(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163819
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】パルス生成装置
(51)【国際特許分類】
H03K 5/00 20060101AFI20231102BHJP
B41J 19/18 20060101ALI20231102BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H03K5/00 S
B41J19/18 E
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074981
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 悠太
(72)【発明者】
【氏名】白井 陽久
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】法亢 昌広
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
【Fターム(参考)】
2C056EB11
2C056EB36
2C056EC11
2C056EC31
2C480CA36
2C480CB02
2C480CB34
2C480EA12
2C480EC04
2C480EC06
2C480EC10
(57)【要約】
【課題】画像形成装置の画質を向上させる。
【解決手段】記録エンコーダ処理部31は周期カウンタ53と吐出タイミングパルス生成部54とを備える。周期カウンタ53は、ロータリエンコーダ14からエンコーダ信号が出力される度に、時間間隔を示す時間情報を算出する。吐出タイミングパルス生成部54は、少なくとも2つの時間情報に基づいて、吐出タイミングパルスを出力する出力タイミングを決定する。第1,2時間情報の算出タイミングの時間差は、モータが、コギング距離に相当する角度以上回転するのに要する時間より長い。第1時間情報は、少なくとも2つの時間情報のうち、最も早く出力されたエンコーダ信号に基づいて算出された時間情報であり、第2時間情報は、最も遅く出力されたエンコーダ信号に基づいて算出された時間情報である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが予め設定された所定量回転する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した前記検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、
前記検出信号出力部から前記検出信号が出力される度に、直近で出力された前記検出信号と、前回出力された前記検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成された時間情報算出部と、
少なくとも2つの前記時間情報に基づいて、前記タイミングパルスを出力する出力タイミングを決定するように構成されたタイミング決定部と
を備え、
少なくとも2つの前記時間情報のうち、最も早く出力された前記検出信号である第1検出信号に基づいて算出された前記時間情報を第1時間情報とし、最も遅く出力された前記検出信号である第2検出信号に基づいて算出された前記時間情報を第2時間情報として、前記第1時間情報が算出された第1算出タイミングと、前記第2時間情報が算出された第2算出タイミングとの時間差は、前記モータが、コギング距離に相当する角度以上回転するのに要する時間より長いパルス生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報は、前記モータが前記所定量回転するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、少なくとも2つの前記時間情報の平均に基づいて、前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、少なくとも2つの前記時間情報の平均を示す平均時間内で等間隔になるように前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、新たに検出された前記検出信号に基づいて生成された前記タイミングパルスが出力されるまでは、前記等間隔で前記出力タイミングを設定し続けるパルス生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載のパルス生成装置であって、
前記第1算出タイミングと前記第2算出タイミングとの時間差は、前記モータが1回転するのに要する時間に等しいパルス生成装置。
【請求項7】
駆動対象が予め設定された所定量駆動する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した前記検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、
前記検出信号出力部から前記検出信号が出力される度に、直近で出力された前記検出信号と、前回出力された前記検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成された時間情報算出部と、
前記タイミングパルスを生成する前における前記時間情報である直近時間情報と、前記タイミングパルスを生成する時間間隔の基準となる予め設定された基準時間情報とを用いて調整量を算出し、前記調整量に基づいて、前記タイミングパルスを出力する出力タイミングを、前記直近時間情報に基づいて算出されて前記出力タイミングの基準となる基準出力タイミングに対して、遅延させたり前倒しさせたりして前記出力タイミングを決定するように構成されたタイミング調整部と
を備えるパルス生成装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報は、前記駆動対象が前記所定量駆動するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のパルス生成装置であって、
前記基準時間情報は、予め設定された基準速度で前記駆動対象を駆動させる場合に前記駆動対象が前記所定量駆動するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載のパルス生成装置であって、
前記基準時間情報は、前記出力タイミングを決定する前に算出された少なくとも2つの前記時間情報を平均した時間またはクロック数であるパルス生成装置。
【請求項11】
請求項7または請求項8に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング調整部は、直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に、複数の前記出力タイミングを決定するように構成され、
前記タイミング調整部は、複数の前記出力タイミングのそれぞれについて互いに独立して算出した前記調整量に基づいて、複数の前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパルス生成装置であって、
直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に出力される前記タイミングパルスの数をMとし、前記時間情報が示す時間をTeとし、前記基準時間情報が示す時間をTsとし、N番目の前記出力タイミングの前記調整量をdelayNとして、
前記タイミング調整部は、N番目の前記出力タイミングの前記調整量を、「delayN = (N-1)×(Ts-Te)/M」で算出するパルス生成装置。
