(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163742
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/65 20230101AFI20231102BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20231102BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H04N5/363
H04N5/369
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074847
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立田 一葵
(72)【発明者】
【氏名】大倉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮内 健
(72)【発明者】
【氏名】大和田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】韓 相萬
(72)【発明者】
【氏名】高柳 功
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA02
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA14
4M118DD04
4M118DD12
4M118FA06
4M118FA33
5C024CX05
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
5C024GY39
5C024HX35
5C024HX50
(57)【要約】
【課題】LCG信号のkTCノイズを低減でき、HCG信号とLCG信号の結合点におけるSNRの低下を防止でき、ひいては高画質化を図ることが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供する。
【解決手段】リセット期間PR1の開始時点に第1のリセット用トランジスタおよび第2のリセット用トランジスタを導通状態に切り換え、リセット期間PR1が開始してから所定の第1の期間PR11は第1のリセットラインをリセット電位との接続状態に保持し、第1の期間PR1経過後に、第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように、第2のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換えて、第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、第2の期間PR12が経過してリセット期間PR1の終了時点になると第1のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、
前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、
前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、
転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、
変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、
前記リセット素子は、
前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、
リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、
リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持し、
前記ノイズ低減部は、
前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、
リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、
前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、
前記読み出し部は、
前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、
前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える
固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素のリセット素子は、第1のリセット制御信号により導通状態および非導通状態が切り換えられる第1のリセット用トランジスタにより形成され、
前記ノイズ低減部は、
前記第1のリセットラインと前記リセット電位との間に接続され、第2のリセット制御信号により導通状態および非導通状態が切り換えられる第2のリセット用トランジスタと、
前記第1のリセットラインに接続されたリセット制御用容量素子と、を含む
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記リセット用容量素子の容量は、リセット対象の容量より大きい
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減処理を含む第1のリセット処理においては、前記読み出し部および前記ノイズ低減部の制御の下、
前記リセット期間の開始時点に前記第1のリセット用トランジスタおよび前記第2のリセット用トランジスタを導通状態に切り換え、リセット対象が接続された前記第2のリセットラインと前記第1のリセットラインを接続状態に切り換えるとともに、前記第1のリセットラインと前記リセット電位を接続状態に切り換えて、前記リセット対象の電荷の排出処理を開始し、
リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、
前記第1の期間経過後に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように、前記第2のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換えて、前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、
前記第2の期間が経過してリセット期間の終了時点になると前記第1のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換える
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記画素は、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記フローティングディフュージョンと前記蓄積容量素子とを選択的に接続する蓄積接続素子と、
前記フローティングディフュージョンで変換した電圧信号を増幅して出力するソースフォロワ素子と、
をさらに含み、
前記ノイズ低減処理を含まない第2のリセット処理においては、前記読み出し部および前記ノイズ低減部の制御の下、
露光後の最初のリセット読み出し処理では、前記第1のリセット用トランジスタは非導通状態のままで、前記蓄積接続素子を非導通状態に切り換えて前記蓄積容量素子を前記フローティングディフュージョンと切り離し、前記フローディングディフュージョンの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を分離させて前記フローティングディフュージョンの利得を前記第1容量で決まる第1変換利得に設定し、第1変換利得リセット読み出し処理を行う
請求項4記載の固体撮像装置。
【請求項6】
2つの変換利得に応じた信号方向が逆方向である第1変換利得信号および第2変換利得信号を画素信号として読み出し可能であり、
前記読み出し部は、変換利得信号読み出しモード時に、
前記読み出し部は、
前記第1のリセット用トランジスタ、前記第2のリセット用トランジスタ、前記蓄積接続素子、および前記転送素子を所定期間導通状態に保持して前記フローティングディフュージョン、前記蓄積容量素子、および前記光電変換素子をリセットし、前記転送素子を非導通状態にして前記第1のリセット処理を行い露光期間を開始した後、
第1変換利得リセット読み出し処理、第1変換利得信号読み出し処理、第2変換利得信号読み出し処理、および第2変換利得リセット読み出し処理を順に行い、
前記第2変換利得リセット読み出し処理においては、前記第1のリセット処理を行う
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1変換利得リセット読み出し処理においては、前記第2のリセット処理を行う
請求項6記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記読み出し部は、
前記第1のリセット用トランジスタ(リセット素子)、前記第2のリセット用トランジスタ、前記蓄積接続素子、および前記転送素子を所定期間導通状態に保持して前記フローティングディフュージョン、前記蓄積容量素子、および前記光電変換素子をリセットし、前記転送素子を非導通状態にして露光期間を開始した後、
前記蓄積接続素子を非導通状態に切り換えて前記蓄積容量素子を前記フローティングディフュージョンと切り離し、前記フローディングディフュージョンの電荷と前記蓄積容量素子の電荷を分離させて前記フローティングディフュージョンの利得を前記第1容量で決まる第1変換利得に設定し、
第1のリセット読み出し期間に、前記ソースフォロワ素子から前記フローティングディフュージョンの第1容量で決まる第1変換利得で変換した第1の読み出しリセット信号を読み出し、当該第1の読み出しリセット信号に対する所定の処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理と、
前記第1のリセット読み出し期間後の第1の転送期間に続く第1の読み出し期間に、前記ソースフォロワ素子から前記フローティングディフュージョンの第1容量で決まる第1変換利得で変換した第1の読み出し信号を読み出し、当該第1の読み出し信号に対する所定の処理を行う第1変換利得信号読み出し処理と、を行い、続いて、
前記蓄積接続素子を所定期間導通状態に切り換えて前記蓄積容量素子を前記フローティングディフュージョンと接続し、前記フローディングディフュージョンの電荷とオーバーフロー電荷に関連する前記蓄積容量素子の電荷を共有させて前記フローティングディフュージョンの利得を前記第2容量で決まる第2変換利得に切り換え、
前記第1の読み出し期間後の第2の転送期間に続く第2の読み出し期間に、前記ソースフォロワ素子から前記フローティングディフュージョンの第2容量で決まる第2変換利得で変換した第2の読み出し信号を読み出し、当該第2の読み出し信号に対する所定の処理を行う第2変換利得信号読み出し処理を行い、
