IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

特開2023-163732アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器
<>
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図1
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図2
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図3
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図4
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図5
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図6
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図7
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図8
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図9
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図10
  • 特開-アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163732
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/034 20160101AFI20231102BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20231102BHJP
【FI】
H02P25/034
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074824
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】前出 淳
【テーマコード(参考)】
2K005
5H540
【Fターム(参考)】
2K005AA11
2K005BA48
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA40
2K005CA53
5H540AA10
5H540BA06
5H540EE02
5H540EE05
5H540EE11
5H540EE14
5H540EE15
5H540FA03
5H540GG03
5H540GG05
5H540GG07
(57)【要約】
【課題】可動範囲内に障害物が存在する状況において、消費電力を削減し、または、信頼性の低下を抑制可能なアクチュエータドライバを提供する。
【解決手段】誤差検出器232は、位置指令PREFと、可動部の位置を示すフィードバック信号PFBとの誤差errを生成する。補償器234は、誤差にerr応じて、制御信号ctrlを生成する。クランプ回路236は、制御信号ctrlを、許容範囲に収まるようにクランプして、クランプ制御信号ctrl’を生成する。駆動部220は、クランプ制御信号ctrl’に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する。保護回路238Aは、クランプ回路236に入力される制御信号ctrlを監視し、制御信号ctrlが所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路236の許容範囲を狭める。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバであって、
位置指令と、前記可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、
前記誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、
前記制御信号を許容範囲に収まるようにクランプしてクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、
前記クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、
前記クランプ回路に入力される前記制御信号を監視し、前記制御信号が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、前記クランプ回路の前記許容範囲を狭める保護回路と、
を備える、アクチュエータドライバ。
【請求項2】
前記保護回路は、前記制御信号の絶対値を前記所定範囲に対応するしきい値と比較し、前記制御信号の絶対値が前記しきい値を越えている時間が、前記所定時間に達すると、前記クランプ回路の前記許容範囲を狭める、請求項1に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項3】
可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバであって、
位置指令と、前記可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、
前記誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、
前記制御信号を許容範囲に収まるようにクランプしてクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、
