(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163841
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/028 20190101AFI20231102BHJP
B32B 38/10 20060101ALI20231102BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231102BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20231102BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B32B7/028
B32B38/10
B32B7/06
B09B3/40 ZAB
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075027
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田切 俊
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【テーマコード(参考)】
4D004
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA10
4D004AB05
4D004BA07
4D004CA12
4D004CA22
4D004DA06
4D004DA20
4F100AK01
4F100AK01A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CC00
4F100CC00B
4F100EJ30
4F100EJ30B
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4F100JA03
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4F401AA09
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4F401BA06
4F401CA34
4F401CA46
4F401CB09
4F401FA01Y
4F401FA20Y
(57)【要約】
【課題】幅狭形状を有する材料にも適用可能であり、かつ、従来技術と比べて効率的である、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、熱収縮させる工程の後に熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、
前記熱収縮性積層体に引張力を印加しながら前記熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、
前記熱収縮させる工程の後に前記熱収縮性積層体から前記インキ層を除去する工程と、を含む、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記熱収縮性積層体は、長尺状態であり、長尺状態の前記熱収縮性積層体の長手方向に前記引張力を印加する、請求項1に記載の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記熱収縮させる工程は、熱水または温水に前記熱収縮性積層体を浸漬させる工程を含む、請求項1に記載の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮させる工程の温度は、前記インキ層を除去する工程の温度と同一または前記インキ層を除去する工程の温度よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)等のプラスチック製品が広く利用されている。省資源的な観点や環境的な観点等から、PETボトル等のプラスチック製品を再利用することが強く求められている。
【0003】
商品情報等の表示のための印刷が施されたインキ層を備えるプラスチック製のシュリンクラベル(包装材、包材)がPETボトルの胴部に装着されることがあるが、近年、このシュリンクラベルのリサイクル技術が確立されてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、アルカリ脱離できるインキ層が印刷されたシュリンクラベルからのインキ層の除去方法が記載されている。この方法によれば、使用後のシュリンクラベルからインキ層を脱離することができる。
【0005】
特許文献1には、また、アルカリ脱離する前に熱水や熱風でシュリンクラベルを事前収縮させることで、アルカリ脱離時におけるラベル片の収縮を抑制し、インキ層を脱離しやすくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シュリンクラベルを作製する際、インキ層が設けられた端材(耳かすと呼ばれる)が工場において必ず発生する。また、一部のシュリンクラベルは長期間使用されないまま在庫品として保管されることがある。端材や未使用在庫品としてのシュリンクラベルは、従来、埋立てやサーマルリサイクル等でそのまま廃棄されていたが、近年の環境対応への高まりから、端材や未使用在庫品としてのシュリンクラベルから効率的に再生樹脂を製造することが要望されている。
【0008】
しかしながら、シュリンクラベルは温水や熱アルカリ水溶液でインキを除去しようとすると、その熱によって、端部が幅方向にカールしてインキ層を抱き込んでしまう状態となり、アルカリ脱離の段階でアルカリ水溶液がインキ層に十分に到達できなくなる場合があるという不具合があった。