次いで、リセット期間の開始時点に前記第1のリセット用トランジスタおよび前記第2のリセット用トランジスタを導通状態に切り換え、リセット対象が接続された前記第2のリセットラインと前記第1のリセットラインを接続状態に切り換えるとともに、前記第1のリセットラインと前記リセット電位を接続状態に切り換えて、前記リセット対象の電荷の排出処理を開始し、
リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、
前記第1の期間経過後に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように、前記第2のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換えて、前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、
前記第2の期間が経過してリセット期間の終了時点になると前記第1のリセット用トランジスタを非導通状態に切り換え、
前記第1のリセット処理により前記フローティングディフュージョンをリセットした後、前記ソースフォロワ素子から前記フローティングディフュージョンの第2容量で決まる第2変換利得で変換した第2のリセット信号を読み出し、当該第2の読み出し信号に対する所定の処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理を行うことが可能である
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記画素は、
前記光電変換素子と前記蓄積容量素子が一方向に並んで配置され、
前記画素部は、
前記画素が配列された画素アレイと、
少なくとも前記第1のリセット用トランジスタを駆動する制御信号を生成するリピータバッファが前記画素アレイの画素間に配列されたバッファアレイと、を含み、
前記リピータバッファは、一方向の一方側に隣接する前記画素の前記蓄積容量素子と隣接するように配置され、当該リピータバッファと一方向の他方側に隣接する画素の前記光電変換素子と隣接するようにダミーの蓄積容量素子が配置されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子側のアクティブ領域が前記第2の端子側のアクティブ領域より大きく、前記チャネル形成領域が、前記第2の端子側から前記第1の端子側に向かって広くなるように形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子および前記第2の端子の各々は、他層と電気的に接続するための第1のコンタクト端子および第2のコンタクト端子が配置され、
前記第1のコンタクト端子と前記ゲート電極下の第1の抵抗値が、前記第2のコンタクト端子と前記ゲート電極下の第2の抵抗値より小さくなるように形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子に配置される前記第1のコンタクト端子の方が、前記第2の端子に配置される第2のコンタクト端子より多い
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記ゲート電極は、他層と電気的に接続するための一のコンタクト端子が前記第2の端子側に偏らせて配置され、他のコンタクト端子が前記第1の端子側に偏らせて配置され、
前記第2の端子側のゲート電極用コンタクト端子と前記第1の端子側の第1の端子用コンタクト端子間の前記ゲート電極の抵抗値を利用して、印加されるパルス状リセット制御信号の両コンタクト端子におけるオフになる時間に差をつけ、電荷を前記第2の端子側から前記第1の端子側に移動させるように形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第2の端子と前記ゲート電極間の前記チャネル形成領域におけるインピーダンスが、前記第1の端子と前記ゲート電極間の前記チャネル形成領域におけるインピーダンスより大きくなるように形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第2の端子側よりの前記ゲート絶縁膜の厚さが、前記第1の端子側よりの前記ゲート絶縁膜の厚さより厚く形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子および前記第2の端子のうち第1の端子側のみに、当該第1の端子に連続するように低濃度不純物層が形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子および前記第2の端子に連続するようにそれぞれ低濃度不純物層が形成され、
前記第2の端子側の前記低濃度不純物層に連続してウェルより不純物濃度を高めたポケット層が形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記第1の端子および前記第2の端子のうち第1の端子側のみに、当該第1の端子に連続するように埋め込みチャネル層が形成されている
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項19】
前記第1のリセット用トランジスタは、前記第1の端子および前記第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、前記第1の端子と前記第2の端子間に形成されるチャネル形成領域上に絶縁膜を介してゲート電極が配置された電界効果トランジスタにより形成され、
前記チャネル形成領域の不純物濃度が前記第2の端子側から前記第1の端子側に向かって濃くなるように濃度勾配を持たせてある
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項20】
光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、
前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、
前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、
転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、
変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、
前記リセット素子は、
前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、
リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、
リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持する
固体撮像装置の駆動方法であって、
前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、
前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、
リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、
前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、
前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項21】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、
前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、
前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、
前記画素は、
露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、
転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、
変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、
前記リセット素子は、
前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、
リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、
リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持し、
前記ノイズ低減部は、
前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、
リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、
前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、
前記読み出し部は、
前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、
前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
ところで、固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の画素の構成としては、たとえば一つのフォトダイオード(光電変換素子)に対して、転送素子としての転送トランジスタ、リセット素子としてのリセットトランジスタ、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタ、および選択素子としての選択トランジスタをそれぞれ一つずつ有する4トランジスタ(4Tr)構成の基本的な画素を例示することができる。
【0005】
転送トランジスタは、所定の転送期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFDに転送する。
リセットトランジスタは、所定のリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFDを電源線の電位にリセットする。
選択トランジスタは、読み出しスキャン時に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタはフローティングディフュージョンFDで電圧信号に変換した列出力の読み出し信号を垂直信号線に出力する。
【0006】
たとえば、読み出しスキャン期間において、リセット期間にフローティングディフュージョンFDがたとえば電源線の電位(基準電位)にリセットされた後、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、基準レベルの読み出しリセット信号(基準レベルの信号)Vrstとして垂直信号線に出力される。
続いて、所定の転送期間に、フォトダイオードで光電変換され蓄積された電荷(電子)がフローティングディフュージョンFDに転送される。そして、フローティングディフュージョンFDの電荷がFD容量に応じた利得をもって電圧信号に変換されて、信号レベルの読み出し信号(信号レベルの信号)Vsigとして垂直信号線に出力される。
