(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163753
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】作物収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 69/02 20060101AFI20231102BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A01D69/02
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074870
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
【テーマコード(参考)】
2B043
2B076
【Fターム(参考)】
2B043AB11
2B043BA09
2B043BB12
2B043EA12
2B043EB14
2B043EC03
2B043EC16
2B043ED03
2B043ED12
2B076AA01
2B076DA19
(57)【要約】
【課題】機体の動力源としての電動モータに電力を供給するバッテリーを機体からスムーズ且つ容易に積み下ろしでき、バッテリー残量不足による収穫作業の中断を防止できる作物収穫機を提供する。
【解決手段】
作物収穫機1は、作物を収容する収容コンテナ13を載置する作物載置領域Aが機体の幅方向における略中央部に配置されるとともに、電動モータ8の電力源である第1バッテリー1及び第2バッテリー2が、機体の幅方向における作物載置領域Aの外側に配置され、第2バッテリー2は機体の後部であって第1バッテリー1よりも後方の位置に配置されるとともに、クレーン装置16により機体の後方から積み下ろし可能に構成され、電動モータ8の電力源を切り換えるバッテリー管理部12は、複数のバッテリーの1つを電力源として使用するよう管理するとともに、電動モータ8の電力源として第2バッテリー2を優先して使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の作物を収穫する作物収穫機であって、
機体の動力源としての電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電力源である複数のバッテリーと、
前記電動モータにより駆動される走行装置及び収穫装置と、
前記収穫装置により収穫された作物を荷下ろしするクレーン装置と、
前記電動モータの電力源を切り換えるバッテリー管理部とを備え、
前記複数のバッテリーは、第1バッテリー及び第2バッテリーを備え、
収穫された作物を収容する収容コンテナを載置する作物載置領域が機体の幅方向における略中央部に配置されるとともに、前記第1バッテリー及び前記第2バッテリーが、機体の幅方向における前記作物載置領域の外側に配置され、
前記第2バッテリーは、機体の後部であって前記第1バッテリーよりも後方の位置に配置されるとともに、前記クレーン装置により機体の後方から積み下ろし可能に構成され、
前記バッテリー管理部は、前記複数のバッテリーのうちの1つを電力源として使用するよう管理するとともに、前記第1バッテリーに優先して前記第2バッテリーを前記電動モータの電力源として使用し、前記第2バッテリーの残量が閾値以下である低残量状態となった場合に、前記電動モータの電力源を前記第2バッテリーから前記第1バッテリーに切り換えるよう構成されたことを特徴とする作物収穫機。
【請求項2】
前記複数のバッテリーは、第3バッテリーをさらに備え、
前記収容コンテナは、収穫された作物を収容する作物収容部を上部に備えるとともに、前記第3バッテリーを収容するバッテリー収容部を下部に備え、
前記第3バッテリーは、機体側の通電コネクタに接続される放電用の通電コネクタを備え、前記放電用の通電コネクタは、前記収容コンテナが機体上に荷積みされ、且つ、前記バッテリー収容部に前記第3バッテリーが収容された状態で、機体側の通電コネクタと高さ位置が同一であり、前記機体側の通電コネクタに接続して前記電動モータに電力を供給可能に構成され、
前記バッテリー管理部は、前記第1バッテリーと前記第2バッテリーに優先して前記第3バッテリーを前記電動モータの電力源として使用し、前記第3バッテリーの残量が閾値以下である低残量状態となった場合に、前記電動モータの電力源を前記第3バッテリーから前記第2バッテリーに切り換えることを特徴とする請求項1に記載の作物収穫機。
【請求項3】
前記第3バッテリーは、受電用コイルを有するワイヤレス充電部を底部に備えるとともに、前記収容コンテナの下部に着脱可能に取り付けられており、
収穫された作物を搬送するとともに、送電用コイルを含むワイヤレス充電器を有するトラックの荷台で、前記第3バッテリーをワイヤレス充電可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の作物収穫機。
【請求項4】
前記第3バッテリーは、フォークリフトの爪が挿入されるフォーク用貫通穴を筐体に備え、前記フォーク用貫通穴の側面に、充電用の電極部が設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の作物収穫機。
【請求項5】
前記走行装置を制御する制御部と、
前記制御部と無線通信可能な遠隔端末と、
機体の位置情報を取得するGNSS受信機と、
前記複数のバッテリーの各々の残量を検出する残量検出手段とを備え、
前記制御部は、前記GNSS受信機により取得される機体の位置と、圃場に予め設定された予定走行経路との間の離脱距離を算出し、前記離脱距離が短くなるよう前記走行装置を制御する自動運転制御を実行可能に構成され、
前記自動運転制御は、前記遠隔端末上で指示操作が行われたことを条件として実行され、
前記残量検出手段により検出される前記複数のバッテリーの残量を示す残量情報は、前記遠隔端末に送信されて前記遠隔端末の画面に表示されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の作物収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として電動モータを備えた作物収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機体の動力源としての電動モータと、この電動モータに電力を供給するバッテリーを備えた作物収穫機が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、電動モータ等に電力を供給する複数のバッテリーを備え、各バッテリーの温度や充電率に基づき、複数のバッテリーを充電する順序を決定するよう構成された作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-126086号公報