【0009】
そこで、従来技術では処理することが困難であった、たとえば端材を含む、幅狭形状を有する材料にも適用可能であり、かつ、従来技術と比べて効率的である、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで開示された実施形態によれば、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、熱収縮させる工程の後に熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程と、を含む、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
ここで開示された実施形態によれば、幅狭形状を有する材料にも適用可能であり、かつ、従来技術と比べて効率的である、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法のフローの一例を図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法のフローの一例を図解する図を示す。以下、
図1を参照して、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法について説明する。
【0014】
<熱収縮性積層体を準備する工程>
まず、
図1のS1において、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程を行う。工程S1は、たとえば、まず、シュリンクラベル製造工場にて、インキ層を備えたシュリンクラベル原反の前駆体を、所定の幅で断裁することにより行うことができる。シュリンクラベル原反の前駆体は、シュリンクラベルがその長手方向に複数連接してなるシュリンクラベル原反が、幅方向に1列または複数列連接したもので、幅方向両端の少なくともいずれか一方に印刷の見当を合わせるための機械的読取記号(トロン等)が印刷されている。これを長手方向に裁断して1つまたは複数のシュリンクラベル原反と、インキ層を有する長尺状態(ウェブ状態)の端材とが回収される。シュリンクラベル原反は、さらにシュリンクラベルに加工されて、PETボトルの胴部に装着するために使用され得る。インキ層を備えた端材は、シュリンクラベル原反の前駆体の幅方向両端の少なくともいずれか一方に存在していた部分であり、幅が狭く、PETボトルの胴部に装着される商品情報等の表示のためのラベルとしての使用には適さない。工程S1において、インキ層を備えた端材が回収され得る。
【0015】
また、工程S1において、未使用在庫品としてのシュリンクラベル原反が回収されてもよい。たとえば、シュリンクラベル原反の前駆体の断裁によって製造されたものの、使用されずに保管されていたシュリンクラベル原反を回収してもよい。さらに、欠点検知器や出荷前検査等によって印刷不良であることが発見された、出荷できない不良印刷品であるシュリンクラベル原反を回収してもよい。
【0016】
また、工程S1において、ロール状態のシュリンクラベル原反を任意の大きさおよび/または形状に切断することによって得られるシュリンクラベルを回収してもよい。この場合、シュリンクラベルは、PETボトル等の容器に装着される前の筒状に形成されたものであってもよい。
【0017】
さらに、工程S1において、一度PETボトル等の容器に装着した後にPETボトルから剥離することによって得られるシュリンクラベルを回収してもよい。また、市場回収したPETボトルからシュリンクラベルを剥離したものを回収してもよい。
【0018】
本願において、シュリンクラベル原反の前駆体とは、シュリンクラベル原反およびシュリンクラベルの原料であって、シュリンクラベルがその長手方向に複数連接してなるシュリンクラベル原反が、幅方向に1列または複数列連接したプラスチック積層体をいう。シュリンクラベル原反の前駆体は、熱収縮性であり、インキ層を備える。また、シュリンクラベル原反とは、シュリンクラベル原反の前駆体を断裁することによって得られる、プラスチック積層体をいう。また、シュリンクラベルとは、シュリンクラベル原反を切断することによって得られる、商品情報等の表示のためにPETボトルの胴部に装着することが可能である、筒状または枚葉状態のプラスチック積層体をいう。シュリンクラベルは、PETボトルの胴部に装着される前のプラスチック積層体およびPETボトルの胴部に装着された後のプラスチック積層体の両方を含む。さらに、熱収縮性積層体とは、シュリンクラベル原反、シュリンクラベル原反の製造に伴って生じる端材、シュリンクラベル等を含む、インキ層を備えた、熱収縮性のプラスチック積層体をいう。
【0019】
このように、工程S1において、端材、シュリンクラベル原反、およびシュリンクラベル等を含む材料を回収することにより、インキ層を備えた熱収縮性積層体が準備される。
【0020】
熱収縮性積層体は、特定方向に連続した長尺状態(ウェブ状態)であってもよい。長尺状態とは、幅方向と長手方向とを有する熱収縮性積層体が、長手方向長さよりも短い幅方向長さを有し、長手方向に連続して延在するような状態をいう。長尺状態の熱収縮性積層体として、たとえばシュリンクラベル原反および端材が挙げられる。引張力を印加しやすいという観点から、熱収縮性積層体は長尺状態であることが好ましい。引張力の印加については後に詳述する。
【0021】
熱収縮性積層体は、ロール状態であってもよい。たとえば、端材は、ロール状態であってもよい。また、シュリンクラベル原反は、ロール状態であり得る。保管し易いという観点から、熱収縮性積層体、端材またはシュリンクラベル原反をロール状態にする場合がある。
