(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163800
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】容器詰葉酸含有飲料、容器詰葉酸含有飲料の製造方法、及び容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074946
(22)【出願日】2022-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月5日、14日、ウェブサイトにて公開 令和4年4月12日、ウェブサイトにて公開 令和4年4月22日、ウェブサイトにて公開 令和4年4月23日以降、配布により公開 令和4年4月25日、ウェブサイトにて公開 令和4年4月25日、ウェブサイトにて公開 令和4年4月25日以降、販売により公開
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 武
(72)【発明者】
【氏名】太田 崚友
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LC13
4B117LE10
4B117LG02
4B117LK08
4B117LK13
4B117LK16
4B117LL02
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】容器への葉酸の沈着が防止された容器詰葉酸含有飲料を提供する。
【解決手段】一実施形態は、容器中に0.10~1.5mg/100gの葉酸と、不溶性食物繊維とを含有し、容器中の葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200である、容器詰葉酸含有飲料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器中に0.10~1.5mg/100gの葉酸と、不溶性食物繊維とを含有し、容器中の葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200である、容器詰葉酸含有飲料。
【請求項2】
上記不溶性食物繊維を1~60mg/100g含有する、請求項1に記載の容器詰葉酸含有飲料。
【請求項3】
上記不溶性食物繊維の最頻粒子径が、2~140μmである、請求項1又は2に記載の容器詰葉酸含有飲料。
【請求項4】
波長660nmにおける吸光度が、0.10~1.00以下である、請求項1又は2に記載の容器詰葉酸含有飲料。
【請求項5】
葉酸と不溶性食物繊維とを、葉酸の含有量が0.10~1.5mg/100gとなり、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように混合し、葉酸含有飲料を得ること、及び
上記葉酸含有飲料を容器に詰めること、
を含む、容器詰葉酸含有飲料の製造方法。
【請求項6】
上記葉酸と上記不溶性食物繊維と水とを混合し、均質化して上記葉酸含有飲料を得ることを含む、請求項5に記載の容器詰葉酸含有飲料の製造方法。
【請求項7】
葉酸の含有量が0.10~1.5mg/100gである容器詰葉酸含有飲料において、不溶性食物繊維を、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように含有させる、容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、容器詰葉酸含有飲料、容器詰葉酸含有飲料の製造方法、及び容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料に関する嗜好の多様化や健康志向の高まりから、単に嗜好を満たすのみならず、健康の維持に対し一定の効果が期待される機能を持った、種々の容器詰飲料が上市されている。その中でも、ビタミン類の一種である葉酸を含有した容器詰葉酸含有飲料が年代や性別を問わず広く飲用者に受け入れられている。葉酸は、核酸、アミノ酸等の代謝に必要となる補酵素であり、貧血を防止する働きを持つ物質である。
【0003】
葉酸は、水溶性ビタミン類として認知されているものではあるが、水への溶解度は100~300μg/100gと非常に低いのが実態である。そのため、飲料に添加しても、期待通りに摂取できないという問題がある。その問題に対して特許文献1では水溶性大豆食物繊維を、特許文献2ではα-グルコシルナリンジンを含有させることで葉酸の溶解性を上げることが記載されている。
