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特開2023-163774コイルボビン及びこれを備えるブラシレスモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163774
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】コイルボビン及びこれを備えるブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074902
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和磨
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604PB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】導線の巻き始め部分の干渉を抑え、導線をより整然と巻回することができるコイルボビン、及びこれを備えるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】導線が巻き付けられる角柱形状の芯棒である胴部と、胴部のその長さ方向における両端に設けられた鍔状部である第1フランジ部および第2フランジ部と、を有し、胴部には、第1フランジ部側の端部である根元部から導線が巻き始められ、根元部のいずれかの角であって、該根元部に導線が巻き始められる始点となる角を第1角部というときに、第1フランジ部の胴部側に向けられた面には、第1角部の位置に隣接する位置を通り、該第1角部まで導線を誘導する溝部が形成されているコイルボビン、及びこれを備えるブラシレスモータによりこれを解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータのステータを構成するコイルボビンであって、
導線が巻き付けられる角柱形状の芯棒である胴部と、
前記胴部のその長さ方向における両端に設けられた鍔状部である第1フランジ部および第2フランジ部と、を有し、
前記胴部には、前記第1フランジ部側の端部である根元部から導線が巻き始められ、
前記根元部のいずれかの角であって、該根元部に導線が巻き始められる始点となる角を第1角部というときに、
前記第1フランジ部の前記胴部側に向けられた面には、前記第1角部の位置に隣接する位置を通り、該第1角部まで導線を誘導する溝部が形成されている、
コイルボビン。
【請求項2】
前記溝部は直線状に延びており、その両端が前記第1フランジ部の側面を貫通している、
請求項1に記載のコイルボビン。
【請求項3】
鉄芯がインサート成形される、
請求項3に記載のコイルボビン。
【請求項4】
前記胴部の側面のうち、前記第1角部をその辺に含む側面の一つを第1側面といい、該第1側面の、前記第1角部の対辺をなす角を第2角部というときに、
前記溝部は、前記第1側面に隣接し、該第1側面に沿ってこれと平行に延びており、
導線は、前記溝部内を、前記第2角部側から前記第1角部側に向かって配線される、
請求項1に記載のコイルボビン。
【請求項5】
前記溝部は、前記第1フランジ部の側面を貫通し、該溝部に導線を導入する開口である、導入口を有し、
前記溝部は、前記導入口側から前記第1角部側に向かうにつれて次第にその深さが浅くなるスロープ部を有する、
請求項4に記載のコイルボビン。
【請求項6】
前記溝部はその両端が前記第1フランジ部の側面を貫通しており、
前記溝部はさらに、その深さが一定のフラット部を有し、
前記スロープ部は前記第2角部に隣接する位置に設けられ、
前記フラット部は、前記スロープ部から連続し、前記第1角部に向かって延びている、
請求項5に記載のコイルボビン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコイルボビンに導線が巻回された複数のコイルと、
前記複数のコイルを有するステータと、を備える、
ブラシレスモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気モータのステータを構成するコイルボビン、及びこれを備えるブラシレスモータに関し、より具体的には、コイルボビンに対して導線をより整然と巻回することができるボビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コイルボビンの胴部に巻回される導線の巻き始め部分が、2周目の導線に干渉することを軽減するコイルボビンが開示されている。下記特許文献1のコイルボビンは、フランジの裏面(内向き面)にスロープを設け、スロープに沿って胴部の一側面の中ほどまで導線を誘導し、そこから導線を巻き始める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-118615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5に示すように、一般的なコイルボビンに導線を巻くときには、一周目を巻き終わる前にその巻き始め部分に導線が干渉する。そのため、コイルボビンの胴部における各周の最後の側面(以下、この側面のことを単に「胴部の最後の側面」ともいう。)には導線が斜めに巻かれ、その根元部分には隙間が生じることになる。また、導線の巻き始め部分からは結線や他コイルとの接続用の導線が連続しており、2層目以降の導線がこれに干渉する、よって2層目以降は各周の最初の側面でも導線が斜めに巻かれることになる。
【0005】
