の含水率(水分率)は、加熱乾燥により2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4の発泡を招くおそれがあるからである。したがって、成形材料1は、溶融混練前に含水率を低下させるため、加熱乾燥されることが好ましい。
【0073】
成形材料1の加熱乾燥法としては、熱風循環乾燥法、除湿熱風乾燥法、加熱真空乾燥法、マイクロ波乾燥法等の公知の方法があげられる。成形材料1の加熱乾燥温度は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点-50℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点+50℃以下、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点-30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点+30℃以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点-20℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点+20℃以下が良い。成形材料1の加熱乾燥時間は、2時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上が良い。この加熱乾燥時間の上限は、特に限定されるものではないが、24時間以下が妥当である。
【0074】
成形材料1を調製したら、この成形材料1により集電体用導電性樹脂フィルム4を製造する。この製造方法としては、溶融押出成形法、カレンダー成形法、あるいはキャスティング法等を採用することができる。これらの製造方法の中では、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、集電体用導電性樹脂フィルム4を連続して帯形に押出成形可能な溶融押出成形法が最適である。
【0075】
溶融押出成形法は、溶融押出成形機20を使用して成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機20の先端部に連結されたTダイスや丸ダイス等のダイス23から集電体用導電性樹脂フィルム4を連続的に押出して製造する方法である(図2参照)。溶融押出成形機20は、図2に示すように、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、後部上方に、成形材料用の原料投入口21が設置され、この原料投入口21には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管22が接続されており、この不活性ガス供給管22による不活性ガスの供給により、成形材料1の酸化劣化、酸素架橋、熱架橋が有効に防止される。
【0076】
溶融押出成形機20の溶融混練時の溶融温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の分解がない温度であれば、特に制限されるものではないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の熱分解温度未満の範囲が良い。
【0077】
具体的には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+10℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+100℃以下、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+20℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+80℃以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+60℃以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトンの融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+50℃以下の範囲である。これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難化し、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2が激しく分解するおそれがあるからである。
【0078】
ダイス23は、溶融押出成形機20の先端部に連結管24を介して連結され、帯形の集電体用導電性樹脂フィルム4を連続的に下方に押し出すよう機能する。このダイス23としては、優れた厚さ精度の集電体用導電性樹脂フィルム4を得ることが可能なTダイスが好適である。ダイス23の上流の連結管24には、ギアポンプ25が装着されることが好ましい。このギアポンプ25を用いれば、溶融押出成形機20により溶融混練された成形材料1を一定の流量で、かつ高精度に下流のダイス23に移送することができる。
【0079】
ダイス23の押出時の温度は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の熱分解温度未満、具体的には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+10℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+100℃以下、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+20℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+80℃以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+60℃以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトンの融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+50℃以下の範囲が良い。
【0080】
これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難化し、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2が激しく分解するおそれがあるからである。
【0081】
ダイス23の下方には、間隔をおいて相対向する一対の圧着ロール26が回転可能に軸支され、この一対の圧着ロール26の間には、一列に配列されて相互に摺接する複数の冷却ロール27が回転可能に軸支されており、この複数の冷却ロール27のうち、上流の冷却ロール27と下流の冷却ロール27が圧着ロール26の周面にそれぞれ摺接する。一対の圧着ロール26と複数の冷却ロール27は、圧着ロール26が縮径に構成され、冷却ロール27が拡径に構成される。
【0082】
