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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163812
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】吸気装置およびディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F02M35/10 101F
F02M35/10 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074963
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友野 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】柳ヶ瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 好二
(57)【要約】
【課題】ポート側流通部分が延びる方向の一方側からポート側流通部分に空気が導入される場合に、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することが可能な吸気装置を提供する。
【解決手段】吸気装置100は、X方向(所定の方向)に沿って並んで配置される複数の吸気ポート2に連通するインテークマニホールド40(ポート側流通部分)を備える。インテークマニホールド40は、X方向の端部40aから空気が導入されるように構成されている。また、インテークマニホールド40は、内側面41(第1内側面)と、内側面41と交差する内側面42(第2内側面)とを含む。内側面41には、複数の吸気ポート2と連通する複数の連通孔41aが形成されている。内側面42には、複数の連通孔41aの少なくとも1つよりも上流側に配置される突起部42aが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒と、前記複数の気筒に空気を導入するとともに所定の方向に沿って並んで配置される複数の吸気ポートとを含むエンジンに備えられる吸気装置であって、
前記吸気装置の内部に空気を導入する空気導入部と、
前記空気導入部からの前記空気を前記複数の吸気ポートの各々まで流通させる空気流通部と、を備え、
前記空気流通部は、前記所定の方向に沿って並んで配置される前記複数の吸気ポートに連通するとともに前記複数の吸気ポートの各々と交差するように前記所定の方向に沿って延びる少なくとも1つのポート側流通部分を含み、
前記ポート側流通部分は、
前記ポート側流通部分のうち前記所定の方向の一方側の端部から前記空気導入部の前記空気が導入されるように構成されており、かつ、
前記所定の方向に沿って延びるように設けられる第1内側面と、前記所定の方向に沿って延びるとともに前記第1内側面と交差するように設けられる第2内側面とを含み、
前記第1内側面には、前記複数の吸気ポートと連通する複数の連通孔が形成されており、
前記第2内側面には、前記複数の連通孔の少なくとも1つよりも上流側に配置される少なくとも1つの突起部が形成されている、吸気装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記第1内側面と直交する方向から見て、前記突起部よりも下流側に配置される前記連通孔の前記第2内側面側の端部よりも突出するように設けられている、請求項1に記載の吸気装置。
【請求項3】
前記突起部の突出高さは、前記突起部が突出する方向における前記ポート側流通部分の幅の1/2以下である、請求項2に記載の吸気装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記所定の方向に沿って並ぶ前記複数の吸気ポートのうち最も上流側の吸気ポートに対応する前記連通孔よりも下流側に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸気装置。
【請求項5】
前記複数の吸気ポートは、前記所定の方向に沿って3組並んで配置され、
前記複数の吸気ポートの各々は、前記所定の方向に沿って並ぶ第1のポートと第2のポートとの組により構成され、
前記突起部は、前記複数の吸気ポートのうちの中央の吸気ポートの組に対応する前記連通孔よりも上流側に配置されている、請求項4に記載の吸気装置。
【請求項6】
前記突起部は、前記第1内側面と直交する方向から見て、前記中央の吸気ポートの組に対応する前記連通孔と、前記複数の吸気ポートのうち最も下流側の吸気ポートの組に対応する前記連通孔との間に配置されている、請求項5に記載の吸気装置。
【請求項7】
前記エンジンは、一対の前記ポート側流通部分が設けられる前記吸気装置を備えるV型エンジンを含み、
