(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163786
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】溶融紡糸設備
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20231102BHJP
D01D 7/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B65H67/08 Z
D01D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074920
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 靖展
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅彦
【テーマコード(参考)】
3F112
4L045
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112JA08
3F112JB09
4L045AA05
4L045BA03
4L045DB07
4L045DC01
4L045DC11
4L045DC28
4L045DC31
4L045DC41
4L045DC43
(57)【要約】
【課題】複数の紡糸引取機が設置される場合において、紡糸装置から紡出された複数の糸を紡糸引取機に糸掛けするときの作業性及び安全性の向上を図ることができると共に、断糸処理装置のカッターに不具合が発生することを防止できる溶融紡糸設備を提供する。
【解決手段】溶融紡糸設備100は、複数の紡糸引取機1と、切断部5と、を備える。切断部は、作業者による複数の糸Yの切断作業に用いられる切断部5であって、引取装置3に糸掛けされる前の複数の糸Yの束を切断することが可能であると共に、引取装置3及び断糸処理装置4の少なくとも一方に設置されている。断糸処理装置4は、配列方向に沿って並ぶ複数の糸Yを一又は複数本ずつ連続的に切断するカッター42と、カッター42によって切断された複数の糸Y及び切断部5によって切断された複数の糸Yを保持する吸引部44と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紡糸引取機と、
切断部と、を備え、
複数の前記紡糸引取機のそれぞれは、複数の糸を紡出する紡糸装置と、前記複数の糸を引き取る引取装置と、前記複数の糸を一時的に預けておく断糸処理装置と、を有し、
前記切断部は、作業者による前記複数の糸の切断作業に用いられる切断部であって、前記引取装置に糸掛けされる前の前記複数の糸の束を切断することが可能であると共に、前記引取装置及び前記断糸処理装置の少なくとも一方に設置されており、
前記断糸処理装置は、前記複数の糸が並ぶ配列方向に沿って前記複数の糸を一又は複数本ずつ連続的に切断する少なくとも一つのカッターと、前記カッターによって切断された前記複数の糸及び前記切断部によって切断された前記複数の糸を保持する吸引部と、を有する、溶融紡糸設備。
【請求項2】
前記切断部は、複数の前記紡糸引取機のそれぞれにおいて、前記引取装置及び前記断糸処理装置の少なくとも一方に設置されている、請求項1に記載の溶融紡糸設備。
【請求項3】
前記紡糸装置から紡出される前記複数の糸を吸引可能であるサクションガンを複数備え、
複数の前記サクションガンの設置数は、複数の前記紡糸引取機の設置数よりも少ない、請求項1又は2に記載の溶融紡糸設備。
【請求項4】
前記切断部は、前記吸引部の吸引口の近傍に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【請求項5】
前記断糸処理装置及び前記切断部は、前記引取装置において同じ部材における一側部に固定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【請求項6】
前記一側部の側面は前記配列方向に交差しており、
前記配列方向に水平面において直交する直交方向において、前記吸引部に対する一方側に、前記作業者が前記切断作業の際に位置する作業領域が設けられており、前記吸引部に対する他方側に、前記切断部が設けられている、請求項5に記載の溶融紡糸設備。
【請求項7】
前記切断部は、前記直交方向において一方から他方に向かって見て、前記吸引部の吸引口よりも前記配列方向において前記側面から離れた位置に配置されている、請求項6に記載の溶融紡糸設備。
【請求項8】
前記切断部は、第一刃部と有する第一刃と、前記第一刃と重ねて配置されると共に第二刃部を有する第二刃と、を備え、
前記第一刃と前記第二刃とが重なる重なり方向から見て、前記第一刃部の刃先の第一稜線と前記第二刃部の刃先の第二稜線とが交差し、前記第一刃部と前記第二刃部とが交差する交差部が形成されており、
前記配列方向と前記重なり方向とが直交し且つ前記配列方向に水平面において直交する直交方向において一方から他方に向かって見たときに前記交差部が見えるように、前記切断部が設置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【請求項9】
前記交差部は、前記吸引部よりも上下方向において上方に位置している、請求項8に記載の溶融紡糸設備。
【請求項10】
前記切断部は、前記交差部に対して上方から進入する前記複数の糸を切断する、請求項9に記載の溶融紡糸設備。
【請求項11】
前記配列方向から見て、前記第一刃及び前記第二刃の上部が前記直交方向における他方側に位置し、前記第一刃及び前記第二刃の下部が前記直交方向における前記一方側に位置するように、前記第一刃及び前記第二刃が傾いている、請求項10に記載の溶融紡糸設備。
【請求項12】
前記断糸処理装置及び前記切断部は、前記引取装置において同じ部材に固定されており、
前記切断部は、前記第一刃及び前記第二刃を前記部材に対して取り付ける取付部材を有し、
前記取付部材は、前記部材に固定される固定部と、前記固定部に接続されると共に前記配列方向に延在する延在部と、前記延在部に接続されると共に上下方向に延在しており、前記第一刃及び前記第二刃の下部に接続されて前記第一刃及び前記第二刃を支持する支持部と、を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【請求項13】
前記断糸処理装置及び前記切断部は、前記引取装置において同じ部材における一側部に固定されており、
前記部材には、前記作業者が操作する第一操作部が設けられており、
前記第一操作部は、前記部材において前記切断部が固定されている前記一側部とは異なる他側部に設けられており、
前記作業者が前記切断作業の際に位置する作業領域は、前記操作部を操作可能な位置に設けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【請求項14】
前記引取装置は、前記複数の糸を巻き取る巻取部を有し、
前記巻取部には、前記作業者が操作する第二操作部が設けられており、
前記第一操作部と前記第二操作部とは、同じ方向を向くように配置されている、請求項13に記載の溶融紡糸設備。
【請求項15】
複数の前記紡糸引取機は、配置方向に沿って配置されており、