【0022】
熱収縮性積層体は、枚葉状態であってもよい。枚葉状態の熱収縮性積層体として、たとえば、PETボトル等の容器に装着される前のシュリンクラベル、またはPETボトル等の容器から剥離して回収されたシュリンクラベルが挙げられる。
【0023】
熱収縮性積層体は、筒状であってもよく、シート状であってもよい。
熱収縮性積層体は、熱収縮前のものであってもよく、熱収縮後のものであってもよい。
【0024】
熱収縮性積層体は、主に一軸方向に熱収縮するものであってもよい。たとえば、熱収縮性積層体は、横一軸収縮の熱収縮性積層体であってもよい。ここで、横一軸収縮の熱収縮性積層体とは、主に幅方向に収縮する熱収縮積層体のことをいう。また、熱収縮性積層体がロール状態であるとき、横収縮がロール等の供給部より供給されるシート状の収縮ラベルの送り方向(流れ方向)に対して直交する方向の収縮を意味し、縦収縮がロール等の供給部より供給されるシール状の収縮ラベルの送り方向(流れ方向)に沿う方向の収縮を意味する場合、横一軸収縮の熱収縮性積層体とは、横収縮が縦収縮に比して大きくて、主たる収縮方向が横収縮である熱収縮性積層体のことをいう。熱収縮性積層体は、縦一軸収縮の熱収縮性積層体であってもよい。縦一軸収縮の熱収縮性積層体とは、主に長手方向に収縮する熱収縮積層体、または、縦収縮が横収縮に比して大きくて主たる収縮方向が縦収縮である熱収縮性積層体のことをいう。熱収縮性積層体は、二軸方向に熱収縮するものであってもよく、たとえば、横収縮および縦収縮の両方が起こる熱収縮性積層体であってもよい。熱収縮性積層体は、たとえば100℃の温度環境において、最大収縮状態に到達し得る。
【0025】
熱収縮性積層体としては、たとえば、熱収縮性のプラスチック基材の少なくとも片方の表面にアルカリ水脱離性または特定の溶剤で脱離可能なインキ層を備えた熱収縮性積層体等を用いることができる。プラスチック基材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG、グリコール成分の一部がシクロヘキサンジメタノール(CHDM)やネオペンチルグリコール等で変性されたポリエチレンテレフタレート)、ポリ乳酸等からなるポリエステル系フィルム;スチレン-ブタジエンブロック共重合体等からなるスチレン系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン等のオレフィン系樹脂からなるオレフィン系フィルム;塩化ビニル樹脂からなる塩化ビニル系フィルムなどが挙げられる。これらは発泡フィルムであってもよい。また、プラスチック基材は単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。プラスチック基材の色は特に限定されず、たとえば乳白色または透明であってもよい。また、プラスチック基材は、上記の異なる材質同士のフィルムを積層させて形成されたものであってもよい。たとえば、プラスチック基材は、表層がポリエステル系樹脂、中心層がポリスチレン系樹脂を用いた積層フィルムであってもよい。
【0026】
プラスチック基材の少なくとも一方向X(主収縮方向)の熱収縮率は、各種容器等への収縮密着性の点から、たとえば、90℃の熱水に10秒浸漬した場合、30%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上である。プラスチック基材の厚さは、シュリンクラベルの取扱性等を考慮して適宜選択することができるが、たとえば10~100μm程度、好ましくは15~80μm程度とすることができる。なお、これらのプラスチック基材の数値は、PETボトル等の容器への装着前のシュリンクラベルの作製に用いられるプラスチック基材の数値である。
【0027】
プラスチック基材の表面は、インキ層との接着性を高めるため、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理を施したり、アンカーコート層を設けたりしてもよい。アンカーコート層は従来公知のアンカーコート剤等により形成することができる。
【0028】
インキ層は、熱アルカリ水溶液または特定の溶剤に溶解または膨潤して、プラスチック基材より脱離可能であればよく、たとえば油性インキ(溶媒に有機溶剤を用いた溶剤系インキを含む)または水性インキ(水分散系のエマルジョンインキを含む)のいずれかにより構成することができる。
【0029】
プラスチック基材の表面上へのインキ層の形成方法としては、たとえば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン・オフセット・トナー印刷・インクジェット等によって、プラスチック基材の表面上にインキ層を形成する方法を用いることができる。インキ層は、単層であってもよく、多層であってもよい。インキ層の厚さは用途等により適宜選択することができ、たとえば0.1~10μm程度とすることができる。またインキ層が多層である場合、インキ層全体がアルカリ可溶性または特定の溶剤に対して可溶性であってもよく、少なくともその積層構造において、最もプラスチック基材側に位置するインキ層がアルカリ可溶性または特定の溶剤に対して可溶性であればよい。
<熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程>
次に、