【特許文献2】特開2021-191061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機体にエンジンとジェネレータを搭載していない場合や、エンジンと電動モータとのハイブリッド構成でジェネレータによる発電量が低い場合、作業中にバッテリー残量がもたないことがある。
【0006】
この場合、バッテリーを機体から下ろして充電する必要があるが、作業者にとって、バッテリーを機体から荷下ろしし、充電後に再び積み込む工程は、非常に作業負担が大きいものであった。
【0007】
なお、特許文献1及び2には、機体に搭載されたバッテリーの残量が少なくなった場合に、バッテリーを機体から下ろし、充電後に、再び積み込み可能とする構成については開示されていない。
【0008】
そこで、本発明は、機体の動力源としての電動モータに電力を供給するバッテリーを機体からスムーズ且つ容易に積み下ろしでき、バッテリー残量不足による収穫作業の中断を防止できる作物収穫機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、
圃場の作物を収穫する作物収穫機であって、
機体の動力源としての電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する電力源である複数のバッテリーと、
前記電動モータにより駆動される走行装置及び収穫装置と、
前記収穫装置により収穫された作物を荷下ろしするクレーン装置と、
前記電動モータの電力源を切り換えるバッテリー管理部とを備え、
前記複数のバッテリーは、第1バッテリー及び第2バッテリーを備え、
収穫された作物を収容する収容コンテナを載置する作物載置領域が機体の幅方向における略中央部に配置されるとともに、前記第1バッテリー及び前記第2バッテリーが、機体の幅方向における前記作物載置領域の外側に配置され、
前記第2バッテリーは、機体の後部であって前記第1バッテリーよりも後方の位置に配置されるとともに、前記クレーン装置により機体の後方から積み下ろし可能に構成され、
前記バッテリー管理部は、前記複数のバッテリーのうちの1つを電力源として使用するよう管理するとともに、前記第1バッテリーに優先して前記第2バッテリーを前記電動モータの電力源として使用し、前記第2バッテリーの残量が閾値以下である低残量状態となった場合に、前記電動モータの電力源を前記第2バッテリーから前記第1バッテリーに切り換えるよう構成されたことを特徴とする作物収穫機によって達成される。
【0010】
本発明によれば、作物載置領域が機体の幅方向における略中央部に配置されているとともに、優先的に使用される第2バッテリーが機体の後部且つ第1バッテリーよりも後方の位置に配置されているから、第1バッテリーに比して高頻度に充電される第2バッテリーを、クレーン装置を用いて、機体の後方からスムーズ且つ容易に積み下ろし(荷積み・荷下ろし)することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、クレーン装置を用いて第2バッテリーを荷積み・荷下ろしできるから、第2バッテリーとして大型のバッテリーを搭載することが可能になる。
【0012】
また、本発明によれば、積み下ろしが容易な第2バッテリーを優先的に使用するよう構成されているから、第1バッテリーの残量を保持できる。したがって、第2バッテリーの容量が不足したときでも、第1バッテリーから供給される電力により収穫作業を続行でき、バッテリー残量不足による収穫作業の中断を防止することができる。
【0013】
加えて、本発明によれば、収容コンテナを載置する作物載置領域が機体の幅方向における略中央部に配置され、第1、第2バッテリーが作物載置領域の機体幅方向における外側に配置されているから、作物で満量となった収容コンテナを、クレーン装置により荷下ろしする際に、第1、第2バッテリーが妨げにならない。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記複数のバッテリーは、第3バッテリーをさらに備え、
前記収容コンテナは、収穫された作物を収容する作物収容部を上部に備えるとともに、前記第3バッテリーを収容するバッテリー収容部を下部に備え、
前記第3バッテリーは、機体側の通電コネクタに接続される放電用の通電コネクタを備え、前記放電用の通電コネクタは、前記収容コンテナが機体上に荷積みされ、且つ、前記バッテリー収容部に前記第3バッテリーが収容された状態で、機体側の通電コネクタと高さ位置が同一であり、前記機体側の通電コネクタに接続して前記電動モータに電力を供給可能に構成され、
前記バッテリー管理部は、前記第1バッテリーと前記第2バッテリーに優先して前記第3バッテリーを前記電動モータの電力源として使用し、前記第3バッテリーの残量が閾値以下である低残量状態となった場合に、前記電動モータの電力源を前記第3バッテリーから前記第2バッテリーに切り換える。
【0015】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、電力源としての第3バッテリーが作物を収容する収容コンテナの下部に収容されるよう構成されているから、収容コンテナとともに、電力源としての優先順位の高い第3バッテリーを機体から積み下ろしでき、利便性が高い。
【0016】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、第3バッテリーの放電用の通電コネクタは、第3バッテリーが収容コンテナのバッテリー収容部に収容された状態で、機体側の通電コネクタと高さ位置が同一となる位置に配置されているから、機体上で収容コンテナをスライドさせるだけで、放電用の通電コネクタを、機体側の通電コネクタに容易に接続することができる。
【0017】
加えて、本発明のこの好ましい実施形態によれば、バッテリー管理部は、電動モータの電力源として、第1バッテリーと第2バッテリーに優先して第3バッテリーを使用するよう構成されているから、バッテリー残量不足による収穫作業の中断をより一層防止することができる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記第3バッテリーは、受電用コイルを有するワイヤレス充電部を底部に備えるとともに、前記収容コンテナの下部に着脱可能に取り付けられており、