【0004】
しかしながら、水溶性大豆食物繊維では効果が不十分であり、α-グルコシルナリンジンは効果の発現のために必要とされる添加量が多く、素材特有の苦味を発するために、香味面で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-213687号公報
【特許文献2】特開2017-48127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは鋭意検討の結果、葉酸の摂取阻害要因が単なる溶解不良にとどまらず、葉酸が容器に沈着して容易に再溶解または再分散ができなくなることに起因すると特定した。
本発明の実施形態は、容器への葉酸の沈着が防止された容器詰葉酸含有飲料及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明の実施形態は、容器への葉酸の沈着を防止することができる容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には様々な実施形態が含まれる。実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0008】
(1) 容器中に0.10~1.5mg/100gの葉酸と、不溶性食物繊維とを含有し、容器中の葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200である、容器詰葉酸含有飲料。
(2) 上記不溶性食物繊維を1~60mg/100g含有する、上記(1)に記載の容器詰葉酸含有飲料。
(3) 上記不溶性食物繊維の最頻粒子径が、2~140μmである、上記(1)又は(2)に記載の容器詰葉酸含有飲料。
(4) 波長660nmにおける吸光度が、0.10~1.00である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰葉酸含有飲料。
(5) 葉酸と不溶性食物繊維とを、葉酸の含有量が0.10~1.5mg/100gとなり、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように混合し、葉酸含有飲料を得ること、及び
上記葉酸含有飲料を容器に詰めること、
を含む、容器詰葉酸含有飲料の製造方法。
(6) 上記葉酸と上記不溶性食物繊維と水とを混合し、均質化して上記葉酸含有飲料を得ることを含む、上記(5)に記載の容器詰葉酸含有飲料の製造方法。
(7) 葉酸の含有量が0.10~1.5mg/100gである容器詰葉酸含有飲料において、不溶性食物繊維を、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように含有させる、容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、容器への葉酸の沈着が防止された容器詰葉酸含有飲料及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、容器への葉酸の沈着を防止することができる容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。本明細書において、数値範囲の記載「X~Y」とは「X以上、Y以下」を意味する。
【0011】
<容器詰葉酸含有飲料>
本発明の実施形態である容器詰葉酸含有飲料は、容器中に0.10~1.5mg/100gの葉酸と、不溶性食物繊維を含有する。容器中の葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率(質量比率)は1~200である。
【0012】
一般的に、ビタミン含有飲料等の容器詰葉酸含有飲料へは、適切な摂取量の葉酸が配合される。しかし、容器内の飲料を分析して水に溶解又は分散している葉酸の量を求めると、配合した葉酸の量よりも小さい値となる場合があった。本発明の発明者らは、その原因の一つが、葉酸が、水溶性であるにも関わらず飲料中で不安定な溶解性を示し、水に溶解又は分散せずに容器に沈着することにあることを見出した。この現象は、特に低温(例えば5℃)で顕著であり、また、プラスチック製の容器よりも金属製の容器で顕著であった。葉酸が沈着すると、葉酸を適切な摂取量で飲用することが困難となる。そこで、本発明の実施形態である容器詰葉酸含有飲料は、容器への葉酸の沈着を防止することによって、配合された量の葉酸を摂取することができる飲料として提供されるものである。
