(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163820
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】船舶の機関制御装置
(51)【国際特許分類】
B63H 21/22 20060101AFI20231102BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20231102BHJP
G05G 5/00 20060101ALI20231102BHJP
G05G 9/047 20060101ALI20231102BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B63H21/22 Z
B63H20/00 820
G05G5/00 D
G05G9/047
G05G1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074983
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 紳也
(72)【発明者】
【氏名】根本 全章
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA04
3J070AA07
3J070BA03
3J070BA12
3J070BA34
3J070BA41
3J070BA51
3J070CB37
3J070CC71
3J070DA07
3J070EA32
(57)【要約】
【課題】意図せずに操作レバーが移動しても、シフト機構やスロットル機構が作動することを防止できる機関制御装置を提供する。
【解決手段】機関制御装置11は、操作レバー21を有するコントロールユニット20と、制御部22と、ロック解除スイッチ40とを有している。操作レバー21をニュートラルの位置Nから前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置Rに移動させる前に、ロック解除スイッチ40を操作する。ロック解除スイッチ40を操作してから操作レバー21を移動させると、検出器26の出力に応じてシフト機構15が前進側シフトまたは後進側シフトに切り替わる。ロック解除スイッチ40を操作しなければ、シフトを許可する信号が出ないため操作レバー21は動くがシフト機構15は作動しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の機関を制御する機関制御装置であって、
少なくとも第1の位置と第2の位置とにわたり移動可能な操作レバーを有し、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動した状態において前記機関を第1の状態から第2の状態に切り替えるための信号を出力するコントロールユニットと
前記信号に基づいて前記機関を制御する制御部と、
ロック解除スイッチとを有し、
前記制御部は、
前記ロック解除スイッチが操作されると前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動したときに前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、
前記ロック解除スイッチが操作されなければ、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えないことを特徴とする船舶の機関制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機関制御装置において、
前記制御部は、
前記ロック解除スイッチが操作された状態が継続している間に、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動すると、前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、
前記ロック解除スイッチの操作が終わると、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えないことを特徴とする船舶の機関制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の機関制御装置において、
前記制御部は、前記ロック解除スイッチが操作されてから所定時間以内に前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動した状態において、前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、
前記ロック解除スイッチが操作されてから前記所定時間を超えると、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えないことを特徴とする船舶の機関制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の機関制御装置において、