【請求項13】
請求項7または請求項8に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング調整部は、直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に、複数の前記出力タイミングを決定するように構成され、
前記タイミング調整部は、複数の前記出力タイミングのそれぞれについて互いに同一の前記調整量に基づいて、複数の前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
【請求項14】
請求項13に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報が示す時間をTeとし、前記基準時間情報が示す時間をTsとし、前記調整量をdelayとして、
前記タイミング調整部は、前記調整量を、「delay = (Ts-Te)/2」で算出するパルス生成装置。
【請求項15】
請求項1に記載のパルス生成装置であって、
前記モータは、シートに向けてインクを吐出する吐出器を移動させる搬送装置を駆動し、
前記タイミングパルスは、前記吐出器によって前記インクが吐出されるタイミングを示すパルス生成装置。
【請求項16】
請求項7に記載のパルス生成装置であって、
前記駆動対象は、シートに向けてインクを吐出する吐出器を移動させる搬送装置を駆動し、
前記タイミングパルスは、前記吐出器によって前記インクが吐出されるタイミングを示すパルス生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイミングパルスを生成するパルス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ駆動によって予め設定された移動経路上を移動するキャリッジの移動に応じてパルス信号を出力するリニアエンコーダを用いてキャリッジの位置と移動速度とを検出し、キャリッジに搭載された記録ヘッドのインク吐出タイミングを制御するように構成された画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアエンコーダは、キャリッジの移動方向に沿って所定の間隔でエンコーダスリットが形成されたリニアスケールを備え、このリニアスケールを用いてキャリッジの位置を検出する。このため、リニアエンコーダは、キャリッジの位置を直接認識することができ、キャリッジの位置および移動速度の検出精度が高いという利点を有する。しかし、リニアエンコーダは、キャリッジに搭載されている記録ヘッドの付近に設置されることになるため、例えば、リニアエンコーダが故障してリニアエンコーダを交換する際に、記録ヘッドが邪魔でリニアエンコーダの交換作業が行い難くなるという問題があった。
【0005】
これに対し、キャリッジを駆動するモータのモータ軸に取り付けられたロータリエンコーダを用いてキャリッジの位置と移動速度とを検出するようにすることで、上記の問題を解決することができる。
【0006】
しかし、ロータリエンコーダを用いることにより、リニアエンコーダを用いているときには発生しなかった印刷ムラが発生して画質が劣化することがある。
本開示は、画像形成装置の画質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、モータが予め設定された所定量回転する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、時間情報算出部と、タイミング決定部とを備える。
【0008】
時間情報算出部は、検出信号出力部から検出信号が出力される度に、直近で出力された検出信号と、前回出力された検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成される。
【0009】
タイミング決定部は、少なくとも2つの時間情報に基づいて、タイミングパルスを出力する出力タイミングを決定するように構成される。
そして、第1時間情報が算出された第1算出タイミングと、第2時間情報が算出された第2算出タイミングとの時間差は、モータが、コギング距離に相当する角度以上回転するのに要する時間より長い。第1時間情報は、少なくとも2つの時間情報のうち、最も早く出力された検出信号である第1検出信号に基づいて算出された時間情報である。第2時間情報は、少なくとも2つの時間情報のうち、最も遅く出力された検出信号である第2検出信号に基づいて算出された時間情報である。
【0010】
コギング距離は、モータが一周するのに要する角度(すなわち、360°)を、モータのステータの磁石の数とモータのロータの分割数との積で除した値である。
このように構成された本開示のパルス生成装置は、モータにより駆動される搬送装置によって移動させられる吐出器がシートに向けてインクを吐出する吐出タイミングを示すタイミングパルスを生成する場合に、モータのコギング変動に起因した吐出タイミングのズレを抑制して印刷ムラの発生を抑制することができるため、画像形成装置の画質を向上させることができる。
【0011】
本開示の別の態様は、駆動対象が予め設定された所定量駆動する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、時間情報算出部と、タイミング調整部とを備える。
【0012】
時間情報算出部は、検出信号出力部から検出信号が出力される度に、直近で出力された検出信号と、前回出力された検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成される。
【0013】
タイミング調整部は、タイミングパルスを生成する前における時間情報である直近時間情報と、タイミングパルスを生成する時間間隔の基準となる予め設定された基準時間情報とを用いて調整量を算出し、調整量に基づいて、タイミングパルスを出力する出力タイミングを、直近時間情報に基づいて算出されて出力タイミングの基準となる基準出力タイミングに対して、遅延させたり前倒しさせたりして出力タイミングを決定するように構成される。
【0014】
このように構成された本開示のパルス生成装置は、モータにより駆動される搬送装置によって移動させられる吐出器がシートに向けてインクを吐出する吐出タイミングを示すタイミングパルスを生成する場合に、モータのコギング変動に起因した吐出タイミングのズレを抑制して印刷ムラの発生を抑制することができるため、画像形成装置の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】キャリッジ速度およびモータ回転速度の時間変化を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態の記録エンコーダ処理部の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態のパルス生成方法を説明する図である。
【
図6】第1実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【
図7】第1実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【
図8】第2実施形態の吐出タイミングパルス生成部の構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【
図10】第2実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【
図11】第3実施形態の吐出タイミングパルス生成部の構成を示すブロック図である。
【
図12】第3実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【
