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  • 特開-無水水硫化ソーダ有形物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163764
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】無水水硫化ソーダ有形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/38 20060101AFI20231102BHJP
   C01D 5/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C01B17/38
C01D5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074886
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】593035906
【氏名又は名称】ナガオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
(57)【要約】
【課題】不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に得ることのできる、安全かつ生産効率が良好な無水水硫化ソーダ有形物の製造方法を提供する。
【解決手段】水硫化ソーダ水溶液を出発原料とし、前記水硫化ソーダ水溶液をディスク表面に供給して薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る薄膜形成工程と、前記薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を減圧下、不活性ガス雰囲気下で当該ディスク表面において脱水する乾燥工程と、前記乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面から取り出す分離工程とを、この順番で繰り返すことにより連続的に無水水硫化ソーダ有形物を得る無水水硫化ソーダ有形物の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硫化ソーダ水溶液を出発原料とし、
前記水硫化ソーダ水溶液をディスク表面に供給して薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る薄膜形成工程と、
前記薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を減圧下、不活性ガス雰囲気下で当該ディスク表面において脱水する乾燥工程と、
前記乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面から取り出す分離工程とを、
この順番で繰り返すことにより連続的に無水水硫化ソーダ有形物を得ることを特徴とする無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程における脱水時間が6~300秒である請求項1に記載の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【請求項3】
前記水硫化ソーダ水溶液の濃度が10~70重量%である請求項1又は2に記載の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【請求項4】
前記無水水硫化ソーダ有形物における無水水硫化ソーダ成分の含有量が95重量%以上である請求項1又は2に記載の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【請求項5】
前記無水水硫化ソーダ有形物における硫化ソーダ成分の含有量が1.5重量%以下である請求項1又は2に記載の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【請求項6】
前記無水水硫化ソーダ有形物における水分の含有量が3重量%以下である請求項1又は2に記載の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水硫化ソーダ(NaSH)は、有機合成用原料やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の原料として知られているが、市販されている水硫化ソーダには、通常水分が一定量含まれており、好ましくない副反応や逆反応が進行する場合があった。このため、原料として使用する前に水分を取り除く必要があり、かかる水分を取り除く方法として、フレーク状、チップ状、ペレット状等の水硫化ソーダ有形物を減圧下で加熱脱水する方法、当該水硫化ソーダ有形物を不活性ガス雰囲気下で脱水する方法、あるいはこれら両方法を併用すること等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、全水硫化ソーダ分65重量%以上を含有する水硫化ソーダ有形物を脱水する方法において、水硫化ソーダ有形物に不活性ガスを流して有形物の表面を脱水した後、減圧下で加熱脱水することを特徴とする水硫化ソーダ有形物の脱水方法が記載されている。これによれば、水硫化ソーダを変質させることなく、短時間で高濃度の水硫化ソーダ有形物を高い収率で得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-298502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の脱水方法はバッチ式であり、脱水時間も長くなるため、生産効率が良好ではなくコスト高となる場合があった。また、水硫化ソーダの融点以上の温度で加熱した際に水硫化ソーダ有形物が溶融するおそれもあった。