(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163848
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】エピタキシャル成長装置のためのパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、及びパラメータ決定プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20231102BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075038
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】503424196
【氏名又は名称】エピクルー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】山岡 智則
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA17
4K030AA20
4K030BA29
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA10
4K030GA05
4K030JA01
4K030JA02
4K030JA03
4K030JA05
4K030JA10
4K030JA12
4K030KA41
4K030LA15
5F045AA03
5F045AB02
5F045AC03
5F045AC19
5F045AD14
5F045AD15
5F045DP04
5F045DP28
5F045EK12
5F045EK13
5F045EM10
5F045GB13
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】短時間、かつ低コストでエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータの最適値を算出するパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、及びパラメータ決定プログラムを提供する。
【解決手段】1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、エピタキシャル膜の位置データと、成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付ける入力部と、位置データと、特性データと、1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値とから、1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を算出する演算部とを備え、演算部は、応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を導出し、1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を算出するパラメータ決定装置であって、
前記1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、前記エピタキシャル膜の位置データと、前記1又は複数のパラメータを用いて前記エピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付ける入力部と、
前記位置データと、前記特性データと、前記1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値とから、前記1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を算出する演算部と
を備え、前記演算部は、前記特性データをQ
j、位置をx、前記1又は複数のパラメータをP
i、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Q
jは次の式で表され、
【数1】
i=kのときのパラメータP
kをΔP
kだけ変量し、前記1又は複数のパラメータP
1、…、P
Mのうち、i≠kのときのパラメータP
iは変量させないようにしたときの前記特性Q
jの変化量ΔQ
j,kは次の式で表され、
【数2】
上式から応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を導出し、導出された前記応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を用いて、前記位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする前記1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出することを特徴とするパラメータ決定装置。
【請求項2】
前記応答関数は、1次関数であることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項3】
前記特性は、前記エピタキシャル膜の膜厚、成長速度、比抵抗値、平坦度、エッジ平坦度、裏面デポ厚さ、粗さ、Hazeのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項4】