図13】第3実施形態においてキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
(1)全体構成
本実施形態の画像形成装置1は、インクジェットプリンタであり、
図1に示すように、記録ヘッド11と、キャリッジ12と、キャリッジモータ13と、ロータリエンコーダ14とを備える。
【0017】
記録ヘッド11、キャリッジ12およびキャリッジモータ13は、印刷機構15の一部を構成する。
印刷機構15は、キャリッジモータ13からの動力を受けて、記録ヘッド11を搭載するキャリッジ12を主走査方向に移動させるように構成される。主走査方向は、用紙が搬送される副走査方向と直交する方向である。
【0018】
記録ヘッド11は、インク液滴を吐出するように構成される吐出ヘッドであり、いわゆるインクジェットヘッドである。記録ヘッド11は、キャリッジ12が主走査方向に沿って用紙を横断するように移動する際、インク液滴の吐出動作を実行して用紙に画像を形成する。キャリッジモータ13は、直流モータであり、キャリッジ12を往復動させるための駆動源として機能する。
【0019】
ロータリエンコーダ14は、インクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダであり、キャリッジ12の主走査方向における位置および速度を計測するために用いられる。
画像形成装置1は、用紙の搬送を実現するために、更に、ラインフィードモータ21と、ロータリエンコーダ22とを備える。ラインフィードモータ21は、直流モータであり、用紙を副走査方向へ搬送する搬送ローラを回転させるための駆動源として機能する。ロータリエンコーダ22は、インクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダであり、搬送ローラの回転量および回転速度を計測するために用いられる。
【0020】
画像形成装置1は、更に、CPU2と、ROM3と、RAM4と、クロック生成部5と、ユーザインタフェース6と、通信インタフェース7と、バス8と、記録制御部16と、キャリッジモータ制御部17と、ラインフィードモータ制御部23と、エンコーダ処理部30とを備える。
【0021】
CPU2、ROM3、RAM4、クロック生成部5、ユーザインタフェース6、通信インタフェース7、記録制御部16、キャリッジモータ制御部17、ラインフィードモータ制御部23およびエンコーダ処理部30は、バス8を介して、互いにデータ入出力可能に接続される。
【0022】
CPU2は、画像形成装置1の各部を統括的に制御するように構成される。ROM3は、CPU2により実行されるコンピュータプログラムを記憶する。RAM4は、CPU2によるコンピュータプログラム実行時に作業領域として使用される。
【0023】
クロック生成部5は、ロータリエンコーダ14,22が出力するパルス信号よりも十分に周期が短いクロック信号を生成して画像形成装置1内の各部へ供給する。
ユーザインタフェース6は、ユーザにより操作可能な操作部と、ユーザに向けて各種情報を表示可能な表示部とを備える。
【0024】
通信インタフェース7は、パーソナルコンピュータ等の外部装置との間でデータ通信を行うためのインタフェースである。
記録制御部16は、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作を制御するように構成される。キャリッジモータ制御部17は、キャリッジモータ13によるキャリッジ12の搬送動作を制御するように構成される。ラインフィードモータ制御部23は、ラインフィードモータ21による用紙の搬送動作を制御するように構成される。
【0025】
エンコーダ処理部30は、記録エンコーダ処理部31と、搬送エンコーダ処理部32とを備える。
記録エンコーダ処理部31は、ロータリエンコーダ14から入力されるエンコーダ信号に基づき、キャリッジ12の移動方向を判定するとともに、キャリッジ12の位置および移動速度を計測する。
【0026】
搬送エンコーダ処理部32は、ロータリエンコーダ22から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙を搬送する搬送ローラの回転量および回転速度を計測する。
図2に示すように、印刷機構15は、キャリッジ12の通路を規定するために主走査方向に沿って延びるガイド軸41を備える。キャリッジ12は、ガイド軸41に挿通される。
【0027】
キャリッジ12は更に、ガイド軸41に沿って設けられた無端ベルト42に連結される。無端ベルト42は、ガイド軸41の一端に設置された駆動プーリ43と、ガイド軸41の他端に設置された従動プーリ44との間に巻回される。
【0028】
駆動プーリ43は、キャリッジモータ13により回転駆動され、無端ベルト42を回転させる。キャリッジ12は、無端ベルト42の回転を通じて伝達されるキャリッジモータ13の動力により、ガイド軸41に沿って主走査方向に移動する。
【0029】
ロータリエンコーダ14は、図示しない円板状のエンコーダディスクと、図示しない光学センサとを備える。
円板状のエンコーダディスクは、その中心がキャリッジモータ13の回転軸上に配置されるようにして、キャリッジモータ13に固定される。エンコーダディスクには、エンコーダディスクの同心円上に等間隔に配列された複数のエンコーダスリットが形成されている。
【0030】
光学センサは、光を照射する発光部と、エンコーダスリットを挟んで発光部と対向するように設置された受光部とを備える。これにより、ロータリエンコーダ14は、キャリッジモータ13の回転に応じ、キャリッジモータ13が予め設定された所定量回転する度に、エンコーダ信号として、所定の位相差(本実施形態では90度)を有する第1パルス信号(以下、A相信号)および第2パルス信号(以下、B相信号)を出力する。
【0031】
(2)キャリッジモータのコギング
直流モータにおいてモータ軸が一回転する間のトルクは、直流モータの構造上の理由により、駆動電流または駆動電圧が一定であっても均一ではなく、いわゆるコギングという周期的なトルク変動が生じる。このため、直流モータの回転速度は周期的に変動する。
【0032】
キャリッジモータ13は直流モータであるため、キャリッジモータ13の回転速度は、コギングに起因して周期的に変動する。
例えば
図3のグラフG1に示すように、キャリッジ12が、時刻t1で、加速開始位置から加速を開始する。そして時刻t2で、キャリッジ12の移動速度(以下、キャリッジ速度)が基準速度に達すると、キャリッジ12は、減速開始位置まで基準速度で定速移動する。
【0033】
時刻t3でキャリッジ12が減速開始位置に到達すると、キャリッジ12は減速を開始する。そして時刻t4でキャリッジ速度が0になり、キャリッジ12が停止位置で停止する。
【0034】
図3のグラフG2は、キャリッジ12がグラフG1に示すように移動する場合におけるキャリッジモータ13の回転速度(以下、キャリッジモータ回転速度)の時間変化を示す。
【0035】
グラフG2に示すように、キャリッジモータ13が、時刻t1で回転駆動を開始する。そして時刻t2で、キャリッジモータ回転速度が基準回転速度に達すると、キャリッジモータ13は、基準回転速度で回転駆動するようにキャリッジモータ制御部17により制御される。しかし、キャリッジモータ回転速度は、コギングにより、基準回転速度を中心としてコギング周期で振動する。
【0036】
時刻t3でキャリッジ12が減速開始位置に到達すると、キャリッジモータ13は減速を開始する。そして時刻t4で、キャリッジモータ回転速度が0になり、キャリッジ12が停止位置で停止する。
【0037】