前記第1の位置がニュートラルの位置であり、
前記第2の位置がシフト位置であり、
前記制御部は、
前記操作レバーが前記ニュートラルの位置から前記シフト位置に移動した状態において、前記機関のシフト機構をニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替える機関制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の機関制御装置において、
前記第1の位置がニュートラルの位置であり、
前記第2の位置がシフト位置であり、
前記制御部は、
前記操作レバーがニュートラルの位置を境に前進側のシフト位置と後進側のシフト位置とに移動可能であり、
前記ロック解除スイッチが操作されないかまたは前記ロック解除スイッチが操作されてから前記所定時間を超えた状態において、前記操作レバーのシフト位置が切り替わったときに前記機関をアイドリング状態とする機関制御装置。
【請求項6】
請求項3に記載の機関制御装置において、
前記ロック解除スイッチが操作されたときに前記所定時間に応じて作動する表示器を有した機関制御装置。
【請求項7】
請求項3に記載の機関制御装置において、
前記所定時間を変更可能な機関制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の機関制御装置において、
前記船舶の接岸時または離岸時に前記所定時間を変更可能な機関制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の機関制御装置において、
互いに隣り合って配置された複数の前記コントロールユニットからなる操船部を有し、
前記操船部に前記ロック解除スイッチが配置された機関制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載の機関制御装置において、
前記船舶の互いに異なる位置に配置された複数の前記コントロールユニットと、
前記複数のコントロールユニットのいずれか1つを選択して使用する際に操作するセレクトスイッチとを有し、
前記セレクトスイッチが前記ロック解除スイッチを兼ねた機関制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載の機関制御装置において、
前記コントロールユニットの前記操作レバーがジョイスティックからなり、シフト制御およびスロットル制御を行なう際に前記ジョイスティックを前後方向に移動させ、操舵を行なう際に前記ジョイスティックを左右方向に移動させる機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば船舶の機関のシフト操作やスロットル操作等の制御を行なうための機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の機関のシフト操作とスロットル操作とを操作レバーによって行なう機関制御装置が知られている。例えば特許文献1あるいは特許文献2に、操作レバーを備えた機関制御装置が記載されている。前記操作レバーは操船者によって操作される。特許文献2のような電気式の機関制御装置は操作レバーの位置を検出するためのセンサを有し、センサの出力に応じてシフト機構やスロットル機構が動作するように構成されている。
【0003】
前記操作レバーをニュートラルの位置から前進側のシフト位置に移動させると、前記センサの出力に応じて機関のシフト機構がニュートラルから前進側シフトに切り替わる。操作レバーをさらに前進側に移動させると、前記センサの出力に応じてスロットル機構が動作し、機関のスロットル制御がなされる。前記操作レバーをニュートラルの位置から後進側のシフト位置に移動させると、前記センサの出力に応じて機関のシフト機構がニュートラルから後進側シフトに切り替わる。操作レバーをさらに後進側に移動させるとスロットル機構が動作し、機関のスロットル制御がなされる。
【0004】
電気式の機関制御装置は、機械式の機関制御装置と比較して操作レバーを動かす力が小さくて済むという利点がある。このため操作は楽であるが、操作レバーが操船者の意図に反してニュートラルの位置からシフト位置に切り替わってしまうことが懸念される。このため操作レバーをニュートラルの位置に保持するために、ロック部材を設けるのが通例である。操作レバーをニュートラルの位置からシフト位置に移動させる際、ロック解除部材によってロック部材を解除位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-166225号公報
【特許文献2】特開2018-120525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記操作レバーに前記ロック解除部材が設けられている場合、操作レバーをニュートラルの位置からシフト位置に移動させるためには、操船者が手でロック解除部材を操作する必要がある。このため状況に応じて操作レバーを速やかに移動させたい場合に、操作性しにくいことがある。特に複数の機関制御装置が互いに隣り合って配置された操船部を有する場合、各々の操作レバーにロック部材とロック解除部材が設けられていると、状況によっては操作に手間取ることが考えられる。