一対の圧着ロール26のうち、下流の圧着ロール26のさらに下流には、集電体用導電性樹脂フィルム4を回転可能な巻取管29に巻き取る巻取機28が設置され、下流の圧着ロール26と巻取機28との間には、集電体用導電性樹脂フィルム4の側部長手方向にスリットを形成するスリット刃30が昇降可能に配置されており、このスリット刃30と巻取機28との間には、集電体用導電性樹脂フィルム4にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール31が必要数軸支される。
【0083】
各圧着ロール26は、50℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点未満、好ましくは100℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点-50℃〕以下、より好ましくは130℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点-100℃〕以下、さらに好ましくは150℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2-100℃〕以下の温度に調整され、集電体用導電性樹脂フィルム4に摺接してこれを冷却ロール27に圧接する。
【0084】
圧着ロール26の温度が係る範囲内なのは、50℃未満の場合には、圧着ロール26が結露するからである。逆に、融点を越える場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4が圧着ロール26の周面に貼り付いて破断したり、集電体用導電性樹脂フィルム4の強度が低下して破断するおそれがあるからである。圧着ロール26の温度調整法としては、例えば空気、水、オイル等の熱媒体を用いる方法、電気ヒーターを用いる方法、誘導加熱を利用する方法等があげられる。
【0085】
各圧着ロール26の周面には、集電体用導電性樹脂フィルム4と冷却ロール27の密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて覆着され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの選択が好ましい。
【0086】
圧着ロール26としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる集電体用導電性樹脂フィルム4の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、例えば、金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕が該当する。また、表面がポリテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、あるいはテトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロピレン共重合体(FEP)樹脂等のフッ素樹脂フィルムで被覆された圧着ロール26も同様に使用することができる。
【0087】
複数の冷却ロール27は、例えば圧着ロール26よりも拡径の金属ロール等からなり、ダイス23の下方に回転可能に軸支されて押し出された集電体用導電性樹脂フィルム4を圧着ロール26の周面との間に挟持し、圧着ロール26と共に集電体用導電性樹脂フィルム4を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するよう機能する。
【0088】
各冷却ロール27は、圧着ロール26と同様の理由から、50℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点未満、好ましくは100℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点-50℃〕以下、より好ましくは130℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点-100℃〕以下、さらに好ましくは150℃以上〔ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2-100℃〕以下の温度に調整され、集電体用導電性樹脂フィルム4に摺接してこれを対向する冷却ロール27に圧接する。冷却ロール27の温度調整法としては、例えば空気、水、オイル等の熱媒体を用いる方法、電気ヒーターを用いる方法、誘導加熱を利用する方法等があげられる。
【0089】
成形材料1を帯形の集電体用導電性樹脂フィルム4に押出成形したら、この集電体用導電性樹脂フィルム4を一対の圧着ロール26、複数の冷却ロール27、テンションロール31、及び巻取機28に巻架し、集電体用導電性樹脂フィルム4の両側部をスリット刃30でそれぞれ長手方向にカットし、巻取機28の巻取管29に順次巻き取れば、長尺の集電体用導電性樹脂フィルム4を製造することができる。
【0090】
冷却ロール27により冷却され、製造された集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さは、10μm以上500μm以下、好ましくは15μm以上350μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは25μm以上100μm以下が良い。これは、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さが10μm未満の場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4の引張強度が著しく低下するので、集電体用導電性樹脂フィルム4の製造が困難になるからである。逆に、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さが500μmを越える場合には、リチウムイオン二次電池、双極型リチウムイオン二次電池、全固体電池の二次電池用集電体として使用したとき、軽量化に支障を来すからである。この集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さは、各種の接触式厚さ計により測定することが可能である。
【0091】
集電体用導電性樹脂フィルム4の比重は、JIS K 7112 A法に準拠して測定した場合に1.25以上1.60以下、好ましくは1.30以上1.50以下、より好ましくは1.31以上1.45以下、さらに好ましくは1.32以上1.40以下が良い。これは、集電体用導電性樹脂フィルム4の比重が1.25未満の場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4中にボイドあるいはクラックが発生したおそれがあり、機械的強度の低下の問題が生じるため好ましくないからである。
【0092】
これに対し、集電体用導電性樹脂フィルム4の比重が、1.60を越える場合には、リチウムイオン二次電池、双極型リチウムイオン二次電池、全固体電池の二次電池用集電体として使用したとき、軽量化に支障を来すからである。集電体用導電性樹脂フィルム4の比重は、例えばJIS K 7112 A法に準拠した比重測定装置等で測定することができる。
【0093】