画素の出力信号は、カラム読み出し回路において差分信号(Vsig-Vrst)としてCDS(相関二重サンプリング)処理される。
【0007】
このように、通常の画素読み出し信号(以下、画素信号という場合もある)PSは、1つの基準レベルの読み出しリセット信号Vrstと1つの信号レベルの読み出し信号Vsigにより形成される。
【0008】
ところで、特性向上のため、高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)を持つ高画質の固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)を実現する方法が種々提案されている。
【0009】
高ダイナミックレンジ化のアプローチの一つとして、横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC: Lateral Overflow Integration Capacitor)の構成を挙げることができる(たとえば特許文献1参照)。
LOFIC構成の画素は、上述した基本的構成に、蓄積容量素子としての蓄積キャパシタおよび蓄積接続素子としての蓄積トランジスタが追加されており、同一露光時間にフォトダイオードから溢れた過飽和電荷を捨てずに蓄積キャパシタに蓄積する。
【0010】
このLOFIC画素は、フローティングディフュージョンの容量Cfd1による変換利得(高利得側:1/Cfd1に比例)と、フローティングディフュージョンの容量Cfd1+蓄積キャパシタC2のLOFIC容量Cloficによる変換利得(低利得側:1/(Cfd1+Clofic)に比例)の2種類を持つことができる。
すなわち、LOFIC画素では、低変換利得(LCG)信号と高変換利得(HCG)信号をそれぞれ使用して、大きな飽和と小さなダークノイズを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-328493号公報
【特許文献2】特開2020-115603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、LOFICには、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合(接合)点におけるSNRの低下という重要な問題がある。
すなわち、LOFIC構成のみでは、低変換利得(LCG)信号のkTCノイズを取り除くことができないため、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合点におけるSNRが低下する。
【0013】
高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の信号方向は互いに逆方向であり、低変換利得(LCC)による読み出し処理において、読み出しリセット信号VRLのリセットノイズは読み出し輝度信号VSLのリセットノイズとは異なるため、差動ダブルサンプリング(DDS)と呼ばれる減算処理ではノイズを除去することは困難である。
【0014】
本発明は、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出す場合に、低変換利得(LCG)信号のkTCノイズを低減でき、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合点におけるSNRの低下を防止でき、ひいては高画質化を図ることが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、前記リセット素子は、前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持し、前記ノイズ低減部は、前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、前記読み出し部は、前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える。
【0016】
本発明の第2の観点は、光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、前記リセット素子は、前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持する固体撮像装置の駆動方法であって、前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える。
【0017】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、光電変換素子を含み、少なくとも2つの変換利得に応じてリセット状態時の読み出しリセット信号および前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた読み出し信号を画素信号として読み出し可能な画素が配置された画素部と、前記画素の少なくともリセット期間時のノイズ低減処理を行うノイズ低減部と、前記ノイズ低減部のノイズ低減処理を制御しつつ、前記画素部から画素信号の読み出しを行う読み出し部と、を有し、前記画素は、露光期間中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持して容量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、少なくとも前記フローティングディフュージョンの蓄積電荷をリセット電位に排出するリセット処理が可能なリセット素子と、変換利得に応じて前記フローティングディフュージョンとの接続状態または非接続状態に制御される蓄積容量素子と、を含み、前記リセット素子は、前記リセット電位側に接続される第1のリセットラインに接続された第1の端子と、リセット対象である前記フローティングディフュージョンおよび前記蓄積容量素子の少なくともいずれか一方側に接続される第2のリセットラインに接続された第2の端子と、を含み、リセット期間に所定レベルの制御信号を印加されると前記第1の端子と前記第2の端子間を導通状態に保持し、前記ノイズ低減部は、前記2つの変換利得のうち少なくとも一方の変換利得による読み出し処理における少なくともリセット期間に、リセット期間が開始してから所定の第1の期間は前記第1のリセットラインを前記リセット電位との接続状態に保持し、前記第1の期間経過後の第2の期間に、前記第1のリセットラインのインピーダンスが高くなるように前記第1のリセットラインをフローティング状態に切り換え、前記読み出し部は、前記リセット期間の開始時点から前記リセット素子を所定期間導通状態に保持し、前記第1の期間および前記第2の期間経過した前記リセット期間の終了時点で前記リセット素子を非導通状態に切り換える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出す場合に、低変換利得(LCG)信号のkTCノイズを低減でき、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合点におけるSNRの低下を防止でき、ひいては高画質化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本第1の実施形態に係る読み出し画素およびノイズ低減部の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のポテンシャル遷移を示す図である。
【
図5】ノイズ低減部を適用ない従来のフローティングディフュージョンに対する非ノイズ低減処理のポテンシャル遷移を比較例として示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタに対する第1のリセット制御信号の立ち下り時間とノイズとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素およびノイズ低減部の構成例を示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る画素部の画素配列の構成例を示す図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域の好適な構成例を説明するための図である。
【
図11】第1のリセット用トランジスタにおいて蓄積キャパシタCS側のインピーダンスが高い場合、チャネル電荷はCS側に移動せず、第1のリセットラインLRST1側に移動することを示す図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】本発明の第5の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
【
図14】本発明の第6の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
【
図15】本発明の第7の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
【
図16】
図15の画素要部の等価回路、動作タイミング、電荷の移動状態を示す図である。
【
図17】本発明の第8の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図18】本発明の第9の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図19】本発明の第10の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図20】本発明の第11の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図21】本発明の第12の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図22】本発明の第12の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
【
図23】本発明の第13の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【
図24】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素およびノイズ低減部の構成例を示す回路図である。
図3(A)~(E)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素およびノイズ低減部の読み出しシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【0022】
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえばCMOSイメージセンサにより構成される。
【0023】
この固体撮像装置10は、