また、図6に示すように、胴部の側面の途中から導線を巻き始めると、その側面に巻かれる導線は、導線の巻き始め部分を境に折れ曲がるように巻かれる。また、その側面に導線を最短距離で引き回すと、導線が前周の導線に干渉する(図6の一点鎖線の部分)。そのため、導線をまず前周の導線に干渉しない位置に引っ張り、その後、前周の導線側に引き下ろす、という操作が必要になる。この操作は巻線機の処理時間を増加させ、またいわゆる巻きダレなど、コイルの品質にも影響する。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、導線の巻き始め部分の干渉を抑え、導線をより整然と巻回することができるコイルボビン、及びこれを備えるブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のコイルボビンは、電気モータのステータを構成するコイルボビンであって、導線が巻き付けられる角柱形状の芯棒である胴部と、前記胴部のその長さ方向における両端に設けられた鍔状部である第1フランジ部および第2フランジ部と、を有し、前記胴部には、前記第1フランジ部側の端部である根元部から導線が巻き始められ、前記根元部のいずれかの角であって、該根元部に導線が巻き始められる始点となる角を第1角部というときに、前記第1フランジ部の前記胴部側に向けられた面には、前記第1角部の位置に隣接する位置を通り、該第1角部まで導線を誘導する溝部が形成されていることを要旨とする。
【0008】
導線をフランジ部の溝を通して胴部の角に誘導し、その角から導線を巻き始めることにより、上記特許文献1のような導線の折れ曲がりが避けられ、また、胴部の最後の側面においても導線を最短距離で引き回すことができる。また、結線や他コイルとの接続用の導線は溝に沈んでいるため、これが2層目以降の導線に干渉することもない。これにより、巻線機による処理の煩雑化や、巻きダレが防止されるとともに、コイルボビンに対する導線の巻き数が最大化される。
【0009】
また、本発明のコイルボビンは、前記溝部が直線状に延びており、その両端が前記第1フランジ部の側面を貫通していることが好ましい。これによりコイルボビンの全体を一部品として射出成形することが可能となり、組み立て工程を省略することができる。このとき、鉄芯がインサート成形されることがより好ましい。
【0010】
また、本発明のコイルボビンは、前記胴部の側面のうち、前記第1角部をその辺に含む側面の一つを第1側面といい、該第1側面の、前記第1角部の対辺をなす角を第2角部というときに、前記溝部は、前記第1側面に隣接し、該第1側面に沿ってこれと平行に延びており、導線は、前記溝部内を、前記第2角部側から前記第1角部側に向かって配線されることが好ましい。これにより、胴部の最後の側面においても、その根元部に隙間を空けず、導線を整然と巻くことができる。
【0011】
このとき、前記溝部は、前記第1フランジ部の側面を貫通し、該溝部に導線を導入する開口である、導入口を有し、前記溝部は、前記導入口側から前記第1角部側に向かうにつれて次第にその深さが浅くなるスロープ部を有することが好ましい。溝部はコイルボビンの部品強度を低下させるおそれがある。溝部をスロープ状に形成することにより、溝部の深さを抑えることができる。
【0012】
またこのとき、前記溝部はその両端が前記第1フランジ部の側面を貫通しており、前記溝部はさらに、その深さが一定のフラット部を有し、前記スロープ部は前記第2角部に隣接する位置に設けられ、前記フラット部は、前記スロープ部から連続し、前記第1角部に向かって延びていることがより好ましい。これにより溝部の深さを最小化することができるとともに、コイルボビンの全体を一部品として射出成形することが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明のブラシレスモータは、本発明のコイルボビンに導線が巻回された複数のコイルと、前記複数のコイルを有するステータと、を備えることをその要旨とする。本発明のコイルボビンを採用することにより、モータの動作品質がより安定する。また本発明のコイルボビンはブラシレスモータの小型化にも資する。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明のコイルボビン及びブラシレスモータによれば、導線の巻き始め部分の干渉を抑え、導線をより整然と巻回することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るコイルボビンの外観を示す斜視図である。
図2】コイルボビンの側面視断面図である。
図3】溝部の変形例を示す側面視断面図である。
図4】実施形態に係るブラシレスモータの内部構造を示す平面視透視図である。
図5】従来のコイルボビンの一例を示す斜視図である
図6】従来のコイルボビンの一例を示す側面視断面図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコイルボビン及びブラシレスモータの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明するコイルボビン10は、導線(巻線)が巻かれることで、後述するブラシレスモータ90のステータ80を構成するコイルとなる。
【0017】
以下の説明における「上下」とは、図1に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向であり、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。「前後」とは同座標軸のX軸に平行な方向をいい、X1側を「前」、X2側を「後ろ」とする。また、「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向をいい、Y1側を「右」、Y2側を「左」とする。