集電体用導電性樹脂フィルム4の相対結晶化度は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%が最適である。これは、集電体用導電性樹脂フィルム4の相対結晶化度が80%未満の場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4の機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に問題が生じるからである。これに対し、相対結晶化度が80%を越える場合には、集電体用導電性樹脂フィルム4として使用可能な機械的強度、耐熱性、耐薬品性が大いに期待できる。
【0094】
集電体用導電性樹脂フィルム4の結晶化度は、相対結晶化度により表すことができる。この集電体用導電性樹脂フィルム4の相対結晶化度は、示差走査熱量計を用いて10℃/分の昇温速度で測定した熱分析結果に基づき、以下の式により算出される。
【0095】
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:集電体用導電性樹脂フィルムの再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:集電体用導電性樹脂フィルムの融解ピークの熱量(J/g)
集電体用導電性樹脂フィルム4の導電性は、厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値により評価することができる。この厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値は、1000mΩ・cm以下、好ましくは1mΩ・cm以上1000mΩ・cm以下、より好ましくは1mΩ・cm以上800mΩ・cm以下、さらに好ましくは50mΩ・cm以上600mΩ・cm以下、さらにまた好ましく90mΩ・cm以上500mΩ・cm以下が最適である。
【0096】
これは、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cmを越えるときには、二次電池用集電体として使用すると、エネルギー密度の低下を招くからである。逆に、抵抗値が1mΩ・cm未満のときは、導電材料3を多量に添加しなければならず、得られる集電体用導電性樹脂フィルム4が脆くなり、二次電池組立中に集電体用導電性樹脂フィルム4が割れる問題が生じるからである。
【0097】
集電体用導電性樹脂フィルム4の耐薬品性については、N-メチル-2-ピロリドンと電解質に集電体用導電性樹脂フィルム4を浸漬してその質量変化により評価すれば良い。集電体用導電性樹脂フィルム4をN-メチル-2-ピロリドンと電解液に浸漬させた場合の質量変化率は、耐薬品性や耐溶剤性を向上させる観点から、2.0%以下、好ましくは0.0%以上2.0%以下、より好ましくは0.0%以上1.0%以下、さらに好ましくは0.0%以上0.1%以下が最適である。
【0098】
電解質は、有機溶媒に溶質としてリチウム塩を溶解させた有機電解液である。電解質の有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート〔EC〕、プロピレンカーボネート〔PC〕、及びブチレンカーボネート〔BC〕等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート〔DMC〕、エチルメチルカーボネート〔EMC〕、及びジエチルカーボネート〔DEC〕等の鎖状炭酸エステル、テトラヒドロフラン〔THF〕、1,3‐ジオキソラン〔DOXL〕等の環状エーテル、1,2‐ジメトキシエタン〔DEM〕、及び1,2‐ジエトキシエタン〔DEE〕等の鎖状エーテル、γ‐ブチロラクトン〔GBL〕等の環状エステル、酢酸メチル〔MA〕等の鎖状エステル等があげられる。
【0099】
リチウム塩には、例えば過塩素酸リチウム〔LiClO〕、ホウフッ化リチウム〔LiBF〕、ヘキサフルオロリン酸リチウム〔LiPF〕、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム〔LiCFSO〕、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔LiN(CFSO〕、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド〔LiC(CFSO〕等が該当する。
【0100】
なお、集電体用導電性樹脂フィルム4中にN‐メチル‐2‐ピロリドンあるいは電解液が残留すると、集電体用導電性樹脂フィルム4を使用した集電体は、二次電池作動中にN‐メチル‐2‐ピロリドンあるいは電解液が二次電池中に染み出して不具合が生じるので、注意が必要である。また、二次電池の電解液が集電体に染み込み、充放電サイクルが低下するので、留意すべきである。
【0101】
成形した集電体用導電性樹脂フィルム4は、そのまま使用しても良いが、さらに加熱圧縮成形しても良い。集電体用導電性樹脂フィルム4を加熱圧縮成形すれば、抵抗値をより低くして導電性を高め、導電材料3の使用量を減らしてコストの低減を図ることが可能となる。
【0102】
集電体用導電性樹脂フィルム4を加熱圧縮成形する場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の熱分解温度未満、具体的には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+10℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2+100℃以下、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+20℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+80℃以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+60℃以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+30℃以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の融点+50℃以下に加熱された複数の金属板、金属ロール、金属ベルトの間に集電体用導電性樹脂フィルム4を挟み、この集電体用導電性樹脂フィルム4の投影面積に対して0.5kgf/cm以上100kgf/cm以下の圧力を作用させて0.5秒間以上300秒間以下保持し、直ちにポリアリーレンエーテルケトン樹脂2のガラス転移点以下に冷却すれば良い。
【0103】
上記によれば、成形材料1の熱可塑性樹脂として、軽量性、機械的特性、耐薬品性、耐熱性に優れ、低吸水率のポリアリーレンエーテルケトン樹脂2を選択して集電体用導電性樹脂フィルム4を製造するので、例え集電体用導電性樹脂フィルム4を集電体として使用しても、集電体用導電性樹脂フィルム4の内部に電解質成分が浸透することがなく、充放電サイクル特性が低下するおそれを有効に排除することができる。また、フッ素樹脂ではなく、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂2を用いるので、成形に特殊な鋼材や設備を特に必要とせず、集電体のコスト削減が大いに期待できる。
【0104】