収穫された作物を搬送するとともに、送電用コイルを含むワイヤレス充電器を有するトラックの荷台で、前記第3バッテリーをワイヤレス充電可能に構成されている。
【0019】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、収穫された作物を搬送するトラックの荷台で、第3バッテリーをワイヤレス充電できるから、作物の運搬時間や、圃場や納屋の近傍での待機時間を利用して第3バッテリーを充電でき、作業効率が非常に良い。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記第3バッテリーは、フォークリフトの爪が挿入されるフォーク用貫通穴を筐体に備え、前記フォーク用貫通穴の側面に、充電用の電極部が設けられている。
【0021】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、第3バッテリーは、フォークリフトの爪が挿入されるフォーク用貫通穴を筐体に備えているから、第3バッテリーを機体から下ろした後に、フォークリフトを用いて容易に運搬することができる。
【0022】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、フォーク用貫通穴に、充電用の電極部が設けられているから、給電(放電)用の電極が設けられた爪を有するフォークリフトにより運搬される間に、充電用の電極部から第3バッテリーを充電することができる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記走行装置を制御する制御部と、
前記制御部と無線通信可能な遠隔端末と、
機体の位置情報を取得するGNSS受信機と、
前記複数のバッテリーの各々の残量を検出する残量検出手段とを備え、
前記制御部は、前記GNSS受信機により取得される機体の位置と、圃場に予め設定された予定走行経路との間の離脱距離を算出し、前記離脱距離が短くなるよう前記走行装置を制御する自動運転制御を実行可能に構成され、
前記自動運転制御は、前記遠隔端末上で指示操作が行われたことを条件として実行され、
前記残量検出手段により検出される前記複数のバッテリーの残量を示す残量情報は、前記遠隔端末に送信されて前記遠隔端末の画面に表示される。
【0024】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、作物収穫機が、制御部の自動運転制御に基づき、圃場を自動走行可能に構成されているとともに、各バッテリーの残量が遠隔端末の画面に表示されるため、自動運転による収穫作業中に、バッテリーが低残量状態となったときに、作業者は、遠隔端末の画面上でそれを把握でき、バッテリーを機体から積み下ろしするなどの対応をとることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、機体の動力源としての電動モータに電力を供給するバッテリーを機体からスムーズ且つ容易に積み下ろしでき、バッテリー残量不足による収穫作業の中断を防止できる作物収穫機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる作物収穫機の略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された作物収穫機の略左側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された作物収穫機の電力機構を示す模式的ブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、収容コンテナに取り付けられた状態を示す第3バッテリーの近傍の略斜視図であり、
図5(b)は、第3バッテリーの単体の状態を示す略斜視図である。
【
図6】
図6は、第3バッテリーを機体に積み込む様子を示す作物収穫機の略斜視図である。
【
図7】
図7は、第3バッテリーユニットをトラックに移す様子を示す略斜視図である。
【
図8】
図8は、第3バッテリーがトラックの荷台で充電される様子を示す模式的背面図である。
【
図9】
図9は、第2バッテリーを示す略斜視図である。
【
図10】
図10は、作業者が着座する座席が設けられた状態を示す作物収穫機の略斜視図である。
【
図11】左右の安全カバーが省略されていない状態を示す作物収穫機の略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる作物収穫機10の略斜視図であり、
図2は、
図1に示された作物収穫機10の略平面図であり、
図3は、
図1に示された作物収穫機10の略左側面図である。
【0029】
また、
図4は、
図1に示された作物収穫機10の電力機構を示す模式的ブロック図である。
【0030】
本明細書においては、
図1に矢印で示されるように、作物収穫機10の進行方向となる側を前方とし、特に断りがない限り、作物収穫機10の進行方向に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。また、後に詳述するバッテリー1~3を除く作物収穫機10を、単に「機体」ともいう。
【0031】
作物収穫機10は、平面視で略矩形をなすメインフレーム4と、メインフレーム4の下方に設けられた走行装置5と、メインフレーム4に固定された床部材6と、メインフレーム4に装着され、圃場の作物を収穫して後ろ上方へ搬送する収穫装置7と、収穫装置7及び走行装置5を駆動する電動モータ8と、収穫装置7により収穫された作物を収容する複数の収容コンテナ13と、収容コンテナ13を機体の後部から荷積みし、機体後方へ荷下ろしするクレーン装置16と、電動モータ8に電力を供給する第1ないし第3バッテリー1~3を含む電力機構(
図4参照)と、機体の各装置を制御するメインコントローラ11(
図4参照)と、作業者がメインコントローラ11に指示信号を送信するためのリモートコントローラ21(
図4参照)を備えている。リモートコントローラ21は、タブレット型のコンピュータにより構成されており、メインコントローラ11と無線通信により種々のデータを送受信することができる。走行装置5は、本実施形態においては一対のキャタピラーにより構成されているが、車輪等により構成されてもよい。
【0032】
電動モータ8から出力される回転動力は、複数のプーリとそれらに巻き掛けられた閉ループ状のベルト、駆動軸等によりHST(静油圧式無段変速装置)14を含む変速機構9に伝達された後、変速機構9内で変速され、収穫装置7及び走行装置5に伝達される。その結果、走行装置5の駆動により前進しつつ、収穫装置7の駆動により圃場の作物が収穫される。なお、HST14の油圧タンク14aは