前記クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、
前記誤差を監視し、前記誤差が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、前記クランプ回路の前記許容範囲を狭める保護回路と、
を備える、アクチュエータドライバ。
【請求項4】
前記保護回路は、前記誤差の絶対値を前記所定範囲に対応するしきい値と比較し、前記誤差の絶対値が前記しきい値を越えている時間が、前記所定時間に達すると、前記クランプ回路の前記許容範囲を狭める、請求項3に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項5】
前記補償器は、比例積分制御器を含む、請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータドライバ。
【請求項6】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータドライバ。
【請求項7】
イメージセンサと、
前記イメージセンサへの入射光路上に設けられた手ブレ補正レンズと、
前記手ブレ補正レンズを含む可動部を位置決めするアクチュエータと、
請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータドライバと、
を備える、カメラモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のカメラモジュールを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの電子機器に搭載されるカメラモジュールに、光学手ぶれ補正(OIS:Optical Image Stabilizer)の採用が進められている。光学手ぶれ補正付きのカメラモジュールは、イメージセンサ、イメージセンサの撮像面と平行なXY平面内で移動可能なレンズ(手ブレ補正用レンズと称する)、レンズを位置決めするアクチュエータ、アクチュエータを制御するアクチュエータドライバを備える。ジャイロセンサなどのブレ検出手段によってブレが検出されると、アクチュエータドライバは、ブレが相殺されるようにアクチュエータを駆動し、レンズをシフトさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータドライバは、フィードバックによる位置制御を行う。具体的には、ホールセンサなどによって可動部の位置を示す位置検出信号を生成し、位置検出信号と、可動部の目標位置を指示する指令値の誤差がゼロに近づくように、アクチュエータに供給する電力をフィードバック制御する。
【0005】
レンズの可動範囲は、メカ端によって規定され、可動部の目標位置は、可動範囲内で指定される。可動範囲内に、可動部の移動を妨げる障害物が存在する状況が生じうる。たとえば、温度変化によってメカ端相当の位置信号が変化すると、メカ端が障害物となりうる。あるいはレンズが外部に露出している場合、レンズが外部の障害物と接触する可能性もある。
【0006】
かかる状況で、目標位置が障害物よりも可動範囲の外側に設定されると、可動部が障害物と接触して動かなくなる。アクチュエータドライバは、フィードバック制御によって、可動部を目標位置に移動させようとするため、駆動信号が大きくなる。この状態が長時間持続すると、無駄な電力を消費するばかりでなく、アクチュエータやアクチュエータドライバの信頼性を低下させる要因となる。
【0007】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、可動範囲内に障害物が存在する状況において、消費電力を削減し、または、信頼性の低下を抑制可能なアクチュエータドライバの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様は、可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバに関する。アクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号を、許容範囲に収まるようにクランプしたクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、クランプ回路に入力される制御信号を監視し、制御信号が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路の許容範囲を狭める保護回路と、を備える。
【0009】
本開示の別の態様もまた、アクチュエータドライバである。このアクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号を、許容範囲に収まるようにクランプしたクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、誤差を監視し、誤差が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路の許容範囲を狭める保護回路と、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、消費電力を削減し、および/または、信頼性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュールのブロック図である。
図2図2は、アクチュエータドライバのブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係るサーボコントローラを備えるアクチュエータドライバのブロック図である。
図4図4は、図3のアクチュエータドライバのレベルダイアグラムである。