前記パラメータはプロセスパラメータであって、キャリアガス、シリコンソースガス等のガス流量、ウェハ温度、ランプ加熱バランス、ガス流量のバランス、サセプタの回転速度、サセプタの高さのうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項5】
前記位置は、基板の中心点からの距離、円盤状の基板のエッジからの距離、円盤状の基板の円周方向の角度、又は、これらの組み合わせのうちいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項6】
前記パラメータはハードウェア設計パラメータであって、サセプタデザインにおけるポケットの高さ、及びポケット壁とウェハエッジまでの距離であり、前記特性は、ウェハエッジの膜厚であることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項7】
前記パラメータはハードウェア設計パラメータであって、エピタキシャル成長装置におけるガス流が形成される空間の高さであり、前記特性は、前記エピタキシャル膜の膜厚であることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項8】
前記パラメータはハードウェア設計パラメータであって、加熱ランプ用リフレクターの傾きであり、前記特性は、前記エピタキシャル膜の膜厚であることを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項9】
前記エピタキシャル成長装置に前記1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値を送信する成長装置制御部と、
前記特性測定装置に前記エピタキシャル膜の前記位置データを送信し、前記特性測定装置から前記エピタキシャル膜の前記特性データを受信する特性測定装置制御部と、
前記特性データが所定の範囲内から逸脱しているか否かを判定する特性分布判定部と
をさらに備え、前記特性データが前記所定の範囲内から逸脱している場合、前記1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を再度算出することを特徴とする請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項10】
基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を算出するパラメータ決定方法であって、
前記1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、前記エピタキシャル膜の位置データと、前記1又は複数のパラメータを用いて前記エピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付けるステップと、
前記特性を測定して得られた特性データをQ
j、位置をx、前記1又は複数のパラメータをP
i、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Q
jは次の式で表され、
【数3】
i=kのときのパラメータP
kをΔP
kだけ変量し、前記1又は複数のパラメータP
1、…、P
Mのうち、i≠kのときのパラメータP
iは変量させないようにしたときの前記特性Q
jの変化量ΔQ
j,kは次の式で表され、
【数4】
上式から応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を導出するステップと、
導出された前記応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を用いて、前記位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする前記1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出するステップと
を備えることを特徴とするパラメータ決定方法。
【請求項11】
基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの最適値を算出するパラメータ決定プログラムであって、
コンピュータに、
前記1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、前記エピタキシャル膜の位置データと、前記エピタキシャル膜を成膜するための1又は複数のパラメータを用いて前記エピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定されて得られた特性データとを受け付ける入力手段と、
前記特性データをQ
j、位置をx、前記1又は複数のパラメータをP
i、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Q
jは次の式で表され、
【数5】
i=kのときのパラメータP
kをΔP
kだけ変量し、前記1又は複数のパラメータP
1、…、P
Mのうち、i≠kのときのパラメータP
iは変量させないようにしたときの前記特性Q
jの変化量ΔQ
j,kは次の式で表され、
【数6】
上式から応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を導出する応答関数創出手段と、
導出された前記応答関数F
Qj(x,ΔP