前記配置方向に沿って延在するように、前記作業者が通行する通路が設けられており、
前記作業者が前記切断作業の際に位置する作業領域は、前記通路上に設けられており、
前記断糸処理装置及び前記切断部は、前記引取装置において同じ部材における一側部に固定されており、
前記切断部が固定されている前記一側部の側面と前記通路の延在方向とが交差している、請求項1~14のいずれか一項に記載の溶融紡糸設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紡糸引取機を備える溶融紡糸設備に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸引取機は、糸を紡出する紡糸装置と、紡糸装置において紡出された複数の糸を巻き取る引取装置と、引取装置における糸巻取終了後や断糸時に作動して糸を預けておく断糸処理装置と、を備えている。特許文献1には、複数の糸を切断する第一カッターと、第一カッターで切断された複数の糸を吸引する吸引部(吸引口)を有する吸引装置と、吸引部に吸引された複数の糸を切断する第二カッターと、を備える断糸処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紡糸引取機において、紡糸装置から紡出された複数の糸を引取装置に糸掛けする場合には、通常、紡糸装置から紡出された複数の糸を作業者がサクションガンによって受け取り、サクションガンにおいて吸引保持した複数の糸を紡糸引取機に糸掛けする。ここで、一般的に、サクションガンの数は、複数の紡糸引取機の数に対して少ない。そのため、複数の紡糸引取機において糸掛けが同じタイミングで発生するような状況においては、一の紡糸引取機において糸掛け作業を行っている場合、他の紡糸引取機において紡糸装置から紡出された糸をサクションガンによって受け取ることができない場合が生じる。
【0005】
そこで、紡糸装置から紡出された複数の糸を断糸処理装置の吸引部において一時的に保持させている。断糸処理装置において糸を保持させる方法としては、紡糸装置から紡出された複数の糸を作業者が受け取り、複数の糸の端部を作業者が切断器具(ハサミ、カッター等)を用いて切断してから、複数の糸を吸引部に吸引させて保持させる方法がある。しかしながら、この方法では、作業者が切断器具を手にした状態で作業を行うため、作業性が良くなく、安全性も良くない。
【0006】
断糸処理装置において糸を保持させる他の方法としては、断糸処理装置のカッター(第一カッター、第二カッター)によって複数の糸を切断し、切断した複数の糸を吸引部に吸引させて保持させる方法がある。しかしながら、断糸処理装置のカッターは、複数の糸を一又は複数本ずつ連続的に(徐々に)切断するものである。そのため、複数の糸をまとめて束にした状態で一気に切断するような使用がなされた場合には、カッターに破損したり寿命が短くなったりするといった不具合が生じる。そのため、本来のカッターの機能に支障をきたすおそれがある。
【0007】
本発明の一側面は、複数の紡糸引取機が設置される場合において、紡糸装置から紡出された複数の糸を引取装置に糸掛けするときの作業性及び安全性の向上を図ることができると共に、断糸処理装置のカッターに不具合が発生することを防止できる溶融紡糸設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る溶融紡糸設備は、複数の紡糸引取機と、切断部と、を備え、複数の紡糸引取機のそれぞれは、複数の糸を紡出する紡糸装置と、複数の糸を引き取る引取装置と、複数の糸を一時的に預けておく断糸処理装置と、を有し、切断部は、作業者による複数の糸の切断作業に用いられる切断部であって、引取装置に糸掛けされる前の複数の糸の束を切断することが可能であると共に、引取装置及び断糸処理装置の少なくとも一方に設置されており、断糸処理装置は、複数の糸が並ぶ配列方向に沿って複数の糸を一又は複数本ずつ連続的に切断する少なくとも一つのカッターと、カッターによって切断された複数の糸及び切断部によって切断された複数の糸を保持する吸引部と、を有する。
【0009】
本発明の一側面に係る溶融紡糸設備は、作業者による複数の糸の切断作業に用いられる切断部を備えている。すなわち、溶融紡糸設備は、紡糸装置から紡出された複数の糸を引取装置に糸掛けする際に、引取装置に糸掛けされる前の複数の糸の束を切断するための専用の切断部を備えている。これにより、作業者は、切断器具やカッターを使用することなく、複数の糸の束を切断部によってまとめて一気に切断することができる。したがって、複数の紡糸引取機が設置される場合において、紡糸装置から紡出された複数の糸を引取装置に糸掛けするときの作業性及び安全性の向上を図ることができると共に、断糸処理装置のカッターに不具合が発生することを防止できる。
【0010】
また、溶融紡糸設備では、各紡糸引取機が有する断糸処理装置の吸引部において、切断部によって切断された複数の糸を保持する。そのため、紡糸装置から紡出された糸をサクションガンによって受け取ることができない場合であっても、吸引部に糸を預けておくことができる。
【0011】
一実施形態においては、切断部は、複数の紡糸引取機のそれぞれにおいて、引取装置及び断糸処理装置の少なくとも一方に設置されていてもよい。この構成では、各紡糸引取機の引取装置又は断糸処理装置に設置される切断部において複数の糸を切断することができるため、作業性の向上をより一層図ることができる。
【0012】
一実施形態においては、溶融紡糸設備は、紡糸装置から紡出される複数の糸を吸引可能であるサクションガンを複数備え、複数のサクションガンの設置数は、複数の紡糸引取機の設置数よりも少なくてもよい。この構成では、複数の紡糸引取機において糸掛けが同じタイミングで発生するような状況においては、一の紡糸引取機において糸掛け作業を行っている場合、他の紡糸引取機において紡糸装置から紡出された糸をサクションガンによって受け取ることができない場合が生じる。そのため、複数のサクションガンの設置数が複数の紡糸引取機の設置数よりも少ない構成では、切断部において切断された複数の糸を各紡糸引取機が有する断糸処理装置の吸引部において保持させることによって、サクションガンを使用するための待機時間が発生しないため、作業性の向上を図ることができる。
【0013】
一実施形態においては、切断部は、吸引部の吸引口の近傍に配置されていてもよい。この構成では、切断部において切断した複数の糸を、吸引部の吸引口に対して容易に導くことができる。
【0014】
一実施形態においては、断糸処理装置及び切断部は、引取装置において同じ部材における一側部に固定されていてもよい。この構成では、切断部において切断した複数の糸を、吸引部の吸引口に対して容易に導くことができる。
【0015】
一実施形態においては、一側部の側面は配列方向に交差しており、配列方向に水平面において直交する直交方向において、吸引部に対する一方側に、作業者が切断作業の際に位置する作業領域が設けられており、吸引部に対する他方側に、切断部が設けられていてもよい。この構成では、作業領域と切断部とが直交方向において向かい合うため、サクションガンによる糸掛け時に切断部が邪魔にならない。
【0016】