水硫化ソーダから水分を取り除く別の方法として、水硫化ソーダ有形物を再結晶する方法が挙げられるが、100℃以上の高温下で固液分離する必要があり、安全面での課題があった。また、水硫化ソーダ水溶液を濃縮脱水する方法も挙げられるが、濃縮脱水が進むにつれて粘度が急激に上昇して塊となり、それ以降の脱水操作が困難となる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に得ることのできる、安全かつ生産効率が良好な無水水硫化ソーダ有形物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、水硫化ソーダ水溶液を出発原料とし、前記水硫化ソーダ水溶液をディスク表面に供給して薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る薄膜形成工程と、前記薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を減圧下、不活性ガス雰囲気下で当該ディスク表面において脱水する乾燥工程と、前記乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面から取り出す分離工程とを、この順番で繰り返すことにより連続的に無水水硫化ソーダ有形物を得ることを特徴とする無水水硫化ソーダ有形物の製造方法を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、前記乾燥工程における脱水時間が6~300秒であることが好適であり、前記水硫化ソーダ水溶液の濃度が10~70重量%であることが好適である。また、前記無水水硫化ソーダ有形物における無水水硫化ソーダ成分の含有量が95重量%以上であることが好適であり、前記無水水硫化ソーダ有形物における硫化ソーダ成分の含有量が1.5重量%以下であることが好適である。前記無水水硫化ソーダ有形物における水分の含有量が3重量%以下であることも好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に得ることのできる、安全かつ生産効率が良好な無水水硫化ソーダ有形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で使用した真空薄膜乾燥機の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を具体的に説明する。図1は、本発明で用いられる真空薄膜乾燥機の一例を示した模式図であり、容器内部に、水硫化ソーダ水溶液を供給するための供給槽、供給ポンプ、循環槽、循環ポンプ及び供給ノズルを備えている。更に、真空薄膜乾燥機には、回転軸を有するディスク、当該ディスク表面から無水水硫化ソーダ有形物を取り出すスクレーパー、無水水硫化ソーダ有形物が収集される収集槽等を備えており、図1に示されていないが、ディスク加熱手段、不活性ガス供給手段、減圧手段を備えたものである。
【0012】
本発明の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法は、水硫化ソーダ水溶液を出発原料とし、前記水硫化ソーダ水溶液をディスク表面に供給して薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る薄膜形成工程(以下、「薄膜形成工程」と略記することがある)と、前記薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を減圧下、不活性ガス雰囲気下で当該ディスク表面において脱水する乾燥工程(以下、「乾燥工程」と略記することがある)と、前記乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面から取り出す分離工程(以下、「分離工程」と略記することがある)とを、この順番で繰り返すことにより連続的に無水水硫化ソーダ有形物を得ることを特徴とするものである。
【0013】
後述する実施例と比較例との対比から分かるように、水硫化ソーダ有形物を減圧下で加熱脱水した比較例1では、水硫化ソーダ有形物が溶融して塊になるのを防ぐために昇温操作を過度に微調整しなければならず、脱水時間が長くなり、不純物である硫化ソーダ(NaS)の成分が増える結果となった。水硫化ソーダ水溶液を濃縮脱水した比較例2では、濃縮脱水が進むにつれて粘度が急激に上昇して塊となり、撹拌不能となるため脱水操作を中止せざるを得なかった。また、真空噴霧乾燥装置を用いて水硫化ソーダ水溶液を霧状に噴出して脱水した比較例3では、配管閉塞などが起きることで送液ポンプ圧力が高くなり、送液ポンプ圧力が高くなると、高温となった強アルカリの水硫化ソーダ水溶液が配管から噴き出すおそれがあるため、安全面に問題がある。また、噴霧圧力が安定せず、得られる水硫化ソーダの品質にばらつきがあった。これに対し、上記薄膜形成工程、乾燥工程及び分離工程をこの順番で繰り返し行った実施例1では、不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に安全かつ効率良く得ることができる。したがって、このような方法を採用する本発明の意義が大きいことが分かる。
【0014】
本発明における薄膜形成工程では、水硫化ソーダ水溶液をディスク表面に供給して薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る工程が行われる。図1に示されるように、供給槽から水硫化ソーダ水溶液が供給ポンプで循環槽に送液されることが好ましく、循環槽から水硫化ソーダ水溶液が循環ポンプで供給ノズルに送液されることが好ましい。次いで、供給ノズルから水硫化ソーダ水溶液が回転するディスク表面に供給されることにより薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得る工程が好適に行われる。当該ディスク表面に付着されなかった余剰分の水硫化ソーダ水溶液を循環槽で回収し、再度、循環ポンプで供給ノズルに送液する方法が好適に採用される。このとき、ディスク加熱手段により当該ディスク表面が50~170℃に保たれていることが好ましく、80~150℃に保たれていることがより好ましい。ディスク加熱手段としては、特に限定されず、加熱装置を別途設けていてもよいし、後述する乾燥工程で取り除かれる蒸気を加熱手段として利用してもよい。なお、後述する乾燥工程と同様に、薄膜形成工程においても容器内を減圧下、不活性雰囲気下とする方法が好適に採用される。