【0007】
このため操作性を優先させる場合、操作レバーにロック部材とロック解除部材を設けないことが望まれる。しかしそのような機関制御装置は、操作レバーがニュートラルの位置にあるときに、意図せずに操船者の身体の一部が操作レバーに触れるなどしたときに、操作レバーが前進側あるいは後進側のシフト位置やスロットル域に移動してしまうおそれがある。
【0008】
この発明の目的は、操作レバーを有する電気式の機関制御装置において、意図せずに機関のシフト機構などが作動することを回避できる機関制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態は、船舶の機関を制御する機関制御装置であって、操作レバーを有するコントロールユニットと、制御部と、ロック解除スイッチとを具備している。前記操作レバーは、少なくとも第1の位置(例えばニュートラルの位置)と、第2の位置(例えばシフト位置)とにわたり移動可能である。前記コントロールユニットは、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動した状態において前記機関を制御するための信号(例えばシフト制御のための信号)を出力する。前記制御部は、前記信号に基づいて前記機関を第1の状態(例えばニュートラル)から第2の状態(例えば前進側シフトまたは後進側シフト)に切り替える。
【0010】
前記制御部の1つの実施形態では、前記ロック解除スイッチが操作されると前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動したときに前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える。前記ロック解除スイッチが操作されなければ、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることを禁止する。
【0011】
前記制御部の他の実施形態では、前記ロック解除スイッチが操作された状態が継続している間に、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動すると、前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える。前記ロック解除スイッチの操作が終わると、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることを禁止する。
【0012】
前記制御部のさらに別の実施形態では、前記ロック解除スイッチが操作されてから所定時間以内に前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動した状態において、前記機関を第1の状態から第2の状態に切り替える。前記ロック解除スイッチが操作されてから所定時間を超えると、前記操作レバーが前記第1の位置から前記第2の位置に移動しても前記機関を第1の状態から第2の状態に切り替えることを禁止する。
【0013】
1つの実施形態の機関制御装置では、前記第1の位置が前記操作レバーのニュートラルの位置であり、前記第2の位置が前記操作レバーのシフト位置である。前記制御部は、前記操作レバーが前記ニュートラルの位置から前記シフト位置に移動した状態において、前記機関のシフト機構をニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替える。
【0014】
前記操作レバーが前記ニュートラルの位置を境に前進側のシフト位置と後進側のシフト位置とに移動可能でもよい。前記制御部は、前記ロック解除スイッチが操作されないか、または前記ロック解除スイッチが操作されてから前記所定時間を超えた状態において、前記操作レバーのシフト位置が切り替わったときに前記機関をアイドリング状態にしてもよい。
【0015】
1つの実施形態の機関制御装置において、前記ロック解除スイッチが操作されたときに前記所定時間に応じて作動する表示器を有してもよい。前記所定時間を変更できるようにしてもよい。また船舶の接岸時または離岸時に前記所定時間を変更できるようにしてもよい。
【0016】
1つの実施形態の機関制御装置は、互いに隣り合って配置された複数の前記コントロールユニットからなる操船部を有し、前記操船部に前記ロック解除スイッチが配置されてもよい。他の実施形態の機関制御装置では、船舶の互いに異なる位置に配置された複数の前記コントロールユニットと、前記複数のコントロールユニットのいずれか1つを選択して使用する際に操作するセレクトスイッチとを有し、前記セレクトスイッチが前記ロック解除スイッチを兼ねてもよい。
【0017】