図1の工程S2において、インキ層を備えた熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程を行う。工程S2においては、印加される引張力の強さは、たとえば、熱収縮性積層体が弛まない程度に設定されればよい。引張力は、熱収縮性積層体の少なくとも一方向に印加される。引張力の印加方法は、特に限定されないが、たとえば、長尺状態の熱収縮性積層体の長手方向に引張力を印加する方法が挙げられる。ここで、長尺状態の熱収縮性積層体がロール状態に巻かれている場合、ロール状態の熱収縮性積層体の巻出しおよび巻取りにより引張力を印加することもできる。引張力の印加方法としては、また、枚葉状態の熱収縮性積層体の表面を表面に対して直交する方向において両方向から押さえつけることによる方法、収縮方向の寸法が変化できるような状態を維持しつつ熱収縮性積層体の収縮方向の両端を治具等で固定する方法等が挙げられる。
【0030】
長尺状態の熱収縮性積層体の長手方向に引張力を印加する方法は、たとえば、主に幅方向に熱収縮する熱収縮性積層体に対して、熱収縮性積層体の長手方向端部を互いから離れる方向に引っ張ることにより行うことができる。この場合、引張力の印加方向は、熱収縮性積層体が主に熱収縮する方向とは異なる方向であり、たとえば、熱収縮性積層体が主に熱収縮する方向と直交する方向である。引張力は、70N~150N程度であることが好ましい。熱収縮性積層体の長手方向に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させることができ、これにより、熱収縮性積層体の幅方向端部のカールが抑制された状態で熱収縮性積層体の熱収縮を行うことができる。主に幅方向に収縮する熱収縮性積層体に対して長手方向に引張力を印加する場合、熱収縮性積層体の収縮方向と引張力の印加方向とが異なることから、引張力の印加方向における熱収縮性積層体の収縮変形を考慮する必要がないため、装置が簡単でよいという利点がある。また、収縮方向には引張力がかからないので、熱収縮積層体を十分に収縮変形させることができる。
【0031】
長尺状態の熱収縮性積層体の長手方向に引張力を印加する方法は、主に長手方向に熱収縮する熱収縮性積層体に対して、熱収縮積層体の長手方向端部を互いから離れる方向に引っ張ることにより行われてもよい。この場合、引張力の印加方向と熱収縮性積層体の熱収縮する方向とが同じであることから、引張力の印加方向における熱収縮性積層体の収縮変形を考慮する必要があるため、熱収縮性積層体の収縮変形に追従させながら一定の引張力を印加する必要がある。
【0032】
ロール状態の熱収縮性積層体の巻出しおよび巻取りによる引張力の印加は、たとえば、ロールtoロール状態で熱収縮性積層体の長手方向端部を巻き出し、所定の長さだけ送り出した後、巻き取ることによって行うことができる。巻出し速度および巻取り速度は、10m/分~500m/分程度であることが好ましい。幅方向に収縮し、長手方向の寸法変化が小さい熱収縮性積層体の場合には、巻出し速度は巻取り速度と同じまたは巻取り速度より遅いことが好ましい。引張力は、70N~150N程度であることが好ましい。上述の巻出し速度および巻取りの速度の数値は、例示であって限定ではない。この場合、引張力の印加方向は、熱収縮性積層体の長手方向(送り方向および流れ方向に沿う方向)に対応する。
【0033】
ロール状態の熱収縮性積層体の巻出しから巻取りまでの間に熱収縮が行われてもよい。たとえば、ロール状態の横一軸収縮の熱収縮性積層体が熱収縮される場合、引張力は、好ましくは、熱収縮性積層体の長手方向(送り方向および流れ方向に沿う方向)に印加され、熱収縮性積層体の幅方向(送り方向および流れ方向に直交する方向)には印加されない。換言すれば、引張力は、熱収縮性積層体が熱収縮する方向とは異なる方向、たとえば、熱収縮性積層体が熱収縮する方向と直交する方向に印加される。主に送り方向に直交する方向に収縮する横一軸収縮の熱収縮性積層体に対して、送り方向に沿う方向に引張力を印加する場合が好ましい。この場合、収縮方向と異なる引張力の印加方向における熱収縮性積層体の収縮変形を考慮する必要がないため、装置が簡単でよい。
【0034】
枚葉状態の熱収縮性積層体の表面を表面に対して直交する方向において両方向から押さえつけることによる引張力の印加は、たとえば、水平方向に延在する枚様状態の熱収縮性積層体を2つの網状体で鉛直方向上下から押さえつけることによって行うことができる。枚葉状態の熱収縮性積層体を網状体で押さえつけた状態で、熱収縮性積層体を熱収縮させてもよい。押さえつけられる枚葉状態の熱収縮性積層体は、1枚であってもよく、複数枚であってもよいが、1枚の枚葉状態の熱収縮性積層体を押さえつける場合、複数枚の枚葉状態の熱収縮性積層体を押さえつける場合よりも熱収縮性積層体の熱収縮の制御が容易であり得る。引張力は、熱収縮性積層体が収縮しようとする方向とは異なる方向に熱収縮性積層体が引っ張られるように印加される。たとえば、枚葉状態の熱収縮性積層体が表面の中心に向かって収縮しようとするとき、2つの網状体で熱収縮性積層体を押さえつけることによって、熱収縮性積層体の収縮変形が抑制されるように、熱収縮性積層体の中心から離れる方向に引張力が印加される。
【0035】
熱収縮性積層体の表面を網状体で押さえつける方法によれば、熱収縮性積層体の表面において、網状体によって押さえつけられる部分と、網状体によって押さえつけられない部分とを設けることができる。これにより、熱が加わった際に熱収縮性積層体に発生する熱収縮力に対して、押さえつけられている部分があることにより抗力が発生するので、網状体で押さえつけられない収縮しやすい部分にも引張力(抗力)を印加させることができるので好ましい。このように、熱収縮性積層体の表面を網状体で押さえつける方法によれば、熱収縮積層体の表面上に一様に引張力を印加するのではなく、熱収縮積層体の熱収縮力を利用して引張力を選択的に部分的に印加することができる。
【0036】