図10に示されている。
【0033】
作物収穫機10には、
図4に示されるGNSS受信機26が設けられており、作業者が搭乗することなしに、自動運転により圃場を走行しつつ、収穫装置7により収穫作業を行えるよう構成されている。
【0034】
自動運転による収穫作業中においては、メインコントローラ11は、圃場について予め設定された予定走行経路と、GNSS受信機26により取得される収穫機10の位置との位置ずれ量(離脱距離)を算出する。そして算出された位置ずれ量が短くなるよう走行装置5を制御することにより、予定走行経路に沿って作物収穫機10が自律走行する。以下において、機体の位置と予定走行経路との位置ずれ量が短くなるよう走行装置5を制御する制御を「自動運転制御」という。
【0035】
自動運転制御は、リモートコントローラ21での指示操作が行われたことを条件として開始される(行われる、実行される)とともに、リモートコントローラ21での指示操作により停止させることができる。なお、走行装置が車輪やタイロッド、ピニオンギア、ラックギア等により構成された場合には、自動運転制御において、メインコントローラは、ステアリングモータ等を用いて車輪の向きを変更することとなる。
【0036】
また、作物収穫機10は、後に詳述するように、作業者による手動運転に基づく走行を行うこともできる。自動運転に用いられる予定走行経路は、手動運転によるいわゆるティーチングにより取得された圃場形状情報からメインコントローラ11により算出され、設定される他、サーバーからダウンロードして設定することもできる。メインコントローラ11は、本発明の「制御部」に相当し、リモートコントローラ21は、本発明の「遠隔端末」に相当する。
【0037】
収穫装置7は、人参やゴボウ等の細長い根菜を収穫する中央収穫部7aと、キャベツ等の結球野菜を収穫する外側収穫部7bを備えた汎用的な収穫装置である。中央収穫部7aと外側収穫部7bは各々、左右一対の無端状のベルトを回転駆動することにより、一対のベルトで圃場内の作物を挟持した状態で後ろ上方へ引っ張り上げて収穫・搬送するよう構成されている。一対の無端状のベルトは、各々、変速機構9から駆動軸、ユニバーサルジョイント等により伝達された動力で回転されるプーリに巻き掛けられており、このプーリの回転に伴って回転駆動される。
【0038】
中央収穫部7aにより収穫された作物は、変速機構9から伝達される動力により駆動される茎葉切断部15によって茎葉が切断され、図示しないクリーナ部により泥が取り除かれる。その後、第1コンベア17により、収容コンテナ13の上部に取り付けられたフレコンバッグ18内に搬送され、収容される。第1コンベア17は、機体の幅方向(左右方向)における略中央部に配置されたクレーン装置16の基部16bに設けられている。
【0039】
外側収穫部7bにより収穫された作物は、茎葉切断部15の左右に各々配置された一対の第2コンベアにより、収容コンテナ13の上部に取り付けられたフレコンバッグ18内に搬送供給される。第2コンベアはHST14、電動モータ8等を明確に示すため、図面上省略されている。
【0040】
クレーン装置16は、床部材6に固定された基部16bと、一端部が基部16bに、他端部が収穫装置16から延びる図示しない固定フレームに各々装着された第1回動用シリンダ16gと、基部16bの上部に回動可能に取り付けられた第1アーム16cと、第1アーム16cの前端部に回動可能に取り付けられた第2アーム16dと、第2アーム16dの回動角度を変更する第2回動用シリンダ16eと、第2アーム16dの後端部に連結され、被吊上げ物が取り付けられる一対のハンガーアーム16aを備えている。
【0041】
基部16bは、第1回動用シリンダ16gの伸縮により回動される。第1アーム16cは、図示しないシリンダの伸縮により基部16bの上部を中心に回動される。第2回動用シリンダ16eの後端部は第2アーム16dに固定されており、第2アーム16dは、第2回動用シリンダ16eの伸縮により回動される。これら基部16b、第1アーム16c、第2アーム16dの回動角度が変更されることにより、収容コンテナ13や各バッテリー1~3等の被吊上げ物を前後・上下に移動可能であるため、クレーン装置16を用いて機体の後方の被吊上げ物を床部材6の後部に荷積みできるとともに、床部材6の後部に位置する被吊上げ物を機体後方に荷下ろしできる。
【0042】
各シリンダはリモートコントローラ21の操作に基づき伸縮される他、後に詳述する操縦部32が操作されることによっても伸縮される。なお、クレーン装置16の基部を上下軸周りに回動可能に構成してもよく、この場合には、機体の幅方向における外側の床部材6上に配置された第1、第2バッテリー1,2等に、一対のハンガーアーム16aからチェーンフック等を延ばさなくても、容易に第1、第2バッテリー1,2等を荷積み・荷下ろしすることが可能になる。
【0043】
作物収穫機10は、電力機構として、第1ないし第3バッテリー1~3と、電動モータ8の回転数を調整するインバータ19と、電動モータ8への電力供給源を第1ないし第3バッテリー1~3の間で択一的に切り換え可能な電源切換装置20と、この電源切換装置20に制御信号を送信し、電動モータ8に電力を供給するバッテリーを切り換えるBMS(Battery Management System)12と、第3バッテリー3から第1又は第2バッテリー1,2への通電状態を切り換える通電切換装置23を備えている。このBMS12は、本発明の「バッテリー管理部」に相当し、複数のバッテリー1,2,3のうちの1つを電力源として使用するよう管理する機能を果たす。
【0044】
一対の第1バッテリー1とその後方に配置された一対の第2バッテリー2は、
図1に示されるように、床部材6における機体幅外側の部分に載置されており、第1コンベア17、第2コンベア、及びクリーナ部の左右両側に位置する。このため、コンベア及びクリーナ部の安全ガードを兼ねることができる。
【0045】
第3バッテリー3は、収穫された作物が上部に収容される複数の各収容コンテナ13の下部に取り付けられた状態で、一対の第1バッテリー1及び一対の第2バッテリー2に左右から挟まれた(換言すれば、左右をバッテリー1,2に囲まれた)床部材6上の作物載置領域Aに配置される。すなわち、第3バッテリー3は、収容コンテナ13とともに、機体の幅方向における略中央部に配置される。作物載置領域Aには、最大で3つほどの収容コンテナ13が載置される。
【0046】
第1ないし第3バッテリー1~3は各々、放電用の通電コネクタ(電極)1a、2a又は3aを有し、機体側の通電コネクタ24a~24cに物理的且つ電気的に接続される(