なお、コギングによるキャリッジモータ回転速度の変動(以下、コギング変動)は、無端ベルト42を介してキャリッジ12に伝達される前に、無端ベルト42により減衰される。このため、キャリッジ12の移動速度はコギング周期で振動せず、キャリッジ12は基準速度で定速移動する。
【0038】
(3)記録エンコーダ処理部の構成
図4に示すように、記録エンコーダ処理部31は、エンコーダエッジ検出部51と、位置カウンタ52と、周期カウンタ53と、吐出タイミングパルス生成部54と、信号処理部55とを備える。
【0039】
エンコーダエッジ検出部51は、ロータリエンコーダ14から各相パルス信号を取り込み、A相信号の立ち上がりエッジと、キャリッジモータ13の回転方向とを検出する。エンコーダエッジ検出部51は、A相信号の立ち上がりエッジを検出すると、エッジ検出信号を出力する。
【0040】
位置カウンタ52は、エンコーダエッジ検出部51が検出したキャリッジモータ13の回転方向(すなわち、キャリッジ12の移動方向)に応じて、エンコーダエッジ検出部51からエッジ検出信号が入力される度に、エッジ数カウント値をインクリメント(すなわち、1加算)またはデクリメント(すなわち、1減算)する。位置カウンタ52は、エッジ数カウント値を示す位置情報を吐出タイミングパルス生成部54および信号処理部55へ出力する。
【0041】
周期カウンタ53は、エンコーダエッジ検出部51からエッジ検出信号が入力される度に、エッジ周期カウント値を初期化する。また周期カウンタ53は、クロック生成部5からクロック信号が入力される度に、エッジ周期カウント値をインクリメントする。
【0042】
そして周期カウンタ53は、エンコーダエッジ検出部51からエッジ検出信号が入力される度に、エッジ検出信号が入力される直前のエッジ周期カウント値を示す時間情報を吐出タイミングパルス生成部54および信号処理部55へ出力する。すなわち、周期カウンタ53は、エッジ検出信号が入力される度に、前回のエッジ検出信号が入力されてから、今回のエッジ検出信号が入力されるまでの時間を計測する。
【0043】
吐出タイミングパルス生成部54は、時間記憶部61と、平均時間算出部62と、吐出時間算出部63と、パルス生成部64とを備える。
時間記憶部61は、周期カウンタ53から時間情報が入力される度に、入力された時間情報を時系列で記憶する。
【0044】
平均時間算出部62は、時間記憶部61で新たな時間情報が記憶される度に、時間記憶部61に記憶されている複数の時間情報の中から、記憶されたタイミングが遅い順に、予め設定された平均取得数の時間情報を取得し、取得した平均取得数の時間情報が示す時間の平均を、予測周期として算出する。平均取得数は、2以上の整数である。本実施形態では、平均取得数は、キャリッジモータ13が1回転する間に周期カウンタ53が出力する時間情報の数に一致している。
【0045】
吐出時間算出部63は、平均時間算出部62で新たな予測周期が算出される度に、直近で算出された予測周期をエンコーダ逓倍数Mで除した除算値を算出し、この除算値を吐出時間とする。本実施形態では、エンコーダ逓倍数Mは4である。
【0046】
パルス生成部64は、エッジ検出信号が入力してから所定遅延時間Tdが経過した後に、1番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。さらにパルス生成部64は、2番目からM番目までの吐出タイミングパルスを、吐出時間算出部63で算出した吐出時間が経過する毎に生成して出力する。
【0047】
信号処理部55は、エッジ検出信号、エッジ数カウント値およびエッジ周期カウント値などの各種信号を処理し、必要に応じてCPU2へ出力する。また信号処理部55は、CPU2から入力される各種信号を処理し、記録エンコーダ処理部31内の各部へ出力する。
【0048】
CPU2から信号処理部55へ入力される信号としては、例えば、吐出タイミングパルス生成部54が吐出タイミングパルスを生成するか否かを指示する信号がある。本実施形態の画像形成装置1では、吐出タイミングパルスを必ずしも常時生成する必要があるわけではなく、吐出タイミングパルスが必要なとき(例えば、画像形成時)と不要なときとが混在する。そのため、CPU2が、信号処理部55を介して、吐出タイミングパルス生成部54へ吐出タイミングパルスを生成すべきか否かを指示する。
【0049】
吐出タイミングパルス生成部54から出力された吐出タイミングパルスは、記録制御部16に入力される。記録制御部16は、入力された吐出タイミングパルスを記録ヘッド11の動作タイミング(すなわち、インク吐出タイミング)として用い、記録ヘッド11の動作を制御する。
【0050】
次に、吐出タイミングパルス生成方法を具体的に説明する。
図5に示すように、時刻t11でA相信号の立ち上がりエッジが検出されると、時間t
n-1を示す時間情報が周期カウンタ53から吐出タイミングパルス生成部54に入力される。吐出タイミングパルス生成部54は、平均取得数の時間情報を用いて予測周期T
n-1を算出する。
【0051】
そして吐出タイミングパルス生成部54は、A相信号の立ち上がりエッジが検出されてから所定遅延時間Tdが経過した時刻t12に、1番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0052】
また吐出タイミングパルス生成部54は、1番目の吐出タイミングパルスが出力されてから予測周期Tn-1の4分の1の時間が経過した時刻t13に、2番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0053】
また吐出タイミングパルス生成部54は、2番目の吐出タイミングパルスが出力されてから予測周期Tn-1の4分の1の時間が経過した時刻t14に、3番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0054】
また吐出タイミングパルス生成部54は、3番目の吐出タイミングパルスが出力されてから予測周期Tn-1の4分の1の時間が経過した時刻t15に、4番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0055】
さらに、時刻t16でA相信号の立ち上がりエッジが検出されると、時間tnを示す時間情報が周期カウンタ53から吐出タイミングパルス生成部54に入力される。吐出タイミングパルス生成部54は、平均取得数の時間情報を用いて予測周期Tnを算出する。
【0056】
そして吐出タイミングパルス生成部54は、予測周期Tnの4分の1の時間間隔で、時刻t12~t15と同様にして、時刻t17,t18,t19,t20にそれぞれ、1,2,3,4番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0057】
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する。
図6に示すように、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度に一致している場合には、枠F1内の図で示すように、時刻t30、時刻t31、時刻t32、時刻t33および時刻t34に、記録ヘッド11からインクが吐出されるとする。
【0058】
一方、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合において、直近の時間情報のみに基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F2内の図で示すように、時刻t30、時刻t35、時刻t36、時刻t37に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0059】