また、二種類の異なる樹脂を用いる必要がないので、集電体の剥離を招くおそれを有効に排除することができる。加えて、製造後の吸水による膨張率の差でカールしたり、第一、第二の導電性層間で集電体が剥離するおそれもない。また、炭素系導電材料がカーボンナノチューブの場合、化学的に安定する他、二次電池の軽量化をさらに向上させることが可能となる。また、カーボンナノチューブ以外の導電性材料をも用いるので、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向の導電性向上が大いに期待できる。
【0105】
また、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さが10μm以上500μm以下なので、集電体用導電性樹脂フィルム4の引張強度の低下を防止し、二次電池の集電体の軽量化が大いに期待できる。また、集電体用導電性樹脂フィルム4の比重が1.60以下なので、二次電池や集電体の大幅な軽量化に資することが可能となる。さらに、集電体用導電性樹脂フィルム4の厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1000mΩ・cm以下と低いので、例え集電体用導電性樹脂フィルム4を二次電池の集電体として使用しても、エネルギー密度の低下を防ぐことができる。
【0106】
なお、上記実施形態における成形材料1のポリアリーレンエーテルケトン樹脂2の形状は、粉体状、顆粒状、塊状、粉状、ペレット状等を特に問うものではない。また、集電体用導電性樹脂フィルム4は、相対結晶化度が95%以上100%以下、厚さ方向に1MPaの加圧力を作用させて測定した場合の抵抗値が1mΩ・cm以上1000mΩ・cm以下でも良い。さらに、一対の圧着ロール26の間に単一の冷却ロール27を回転可能に軸支させても良い。
【実施例0107】
以下、本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、成形材料を調製するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ社製 製品名:キータスパイアPEEK KT-851NL SP(以下、「KT-851NL SP」と略する)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を冷凍粉砕法により粉砕した。
【0108】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、PEEK樹脂と略称する)の融点(融解温度ともいう)は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X-DSC7000〕を用い、JIS K7121に準拠して昇温速度10℃/分の条件で測定した。測定したところ、KT-851NLSPの融点は340℃であった。
【0109】
PEEK樹脂を粉砕したら、この粉砕したPEEK樹脂と、予め撹拌機で攪拌混合したカーボンナノチューブ及びこのカーボンナノチューブ以外の導電性材料との混合物からなる導電材料を、表1に示すようにPEEK樹脂100質量部に対して導電材料が8質量部となるように計量し、その後、PEEK樹脂と導電材料を混合機に投入して攪拌混合することで攪拌混合物を調製した。
【0110】
カーボンナノチューブはNC7000〔ナノシル社製:製品名:(以下、「NC7000」と略す)〕、カーボンナノチューブ以外の導電性材料はアモルファスカーボンで粒子形状が球形のベルパール C2000SR〔エア・ウォーター・ベルパール社製:製品名、平均粒子径:8μm(カタログ値)、(以下、「C2000SR」と略す)〕を使用した。カーボンナノチューブとカーボンナノチューブ以外の導電性材料は、表1に示すようにカーボンナノチューブ95質量%に対してカーボンナノチューブ以外の導電性材料5質量%となるよう計量し、その後、カーボンナノチューブとアモルファスカーボンを混合機に投入して攪拌混合することで攪拌混合物を調製した。
【0111】
PEEK樹脂の見掛けのせん断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、予めPEEK樹脂を熱風乾燥機で160℃×12時間乾燥した後、PEEK樹脂1.5cmをダイス(直径:1mm、長さ10mm)に装着した375℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に面積が1.0cmのプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が375℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、PEEK樹脂を溶融流出させてその見掛けのせん断粘度を測定した。見掛けの剪断粘度については、以下、同様の方法により測定した。
【0112】
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を真空ポンプ付きの同方向回転二軸押出成形機に供給して減圧下で溶融混練し、この溶融混練した攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、ペレット状の成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機は、φ25mm、L/D=41のタイプを用いた。また、攪拌混合物は、シリンダー温度:300℃~370℃、ダイス温度370℃の条件下で同方向回転二軸押出機の原料投入口側のベントを開放した状態、ダイス側のベントを減圧下で脱気しながら溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ372℃であった。
【0113】
次いで、調製した成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、成形材料をφ20mmの単軸押出成形機に投入してその幅150mmのダイスであるTダイスから連続して押し出すことにより、帯形の集電体用導電性樹脂フィルムを成形した。成形材料の含水率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名:CA‐100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により確認した。以後、成形材料の含水率については、同様の方法により測定した。
【0114】
単軸押出成形機は、L/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。また、単軸押出成形機の温度は360℃~395℃、Tダイの温度は395℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は395℃に調整した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、398℃であった。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス15L/分を供給した。
【0115】