【0018】
(コイルボビンの構成)
図1はコイルボビン10の外観を示す斜視図である。以下、図1を参照して本形態のコイルボビン10の全体的な構造について説明する。
【0019】
コイルボビン10は、導線19が巻き付けられる角柱形状の芯棒である胴部20と、胴部20の下に設けられた鍔状部である第1フランジ部31、胴部20の上に設けられた鍔状部である第2フランジ部32と、を有している。第1フランジ部31の上面31aには、導線19を胴部20に誘導するためのスリットである溝部40が形成されている。
【0020】
胴部20の周面を構成する4つの側面のうち、右側(Y1側)に向けられた側面を第1側面21というときに、溝部40は、第1側面21に隣接し、第1側面21に沿ってこれと平行に延びるように形成されている。第1側面21は、その後ろ側(X2側)の辺を構成する角である第1角部211と、前側(X1側)の辺を構成する角である第2角部212を有している。本形態の溝部40は、第1フランジ部31の側面を貫通し、溝部40に導線19を導入する開口である導入口41を有している。溝部40の導線19は、導入口41を通って、第2角部212側から第1角部211側に引き回され、第1角部211の根元部21aを始点として、そこから胴部20に巻回される。
【0021】
また、本形態の溝部40は、その両端が第1フランジ部31の側面を貫通している。これによりコイルボビン10を一部品として射出成形することが可能とされており、組み立て工程が省略されている。また本形態のコイルボビン10は鉄芯70がインサート成形されている。
【0022】
(巻線の導入構造)
図2は、コイルボビン10を右側から見た側面視断面図である。以下、図2を参照して、コイルボビン10の溝部40の構造について説明する。
【0023】
上でも述べたように、本形態のコイルボビン10では、導線19は溝部40内を第2角部212側から第1角部211側に配線され、第1角部211の根元部21aを始点として胴部20に巻き付けられる。本形態では、溝部40を通して胴部20の第1角部21に導線19を誘導し、そこから胴部20に巻き始めることにより、図6のような導線の折れ曲がりが避けられる。第1側面21は、胴部20に巻かれる各周の導線19が最後に巻き付けられる側面であるが、第1側面21においても、前周の導線19に干渉することなく、導線19を最短距離で引き回すことができる。また、結線や他コイルとの接続用の導線19は溝40に沈んでいるため、これが2層目以降の導線19に干渉することもない。このように、本形態のコイルボビン10によれば、第1側面21の根元部21aに隙間を空けることなく、導線19を整然と巻くことができ、巻線機による処理の煩雑化、巻きダレを防止しつつ、コイルボビン10に対する導線の巻き数を最大化することができる。
【0024】
(スロープ部およびフラット部)
本形態の溝部40は、導入口41から第1角部211側に向かうにつれて次第にその深さが浅くなるスロープ部42と、深さが一定のフラット部43とを有している。スロープ部42は第2角部212に隣接する位置に設けられ、フラット部43は、スロープ部42から連続し、第1角部211に向かって延びている。
【0025】
溝部40は第1フランジ部31の肉厚を部分的に薄くするため、コイルボビン10の部品強度に影響するおそれがある。本形態では、スロープ部42とフラット部43とを組み合わせることで、溝部40の深さ、つまりコイルボビン10の部品強度の低下を必要最小限に抑えている。尚、仮に溝部40にスロープ部42がなく、溝部40の全体がフラット部43のみで構成されていた場合、一周目の導線19は、第1側面21に差しかかる第2角部212の位置で、溝部40内の導線19に僅かに干渉する。
【0026】
(溝部の変形例)
図3は溝部40の変形例を示す側面視断面図である。溝部40によるコイルボビン10の強度低下が問題とならないときは、例えば図3(a)に示すように、スロープ部42を設けず、十分な深さを有するフラット部43のみで溝部40を構成してもよい。また、コイルボビン10の射出成形が困難になることや、人手による組み立て作業を行うことに差し支えがないとき、又は溝部40による強度低下が重大な問題になるときは、例えば図3(b)に示すように、溝部40をスロープ部23のみで構成したり、又は溝部40を貫通させず、第1角部211に導線19を誘導するために必要となる範囲にのみ溝部40を形成してもよい。
【0027】
(ブラシレスモータ)
図4は、本形態に係るブラシレスモータ90の内部構造を示す平面視透視図である。ブラシレスモータ90は、上記実施形態のコイルボビン10に導線19が巻回された複数のコイルからなるステータ80と、ロータ81とを備えている。ブラシレスモータ90は、上記実施形態のコイルボビン10を採用することにより、安定した動作品質を有する。また、導線19の巻き数が最大化されることで、そのサイズに対する出力が高められている。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10:コイルボビン,19:巻線,20:胴部,21:第1側面,21a:根元部,211:第1角部,212:第2角部,31:第1フランジ部,31a:上面,32:第2フランジ部,40:溝部,41:導入口,42:スロープ部,43:フラット部,70:鉄芯,80:ステータ,81:ロータ,90:ブラシレスモータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6