前記突起部は、前記一対のポート側流通部分の各々の前記第2内側面に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸気装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の前記吸気装置を備える、ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸気装置およびディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2006-316697号公報(特許文献1)には、複数の気筒に対して取り付けられる吸気制御装置が開示されている。上記吸気制御装置は、複数の気筒の各々に対応する吸気ポートが連通される共通の空間を区画形成する吸気通路形成部材を含む。吸気通路形成部材は、複数の吸気ポートが並ぶ方向に沿って延びるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-316697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には記載されていないが、吸気通路形成部材が延びる方向の一方側から吸気通路形成部材に空気が導入される場合がある。この場合、吸気通路形成部材における空気の導入部と各吸気ポートとの位置関係(距離)が互いに異なるため、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じると考えられる。その結果、互いに異なる気筒同士の間において空気の燃焼効率に差異が生じ、燃費の悪化等の原因となり得る。したがって、吸気通路形成部材(ポート側流通部分)が延びる方向の一方側から吸気通路形成部材に空気が導入される場合に、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することが望まれている。
【0005】
本技術の目的は、ポート側流通部分が延びる方向の一方側からポート側流通部分に空気が導入される場合に、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することが可能な吸気装置およびディーゼルエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係る吸気装置は、複数の気筒と、複数の気筒に空気を導入するとともに所定の方向に沿って並んで配置される複数の吸気ポートとを含むエンジンに備えられる吸気装置であって、吸気装置の内部に空気を導入する空気導入部と、空気導入部からの空気を複数の吸気ポートの各々まで流通させる空気流通部と、を備え、空気流通部は、所定の方向に沿って並んで配置される複数の吸気ポートに連通するとともに複数の吸気ポートの各々と交差するように所定の方向に沿って延びる少なくとも1つのポート側流通部分を含み、ポート側流通部分は、ポート側流通部分のうち所定の方向の一方側の端部から空気導入部の空気が導入されるように構成されており、かつ、所定の方向に沿って延びるように設けられる第1内側面と、所定の方向に沿って延びるとともに第1内側面と交差するように設けられる第2内側面とを含み、第1内側面には、複数の吸気ポートと連通する複数の連通孔が形成されており、第2内側面には、複数の連通孔の少なくとも1つよりも上流側に配置される少なくとも1つの突起部が形成されている。
【0007】
本開示の第1の局面に係る吸気装置では、上記のように、第1内側面と交差する第2内側面において、第1内側面の複数の連通孔の少なくとも1つよりも上流側に配置される突起部が形成されている。これにより、突起部によって空気の流れを変化させることができるので、突起部の下流側の連通孔へ流入される空気の流れ(空気の偏流)を容易に調整することができる。その結果、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面に係る吸気装置において、好ましくは、突起部は、第1内側面と直交する方向から見て、突起部よりも下流側に配置される連通孔の第2内側面側の端部よりも突出するように設けられている。このように構成すれば、突起部により、連通孔の上記端部から連通孔に空気が流入するのを抑制することができる。
【0009】
この場合、好ましくは、突起部の突出高さは、突起部が突出する方向におけるポート側流通部分の幅の1/2以下である。このように構成すれば、ポート側流通部分における空気の流通を、突起部によって過剰に阻害するのを抑制することができる。言い換えると、突起部に起因して空気の流動抵抗が過剰に大きくなるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面に係る吸気装置において、好ましくは、突起部は、所定の方向に沿って並ぶ複数の吸気ポートのうち最も上流側の吸気ポートに対応する連通孔よりも下流側に配置されている。このように構成すれば、最も上流側の吸気ポートよりも下流側の吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)を突起部により容易に調整することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、複数の吸気ポートは、所定の方向に沿って3組並んで配置され、複数の吸気ポートの各々は、所定の方向に沿って並ぶ第1のポートと第2のポートとの組により構成され、突起部は、複数の吸気ポートのうちの中央の吸気ポートの組に対応する連通孔よりも上流側に配置されている。このように構成すれば、中央の吸気ポートの組へ流入される空気の流れ(空気の偏流)を突起部により容易に調整することができる。
【0012】
上記複数の吸気ポートが所定の方向に沿って3組並んで配置される吸気装置において、好ましくは、突起部は、第1内側面と直交する方向から見て、中央の吸気ポートの組に対応する連通孔と、複数の吸気ポートのうち最も下流側の吸気ポートの組に対応する連通孔との間に配置されている。このように構成すれば、最も下流側の吸気ポートの組へ流入される空気の流れ(空気の偏流)を突起部により容易に調整することができる。