前記操作レバーがジョイスティックからなり、シフト制御およびスロットル制御を行なう際に前記ジョイスティックを前後方向に移動させ、操舵を行なう際に前記ジョイスティックを左右方向に移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の機関制御装置によれば、操作レバーが操船者の意図しない位置に移動しても機関のシフトが切り替わったりスロットル域になったりすることを回避できる。また操作部材を機械的に固定するためのロック部材とロック解除部材とを備えた従来の機関制御装置と比較して操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る機関制御装置と船舶の一部を示す側面図。
【
図2】
図1に示された機関制御装置による処理の一部を示したフローチャート。
【
図3】
図1に示された機関制御装置による処理の他の一部を示したフローチャート。
【
図4】第3の実施形態に係る機関制御装置による処理の一部を示すフローチャート。
【
図5】同機関制御装置による処理の他の一部を示すフローチャート。
【
図6】同機関制御装置による処理の一例でシフトの切り替え時の処理を示すフローチャート。
【
図7】第4の実施形態に係る機関制御装置の斜視図。
【
図8】第5の実施形態に係る機関制御装置と船舶を示す側面図。
【
図9】第6の実施形態に係る機関制御装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
以下に第1の実施形態に係る機関制御装置について
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、船舶10の一部と、機関制御装置11(拡大して示す)とを模式的に表わした側面図である。船舶10の後部に、機関の一例である船外機12が搭載されている。船外機12は、エンジン13を動力として回転するプロペラ14と、プロペラ14の回転方向を切り替えるシフト機構15と、シフト用アクチュエータ16と、スロットル機構17と、スロットル用アクチュエータ18などを含んでいる。
【0021】
機関制御装置11は、操作レバー21を有するコントロールユニット20と、マイクロコンピュータ等の電気的構成を有する制御部22とを含んでいる。コントロールユニット20は船体等の取付面に配置されている。操作レバー21は前後方向に回動可能であり、シフト機構15とスロットル機構17とを操作する際に使用される。
【0022】
コントロールユニット20の内部に、操作レバー21に連動して回転する軸部25と、軸部25の回転方向の位置を検出する検出器26と、軸部25の回転に抵抗を与えるディテント機構27などが設けられている。検出器26の一例は、ロータリーエンコーダ等を用いた角度センサであり、操作レバー21の傾き、すなわち軸部25の回転方向の位置を検出する。
【0023】
操作レバー21は、ニュートラルの位置(中立位置)Nを境に、前進側のシフト位置Fおよびスロットル域S1と、後進側のシフト位置Rおよびスロットル域S2とに回動させることができる。ニュートラルの位置Nは、操作レバー21の第1の位置の一例である。前進側のシフト位置Fと後進側のシフト位置Rとは、それぞれ、操作レバー21の第2の位置の一例である。
【0024】
操作レバー21がニュートラルの位置Nにあるとき、検出器26の出力に応じてシフト機構15がニュートラル状態となる。シフト機構15のニュートラル状態は、機関の第1の状態の一例である。操作レバー21がニュートラルの位置Nから前進側のシフト位置Fに移動すると、検出器26の出力(前進側のシフト信号)に基づいて、シフト機構15が前進側シフトに切り替わる。操作レバー21がニュートラルの位置Nから後進側のシフト位置Rに移動すると、検出器26の出力(後進側のシフト信号)に基づいて、シフト機構15が後進側シフトに切り替わる。シフト機構15の前進側シフトと後進側シフトは、それぞれ、機関の第2の状態の一例である。
【0025】
ディテント機構27の保持部材27aは、操作レバー21がニュートラルの位置N、または前進側のシフト位置F、または後進側のシフト位置Rにあるときに、操作レバー21の動きに抵抗を与える。すなわち操作レバー21がニュートラルの位置N、または前進側のシフト位置F、または後進側のシフト位置Rにあるときに抵抗が生じるため、振動等の小さな力で操作レバー21が動くことはない。しかし操作レバー21にある程度の力が加われば、力が加わった方向に操作レバー21が移動する。
【0026】
検出器26は配線部材28を介して制御部22に接続されている。検出器26は、軸部25の回転位置(操作レバー21の角度)に応じた信号を制御部22に出力する。制御部22は情報処理回路を含み、検出器26から出力されたシフト制御用の信号とスロットル制御用の信号とに基づいて、シフト用アクチュエータ16とスロットル用アクチュエータ18とを制御する。シフト用アクチュエータ16は、ケーブル等の力伝達部材30を介してシフト機構15を駆動する。スロットル用アクチュエータ18は、ケーブル等の力伝達部材31を介してスロットル機構17を駆動する。
【0027】