【0015】
本発明で用いられる水硫化ソーダ水溶液の濃度としては特に限定されないが、10~70重量%であることが好ましい。水硫化ソーダ水溶液の濃度が10重量%未満の場合、著しく生産の効率が悪くなるおそれがあり、30重量%以上であることがより好ましく、40重量%以上であることが更に好ましい。一方、水硫化ソーダ水溶液の濃度が70重量%を超える場合、水溶液が送液途中の配管内で固結するおそれがあり、65重量%以下であることがより好ましく、55重量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
本発明における乾燥工程では、前記薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を減圧下、不活性ガス雰囲気下で当該ディスク表面において脱水する工程が行われる。ディスクの回転とともに、当該ディスク表面において薄膜化された水硫化ソーダ水溶液から水分が取り除かれることになる。このとき、薄膜形成工程と同様に、ディスク加熱手段により当該ディスク表面が50~170℃に保たれていることが好ましく、80~150℃に保たれていることがより好ましい。乾燥工程において、減圧下にする方法としては特に限定されず、真空ポンプ等の減圧手段で容器内を減圧下にする方法が好適に採用され、これにより、均一かつ効率良く水分が気化し、蒸気として取り除かれる。容器内に存在する蒸気を取り除く観点から、容器の任意の位置に蒸気を取り除く排出口を設けておくことが好適な実施態様である。
【0017】
また、乾燥工程において、不活性ガス雰囲気下にする方法としては特に限定されず、不活性ガス供給手段で不活性ガスを容器内に供給する方法が好適に採用される。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンが挙げられ、中でも窒素が好適に使用される。また、容器内に供給された不活性ガスを回収する回収手段を有することが好ましい。回収手段としては、特に限定されないが、上述した蒸気を取り除く排出口から蒸気とともに不活性ガスを回収してもよく、回収された不活性ガスと蒸気とを分離した後に、当該不活性ガスを不活性ガス供給手段で再度容器内に供給することも好適な実施態様である。
【0018】
本発明者らの検討により、乾燥工程における脱水時間が長くなると、硫化ソーダ(NaS)等の不純物の含有量が増加する傾向にあることが明らかとなった。かかる観点から、前記脱水時間は6~300秒であることが好ましく、10~240秒であることがより好ましく、20~180秒であることが更に好ましい。前記脱水時間がこのような範囲にあることにより不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を得ることができる。本発明における脱水時間とは、乾燥工程に要する時間のことであり、薄膜形成工程において薄膜化された水硫化ソーダ水溶液を得た直後から、分離工程で無水水硫化ソーダ有形物をディスク表面から取り出す直前までの時間のことをいう。
【0019】
乾燥工程における容器内の減圧度(絶対圧)としては、1~40kPaであることが好ましく、5~30kPaであることがより好ましい。当該減圧度を制御するとともに、当該ディスク表面の温度を制御することで、当該ディスク表面において薄膜化された水硫化ソーダ水溶液から効率良く水分を取り除き、無水水硫化ソーダ有形物を得ることができる。
【0020】
次いで、本発明における分離工程では、乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面から取り出す工程が行われる。取り出す方法としては特に限定されないが、図1に示されるように、容器内にスクレーパーを備えていることが好ましく、ディスクの回転とともに乾燥工程で得られる無水水硫化ソーダ有形物を当該ディスク表面からスクレーパーでかき落し、当該かき落された無水水硫化ソーダ有形物が収集される収集槽を備えていることが好ましい。無水水硫化ソーダ有形物は潮解性を示すため、乾燥工程と同様に、分離工程においても容器内を減圧下、不活性雰囲気下とする方法が好適に採用される。
【0021】
本発明の無水水硫化ソーダ有形物の製造方法は、上記薄膜形成工程、乾燥工程及び分離工程をこの順番で繰り返すことを特徴としており、これにより、不純物の少ない無水水硫化ソーダ有形物を連続的に安全かつ効率良く得ることができる。本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物において、無水水硫化ソーダ成分の含有量が95重量%以上であることが好ましく、96重量%以上であることがより好ましく、97重量%以上であることが更に好ましい。なお、無水水硫化ソーダ成分の含有量は、通常、99.5重量%以下であり、99重量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物において、水分の含有量は、3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが更に好ましく、0.6重量%以下であることが特に好ましく、水分は実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0023】