図4参照)。各バッテリー1~3には残量(電圧値)を検出する残量検出手段としての電圧装置が設けられており、電圧装置により検出される各バッテリー1~3の残量情報はBMS12に出力される。BMS12に出力された残量の情報はメインコントローラ11を通じてリモートコントローラ21へ送信され、リモートコントローラ21の画面上に残量が表示される。
【0047】
インバータ19は、メインコントローラ11から出力される制御信号に基づき、バッテリーから供給される電力の断接と、電動モータ8へ供給する電力の周波数を増減させることによる電動モータ8の回転数の調整を行う。走行装置5・収穫装置7の少なくとも一方を駆動するとき、メインコントローラ11からインバータ19へ制御信号が出力される。そして、いずれかのバッテリー1~3から供給される電力が、インバータ19を介して電動モータ8へ送られる。
【0048】
電源切換装置20は、BMS12の制御信号に基づき、各バッテリー1~3から、電動モータ8への電力供給を断接する3つのスイッチ20a、20b及び20cのオンオフを切り換え可能に構成されている。
【0049】
第1バッテリー1に蓄電された電力を電動モータ8に供給する際には、電源切換装置20はスイッチ20aのみをオンし、他の2つのスイッチ20b、20cをオフする。第2バッテリー2に蓄電された電力を電動モータ8に供給する際には、電源切換装置20はスイッチ20bのみをオンし、他の2つのスイッチ20a、20cをオフする。また、第3バッテリー3に蓄電された電力を電動モータ8に供給する際には、電源切換装置20はスイッチ20cのみをオンし、他の2つのスイッチ20a、20bをオフする。
【0050】
これらのように3つのスイッチ20a、20b及び20cのオンオフが切り換えられた状態で、バッテリー1,2又は3からインバータ19を介して供給される電力の周波数に応じた回転数で電動モータ8が駆動される。
【0051】
BMS12は、電動モータ8が駆動される際に、以下の優先順位で、第1ないし第3バッテリー1~3の間で電動モータ8の電力源を切り換えるよう構成されている。
【0052】
まず、第3バッテリー3が機体側の通電コネクタ24cに接続されており、且つ、第3バッテリー3の残量が閾値を上回る高残量状態(換言すれば低残量状態でない状態)であるとき、BMS12は、第3バッテリー3を使用する。
【0053】
また、第3バッテリー3の残量が閾値未満である低残量状態であるか、第3バッテリー3が機体側の通電コネクタ24cに接続されていないときで、且つ、左右の第2バッテリーの少なくとも一方の残量が閾値を上回る高残量状態(換言すれば低残量状態でない状態)であるとき、BMS12は、第2バッテリー2を使用する。なお、この場合、左右の第2バッテリー2のうち、残量の多い方の第2バッテリー2を優先して使用するよう構成してもよい。
【0054】
さらに、第2、第3バッテリー2,3がいずれも低残量状態であるか、機体側の通電コネクタ24b、24cに接続されていないときには、BMS12は、第1バッテリー1を使用する。なお、この場合、左右の第1バッテリー1のうち、残量の多い方の第1バッテリー1を優先して使用するよう構成してもよい。
【0055】
このように、BMS12は、第3バッテリー3→第2バッテリー2→第1バッテリー1の優先順位で各バッテリーを使用するよう構成されており、第1バッテリー1は、他のバッテリー2,3が上がってしまった際などの緊急時に用いられる。なお、
図11に示されるように、機体の幅方向における第1・第2バッテリー1,2の外側には、第1・第2バッテリー1,2を保護する安全カバー33が取り付けられているが、作物収穫機10の他の部材を図面上で明確に示すため、
図1等においては安全カバー33が省略されている。すなわち、第1・第2バッテリー1,2は、機体の幅方向における外側を安全カバー33により覆われており、これにより、第1・第2バッテリー1,2の防塵・防滴を図ることができる。
【0056】
図5(a)は、収容コンテナ13に取り付けられた状態を示す第3バッテリー3の近傍の略斜視図であり、
図5(b)は、第3バッテリー3の単体の状態を示す略斜視図である。
【0057】
また、
図6は、第3バッテリー3を機体に積み込む様子を示す作物収穫機10の略斜視図であり、
図6には、第1及び第2バッテリー1,2が取り外された状態が示されている。
【0058】
収容コンテナ13は、作物を収容するフレコンバッグ18を収容する作物収容部13aと、第3バッテリー3を収容するバッテリー収容部13bと、作物収容部13aとバッテリー収容部13bを仕切る仕切り板13cを備えている。
【0059】
各第3バッテリー3の左右の側面には各々、仕切り板13cに引っ掛けて第3バッテリー3を収容コンテナ13に固定するための前後一対の爪部3bが設けられている。各爪部3bは板バネにより構成されており、第3バッテリー3はこれらの爪部3bによって着脱可能に収容コンテナ13の仕切り板13cに引っ掛けられてバッテリー収容部13b内に収容されている。収容コンテナ13に取り付けられた第3バッテリー3の底部は収容コンテナ13の底部よりも上方に位置し、接地しないため、傷つきにくい。以下において、上部にフレコンバッグ18が、下部に第3バッテリー3が各々取り付けられた収容コンテナ13を「第3バッテリーユニット」30として説明を進める。
【0060】
各第3バッテリー3は、機体の通電コネクタ24cに接続される放電用の通電コネクタ3aと、第3バッテリー3の筐体に形成された左右一対のフォーク用貫通穴3cと、第3バッテリー3を充電するワイヤレス充電部3dを備えている。
【0061】
通電コネクタ3aは、第3バッテリー3が収容コンテナ13に取り付けられ、且つ収容コンテナ13が床部材6上に載置された状態で、機体側の通電コネクタ24cと同一の高さとなる高さ位置に配置されている。したがって作業者は、いずれか1つの第3バッテリー3を、
図6に示される機体側の通電コネクタ24cに接続する際に、クレーン装置16により床部材6上に載置した第3バッテリーユニット30を前方へスライドさせることで、第3バッテリー3の通電コネクタ3aを通電コネクタ24cに接続できる。通電コネクタ3aは第3バッテリー3の前後両面に配置されており、第3バッテリー3の向きを選ばない。
【0062】
一対のフォーク用貫通穴3cは、いわゆるフォークリフトの爪を挿入可能な大きさに構成されている。このため、フォークリフト(不図示)の爪が挿し込まれることで、第3バッテリー、又は第3バッテリーユニット30をフォークリフトにより運搬することができる。
【0063】
ここで、各フォーク用貫通穴3c内の左右の側面には、