本実施形態の機関制御装置11はロック解除スイッチ40を備えている。ロック解除スイッチ40を設ける位置は問わないが、操作性を考慮すると、例えばコントロールユニット20の外面に設けられているとよい。しかしロック解除スイッチ40が操作レバー21や計器板などに配置されてもよい。
【0028】
ロック解除スイッチ40の近傍に表示器41が設けられている。表示器41の一例は、ロック解除スイッチ40がオン操作されてから所定時間T1にわたり点灯あるいは点滅するランプである。表示器41の他の例として、ロック解除スイッチ40のオン・オフ操作に応じて鳴動するブザーでもよい。ロック解除スイッチ40と表示器41とは、それぞれ配線部材42,43を介して制御部22に接続されている。
【0029】
以下に第1の実施形態に係る機関制御装置11の作用の一例について、
図2と
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
[ニュートラルからのシフト・スロットル制御]
【0030】
図2中のステップM1においてエンジン13が始動する。ステップM2においてシフト機構15はニュートラル、スロットル機構17はアイドリング状態である。操船者の意思でシフト機構15を前進側シフトあるいは後進側シフトに切り替える際に、操船者がロック解除スイッチ40をオン操作する。
【0031】
ステップM3では、ロック解除スイッチ40がオン操作されたか否かが判断される。ロック解除スイッチ40がオンされた場合(ステップM3において“YES”)、ステップM4に進む。ステップM4では、シフト信号の受付けを許可するモード(ロック解除)となり、
図3のステップM6に進む。
【0032】
ロック解除スイッチ40がオン操作されていなければ(ステップM3において“NO”)、ステップM5に進む。ステップM5では、シフト信号の受付けを拒否するモード(ロック状態)となる。しかしこのロック状態のもとでも、操作レバー21を前後方向に動かすことができる。
【0033】
図3中のステップM6では、操作レバー21がニュートラルの位置Nからシフト位置(前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置R)に移動したか否かが判断される。操作レバー21がシフト位置に移動した場合(ステップM6において“YES”)、ステップM7に進む。ステップM7において、シフト機構15がニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替わる。操作レバー21がシフト位置に移動していない場合(ステップM6において“NO”)、ステップM8に進みシフト機構15がニュートラルに維持される。
【0034】
このように操船者は、シフト機構15をニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替える際、ロック解除スイッチ40をオン操作してから操作レバー21を前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置Rに移動させる。ロック解除スイッチ40をオン操作しない場合、操作レバー21は動くがシフト信号が出ないため、シフト機構15は作動しない。このため操船者の意図に反して操作レバー21がニュートラルの位置Nから前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置Rに切り替わったとしても、シフト機構15が作動してしまうことを回避できる。
【0035】
操作レバー21がニュートラルの位置Nから前進側のシフト位置Fに移動すると、軸部25が第1の方向に回転することにより、前進側のシフトのための信号が検出器26から制御部22に出力される。この信号に基づいてシフト用アクチュエータ16が作動し、シフト機構15がニュートラルから前進側シフトに切り替わる。
【0036】
操作レバー21がニュートラルの位置Nから後進側のシフト位置Rに移動すると、軸部25が第2の方向に回転することにより、後進側のシフトのための信号が検出器26から制御部22に出力される。この信号に基づいてシフト用アクチュエータ16が作動し、シフト機構15がニュートラルから後進側シフトに切り替わる。
【0037】
エンジン13を増速させるためにスロットル機構17を操作する場合、操作レバー21をスロットル域(
図1中のS1またはS2)まで移動させる。
図3中のステップM9において、操作レバー21がスロットル域(S1またはS2)に移動したか否かが判断される。操作レバー21がスロットル域に移動すると(ステップM9において“YES”)、ステップM10に進む。
【0038】
ステップM10では、操作レバー21の角度に応じてスロットル機構17が操作され、エンジン13の増速あるいは減速がなされる。すなわち操作レバー21を前進側のスロットル操作域S1(
図1に示す)に移動させると、操作レバー21の角度に応じて軸部25が第1の方向にさらに回転するため、操作レバー21の角度に応じてスロットル制御のための信号が検出器26から制御部22に出力される。この信号に基づき、スロットル用アクチュエータ18が制御され、スロットル開度に応じた回転速度でプロペラ14が回転する。