集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、この集電体用導電性樹脂フィルムを図2に示すようなシリコーンゴム製の一対の210℃の圧着ロール、220℃の冷却ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと冷却ロールとに挟持させ、連続した集電体用導電性樹脂フィルムを巻取管に順次巻き取ることにより、長さ10m、幅150mmの集電体用導電性樹脂フィルムを製造した。
【0116】
集電体用導電性樹脂フィルムを製造したら、この集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生の有無、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性をそれぞれ評価して表1にまとめた。集電体用導電性フィルムの耐薬品性は、NMPと電解液浸漬前後の重量変化によりそれぞれ評価した。また、集電体用導電性フィルムの導電性は、電解液浸漬前後の厚さ方向の抵抗値によりそれぞれ評価した。
・集電体用導電性樹脂フィルム製造中に発生する目ヤニの発生の有無
集電体用導電性樹脂フィルム製造中に発生する目ヤニの発生の有無については、集電体用導電性樹脂フィルムを10m製造後、Tダイスリップ付近を目視により観察することとした。
【0117】
・集電体用導電性樹脂フィルムのフィルム厚
集電体用導電性樹脂フィルムのフィルム厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC‐25PJ〕を使用して測定した。測定に際しては、集電体用導電性樹脂フィルムの幅方向〔押出方向の直角方向(以下、「TD」と略称する)〕の中心部分で押出方向〔以下、「MD」と略称する〕の任意の10箇所を測定し、その平均値をフィルム厚とした。
【0118】
・集電体用導電性樹脂フィルムの比重
集電体用導電性樹脂フィルムの比重については、23℃の環境下、JIS K7112 A法 の規格に準拠して測定した。
【0119】
・集電体用導電性樹脂フィルムの相対結晶化度
集電体用導電性樹脂フィルムの相対結晶化度については、集電体用導電性樹脂フィルムから測定試料約5mgを秤量し、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X-DSC7000〕を使用して昇温速度10℃/分、測定温度範囲20℃から380℃まで測定した。このときに得られる融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式を用いて算出した。
【0120】
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:集電体用導電性樹脂フィルムの再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:集電体用導電性樹脂フィルムの融解ピークの熱量(J/g)
【0121】
・集電体用導電性樹脂フィルムの耐薬品性
集電体用導電性樹脂フィルムの耐薬品性については、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」と略する)と電解液に浸漬させ、重量変化により評価した。この重量変化を評価する場合には、集電体用導電性樹脂フィルムをMD:55mm×TD:55mmの大きさに切り出して秤量〔W〕し、この導電性樹脂フィルムとNMP5gあるいは電解液各5gとをPET/AL/PE構成平袋〔日本生産社製:商品名ラミジップ〕に入れ、ヒートシールにより封をした。電解液は、リチウム一次・二次・ポリマー電池&リチウムイオンキャパシタ用電解液〔キシダ化学社製:商品名 電解質LiPF、モル濃度1mol/L 溶媒EC:DEC(3:7)V/V%〕を使用した。
【0122】
ヒートシールにより封をしたら、PET/AL/PE構成平袋を50℃に加熱した熱風オーブン中に15日間静置し、静置後にPET/AL/PE構成平袋から集電体用導電性樹脂フィルムを取り出してエタノールで洗浄し、この集電体用導電性樹脂フィルムを50℃に加熱した熱風オーブン中に24時間静置するとともに、静置後に乾燥剤〔オゾン化学社製:商品名OZO‐C〕を入れたガラス製のデシケータ内で24℃の環境下で24時間静置し、その後、集電体用導電性樹脂フィルムを秤量〔W〕し、以下の式から重量変化率を求めて評価した。
【0123】
重量変化率(%)={(W-W)×100}/W
:集電体用導電性樹脂フィルムの初期重量〔g〕
:集電体用導電性樹脂フィルムとNMPあるいは電解液浸漬後の重量〔g〕
A:重量変化率が0.0%以上0.1%以下の場合
B:重量変化率が0.1%を越えて1.0%以下の場合
C:重量変化率が1.0%を越えて2.0%以下の場合
D:重量変化率が2.0%を越えて5.0%以下の場合
E:重量変化率が5.0%を越えて10%以下の場合
F:重量変化率が10%を越えて20%以下の場合
【0124】
・集電体用導電性樹脂フィルムの導電性
集電体用導電性樹脂フィルムの導電性については、厚さ方向の抵抗値により評価することとした。この厚さ方向の抵抗値〔Rc〕については、図2図3に示すように、集電体用導電性樹脂フィルムを5.5cm×5.5cmの大きさにカットして試験片とし、この試験片を5.0cm×5.0cmの大きさを有する上下一対カーボンペーパーに挟むとともに、この一対カーボンペーパーを上下一対の金メッキ電極に挟持させて直流電流を通電し、上方から1MPaで加圧し、抵抗計で1分間後の抵抗値〔R〕を測定した後、以下の式から算出した。
【0125】
Rc=R×S
=R-(一対のカーボンペーパー2枚分の抵抗値)
S:カーボンペーパーの面積
【0126】
カーボンペーパーは、SIGRACET Gas Diffusion Media type.GDL24B〔SGL.GROUP社製:商品名〕を使用した。また、抵抗計は、ミリオームハイテスタ3540〔日置電機社製:商品名〕を用いた。
【0127】
なお、厚さ方向の抵抗値〔Rc〕については、集電体用導電性樹脂フィルムとリチウム一次・二次ポリマー電池&リチウムイオンキャパシタ用電解液〔キシダ化学社製、商品名:電解質 LiPF6、モル濃度 1mol/L、溶媒 EC:DEC(3:7)V/V%〕を用いた耐薬品性試験の前後で測定した。測定は、温度23℃±2℃、相対湿度50RH±5%RHの環境下で実施した。
【0128】
〔実施例2〕
実施例1のポリアリーレンエーテルケトン樹脂と導電材料を表1に示すように計量し、実施例1と同様の方法でペレット形の成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ371℃であった。また、導電材料は、実施例1で用いたカーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の導電性材料としてアモルファスカーボンを使用し、これらの添加量を変更した。これらカーボンナノチューブとアモルファスカーボンを表1に示す組成質量比率となるように計量し、混合機に投入して攪拌混合することにより、導電材料を調製した。
【0129】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、398℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例と同様の方法によりそれぞれ評価して表1にまとめた。