図5に示されるように、充電用のフォーク穴電極部3c1が設けられている。このため、フォークリフトにおいて、通電用の電極が設けられた一対の爪がフォーク用貫通穴3cに挿し込まれている間、一対の爪の電極とフォーク穴電極部3c1とが接触し、フォークリフトから第3バッテリー3に電流が流れる。したがって、フォークリフトにより搬送中の第3バッテリー3を充電することができる。加えて、このように、フォーク用貫通穴3cの垂直(第3バッテリー3の底面に垂直)に延びる側面にフォーク穴電極部3c1を配置することで、フォーク穴電極部3c1に泥や塵埃等が付着し堆積してしまうことを抑制できる。
【0064】
本実施形態においては、各バッテリー1~3が低残量状態となったときに、メインコントローラ11からリモートコントローラ21へその旨の情報が送信されるよう構成されている。低残量状態となった旨の情報を受信すると、リモートコントローラ21は、その画面に、どのバッテリーが低残量状態となったかの情報を表示する。
【0065】
したがって、作業者は、通電コネクタ24cに接続された第3バッテリー3の電圧が低下し低残量状態となったときに、リモートコントローラ21で把握し、その第3バッテリー3が取り付けられた収穫コンテナ13をクレーン装置16により機体の後部から後方へ荷下ろしするとともに、他の第3バッテリーユニット30を前方へスライドさせて、通電コネクタ24cに第3バッテリー3を接続できる。
【0066】
第3バッテリー3は、およそフレコンバッグ18の一杯分の作物を収穫できる程度の電力を蓄電可能な容量を有しているため、第3バッテリー3が低残量状態となったとき、その上方のフレコンバッグ18には作物がほぼ満量状態である。
【0067】
図7は、第3バッテリーユニット30をトラック25に移す様子を示す略斜視図であり、
図8は、第3バッテリー3がトラック25の荷台で充電される様子を示す模式的背面図である。
【0068】
通電コネクタ24cに接続された第3バッテリー3が低残量状態となると、メインコントローラ11は、その第3バッテリー3の上方のフレコンバッグ18が作物でほぼ満量となったことが認められるので、収穫作業を停止する。その後、メインコントローラ11は、リモートコントローラ21上で待機場所へ移動する旨の指示操作が行われたことを条件として、
図7に示されるように、トラック25の後方の位置まで自動運転により収穫機10を移動させる。トラック25には図示しないGNSS受信機が設けられており、GNSS受信機により取得されたトラック25の位置情報は無線通信によりメインコントローラ11に送信される。トラック25の位置情報を受信すると、メインコントローラ11は、自機の位置と、トラック25の所定距離だけ後方の位置とを結ぶ予定走行経路を算出する。その後、走行装置5による走行を開始するとともに、算出された予定走行経路と機体の位置との離脱距離が短くなるよう走行装置5を制御することにより、圃場の周囲に待機しているトラック25の後方の位置に収穫機10を移動させる。
【0069】
図7に示されるように、作物収穫機10がトラック25の後方の位置に移動すると、第3バッテリーユニット30は、作業者の操縦に基づき、クレーン装置16によりトラック25の荷台25aに移される。
【0070】
トラック25は、荷台25aの幅方向における外側の部分に遊転自在に配置された多数のローラー25bと、左右のローラー25b間に設けられた充電空間25cと、充電空間25cの下方に配置された複数のワイヤレス充電器25dと、トラック25の電力源としてのバッテリー25eを備えている。トラック25は図示しないモータジェネレータとエンジンにより駆動するハイブリッドカーとして構成されており、このモータジェネレータは、エンジンから出力される動力を受け、回生駆動して発電を行う。モータジェネレータにより発電された電力は、バッテリー25eに蓄電される。
【0071】
第3バッテリーユニット30が荷台25aに移されると、作業者により第3バッテリーユニット30が後方側(トラック25の座席側)へ、任意のワイヤレス充電器25dの上方の位置までスライドされる。このとき、収容コンテナ13の下面は左右のローラー25bに着いているため、軽い力で第3バッテリーユニット30をスライドさせることができる。次いで、左右の爪部3bが引っ張られて掛合が解かれ、収容コンテナ13から第3バッテリー3が下方に取り外される。その結果、
図8に示されるように、第3バッテリー3が左右のローラー25bに着くとともに、第3バッテリー3のワイヤレス充電部3dが充電空間25c内に位置する。
【0072】
各ワイヤレス充電器25dの内部には送電用コイルが、ワイヤレス充電部3dの内部には受電用コイルが、各々設けられており、バッテリー25eに蓄えられた電荷により送電用コイルの近傍には磁界が生じている。このため、ワイヤレス充電部3dが充電空間25c内に位置すると、その下方に位置するワイヤレス充電器25dの磁界により誘導電流が発生して第3バッテリー3が充電される。すなわち、トラック25のモータジェネレータにより発電された電力が、バッテリー25eを介して第3バッテリー3に給電される。
【0073】
こうして、第3バッテリー3が荷台25へ載置され、充電されている間に、フレコンバッグ18が取り付けられた収容コンテナ13は、トラック25により納屋等の近傍まで搬送される。そして、収容コンテナ13は、作物が収容された状態でフォークリフトにより荷台25から降ろされて、フォークリフトにより納屋等へ運び込まれる。このとき、フォークリフトの一対の爪の上面は仕切り板13cの下面に接触し、下方から仕切り板13cを支持しつつ運搬する。その後、収容コンテナ13からフレコンバッグ18が取り外されて、作物は納屋等におかれるとともに、収容コンテナ13に新たな空のフレコンバッグ18が取り付けられ、トラック25の荷台25aに載置される。そして、収容コンテナ13は、充電済みの他の第3バッテリー3が取り付けられて、クレーン装置16により床部材6上に戻される。
【0074】
このように、作物の収穫作業に使用される第3バッテリー3を、作物を運搬するトラック25により充電可能とすることで、運搬時間や、圃場や納屋の近傍での待機時間を利用して第3バッテリー3を充電することができる。
【0075】
また、トラック25が圃場と納屋の近傍との間を走行する間、モータジェネレータによる発電が行われ、バッテリー25eに蓄電される。
【0076】
各ワイヤレス充電器25dは、左右にスライドされることでトラック25から取外しでき、各ワイヤレス充電器25dを納屋等へ運び込んで、バッテリー25eに代えて家庭用電源を用いて、第3バッテリー3を納屋等で充電することもできる。加えて、納屋等において、第3バッテリー3の一対のフォーク用貫通穴3cのフォーク穴電極部3c1を通じて、電極付きのフォークリフトや専用充電器により充電することも可能である(