時刻t30と時刻t35との間の時間間隔は、時刻t30と時刻t31との間の時間間隔より短い。
なお、時刻t38は、直近に算出されたキャリッジモータ回転速度から予測される吐出タイミングに対応している。キャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きいため、予測吐出タイミングに対応している時刻t38は、枠F1内の図で示す時刻t34よりも早い。
【0060】
枠F2内の図で示す時刻t39は、エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングに対応する。エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングが時刻t38より遅くなったのは、コギングによりキャリッジモータ回転速度が遅くなったためである。
【0061】
次に、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合において、平均取得数の時間情報の平均に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F3内の図で示すように、時刻t30、時刻t40、時刻t41、時刻t42に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0062】
時刻t30と時刻t40との間の時間間隔は、時刻t30と時刻t31との間の時間間隔にほぼ一致する。
なお、時刻t43は、平均取得数のキャリッジモータ回転速度の平均から予測される吐出タイミングに対応している。予測吐出タイミングに対応している時刻t43は、枠F1内の図で示す時刻t34にほぼ一致する。
【0063】
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する。
図7に示すように、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度に一致している場合には、枠F11内の図で示すように、時刻t50、時刻t51、時刻t52、時刻t53および時刻t54に、記録ヘッド11からインクが吐出されるとする。
【0064】
なお、時刻t54は、直近に算出されたキャリッジモータ回転速度から予測される吐出タイミングに対応している。記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度に一致しているため、予測される吐出タイミングに一致する時刻t54にインクが吐出される。
【0065】
一方、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合において、直近の時間情報のみに基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F12内の図で示すように、時刻t50、時刻t55、時刻t56、時刻t57に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0066】
時刻t50と時刻t55との間の時間間隔は、時刻t50と時刻t51との間の時間間隔より長い。
なお、時刻t58は、直近に算出されたキャリッジモータ回転速度から予測される吐出タイミングに対応している。キャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さいため、予測吐出タイミングに対応している時刻t58は、枠F1内の図で示す時刻t54よりも遅い。
【0067】
枠F12内の図で示す時刻t59は、エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングに対応する。エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングが時刻t58より遅くなったのは、コギングによりキャリッジモータ回転速度が遅くなったためである。
【0068】
次に、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合において、平均取得数の時間情報の平均に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F13内の図で示すように、時刻t50、時刻t60、時刻t61、時刻t62に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0069】
時刻t50と時刻t60との間の時間間隔は、時刻t50と時刻t51との間の時間間隔にほぼ一致する。
なお、時刻t63は、平均取得数のキャリッジモータ回転速度の平均から予測される吐出タイミングに対応している。予測吐出タイミングに対応している時刻t63は、枠F11内の図で示す時刻t54にほぼ一致する。
【0070】
(4)効果
このように構成された記録エンコーダ処理部31は、キャリッジモータ13が所定量回転する度にエンコーダ信号を出力するように構成されたロータリエンコーダ14から取得したエンコーダ信号に基づいて、吐出タイミングパルスを生成する。
【0071】
記録エンコーダ処理部31は、周期カウンタ53と、吐出タイミングパルス生成部54とを備える。
周期カウンタ53は、ロータリエンコーダ14からエンコーダ信号が出力される度に、直近で出力されたエンコーダ信号と、前回出力されたエンコーダ信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成される。
【0072】
吐出タイミングパルス生成部54は、少なくとも2つの時間情報に基づいて、吐出タイミングパルスを出力する出力タイミングを決定するように構成される。
そして、第1時間情報が算出された第1算出タイミングと、第2時間情報が算出された第2算出タイミングとの時間差は、キャリッジモータ13が、コギング距離に相当する角度以上回転するのに要する時間より長い。第1時間情報は、少なくとも2つの時間情報のうち、最も早く出力されたエンコーダ信号に基づいて算出された時間情報である。第2時間情報は、少なくとも2つの時間情報のうち、最も遅く出力されたエンコーダ信号に基づいて算出された時間情報である。
【0073】
コギング距離は、キャリッジモータ13が一周するのに要する角度(すなわち、360°)を、キャリッジモータ13のステータの磁石の数とキャリッジモータ13のロータの分割数との積で除した値である。
【0074】
例えば、キャリッジモータ13のステータの磁石の数が「3」であり、キャリッジモータ13のロータの分割数が「4」であるとする。なお、ロータが2つのN極と2つのS極とで構成されている場合には、ロータの分割数は「4」である。この場合のコギング距離は、360/(3×4)=30°である。
【0075】
このような記録エンコーダ処理部31は、キャリッジモータ13により駆動されるキャリッジ12によって移動させられる記録ヘッド11がシートに向けてインクを吐出する吐出タイミングを示す吐出タイミングパルスを生成する場合に、キャリッジモータ13のコギング変動に起因した吐出タイミングのズレを抑制して印刷ムラの発生を抑制することができるため、画像形成装置1の画質を向上させることができる。
【0076】
記録エンコーダ処理部31は、少なくとも2つの時間情報の平均に基づいて、出力タイミングを決定する。このような記録エンコーダ処理部31は、出力タイミングの決定を簡略化することができ、記録エンコーダ処理部31の処理負荷を低減することができる。
【0077】
記録エンコーダ処理部31は、少なくとも2つの時間情報の平均を示す平均時間内で等間隔になるように出力タイミングを決定する。このような記録エンコーダ処理部31は、出力タイミングの決定を簡略化することができ、記録エンコーダ処理部31の処理負荷を低減することができる。