収縮方向の寸法が変化できるような状態を維持しながら熱収縮性積層体の収縮方向の両端を治具等で固定することによる引張力の印加は、たとえば、収縮方向が幅方向の熱収縮性積層体の場合、熱収縮性積層体の幅方向の両端において、熱収縮性積層体の表面を表面に対して直交する方向において両方向から所定重さを有する治具で押さえつけることによって、熱によって熱収縮性積層体に熱収縮力が加わり収縮しようとする際に、治具の所定重さによって収縮させない方向に働く抗力(収縮方向と反対方向の荷重分の抗力)として幅方向に引張力を印加することにより行うことができる。
【0037】
工程S2における熱収縮方法は、後述するインキ層の除去において、熱収縮性積層体が収縮してカールする量を抑制できる方法であれば特に限定されない。熱収縮方法としては、たとえば、熱水に熱収縮性積層体を浸漬させる方法、熱風トンネルに熱収縮性積層体を通過させる方法、過熱水蒸気を熱収縮性積層体に当てる方法、熱収縮性積層体を熱板に接触させる方法、または熱収縮性積層体を熱ローラーで挟む方法が挙げられる。
【0038】
熱水に熱収縮性積層体を浸漬させることによって熱収縮性積層体を熱収縮させる場合には、たとえば、熱水槽中の熱水に熱収縮性積層体を10秒~20秒程度浸漬させることにより行うことができる。熱水の温度は、たとえば70℃~98℃程度である。また、たとえば、熱収縮性積層体に熱水のシャワーをかけることにより、熱収縮性積層体を熱収縮させてもよい。本願において、熱水は、熱水および温水の両方を含む。
【0039】
熱風トンネルに熱収縮性積層体を通過させることによって熱収縮性積層体を熱収縮させる場合には、たとえば、入口と出口とを備える熱風トンネルに熱収縮性積層体を通過させることにより行うことができる。熱風の温度は、たとえば150℃~200℃程度であり、熱収縮性積層体が熱により溶けることのない範囲で設定される。比熱の関係から、熱風の温度は熱水の温度よりも高くなり得る。
【0040】
過熱水蒸気を熱収縮性積層体に当てることによって熱収縮性積層体を熱収縮させる場合には、たとえば、過熱水蒸気トンネルに熱収縮性積層体を通過させることにより行うことができる。過熱水蒸気の温度は、たとえば、101~120℃程度が例示される。
【0041】
熱収縮性積層体を熱板に接触させる方法によって熱収縮性積層体を熱収縮させる場合には、たとえば、熱収縮性積層体を1枚の熱板上に接触させることにより行われてもよく、または、熱収縮性積層体を熱収縮性積層体の表面に対して直交する方向において両方向から熱板でプレスすることにより行われてもよい。
【0042】
なお、熱水を用いた方法と熱風を用いた方法とを比較した場合、以下の1)~3)の観点から、熱収縮性積層体を熱収縮させる方法として、熱風トンネルに熱収縮性積層体を通過させる方法よりも熱水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させる方法を用いることが好ましい。
【0043】
1)熱水に浸漬させる方法の方が温度制御が容易である。
2)熱水に浸漬させる方法の方が装置のフットプリントが小さい。
【0044】
3)熱水に浸漬させる方法の方が熱収縮性積層体の収縮ムラが生じにくく、均一に収縮可能である。
【0045】
熱収縮させる工程の温度は後述のインキ層を除去する工程の温度と同一またはインキ層を除去する工程の温度よりも高くなるようにすることが好ましい。熱収縮させる工程の温度が高い場合、インキ層を除去する工程において用いられる処理液に熱収縮性積層体を浸漬した際にさらなるカールが発生することを抑制できるため、インキ層の効率的な脱離を実現することができる。
【0046】
熱収縮の温度は、熱収縮時の熱収縮性積層体の表面温度であることを意味する。したがって、熱水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させることによってシュリンクラベルを熱収縮させる場合には、熱収縮の温度は、熱水の温度に置き換えることができる。
【0047】
熱収縮性積層体が収縮可能な最大収縮率は、たとえば最大90%、好ましくは最大85%である。最大収縮率が90%であるとは、収縮前の熱収縮積層体の幅を100%としたときに熱収縮性積層体の幅の減少率が90%であり、収縮後の熱収縮性積層体の幅が収縮前の熱収縮性積層体の幅の10%であることを意味する。熱収縮性積層体の収縮率の値は、例示であって限定ではない。
【0048】
熱収縮性積層体は、熱収縮させる工程において、最大収縮率に到達するまで収縮されてもよい。また、熱収縮性積層体は、熱収縮させる工程において、収縮能力を残していてもよく、残留する収縮能力は、たとえば、5%程度であってもよい。熱収縮後の熱収縮性積層体の残留する収縮能力が10%以下になるように熱収縮性積層体を収縮させることが好ましい。ここでいう残存する収縮能力は、熱収縮させる工程を経た積層体を90℃の熱水に10秒間浸漬したときの当該積層体の熱収縮率をいう。また、残留する収縮能力は、後のインキ層を除去する工程における熱収縮性積層体の収縮変形を考慮して設定してもよい。たとえば、熱収縮性積層体に収縮能力を残した状態で、インキ層を除去する工程において熱収縮性積層体を処理液に浸漬した場合、熱収縮性積層体がさらに熱収縮した結果、熱収縮性積層体の端部がカールしてインキ層を抱き込んでしまう状態となることは回避されるべきであり得る。別の表現をすれば、インキ層を除去する工程において熱収縮性積層体がさらに熱収縮した場合でも、インキ層の除去が困難とならない程度の収縮変形を伴う、たとえば収縮後もインキ層を備える面が十分に露出する状態を維持することができる場合であれば、熱収縮させる工程において熱収縮性積層体に収縮能力が残留することは許容され得る。また、インキ層を除去する工程における熱収縮性積層体の収縮変形の制御は、熱収縮させる工程の温度およびインキ層を除去する工程の温度の関係を適切に設定することによっても行うことができる。インキ層を除去する工程において熱収縮性積層体がさらに熱収縮することを抑制するために、熱収縮させる工程の温度がインキ層を除去する工程の温度と同一またはインキ層を除去する工程の温度よりも高く設定されることが好ましい。