【0013】
本発明の実施形態である容器詰葉酸含有飲料は、容器と容器に詰められた葉酸含有飲料とを含み、容器中に葉酸と不溶性食物繊維とを特定の含有量及び特定の比率で含有する。本明細書においては、「容器詰葉酸含有飲料」の用語が容器に詰められた葉酸含有飲料を意味する場合がある。容器詰葉酸含有飲料においては、不溶性食物繊維が葉酸を抱き込んで絡ませて葉酸の分散状態を保持するものと推測される。すなわち、不溶性食物繊維の存在により葉酸の液中における分散状態が維持され、葉酸の容器への沈着が防止されると考えられる。ただし、本発明はこの推測によって限定されるものではない。
【0014】
本発明における「葉酸の容器への沈着」とは、葉酸が容器の内面に強固に結着した状態を指す。この状態では、容器詰葉酸含有飲料を飲用する前に一般的に行われる程度の容器の震盪や飲料の撹拌などの簡易な物理的刺激では、葉酸の再溶解又は再分散が生じない。この状態の葉酸を再溶解又は再分散させるには、超音波などの強い物理的刺激や、強アルカリなどの通常飲料として使用されない化学的手法を用いる必要がある。本発明の実施形態では、葉酸がこのような沈着状態になることを抑制し、一般的な震盪や撹拌程度で葉酸が再溶解又は再分散できる状態を保持する。
【0015】
容器詰葉酸含有飲料は、例えば、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜果汁飲料、及び炭酸飲料からなる群から選択される飲料である。容器詰葉酸含有飲料は、葉酸以外のビタミン類をさらに含有するビタミン含有飲料であることが好ましい。容器詰葉酸含有飲料は、非アルコール性飲料であることが好ましい。容器詰葉酸含有飲料は、飲料の種類に応じてビタミン類、甘味付与剤、アミノ酸、香料等の任意の成分を含有することができる。
【0016】
[葉酸]
容器中の葉酸の含有量は、0.10~1.5mg/100gである。葉酸の摂取推奨量の観点から、好ましくは0.15mg/100g以上、0.3mg/100g以上、又は0.4mg/100g以上である。耐容上限の観点から、好ましくは1.0mg/100g以下、0.8mg/100g以下、又は0.6mg/100g以下である。
【0017】
本発明における葉酸の含有量とは、容器中の総葉酸量を、葉酸含有飲料100gあたりに含まれる量に換算して表した値である。容器中の総葉酸量は、葉酸含有飲料中に溶解又は分散して存在する葉酸の量と、容器に沈着して存在する葉酸の量との和である。容器に沈着して存在する葉酸の量は、容器から葉酸含有飲料を注ぎ出した後に容器内に残存する葉酸を回収して測定できる。容器内に残存する葉酸は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリの水溶液に溶解させることで回収できる。測定方法として、例えば、実施例に記載の微生物学的定量法が挙げられる。
【0018】
[不溶性食物繊維]
不溶性食物繊維は、不溶性食物繊維、その粉砕断片又はこれらの両方を含んでよい。また、水溶性食物繊維と複合状態を形成していても構わない。不溶性食物繊維を含有する食物繊維としては、シトラスファイバー、レモンファイバー等の果実由来の繊維;ポテトファイバー、大豆ファイバー等の野菜又は豆由来の繊維;小麦ファイバー、大麦ファイバー、米ファイバー、サトウキビファイバー等の穀物由来の繊維;パルプファイバー等の植物由来の繊維などを具体的に例示でき、これらの食物繊維の1種又は2種以上を併用できる。不溶性食物繊維としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン等が挙げられ、不溶性食物繊維は、これらからなる群から選択される2種以上を含んでよい。
【0019】
不溶性食物繊維は、容器詰葉酸含有飲料の混濁度、粘度、食感等を所定の範囲に調整する観点から、不溶性食物繊維を破砕若しくは摩砕する又は篩い分けする等してサイズ(繊維長)が原料段階で調整されているか、あるいは、飲料製造工程前又は工程中で調整されていることが好ましい。不溶性食物繊維の破砕若しくは摩砕又は篩い分けは、当業界で公知の手法にしたがって行えばよく、特に限定されない。例えば、果実を原料とする不溶性食物繊維の場合、原料パルプをチョッパーで細断した後にパルパー等で搾汁して得られる、細片化された果実パルプ質と果汁との混合物(粗搾汁液)をそのまま不溶性食物繊維として用いることができる。また、例えば、この果実パルプ質と果汁との混合物からフィニッシャー等で篩別することにより分離された果実パルプ質、又はこれをさらに破砕若しくは摩砕して得られる果実パルプ質を不溶性食物繊維として用いることができる。なお、上述した不溶性食物繊維の調製は、当業界で公知の手法にしたがって行うことができるが、市販品を入手することによって省略することができる。