k)を用いて、前記位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする前記1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出する最適値算出手段と
を実現させるためのパラメータ決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長装置のためのパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、及びパラメータ決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの処理工程の一つである、基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長工程では、
図1に示すように、エピタキシャル成長装置のチャンバ10内に設置されたサセプタ13の上に基板を載置し、チャンバ10内に反応ガスを導入し、反応ガスを加熱することにより基板上にエピタキシャル膜が生成される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
半導体ウェハの品質を評価する指標の一つとして、エピタキシャル成長工程においてはエピタキシャル膜の膜厚分布が挙げられる。半導体ウェハの品質を安定なものとするためには、エピタキシャル膜の膜厚分布を可能な限り均一にすることが求められる。
【0004】
エピタキシャル成長工程においては、キャリアガス、シリコンソースガス等のガス流量、ウェハ温度、ランプ加熱バランス、ガス流量のバランス、サセプタの回転速度、ウェハの支持台の高さ等、複数のプロセスパラメータのそれぞれの値に応じて、ウェハの半径に対する膜厚分布が変化する。エピタキシャル膜を成膜する際には、膜厚分布の変動量が所定の範囲内となるように複数のプロセスパラメータのそれぞれを最適値に調整して行う。
【0005】
従来、複数のプロセスパラメータの値の調整は、経験に基づいて行われていた。具体的には、膜厚の変動量を所定の範囲内とする、複数のプロセスパラメータの値を予測し、予測した複数のプロセスパラメータの値を用いてテスト成膜を行い、膜厚分布を計測し、その結果に基づいて複数のプロセスパラメータを微調整していた。プロセスパラメータの値の調整は、エピタキシャル成長装置のメンテナンスが行われた場合、環境、設備の微妙な変化により分布が変化した場合、及び、製造品の切り替え、即ちターゲット品質が変更された場合等のタイミングごとに行われるため、経験に基づくプロセスパラメータの値の調整は、時間がかかり、高コストであった。
【0006】
これに対して、エピタキシャル成長工程における複数のプロセスパラメータの決定方法が、特許文献2に開示されている。この方法によれば、膜厚分布指標の予測値の算出に、複数のプロセスパラメータを単位量操作した時の対象ウェハの部位毎の膜厚変化量である影響係数を用い、影響係数は過去の膜厚調整実績から対象ウェハの部位毎に膜厚偏差が最小になるように重回帰分析を行うことにより求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5343162号公報
【特許文献2】特許第6477381号公報
【特許文献3】特許第4868522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されている方法は、多くの回数の膜厚調整実績を必要とし、かつ影響係数の算出に時間がかかる。長期にわたって取得された大量のデータには、環境や設備の状態が微妙に異なった状態や、メンテナンスを挟んで設備状態が変化した状態のデータが含まれることになる。解析時点での状態とデータ取得時点での状態は異なるため、これらのデータを用いた解析では、誤差が大きくなる。従って、例えば大規模生産ラインにおいて、エピタキシャル成長装置のメンテナンスごとに複数のプロセスパラメータの最適値を導出する際にこの方法を採用することは現実的ではない。
【0009】
上記問題点を鑑み、本発明は、短時間、かつ低コストでエピタキシャル成長装置のためのパラメータの最適値を導出するパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、及びパラメータ決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの適正値を算出するパラメータ決定装置であって、1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、エピタキシャル膜の位置のデータと、1又は複数のパラメータを用いてエピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付ける入力部と、位置データと、特性データと、エピタキシャル膜を成膜するための1又は複数のパラメータのそれぞれについての複数の値とから、1又は複数のパラメータのそれぞれの適正値を算出する演算部とを備え、演算部は、特性データをQj、位置をx、1又は複数のプロセスパラメータをPi、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Qjは次の式で表され、
【0011】
【0012】
i=kのときのパラメータPkをΔPkだけ変量し、前記1又は複数のパラメータP1、…、PMのうち、i≠kのときのパラメータPiは変量させないようにしたときの前記特性Qjの変化量ΔQj,kは次の式で表され、
【0013】
【0014】