【0013】
上記第1の局面に係る吸気装置において、好ましくは、エンジンは、一対のポート側流通部分が設けられる吸気装置を備えるV型エンジンを含み、突起部は、一対のポート側流通部分の各々の第2内側面に設けられている。このように構成すれば、一対のポート側流通部分の各々から吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)を突起部により容易に調整することができる。
【0014】
本開示の第2の局面に係るディーゼルエンジンは、第1内側面に、複数の吸気ポートと連通する複数の連通孔が形成されているとともに、第2内側面に、複数の連通孔の少なくとも1つよりも上流側に配置される少なくとも1つの突起部が形成されている上記吸気装置を備える。これにより、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することが可能なディーゼルエンジンを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、ポート側流通部分が延びる方向の一方側からポート側流通部分に空気が導入される場合に、各吸気ポートへ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態によるディーゼルエンジンおよび吸気装置を示す概略図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】一実施形態による吸気ポートおよび気筒をZ1側から見た図である。
図4図2の突起部の近傍の部分拡大図である。
図5】吸気ポートにおける空気の偏流位置とスワール比との関係を示したシミュレーション結果の図である。
図6】連通孔における空気の偏流位置に対応する角度(θ4)を示す図である。
図7図7(A)は、図3のVIIA-VIIA線に沿った断面図である。図7(B)は、図3のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
図8】突起部が設けられていない場合(比較例)および突起部が設けられている場合の各々の各吸気ポートに対応するスワール比を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、以下に説明する実施形態において、個数、大きさなどに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、大きさなどに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0019】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0020】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において、たとえば「上」、「上側」、「下」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0021】
図1は、本実施形態に係る吸気装置100およびディーゼルエンジン1の構成を示す概略図である。なお、図1では、空気の流れが破線矢印により図示されている。
【0022】
ディーゼルエンジン1は、吸気装置100と、複数の吸気ポート2と、複数の排気ポート3と、複数の気筒4とを備える。
【0023】
複数の吸気ポート2は、互いに異なる気筒4に空気を導入する。吸気ポート2から気筒4に導入された空気は、気筒4内において圧縮および燃焼される。この際生じた燃焼ガスが排気ポート3から排出される。
【0024】
ディーゼルエンジン1は、V型エンジンである。具体的には、ディーゼルエンジン1は、6つの気筒4を備える。6つの気筒4のうち3つにより構成される組(以下、第1組と称する)は、Z1側から見て、後述の吸気管20のY1側においてX方向に沿って並んで配置されている。6つの気筒4のうち残りの3つにより構成される組(以下、第2組と称する)は、Z1側から見て、吸気管20のY2側において、X方向に沿って並んで配置されている。なお、X方向、Y方向、および、Z方向は、互いに直交する方向である。また、X方向は、本開示の「所定の方向」の一例である。
【0025】
複数の吸気ポート2の各々は、タンジェンシャルポート2aとヘリカルポート2bとの組により構成されている。タンジェンシャルポート2aは、ヘリカルポート2bよりも上流側に配置されている。また、以下では、説明のために、X方向に並んで配置される3組の吸気ポート2を、上流側から順に、1番目の吸気ポート2、2番目の吸気ポート2、3番目の吸気ポート2と称する。なお、タンジェンシャルポート2aおよびヘリカルポート2bは、それぞれ、本開示の「第1ポート」および「第2ポート」の一例である。
【0026】
タンジェンシャルポート2aは、後述のインテークマニホールド40からY方向に沿って延びる第1部分2c(図3参照)と、第1部分2cから気筒4に向かってZ方向に延びる第2部分2d(図2参照)とを含む。ヘリカルポート2bは、インテークマニホールド40からY方向に沿って延びる第1部分2e(図3参照)と、第1部分2eから気筒4に向かってZ方向に延びる第2部分2f(図2参照)とを含む。したがって、タンジェンシャルポート2aおよびヘリカルポート2bの各々は、Z2側に折れ曲げられるような形状(L字形状)を有している。