【0020】
植物素材を原料とした不溶性食物繊維の市販品として、ファイバースター社製のCtri‐Fi;住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のヘルバセルAQプラスなどが挙げられる。
【0021】
葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率(質量比率)は、1~200である。葉酸が沈着することを防止する観点から、好ましくは1.5以上、5以上、又は10以上である。葉酸の沈着防止の十分な効果が得られる範囲内での含有量に抑えるという観点から、好ましくは180以下、100以下、又は50以下である。
【0022】
不溶性食物繊維の含有量は、好ましくは1~60mg/100gである。葉酸が沈着することを防止する観点から、より好ましくは1.5mg/100g以上、3mg/100g以上、又は5mg/100g以上である。一方、後述する通り、容器詰葉酸含有飲料は香料などによる香味の調整が行われる場合が多いため、飲用したときの飲料の香味を適正に保つ観点から、より好ましくは50mg/100g以下、40mg/100g以下、又は35mg/100g以下である。測定方法として、実施例に記載の酵素-重量法が挙げられる。
【0023】
不溶性食物繊維は、最頻粒子径が、好ましくは2~140μm、より好ましくは3~135μm、さらに好ましくは4.5~130μmである。不溶性食物繊維の粒度分布は、公知の粒度分布測定方法、例えばレーザー回折/散乱法により測定される体積基準の粒度分布である。最頻粒子径とは、粒度分布において出現比率が最も大きい粒子径を指し、モード径とも称される。不溶性食物繊維が微細化されることにより、葉酸の容器への沈着が抑制される傾向が認められ、不溶性食物繊維と葉酸との会合が促進されて沈着防止の効果が現れると推測される。不溶性食物繊維の粒子径の調整は、ホモゲナイザーによる均質化などの公知の方法を採用できる。
【0024】
容器詰葉酸含有飲料の波長660nmにおける吸光度は、好ましくは0.10~1.00、より好ましくは0.20~0.90、さらに好ましくは0.30~0.85である。不溶性食物繊維が微細化されることにより、葉酸の容器への沈着が抑制される傾向が認められ、不溶性食物繊維と葉酸との会合が促進されて沈着防止の効果が表れると推測される。不溶性食物繊維が微細化された状態は、容器詰葉酸含有飲料の混濁度として認識することができ、波長660nmにおける吸光度にて規定することができる。不溶性食物繊維の微細化は、ホモゲナイザーによる均質化などの公知の方法を採用でき、実施条件は容器詰葉酸含有飲料が所定の吸光度となるよう適宜調整してよい。
【0025】
容器詰葉酸含有飲料のpHは、2.5~5.0であることが好ましい。pHは飲料の香味を調整する上で任意に選択できるものであるが、2.5未満は酸味が強くなりすぎる傾向がある。また、葉酸の溶解性はpHの上昇に伴って向上するために、2.5以上であることが好ましい。容器詰葉酸含有飲料の適用対象を鑑みると、5.0以下であることが好ましい。pHは2.6~4.5がより好ましく、2.8~4.0が特に好ましい。pHの調整方法は特に指定されないが、レモンなどの酸性の果汁、クエン酸や乳酸などの酸味料、炭酸水素ナトリウムや炭酸カリウムなどのpH調整剤を適宜使用してよい。
【0026】
[ビタミン類]
容器詰葉酸含有飲料は、葉酸以外のビタミン類を含有できる。ビタミン類の例には、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6,ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン等が含まれる。ビタミン類としては、食品添加物として使用できる塩類、誘導体、類縁体等を適宜選択することができる。含有されるビタミンの組み合わせは、特に制限されるものではない。また、各ビタミンの含有量は、特に制限されるものではないが、厚生労働省が発行する食事摂取基準、すなわち平均必要量、摂取推奨量、摂取目安量、耐容上限量等を鑑みて、適宜調整することが好ましい。