上式から応答関数FQj(x,ΔPk)を導出し、導出された応答関数FQj(x,ΔPk)を用いて、位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出することを要旨とする。
【0015】
本発明の第1の態様において、応答関数は、1次関数であってもよい。
【0016】
本発明の第1の態様において、特性は、エピタキシャル膜の膜厚、成長速度、比抵抗値、平坦度、エッジ平坦度、裏面デポ厚さ、粗さ、Hazeのいずれかであってもよい。
【0017】
本発明の第1の態様において、パラメータはプロセスパラメータであって、キャリアガス、シリコンソースガス等のガス流量、ウェハ温度、ランプ加熱バランス、ガス流量のバランス、サセプタの回転速度、サセプタの高さのうち少なくとも一つであってよい。
【0018】
本発明の第1の態様において、位置は、基板の中心点からの距離、円盤状の基板のエッジからの距離、円盤状の基板の円周方向の角度、又は、これらの組み合わせのうちいずれかであってよい。
【0019】
本発明の第1の態様において、パラメータはハードウェア設計パラメータであって、サセプタデザインにおけるポケットの高さ、及びポケット壁とウェハエッジまでの距離であり、特性は、ウェハエッジの膜厚であってよい。
【0020】
本発明の第1の態様において、パラメータはハードウェア設計パラメータであって、エピタキシャル成長装置におけるガス流が形成される空間の高さであり、特性は、エピタキシャル膜の膜厚であってよい。
【0021】
本発明の第1の態様において、パラメータはハードウェア設計パラメータであって、加熱ランプ用リフレクターの傾きであり、特性は、エピタキシャル膜の膜厚であってよい。
【0022】
本発明の第1の態様において、エピタキシャル成長装置に1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値を送信する成長装置制御部と、特性測定装置に特性を測定するエピタキシャル膜の位置データを送信し、特性測定装置からエピタキシャル膜の特性データを受信する特性測定装置制御部と、特性データが所定の範囲内から逸脱しているか否かを判定する特性分布判定部をさらに備え、特性データが所定の範囲内から逸脱している場合、1又は複数のパラメータのそれぞれの適正値を再度算出してもよい。
【0023】
本発明の第2の態様は、基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの適正値を算出するパラメータ決定方法であって、1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、エピタキシャル膜の位置のデータと、1又は複数のパラメータを用いてエピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付けるステップと、特性を測定して得られた特性データをQj、位置をx、1又は複数のパラメータをPi、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Qjは次の式で表され、
【0024】
【0025】
i=kのときのパラメータPkをΔPkだけ変量し、1又は複数のパラメータP1、…、PMのうち、i≠kのときのパラメータPiは変量させないようにしたときの特性Qjの変化量ΔQj,kは次の式で表され、
【0026】
【0027】
上式から応答関数FQj(x,ΔPk)を導出するステップと、導出された応答関数FQj(x,ΔPk)を用いて、位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出するステップとを備えることを要旨とする。
【0028】
本発明の第3の態様は、基板上にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャル成長装置のための1又は複数のパラメータのそれぞれの適正値を算出するパラメータ決定プログラムであって、コンピュータに、1又は複数のパラメータのそれぞれについて複数の値と、エピタキシャル膜の位置のデータと、1又は複数のパラメータを用いてエピタキシャル成長装置によって成膜されたエピタキシャル膜に対して、特性測定装置によって測定された特性データとを受け付ける入力手段と、特性を測定して得られた特性データをQj、位置をx、1又は複数のパラメータをPi、Mを1又は複数のパラメータの総数であって1≦i≦Mとすると、特性Qjは次の式で表され、
【0029】
【0030】
i=kのときのパラメータPkをΔPkだけ変量し、1又は複数のパラメータP1、…、PMのうち、i≠kのときのパラメータPiは変量させないようにしたときの特性Qjの変化量ΔQj,kは次の式で表され、
【0031】
【0032】
上式から応答関数FQj(x,ΔPk)を導出する応答関数創出手段と、導出された応答関数FQj(x,ΔPk)を用いて、位置の所定の範囲内における、特性の所望の定数又は所望の関数からのずれを最小にする1又は複数のパラメータの最適値をシミュレーションによって算出する最適値算出手段とを実現させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、短時間、かつ低コストでエピタキシャル成長装置のためのパラメータの最適値を導出するパラメータ決定装置、パラメータ決定方法、及びパラメータ決定プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1の実施形態に係るパラメータ決定装置の一例の模式図である。
【
図2】