一実施形態においては、切断部は、直交方向において一方から他方に向かって見て、吸引部の吸引口よりも配列方向において側面から離れた位置に配置されていてもよい。この構成では、作業者が作業領域に位置して作業を行う場合において、切断部において切断した複数の糸を吸引部の吸引口に導く際に、吸引部が邪魔にならない。そのため、切断部において切断した複数の糸を、吸引部の吸引口に対して容易に導くことができる。
【0017】
一実施形態においては、切断部は、第一刃部と有する第一刃と、第一刃と重ねて配置されると共に第二刃部を有する第二刃と、を備え、第一刃と第二刃とが重なる重なり方向から見て、第一刃部の刃先の第一稜線と第二刃部の刃先の第二稜線とが交差し、第一刃部と第二刃部とが交差する交差部が形成されており、配列方向と重なり方向とが直交し且つ配列方向に水平面において直交する直交方向において一方から他方に向かって見たときに交差部が見えるように、切断部が設置されていてもよい。この構成では、作業領域に位置する作業者が切断部における交差部を容易に認識できるため、切断部に対して作業を容易に行うことができる。
【0018】
一実施形態においては、交差部は、吸引部よりも上下方向において上方に位置していてもよい。この構成では、切断部において切断した複数の糸を、吸引部の吸引口に対して容易に導くことができる。
【0019】
一実施形態においては、切断部は、交差部に対して上方から進入する複数の糸を切断してもよい。この構成では、この構成では、作業者は、切断部に対して、複数の糸を上から下に移動させる動作によって複数の糸を切断することができる。そのため、複数の糸を容易に切断することができる。
【0020】
一実施形態においては、配列方向から見て、第一刃及び第二刃の上部が直交方向における他方側に位置し、第一刃及び第二刃の下部が直交方向における一方側に位置するように、第一刃及び第二刃が傾いていてもよい。作業者は、切断作業の際、複数の糸を両手で把持して複数の糸を束ねて、一方の手と他方の手との間の部分において束状となっている複数の糸を切断部に挿入し、複数の糸を上から下に移動させる。このとき、一方側に位置する手の高さ位置を固定した状態で、他方側に位置する手を下方に移動させることによって複数の糸の束を押し下げる。このような動作を行う場合において、第一刃及び第二刃が上記のように傾いていると、複数の糸に対してせん断力を加え易くなるため、複数の糸を容易に切断することができる。
【0021】
一実施形態においては、断糸処理装置及び切断部は、引取装置において同じ部材に固定されており、切断部は、第一刃及び第二刃を部材に対して取り付ける取付部材を有し、取付部材は、部材に固定される固定部と、固定部に接続されると共に配列方向に延在する延在部と、延在部に接続されると共に上下方向に延在しており、第一刃及び第二刃の下部に接続されて第一刃及び第二刃を支持する支持部と、を有していてもよい。この構成では、延在部が配列方向に延び、この延在部に接続される支持部が上下方向に延びている。このように、配列方向から見て、延在部及び支持部が直交方向に突出するような部分を有さない構成にすることによって、切断作業の際に取付部材が邪魔になったり、複数の糸が取付部材に引っ掛かったりすることを抑制できる。
【0022】
一実施形態においては、断糸処理装置及び切断部は、引取装置において同じ部材における一側部に固定されており、部材には、作業者が操作する第一操作部が設けられており、第一操作部は、部材において切断部が固定されている一側部とは異なる他側部に設けられており、作業者が切断作業の際に位置する作業領域は、操作部を操作可能な位置に設けられていてもよい。この構成では、作業領域において、糸の切断作業及び操作部の操作を行うことができる。したがって、溶融紡糸設備が設置される工場等の限られたスペースにおいて、作業領域を有効に活用することができる。
【0023】
一実施形態においては、引取装置は、複数の糸を巻き取る巻取部を有し、巻取部には、作業者が操作する第二操作部が設けられており、第一操作部と第二操作部とは、同じ方向を向くように配置されていてもよい。この構成では、作業者が第一操作部及び第二操作部の両方を確認(目視)しながら、第一操作部又は第二操作部を操作することが可能となる。
【0024】
一実施形態においては、複数の紡糸引取機は、配置方向に沿って配置されており、配置方向に沿って延在するように、作業者が通行する通路が設けられており、作業者が切断作業の際に位置する作業領域は、通路上に設けられており、断糸処理装置及び切断部は、引取装置において同じ部材における一側部に固定されており、切断部が固定されている一側部の側面と通路の延在方向とが交差していてもよい。この構成では、通路が配置方向に沿って延在するように一直線状に設けられているため、作業者が移動を容易に行うことができる。また、通路上に切断部が配置されないため、通路を通行する作業者が切断部と接触したりすることを回避できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一側面によれば、複数の紡糸引取機が設置される場合において、紡糸装置から紡出された複数の糸を紡糸引取機に糸掛けするときの作業性及び安全性の向上を図ることができると共に、断糸処理装置のカッターに不具合が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る溶融紡糸設備の概略側面図である。
【
図3】
図3は、切断部が設置された筐体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、切断部が設置された筐体の正面図である。
【
図5】
図5は、切断部が設置された筐体の側面図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態に係る溶融紡糸設備における筐体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
図1は、一実施形態に係る溶融紡糸設備の概略側面図である。
図2は、紡糸引取機の概略正面図である。説明の便宜のため、
図1において前後方向、
図2において左右方向を設定している。
【0029】
図1及び
図2に示される溶融紡糸設備100は、工場等に設置されている。
図2に示されるように、溶融紡糸設備100は、複数の紡糸引取機1と、切断部(
図3参照)と、を備えている。複数の紡糸引取機1は、左右方向に並んで複数設置されている。
図2では、二つの紡糸引取機1を示している。溶融紡糸設備100は、複数のサクションガン110を備えている。溶融紡糸設備100において、複数の紡糸引取機1の設置数は、複数のサクションガン110の設置数よりも多い。
【0030】
複数の紡糸引取機1のそれぞれは、同様の構成を有している。以下では、一つの紡糸引取機1を一例に構成について詳細に説明する。
図1及び
図2に示されるように、紡糸引取機1は、紡糸装置2と、引取装置3と、断糸処理装置4と、を備えている。紡糸引取機1は、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを引取装置3において引き取り、複数の糸Yを複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。
【0031】