図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、読み出し回路(カラム読み出し回路)40、水平走査回路(列走査回路)50、およびタイミング制御回路60を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50、およびタイミング制御回路60により画素信号の読み出し部70が構成される。
【0024】
本第1の実施形態において、画素部20に行列状に配列される読み出し画素200は、基本的に、
図2に示すような、構成を有している。
すなわち、読み出し画素200は、基本的に行列状に配列される光電変換読み出し部210、ノイズ低減部220、およびソースフォロワ用定電流源230を主構成要素として構成されている。
本実施形態では、ノイズ低減部220、およびソースフォロワ用定電流源230は、画素配列の各列(row)に1つずつ配置され、各列で共用される。ただし、光電変換読み出し部210ごとに設けてもよい。
【0025】
光電変換読み出し部210は、転送される電荷を電圧信号として読み出すために保持するフローティングディフュージョンFD(Floating Diffusion;浮遊拡散層)11と、露光期間PEXP中に入射光量に応じた電荷を蓄積する光電変換素子としてのフォトダイオードPD11と、露光期間PEXP中は非導通状態に保持され、転送期間に導通状態に保持されて光電変換素子としてのフォトダイオードPD11に蓄積された電荷をフローティングディフュージョンFD11に転送する転送素子としての転送トランジスタTG11-Trと、フローティングディフュージョンFD11の蓄積電荷を排出するリセット処理が可能なリセット素子としての第1のリセット用トランジスタRST11-Trと、を含んで構成されている。
【0026】
さらに、光電変換読み出し部210は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ出るオーバーフロー電荷を蓄積可能な蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11と、フローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11とを選択的に接続する蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trと、を含んで構成されている。
【0027】
さらに、光電変換読み出し部210は、光電変換素子としてのフォトダイオードPD11から溢れ、転送トランジスタTG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11に溢れ出る電荷を蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11の形成領域方向にオーバーフローさせることが可能なオーバーフローパスが形成されていてもよい。
【0028】
また、読み出し画素200において、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDは、低ノイズ用に非常に小さい容量に形成されている。
蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、高FWC(Full Well Capacity)用に非常に大きい容量(静電容量)に設定されている。蓄積キャパシタCS11の容量CS1は、フローティングディフュージョンFD11の容量CFDより大きい。
そして、高変換利得にはフローティングディフュージョンFD11の容量CFDが主として用いられ、低変換利得には蓄積キャパシタCS11の容量CS1も用いられる。
【0029】
フォトダイオードPD11は、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各電界効果トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷がホールであったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
【0030】
各読み出し画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による界面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまうおそれがある。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0031】
転送トランジスタTG11-Trは、フォトダイオードPD11とフローティングディフュージョンFD11の間に接続され、制御信号TGを通じて制御される。
転送トランジスタTG11-Trは、制御信号TGがハイレベル(H)の期間に選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD11で光電変換され蓄積ノードに蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFD11に転送する。
【0032】
第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、電界効果トランジスタ(ここではNMOSトランジスタ)により形成され、第1の端子としてのドレイン端子TD1がリセット用電源電位(本実施形態では電源電位Vdd)側に接続する第1のリセットラインLRST1に接続されている。
第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第2の端子としてのソース端子TS1が蓄積ノードNDS11を介してリセット対象であるフローティングディフュージョンFD11や蓄積キャパシタCS11等に接続する第2のリセットラインLRST2に接続されている。
第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1のリセット制御信号PRGにより導通状態および非導通状態が切り換えられる。
【0033】
第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、制御信号PRGがHレベルの期間に選択されて導通状態となり電位Vddと接続状態にあり、蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されているときに、フローティングディフュージョンFD11(および蓄積キャパシタCS11)を電源電位Vddにリセットする。
【0034】
また、本第1の実施形態では、第1のリセット用トランジスタRST11-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11およびフォトダイオードPD11がリセットされる。
また、本第1の実施形態では、第1のリセット用トランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0035】
蓄積トランジスタSG11-Trは、蓄積ノードNDS11を介してフローティングディフュージョンFD11(および第1のリセット用トランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11との間に接続されている。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御線を通じてゲートに印加される制御信号SGにより制御される。
蓄積トランジスタSG11-Trは、制御信号SGがHレベルの期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD11(および第1のリセット用トランジスタRST11-Tr)と蓄積キャパシタCS11とを接続する。
本第1の実施形態では、上述したように、第1のリセット用トランジスタRST11-Trおよび蓄積トランジスタSG11-Trが導通状態に保持されてフローティングディフュージョンFD11および蓄積キャパシタCS11がリセットされる。
【0036】
なお、本第1の実施形態において、オーバーフローパスは、フォトダイオードPD11のオーバーフロー電荷をフローティングディフュージョンFD11、蓄積トランジスタSG11-Tr、蓄積ノードNDS11を介し蓄積キャパシタCS11にオーバーフロー可能な経路として形成され、かつ、蓄積キャパシタCS11のオーバーフロー電荷を蓄積ノードNDS11、第1のリセット用トランジスタRST11-Trを介して電源電位Vddにオーバーフロー可能な経路として形成されている。
【0037】
ソースフォロワトランジスタSF11-Trと選択トランジスタSEL11-Trは、電源電位Vddと垂直信号線LSGN11の間に直列に接続されている。
ソースフォロワトランジスタSF11-TrのゲートにはフローティングディフュージョンFD11が接続され、選択トランジスタSEL11-Trは制御線を通じてゲートに印加される制御信号SELにより制御される。
選択トランジスタSEL11-Trは、制御信号SELがHレベルの選択期間に選択されて導通状態となる。これにより、ソースフォロワトランジスタSF11-TrはFD11で電圧信号に変換した列出力の読み出し電圧信号(VRST1,VSIG1)を垂直信号線LSGN11に出力する。
【0038】
さらに、光電変換読み出し部210は、フローティングディフュージョンFD11で変換した電圧信号を、ソースフォロワ用定電流源230と協働して出力するソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF11-Trと、選択素子としての選択トランジスタSEL11-Trを含んで構成されている。
【0039】
本実施形態に係る読み出し画素200は、読み出し部70の制御の下、蓄積接続素子としての蓄積トランジスタSG11-Trを通してフローティングディフュージョンFD11と蓄積容量素子としての蓄積キャパシタCS11を選択的に接続することにより、フローティングディフュージョンFD11の容量を第1容量または第2容量に変更して変換利得を第1容量で決まる第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG:High Conversion Gain)または第2容量で決まる第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG:Low Conversion Gain)に切り換え可能である。
【0040】
このように、固体撮像装置10は、読み出し部70の制御の下、
図3に示すように、指定されるデュアル変換利得読み出しモード期間に、第1容量に応じた第1変換利得(高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得モード読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得モード読み出しと、を行うことが可能に構成されている。
【0041】