【0049】
熱収縮させる工程における熱収縮性積層体収縮率が比較的大きい場合、熱収縮性積層体の幅がより小さくなることによって、熱収縮性積層体のかさ密度がより小さくなり、後のインキ層を除去する工程においてより多くの熱収縮性積層体を処理液に浸漬させることができるため、効率の観点から有利である。また、インキ層を除去する工程で熱が加えられる場合であっても、その熱によるカール等の変形を抑制できるため好ましい。
【0050】
<第1の破砕工程(破砕片の作製)>
次に、
図1の工程S3において、任意選択的に、熱収縮後の熱収縮性積層体を破砕機により破砕してもよい。工程S3により、熱収縮性積層体の破砕片が作製される。熱収縮性積層体を破砕する方法は、当該破砕後により生成する破砕片の大きさが熱収縮後の熱収縮性積層体の大きさよりも小さくなる方法であれば特に限定されない。たとえば、熱収縮後の熱収縮性積層体は、後述するインキ層の除去において、破砕片からインキ層を効率的に除去することができる程度の大きさ(たとえば数cm角)に破砕され得る。破砕片の大きさは、残留する収縮能力を考慮して設定されてもよい。たとえば、熱収縮後の熱収縮性積層体に収縮能力が未だ残っている場合、破砕片が小さすぎると、インキ層を除去する工程において破砕片を処理液へ浸漬させたときに破砕片がさらに収縮して全体的にカールしたような形状になり、インキ層の除去に不適になる恐れがあるため、ある程度の大きさを保って破砕片を作製してもよい。
【0051】
<熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程>
次に、
図1のS4において、熱収縮された熱収縮性積層体(破砕片を含む)からインキ層を除去する。インキ層の除去は、たとえば、熱収縮性積層体を処理液に浸漬することによって行うことができる。処理液は、インキ層を溶解させるものであれば特に限定されない。処理液としては、たとえば、アルカリ水溶液、高級アルコールなどの溶剤、または界面活性剤含有アルカリ水溶液が挙げられる。界面活性剤含有アルカリ水溶液は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系を含むが、アニオン系が好ましい。
【0052】
アルカリ水溶液は、熱収縮性積層体を浸漬させることにより、熱収縮性積層体からインキ層を除去することが可能であれば特に限定されず、アルカリ性物質を含有するアルカリ性の水溶液であれば特に限定されない。アルカリ水溶液としては、たとえば、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム(Na2CO3)等のアルカリ金属炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等のアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液、またはアンモニア水等を用いることができる。
【0053】
アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、インキ層の脱離能、操作性、または作業性等を損なわない範囲で適宜選択することができる。アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、たとえば0.1~10重量%程度、好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは1~3重量%程度である。
【0054】
高級アルコールの具体例として、たとえば、インフィニティ株式会社製「ペイントソルブ」が挙げられる。高級アルコールは一般的に沸点が高いため、温浴槽で使用することが可能である。
【0055】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウム-ホルムアルデヒド縮合物、スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム等のスルホコハク酸ジアルキルエステル塩などのスルホン酸型アニオン系界面活性剤;ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族モノカルボン酸塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシロイルグルタミン酸塩などのカルボン酸型アニオン系界面活性剤;硫酸ドデシルナトリウム等の硫酸アルキル塩などの硫酸エステル型アニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。界面活性剤のアルカリ水中における濃度は、例えば0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~3重量%程度である。
【0056】
アルカリ水溶液中に、界面活性剤、特にアニオン系界面活性剤を含有させると、インキ層の脱離が著しく促進される。これは、界面活性剤の作用により、アルカリ水溶液がインキ層中に浸透しやすくなり、インキ層が速やかに軟化するためと考えられる。
【0057】
処理液への浸漬は、たとえば、熱収縮性積層体を、温度調節可能な温浴槽中に注がれたアルカリ水溶液に浸漬する方法が好ましい。アルカリ水溶液を用いたインキ層の除去は、たとえば、以下(1)または(2)のいずれかの処理により行うことができる。