本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物において、硫化ソーダ(NaS)、炭酸ナトリウム(NaCO)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、チオ硫酸ナトリウム(Na)等の不純物が含まれ得るが、硫化ソーダ(NaS)、炭酸ナトリウム(NaCO)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)及びチオ硫酸ナトリウム(Na)成分の合計含有量が5重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが更に好ましく、2重量%以下であることが特に好ましい。なお、前記合計含有量は、通常、0.5重量%以上である。
【0024】
中でも、本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物において、硫化ソーダ成分の含有量が1.5重量%以下であることが好ましい。不純物をできるだけ少なくする観点から、硫化ソーダ成分の含有量は、1.2重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以下であることが更に好ましい。なお、硫化ソーダ成分の含有量は、通常、0.1重量%以上である。
【0025】
本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物の形状としては特に限定されず、フレーク状、チップ状、ペレット状等、その他任意の形状であってよい。本発明で得られる無水水硫化ソーダ有形物は、水分が少なく不純物も少ないため、有機合成用原料や工業製品用原料として好適に用いることができる。
【実施例0026】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0027】
実施例1
真空薄膜乾燥機(株式会社西村鐵工所製)の供給槽から45重量%水硫化ソーダ水溶液を供給ポンプにより循環槽に2L供給した。循環槽から45重量%水硫化ソーダ水溶液を循環ポンプにより供給ノズルに送液し、供給ノズルの先端から45重量%水硫化ソーダ水溶液を回転する伝熱面積0.4mのディスク表面に連続的に供給し、当該ディスク表面に水硫化ソーダ水溶液からなる薄膜が形成された。ディスクに付着しなかった余剰の水硫化ソーダ水溶液は循環槽に戻り、再度、循環槽から供給ノズルに送液される。このとき、装置内の減圧度(絶対圧)は20kPaabs、ディスク蒸気圧力(ゲージ圧)は0.3MpaG、窒素量は50L/min(99.9%以上)、ディスク表面の温度は140℃であった。ディスクの回転とともに当該薄膜中の水分が30秒で脱水されて有形物となり、当該有形物をディスク表面からスクレーパーで掻き出して収集槽にて回収し、無水水硫化ソーダ有形物を得た。得られた無水水硫化ソーダ有形物の成分を中和滴定法と酸化還元滴定法を組み合わせて分析した。水分値は全体からその他の成分を差し引くことで算出した。表1に結果をまとめて示す。
【0028】
比較例1
フレーク状の水硫化ソーダ300kgをコニカルドライヤーに仕込み、真空度を0.8~1.3kpaとした。コニカルドライヤーのジャケット温度を上げるための温水を100分かけて45℃まで昇温した。以下、ドレンが出始めるとそのまま温度をキープし、その後徐々に昇温する操作を行った。1℃/hで47℃まで昇温したところ、ドレンが出てきたため47℃で3時間キープした。48℃に昇温後夜間はそのまま815分キープした。その後1℃/hで50℃まで昇温したところドレンが多く出始めた。0.5℃/hで51℃まで昇温するとドレンがさらに多量に出始めたため、昇温を停止した。そのまま6時間キープした。52℃まで昇温し夜間はそのまま800分キープした。その後0.5℃/hで昇温し、そのままの状態で1410分キープした。55℃まで0.5℃/3hで昇温し、そのまま55℃で630分キープした。55.5℃で1時間キープした後、56℃に昇温した。その結果ドレン量が増えたため、4時間キープし、0.5℃/2hで60℃まで昇温した。70℃まで1℃/hで昇温し、79.5℃まで0.5~1℃/30minで昇温し、脱水を終了した。得られた水硫化ソーダ有形物の成分を実施例1記載の手法を用いて分析した。表1に結果をまとめて示す。
【0029】
比較例2
45重量%水硫化ソーダ水溶液1820gを撹拌機能の付いた減圧濃縮装置「PVミキサー」(株式会社神鋼環境ソリューション製)に仕込み、撹拌速度70RPM、ジャケット温度を60℃まで昇温し、減圧度を30Torrとし、水硫化ソーダがスラリー状になるまでそのままの状態を保った。その後スラリー状態になってから徐々にジャケット温度を80℃まで昇温し、減圧度を20Torrとした。その結果、撹拌が不能となったため中止した。ここまでの操作で得られた水硫化ソーダ有形物の成分を実施例1記載の手法を用いて分析した。表1に結果をまとめて示す。
【0030】
比較例3
45重量%水硫化ソーダ水溶液を6L/hにて連続的に真空噴霧乾燥装置の熱交換配管に供給した。その際、装置全体を30Torrに減圧した。熱交換配管は150℃まで昇温されており、霧状に噴出された45重量%水硫化ソーダ水溶液が一気に脱水され、捕集缶に固形物として吹き出された。捕集缶ジャケットは吸湿や結露を防ぐため120℃に昇温していた。捕集缶で集められた水硫化ソーダの粉末を粉体受器にて採取した。得られた水硫化ソーダの粉末の成分を実施例1記載の手法を用いて分析した。表1に結果をまとめて示す。熱交換配管に水硫化ソーダ水溶液を供給する際に、配管閉塞などが起きることで送液ポンプ圧力が高くなることが分かった。このように、送液ポンプ圧力が高くなると、高温となった強アルカリの水硫化ソーダ水溶液が配管から噴き出すおそれがあるため、安全面に問題がある。また、捕集缶で集められた水硫化ソーダの粉末の品質にばらつきがあった。
【0031】
【表1】
【符号の説明】
【0032】
1 真空薄膜乾燥機
2 容器
3 水硫化ソーダ水溶液
4 供給槽
5 供給ポンプ
6 循環槽
7 循環ポンプ
8 供給ノズル
9 回転軸
10 ディスク
11 スクレーパー
12 無水水硫化ソーダ有形物
13 収集槽
図1