読み出し画素200は、たとえば横型オーバ一フロー蓄積容量(以下、「L0FIC (Lateral Overflow Integration Capacitor) 」という構造が設けられており、読み出し部70の制御の下、高照度条件下では光電変換素子であるフォトダイオードPD11の蓄積電荷およびオーバーフロー蓄積電荷に関連する第2変換利得を用いた2重サンプリング読み出しモード(LOFICモード)動作を行う。
【0042】
本第1の実施形態において、読み出し画素200は、第1容量に応じた第1変換利得(たとえば高変換利得:HCG)で画素信号の読み出しを行う第1変換利得信号読み出しと、第2容量(第1容量と異なる)に応じた第2変換利得(たとえば低変換利得:LCG)で画素信号の読み出しを行う第2変換利得信号読み出しを行うデュアル変換利得信号読み出しが行われる。
本第1の実施形態において、読み出し画素200に対する読み出し処理としては、
図3に示すように、まず第1変換利得信号読み出しモード時に、第1の読み出しリセット信号HCGRSTが読み出され、次いで、第1の読み出し輝度信号HCGSIGが読み出される。
続いて、第2変換利得信号読み出しモード時に、第2の読み出し輝度信号LCGSIGが読み出され、次いで、第2の読み出しリセット信号LCGRSTが読み出される。
【0043】
このように、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)は、信号方向(レベル遷移方向)が逆方向の信号として形成される。
【0044】
ところで、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の信号方向は互いに逆方向であり、低変換利得(LCC)による読み出し処理において、読み出しリセット信号VRLのリセットノイズは読み出し輝度信号VSLのリセットノイズとは異なるため、差動ダブルサンプリング(DDS)と呼ばれる減算処理ではノイズを除去することは困難である。
そこで、本実施形態では、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出す場合に、低変換利得(LCG)信号のkTCノイズを低減でき、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合点におけるSNRの低下を防止できるように、ノイズ低減部220が設けられている。
本実施形態では、ノイズ低減部220を読み出し部70により制御して第2の読み出しリセット信号LCGRSTの読み出し処理に付随するリセット期間時のノイズ低減処理(第1のリセット処理)を行う。
【0045】
(ノイズ低減部220の具体的な構成および機能)
以下に、本実施形態に係るノイズ低減部220の具体的な構成および機能について説明する。
【0046】
(ノイズ低減部220の構成)
本実施形態のノイズ低減部220は、2つの高変換利得(HCG)および低変換利得(LCG)のうち少なくとも一方の低変換利得(LCG)による読み出し処理におけるリセット期間PR1に、リセット期間PR1が開始してから所定の第1の期間PR11は第1のリセットラインLRST1をリセット電位である電源電位Vddとの接続状態に保持する。
そして、ノイズ低減部220は、第1の期間PR11経過後の第2の期間PR12に、第1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高くなるように、第1のリセットラインLRST1をフローティング状態に切り換える。
この場合、読み出し部70は、リセット期間PR1の開始時点から第1のリセット用トランジスタRST11-Trを所定期間導通状態に保持し、第1の期間PR11および第2の期間PR12経過したリセット期間PR1の終了時点で第1のリセット用トランジスタRST11-Trを非導通状態に切り換える。
【0047】
ノイズ低減部220は、
図2に示すように、第1のリセットラインLRST1とリセット電位である電源電位Vddとの間に接続され、第2のリセット制御信号CRGにより導通状態および非導通状態が切り換えられる第2のリセット用トランジスタRST12-Trと、第1のリセットラインLRST1に接続されたリセット制御用容量素子としてのリセット制御用キャパシタCR11と、を含んで構成されている。
第2のリセット用トランジスタRST12-Trは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trと同様に、NMOSトランジスタにより形成されている。
リセット用キャパシタCR11の容量CRは、リセット対象であるたとえばフローティングディフュージョンFD11の容量CFDより大きい(CR>CFD)。
【0048】
図4(A)~(D)は、本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のポテンシャル遷移を示す図である。
図5(A)~(C)は、ノイズ低減部を適用ない従来のフローティングディフュージョンに対する非ノイズ低減処理のポテンシャル遷移を比較例として示す図である。
【0049】
ノイズ低減処理についてさらに詳細に説明する。
ノイズ低減処理を含む第1のリセット処理においては、読み出し部70およびノイズ低減部220の制御の下、
図4(A)および(B)に示すように、リセット期間PR1の開始時点に第1のリセット用トランジスタRST11-Trおよび第2のリセット用トランジスタRST12-Trを導通状態に切り換え、リセット対象であるフローティングディフュージョンFD11、キャパシタCS11が接続された第2のリセットラインLRST2と第1のリセットラインLRST1を接続状態に切り換える。これと並行して、第1のリセットラインLRST1とリセット電位である電源電位Vddを接続状態に切り換えて、リセット対象であるフローティングディフュージョンFD11の電荷の排出処理を開始する。
リセット期間PR1が開始してから所定の第1の期間PR11は第1のリセットラインLRST1をリセット電位である電源電位Vddとの接続状態に保持する。
これにより、電荷の排出処理が続行される。
【0050】
次に、第1の期間PR11経過後に、第1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高くなるように、
図4(C)に示すように、第2のリセット用トランジスタRST12-Trを非導通状態に切り換えて、第1のリセットラインLRST1をフローティング状態に切り換える。
これにより、第1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高くなり、リセットkTCノイズが第1のリセットラインLRST1でフリーズする。
【0051】
比較例のリセット後のkTCノイズは揺らぎ等の影響により、
図5(C)に示すように、√(kT/CFD)[V]と大きくなる。
これに対して、本第1の実施形態の場合、第2のリセット用トランジスタRST12-Trを非導通状態に切り換えた後の、第1のリセットラインLRST1のkTCノイズは、
図4(C)に示すように、√(kT/(CFD+CR))[V]とリセット用キャパシタCR11の影響により小さくなる。
より具体的には、リセット用キャパシタCR11の容量CRが式の平方根中の分母側で加算されることから、容量CRが大きいほどkTCノイズは小さくなると推察される。
【0052】
そして、第2の期間PR12が経過してリセット期間PR1の終了時点になると第1のリセット用トランジスタRST11-Trが非導通状態に切り換えられる。
これにより、リセットされた画素が同じ列内の他の画素から分離される。このとき、第1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高いため、電子が第1のリセットラインLRST1内を動き回らない限り、リセットノイズは小さく保たれる。
【0053】
たとえば、CR=1pFの場合、リセットされたkTCノイズは1シグマで64μVrmsになる。
これに対して、CS=10fFの従来のLOFICでは、リセットkTCノイズは1シグマで640μVrmsになる。
したがって、本実施形態によれば、SNRの低下を1/10に減らすことができる。
【0054】
図6(A)~(D)は、本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
図6(A)は、ノイズ低減部を適用しない従来のフローティングディフュージョンに対するリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態を比較例として示す図である。
【0055】
図7は、本発明の第1の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタに対する第1のリセット制御信号PRGの立ち下り時間とノイズとの関係のシミュレーション結果を示す図である。
図7において、横軸が第1のリセット制御信号PRGの立ち下がり時間を表し、縦軸がノイズの大きさを表している。また、
図7において、Aで示す曲線が本発明品の立ち下がり時間-ノイズ特性を表し、Bで示す曲線が従来品(比較例)の立ち下がり時間-ノイズ特性を表している。
【0056】
ただし、第1のリセット制御信号PRGを立ち下げて第1のリセット用トランジスタRST11-Trを非導通状態(オフ)にすると、クロックフィードスルーと電荷注入が原因で電子が移動し、予想よりも大きなリセット時のkTCノイズが発生する。
したがって、第1のリセット制御信号PRGの立ち下がり時間が蓄積キャパシタCS11およびフローティングディフュージョンFD11の注入電荷の整定時間よりも短い限り、第1のリセット用トランジスタRST11-Trの高速スイッチングを行うことにより、リセット時のkTCノイズを低減することが可能となる。
【0057】
たとえば、画素アレイ内の第1のリセット制御信号PRGを生成するためのリピータバッファを利用して、第1のリセット制御信号PRGの立ち下がり時間を短縮することが可能となる。
【0058】
ところで、高変換利得(HCG)による読み出し処理において、読み出しリセット信号VRLのリセットノイズは読み出し輝度信号VSLのリセットノイズとは同じであるため、相関二重サンプリング(CDS)と呼ばれる減算処理ではノイズを除去することが可能である。
そこで、本実施形態では、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出す場合に、読み出し部70により制御して第1の読み出しリセット信号HCGRSTの読み出し処理に付随するリセット期間時のノイズ低減処理は行われない(この処理を第2のリセット処理という)。
【0059】
ノイズ低減処理を含まない第2のリセット処理においては、読み出し部70およびノイズ低減部220の制御の下、露光後の最初のリセット読み出し処理では、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは非導通状態のままで、蓄積トランジスタSG11-Trを非導通状態に切り換えて蓄積キャパシタCS11をフローティングディフュージョンFD11と切り離し、フローディングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷を分離させてフローティングディフュージョンFD11の利得を第1容量で決まる第1変換利得(HCG)に設定し、第1変換利得リセット読み出し処理を行う。