【0027】
[他の含有成分]
容器詰葉酸含有飲料は、香味を調整するために、甘味付与剤、酸味料、調味料、香料などを含有できる。葉酸含有飲料は、葉酸と不溶性食物繊維とが他のビタミン類と併せて配合されて、所謂「マルチビタミン飲料」として処方される機会が多いため、多数のビタミン類の特有の香味を生じやすいために、香味を調整することが好ましい。
甘味付与剤としては、ショ糖、果糖などの糖類、アセスルファムカリウムやステビア抽出物などの甘味料を例示できる。
酸味料としては、クエン酸、乳酸、酢酸、リン酸などを例示できる。
調味料としては、アミノ酸類や核酸類を例示できる。また、アミノ酸類は調味を目的とする以外に栄養補助を目的として添加することもできる。
香料は、飲料に香気を付与又は増強するため添加される添加物であってよく、食品表示基準において香料として一括名表示されるものであってよい。
【0028】
容器詰葉酸含有飲料は、通常飲料に配合される各種食品素材、例えば、植物汁、植物抽出液、植物抽出物、ミネラル分、色素成分、栄養成分、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0029】
[水]
容器詰葉酸含有飲料は、通常、水を含有する。水は、一般的な清涼飲料水に含まれる水であればよく、井水、市水、天然水、イオン交換処理若しくは膜処理を施した精製水、又は純水等の水を用いることができる。水は、炭酸ガスが封入されていても、又は、封入されていなくてもよい。炭酸ガスが封入された水を用いる場合、炭酸飲料(葉酸含有炭酸飲料)が得られる。又は、炭酸ガスが封入されていない水を用いる場合、非炭酸飲料(葉酸含有非炭酸飲料)が得られる。
【0030】
容器詰葉酸含有飲料は、炭酸ガスを溶解し、封入して炭酸飲料としてもよい。炭酸飲料を調製する方法は問わないが、水に配合原料を必要な濃度に溶解して得た原料含有液に、炭酸ガスを溶解させて調製できる。また、水に配合原料を飲料の2~5倍の濃度で溶解したシロップ液を調製し、水に炭酸ガスを溶解した炭酸水と混合することで所定の濃度に希釈してもよい。
【0031】
[容器]
容器詰葉酸含有飲料は、容器と、該容器内に含まれた葉酸含有飲料とを含む。容器は、金属製(スチール製、アルミニウム製等)、紙製、プラスチック製(ポリエチレンテレフタレート(所謂PET)製、ポリエチレン製等)、ガラス製、陶器製、又はこれらの複合材料からなる容器を用いることができる。また、容器は、通常の手段により密封包装して流通等を行うことが好ましい。容器詰葉酸含有飲料は、通常は希釈せずにそのまま飲用できるもの(所謂RTD)であるが、これに限定されるものではない。本発明は、葉酸の特性を鑑みると、金属製容器で特に有用である。
【0032】
<容器詰葉酸含有飲料の製造方法>
本発明の実施形態である容器詰葉酸含有飲料の製造方法は、葉酸と不溶性食物繊維とを、葉酸の含有量が0.1~1.5mg/100g、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように混合し、葉酸含有飲料を得ること;及び、前記葉酸含有飲料を容器に詰めること、を含む。容器詰葉酸含有飲料の製造方法は、好ましくは、葉酸と不溶性食物繊維と水とを混合し、均質化して葉酸含有飲料を得ることを含む。
【0033】
葉酸と不溶性食物繊維とを所定量含有させる以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、葉酸と不溶性食物繊維と水と、さらに必要に応じて他の成分とを添加して撹拌し、必要に応じてpHの調整を行い、葉酸含有飲料又はシロップ液を調製する。
【0034】
葉酸含有飲料又はシロップ液を調製した後に、好ましくは均質化する。その後、葉酸含有飲料を容器に充填するか、又は、シロップ液を希釈して葉酸含有飲料を調製し、容器に充填する。容器へ充填する工程は、当業界で公知の手法により行うことができる。例えば、プレート式ヒーターやチューブ式ヒーター等の加熱殺菌装置を用い、80~150℃の温度下に10~120秒間保持する等して加熱殺菌を行い、その後、常法に従って容器に充填する。また、耐熱性容器に充填した後に、レトルト殺菌等の常法に従って殺菌してもよい。このようにして容器詰葉酸含有飲料を得ることができる。
【0035】