【0130】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂であるPEEK樹脂をKT-851NL SPから予め実施例1の方法で粉砕したVictrex Granules 381G〔ビクトレックス社;製品名(以下、「381G」と略す〕に変更し、PEEK樹脂と導電材料を表1に示す質量比率となるように計量して攪拌混合物を調製した。
【0131】
導電材料は、実施例1で使用したカーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の導電性材料としてアモルファスカーボンを使用したが、これらの添加量を変更した。これらカーボンナノチューブとアモルファスカーボンを表1に示す組成質量比率となるように計量し、その後、カーボンナノチューブとアモルファスカーボンを混合機に投入して攪拌混合することにより、導電材料を調製した。381Gの見掛けの剪断粘度は、実施例1と同様の方法により測定した。また、381Gの融点を実施例1と同様の方法により測定した結果、343℃であった。
【0132】
次いで、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ372℃であった。
【0133】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、398℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1の同様の方法によりそれぞれ評価して表1にまとめた。
【0134】
【表1】
【0135】
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂であるPEEK樹脂をKT-851NL SPから予め実施例1の方法で粉砕したVictrex Granules 450G〔ビクトレックス社製;製品名(以下、「450G」と略す〕に変更した。このPEEK樹脂と導電材料を表2に示す質量比率となるように計量し、攪拌混合物を調製した。
【0136】
カーボンナノチューブは、実施例1で使用したNC7000からFloTube 9000〔CNano Technology社製;製品名〕変更した。また、カーボンナノチューブ以外の導電性材料は、実施例1で使用したアモルファスカーボン C2000SRからアモルファスカーボンで粒子形状が球形のベルパール CR1-2000〔エア・ウォーター・ベルパール社製:製品名、平均粒子径:1.2μm(カタログ値)、(以下、「CR1-2000」と略す〕に変更した。
【0137】
導電材料は、カーボンナノチューブとアモルファスカーボンとを表2に示す組成質量比率となるように計量して混合機に投入し、攪拌混合することにより調製した。450Gの見掛けの剪断粘度は、実施例1と同様の方法により測定した。また、450Gの融点を実施例1と同様の方法により測定した結果、341℃であった。
【0138】
次いで、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ373℃であった。
【0139】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、396℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1の方法によりそれぞれ評価して表2にまとめた。
【0140】
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様であるが、成形材料として、実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂であるPEEK樹脂をKT-851NL SPから予め実施例1の方法で粉砕したVictrex Granules 151G〔ビクトレックス社;製品名(以下、「151G」と略す〕に変更し、導電材料と表2に示す質量比率となるように計量して攪拌混合物を調製した。
【0141】
151Gの見掛けの剪断粘度は、実施例1と同様の方法により測定した。また、151Gの融点を実施例1と同様の方法により測定した結果、341℃であった。導電材料は、実施例4で使用したカーボンナノチューブとアモルファスカーボンを使用し、表2に示す組成質量比率となるように計量し、混合機に投入して攪拌混合することにより調製した。
【0142】
次いで、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ375℃であった。
【0143】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、395℃であった。こうして集電場用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表2にまとめた。
【0144】
〔実施例6〕
先ず、成形材料を調製するため、市販のポリアリーレンエーテルケトン樹脂としてポリエーテルケトンケトン樹脂〔アルケマ社製、製品名:KEPSTAN 8003PF ST(以下、「8003PF」と略称する〕を用意し、このポリエーテルケトンケトン樹脂(以下、PEKK樹脂と略称する)と実施例1で使用した導電材料とを表2に示す質量比率となるように計量し、その後、PEKK樹脂と導電材料を混合機に投入し、攪拌混合して攪拌混合物を調製した。
【0145】
導電材料は、実施例1で使用したカーボンナノチューブと、このカーボンナノチューブ以外の導電性材料であるアモルファスカーボンを使用した。この導電材料は、表2に示す組成重量比率となるように計量し、混合機に投入して攪拌混合することで調製した。また、8003PFの融点を実施例1と方法により測定した結果、361℃であった。
【0146】
8003PFの見掛けの剪断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、予め8003PFを熱風乾燥機で160℃×12時間乾燥した後、1.5cmの8003PFをダイス(直径:1mm、長さ10mm)に装着した375℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に面積が1.0cmのプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が375℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、PEKK樹脂を溶融流出させてその見掛けの剪断粘度を測定した。
【0147】
次いで、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ375℃であった。
【0148】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、397℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表2にまとめた。
【0149】
【表2】
【0150】
〔比較例1〕