図1に示すエピタキシャル成長装置の天面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るパラメータ決定装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1及び
図2に示すエピタキシャル成膜装置を使用してエピタキシャル成膜した際の成膜速度の温度依存性を示すグラフである。
【
図5】基板の中心からの距離に対する応答関数を示すグラフである。
【
図6】基板の中心からの距離に対する応答関数を示すグラフであり、
図6(a)はプロセスパラメータP
1、
図6(b)はプロセスパラメータP
2、
図6(c)はプロセスパラメータP
3についてのグラフである。
【
図7】基板の中心からの距離に対する膜厚T
c(x)とT
o(x)を示すグラフである。
【
図8】第1の実施形態に係るパラメータ決定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態に係るパラメータ決定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2の実施形態に係るパラメータ決定装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】第3の実施形態に係るエピタキシャル成長装置の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0036】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成や配置、レイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0037】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るパラメータ決定装置を以下に説明する。本実施形態に係るパラメータ決定装置の一例を
図1に示す。
図1に示すパラメータ決定装置は、エピタキシャル成長装置1と、演算装置27と、膜厚測定装置(図示しない)とから構成される。
【0038】
図1に示すエピタキシャル成長装置1は、基板上にシリコン等の膜をエピタキシャル成長させるための装置である。膜厚測定装置は、エピタキシャル成長装置1によって成長させたエピタキシャル膜の膜厚を測定するための装置である。演算装置27は、エピタキシャル成長装置1によってエピタキシャル膜を成長させる際に用いたパラメータと、膜厚測定装置によって測定されたエピタキシャル膜の膜厚値とから、エピタキシャル膜の膜厚分布の変動量が所定の範囲内となるように調整するパラメータの最適値を算出するための装置である。
【0039】
図1の左側に、エピタキシャル成長装置1の縦断面図を示す。
図2に、
図1に示すエピタキシャル成長装置1の天面図を示す。
図1及び
図2に示すエピタキシャル成長装置1は、サセプタ13と、側壁部24と、天井部11とを有する。
【0040】
サセプタ13と、側壁部24と、天井部11とからチャンバ10が形成される。天井部11は石英等の透過性を有する材料からなる。サセプタ13は円盤形状であり、円盤形状の面が水平となるように設置される。チャンバ10内部、かつサセプタ13上に基板が載置される。
【0041】
サセプタ13は、サセプタ13の下方に設置されたサセプタ支持部14に支持される。サセプタ支持部14は円柱形状をなし、円盤形状であるサセプタ13の中心とサセプタ支持部14の軸とが一致するように互いに配置される。サセプタ支持部14は軸周りに回転する回転機構を有し、この回転機構によってサセプタ13は回転可能となっている。また、サセプタ支持部14は、サセプタ13のチャンバ10内での高さを調整することができるように、上下に移動可能に構成されてもよい。
【0042】
チャンバ10の上方及び下方には、チャンバ10を加熱するための加熱手段15a~15dが設置されている。加熱手段15a~15dは、例えばハロゲンランプであるが、チャンバ10を加熱可能であればいずれの手段であってもよく、ハロゲンランプに限定されない。
【0043】
側壁部24は、上部側壁部12aと、下部側壁部12bとから構成される。上部側壁部12aと、下部側壁部12bは環状であり、いずれにも一部分に切り欠きが設けられている。この切り欠きによって、ガス流入口16aと、ガス排出口16bとが形成される。ガス流入口16aと、ガス排出口16bとは、チャンバ10に対して互いに対抗する位置に設置される。基板上にシリコン等の膜をエピタキシャル成長させるための反応ガスは、ガス流入口16aを通ってチャンバ10に流入し、基板上を基板面と平行に流れ、ガス排出口16bを通ってチャンバ10から排出される。
【0044】
サセプタ13と、側壁部24と、天井部11の外周側には、環状の挟持部25が設けられている。挟持部25には、ガス流入口16aに連通する供給路17aが、ガス排出口16bに連通する排出路17bが形成されている。
【0045】
供給路17aには、ガス導入路18が接続されており、反応ガス22、23がガス導入路18から供給路17a、ガス流入口16aを通ってチャンバ10へ送られる。同様に、排出路17bには、ガス排出路26が接続されており、チャンバ10へ送られた反応ガス22、23がガス排出口16b、排出路17b、ガス排出路26を通って排出される。
【0046】
ガス導入路18には、図示しないガス供給源が接続されている。供給源から供給される反応ガスは、例えば、トリクロロシラン、フォスフィン等の1又は複数の原料ガスと、水素等のキャリアガスを混合したガスである。ガス導入路18とガス供給源との間には、1又は複数の原料ガスと、キャリアガスのそれぞれのガス流量を調整するためのガス弁が設置されている。