不溶性食物繊維の配合タイミングは、使用する成分及びそれらの配合割合等に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。不溶性食物繊維は原料段階でサイズ(繊維長)を調整したもの、飲料製造工程前又は工程中でサイズ(繊維長)を調整したものを使用することができる。原料段階で調整された不溶性食物繊維を使用する場合は、水と他の成分とを混合し、得られた混合物に必要に応じてホモゲナイザー等を用いて3~20MPa程度の均質化処理を施した後に、不溶性食物繊維を配合することが好ましい。飲料製造工程前に調整する場合は不溶性食物繊維に3~20MPa程度の均質化処理を施し、別途、水と他の成分とを混合し、得られた混合物に必要に応じてホモゲナイザー等を用いて3~20MPa程度の均質化処理を施したものに、不溶性食物繊維を配合することが好ましい。最も好ましくは、飲料製造工程中に調整する場合であり、水と葉酸と不溶性食物繊維とを混合し、3~20MPa程度の均質化処理を施す。なお、不溶性食物繊維は、水分、果汁等の液状成分を含む混合物の状態で、又は、混合物を乾燥させた後の粉末の状態で配合すればよい。
【0036】
<容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法>
本発明の実施形態である容器詰葉酸含有飲料の葉酸沈着防止方法は、葉酸の含有量が0.1~1.5mg/100gである容器詰葉酸含有飲料において、不溶性食物繊維を、葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率が1~200となるように含有させることを含む。
【0037】
葉酸を含有する飲料に不溶性食物繊維を加えることにより、葉酸が容器に沈着することを防止できる。
【実施例0038】
本発明の実施形態について実施例により具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例に限定されない。
【0039】
<容器詰葉酸含有飲料の調製>
[実施例1、4~7、比較例1~4]
下記の各原料を表1に示す濃度の2倍の濃度となるように、純水に溶解又は分散させ、pHが2.8となるように適量のクエン酸を添加し、シロップ液を得た。
葉酸:葉酸製剤(オルガノフードテック社製)
ビタミンB1、B2、B6、B12、D、E:理研ドライA-S200PT(理研ビタミン社製)
シトラスファイバー:シトリ・ファイ100M40(ファイバースター社製、不溶性食物繊維含有量33.7質量%))
大豆食物繊維:SM-900(三栄源エフ・エフ・アイ社製、水溶性食物繊維)
フレーバー:飲料向けエナジードリンク香料(高砂香料工業社製)
クエン酸:クエン酸(無水)(COFCO BIOCHEMICAL(THAILAND)社製)
表1中の記号「←」は、左のマスと同じであることを表し、記号「-」は、含有していないこと又は実施していないこと(「無」)を表す。
【0040】
シロップ液を、純水にガスボリューム2.4GVになるように炭酸ガスを溶解させた炭酸水で2倍に希釈し、速やかに直径53mm、高さ104mmのアルミ缶に190g注入し、プルタブ付き蓋で巻き締めた。巻き締めた缶は、67℃の湯浴中で15分間保持し、その後に水浴にて40℃以下に冷却した。作製した缶飲料は、蓋を天面に向けて、25℃で10日にわたり保管した。
【0041】
[実施例2]
レモン(全果)を水中にて機械的に微細化し、イオン交換水で希釈して卓上ホモジナイザー(ヒスコトロンNS-52、MICROTEC社製)にて回転数5,000rpmで、最頻粒子径が100μmとなるように処理し、得られた水分散液を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を「レモンファイバー」と称した。レモンファイバーの不溶性食物繊維の含有量は、25.4質量%であった。レモンファイバーを使用して、実施例1と同様に缶飲料を調製し、保管した。
【0042】
[実施例3]
植物パルプを水中にて機械的に微細化し、イオン交換水で希釈して卓上ホモジナイザー(ヒスコトロンNS-52、MICROTEC社製)にて回転数5,000rpmで、最頻粒子径が50μmとなるように処理し、得られた水分散液を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を「パルプファイバー」と称した。パルプファイバーの不溶性食物繊維の含有量は、81.8質量%であった。パルプファイバーを使用して、実施例1と同様に缶飲料を調製し、保管した。