【0078】
また、第1算出タイミングと第2算出タイミングとの時間差は、キャリッジモータ13が1回転するのに要する時間に等しい。このような記録エンコーダ処理部31は、第1算出タイミングと第2算出タイミングとの時間差が、キャリッジモータ13が1回転するのに要する時間より短い場合より、コギング変動の影響を低減することができる。
【0079】
以上説明した実施形態において、記録エンコーダ処理部31はパルス生成装置に相当し、キャリッジモータ13はモータに相当し、エンコーダ信号は検出信号に相当し、ロータリエンコーダ14は検出信号出力部に相当し、吐出タイミングパルスはタイミングパルスに相当する。
【0080】
また、周期カウンタ53は時間情報算出部に相当し、吐出タイミングパルス生成部54はタイミング決定部に相当し、最も早く出力されたエンコーダ信号は第1検出信号に相当し、最も遅く出力されたエンコーダ信号は第2検出信号に相当する。
【0081】
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0082】
第2実施形態の画像形成装置1は、吐出タイミングパルス生成部54の構成が変更された点が第1実施形態と異なる。
図8に示すように、第2実施形態の吐出タイミングパルス生成部54は、調整時間算出部71と、吐出時間算出部72と、パルス生成部73とを備える。
【0083】
調整時間算出部71は、周期カウンタ53から時間情報が入力される度に、第1調整時間delay1、第2調整時間delay2、・・・・、第M調整時間delayMを算出する。
【0084】
なお、調整時間算出部71は、第N調整時間delayNを式(1)で算出する。Nは、1からMまでの整数である。式(1)におけるTsは、キャリッジモータ13が基準回転速度で回転する場合にロータリエンコーダ22からA相信号が出力される周期に相当する。
【0085】
delayN = (N-1)×(Ts-Te)/M ・・・(1)
吐出時間算出部72は、周期カウンタ53から時間情報が入力される度に、入力された時間情報が示す時間(すなわち、予測時間Te)と、調整時間算出部71から入力された第1~M調整時間delay1~Mとを用いて、N番目の吐出タイミングパルスの第N吐出時間ET_Nを式(2)で算出する。
【0086】
ET_N = (N-1)×Te/M + delayN ・・・(2)
パルス生成部73は、エッジ検出信号が入力してから所定遅延時間Tdが経過した後に、1番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。さらにパルス生成部73は、1番目の吐出タイミングパルスを出力してから第N吐出時間ET_Nが経過した後に、N番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。ここでのNは、2からMまでの整数である。
【0087】
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する。
図9に示すように、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度に一致している場合には、枠F21内の図で示すように、時刻t70、時刻t71、時刻t72、時刻t73および時刻t74に、記録ヘッド11からインクが吐出されるとする。
【0088】
一方、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合において、直近の時間情報のみに基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F22内の図で示すように、時刻t70、時刻t75、時刻t76、時刻t77に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0089】
時刻t70と時刻t75との間の時間間隔は、時刻t70と時刻t71との間の時間間隔より短い。
なお、時刻t78は、直近に算出されたキャリッジモータ回転速度から予測される吐出タイミングに対応している。キャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きいため、予測吐出タイミングに対応している時刻t78は、枠F21内の図で示す時刻t74よりも早い。
【0090】
枠F22内の図で示す時刻t79は、エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングに対応する。エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングが時刻t78より遅くなったのは、コギングによりキャリッジモータ回転速度が遅くなったためである。
【0091】
次に、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合において、調整時間に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F23内の図で示すように、時刻t70、時刻t80、時刻t81、時刻t82に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0092】
時刻t80は、第2吐出時間ET_2に対応する。時刻t81は、第3吐出時間ET_3に対応する。時刻t82は、第4吐出時間ET_4に対応する。
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する。
【0093】
図10に示すように、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度に一致している場合には、枠F31内の図で示すように、時刻t90、時刻t91、時刻t92、時刻t93および時刻t94に、記録ヘッド11からインクが吐出されるとする。
【0094】
一方、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合において、直近の時間情報のみに基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F32内の図で示すように、時刻t90、時刻t95、時刻t96、時刻t97に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0095】
時刻t90と時刻t95との間の時間間隔は、時刻t90と時刻t91との間の時間間隔より長い。
なお、時刻t98は、直近に算出されたキャリッジモータ回転速度から予測される吐出タイミングに対応している。キャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さいため、予測吐出タイミングに対応している時刻t98は、枠F31内の図で示す時刻t94よりも遅い。
【0096】
枠F32内の図で示す時刻t99は、エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングに対応する。エンコーダエッジ検出部51が実際にエッジを検出するタイミングが時刻t98より遅くなったのは、コギングによりキャリッジモータ回転速度が遅くなったためである。
【0097】
次に、記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合において、調整時間に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F33内の図で示すように、時刻t90、時刻t100、時刻t101、時刻t102に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0098】