【0047】
図1及び
図2に示すエピタキシャル成長装置によってエピタキシャル膜を成長させる際は、サセプタ13上に基板を設置し、ガス導入路18から反応ガスをチャンバ10内に導入したのち、加熱手段15a~15dによって基板の温度を所定の温度に設定して行う。サセプタ13上への基板の設置は、一例として、
図1の奥側、
図2の上部側から、ロボットアーム等により、設置と回収が行われてもよい。
【0048】
エピタキシャル膜を成長させる際は、サセプタ13を一定速度で回転させながら成長を行う。これにより、エピタキシャル膜の膜厚分布は、回転における偏心や基板のサセプタ内での中心位置からのずれなどが無視できる程度の場合、基板の中心点から等距離の膜厚は同じ値となり、膜厚分布は基板の中心点からの距離における膜厚とすることができる。
【0049】
エピタキシャル膜の膜厚分布の変動量が所定の範囲内となるように調整するプロセスパラメータは、1又は複数の原料ガスとキャリアガスのそれぞれのガス流量及びガス流量バランス、基板温度、加熱手段15a~15dのそれぞれの加熱バランス、サセプタ13の回転速度、サセプタ13のチャンバ10内での高さ等の、エピタキシャル成長に影響を及ぼす可能性のあるパラメータである。
【0050】
本実施形態において、エピタキシャル成長装置1は、演算装置27に接続され、演算装置27によって制御されるものとする。演算装置27は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム等、種々の電子計算機(計算リソース)である。図示の演算装置27はパーソナルコンピュータであり、演算結果の表示のためのディスプレイ、プリンター、その他、入力用のキーボード、マウス等が接続されている。
【0051】
なお、エピタキシャル成長装置1は、本実施形態においては
図1及び
図2に示す装置であるとしたが、エピタキシャル膜を成長させる装置であれば、
図1及び
図2に示す装置に限定されない。また、本実施形態においては、エピタキシャル成長装置1は演算装置27に接続されて制御されるとしたが、エピタキシャル成長装置1は演算装置27に接続されていなくてもよく、演算装置27に制御されていなくても構わない。
【0052】
膜厚測定装置は、光学的膜厚測定方法等、エピタキシャル膜の所望の位置での膜厚を測定できる装置であれば、いかなる方法による膜厚測定装置であっても構わない。本実施形態において、膜厚測定装置は、成膜されたエピタキシャル膜の膜厚を測定する。又、膜厚測定装置は、成膜途中ではなく、エピタキシャル膜を成膜後のウェハを測定する。本実施形態において、膜厚測定装置は演算装置27に接続されておらず、エピタキシャル成長装置1におけるエピタキシャル膜の成膜後、エピタキシャル成長装置1から成膜後のウェハを搬出し、膜厚測定装置において膜厚測定を行うが、これには限定されない。例えば、第2の実施形態において後述するように、膜厚測定装置は演算装置27に接続されていてもよく、エピタキシャル成長装置1からの成膜後のウェハの搬出、膜厚測定装置における膜厚測定等、演算装置27によって制御される構成でも構わない。
【0053】
図3は演算装置27の構成を示すブロック図である。演算装置27には、各種の演算実行のためのCPU301、処理用のプログラムを記憶するROM302、データ等の記憶のためのRAM303、各種のデータ及び演算結果等の記憶のための記憶部304、さらに、I/O(インプット・アウトプットインターフェース)305等が備えられる。I/O305は通信(送受信)用のインターフェース、バッファ等である。I/O305は、エピタキシャル成長装置1への制御信号の送信等に用いられCPU301と連携する。
【0054】
さらに
図3のブロック図はCPU301内の機能部を示す。CPU301の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、CPU301は各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現する。詳細には、成長装置制御部306、演算部308、入力部309、出力部310等を備える。
【0055】
成長装置制御部306は、入力部309より入力された1又は複数のプロセスパラメータの初期値、後述する演算部308によって算出されたプロセスパラメータの最適値、成膜の開始、成膜の終了、エピタキシャル膜の試験製作条件等の、エピタキシャル成長装置1を制御する信号を、I/O305を介してエピタキシャル成長装置1に送信する。
【0056】
演算部308は、エピタキシャル成長装置1によるエピタキシャル膜の成長条件のうち、プロセスパラメータの値と、膜厚測定装置による測定によって得られた膜厚値と、膜厚値に対応する基板上の位置のデータとを用いて、応答関数と、プロセスパラメータの最適値を算出する。
【0057】
入力部309は、演算装置27に接続された入力用のキーボード、マウス等から入力された、エピタキシャル成長装置1によるエピタキシャル膜の成長条件、膜厚測定装置による測定によって得られた膜厚値と、膜厚値に対応する基板上の位置のデータ等を受け付ける。膜厚測定装置による膜厚測定の条件とは、例えば、基板上のエピタキシャル膜の膜厚を測定する位置、測定範囲、等である。
【0058】
出力部310は、演算部308によって算出された応答関数と、プロセスパラメータの最適値とを演算装置27に接続されたディスプレイ、プリンター等に出力する。