紡糸装置2は、複数の糸Yを紡出する。紡糸装置2は、引取装置3の上方に配置されている。複数の糸Yは、配列方向に並んで走行する。配列方向は、左右方向と一致する。
【0032】
引取装置3は、第一ゴデットローラ6と、第二ゴデットローラ7と、ガイドレール8と、糸規制機構9と、巻取部10と、を備えている。
【0033】
第一ゴデットローラ6及び第二ゴデットローラ7は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを引き取る。第一ゴデットローラ6は、紡糸装置2の上下方向における下側に配置されている。第一ゴデットローラ6は、筐体20(
図4参照)に設置されている。第一ゴデットローラ6は、左右方向に延在する回転軸を中心に回転する。第一ゴデットローラ6は、第一ゴデットモータ(不図示)によって回転駆動される。
【0034】
第二ゴデットローラ7は、第一ゴデットローラ6よりも後側に配置されている。第二ゴデットローラ7は、左右方向に延在する回転軸を中心に回転する。第二ゴデットローラ7は、第二ゴデットモータ(不図示)によって回転駆動される。
【0035】
第二ゴデットローラ7は、ガイドレール8に移動可能に支持されている。ガイドレール8は、長手方向の一端部(
図1の左端部)が下、長手方向の他端部(
図1の右端部)が上となるように、前後方向に対して斜めに配置されている。第二ゴデットローラ7は、シリンダ(不図示)に接続されている。第二ゴデットローラ7は、シリンダによって、ガイドレール8に沿って移動する。これにより、第二ゴデットローラ7は、
図1において実線で示す巻取位置と、
図1において一点鎖線で示す糸掛け位置と、の間で移動可能となっている。巻取位置は、糸Yの巻取を行うときの位置である。糸掛け位置は、巻取位置よりも第一ゴデットローラ6に近接して配置される位置であり、糸掛けを行うときの位置である。
【0036】
糸規制機構9は、第一ゴデットローラ6の上方に配置されている。
図3、
図4及び
図5に示されるように、糸規制機構9は、筐体20の側部20Cに設置されている。糸規制機構9は、第一規制部9Aと、第二規制部9Bと、を有している。第一規制部9Aは、第二規制部9Bよりも上方に配置されている。第一規制部9A及び第二規制部9Bのそれぞれは、第一ゴデットローラ6に巻き掛けられる複数の糸Yの間隔を規定する。第一規制部9A及び第二規制部9Bによって、複数の糸Yの走行が安定すると共に、左右方向に配列された複数の糸Yの左右方向への移動が規制される。
【0037】
図1及び
図2に示されるように、巻取部10は、複数の支点ガイド11と、複数のトラバースガイド12と、ターレット13と、2本のボビンホルダ14と、コンタクトローラ15と、を有している。
【0038】
複数の支点ガイド11は、
図1に示されるように、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数の支点ガイド11は、ガイド部材16に移動可能に装着されている。ガイド部材16は、長手方向が前後方向に沿うように配置されている。ガイド部材16は、その下側に取り付けられた支持部材18によって、本体フレーム19に取り付けられている。
【0039】
複数のトラバースガイド12は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に並んで配置されている。各トラバースガイド12は、トラバースモータ(不図示)によって駆動されて、前後方向に往復移動する。トラバースガイド12に掛けられた糸Yは、支点ガイド11を中心にトラバースされる。
【0040】
ターレット13は、円板状の部材である。ターレット13は、前後方向に延在する回転軸を中心に回転する。ターレット13は、ターレットモータ(不図示)によって回転駆動される。2本のボビンホルダ14のそれぞれは、軸方向が前後方向に延在している。2本のボビンホルダ14のそれぞれは、ターレット13の上端部及び下端部に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ14には、複数の糸Yに対して個別に設けられた複数のボビンBが前後方向に並べて装着されている。2つのボビンホルダ14のそれぞれは、個別の巻取モータ(不図示)によって回転駆動される。
【0041】
巻取部10では、上側のボビンホルダ14を回転駆動させると、トラバースガイド12によってトラバースされた糸YがボビンBに巻き取られてパッケージPが形成される。パッケージPの形成が完了した後には、ターレット13を回転させることにより、2本のボビンホルダ14の上下の位置を入れ換える。これにより、それまで下側に位置していたボビンホルダ14が上側に移動し、このボビンホルダ14に装着されたボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができる。また、それまで上側に位置していたボビンホルダ14が下側に移動し、このボビンホルダ14から完成したパッケージPを回収することができる。
【0042】
コンタクトローラ15は、上側のボビンホルダ14の上方に配置されている。コンタクトローラ15は、前後方向に延在する回転軸を中心に回転する。コンタクトローラ15は、上側のボビンホルダ14に装着されたボビンBに糸Yが巻き取られたパッケージPの表面に接触することで、糸Yの巻取中のパッケージPの表面に接圧を付与する。
【0043】
断糸処理装置4は、引取装置3における糸巻取終了後や断糸時に作動して複数の糸Yを保持する。断糸処理装置4は、糸規制機構9の上方に配置されている。
図3に示されるように、断糸処理装置4は、筐体(部材)20に設置されている。
【0044】
図6に示されるように、断糸処理装置4は、ホルダ40と、吸引装置41と、カッター42と、を有している。ホルダ40は、断糸処理装置4の基体となるものであり、筐体20(
図4参照)に設けられている。
【0045】
吸引装置41は、カッター42で切断された複数の糸Yを吸引するものである。吸引装置41は、保持部43と、吸引部44と、シリンダ45と、を有している。保持部43及び吸引部44は、筒状の部材である。吸引部44は、保持部43に対して進退自在に保持されており、保持部43の内側と吸引部44の内側は連通している。吸引部44の外側と保持部43の内側の間は空気が漏れないように気密性が保たれている。吸引部44の先端には、切断された複数の糸Yを吸引する吸引口44Aが形成されている。保持部43は、吸引部44の進退の方向が複数の糸Yの配列方向(左右方向)と平行になるようにホルダ40に固定される。吸引部44は、ホルダ40内を貫通しており、先端の吸引口44Aはホルダ40の開口部40Aから突出している。
【0046】
吸引装置41には、吸引源48(
図2参照)が接続される。吸引源48は、吸引する空気流を発生させるものである。吸引源48により、吸引口44Aには切断された複数の糸Yを吸引する吸引力が発生する。吸引源48と吸引装置41とは、電磁バルブ(不図示)を介して接続されている。
【0047】
シリンダ45は、ホルダ40に固定されている。シリンダ45は、シリンダロッド46を有している。シリンダロッド46の先端は、吸引部44に固定された連結部材47に接続されている。シリンダ45は、駆動装置49(