先ず、実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂と導電材料とを表3に示す本発明の範囲外の質量比率で計量し、攪拌混合機に投入して攪拌混合物を調製し、この攪拌混合物を実施例1と同様にペレット形の成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ371℃であった。
【0151】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、398℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表3に記載した。その結果、集電体用導電性樹脂フィルムの導電性がきわめて悪化した。
【0152】
〔比較例2〕
先ず、実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂と導電材料とを表3に示す本発明の範囲外の質量比率で計量し、攪拌混合機に投入して攪拌混合物を調製し、この攪拌混合物を実施例1と同様にペレット形の成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ379℃であった。
【0153】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で厚さ450μmの集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、403℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表3に記載した。その結果、集電体用導電性樹脂フィルムの耐薬品性が悪化した。
【0154】
〔比較例3〕
先ず、実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂と実施例4で使用したカーボンナノチューブとを表3に示す本発明の範囲外の質量比率で計量し、攪拌混合機に投入して混合物を調製した。この比較例3では、カーボンナノチューブ以外の導電性材料は使用しなかった。混合物を調製したら、この混合物を、実施例1と同様にペレット形の成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ372℃であった。
【0155】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、393℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表3に記載した。その結果、集電体用導電性樹脂フィルムの導電性が悪化した。
【0156】
【表3】
【0157】
〔比較例4〕
先ず、実施例1で使用したカーボンナノチューブとアモルファスカーボンとを表3に示す本発明の範囲外の組成質量比率で計量し、攪拌混合機に投入して導電材料を調製した。こうして導電材料を調製したら、導電材料と実施例1で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂とを表3に示す本発明の範囲内の質量比率で計量し、攪拌混合機に投入して攪拌混合物を調製し、この攪拌混合物を、実施例1と同様にペレット形の成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ371℃であった。
【0158】
次いで、調製した成形材料を用い、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、393℃であった。こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表4に記載した。その結果、集電体用導電性樹脂フィルムの導電性が悪化した。
【0159】
〔比較例5〕
先ず、実施例3で使用したポリアリーレンエーテルケトン樹脂と導電材料とからなる成形材料を使用して相対結晶化度が37%の集電体用導電性樹脂フィルムを実施例1と同様の方法により成形した。但し、圧着ロールと冷却ロールの温度は、実施例1では圧着ロール210℃、冷却ロール220℃としたが、比較例5では圧着ロール100℃、冷却ロール100℃で集電体用導電性樹脂フィルムを帯形に成形した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、398℃であった。
【0160】
こうして集電体用導電性樹脂フィルムを成形したら、実施例1と同様の方法で集電体用導電性樹脂フィルムを製造し、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生、この集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表4に記載した。その結果、集電体用導電性樹脂フィルムの耐薬品性が悪化した。
【0161】
【表4】
【0162】
〔比較例6〕
成形材料を調製するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂からポリアミド9T樹脂に変更した。このポリアミド9T樹脂として、ジェネスタN1000A-M42NA〔クラレ社製:製品名、(以下、「N1000A」と略称する)〕を選択し、このポリアミド9T樹脂(以下、PA9T樹脂と略称する)を冷凍粉砕法により粉砕し、このPA9T樹脂と実施例1で使用した導電材料とを表5で示す質量比率で攪拌混合して攪拌混合物を調製した。
【0163】
N1000A樹脂の融点は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X-DSC7000〕を用い、JIS K7121に準拠し、昇温速度10℃/分の条件で測定した。測定したところ、N1000Aの融点は300℃であった。
【0164】
PA9T樹脂の見掛けの剪断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、予めPA9T樹脂を熱風乾燥機で160℃×12時間乾燥した後、PA9T樹脂1.5cmをダイス(直径:1mm、長さ10mm)に装着した360℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に面積が1.0cmのプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が360℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、PA9T樹脂を溶融流出させてその見掛けの剪断粘度を測定した。
【0165】
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を実施例1で使用した真空ポンプ付きの同方向回転二軸押出機に供給して減圧下で溶融混練し、同方向回転二軸押出機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、ペレット形の成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度330℃~360℃、アダプター温度360℃、ダイス温度360℃の条件下で溶融混練した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ363℃であった。
【0166】