【0059】
本実施形態において、エピタキシャル成長装置1は、演算装置27に接続され、演算装置27によって制御されるとしたが、エピタキシャル成長装置1が演算装置27に接続されていない場合、演算装置27は成長装置制御部306を備えていなくてもよい。この場合、入力部309において受け付けられたエピタキシャル成長装置1によるエピタキシャル膜の成長条件のうち、プロセスパラメータの値は、演算部308における応答関数と、プロセスパラメータの最適値の算出に用いられる。また、エピタキシャル成長装置1によってエピタキシャル成長させる際の成長条件は、エピタキシャル成長装置1に直接入力される。
【0060】
図1に示すパラメータ決定装置は、エピタキシャル成長装置1によってエピタキシャル膜を成膜する際の、プロセスパラメータの最適値を算出し、エピタキシャル成長装置1に算出したプロセスパラメータの最適値を入力する装置である。
【0061】
図1に示すパラメータ決定装置の動作は、以下の通りである。まず、エピタキシャル成長装置1に基板が導入されたのち、エピタキシャル膜の成膜のためのプロセスパラメータの値等の条件が入力部309から入力される。
【0062】
エピタキシャル膜の成膜のためのプロセスパラメータの値としては、まず、R個のプロセスパラメータのうち、N個のプロセスパラメータPnが選択される(1≦n≦N)。ここで、Rは、エピタキシャル成長装置1によりエピタキシャル膜を成膜するために必要な全てのプロセスパラメータの個数であり、Nは、1≦N≦Rを満たす整数である。N個のプロセスパラメータは、本実施形態に係るパラメータ決定装置によってその適正値を算出するプロセスパラメータとする。全てのプロセスパラメータのうち、N個のプロセスパラメータPnを除いた残りのプロセスパラメータは、固定された値とし、以下、固定プロセスパラメータと呼ぶ。全てのプロセスパラメータのうち、どのパラメータを最適値を算出するプロセスパラメータPnとするかは、その都度適宜選択される。
【0063】
本実施形態において、成膜は、N個のプロセスパラメータPnのそれぞれについて、Sn個ずつ値を変えて行う(Snは2以上の整数)。Snは、プロセスパラメータPnの値の個数であって、例えば、Sn=2であれば、プロセスパラメータPnの値として2つの値を決定しておき、成膜は、2つの値のそれぞれを用いて成膜する。この場合、2枚のエピタキシャル膜が成膜される。
【0064】
N個のプロセスパラメータPnのうちの1つのプロセスパラメータについて、Sn個ずつ値を変える際、残りの、(N―1)個のプロセスパラメータの値は変動させないこととする。これにより、成膜されるエピタキシャル膜の枚数Tは次の式(1)で表される。
【0065】
【0066】
以上より、エピタキシャル膜の成膜のためのプロセスパラメータの値等の条件とは、全てのプロセスパラメータのうち、最適値を算出するプロセスパラメータの種類、固定プロセスパラメータのそれぞれの値、N個のプロセスパラメータPnのそれぞれについて、Sn点ずつのそれぞれの値である。入力されたプロセスパラメータの値等の条件を、成長装置制御部306がI/O305を介してエピタキシャル成長装置1に送信し、エピタキシャル成長装置1において成膜が開始される。
【0067】
成膜が実行されたのち、特性を測定する特性測定装置に、特性測定装置制御部から、特性を測定するエピタキシャル膜の位置データが送信され、成膜されたエピタキシャル膜の特性が、特性測定装置によって、エピタキシャル膜の各点において測定される。位置データは、特性測定装置が特性を測定する際の試験体上の位置であって、試験体上の位置は、エピタキシャル膜が成膜された基板であれば、基板の中心線上の複数の点である。
【0068】
本実施形態においては、特性は膜厚であるとし、エピタキシャル膜の膜厚は膜厚測定装置によって測定される。膜厚を測定する位置は、例えば、円形状の基板の中心線上の複数の点であり、特性測定装置制御部から送信された位置データによって決定される。本実施形態において、成膜が実行されたのち、上面にエピタキシャル膜が成膜された基板は、エピタキシャル成長装置1から搬出されたのち、膜厚測定装置に導入される。膜厚測定装置に、膜厚を測定する位置が入力され、膜厚測定装置において膜厚測定が開始される。膜厚測定装置による測定によって得られた膜厚値と、膜厚値に対応する基板上の位置のデータは、演算装置27に入力される。
【0069】
成長装置制御部306は、このときのプロセスパラメータの値を、演算部308に送信する。演算部308は、膜厚値、位置データ、及びプロセスパラメータの値を用いて、以下の方法により、プロセスパラメータの最適値を算出する。成長装置制御部306は、算出したプロセスパラメータの最適値を、エピタキシャル成長装置1に送信し、エピタキシャル膜の成膜が開始される。
【0070】
本実施形態における、プロセスパラメータの最適値の算出方法を以下に説明する。試験対象の特性をQjとし、特性Qjが変数x、プロセスパラメータP1、…、PMの関数であるとし、特性Qjは、関数fQj,i(x,Pi)によって、以下の式(2)で表されるとする。
【0071】
【0072】
ここで、jは、Rを対象とする特性の数であるとすると、1≦j≦R、iは、Mを対象とするプロセスパラメータの数であるとすると、1≦i≦Mである。
【0073】
プロセスパラメータの最適な値とは、変数xの所定の範囲内において、特性Qj(x,P1,…,PM)を所望の定数又は所望の関数とするような、プロセスパラメータの値である。ここで、xは連続する変数であってもよく、又は、Nを測定数として、1<x<Nを満たす整数とする等、不連続な値であってもよい。