図4参照)。
【0077】
また、第3バッテリー3は、低残量状態となったとき、クレーン装置16によりトラック25の荷台に移される他、機体から下ろされた後にフォークリフトにより第3バッテリー3が充電されながら運搬されることもあり得る。また、第3バッテリーユニット30はクレーン装置16により一旦、地面に荷下ろしした後に、フォークリフトによりトラック25の荷台に移すことも可能である。さらに、トラック25に別途クレーン装置を設け、このクレーン装置により、床部材6上の、又は地面に荷下ろしされた第3バッテリーユニット30を、トラック25の荷台に積載することもできる。加えて、トラック25に別途昇降用のフォークリフトを取付け、このフォークリフトの爪部分に電極を設け、第3バッテリーユニット30をトラック25の荷台に上げるまでの間、フォーク穴電極部3c1から第3バッテリー3に給電できるよう構成してもよい。
【0078】
一方、
図9は、第2バッテリー2を示す略斜視図である。
【0079】
第2バッテリー2は、機体の通電コネクタ24bに接続される通電コネクタ2aと、第3バッテリー3と同様に筐体に形成された一対のフォーク用貫通穴2bと、上部に配置された吊り上げ用の金属製リング2cを備えている。このリング2cに、クレーン装置16のハンガーアーム16aに設けられたチェーンフックが引っ掛けられて、第2バッテリー2が、クレーン装置16により、機体の後方から後部へ荷積みされ、機体の後部から後方へ荷下ろしされる。
【0080】
ここで、各リング2cは第2バッテリー2の充電用の電極として構成されている。このため、他のクレーン車のフックに給電用の電極を設けることで、このフックがリング2cに引っ掛けられ、吊り上げられた状態で、第2バッテリー2を充電することができる。
【0081】
また、一対のフォーク用貫通穴2bは第3バッテリー3のフォーク用貫通穴3cと同様に、フォークリフトの爪を挿入可能な大きさに構成されており、第2バッテリー2をフォークリフトにより運搬することができる。
【0082】
加えて、各フォーク用貫通穴2b内の左右の側面には、第3バッテリー3のフォーク用貫通穴3cと同様に、充電用のフォーク穴電極部2b1が設けられている。このため、フォークリフトにおいて、通電用の電極が設けられた一対の爪がフォーク穴電極部2b1に挿し込まれている間、フォークリフトから第2バッテリー2に電流を流し、搬送中の第2バッテリー2を充電することができる(
図4参照)。加えて、納屋等において、第2バッテリー2の一対のフォーク用貫通穴2bのフォーク穴電極部2b1を通じて、専用充電器により充電することも可能である(
図4参照)。このように、フォーク用貫通穴2bの垂直(第2バッテリー2の底面に垂直)に延びる側面にフォーク穴電極部2b1を配置することで、フォーク穴電極部2b1に泥や塵埃等が付着し堆積してしまうことを抑制できる。
【0083】
図2等に示される第1バッテリー1は、床部材6の前後方向中央部よりやや前側の位置に配置されており、第1バッテリー1の内部容量は第2、第3バッテリー2,3よりもサイズが大きく、重量も大きい。このため、作物が収容された収容コンテナ13が機体の後部に配置されても、第1バッテリー1により機体の重量バランスをとることができる。
【0084】
一方、各バッテリー1~3には、通電コネクタ1a、2a又は3aに加え、図示しない接続コネクタが設けられている。
図4に示される第3通電ケーブル28cが第3バッテリー3の接続コネクタに接続され、第2通電ケーブル28bが第2バッテリー2の接続コネクタに接続された状態で、リモートコントローラ21により第2バッテリー2への充電指示操作が行われると、BMS12の制御信号に基づき、通電切換装置23により第3バッテリー3から変圧装置27bへ電流が送られ、変圧装置27bにて昇圧された後、第2バッテリー2に供給されて充電される。
【0085】
また、第3通電ケーブル28cが第3バッテリー3の接続コネクタに接続され、第1通電ケーブル28aが第1バッテリー1の接続コネクタに接続された状態で、リモートコントローラ21により第1バッテリー1への充電指示操作が行われると、BMS12の制御信号に基づき、通電切換装置23により第3バッテリー3から変圧装置27aへ電流が送られ、変圧装置27aにて昇圧された後、第1バッテリー1に供給されて充電される。
【0086】
したがって、作業者は、収穫作業を行っていない非稼働時に、第3バッテリー3から第1又は第2バッテリー1,2に給電し、充電を行うことができる。
【0087】
なお、変圧装置27a、27bにより第3バッテリー3からの電流を昇圧することは必ずしも必要でなく、第3バッテリー3の電位を、第1、第2バッテリー1,2よりも高く構成することにより、通電切換装置23による充電時に昇圧を行う必要がなくなる。加えて、第3バッテリー3の電位を第1、第2バッテリー1,2よりも高く構成することにより、充電初期の電流の流れ方向が確定されやすく、BMS12への誤動作を防止できるとともに、バッテリーを長寿命化することができる。なお、この場合には、第3バッテリー3から電源切換装置20を通じて電動モータ8に電力を供給する際に、第3バッテリー3から流れる電流を低電圧化した上で、電動モータ8へ給電することができる。
【0088】
加えて、第3バッテリー3から第1、第2バッテリー1,2に給電するのに、通電ケーブル28aないし28cを用いることは必ずしも必要でない。例えば、リモートコントローラ21で充電指示操作が行われたときに、通電コネクタ24a~24c及び電源切換装置20を通じて、第3バッテリー3から第1又は第2バッテリー1,2に給電されるよう構成してもよい。また、第3バッテリー3から、クレーン装置16及びリング2cを通じて、第2バッテリー2に電力が供給されるよう構成してもよい。
【0089】
図10は、作業者が着座する座席が設けられた状態を示す作物収穫機10の略斜視図である。
【0090】
本実施形態においては、右側の第1バッテリー1をクレーン装置16により機外に下ろし、元々右側の第1バッテリー1が配置されていた床部材6上の位置に、作業者が着座する座席31と、機体を操縦する操縦部32を載置可能に構成されている。このため、作業者は、座席31に着座した状態で、操縦部32を用いた手動運転により作物収穫機10を走行させつつ、作物を収穫することができる。操縦部32への操作は電気的な操作信号に変換される。この操作信号は、コネクタやケーブル等によりメインコントローラ11に入力される構成としてもよく、無線通信により操縦部32からメインコントローラ11に入力される構成としてもよい。なお、座席31は、元々右側の第1バッテリー1が配置されていた床部材6の位置に埋め込み配置されており、作業者は、第1バッテリー1を下ろした後に、座席31を取り出し、組み立てて着座することができる。座席31は、