【0027】
また、2つの排気ポート3により構成される組は、複数の気筒4の各々に連通するように設けられている。なお、図3では、簡略化のため、排気ポートの図示は省略されている。
【0028】
図1に示すように、吸気装置100は、空気導入部10と、吸気管20と、一対の吸気管30と、一対のインテークマニホールド40と、インタークーラ50と、ディーゼルスロットル60とを備える。なお、吸気管20と吸気管30とインテークマニホールド40とにより構成される空気の流路は、本開示の「空気流通部」の一例である。また、インテークマニホールド40は、本開示の「ポート側流通部分」の一例である。
【0029】
空気導入部10は、吸気装置100(吸気管20)に空気を導入する。吸気管20は、Z1側から見て、X方向に沿って延びるように設けられる。吸気管20を流通した空気は、一対の吸気管30の各々に導入されることにより2方向に分岐される。
【0030】
インタークーラ50およびディーゼルスロットル60は、吸気管20に設けられている。具体的には、吸気管20は、空気導入部10とインタークーラ50とを接続する配管21を含む。また、吸気管20は、インタークーラ50とディーゼルスロットル60とを接続する配管22を含む。また、吸気管20は、ディーゼルスロットル60と一対の吸気管30とを接続する配管23を含む。空気導入部10から導入された空気は、インタークーラ50に導入されることにより冷却される。そして、インタークーラ50により冷却された空気は、ディーゼルスロットル60により流量が調整される(絞られる)。
【0031】
一対の吸気管30の各々は、Y方向に沿って延びるように設けられている。一対の吸気管30のうちY1側の一方は、吸気管20からY1側に延びるように設けられている。また、一対の吸気管30のうちY2側の他方は、吸気管20からY2側に延びるように設けられている。
【0032】
一対のインテークマニホールド40の各々は、複数の吸気ポート2(X方向に沿って並んで配置される3組の吸気ポート2)の各々と交差するようにX方向に沿って延びるように設けられている。
【0033】
具体的には、一対のインテークマニホールド40の各々は、吸気管30からX1側に延びるように設けられている。したがって、インテークマニホールド40は、インテークマニホールド40のうちX2側の端部40aから空気導入部10の空気(吸気管20および吸気管30を流通した空気)が導入されるように構成されている。なお、吸気ポート2の詳細な構成については、後述する。また、一対のインテークマニホールド40は、互いに同じ構成を有している。
【0034】
インテークマニホールド40は、X方向に沿って延びるように設けられる内側面41を含む。また、インテークマニホールド40は、X方向に沿って延びるように設けられる内側面42を含む。内側面41と内側面42とは、互いに交差(直交)するように設けられている。なお、内側面41および内側面42は、それぞれ、本開示の「第1内側面」および「第2内側面」の一例である。
【0035】
具体的には、内側面41は、Y方向と交差(直交)して延びるように設けられている。また、内側面42は、Z方向と交差(直交)して延びるように設けられている。なお、内側面41は、インテークマニホールド40のうち、吸気ポート2等が設けられる側の内側面である。また、内側面42は、インテークマニホールド40のうちZ2側の内側面である。内側面41と内側面42とは、互いに隣接(連続)するように設けられている。
【0036】
インテークマニホールド40は、X方向に沿って並んで配置される3組の吸気ポート2に連通している。具体的には、内側面41には、互いに異なる吸気ポート2と連通する複数の連通孔41a(図2参照)が形成されている。インテークマニホールド40を流通する空気は、連通孔41aを通って吸気ポート2(タンジェンシャルポート2aおよびヘリカルポート2b)に導入される。
【0037】
図2に示すように、連通孔41aは、各タンジェンシャルポート2aおよび各ヘリカルポート2bごとに1つずつ設けられている。したがって、1つの内側面41には、6つの連通孔41aがX方向に沿って並んで配置されている。X方向に沿って並ぶ6つの連通孔41aは、互いに同じ形状(大きさ)を有する。X方向に沿って並ぶ6つの連通孔41aは、Z方向において互いに同じ位置に設けられている。連通孔41aは、たとえば楕円形状を有する。なお、図2では、簡略化のために、1つのタンジェンシャルポート2aおよび1つのヘリカルポート2bのみ図示されている。また、図2では、簡略化のために、後述の突起部42a以外の断面の図示が省略されている。
【0038】
ここで、インテークマニホールド40における空気の導入部(端部40a)と各吸気ポート2との間の位置関係(距離)が互いに異なるため、各吸気ポート2へ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じると考えられる。その結果、互いに異なる気筒4同士の間において空気の燃焼効率に差異が生じ、燃費の悪化等の原因となり得る。したがって、インテークマニホールド40が延びる方向(X方向)の一方側(X2側)からインテークマニホールド40に空気が導入される場合に、各吸気ポート2へ流入される空気の流れ(空気の偏流)に差異が生じるのを抑制することが望まれている。
【0039】