時刻t100は、第2吐出時間ET_2に対応する。時刻t101は、第3吐出時間ET_3に対応する。時刻t102は、第4吐出時間ET_4に対応する。
このように構成された記録エンコーダ処理部31は、周期カウンタ53と、吐出タイミングパルス生成部54とを備える。
【0099】
吐出タイミングパルス生成部54は、吐出タイミングパルスを生成する前における時間情報(以下、直近時間情報)と、吐出タイミングパルスを生成する時間間隔の基準となる予め設定された基準時間情報(すなわち、時間Tsを示す情報)とを用いて第1~M調整時間delay1~Mを算出する。そして吐出タイミングパルス生成部54は、第1~M調整時間delay1~Mに基づいて、吐出タイミングパルスを出力する出力タイミングを、直近時間情報に基づいて算出されて出力タイミングの基準となる基準出力タイミングに対して、遅延させたり前倒しさせたりして出力タイミングを決定するように構成される。なお、直近時間情報は、予測時間Teを示す情報である。基準出力タイミングは、(N-1)×Te/Mで特定されるタイミングである。
【0100】
このような記録エンコーダ処理部31は、キャリッジモータ13により駆動されるキャリッジ12によって移動させられる記録ヘッド11がシートに向けてインクを吐出する吐出タイミングを示す吐出タイミングパルスを生成する場合に、キャリッジモータ13のコギング変動に起因した吐出タイミングのズレを抑制して印刷ムラの発生を抑制することができるため、画像形成装置1の画質を向上させることができる。
【0101】
また吐出タイミングパルス生成部54は、直近でエンコーダ信号が出力されてから次回にエンコーダ信号が出力されるまでの間に、複数の出力タイミングを決定するように構成される。そして吐出タイミングパルス生成部54は、複数の出力タイミングのそれぞれについて互いに独立して算出した第1~M調整時間delay1~Mに基づいて、複数の出力タイミングを決定する。このような記録エンコーダ処理部31は、複数の出力タイミングの第1~M調整時間delay1~Mを互いに独立に算出するため、画質の劣化を抑制することができる。
【0102】
以上説明した実施形態において、キャリッジモータ13は駆動対象に相当し、第1~M調整時間delay1~Mは調整量に相当し、基準回転速度は基準速度に相当する。
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0103】
第3実施形態の画像形成装置1は、吐出タイミングパルス生成部54の構成が変更された点が第1実施形態と異なる。
図11に示すように、第3実施形態の吐出タイミングパルス生成部54は、調整時間算出部81と、吐出時間算出部82と、パルス生成部83とを備える。
【0104】
調整時間算出部81は、周期カウンタ53から時間情報が入力される度に、調整時間delayを式(3)で算出する。
delay = (Ts-Te)/2 ・・・(3)
吐出時間算出部72は、周期カウンタ53から時間情報が入力される度に、入力された時間情報が示す時間(すなわち、予測時間Te)と、調整時間算出部71から入力された調整時間delayとを用いで、N番目の吐出タイミングパルスの第N吐出時間ET_Nを式(4)で算出する。
【0105】
ET_N = Td + (N-1)×Te/M + delay ・・・(4)
パルス生成部83は、エッジ検出信号が入力してから第N吐出時間ET_Nが経過した後に、N番目の吐出タイミングパルスを生成して出力する。
【0106】
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合における吐出タイミングを説明する。
図12に示すように、
図12における枠F21,F22内の図は
図9と同一であるため説明を省略する。
【0107】
記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より大きくなる場合において、調整時間に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F41内の図で示すように、時刻t111、時刻t112、時刻t113、時刻t114に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0108】
時刻t111は、第1吐出時間ET_1に対応する。時刻t112は、第2吐出時間ET_2に対応する。時刻t113は、第3吐出時間ET_3に対応する。時刻t114は、第4吐出時間ET_4に対応する。
【0109】
なお、時刻t115は、次のエッジ検出信号が入力されるタイミングに対応する。すなわち、時刻t115から、新たに算出された第1,2,3,4吐出時間ET_1,2,3,4が経過する毎に記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0110】
次に、コギングによりキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合における吐出タイミングを説明する。
図13に示すように、
図13における枠F31,F32内の図は
図10と同一であるため説明を省略する。
【0111】
記録ヘッド11が基準速度で移動しており且つキャリッジモータ回転速度が基準回転速度より小さくなる場合において、調整時間に基づいて吐出タイミングパルスを生成すると、枠F42内の図で示すように、時刻t121、時刻t122、時刻t123、時刻t124に、記録ヘッド11からインクが吐出される。
【0112】
時刻t121は、第1吐出時間ET_1に対応する。時刻t122は、第2吐出時間ET_2に対応する。時刻t123は、第3吐出時間ET_3に対応する。時刻t124は、第4吐出時間ET_4に対応する。
【0113】
このように構成された記録エンコーダ処理部31は、複数の出力タイミングのそれぞれについて互いに同一の調整時間delayに基づいて、複数の出力タイミングを決定する。このような記録エンコーダ処理部31は、出力タイミングの決定を簡略化することができ、記録エンコーダ処理部31の処理負荷を低減することができる。
【0114】
以上説明した実施形態において、調整時間delayは調整量に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0115】
[変形例1]
上記実施形態では、時間情報が、キャリッジモータ13が所定量回転するのに要するクロック数である形態を示した。しかし、時間情報は、キャリッジモータ13が所定量回転するのに要する時間を示す情報であればよい。
【0116】
[変形例2]
上記実施形態では、エンコーダ信号が検出される毎に、エンコーダ逓倍数Mの吐出タイミングパルスを出力する形態を示した。しかし、吐出タイミングパルス生成部54は、新たに検出されたエンコーダ信号に基づいて生成された吐出タイミングパルスが出力されるまでは、等間隔で吐出タイミングパルスを設定し続けるようにしてもよい。このような記録エンコーダ処理部31は、吐出タイミングパルスの出力が中断してしまう事態の発生を抑制することができるため、画質の劣化を抑制することができる。
【0117】
[変形例3]
上記実施形態では、基準時間情報が、予め設定された基準回転速度でキャリッジモータ13を回転駆動させる場合にキャリッジモータ13が所定量回転するのに要する時間またはクロック数である形態を示した。しかし、基準時間情報は、出力タイミングを決定する前に算出された少なくとも2つの時間情報を平均した時間またはクロック数であってもよいし、少なくとも2つの時間情報を用いて最小二乗法で算出した時間またはクロック数であってもよい。