図5図5は、図3のアクチュエータドライバの動作波形図である。
図6図6は、図3の保護回路の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、図3の保護回路の別の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態2に係るサーボコントローラを備えるアクチュエータドライバのブロック図である。
図9図9は、図8のアクチュエータドライバの動作波形図である。
図10図10は、図8の保護回路の構成例を示すブロック図である。
図11図11は、図8の保護回路の別の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0014】
一実施形態に係るアクチュエータドライバは、可動部を位置決めするアクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号を、許容範囲に収まるようにクランプしたクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、クランプ回路に入力される制御信号を監視し、制御信号が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路の許容範囲を狭める保護回路と、を備える。
【0015】
正常状態では、十分に高いトルクを発生するために、クランプ回路の許容範囲は広く規定される。可動範囲内で可動部が障害物と接触すると、フィードバック信号と目標値の誤差がゼロに収束せず、したがって誤差にもとづいて生成される制御信号が所定範囲を逸脱し、その状態が持続する。このような異常状態を検出して、クランプ回路の許容範囲を狭めることで、駆動信号が小さくなり消費電力が削減され、および/または、アクチュエータドライバや駆動対象のアクチュエータの信頼性を改善できる。
【0016】
一実施形態において、保護回路は、制御信号の絶対値を所定範囲に対応するしきい値と比較し、制御信号の絶対値がしきい値を越えている時間が、所定時間に達すると、クランプ回路の許容範囲を狭めてもよい。
【0017】
一実施形態に係るアクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差を生成する誤差検出器と、誤差に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号を、許容範囲に収まるようにクランプしたクランプ制御信号を生成するクランプ回路と、クランプ制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、誤差を監視し、誤差が所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路の許容範囲を狭める保護回路と、を備える。
【0018】
可動範囲内で可動部が障害物と接触すると、フィードバック信号と目標値の誤差がゼロに収束せず、所定範囲を逸脱し、その状態が持続する。この状態を検出して、クランプ回路の許容範囲を狭めることで、駆動信号が小さくなり消費電力が削減され、および/または、アクチュエータドライバや駆動対象のアクチュエータの信頼性を改善できる。
【0019】
一実施形態において、保護回路は、誤差の絶対値を所定範囲に対応するしきい値と比較し、誤差の絶対値がしきい値を越えている時間が、所定時間に達すると、クランプ回路の許容範囲を狭めてもよい。
【0020】
一実施形態において、補償器は、比例積分(PI)制御器を含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、アクチュエータドライバは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0022】
一実施形態に係るカメラモジュールは、イメージセンサと、イメージセンサへの入射光路上に設けられた手ブレ補正レンズと、手ブレ補正レンズを含む可動部を位置決めするアクチュエータと、上述のいずれかのアクチュエータドライバと、を備える。
【0023】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュールのブロック図である。カメラモジュール100は、イメージセンサ102、手ブレ補正レンズ104、第1アクチュエータ106_1、第2アクチュエータ106_2、アクチュエータドライバ200、位置検出素子110_1,110_2、ブレ検出手段112、CPU(Central Processing Unit)114を備える。カメラモジュール100はその他、オートフォーカス用のレンズ、アクチュエータなどを備えるが、図1では省略している。
【0027】
理解の容易化のため、手ブレ補正レンズ104の光軸方向をZ軸にとるものとする。また、カメラモジュール100が、図1の姿勢にあるときの、左右方向をX軸、上下方向をY軸にとるものとする。X軸を第1軸、Y軸を第2軸とも表記する。
【0028】
手ブレ補正レンズ104は、イメージセンサ102に入射する光の光路上に配置される。イメージセンサ102は、CMOSセンサやCCDであり、手ブレ補正レンズ104を透過した像を撮影する。
【0029】
手ブレ補正レンズ104は、イメージセンサ102の撮像面と平行な面内(XY平面)において、X方向およびY方向に移動可能な状態で支持されている。第1アクチュエータ106_1は、手ブレ補正レンズ104を含む可動部105を第1軸(X軸)方向に位置決めし、第2アクチュエータ106_2は、可動部105を第2軸(Y軸)方向に位置決めする。第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2は、リニアアクチュエータであり、たとえばボイスコイルモータが用いられる。手ブレ補正レンズ104を含む可動部105は、第1軸方向、第2軸方向それぞれについて、可動範囲が機械的に制約されている。可動範囲の端部を、メカ端と称する。第1軸方向について、正方向と負方向それぞれに、メカ端が存在し、第2軸方向についても正方向と負方向それぞれに、メカ端が存在する。