【0039】
操作レバー21を後進側のスロットル操作域S2(
図1に示す)に移動させると、操作レバー21の角度に応じてスロットル制御のための信号が検出器26から制御部22に出力される。この信号に基づき、スロットル用アクチュエータ18が制御され、スロットル開度に応じた回転速度でプロペラ14が回転する。
【0040】
図3中のステップM9において、操作レバー21がスロットル域に移動していないと判断された場合(ステップM9において“NO”)、スロットル機構17は操作されない。このためエンジン13はアイドリング状態となる(ステップM11)。
【0041】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のフローチャートは、第1の実施形態のフローチャート(
図2および
図3)と実質的に共通である。ただし第2の実施形態の場合、
図2中のステップM3において、ロック解除スイッチ40がオン操作された状態が「継続しているか否か」が判断される。
【0042】
ロック解除スイッチ40がオン操作され、その状態が継続している間(ステップM3において“YES”)に、操作レバー21を第1の位置(例えばニュートラル)から第2の位置(前進側または後進側のシフト)に移動させると、機関が第1の状態(ニュートラル)から第2の状態(前進側または後進側のシフト)に切り替わる。ロック解除スイッチ40のオン操作が終わると、操作レバー21が第1の位置から第2の位置に移動しても、機関が第1の状態から第2の状態に切り替わることが禁止される。すなわちシフト信号の受付けが拒否される。
【0043】
[第3の実施形態]
以下に第3の実施形態に係る機関制御装置11の作用の一例について、
図4から
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
[ニュートラルからのシフト・スロットル制御]
図4はニュートラルからのシフト・スロットル制御の処理の前半の部分を示している。
図5はシフト・スロットル制御の処理の後半の部分を示している。
【0044】
図4中のステップST1では、操作レバー21がニュートラルの位置N(
図1に示す)にある。電気系の電源がオンになると、ステップST2において初期値(例えば所定時間T1)が設定される。所定時間T1は予め設定されたデフォルトの固定値でもよいし、必要に応じてマニュアル操作により入力された値でもよい。ステップST3ではエンジン13が始動し、アイドリング状態(ステップST4)となる。
【0045】
操船者の意思でシフト機構15を前進側シフトあるいは後進側シフトに切り替える際に、操船者がロック解除スイッチ40をオン操作する。
ステップST5において、ロック解除スイッチ40がオン操作されたか否かが判断される。ロック解除スイッチ40がオンされた場合(ステップST5において“YES”)、ステップST6に進む。ロック解除スイッチ40がオン操作されていなければ(ステップST5において“NO”)、ステップST4に戻る。
【0046】
ステップST6では、操作レバー21がニュートラルの位置Nからシフト位置(前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置R)に移動したか否かが判断される。操作レバー21がシフト位置に移動した場合(ステップST6において“YES”)、ステップST7に進む。操作レバー21がシフト位置に移動していない場合(ステップST6において“NO”)、ステップST8に進む。ステップST8では、シフト機構15がニュートラルに維持されるとともに、スロットル機構17がアイドリング状態となる。
【0047】
ステップST7において、所定時間T1(例えば3秒)を超えているか否かが判断される。ロック解除スイッチ40がオン操作されてから所定時間T1を超えていれば(ステップST7において“NO”)、ステップST9に進む。ステップST9では、シフト用の信号の受付けを拒否するモード(ロック状態)となる。このためシフト機構15がニュ-トラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替わることが禁止される。
【0048】
ステップST7において、所定時間T1以内であると判断されれば(ステップST7において“YES”)、
図5中のステップST10に進む。ステップST10では、シフト用の信号の受付けを許可するモード(ロック解除)となる。このためシフト機構15がニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替わる(ステップST11)。
【0049】
このように操船者は、シフト機構15をニュートラルから前進側シフトまたは後進側シフトに切り替える際、ロック解除スイッチ40をオン操作したのち所定時間T1以内に、操作レバー21を前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置Rに移動させる。すなわちロック解除スイッチ40を所定時間T1以内に操作しなければシフト機構15は作動しない。