【0118】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0119】
上述した記録エンコーダ処理部31の他、当該記録エンコーダ処理部31を構成要素とするシステム、当該記録エンコーダ処理部31としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、パルス生成方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
モータが予め設定された所定量回転する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した前記検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、
前記検出信号出力部から前記検出信号が出力される度に、直近で出力された前記検出信号と、前回出力された前記検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成された時間情報算出部と、
少なくとも2つの前記時間情報に基づいて、前記タイミングパルスを出力する出力タイミングを決定するように構成されたタイミング決定部と
を備え、
少なくとも2つの前記時間情報のうち、最も早く出力された前記検出信号である第1検出信号に基づいて算出された前記時間情報を第1時間情報とし、最も遅く出力された前記検出信号である第2検出信号に基づいて算出された前記時間情報を第2時間情報として、前記第1時間情報が算出された第1算出タイミングと、前記第2時間情報が算出された第2算出タイミングとの時間差は、前記モータが、コギング距離に相当する角度以上回転するのに要する時間より長いパルス生成装置。
[項目2]
項目1に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報は、前記モータが前記所定量回転するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
[項目3]
項目1または項目2に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、少なくとも2つの前記時間情報の平均に基づいて、前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
[項目4]
項目3に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、少なくとも2つの前記時間情報の平均を示す平均時間内で等間隔になるように前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
[項目5]
項目4に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング決定部は、新たに検出された前記検出信号に基づいて生成された前記タイミングパルスが出力されるまでは、前記等間隔で前記出力タイミングを設定し続けるパルス生成装置。
[項目6]
項目1~項目5の何れか1項に記載のパルス生成装置であって、
前記第1算出タイミングと前記第2算出タイミングとの時間差は、前記モータが1回転するのに要する時間に等しいパルス生成装置。
[項目7]
駆動対象が予め設定された所定量駆動する度に検出信号を出力するように構成された検出信号出力部から取得した前記検出信号に基づいて、タイミングパルスを生成するパルス生成装置であって、
前記検出信号出力部から前記検出信号が出力される度に、直近で出力された前記検出信号と、前回出力された前記検出信号との時間間隔を示す時間情報を算出するように構成された時間情報算出部と、
前記タイミングパルスを生成する前における前記時間情報である直近時間情報と、前記タイミングパルスを生成する時間間隔の基準となる予め設定された基準時間情報とを用いて調整量を算出し、前記調整量に基づいて、前記タイミングパルスを出力する出力タイミングを、前記直近時間情報に基づいて算出されて前記出力タイミングの基準となる基準出力タイミングに対して、遅延させたり前倒しさせたりして前記出力タイミングを決定するように構成されたタイミング調整部と
を備えるパルス生成装置。
[項目8]
項目7に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報は、前記駆動対象が前記所定量駆動するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
[項目9]
項目7または項目8に記載のパルス生成装置であって、
前記基準時間情報は、予め設定された基準速度で前記駆動対象を駆動させる場合に前記駆動対象が前記所定量駆動するのに要する時間またはクロック数であるパルス生成装置。
[項目10]
項目7または項目8に記載のパルス生成装置であって、
前記基準時間情報は、前記出力タイミングを決定する前に算出された少なくとも2つの前記時間情報を平均した時間またはクロック数であるパルス生成装置。
[項目11]
項目7~項目10の何れか1項に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング調整部は、直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に、複数の前記出力タイミングを決定するように構成され、
前記タイミング調整部は、複数の前記出力タイミングのそれぞれについて互いに独立して算出した前記調整量に基づいて、複数の前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
[項目12]
項目11に記載のパルス生成装置であって、
直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に出力される前記タイミングパルスの数をMとし、前記時間情報が示す時間をTeとし、前記基準時間情報が示す時間をTsとし、N番目の前記出力タイミングの前記調整量をdelayNとして、
前記タイミング調整部は、N番目の前記出力タイミングの前記調整量を、「delayN = (N-1)×(Ts-Te)/M」で算出するパルス生成装置。
[項目13]
項目7~項目10の何れか1項に記載のパルス生成装置であって、
前記タイミング調整部は、直近で前記検出信号が出力されてから次回に前記検出信号が出力されるまでの間に、複数の前記出力タイミングを決定するように構成され、
前記タイミング調整部は、複数の前記出力タイミングのそれぞれについて互いに同一の前記調整量に基づいて、複数の前記出力タイミングを決定するパルス生成装置。
[項目14]
項目13に記載のパルス生成装置であって、
前記時間情報が示す時間をTeとし、前記基準時間情報が示す時間をTsとし、前記調整量をdelayとして、
前記タイミング調整部は、前記調整量を、「delay = (Ts-Te)/2」で算出するパルス生成装置。
[項目15]
項目1~項目6の何れか1項に記載のパルス生成装置であって、
前記モータは、シートに向けてインクを吐出する吐出器を移動させる搬送装置を駆動し、
前記タイミングパルスは、前記吐出器によって前記インクが吐出されるタイミングを示すパルス生成装置。
[項目16]
項目7~項目14の何れか1項に記載のパルス生成装置であって、
前記駆動対象は、シートに向けてインクを吐出する吐出器を移動させる搬送装置を駆動し、
前記タイミングパルスは、前記吐出器によって前記インクが吐出されるタイミングを示すパルス生成装置。
【符号の説明】
【0120】
13…キャリッジモータ、14…ロータリエンコーダ、31…記録エンコーダ処理部、53…周期カウンタ、54…吐出タイミングパルス生成部