【0030】
ブレ検出手段112は、カメラモジュール100のブレを検出し、ブレを示すブレ検出信号S1を生成する。ブレ検出手段112はたとえばジャイロセンサであり、カメラモジュール100のX軸周りの角速度ω、Y軸周りの角速度ω、Z軸周りの角速度ωを検出する。手ブレ補正レンズ104のX軸方向の位置が制御することにより、Y軸周りの回転(ブレ)を補正することができ、手ブレ補正レンズ104のY軸方向の位置が制御することにより、X軸周りの回転(ブレ)を補正することができる。ブレ検出信号S1は、少なくとも2軸の角速度ω,ωを含む。
【0031】
アクチュエータドライバ200は、ブレ検出手段112が検出したブレ検出信号S1にもとづいて、ブレが相殺されるように、手ブレ補正レンズ104の変位の目標値を示すターゲットコード(位置指令)を生成する。アクチュエータドライバ200は、内部で生成したターゲットコードにもとづいて、第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2それぞれに対する駆動信号S2_1,S2_2を生成する。アクチュエータ106_i(i=1,2)は、対応する駆動信号S2_iに応じて手ブレ補正レンズ104を位置決めする。
【0032】
手振れ補正では、手ブレ補正レンズ104を正確に位置決めする必要があるため、フィードバック制御(クローズドループ制御)が採用される。位置検出素子110_1,110_2はそれぞれ、手ブレ補正レンズ104の第1軸方向の位置(変位量)Pおよび第2軸方向の位置(変位量)Pを示す位置検出信号S3_1,S3_2を生成する。位置検出素子110はたとえばホールセンサなどを用いることができる。
【0033】
アクチュエータドライバ200は、手ブレが補正されるように、第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2を駆動する。具体的には第1モードにおいて、アクチュエータドライバ200は、第1位置検出信号S3_1の示す手ブレ補正レンズ104の位置Pが、ターゲットコードが示す目標位置PX(REF)と一致するように、駆動信号S2_1をフィードバック制御する。同様に、アクチュエータドライバ200は、第2位置検出信号S3_2の示す手ブレ補正レンズ104の位置Pが、ターゲットコードが示す目標位置PY(REF)と一致するように、駆動信号S2_2をフィードバック制御する。
【0034】
以上がカメラモジュール100の全体の構成である。続いて、アクチュエータドライバ200について説明する。
【0035】
図2は、アクチュエータドライバ200のブロック図である。アクチュエータドライバ200は、制御部210および第1駆動部220_1および第2駆動部220_2を備える。ジャイロセンサ112Aは、図1のブレ検出手段112であり、カメラモジュール100の角速度を検出する。
【0036】
制御部210は、位置指令生成部212、第1サーボコントローラ230_1、第2サーボコントローラ230_2を備える。
【0037】
位置指令生成部212は、第1モードにおいて、ジャイロセンサ112Aが生成するブレ検出信号S1を受け、X軸およびY軸それぞれについて、ブレを相殺することができる手ブレ補正レンズ104の位置を示す位置指令XREF,YREFを生成する。たとえば位置指令生成部212は、X軸周りの角速度ωを積分して所定のゲインを乗算することにより、位置指令XREFを生成する。同様に、位置指令生成部212は、Y軸周りの角速度ωを積分して所定のゲインを乗算することにより、位置指令YREFを生成する。
【0038】
位置検出素子110_1が生成する位置検出信号S3_1は、図示しないA/Dコンバータによって、デジタルのフィードバック信号XFBに変換される。同様に位置検出素子110_2が生成する位置検出信号S3_2は、図示しないA/Dコンバータによって、デジタルのフィードバック信号YFBに変換される。フィードバック信号XFB,YFBはそれぞれ、可動部105のX方向、Y方向の位置(X座標,Y座標)を示す。
【0039】
第1サーボコントローラ230_1は、フィードバック信号XFBと位置指令XREFの誤差がゼロに近づくように、制御信号S4_1を生成する。第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた駆動信号S2_1を生成する。制御信号S4_1はたとえば電流指令であり、第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた電流量の駆動電流を、第1アクチュエータ106_1に供給する。あるいは制御信号S4_1は電圧指令であり、第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた電圧レベルの駆動電圧を、第1アクチュエータ106_1に供給する。
【0040】
同様に、第2サーボコントローラ230_2は、位置検出素子110_2が生成する位置検出信号S3_2を、可動部105のY座標を示すフィードバック信号YFBとして受ける。第2サーボコントローラ230_2は、フィードバック信号YFBと位置指令YREFの誤差がゼロに近づくように、制御信号S4_2を生成する。第2駆動部220_2は、制御信号S4_2に応じた駆動信号S2_2を生成する。
【0041】
図3は、実施形態1に係るサーボコントローラ230Aを備えるアクチュエータドライバ200Aのブロック図である。サーボコントローラ230Aは、図2の第1サーボコントローラ230_1または第2サーボコントローラ230_2に対応する。図3におけるPは、図2のXまたはYである。