図2参照)によって駆動される。シリンダ45が駆動装置49によって進退することにより、吸引部44は、進出する第一位置P1(
図7(C)参照)と第一位置P1から後退する第二位置P2(
図7(A)参照)との間において移動する。
図3及び
図4に示されるように、吸引部44は、第一位置P1において、筐体20の側部20Cから突出する。
【0048】
図6に示されるように、カッター42は、引取装置3における糸巻取終了後や断糸時に複数の糸Yを切断する。カッター42は、吸引装置41の吸引部44と共に進退し、吸引部44が進出する際に糸規制機構9の上流側で複数の糸Yを切断する。具体的には、
図7(A)、
図7(B)及び
図7(C)に示されるように、カッター42は、第二位置P2から第一位置P1に進出する吸引部44の移動に伴って糸Yを切断する。このとき、吸引部44は、カッター42によって切断された糸Yを吸引する。
図7(D)及び
図7(E)に示されるように、カッター42は、複数の糸Yを吸引した状態の吸引部44と共に後退し、第一位置P1から第二位置P2に移動する。
【0049】
カッター42は、配列方向に沿って並んだ複数の糸Yを一又は複数本ずつ連続的に切断する。ここで、複数の糸Yを一又は複数本ずつ連続的に切断するとは、束状となっていない複数の糸Yを徐々に切断することである。すなわち、複数の糸Yを一又は複数本ずつ連続的に切断するとは、吸引部44が第二位置P2から第一位置P1に移動する間に、吸引部44の移動に伴って一又は複数本の糸Yにカッター42が何回も接触しながら複数の糸Yを切断することを意味する。したがって、複数の糸Yの束を一回の動作で切断する動作とは異なる。
【0050】
図3、
図4及び
図5に示されるように、切断部5は、作業者による複数の糸Yの切断作業に用いられる。切断部5は、引取装置3に糸掛けされる前の複数の糸Yの束を切断する。
図8に示されるように、切断部5は、第一刃(切断刃)50と、第二刃(切断刃)51と、案内部材52と、取付部材54と、を有している。
図7に示す切断部5の状態を、切断部5の正面とする。
【0051】
第一刃50は、その先端部である第一刃部50Aと、第一刃部50Aに連なる第一基部50Bと、から構成されている。第二刃51は、その先端部である第二刃部51Aと、第二刃部51Aに連なる第二基部51Bと、から構成されている。
【0052】
第一刃50と第二刃51とは、第一刃50が上側、第二刃51が下側になるように、第一基部50Bと第二基部51Bとが重なった状態で配置されている。第一刃50の刃先の第一稜線50Rと第二刃51の刃先の第二稜線51Rとは、それらの途中部において交差する。これにより、切断部5には、第一刃50と第二刃51とが交差する交差部Cが形成されている。第一刃50は、第一刃部50Aの刃角θ1が15度以上30度未満である。第二刃51は、第二刃部51Aの刃角θ2が15度以上30度未満である。本実施形態では、第一刃50の刃角θ1と第二刃51の刃角θ2は等しくなっている。第一刃50の第一刃部50Aと、第二刃51の第二刃部51Aとの間には、隙間が設けられている。すなわち、第一刃部50Aの下面の一部と第二刃部51Aの上面の一部とが、隙間をあけて対向している。
【0053】
案内部材52は、第一刃50の
図8における紙面奥側に重ねて配置されている。案内部材52は、複数の糸Yを、第一刃50及び第二刃51に形成された第一刃部50Aと第二刃部51Aとが交差する交差部Cに案内するためのものである。案内部材52は、複数の糸Yを第一刃50と第二刃51とが交差する交差部Cに案内するように、略V字形状に形成されている。
【0054】
図3、
図4及び
図5に示されるように、取付部材54は、筐体20に対して第一刃50及び第二刃51を取り付けている。取付部材54は、固定部54Aと、延在部54Bと、支持部54Cと、を有している。固定部54A、延在部54B及び支持部54Cは、一体成形されている。取付部材54は、例えば、略L字形状を呈している。取付部材54は、金属の板状部材を曲げ加工することによって形成されている。取付部材54の厚み(板厚)は、例えば、6mmである。取付部材54は、作業者による複数の糸Yの切断作業において、切断部5に加えられる負荷(荷重)に耐え得る強度を有している。
【0055】
固定部54Aは、筐体20の側部20C(後述)に固定される部分である。固定部54Aは、側部20Cに固定される。固定部54Aは、側部20Cに対して、ねじ、溶接等によって固定される。
【0056】
延在部54Bは、固定部54Aに接続されると共に左右方向に延在する部分である。延在部54Bは、固定部54Aの前端部に接続されている。支持部54Cは、延在部54Bに接続されると共に上下方向に延在している。支持部54Cは、延在部54Bの右端部に接続されている。支持部54Cは、第一刃50及び第二刃51の下部に接続されて第一刃50及び第二刃51を支持する。延在部54B及び支持部54Cは、左右方向から見て、第一刃部50Aと第二刃部51Aとの交差部Cよりも前側に位置している。すなわち、延在部54B及び支持部54Cは、左右方向から見て、交差部Cよりも後方側に位置する部分を有していない。
【0057】
切断部5は、引取装置3の筐体20に固定されている。切断部5は、断糸処理装置4が設置される筐体20に固定されている。すなわち、断糸処理装置4及び切断部5は、同じ部材に固定されている。本実施形態では、切断部5は、複数の紡糸引取機1のそれぞれの引取装置3の筐体20に設置されている。
【0058】
筐体20は、ガイドレール8の長手方向の一端部に設けられている。筐体20は、操作部(第一操作部)22が設けられている前部(他側部)20Aと、巻取部10側を向いて配置される後部20Bと、前部20Aと後部20Bとを接続している一対の側部20C,20Dと、を有している。一対の側部20C,20Dは、左右方向において対向している。側部20Cの側面20Sは、左右方向(配列方向)に直交している。側部20Dには、屑糸を排出する屑糸配管21が設けられている。
【0059】
前部20Aは、作業領域Aを向いて配置されている。作業領域Aは、作業者が切断作業の際に位置する領域である。作業領域Aは、
図9に示されるように、複数の糸Yの配列方向(左右方向)に水平面において直交する前後方向(直交方向)において、断糸処理装置4の吸引部44に対する前方側(一方側)に設けられている。作業領域Aは、筐体20の前方に設けられた通路T上の領域(空間)である。本実施形態では、
図2に示されるように紡糸引取機1が左右方向(配置方向)に並んで設置されており、作業者が通行する通路Tも左右方向に延在している。通路Tの延在方向は、筐体20の側部20Cの側面20Sに直交(交差)している。作業領域Aは、左右方向に沿って延在する通路T上に設けられる。本実施形態では、筐体20の前部20Aは、通路T側を向いている。そのため、作業領域Aにおいて、筐体20の前部20Aに設けられた操作部22を操作可能である。なお、
図9では、説明の便宜状、作業領域Aを破線で矩形状に示しているが、作業領域Aの形状が矩形状であることを示すものではない。
【0060】
図3、
図4及び
図5に示されるように、切断部5は、筐体20の側部(一側部)20Cに固定されている。切断部5は、取付部材54によって、切断部5における複数の糸Yの切断部分、すなわち第一刃50と第二刃51との交差部Cが、側部20Cから離間して位置している。