【0058】
(1)1槽処理
当該処理は、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に熱収縮性積層体を浸漬させながら攪拌することにより行なうことができる。処理に要する時間は、攪拌速度、アルカリ水溶液に対する熱収縮性積層体の投下量などにより異なるが、30秒~20分程度である。当該処理によれば、アルカリ水溶液中において、プラスチック基材とインキ層とを効率的に分離することができる。
【0059】
上述のように、本実施形態においては、熱収縮させる工程の温度は、インキ層を除去する工程の温度と同一またはインキ層を除去する工程の温度よりも高く設定されることが好ましい。インキ層を除去する工程の温度が熱収縮の温度よりも高い場合には、熱収縮後の熱収縮性積層体に収縮能力が未だ残っているとき、処理液への浸漬中に熱収縮性積層体がさらに熱収縮して、インキ層の除去が困難になるほど熱収縮性積層体の端部がカールしてしまう場合があるためである。インキ層を除去する工程の温度は、インキ層が除去されることとなる熱収縮性積層体の表面温度であることを意味する。したがって、インキ層を除去する工程の温度は、熱収縮性積層体が浸漬させられる処理液の温度に置き換えることができる。インキ層を除去する工程において、熱収縮性積層体からインキ層を効率的に除去する観点からは、処理液の温度は65℃以上であることが好ましい。なお、処理液の温度の上限は理論上は100℃であり、より好ましくは処理液の温度は85℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは処理液の温度は80℃以上90℃以下である。たとえば、熱収縮させる工程の温度が90℃で、インキ層を除去する工程が90℃以下であるとき、熱収縮性積層体から十分にインキ層を除去することができる。
【0060】
熱収縮性積層体からインキ層を除去した後のアルカリ水溶液は廃液として廃棄処理されてもよく、インキ層除去用のアルカリ水溶液として再利用されてもよい。
【0061】
(2)2槽処理
当該処理は、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に熱収縮性積層体を30秒~20分程度浸漬させた後、熱アルカリ槽から熱収縮性積層体を取り出し、取り出した熱収縮性積層体を、水槽中の水に浸漬させながら攪拌することにより行うことができる。アルカリ水溶液の好ましい温度(アルカリ脱離の温度)、種類は、上述の(1)1槽処理に用いられるアルカリ水溶液と同様である。水槽中の水の温度は特に制限されないが、意図しない熱収縮性積層体の収縮を避ける観点から、アルカリ脱離の温度よりも低い温度であることが好ましく、使用エネルギーの観点からは、室温程度(27℃前後)であることが好ましい。
【0062】
当該処理によれば、アルカリ水溶液中に、熱収縮性積層体が静かに浸漬される。これにより、アルカリ水溶液中において、熱収縮性積層体からのインキ層の完全な分離を抑制しつつ、両者の密着性を低下させることができる。なお静かに浸漬されるとは、アルカリ水溶液が攪拌されない、または上記両者の完全な分離が起こらないような、極めて緩やかに攪拌される状態を意味する。そして、続く水中への浸漬および攪拌により、水中において、プラスチック基材とインキ層とを分離することができる。
【0063】
熱収縮性積層体を浸漬した後のアルカリ水溶液は廃液として廃棄処理されてもよく、アルカリ脱離用のアルカリ水溶液として再利用されてもよい。2槽処理の場合、1槽処理と比してアルカリ水溶液の特性の変化が少ないため、より効率的にアルカリ水溶液を再利用することができる。なおアルカリ水溶液の特性の変化としては、たとえばインキ層の多量の混入などが挙げられる。
【0064】
次に、プラスチック基材とインキ層とを分離する。具体的には、たとえば、相対的に大きな開口を有する第1の網で熱収縮性積層体からインキ層が除去された後のプラスチック基材を捕集し、相対的に小さな開口を有する第2の網でプラスチック基材よりも小さいインキ層を捕集する。
【0065】
その後、第1の網で捕集されたプラスチック基材は、たとえばペレット等のプラスチック製品の製造用のプラスチック原料として再利用することができる。また、新しい熱収縮性積層体の原料にプラスチック基材を混ぜ込むことによって、熱収縮性積層体として再利用することもできる。一方、第2の網で捕集されたインキ層は、たとえばサーマルリサイクル工程で再利用することができ、または、インキとしてリサイクルすることができる。
【0066】
上記の説明は、アルカリ水溶液を用いた処理についてなされたが、アルカリ水溶液に代えて高級アルコールやアニオン系界面活性剤含有アルカリ水溶液を用いた場合においても、同様に熱収縮性積層体からインキ層を除去することができる。
【0067】
また、一般に、アルカリ性の水溶液の激しい攪拌は危険を伴うが、本実施形態によれば、カールの程度が小さいため、激しい攪拌を伴わずとも、アルカリ性水溶液がラベルの表面全体に接触することができ、もって熱収縮性積層体からのインキ層の除去が可能となる。
【0068】
<第2の破砕工程(フラフの生成)>
次に、
図1の工程S5において、任意選択的に、捕集されたプラスチック基材を破砕機により破砕して、フラフを生成してもよい。プラスチック基材の破砕は、得られたフラフの輸送効率が向上するという点で有利である。本願において、フラフとは、インキ層が除去されたプラスチック基材を破砕することによって得られるプラスチック片であり、ペレット状の再生樹脂の原料をいう。
【0069】
<フラフをリペレットする工程>
その後、