【0060】
画素部20には、読み出し画素200がN行×M列配置されているので、各制御線はそれぞれN本、垂直信号線はM本ある。
図1においては、各制御線を1本の行走査制御線として表している。
【0061】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路60の制御に応じてシャッター行および読み出し行において行走査制御線を通して画素の駆動を行う。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPD11に蓄積された電荷をリセットするシャッター行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0062】
読み出し回路40は、画素部20の各列出力に対応して配置された複数の列信号処理回路(図示せず)としての画素信号処理部を含み、複数の列信号処理回路で列並列処理が可能に構成されてもよい。
読み出し回路40において、画素信号処理部は、信号方向、換言するとレベル遷移方向が逆方向の信号として形成され、読み出し画素200から画素信号PXLOUTとして読み出される第1変換利得信号(HCGRST,HCGSIG)と第2変換利得信号(LCGSIG,LCGRST)のいずれか一方の変換利得信号、具体的には第1変換利得信号を反転させる機能を有する。
【0063】
水平走査回路50は、読み出し回路40の複数の画素信号処理部で処理された信号を走査して水平方向に転送し、図示しない信号処理回路に出力する。
【0064】
タイミング制御回路60は、画素部20、垂直走査回路30、読み出し回路40、水平走査回路50等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0065】
読み出し部70は、デュアル変換利得読み出しモードMDCGが指定されると、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを行う、
【0066】
本第1の実施形態において、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始後、読み出しモード処理として、デュアル変換利得読み出しモードMDCGの読み出し処理を行う。
【0067】
たとえば、読み出し部70は、
図3に示すように、第1のリセット用トランジスタRST11-Tr、第2のリセット用トランジスタRST12-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、および転送トランジスタTG11-Trを所定期間導通状態に保持してフォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、蓄積キャパシタCS11をリセットしてシャッター処理を行い、転送トランジスタTG11-Trを非導通状態にして第1のリセット処理を行い露光期間PEXPを開始する。
そして、読み出し部70は、露光期間PEXPを開始した後、デュアル変換利得読み出しモードMDCGの処理として、第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRD、第1変換利得読み出し処理HCGSRD、第2変換利得読み出し処理LCGSRD、および第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDを順次行う。
【0068】
(固体撮像装置10の読み出し動作)
以上、固体撮像装置10の各部の特徴的な構成および機能について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素信号の読み出し動作について
図3(A)~(E)に関連付けて説明する。
【0069】
図3(A)は読み出し画素200の転送トランジスタTG11-Trの制御信号TG、
図3(B)は読み出し画素200の蓄積トランジスタSG11-Trの制御信号SGを、
図3(C)は読み出し画素200の選択トランジスタRSEL11-Trの制御信号SELを、
図3(D)は読み出し画素200の第1のリセット用トランジスタRST11-Trの制御信号PRGを、
図3(E)はノイズ低減部220の第2のリセット用トランジスタRST12-Trの制御信号CRGを、をそれぞれ示している。
【0070】
デュアル変換利得読み出しモードMDCGの処理が開始される前に、制御信号PRG、CRG、SG、TGが所定期間ハイレベルに設定されて、第1のリセット用トランジスタRST11-Tr、第2のリセット用トランジスタRST12-Tr、蓄積トランジスタSG11-Tr、転送トランジスタTG11-Trが所定期間導通状態に保持される。
これにより、フォトダイオードPD11、フローティングディフュージョンFD11、および蓄積キャパシタCS11が固定電位Vddでリセットされる。すなわち、シャッター動作が行われる(
図3(A)~(E))。
【0071】
(第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
そして、転送トランジスタTG11-Trが導通状態から非導通状態に切り換えられた後第1のリセット処理が行われて露光時間PEXPが開始され、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理が行われる。
露光期間PEXPを開始してから一定期間後、制御信号SGが所定期間だけハイレベルに切り換えられた後、制御信号SGがローレベル、制御信号SELがハイレベルに切り換えられて第1の読み出しリセット信号(HCGRST)の読み出し期間となる。
このとき、制御信号SGはローレベルのままに保持され、蓄積トランジスタSG11-Trは非導通状態にあることから、フローティングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が分離されており、フローティングディフュージョンFD11の利得がフローティングディフュージョンFD11の容量CFDを含む第1容量で決まる第1変換利得HCGに保持されている。
【0072】
そして、リセット処理後の第1のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得HCGで変換した第1の読み出しリセット信号HCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出しリセット信号HCGRSTに対する所定の処理を行う第1変換利得リセット読み出し処理HCGRRDが行われる。
【0073】
次いで、第1のリセット信号読み出し期間後の第1の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第1の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
【0074】
次いで、第1の転送期間に続く第1の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第1容量で決まる第1変換利得で変換した第1の読み出し信号HCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第1の読み出し信号HCGSIGに対する所定の処理を行う第1変換利得読み出し処理HCGSRD行われる。
【0075】
そして、リセットレベル(VHCGRST,VRH)と信号レベル(VHCGSIG、VSH)を保持するか、あるいは、リセットレベルと信号レベルとの差分によりデジタルCDS演算が行われる。
【0076】
(第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理)
次いで、第1変換利得読み出し処理HCGSRD後に、制御信号SGがローレベルからハイレベルに切り換えられて、蓄積トランジスタSG11-Trを導通状態に切り換えられて蓄積キャパシタCS11がフローティングディフュージョンFD11と接続される。
これにより、フローディングディフュージョンFD11の電荷と蓄積キャパシタCS11の電荷が共有されてフローティングディフュージョンFD11の利得が第2容量で決まる第2変換利得LCGに切り換えられる。
これにより、第1変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理から第2変換利得信号読み出しモードによる読み出し処理に切り換わる。
【0077】
次いで、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に制御信号TGがハイレベルに切り換えられて転送トランジスタTG11-Trが導通状態に保持され、フォトダイオードPD11の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD11に転送される。第2の転送期間後、制御信号TGはローレベルに切り換えられ、転送トランジスタTG11-Trは非導通状態に切り換えられる。
そして、第1の信号読み出し期間後の第2の転送期間に続く第2の信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出し信号LCGSIGが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出し信号LCGSIGに対する所定の処理を行う第2変換利得読み出し処理LCGSRDが行われる。
【0078】
次いで、第2の信号読み出し期間経過後において、次のリセット期間PR1の開始時点に第1のリセット用トランジスタRST11-Trおよび第2のリセット用トランジスタRST12-Trを導通状態に切り換え、リセット対象であるフローティングディフュージョンFD11が接続された第2のリセットラインLRST2と第1のリセットラインLRST1を接続状態に切り換えるとともに、第1のリセットラインLRST1とリセット電位である電源電位Vddを接続状態に切り換えて、リセット対象であるフローティングディフュージョンFD11の電荷の排出処理を開始する。
そして、リセット期間PR1が開始してから所定の第1の期間PR11は第1のリセットラインLRST1をリセット電位との接続状態に保持する。
第1の期間PR11経過後に、1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高くなるように、第2のリセット用トランジスタRST12-Trを非導通状態に切り換えて、第1のリセットラインLRST1をフローティング状態に切り換える。
そして、第2の期間PR12が経過してリセット期間PR1の終了時点になると第1のリセット用トランジスタRST11-Trを非導通状態に切り換える。
第1のリセット処理によりフローティングディフュージョンFD11をリセットした後、第2のリセット信号読み出し期間となる。