そこで、本実施形態では、一対の内側面42の各々には、複数の連通孔41aの少なくとも1つよりも上流側に配置される突起部42a(リブ)が形成されている。したがって、突起部42aは、内側面42からZ1側に突出するように設けられている。すなわち、突起部42aは、Z2側に折れ曲げられる吸気ポート2(タンジェンシャルポート2aおよびヘリカルポート2b)の折れ曲がり方向とは反対側に突出している。
【0040】
突起部42aは、Y1側から見て、1番目(最も上流側、X2側)の吸気ポート2のタンジェンシャルポート2aに対応する連通孔41aと1番目の吸気ポート2のヘリカルポート2bに対応する連通孔41aとの間に配置されている。したがって、突起部42aは、2番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aの上流側に設けられている。
【0041】
また、突起部42aは、Y1側から見て、2番目(中央)の吸気ポート2に対応する連通孔41aと3番目(最も下流側、X1側)の吸気ポート2に対応する連通孔41aとの間に配置されている。言い換えると、突起部42aは、2番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aの下流側で、かつ、3番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aの上流側に配置されている。
【0042】
また、突起部42aは、Y1側から見て、連通孔41aのうち内側面42側(Z2側)の端部41bよりも突出するように設けられている。言い換えると、突起部42aの(Z1側の)頂点42bは、連通孔41aの端部41bよりもZ1側に位置している。
【0043】
また、図4に示すように、突起部42aの突出高さHは、突起部42aが突出する方向(Z方向)におけるインテークマニホールド40の幅Wの1/2以下である。具体的には、突出高さHは、幅Wの1/4以上1/2以下である。
【0044】
また、突起部42aは、X方向に沿った断面視(図4の断面視)において、直角二等辺三角形形状を有する。具体的には、突起部42aは、内側面42との間の角度θ1が45度の傾斜面42cと、内側面42との間の角度θ2が45度の傾斜面42dを有する。傾斜面42cは、傾斜面42dと連続的に設けられているとともに、傾斜面42dのX2側(上流側)に設けられている。なお、傾斜面42cおよび傾斜面42dの各々は、平坦面形状を有する。
【0045】
したがって、突起部42aは、上記断面視において、頂点42bに対応する角度θ3が90度である。また、頂点42bは、ピン角形状を有している。すなわち、頂点42bは、R形状を有していない。なお、頂点42bがR形状を有していてもよい。また、突起部42aは、Y方向に沿って延びる(図1参照)三角柱形状を有している。
【0046】
突起部42aによりインテークマニホールド40を流通する空気の軌道がZ1側に変えられることによって、連通孔41aにおけるZ2側の領域から連通孔41aに導入される空気の量が低減される。これにより、連通孔41aにおけるZ1側の領域から連通孔41aに導入される空気の量が増加される。
【0047】
ここで、図5のシミュレーション結果に示されるように、連通孔41aにおけるZ2側の領域から空気が導入された場合(θ4=270度)、気筒4におけるスワール比が比較的低くなる。また、連通孔41aにおけるZ1側の領域から空気が導入された場合(θ4=90度、180度)、気筒4におけるスワール比が比較的高くなる。なお、スワール比とは、気筒4内におけるスワール(空気)の回転速度(Z方向を軸とした回転速度)とエンジンの回転速度との比を意味する。また、図5において、横軸の偏流位置θ4は、連通孔41aの断面において空気の流速が高い(偏流が強い)位置を示し、図6に示されるように連通孔41aの中心Oを基準とした角度で示される。図5の2つのグラフの各々に示す横破線は、連通孔41aに導入される空気に偏流がない場合のスワール比の値を示す。
【0048】
したがって、突起部42aにより空気の軌道をZ1側に変えることで連通孔41aにおける偏流位置θ4を小さくする(たとえばθ4=90~180度方向)ことによって、気筒4におけるスワール比を向上させることが可能である。
【0049】
なお、図7(A)に示すように、連通孔41aにおけるZ2側の領域からタンジェンシャルポート2aに空気が導入された場合(破線矢印参照)(比較例)、空気は、タンジェンシャルポート2aに設けられるバルブ2gに沿ってスワールの正回転方向(Z1側から見て時計回り)とは逆方向(Z1側から見て反時計回り)に旋回する。これに対し、突起部42aによって空気が連通孔41aのZ1側の領域からタンジェンシャルポート2aに導入された場合(実線矢印参照)、インテークマニホールド40からタンジェンシャルポート2aへの空気の向きが変化し、空気がスワールの正回転方向に旋回する。これにより、タンジェンシャルポート2aに連通する気筒4におけるスワール比が増大する。
【0050】
また、図7(B)に示すように、連通孔41aにおけるZ2側の領域からヘリカルポート2bに空気が導入された場合(破線矢印参照)(比較例)、空気は、ヘリカルポート2bのスクロール2h(旋回通路部分)を通らず、スワールの負回転方向(Z1側から見て時計回り)に旋回する。このため、スワール比が低下する。これに対し、突起部42aによって空気が連通孔41aのZ1側の領域からヘリカルポート2bに導入された場合、空気は、スクロール2hを通り、スワールの正回転方向(Z1側から見て反時計回り)に旋回する。これにより、ヘリカルポート2bに連通する気筒4のスワール比が増大する。なお、上記のように、タンジェンシャルポート2aとヘリカルポート2bとでは、スワールの正回転方向が互いに逆である。