図1の工程S6において、任意選択的に、フラフをリペレットしてもよい。フラフをリペレットする前に、フラフに付着した水分を乾燥させてもよい。フラフをリペレットすることより、フラフ状の再生樹脂原料ではなく、ペレット状の再生樹脂原料を得ることができる。ペレット状にすることで、再生樹脂原料が扱いやすい形状となる。
【0070】
実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、熱収縮させる工程の後に熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程とを含む。
【0071】
実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法は、少なくともこれらの構成を備えることによって、幅狭形状を有する材料を含む熱収縮性積層体から効率的に再生樹脂を製造することができる。
【0072】
すなわち、本実施形態においては、処理液への浸漬により熱収縮性積層体からインキ層を除去するに先立って、熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる。これにより、熱収縮性積層体の端部の収縮を制御することが可能となる。本実施形態は、幅狭形状を有する(幅方向長さが小さい)熱収縮性積層体にも適用可能である。たとえば、熱収縮性積層体の長手方向に引張力を印加しながら熱収縮性積層体に熱を加えることによって、熱収縮性積層体の幅方向へのカールを抑制した状態で熱収縮性積層体を熱収縮させることができる。その結果、熱収縮された熱収縮性積層体を、たとえば、カールの程度が小さい形状とすることができ、熱収縮性積層体を処理液に浸漬させたときにおいても、さらなるカールが抑制され、熱収縮性積層体から比較的容易にインキ層を除去することができる。特に、たとえば幅の狭い端材は、幅方向にカールしやすいことから、インキ層を除去することが容易ではなかったため、従来はそのまま廃棄されていたが、本実施形態によれば、端材からインキ層を除去して、得られた再生樹脂を再利用することができる。
【0073】
一方、たとえば、熱収縮されていない幅狭形状の熱収縮性積層体をインキ層除去用の処理液に浸漬させた場合には、熱収縮性積層体の端部は処理液中で幅方向にカールしながら収縮する。特に、たとえば端材は通常幅が狭いため、処理液に浸漬させると端部が幅方向にカールしてインキ層を抱き込んでしまう状態となり、アルカリ脱離の段階でアルカリ水溶液がインキ層に十分に到達できなくなる場合がある。さらに、熱収縮性積層体からインキ層を除去するためには熱収縮性積層体を処理液にある程度の時間浸漬することを要するため、熱収縮されていない熱収縮性積層体を処理液に浸漬する間、熱収縮性積層体からインキ層を十分に除去する前に、熱収縮性積層体の端部がカールしてしまう場合がある。カールした熱収縮性積層体からインキ層を除去するのは非常に難しい。
【0074】
そこで、本実施形態においては、熱収縮性積層体を処理液に浸漬する前に、引張力を印加した状態で熱収縮性積層体を予め熱収縮させておく。すると、熱収縮性積層体の形状を端部のカールを抑制することができる。その結果、熱収縮性積層体のインキ層を備える面が露出した状態で熱収縮性積層体からインキ層を除去することができる。このように、本実施形態においては、幅狭形状を有する熱収縮性積層体からインキ層を除去することができる。
【0075】
さらに、本実施形態において、熱収縮性積層体に引張力を印加しながら熱収縮性積層体を熱収縮させる工程が、ロール状態の熱収縮性積層体の巻出しおよび巻取りによって引張力が印加されると同時に、巻出しから巻取りまでの間に熱収縮性積層体を熱収縮させることによって行われる場合、熱収縮性積層体をその長さにわたって連続的に熱収縮させることができる。熱収縮のために長尺状態の熱収縮性積層体を所定の長さにいちいち切断する必要はない。その結果、熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造効率が向上する。
【0076】
以上により、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法によれば、幅狭形状を有する材料を含む熱収縮性積層体から効率的に再生樹脂を製造することができる。
【0077】
また、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法によれば、インキ層の除去効率が格段に向上し、熱収縮性積層体から品質の良い再生樹脂原料を得ることができる。
【0078】
また、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法によれば、インキ層が除去されたフィルムを回収することができる。回収されたフィルムはフラフとして破砕された後、再度フィルムに加工されたり、他の用途へリサイクルされたりすることが可能である。
【0079】
また、実施形態の熱収縮性積層体からの再生樹脂の製造方法によれば、従来法においてはそのまま廃棄されていた端材や未使用在庫品の効率的な回収および再利用が可能になるため、環境に優しく、ESG(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance))に貢献することができる。
【0080】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の実施形態の各構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0081】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。