次いで、調製した成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、成形材料を実施例1で使用した幅150mmのTダイス付きのφ20mmの単軸押出成形機に投入してTダイスから連続して押し出すことにより、帯形の集電体用導電性樹脂フィルムを成形した。成形材料の含水率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名:CA‐100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により確認した。また、単軸押出成形機は、実施例1で使用した同様のL/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。
【0167】
単軸押出成形機の温度は340℃~360℃、Tダイの温度は360℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は360℃に調整した。また、Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、363℃であった。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス15L/分を供給した。
【0168】
集電体用導電性樹脂フィルムを製造したら、集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生の有無、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、相対結晶化度、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表5にまとめた。集電体用導電性樹脂フィルムをNMPと電解液に浸漬した後、観察したところ、集電体用導電性樹脂フィルムは変形しており、導電性を完全に評価することができなかった。
【0169】
〔比較例7〕
成形材料を調製するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂からポリエーテルイミド樹脂〔4,4’-[イソプロピリデンビス(P-フェニルオキシ)ジフタル酸二無水物とm-フェニレンジアミンとの重縮合物]、SABIC社製、製品名:ULTEM 1010-1000-NB〔SABIC社製:製品名、(以下、「1010」と略称する)〕〕に変更し、このポリエーテルイミド樹脂(以下、PEI樹脂と略称する)を冷凍粉砕法により粉砕した。
【0170】
1010の融点(融解温度ともいう)を測定するため、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 製品名:高感度型示差走査熱量計 X-DSC7000〕を用い、JIS K7121に準拠し、昇温速度10℃/分の条件で測定したが、融点は認められなかった。
【0171】
PEI樹脂の見掛けの剪断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、予めPEI樹脂を熱風乾燥機で160℃×12時間乾燥した後、PEI樹脂1.5cmをダイス(直径:1mm、長さ10mm)に装着した375℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に面積が1.0cmのプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が375℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、PEI樹脂を溶融流出させてその見掛けの剪断粘度を測定した。
【0172】
PEI樹脂を粉砕したら、このPEI樹脂と実施例1で使用した導電材料とを表4で示す質量比率で攪拌混合し、攪拌混合物を調製した。こうして攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を実施例1で使用した真空ポンプ付きの同方向回転二軸押出機に供給して減圧下で溶融混練し、同方向回転二軸押出機機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後カットし、ペレット状の成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度350℃~380℃、アダプター温度380℃、ダイス温度360℃の条件下で溶融混練した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ383℃であった。
【0173】
次いで、調製した成形材料を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、成形材料を実施例1で使用したφ20mmの単軸押出成形機に投入し、幅150mmのダイスであるTダイスから連続して押し出すことにより、帯形の集電体用導電性樹脂フィルムを成形した。成形材料の含水率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名:CA‐100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により確認した。幅150mmのダイスであるTダイスから連続して押し出すことにより、帯形の集電体用導電性樹脂フィルムを成形した。
【0174】
単軸押出成形機は、実施例1で使用した同様のL/D=25、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は350℃~380℃、Tダイの温度は360℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管の温度は380℃、ギアポンプは380℃に調整した。Tダイス入口の樹脂温度から溶融した成形材料の温度を測定したところ、384℃であった。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス15L/分を供給した。
【0175】
集電体用導電性樹脂フィルムを製造したら、この集電体用導電性樹脂フィルム製造中の目ヤニの発生の有無、集電体用導電性樹脂フィルムの厚さ、比重、耐薬品性、導電性を実施例1と同様の方法によりそれぞれ評価して表5にまとめた。
【0176】
集電体用導電性樹脂フィルム融点が認められなかったため、相対結晶化度は算出できなかった。また、集電体用導電性樹脂フィルムをNMPと電解液に浸漬したところ、集電体用導電性樹脂フィルムは溶解し、実用性に疑義が生じた。
【0177】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明に係る二次電池の集電体用導電性樹脂フィルム及びその製造方法は、各種二次電池の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0179】
1 成形材料
2 ポリアリーレンエーテルケトン樹脂
3 導電材料
4 集電体用導電性樹脂フィルム
10 溶融混練機
12 シリンダー
13 スクリュー
14 ダイス
20 溶融押出成形機
23 ダイス
26 圧着ロール
27 冷却ロール
28 巻取機
29 巻取管
図1
図2
図3
図4