そして、第2のリセット信号読み出し期間に、ソースフォロワトランジスタSF11-TrからフローティングディフュージョンFD11の第2容量で決まる第2変換利得LCGで変換した第2の読み出しリセット信号LCGRSTが垂直信号線LSGN11に読み出され、カラム処理回路である読み出し回路40においてこの第2の読み出しリセット信号LCGRSTに対する所定の処理を行う第2変換利得リセット読み出し処理LCGRRDが行われる。
【0079】
そして、リセットレベル(LCGRST、VRL)と信号レベル(LCGSIG,VSL)を保持するか、あるいは、リセットレベルLCGRST(VRL)と信号レベルLCGSIG(VSL)の差分によりオフセットノイズキャンセル演算が行われる。
【0080】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、ノイズ低減処理を含む第1のリセット処理においては、読み出し部70およびノイズ低減部220の制御の下、リセット期間PR1の開始時点に第1のリセット用トランジスタRST11-Trおよび第2のリセット用トランジスタRST12-Trを導通状態に切り換え、リセット対象が接続された第2のリセットラインLRST2と第1のリセットラインLRST1を接続状態に切り換えるとともに、第1のリセットラインLRST1とリセット電位である電源電位Vddを接続状態に切り換えて、リセット対象の電荷の排出処理を開始する。
次いで、リセット期間PR1が開始してから所定の第1の期間PR11は第1のリセットラインLRST1をリセット電位との接続状態に保持する。
第1の期間PR1経過後に、第1のリセットラインLRST1のインピーダンスが高くなるように、第2のリセット用トランジスタRST12-Trを非導通状態に切り換えて、第1のリセットラインLRST1をフローティング状態に切り換える。
そして、第2の期間PR12が経過してリセット期間PR1の終了時点になると第1のリセット用トランジスタRST11-Trを非導通状態に切り換える。
【0081】
したがって、本第1の実施形態によれば、変換利得が異なり、かつ互いに信号方向が異なる信号を読み出す場合に、低変換利得(LCG)信号のkTCノイズを低減でき、高変換利得(HCG)信号と低変換利得(LCG)信号の結合点におけるSNRの低下を防止でき、ひいては高画質化を図ることが可能となる。
【0082】
(第2の実施形態)
図8(A)~(C)は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素およびノイズ低減部の構成例を示す図である。
図8(A)は、本第2の実施形態に係る固体撮像装置における読み出し画素およびノイズ低減部の構成例を示す回路図を示し、
図8(B)はCMOSスイッチのデバイス構造例を示し、
図8(C)はリピートバッファの構成例を示す回路図を示している。
【0083】
本第2の実施形態の固体撮像装置の画素200Aが第1の実施形態の画素200が異なる点は、次の通りである。
【0084】
第1の実施形態の読み出し画素200において、第1のリセット用トランジスタRST11-TrがNMOSトランジスタにより形成されている。
【0085】
これに対して、本第2の実施形態の読み出し画素200Aにおいては、第1のリセット用トランジスタRST11-TrがNMOSとPMOSのソース・ドレイン同士を接続したCMOSスイッチCMSWにより形成されている。
【0086】
CMOSスイッチCMSWは、NMOS側のゲートとPMOS側のゲートに相補的なレベルを有する制御信号PRSTと制御信号PRSTNがそれぞれ印加される。
相補的なレベルを有する制御信号PRSTと制御信号PRSTNは、
図8(C)に示すようなリピートバッファ240により構成可能である。
【0087】
このリピートバッファ240は、たとえば、2つのインバータINV1,INV2を直列に接続して構成される。
基準入力信号を初段のインバータINV1でレベル反転させた信号を制御信号PRSTNとしてPMOSのゲートに供給し、制御信号PRSTNを次段にインバータINV2でレベル反転させた信号を制御信号PRSTとしてNMOSのゲートに供給する。
【0088】
このように、本第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様の効果を得られることはもとより、第1のリセット用トランジスタRST11-TrがNMOSとPMOSのソース・ドレイン同士を接続したCMOSスイッチCMSWにより形成されていることから、NMOSとPMOSが逆動作でフィードスルーを打ち消し合って、結果的にフィードスルーを減らすことが可能となる。
【0089】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る画素部の画素配列の構成例を示す図である。
【0090】
本第3の実施形態の画素部20Bが第2の実施形態の画素部20Aと異なる点は、次の通りである。
【0091】
第2の実施形態の画素部20Aにおいては、第1のリセット用トランジスタRST11-TrをCMOSスイッチCMSWにより形成することにより、NMOSとPMOSが逆動作でフィードスルーを打ち消し合って,結果的にフィードスルーを減らすことが可能に構成されている。
ところが、各画素内に配置されるフォトダイオードPD11は、画素アレイのリピータバッファ240によって引き起こされる干渉ノイズから保護する必要がある。
【0092】
そこで、本第3の実施形態の画素部20Bにおいては、画素アレイARYのリピータバッファ240によって引き起こされる干渉ノイズからフォトダイオードPD11を保護することが可能な画素アレイを実現している。
本第3の実施形態においては、画素200BはフォトダイオードPDと蓄積キャパシタCS11が一方向(本例ではx方向)に並んで配置され、画素部20Bは画素200Bが配列された画素アレイARYと、第1のリセット用トランジスタRST11-Trを駆動する制御信号を生成するリピータバッファ240が画素アレイARYの画素200B間に配列されたバッファアレイBARYと、を含んでいる。
そして、リピータバッファ240は、一方向(x方向)の一方側(たとえば右側)に隣接する画素の蓄積キャパシタCS11と隣接するように配置され、このリピータバッファ240と一方向の他方側(たとえば左側)に隣接する画素のフォトダイオードPDと隣接するようにダミーの蓄積キャパシタDCS11が配置されている。
【0093】
すなわち、
図9において、リピートバッファ240の左側のPDは画素のCSで保護されているが、右側のフォトダイオードPDはダミーの蓄積キャパシタDCSで保護されている。
干渉ノイズは、アクティブ領域CSとCSダミーバイアスで吸収される。CSダミーは、PDの均一なレイアウト境界条件を維持して、画素応答の不均一性(PRNU)の低下を回避するためにも使用され得る。
【0094】
本第3の実施形態によれば、上記した第1および第2の実施形態と同様の効果を得られることはもとより、画素アレイARYのリピータバッファ240によって引き起こされる干渉ノイズからフォトダイオードPD11を保護することが可能となる。
【0095】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域の好適な構成例を説明するための図である。
図11は、第1のリセット用トランジスタにおいて蓄積キャパシタCS側のインピーダンスが高い場合、チャネル電荷はCS側に移動せず、第1のリセットラインLRST1側に移動することを示す図である。
図12(A),(B)は、本発明の第4の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
図12(A)は、ノイズ低減部を適用しない従来のフローティングディフュージョンに対するリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態を比較例として示す図である。
【0096】
本第4の実施形態の画素200Cが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第4の実施形態の画素200Cでは、前提として第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Cにより形成されており、特徴として、第1の端子側のアクティブ領域が第2の端子側のアクティブ領域より大きく、チャネル形成領域CNLFが、第2の端子(ソース)側から第1の端子(ドレイン)側に向かって広くなるように、たとえばテーパ状に形成されている。
【0097】
本第4の実施形態によれば、蓄積キャパシタCS11側のアクティブ領域よりも広い第1のリセットラインLRST1側のアクティブ領域が第1のリセット用トランジスタRST11-Trに使用される。
第1のリセットラインLRST1側のチャネル抵抗は蓄積キャパシタCS側よりも低いため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込むことが少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
【0099】
本第5の実施形態の画素200Dが第4の実施形態の画素200Cと異なる点は、次の通りである。
本第5の実施形態の画素200Dでは、電界効果トランジスタ250Dにおける第1の端子および第2の端子の各々は、他層と電気的に接続するための第1のコンタクト端子CT1および第2のコンタクト端子CT22が配置されている。
そして、第1のコンタクト端子CT1とゲート電極GT下の第1の抵抗値R1が、第2のコンタクト端子CT2とゲート電極GT下の第2の抵抗値R2より小さくなるように形成されている。
【0100】
本第5の実施形態においては、コンタクト端子CT1,CT2を非対称の位置に配置し、抵抗値差をつける。
第1のリセットラインLRST1側の第1のコンタクト端子CT1をゲート電極GTに極力近づけることで、電子の移動するN+エリアでの距離を縮め抵抗値(R1)を下げる。
一方、CS側は極力コンタクトをゲートから遠ざけることで、電子の移動するN+エリアでの距離を延ばすことで抵抗値(R2)を上げる。
よって、電子は第1のリセットラインLRST1側に移動しやすくなる。
【0101】
(第6の実施形態)
図14は、本発明の第6の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
【0102】
本第6の実施形態の画素200Eが第5の実施形態の画素200Dと異なる点は、次の通りである。
本第6の実施形態の画素200Eでは、電界効果トランジスタ250Eにおける第1の端子(ドレイン)に配置される第1のコンタクト端子CT1の方が、第2の端子(ソース)に配置される第2のコンタクト端子CT2より多く形成されている。
【0103】
本第6の実施形態によれば、第1のリセットラインLRST1側のコンタクト端子CT1を多く配置して、図中右側(第1のリセットラインLRST1側のインピーダンスを下げる。
また、第1のリセットラインLRST1側のコンタクトを複数配置することで合成抵抗を下げ、右側の抵抗値を減らす。
よって、電子は第1のリセットラインLRST1側に移動しやすくなる。
【0104】
(第7の実施形態)
図15は、本発明の第7の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタのチャネル形成領域周辺の好適な構成例を説明するための図である。