【0061】
切断部5は、第一位置P1(
図7(C)参照)に位置する吸引部44の吸引口44Aの近傍に配置されている。近傍とは、例えば、吸引口44Aからの距離が100mm以下のことをいう。具体的には、吸引口44Aと切断部5の案内部材52の上端部との間の、前後方向での距離である。本実施形態では、吸引口44Aと切断部5の案内部材52の上端部との間の前後方向での距離は、例えば、約80mmである。
【0062】
切断部5は、作業領域A側に正面が向くように配置されている。切断部5は、作業者が作業領域Aに位置したときに、第一刃50と第二刃51との交差部Cを作業者が視認できるように配置されている。具体的には、切断部5は、第一刃50と第二刃51とが重なる重なり方向と左右方向とが直交し且つ前後方向において前から後に向かって見たときに交差部Cが見えるように配置されている。切断部5は、交差部Cに対して上方から進入する複数の糸Yを切断する。切断部5に対して複数の糸Yが進入する方向は上下方向である。
【0063】
切断部5の第一刃50及び第二刃51の交差部Cは、吸引部44よりも上下方向において上方に位置している。
図4に示されるように、切断部5は、断糸処理装置4において第一位置P1に位置する吸引部44の先端(吸引口44A)よりも、左右方向において側部20Cから離れた位置に配置されている。
【0064】
図5に示されるように、左右方向から見て、切断部5の第一刃50、第二刃51及び案内部材52は、傾くように配置されている。具体的には、左右方向から見て、第一刃50、第二刃51及び案内部材52の上部が後側に位置し、第一刃50、第二刃51及び案内部材52の下部が前側に位置するように傾いている。すなわち、第一刃50、第二刃51及び案内部材52の上部が作業領域Aから離れる方向に傾いている。左右方向から見て、第一刃50、第二刃51及び案内部材52の下部の位置と吸引部44の位置との間の前後方向での距離は、第一刃50、第二刃51及び案内部材52の上部の位置と吸引部44の位置との間の前後方向での距離よりも短いとも言える。
【0065】
第一刃50、第二刃51及び案内部材52は、例えば、上下方向に対して、0°よりも大きく90°よりも小さい範囲において傾いている。第一刃50、第二刃51及び案内部材52が上下方向に沿う場合が0°、第一刃50、第二刃51及び案内部材52が前後方向に沿う場合が90°である。本実施形態では、傾斜角度θは、例えば、35°である。
【0066】
続いて、紡糸引取機1の電気的構成について説明する。紡糸引取機1は、制御装置23を備えている。制御装置23は、集積回路を実装したプロセッサあるいはそれを装備したコンピュータシステムである。制御装置23は、紡糸引取機1における各種動作を制御する部分であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等、及び入出力インターフェース等から構成される。
【0067】
制御装置23は、第一ゴデットローラ6を駆動する第一ゴデットモータ、第二ゴデットローラ7を駆動する第二ゴデットモータモータ、及び、シリンダを制御する。これにより、第一ゴデットローラ6及び第二ゴデットローラ7が駆動される。制御装置23は、吸引装置41に設けられた電磁バルブ(不図示)を制御する。これにより、電磁バルブは、開閉駆動される。制御装置23は、駆動装置49を制御する。これにより、上述した吸引装置41のシリンダ45が駆動され、シリンダ45に取り付けられたシリンダロッド46が進退することによって、それに接続された吸引部44が左右方向に進退する。制御装置23は、巻取部10の制御部24に信号を送る。制御部24は、巻取部10に設けられたトラバースガイド12、ターレット13、及びボビンホルダ14等を制御する。
【0068】
続いて、紡糸引取機1において、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを引取装置3に糸掛けする方法について説明する。ここでは、溶融紡糸設備100において、複数の紡糸引取機1において一斉に糸掛けを行う場合について説明する。
【0069】
最初に、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを、断糸処理装置4において一時的に保持させる方法について説明する。作業者は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを紡糸装置2の下方(作業領域A)において取得する。続いて、作業者は、複数の糸Yを両手で把持して複数の糸Yを束ねて、前後方向において一方の手と他方の手との間に切断部5が位置するようにし、一方の手と他方の手との間の部分において束状となっている複数の糸Yを切断部5に挿入する。そして、作業者は、複数の糸Yの束を切断部5において押し下げ、複数の糸Yの束をまとめて一気に切断する。具体的には、前方側に位置する手の高さ位置を固定した状態で、後方側に位置する手を下方に移動させることによって複数の糸Yの束を押し下げる。作業者は、切断後、複数の糸Yを断糸処理装置4の吸引部44の吸引口44Aまで持っていき、吸引口44Aから吸引させる。これにより、端部が切断された複数の糸Yが断糸処理装置4において保持される。作業者は、他の紡糸引取機1においても、同様の方法によって断糸処理装置4に複数の糸Yを一時的に保持させる。
【0070】
なお、切断部5における複数の糸Yの切断方法は上記方法に限定されず、他の方法によって切断されてもよい。作業者は、複数の糸Yに対してテンションをかけて切断すればよい。
【0071】
続いて、断糸処理装置4において保持されている複数の糸Yを、引取装置3に糸掛けする方法について説明する。作業者は、断糸処理装置4において保持されている複数の糸Yをハサミで切断し、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yをサクションガン110に吸引させる。作業者は、サクションガン110で吸引した複数の糸Yを、糸規制機構9にセットし、第一ゴデットローラ6及び第二ゴデットローラ7の順に巻き掛ける。このとき、第二ゴデットローラ7は、糸掛け位置に位置している。その後、所定の手順によって、複数の糸Yを巻取部10にセットする。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る溶融紡糸設備100は、作業者による複数の糸Yの切断作業に用いられる切断部5を備えている。すなわち、溶融紡糸設備100は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを引取装置に糸掛けする際に、引取装置3に糸掛けされる前の複数の糸Yの束を切断するための専用の切断部5を備えている。これにより、作業者は、切断器具やカッターを使用することなく、複数の糸Yの束を切断部5によってまとめて一気に切断することができる。したがって、複数の紡糸引取機1が設置される場合において、紡糸装置2から紡出された複数の糸を引取装置3に糸掛けするときの作業性及び安全性の向上を図ることができると共に、断糸処理装置のカッターに不具合が発生することを防止できる。