図1に示された第1コンベア17の右方に位置し、自動運転での走行において、作業者は、座席31に着座しつつ、第1コンベア17上を搬送される作物の選別作業を行うことができる。
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし
図11に示された本実施形態によれば、作物載置領域Aが機体の幅方向における略中央部に配置されているとともに、優先的に使用される第2バッテリー2が機体の後部且つ第1バッテリー1よりも後方の位置に配置されているから、第1バッテリー1に比して高頻度に充電される第2バッテリー2を、クレーン装置16を用いて、機体の後方からスムーズ且つ容易に積み下ろし(荷積み・荷下ろし)することができる。
【0091】
さらに、本実施形態によれば、クレーン装置16を用いて第2バッテリー2を荷積み・荷下ろしできるから、第2バッテリー2として大型のバッテリーを搭載することが可能になる。
【0092】
また、本実施形態によれば、BMS12が、積み下ろしが容易な第2バッテリー2を優先的に使用するよう構成されているから、第1バッテリー1の残量を保持でき、したがって、第2バッテリー2の容量が不足したときでも、第1バッテリー1から供給される電力により収穫作業を続行でき、バッテリー残量不足による収穫作業の中断を防止することができる。
【0093】
さらに、本実施形態によれば、電力源としての第3バッテリー3が作物を収容する収容コンテナ13の下部に収容されるよう構成されているから、収容コンテナ13とともに、電力源としての優先順位の高い第3バッテリー3を機体から積み下ろしでき、利便性が高い。
【0094】
さらに、本実施形態によれば、第3バッテリー3の放電用の通電コネクタ3aは、第3バッテリー3が収容コンテナ13のバッテリー収容部13bに収容された状態で、機体側の通電コネクタ24cと高さ位置が同一となる位置に配置されているから、機体上で収容コンテナ13をスライドさせるだけで、放電用の通電コネクタ3aを、機体側の通電コネクタ24cに容易に接続できる。
【0095】
加えて、本実施形態によれば、BMS12は、電動モータ8の電力源として、第1バッテリー1と第2バッテリー2に優先して第3バッテリー3を使用するよう構成されているから、バッテリー残量不足による収穫作業の中断をより一層防止することができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、収穫された作物を搬送するトラック25の荷台25aで、第3バッテリー3をワイヤレス充電できるから、作物の運搬時間や、圃場や納屋の近傍での待機時間を利用して第3バッテリー3を充電でき、作業効率が非常に良い。
【0097】
さらに、本実施形態によれば、第3バッテリー3は、フォークリフトの爪が挿入されるフォーク用貫通穴3cを筐体に備えているから、第3バッテリー3を機体から下ろした後に、フォークリフトを用いて容易に運搬することができる。
【0098】
加えて、フォーク用貫通穴3cに、充電用の電極部であるフォーク穴電極部3c1が設けられているから、給電(放電)用の電極が設けられた爪を有するフォークリフトにより運搬される間に、フォーク穴電極部3c1から第3バッテリーを充電できる。
【0099】
さらに、本実施形態によれば、作物収穫機10が、メインコントローラ11の自動運転制御に基づき、圃場を自動走行可能に構成されているとともに、各バッテリー1~3の残量がリモートコントローラ21の画面に表示されるから、自動運転による収穫作業中に、バッテリーが低残量状態となったときに、作業者は、リモートコントローラ21の画面上でそれを把握でき、バッテリー1~3を機体から積み下ろしするなどの対応をとることができる。
【0100】
加えて、本実施形態によれば、収容コンテナ13を載置する作物載置領域Aが機体の幅方向における略中央部に配置され(
図2参照)、第1、第2バッテリー1,2が機体の幅方向における作物載置領域Aの外側に配置されているから、作物で満量となった収容コンテナ13を、クレーン装置16により荷下ろしする際に、第1、第2バッテリー1,2が妨げにならない。
【0101】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0102】
例えば、
図1ないし
図11に示された前記実施形態においては、第3バッテリー3は、ワイヤレス充電部3dとフォーク穴電極部3c1から充電できるよう構成されているが、これらに加え、家庭用充電器を用いて、通電コネクタ3aから充電できるよう構成されてもよい。この場合、通電コネクタ3aは、充放電可能なコネクタとなる。
【0103】
さらに前記実施形態においては、第3バッテリー3から第1、第2バッテリー1,2へ充電可能に構成されているが、第1バッテリー1から第2バッテリー2へ充電可能に構成してもよい。この場合には、第1バッテリー1から取り出した電流を、変圧器を用いて昇圧して第2バッテリー2へ流すことにより、充電が可能となる。
【0104】
また、前記実施形態においては、作物収穫機10は、第1ないし第3バッテリー1~3を備えているが、作物収穫機が第3バッテリー3を備えることは必ずしも必要でなく、第1・第2バッテリー1,2のみとし、第1バッテリー1に優先して第2バッテリー2を使用するよう構成してもよい。
【0105】
加えて、前記実施形態においては、作物収穫機10は、第1ないし第3バッテリー1~3から供給される電力により電動モータ8を駆動して走行しつつ、収穫作業を行うことができる電気収穫機として構成されているが、別途エンジンを設け、電動モータとエンジンによるハイブリッド構成としてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 第1バッテリー
2 第2バッテリー
3 第3バッテリー
4 メインフレーム
5 走行装置
6 床部材
7 収穫装置
8 電動モータ
9 変速機構
10 作物収穫機
11 メインコントローラ
12 BMS
13 収容コンテナ
14 HST
15 茎葉切断部
16 クレーン装置
17 第1コンベア
18 フレコンバッグ
19 インバータ
20 電源切換装置
21 リモートコントローラ
23 通電切換装置
24 機体側の通電コネクタ
25 トラック
26 GNSS受信機
27 変圧装置
28 通電ケーブル
30 第3バッテリーユニット
31 座席
32 操縦部
33 安全カバー