【0042】
サーボコントローラ230Aは、誤差検出器232、補償器234、クランプ回路236、保護回路238Aを備える。
【0043】
誤差検出器232は、位置指令PREFと、可動部105の位置を示すフィードバック信号PFBとの誤差errを生成する。誤差検出器232は、減算器で構成できる。
【0044】
補償器234は、誤差errに応じて、制御信号ctrlを生成する。補償器234をサーボフィルタとも称する。補償器234は、たとえばPI(比例・積分)制御器であり、誤差errに比例ゲインkpを乗算した値と、誤差errの積分値に積分ゲインkiを乗算した値と、を加算し、制御信号ctrlを生成してもよい。補償器234は、PID(比例・積分・微分制御器)であってもよい。
【0045】
以下、理解の容易化のために、制御信号ctrlは、正および負をとるものとし、制御信号ctrlが正のとき、駆動電流の向きが正となり、可動部105は、正方向に移動するものとする。反対に、制御信号ctrlが負のとき、駆動電流の向きが負となり、可動部105は、負方向に移動するものとする。なお、制御信号ctrlの正負は、便宜的なものであり、正負の境界は、デジタルの値0であるとは限らない。たとえば制御信号ctrlが10ビットである場合、512より大きい領域を正、512より小さい領域を負とすることができる。
【0046】
クランプ回路236は、制御信号ctrlを受け、クランプ制御信号ctrl’を生成する。クランプ制御信号ctrlは、クランプ信号ctrlを許容範囲CLMPn~CLMPpに収まるようにクランプしたものである。CLMPnは負側のクランプレベルであり、CLMPpは正側のクランプレベルである。
【0047】
駆動部220は、クランプ制御信号S4(ctrl’)に応じた駆動信号S2をボイスコイルモータに印加する。
【0048】
保護回路238Aは、クランプ回路236に入力されるクランプ処理前の制御信号ctrlを監視する。保護回路238Aには、所定範囲THn~THpが設定されている。保護回路238Aは、制御信号ctrlが所定範囲(THn~THp)を逸脱した状態(ctrl>THnまたはctrl<THp)が、所定時間τにわたり持続するとき、保護信号PROTをアサートし、クランプ回路236の許容範囲を狭める。狭められた後の所定範囲は、THn’~THp’となる。所定時間τは、50ms~1000msの間、たとえば100ms程度とするとよい。
【0049】
以上がアクチュエータドライバ200Aの動作である。続いてアクチュエータドライバ200Aの動作を説明する。
【0050】
図4は、図3のアクチュエータドライバ200Aのレベルダイアグラムである。クランプ回路236のクランプレベルは、通常状態(i)において、CLMPnとCLMPpであり、保護状態(ii)において、CLMPn’とCLMPp’となる。また保護回路238Aに設定される保護のための所定範囲は、THn<CLMPn、THp>CLMPpを満たしている。
【0051】
図5は、図3のアクチュエータドライバ200Aの動作波形図である。時刻tより前において、位置指令PREFはある値pであり、可動部105は、位置指令PREFに応じた位置に安定化されている。したがって、位置指令PREFとフィードバック信号PFBの誤差errはゼロである。
【0052】
時刻tに、位置指令PREFの値が、pからpに変化しはじめる。そうすると、フィードバック信号PFBが新たな位置指令の値pに近づくようにフィードバックがかかる。位置pとpの間の位置pOBSに、障害物が存在していたとする。時刻tに可動部105が、位置pOBSまで移動すると、それ以上動けなくなり、停止する。そうすると、時刻t以降、誤差errが一定となり、誤差errの積分項を含む制御信号ctrlは、時間とともに増加していく。
【0053】
CLMPpは、クランプ回路236の許容範囲の上限を示している。時刻tに制御信号ctrlが許容範囲の上限CLMPpに達すると、制御信号ctrl’がクランプされる。
【0054】
THpは、保護回路238Aに規定される所定範囲の上限を示している。時刻tに、制御信号ctrlが、所定範囲の上限THpを超える。時刻tから、所定時間τ経過後の時刻tに、保護回路238Aは保護信号PROTをアサートする。保護信号PROTのアサートに応答して、クランプ回路236の許容範囲の上限(クランプレベル)CLMPpが、CLMPp’まで低下し、許容範囲が狭くなる。これにより、クランプ回路236から出力されるクランプ後の制御信号ctrl’(S4)は、CLMPp’まで低下する。
【0055】
以上がアクチュエータドライバ200Aの動作である。
【0056】
制御信号ctrlが所定範囲を超えた状態が所定時間τ持続した場合、障害物などによって、可動部105が移動できない可能性が高い。そこでそのような状態を検出すると、クランプ回路236の許容範囲を狭めることで、制御信号S4を小さくでき、駆動電流を減らすことができる。これにより、消費電力を削減できる。また駆動電流を減らすことで発熱を減らし、アクチュエータドライバ200Aやアクチュエータの信頼性が低下するのを抑制できる。
【0057】
続いて保護回路238Aの構成例を説明する。
【0058】
図6は、図3の保護回路238Aの構成例を示すブロック図である。保護回路238Aは、絶対値回路240、比較器242、タイマー回路244を含む。絶対値回路240は、制御信号ctrlの絶対値を生成する。
【0059】
比較器242は、絶対値回路240の出力uを、しきい値thと比較する。このしきい値thは、所定範囲の上限THpおよび下限THnの絶対値に相当する。タイマー回路244は、比較器242の出力がu>thを示すとき、時間を測定する。そして測定した時間が、所定時間τに達すると、保護信号PROTをアサートする。
【0060】