【0073】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、断糸処理装置4の吸引部44が、切断部5において切断された複数の糸Yを保持する。そのため、紡糸装置2から紡出された糸Yをサクションガン110によって受け取ることができない場合であっても、吸引部44に糸Yを預けておくことができる。
【0074】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、複数の紡糸引取機1のそれぞれにおいて、引取装置3に設置されている。この構成では、各紡糸引取機1の引取装置3に設置される切断部5において複数の糸Yを切断することができるため、作業性の向上をより一層図ることができる。
【0075】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを吸引可能であるサクションガン110を複数備える。複数のサクションガン110の設置数は、複数の紡糸引取機1の設置数よりも少ない。この構成では、複数の紡糸引取機1において糸掛けが同じタイミングで発生するような状況においては、一の紡糸引取機1において糸掛け作業を行っている場合、他の紡糸引取機1において紡糸装置2から紡出された糸Yをサクションガン110によって受け取ることができない場合が生じる。そのため、複数のサクションガン110の設置数が複数の紡糸引取機1の設置数よりも少ない構成では、切断部5において切断された複数の糸Yを各紡糸引取機1が有する断糸処理装置4の吸引部44において保持させることによって、サクションガン110を使用するための待機時間が発生しないため、作業性の向上を図ることができる。
【0076】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、断糸処理装置4の吸引部44の吸引口44Aの近傍に配置されている。本実施形態では、断糸処理装置4の吸引部44は、左右方向において、進出する第一位置P1と第一位置P1から後退する第二位置P2との間において移動可能に設けられてる。切断部5は、第一位置P1に位置する吸引部44の吸引口44Aの近傍に配置されている。この構成では、切断部5において切断した複数の糸Yを、吸引部44の吸引口44Aに対して容易に導くことができる。
【0077】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、断糸処理装置4及び切断部5は、引取装置3において筐体20の側部20Cに固定されている。この構成では、切断部5において切断した複数の糸Yを、吸引部44の吸引口44Aに対して容易に導くことができる。
【0078】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、前後方向において、断糸処理装置4の吸引部44に対する前方側に、作業者が切断作業の際に位置する作業領域Aが設けられており、吸引部44に対する後方側に、切断部5が設けられていている。この構成では、作業領域Aと切断部5とが前後方向において向かい合うため、サクションガン110による糸掛け時に切断部が邪魔にならない。
【0079】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、前後方向において前から後に向かって見て、断糸処理装置4の吸引部44の吸引口44Aよりも左右方向において側面20Sから離れた位置に配置されていている。この構成では、作業者が作業領域Aに位置して作業を行う場合において、切断部5において切断した複数の糸Yを吸引部44の吸引口44Aに導く際に、吸引部44が邪魔にならない。そのため、切断部5において切断した複数の糸を、吸引部44の吸引口44Aに対して容易に導くことができる。
【0080】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、第一刃部50Aと有する第一刃50と、第一刃50と重ねて配置されると共に第二刃部51Aを有する第二刃51と、を備えている。第一刃50と第二刃51とが重なる重なり方向から見て、第一刃部50Aの刃先の第一稜線50Rと第二刃部51Aの刃先の第二稜線51Rとが交差し、第一刃部50Aと第二刃部51Aとが交差する交差部Cが形成されている。溶融紡糸設備100では、前後方向において、吸引部44に対する前方側に、作業者が切断作業の際に位置する作業領域Aが設けられいる。溶融紡糸設備100では、左右方向と切断部5の上記重なり方向とが直交し且つ前後方向の前から後に向かって見たときに交差部Cが見えるように、切断部5が筐体20の側部20Cに固定されている。
【0081】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、第一刃50及び第二刃51が交差する交差部Cは、吸引部44よりも上下方向において上方に位置している。この構成では、切断部5の第一刃50及び第二刃51において切断した複数の糸Yを、吸引部44の吸引口44Aに対して容易に導くことができる。
【0082】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、交差部Cに対して上方から進入する複数の糸Yを切断する。この構成では、作業者は、切断部5に対して、複数の糸Yを上から下に移動させる動作によって複数の糸Yを切断することができる。そのため、複数の糸Yを容易に切断することができる。
【0083】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、左右方向から見て、第一刃50及び第二刃51の上部が前後方向における後方側に位置し、第一刃50及び第二刃51の下部が前後方向における前側に位置するように、第一刃50及び第二刃51が傾いている。作業者は、切断作業の際、複数の糸Yを両手で把持して複数の糸Yを束ねて、一方の手と他方の手との間の部分において束状となっている複数の糸Yを切断部5に挿入し、複数の糸Yを上から下に移動させる。このとき、前方側に位置する手の高さ位置を固定した状態で、後方側に位置する手を下方に移動させることによって複数の糸Yの束を押し下げる。このような動作を行う場合において、第一刃50及び第二刃51が上記のように傾いていると、複数の糸Yに対してせん断力を加え易くなるため、複数の糸Yを容易に切断することができる。
【0084】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、切断部5は、第一刃50及び第二刃51を筐体20の側部20Cに対して取り付ける取付部材54を有している。取付部材54は、側部20Cに固定される固定部54Aと、固定部54Aに接続されると共に左右方向に延在する延在部54Bと、延在部54Bに接続されると共に上下方向に延在しており、保持部材53の下部に接続されて保持部材53を支持する支持部54Cと、を有している。この構成では、延在部54Bが左右方向に延び、この延在部54Bに接続される支持部54Cが上下方向に延びている。このように、左右方向から見て、延在部54B及び支持部54Cが前後方向に突出するような部分を有さない構成にすることによって、切断作業の際に取付部材54が邪魔になったり、複数の糸Yが取付部材54に引っ掛かったりすることを抑制できる。また、固定部54Aを側部20Cに固定する構成では、切断部5を吸引部44の吸引口44Aの近傍に配置する場合において、延在部54Bを長くしなくてもよい。これにより、切断作業時に切断部5に加わる負荷に耐え得る強度を、取付部材54において確保することができる。