【0050】
このため操船者の意図に反して操作レバー21がニュートラルの位置Nから前進側のシフト位置Fまたは後進側のシフト位置Rに切り替わったとしても、シフト機構15が作動してしまうことを回避できる。ロック解除スイッチ40がオン操作されてから所定時間T1を経過するまでは、表示器41を点灯あるいは鳴動させることにより、操船者に所定時間T1以内であることを報知してもよい。
【0051】
エンジン13を増速させるためにスロットル機構17を操作する場合、操作レバー21をスロットル域(
図1中のS1またはS2)まで移動させる。
図5中のステップST12において、操作レバー21がスロットル域(S1またはS2)に移動したか否かが判断される。操作レバー21がスロットル域に移動すると(ステップST12において“YES”)、ステップST13に進む。
【0052】
ステップST13では、操作レバー21の角度に応じてスロットル機構17が操作され、エンジン13の増速あるいは減速がなされる。
ステップST12において、操作レバー21がスロットル域に移動していないと判断された場合(ステップST12において“NO”)、スロットル機構17は操作されない。このためエンジン13はアイドリング状態となる(ステップST14)。
【0053】
ステップST15において、操作レバー21がニュートラルの位置Nに戻されたと判断されると(ステップST15において“YES”)、上記の一連のシフト・スロットル処理が終了となり、初期の状態(
図4中のステップST4)に戻る。操作レバー21がニュートラルの位置Nに戻されていなければ(ステップST15において“NO”)、ステップST13に戻り、スロットル制御が継続される。
【0054】
[シフト急変対策]
操船者の意図と無関係に、操作レバー21のシフト位置(前進側と後進側)が急に切り替わる可能性も否定できない。例えば操作レバー21が前進側のシフト位置Fにあり、しかもスロットル機構17が増速状態にあるとき、乗船者の身体が意図せずに操作レバー21に当たるなどして、操作レバー21のシフト位置が切り替わることが考えられる。このため本実施形態の機関制御装置11は、
図6に示すようにシフトの急変に対する安全策を講じてもよい。
【0055】
操船者がシフトを切り替える場合、切り替える前にロック解除スイッチ40をオン操作する。そして所定時間T1(例えば3秒)以内に、操作レバー21のシフト位置を切り替える。
【0056】
図6中のステップST20では、シフト機構15が前進側シフトまたは後進側シフトとなっている。このときスロットル機構17は、エンジン13の回転をアイドリング時よりも増速させている。
図6中のステップST21において、ロック解除スイッチ40がオン操作されたか否かが判断される。ロック解除スイッチ40がオン操作された場合(ステップST21において“YES”)、ステップST22に進む。
【0057】
ステップST22では、操作レバー21のシフト位置が切り替わったか否かが判断される。操作レバー21のシフト位置が切り替わったと判断されれば(ステップST22において“YES”)、ステップST23に進む。操作レバー21のシフト位置が切り替わっていないと判断されれば(ステップST22において“NO”)、ステップST24に移り、シフト機構15のシフトが切り替わらずに維持される。
【0058】
ステップST23において、所定時間T1以内か否かが判断される。ロック解除スイッチ40がオン操作されてから所定時間T1以内であれば(ステップST23において“YES”)、ステップST25に進む。ステップST25では、シフト制御のための信号の受付けを許可するモード(ロック解除)となる。このため操作レバー21の位置に応じてシフト機構15が前進側シフトまたは後進側シフトに切り替わる。
【0059】
このとき操作レバー21がスロットル域S1またはS2に移動していれば、操作レバー21の角度に応じたスロットル制御のための信号が検出器26から出力される。この信号に基づいてスロットル機構17が作動し、エンジン13の増速あるいは減速がなされる。
【0060】
ステップST23において、所定時間T1を超えていると判断されれば(ステップST23において“NO”)、ステップST26に進む。ステップST26では、シフト機構15とスロットル機構17の作動を禁止するモード(ロック状態)となる。このため操作レバー21が操船者の意図しない方向に切り替わっても、シフト機構15は切り替わらないし、エンジンが増速することもない。このため機関はアイドリング状態となる。
【0061】
例えば接岸時や離岸時のように、操作レバー21のシフト位置(前進側または後進側)を頻繁に切り替える可能性がある場合、所定時間T1を延長するなど、所定時間T1を変更してもよい。船舶の接岸時、離岸時を判断する手段としては、手動のスイッチによって制御部22に接岸時または離岸時であることを入力してもよい。あるいは船舶に配置した距離センサ等による情報に基づいて、桟橋と船舶との相対位置の変化を判断してもよい。
【0062】
[第4の実施形態]