図16(A)~(E)は、
図15の画素要部の等価回路、動作タイミング、電荷の移動状態を示す図である。
【0105】
本第7の実施形態の画素200Fが第5の実施形態の画素200Dと異なる点は、次の通りである。
本第7の実施形態の画素200Fでは、電界効果トランジスタ250Fにおけるゲート電極は、ポリシリコン(PO)により形成され、他層と電気的に接続するための一のコンタクト端子CGTが第2の端子(ソース)側に偏らせて配置され、他のコンタクト端子CTが第1の端子(ドレイン)側に偏らせて配置されている。
そして、第2の端子(ソース)側のゲート電極用コンタクト端子CGTと第1の端子(ドレイン)側の第1の端子用コンタクト端子CT間のゲート電極GTの抵抗値RPOを利用して、印加されるパルス状リセット制御信号の両コンタクト端子におけるオフになる時間に差をつけ、電荷を第2の端子(ソース)側から第1の端子(ドレイン)側に移動させるように形成されている。
【0106】
本第7の実施形態によれば、POから形成されるゲート電極GTのコンタクトを極力CS側に配置し、PO抵抗値を利用してタイミングTnとTn+1のオフになる時間に差をつけ、電子が第1のリセットラインLRST1側に移動するようになる。
【0107】
(第8の実施形態)
図17は、本発明の第8の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【0108】
本第8の実施形態の画素200Gが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第8の実施形態の画素200Gでは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Gにより形成されている。
そして、第2の端子(ソース)とゲート電極GT下のチャネル形成領域CNLFにおけるインピーダンスが、第1の端子(ドレイン)とゲート電極GT下のチャネル形成領域におけるインピーダンスより大きくなるように形成されている。
【0109】
本第8の実施形態によれば、CS側のN+領域は、ゲート電極GTからの距離に応じて配置される。
第1のリセットラインLRST1側の抵抗はCS側よりも低いため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込むことが少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCSとフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0110】
(第9の実施形態)
図18は、本発明の第9の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【0111】
本第9の実施形態の画素200Hが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第9の実施形態の画素200Hは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Hにより形成されている。
そして、第2の端子(ソース)側よりのゲート絶縁膜Goxの厚さG2が、第1の端子(ドレイン)側よりのゲート絶縁膜Goxの厚さG1より厚く形成されている。
【0112】
本第9の実施形態によれば、第1のリセットラインLRST1側よりCS側に厚いゲート酸化物が堆積している。薄い酸化物の下のゲート容量が小さいため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込む。
また、厚い酸化物の下のチャネルコンダクタンスが低いため、CS側に流入する注入電荷が少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0113】
(第10の実施形態)
図19は、本発明の第10の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【0114】
本第10の実施形態の画素200Iが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第10の実施形態の画素200Iは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Iにより形成されている。
そして、第1の端子および第2の端子のうち第1の端子(ドレイン)側のみに、第1の端子に連続するように低濃度不純物層LDD1が形成されている。
【0115】
本第10の実施形態によれば、LDDは第1のリセットラインLRST1側にのみ埋め込まれる。CS側のインピーダンスは第1のリセットラインLRST1側の電位よりも高いため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込むことが少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0116】
(第11の実施形態)
図20は、本発明の第11の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【0117】
本第11の実施形態の画素200Jが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第11の実施形態の画素200Jは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Jにより形成されている。
そして、第1の端子および第2の端子に連続するようにそれぞれ低濃度不純物層LDD1,LDD2が形成され、第2の端子(ソース)側の低濃度不純物層LDD2に連続してウェルより不純物濃度を高めたポケット層PKTが形成されている。
【0118】
本第11の実施形態によれば、ポケット用PドーズはCS側にのみ埋め込まれる。CS側のインピーダンスは第1のリセットラインLRST1側のインピーダンスよりも高いため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込むことが少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0119】
(第12の実施形態)
図21は、本発明の第12の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
図22(A),(B)は、本発明の第12の実施形態に係るノイズ低減部を適用したフローティングディフュージョンに対するノイズ低減処理のリセット処理を行った場合の第1のリセット用トランジスタ周辺の電荷の移動状態のシミュレーション結果を示す図である。
【0120】
本第12の実施形態の画素200Kが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第12の実施形態の画素200Kは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Kにより形成されている。
そして、第1の端子および第2の端子のうち第1の端子側のみに、第1の端子に連続するように埋め込みチャネル層BCNLが形成2されている。
【0121】
本第12の実施形態によれば、埋設されたN-ドーズは第1のリセットラインLRST1側にのみ埋め込まれる。CS側のインピーダンスは第1のリセットラインLRST1側のインピーダンスよりも高いため、第1のリセット用トランジスタRST11-Trをオフにしたときの注入電荷がCS側に流れ込むことが少なくなる。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0122】
(第13の実施形態)
図23は、本発明の第13の実施形態に係る画素を形成する第1のリセット用トランジスタの好適な構成例を説明するための簡略断面図である。
【0123】
本第13の実施形態の画素200Lが第1の実施形態の画素200と異なる点は、次の通りである。
本第12の実施形態の画素200Kは、第1のリセット用トランジスタRST11-Trは、第1の端子および第2の端子がソースドレイン拡散層として機能し、第1の端子と第2の端子間に形成されるチャネル形成領域CNLF上に絶縁膜を介してゲート電極GTが配置された電界効果トランジスタ250Lにより形成されている。
そして、チャネル形成領域の不純物濃度が第2の端子(ソース)側から第1の端子(ドレイン)側に向かって濃くなるように濃度勾配を持たせてある。
【0124】
本第12の実施形態によれば、不純物濃度が第2の端子(ソース)側から第1の端子(ドレイン)側に向かって濃くなるように濃度勾配を持たせてあるので、電子がドレイン側に移動しやすくなっている。
したがって、蓄積キャパシタCS11とフローティングディフュージョンFD11のリセットノイズを低減することができる。
【0125】
以上説明した固体撮像装置10,10A~10Lは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0126】
図24は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載した電子機器の構成の一例を示す図である。
【0127】
本電子機器300は、
図24に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10,10A~10Lが適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を2導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)320を有する。
電子機器300は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0128】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0129】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A~10Lを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0130】
10,10A~10F・・・固体撮像装置、20・・・画素部、200,200A~200L・・・読み出し画素、210・・・光電変換読み出し部、220・・・ノイズ低減部、PD11・・・フォトダイオード、FD11・・・フローティングディフュージョン、TG11-Tr・・・転送トランジスタ、RST11-Tr・・・第1のリセット用トランジスタ、RST12-Tr・・・第2のリセット用トランジスタ、SF11-Tr・・・ソースフォロワトランジスタ、SG11-Tr、・・・蓄積トランジスタ、CS11・・・蓄積キャパシタ、CR11・・・リセット制御用キャパシタ(容量素子)30・・・垂直走査回路、40・・・読み出し回路、50・・・水平走査回路、60・・・タイミング制御回路、70・・・読み出し部、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】