【0051】
また、スクロール2hは、ヘリカルポート2bにおけるZ1側の面に形成されている。なお、スクロール2hは、図7(B)に示す断面よりも紙面手前側に設けられるので、破線で示されている。なお、図7(A)および(B)では、簡略化のため、空気が流通する部分だけが図示されており、インテークマニホールド40および吸気ポート2の断面の図示は省略されている。
【0052】
(シミューレション結果)
図8は、突起部42aが設けられていない場合(比較例)の各吸気ポート2のスワール比と、1番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aと2番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aとの間に突起部42aが設けられている場合の各吸気ポート2のスワール比とを示す。
【0053】
突起部42aが設けられていない比較例(ハッチングあり)では、2番目(中央)の吸気ポート2のスワール比は、1番目の吸気ポート2および3番目の吸気ポート2に比べて低い。したがって、2番目の吸気ポート2の上流側(1番目と2番目との間)に突起部42aを設けることは、スワール比の改善に特に有効である。
【0054】
突起部42aが設けられている場合(ハッチングなし)では、突起部42aの下流側の吸気ポート2(2番目および3番目)のスワール比が改善されることが確認された。そして、気筒4同士の間のスワール比の差異が低減されたことが確認された。本実施形態では、図2に示したように、2番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aと3番目の吸気ポート2に対応する連通孔41aとの間にも突起部42aを設けることにより、3番目の吸気ポート2のスワール比のさらなる改善が図られる。
【0055】
以上のように、本実施形態においては、内側面41と交差する内側面42には、内側面41の連通孔41aよりも上流側に突起部42aが配置されている。これにより、突起部42aにより空気の向きがZ1側に変更されるので、連通孔41aにおけるZ1側の領域から吸気ポート2に空気を容易に導入することができる。その結果、各吸気ポート2に対応するスワール比を容易に調整することができるので、気筒4同士の間におけるスワール比の差異を低減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、突起部42aが、1番目の吸気ポート2のタンジェンシャルポート2aとヘリカルポート2bとの間に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。突起部42aが、1番目の吸気ポート2の下流側でかつ2番目の吸気ポート2の上流側に配置されていてもよい。また、突起部42aが、3つの吸気ポート2の各々の上流側に配置されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、ディーゼルエンジン1がV型エンジンである例を示したが、本開示はこれに限られない。ディーゼルエンジン1がV型エンジン以外のエンジン(たとえばW型およびL型等)であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、吸気装置100が一対のインテークマニホールド40を備える例を示したが、本開示はこれに限られない。吸気装置100にインテークマニホールド40が1つのみ設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、吸気ポート2がタンジェンシャルポート2aとヘリカルポート2bとにより構成される例を示したが、本開示はこれに限られない。吸気ポート2が一対のタンジェンシャルポート2aまたは一対のヘリカルポート2bにより構成されていてもよい。また、吸気ポート2が、1つのタンジェンシャルポート2aまたは1つのヘリカルポート2bにより構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、突起部42aの断面形状が二等辺三角形形状を有する例を示したが、本開示はこれに限られない。突起部42aのうち上流側の面(傾斜面42c)が傾斜面であれば、下流側の面はたとえば内側面42と直交していてもよい。また、傾斜面42cが平坦面ではなく湾曲面等であってもよい。
【0061】
なお、上記実施形態に記載されている構成、および、上記の各種変形例は、任意に組み合わされて実施されてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ディーゼルエンジン(エンジン),2 吸気ポート,2a タンジェンシャルポート(第1ポート),2b ヘリカルポート(第2ポート),4 気筒,10 空気導入部,20 第1吸気管(空気流通部),30 第2吸気管(空気流通部),40 インテークマニホールド(空気流通部)(ポート側流通部分),40a 端部(ポート側流通部分の端部),41 内側面(第1内側面),41a 連通孔,41b 端部(連通孔の端部),42 内側面(第2内側面),42a 突起部,100 吸気装置,H 突出高さ,W 幅,X 方向(所定の方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8