図7は第4の実施形態に係る機関制御装置100を示している。この機関制御装置100は、互いに隣り合って配置された複数(例えば2台)のコントロールユニット20A,20Bからなる操船部101を有している。一方のコントロールユニット20Aの操作レバー21aは、第1の機関を制御するために使用される。他方のコントロールユニット20Bの操作レバー21bは、第2の機関を制御するために使用される。操作レバー21a,21bの構成と作用は、第1の実施形態で説明した操作レバー21と共通でよい。
【0063】
コントロールユニット20A,20Bを有する操船部101にロック解除スイッチ40と表示器41とが配置されている。ロック解除スイッチ40および表示器41の構成と作用は、第1の実施形態で説明したロック解除スイッチ40および表示器41と共通であるため説明を省略する。
【0064】
本実施形態の機関制御装置100(
図7に示す)は、複数のコントロールユニット20A,20Bのうち少なくとも1つを使用してシフト制御およびスロットル制御を行なう際に、ロック解除スイッチ40をオン操作する。ロック解除スイッチ40をオン操作すると、シフトの切り替えを許可するロック解除モードとする。ロック解除スイッチ40をオン操作しなければ、シフトの切り替えを禁止するロックモードとなる。なお各々のコントロールユニット20A,20Bに、それぞれロック解除スイッチ40と表示器41とが配置されていてもよい。
【0065】
[第5の実施形態]
図8は、第5の実施形態に係る機関制御装置110を示している。この機関制御装置110は、複数(例えば2台)のコントロールユニット20A,20Bが互いに異なる位置に配置されている。例えば第1のコントロールユニット20Aが船舶115の操船室に配置されている。第2のコントロールユニット20Bはデッキ付近に配置されている。第1のコントロールユニット20Aの操作レバー21aによって、機関116のシフト制御とスロットル制御を行なうことができる。第2のコントロールユニット20Bの操作レバー21bも、機関116のシフト制御とスロットル制御を行なうことができる。
【0066】
図8に示されたように、第1のコントロールユニット20Aまたはその近傍に、第1のコントロールユニット20Aを選択して使用する際に操作する第1のセレクトスイッチ117が設けられている。第2のコントロールユニット20Bまたはその近傍に、第2のコントロールユニット20Bを選択して使用する際に操作する第2のセレクトスイッチ118が設けられている。これらセレクトスイッチ117,118がロック解除スイッチ40を兼ねていてもよい。セレクトスイッチ117,118とは別にロック解除スイッチ40が設けられていてもよい。
【0067】
[第6の実施形態]
図9は第6の実施形態に係る機関制御装置120を示している。この機関制御装置120のコントロールユニット20Cは、操作レバーとして機能するジョイスティック121を備えている。ジョイスティック121は、機関のシフト制御およびスロットル制御を行なう際に、
図9中に矢印X1,X2で示す前後方向に移動させる。また船舶の操舵を行なう際に、矢印Y1,Y2で示す左右方向に移動させる。ジョイスティック121を斜め方向に移動させると、スロットル制御と操舵を同時に行うことができる。
【0068】
ジョイスティック121を前後方向に移動させると、第1の実施形態で説明した操作レバー21(
図1に示す)と同様に、ジョイスティック121の角度に応じてシフト操作およびスロットル操作を行なうことができる。ジョイスティック121を左右方向に移動させると、ジョイスティック121の角度に応じて舵が動く。このようなジョイスティック121を備えたコントロールユニット20Cに、第1の実施形態で説明したロック解除スイッチ40と表示器41が設けられていてもよい。
【0069】
本発明に係る機関制御装置を電動船舶に使用することも可能である。電動船舶は電動モータを動力源とする機関によってプロペラを回転させる。電動モータは電流が流れる方向に応じて回転方向が変わるため、シフト機構が不要である。このため電動船舶用の操作レバーは、前進側のスロットル域と後進側のスロットル域とに移動すればよい。それ以外の構成と作用について、電動船舶用の機関制御装置は、第1の実施形態で説明した機関制御装置と同様でもよい。
【0070】
なお本発明を実施するに当たり、機関制御装置が使用される船舶や機関など、本発明を構成する各要素の構成や配置などの具体的な態様を必要に応じて変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
10…船舶、11…機関制御装置、12…船外機(機関の一例)、13…エンジン、15…シフト機構、16…シフト用アクチュエータ、17…スロットル機構、18…スロットル用アクチュエータ、20,20A,20B,20C…コントロールユニット、21,21a,21b…操作レバー、22…制御部、26…検出器、27…ディテント機構、40…ロック解除スイッチ、41…表示器、100…機関制御装置、101…操船部、110…機関制御装置、117,118…セレクトスイッチ、120…機関制御装置、121…ジョイスティック。