図7は、図3の保護回路238Aの別の構成例を示すブロック図である。保護回路238Aは、比較器242p、242n、OR回路243、タイマー回路244を含む。比較器242pは、制御信号ctrlを、所定範囲の上限THpに相当するしきい値thpと比較し、ctrl>thpのときに、ハイを出力する。比較器242nは、制御信号ctrlを、所定範囲の下限THnに相当するしきい値thnと比較し、ctrl<thnのときに、ハイを出力する。OR回路243は、2つの比較器242,243の出力を受け、ctrl>thpまたはctrl<thnが成立するときに、タイマー回路244をスタートさせる。タイマー回路244は、所定時間τが経過すると、保護信号PROTをアサートする。
【0061】
図8は、実施形態2に係るサーボコントローラ230Bを備えるアクチュエータドライバ200Bのブロック図である。図8のサーボコントローラ230Bについて、図3のサーボコントローラ230Aとの相違点を説明する。
【0062】
サーボコントローラ230Bの保護回路238Bは、誤差検出器232が生成する誤差errを監視する。保護回路238Bは、誤差errが所定範囲を逸脱した状態が、所定時間τにわたり持続するとき、保護信号PROTをアサートし、クランプ回路236の許容範囲を狭める。
【0063】
図9は、図8のアクチュエータドライバ200Bの動作波形図である。図9において、可動部105の座標は負であり、位置指令PREFおよびフィードバック信号PFBも負であるとする。時刻tより前において、位置指令PREFはある値pであり、可動部105は、位置指令PREFに応じた位置に安定化されている。したがって、位置指令PREFとフィードバック信号PFBの誤差errはゼロである。
【0064】
時刻tに、位置指令PREFの値が、pからpに向かって変化しはじめる。時刻tの後、時刻tに誤差errが、しきい値THnより低くなる。これにより、保護回路238Bによる計時がスタートする。
【0065】
時刻t以降、誤差errが負をとり続ける。誤差errの積分値を含む制御信号ctrlは、時間とともに小さくなっていく(絶対値が増加していく)。
【0066】
位置pとpの間の位置pOBSに、障害物が存在していたとする。時刻tに可動部105が、位置pOBSまで移動すると、それ以上動けなくなり、停止する。時刻t以降、誤差errは負の一定となり、制御信号ctrlはさらに低下していく。
【0067】
CLMPnは、クランプ回路236の許容範囲の下限を示している。時刻tに制御信号ctrlが許容範囲の下限CLMPnを下回ると、制御信号ctrl’がクランプされる。
【0068】
時刻tから所定時間τ経過後の時刻tに、保護回路238Bは保護信号PROTをアサートする。保護信号PROTのアサートに応答して、クランプ回路236の許容範囲の下限CLMPnが、CLMPn’まで増加し、許容範囲が狭くなる。これにより、クランプ回路236から出力されるクランプ後の制御信号ctrl’(S4)は、CLMPn’まで上昇し、制御信号ctrl’の絶対値が小さくなる。
【0069】
以上がアクチュエータドライバ200Bの動作である。このアクチュエータドライバ200Bによれば、実施形態1のアクチュエータドライバ200Aと同様の効果を得ることができる。
【0070】
続いて保護回路238Bの構成例を説明する。
【0071】
図10は、図8の保護回路238Bの構成例を示すブロック図である。保護回路238Bは、図6の保護回路238Aと同様に構成することができ、絶対値回路240、比較器242、タイマー回路244を含む。絶対値回路240は、制御信号ctrlに代えて、誤差errの絶対値を生成する。
【0072】
比較器242は、絶対値回路240の出力uを、しきい値thと比較する。このしきい値thは、所定範囲の上限THpおよび下限THnの絶対値に相当する。タイマー回路244は、比較器242の出力がu>thを示すとき、時間を測定する。そして測定した時間が、所定時間τに達すると、保護信号PROTをアサートする。
【0073】
図11は、図8の保護回路238Bの別の構成例を示すブロック図である。保護回路238Bは、比較器242p、242n、OR回路243、タイマー回路244を含む。比較器242pは、誤差errを、所定範囲の上限THpに相当する正のしきい値thpと比較し、ctrl>thpのときに、ハイを出力する。比較器242nは、誤差errを、所定範囲の下限THnに相当する負のしきい値thnと比較し、ctrl<thnのときに、ハイを出力する。OR回路243は、2つの比較器242,243の出力を受け、ctrl>thpまたはctrl<thnが成立するときに、タイマー回路244をスタートさせる。タイマー回路244は、所定時間τが経過すると、保護信号PROTをアサートする。
【0074】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
100 カメラモジュール
102 イメージセンサ
104 手ブレ補正レンズ
105 可動部
106 アクチュエータ
106_1 第1アクチュエータ
106_2 第2アクチュエータ
110,110_1,110_2 位置検出素子
112 ブレ検出手段
112A ジャイロセンサ
114 CPU
200 アクチュエータドライバ
210 制御部
212 位置指令生成部
230_1 第1サーボコントローラ
230_2 第2サーボコントローラ
220 駆動部
220_1 第1駆動部
220_2 第2駆動部
230A,230B サーボコントローラ
232 誤差検出器
234 補償器
236 クランプ回路
238A,238B 保護回路
240 絶対値回路
242,242p、242n 比較器
243 OR回路
244 タイマー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11