【0043】
[実施例8]
シロップ液に均質化処理を行った後に炭酸水による希釈を行った以外は、実施例1と同様の操作にて缶飲料を作製し、保管した。
均質化処理は、ホモゲナイザー(H20型、三和エンジニアリング社製)を使用し、均質化圧力は15MPaとし、流量は装置の最大能力(70L/時間)にて実施した。
【0044】
【0045】
保管した缶飲料(25℃)から葉酸含有飲料を注ぎ出し、15分間のバブリング処理により炭酸ガスを脱気した後に、以下の方法により、葉酸含有飲料中の葉酸の含有量(飲料葉酸量(a))、不溶性食物繊維の含有量(不溶性食物繊維量(c))、粒度分布、及び吸光度を測定した。測定時の葉酸含有飲料の温度は25℃であった。また、葉酸含有飲料を注ぎ出した後の缶を用いて、缶に沈着した葉酸の含有量を測定し、飲料葉酸量(a)に加えて缶中の葉酸の量(容器内総葉酸量(b))を求めた。さらに、容器内総葉酸量(b)と不溶性食物繊維量(c)とから、缶中の葉酸の含有量に対する不溶性食物繊維の含有量の比率(不溶性食物繊維/葉酸((c)/(b))を算出した。得られた値を表2に示す。
【0046】
葉酸の含有量は、「消費者庁 食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法」に従い、微生物学的定量法により測定した。
不溶性食物繊維の含有量は、「消費者庁 食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法」に従い、酵素-重量法により測定した。
粒度分布は、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)により測定し、装置に付属のソフトウェア(WingSALDII,Version3.1.1)による解析により、体積基準の粒度分布における最頻粒子径を特定した。なお、実施例においては、屈折率1.65-0.10iにて測定した数値を採用した。
波長660nmにおける吸光度は、試料をよく攪拌し、紫外可視分光光度計UV-1800(島津製作所社製)により速やかに測定した。
【0047】
缶に沈着した葉酸の含有量は、次の方法により測定した。
葉酸含有飲料を注ぎ出した後の缶に0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL加え、缶底の沈着物を溶解させた。その後、缶内に0.1mol/Lリン酸緩衝液(*1)を適量加え混ぜ合わせ、全量をメスフラスコに移し0.1mol/Lリン酸緩衝液で100mLに定容し、葉酸の量を測定した。得られた値を用い、葉酸の含有量を求めた。
(*1)1.36w/v%リン酸二水素カリウム、0.53w/v%水酸化ナトリウム、2w/v%アスコルビン酸
【0048】
<容器詰葉酸含有飲料の評価>
(缶への葉酸沈着の評価)
以下の計算式により、25℃における葉酸の液中存在率を算出し、缶への葉酸沈着の程度を評価した。結果を表2に示す。
葉酸の液中存在率(%)=
飲料葉酸量(mg/100g)÷容器内総葉酸量(mg/100g)×100
評価基準は次のとおりである。
◎:葉酸の液中存在率 80%以上
○:葉酸の液中存在率 60%以上、80%未満
△:葉酸の液中存在率 30%以上、60%未満
×:葉酸の液中存在率 30%未満
【0049】
(香味の評価)
容器詰葉酸含有飲料について、官能評価試験を行った。官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、5℃に冷却されたサンプル100mLを試飲することにより行った。不溶性食物繊維を含有しない比較例1を基準とし、フレーバーの風味とビタミン類の臭気のバランスを4段階にて評価した。4段階のうち選択した人数が最も多かった段階を評価結果として採用し、人数が同数の場合はパネラー間の協議により決定した。結果を表2に示す。
評価基準は次のとおりである。
フレーバー感は、比較例1を陽性対照とした。ビタミン臭は、比較例1からフレーバーを抜いたサンプルを調製し、陰性対照とした。
◎:比較例1と同程度。フレーバー感が十分にあり、ビタミン臭を認めない。
○:ビタミン臭が感じられるものの、許容できる程度である。
△:フレーバー感はあるものの、ビタミン臭の方が気になる。
×:陰性対照と同程度。フレーバーが感じられず、ビタミン臭が強い。
【0050】
(総合評価)
葉酸沈着の評価と香味の評価を鑑み、評価が低い項目の結果を総合評価の結果とした。結果を表2に示す。
【0051】