【0085】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、筐体20には、作業者が操作する操作部22が設けられている。操作部22は、筐体20において切断部5が固定されている側部20Cとは異なる前部20Aに設けられている。作業者が切断作業の際に位置する作業領域Aは、操作部22を操作可能な位置に設けられていている。この構成では、作業領域Aにおいて、糸Yの切断作業及び操作部22の操作を行うことができる。したがって、溶融紡糸設備100が設置される工場等の限られたスペースにおいて、作業領域Aを有効に活用することができる。
【0086】
本実施形態に係る溶融紡糸設備100では、複数の紡糸引取機1は、左右方向に沿って配置されている。溶融紡糸設備100では、左右方向に沿って延在するように、作業者が通行する通路Tが設けられている。作業者が切断作業の際に位置する作業領域Aは、通路T上に設けられている。この構成では、通路Tが左右方向に沿って延在するように一直線状に設けられているため、作業者が移動を容易に行うことができる。また、通路T上に切断部が配置されないため、通路Tを通行する作業者が切断部と接触したりすることを回避できる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0088】
上記実施形態では、切断部5が筐体20の側部20Cにおいて、吸引部44に対して後方側に配置されている形態を一例に説明した。しかし、切断部5は、吸引部44に対して前方側(作業領域A側)に配置されていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、切断部5が第一刃50、第二刃51、案内部材52及び取付部材54を有して構成されている形態を一例に説明した。しかし、切断部は、複数の糸Yの束をまとめて切断できるものであれば如何なる構成であってもよい。
【0090】
上記実施形態では、切断部5が筐体20の側部20C、すなわち引取装置3に設置されている形態を一例に説明した。しかし、切断部5は、断糸処理装置4に設置されていてもよい。また、切断部5は、引取装置3及び断糸処理装置4に設置されていてもよい。切断部5は、引取装置3及び断糸処理装置4のそれぞれに、複数設置されていてもよい。
【0091】
上記実施形態では、取付部材54の固定部54Aが筐体20の側部20Cに固定される形態を一例に説明した。しかし、固定部54Aは、例えば、筐体20の上部等に固定されてもよい。
【0092】
上記実施形態では、切断部5が筐体20の側部20Cに取付部材54によって固定されている形態を一例に説明した。しかし、切断部5は、例えば、使用しないときには筐体20内に収容されており、使用時に筐体20から進出する構成であってもよい。
【0093】
上記実施形態では、切断部5が、作業領域A側に正面が向くように配置されている形態を一例に説明した。しかし、切断部5の向きはこれに限定されない。
【0094】
上記実施形態では、断糸処理装置4がカッター42を一つ有する形態を一例に説明した。しかし、断糸処理装置4は、二以上のカッターを有していてもよい。
【0095】
上記実施形態では、断糸処理装置4において、カッター42が吸引部44と共に移動して糸Yを切断する形態を一例に説明した。しかし、断糸処理装置では、カッターが固定されていてもよい。この構成では、例えば、複数の糸をカッターに対して案内する案内機構等を備え、案内機構によってカッターに対して案内された複数の糸をカッターが切断する。案内機構は、複数の糸を配列方向に沿って移動させて、複数の糸をカッターに案内する。案内機構は、例えば、フックによって複数の糸を引っ掛けてカッターに案内してもよいし、複数の糸Yの間隔を規定する規定部を配列方向において移動させて複数の糸をカッターに案内してもよい。また、断糸処理装置は、複数の糸をカッターに対して案内する案内機構等を備え、案内機構によってカッターに対して複数の糸を案内すると共に、カッターが案内機構とは相対的に移動して、カッターによって複数の糸を切断してもよい。
【0096】
上記実施形態では、複数の紡糸引取機1のそれぞれに切断部5が設けられている形態を一例に説明した。しかし、切断部5は、複数の紡糸引取機1に対して一つ設けられていてもよい。例えば、
図10に示されるように、隣接して配置される紡糸引取機1において、一方(図示左側)の紡糸引取機1にのみ切断部5が設けられていており、他方(図示右側)の紡糸引取機1には切断部5が設けられていなくてもよい。
図10に示す例では、隣接して配置される紡糸引取機1において、断糸処理装置4等が互いに向き合うように筐体20に配置されている。
【0097】
他方の紡糸引取機1において、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを、断糸処理装置4に一時的に保持させる場合には、複数の糸Yを一方の紡糸引取機1に設けられた切断部5によって切断する。作業者は、切断後、複数の糸Yを他方の紡糸引取機1の断糸処理装置4の吸引部44の吸引口44Aまで持っていき、吸引口44Aから吸引させる。
【0098】
上記実施形態では、
図2に示されるように紡糸引取機1が左右方向に並んで設置されており、紡糸引取機1の配置方向に沿って延在する通路T上に作業領域Aが設けられる形態を一例に説明した。しかし、作業領域Aは、紡糸引取機1の配置に応じて適宜設定されればよい。例えば、
図11(A)に示されるように、複数の紡糸引取機1が前後方向において位置がずれて配置される構成では、各紡糸引取機1の引取装置3の筐体20の前方に作業領域Aが設けられればよい。例えば、
図11(B)に示されるように、複数の紡糸引取機1が円軌道上に配置される構成では、各紡糸引取機1の引取装置3の筐体20の前方(円の中心側)に作業領域Aが設けられればよい。例えば、
図11(C)に示されるように、複数の紡糸引取機1が対向して配置される構成では、対向して配置される紡糸引取機1の間に作業領域Aが設けられればよい。
【0099】
上記実施形態に加えて、巻取部10は、作業者によって操作される操作部(第二操作部)を備えていてもよい。この構成において、筐体20に設けられる操作部22と巻取部10に設けられる操作部とは、同じ方向(前後方向の前側)を向くように設けられていてもよい。この構成では、作業者が筐体20に設けられる操作部22及び巻取部10に設けられる操作部の両方を確認(目視)しながら、操作部を操作することが可能となる。
【符号の説明】
【0100】
1…紡糸引取機、2…紡糸装置、3…引取装置、4…断糸処理装置、5…切断部、10…巻取部、20…筐体(部材)、20A…前部(他側部)、20C…側部(一側部)、20S…側面、22…操作部(第一操作部)、42…カッター、44…吸引部、44A…吸引口、50…第一刃、50A…第一刃部、51…第二刃、51A…第二刃部、54…取付部材、54A…固定部、54B…延在部、54C…支持部、100…溶融紡糸設備、110…サクションガン、A…作業領域、C…交差部、T…通路、Y…糸。