【0074】
特性Qjにおいて、全てのパラメータに対して、完全に整合するfQj,i(x,Pi)を求めることは、非現実的である。エピタキシャル成長に関与している全てのパラメータを特定することが困難であるとともに、例え、全てのパラメータを特定できたとしても、それらのパラメータを含む関数fQj,i(x,Pi)を算出することは非常に困難であるためである。従って、ある条件下での対象とする特性値に対して、対象とするパラメータを各々変量させた場合の各位置の応答から、個々のパラメータに対する応答を応答関数FQj(x,ΔPk)と定義し、運用するのが現実的である。実際には、複数のパラメータを変量した場合は、変量した複数のパラメータのそれぞれの応答に交互作用があり、複雑になるため、変量幅の範囲を交互作用が無視できる程度に十分小さくし、応答関数FQj(x,ΔPk)を得ることが好ましい。具体的な導出方法は以下の通りである。
【0075】
i=kのときのプロセスパラメータPkをΔPkだけ変量し、プロセスパラメータP1、…、PMのうち、i≠kのときのプロセスパラメータPiは変量させないようにしたときの特性Qjの変化量ΔQj,kは、以下の式(3)で表される。
【0076】
【0077】
プロセスパラメータP1、…、PMのうち、i=kのときのプロセスパラメータPkをΔPkだけ変量したときの特性Qjの変化量ΔQj,kを実測により得ることで、関数fQj,k(x,Pk)の差分を表す応答関数FQj(x,ΔPk)を導出することがでる。全てのプロセスパラメータP1、…、PMについて、同様にして応答関数FQj(x,ΔPk)を導出する。プロセスパラメータPkは、例えば変量ΔPkは、2×ΔPk、3×ΔPk等、複数の水準で変量して特性Qjの変化量ΔQj,kを得ることにより、より精度の高い応答関数FQj(x,ΔPk)を導出することができる。
【0078】
応答関数FQj(x,ΔPk)は、例えば、多項式、指数関数等であってもよいが、実際には、ΔPkが十分小さければ、以下の式(4)のように表すことができる。
【0079】
【0080】
係数Aj,k(x)を導出することによって、応答関数FQj(x,ΔPk)を導出することができる。
【0081】
次に、導出された応答関数FQj(x,ΔPk)を用いて、変数xの所定の範囲内における、特性Qj(x,P1,…,PM)の所望の定数又は所望の関数、すなわち特性の位置に依存した所望の分布からのずれを最小にするプロセスパラメータP1、…、PMを、勾配法等を用いたシミュレーションによって算出する。算出されたプロセスパラメータP1、…、PMがプロセスパラメータの最適値である。
【0082】
試験対象がエピタキシャル膜であるとすると、特性Qj(x,P1,…,PM)は、例えば、膜厚、成長速度、比抵抗値、平坦度、エッジ平坦度、裏面デポ厚さ、粗さ、Haze等である。変数xは基板の中心点からの距離、円盤状の基板のエッジからの距離、円盤状の基板の円周方向の角度、又は、これらの組み合わせである。プロセスパラメータP1,…,PMは、キャリアガス、シリコンソースガス等のガス流量、ウェハ温度、ランプ加熱バランス、ガス流量のバランス、サセプタの回転速度、サセプタの高さ等である。
【0083】
上記説明では、応答関数FQj(x,ΔPk)はi=kの場合について、説明しているが、複数のパラメータを変更する場合、以下に説明するように、それぞれのパラメータに対する応答関数FQj(x,ΔPk)の総和が、特性の変化量に近似できることで、シミュレーションが可能になる。本実施形態において、特性Qj(x,P1,…,PM)は膜厚分布t(x,P1,…,PM)、変数xは基板の中心点からの距離であって、基板の半径をrとすると―r≦x≦rとする。プロセスパラメータがP1、P2、P3であるときの膜厚t(x,P1,P2,P3)は、以下の式(5)で表される。
【0084】
【0085】
プロセスパラメータP1、P2、P3のうち、ひとつのプロセスパラメータをΔPkだけ変量させたときの膜厚変化Δt(x, ΔPk)は、以下の式(6)で表される(ただし、k=1、2、3)。
【0086】
【0087】
各パラメータの交互作用が無視できる場合、ΔP1、ΔP2、ΔP3を同時に変量した場合のΔt(x, P1+ΔP1, P2+ΔP2, P3+ΔP3)は下記のように表せる。
【0088】
【0089】
膜厚t(x, P1, P2, P3)の―r≦x≦rにおける膜厚の変動量が最小となるようなΔP1、ΔP2、ΔP3を決定することにより、プロセスパラメータの最適値を得ることができる。
【0090】
(第1の実験例)
本実施形態に係るパラメータ決定方法を用いて、実際にエピタキシャル成膜工程における応答関数の算出を行った。その詳細を以下に説明する。
【0091】
図1及び
図2に示すエピタキシャル成長装置を用いて、実際にエピタキシャル成膜を行った。その際、成長温度を1030℃、1080℃、1130℃の3水準で変量してエピタキシャル成膜を行った。この場合、成長温度が3パターンであるから、1パターンにつき1つのエピタキシャル膜を成膜するのであれば、得られるエピタキシャル膜の個数は3である。1パターンにつき複数枚のエピタキシャル膜を成膜し、特性値の平均値をとるようにしても構わない。
【0092】
得られたエピタキシャル膜の円形状の基板の中心線上の複数の点において、膜厚を測定し、膜厚と成長時間とから成長速度を求めた。
図4に、円形状の基板の中心線上の1点における成長速度の成長温度依存性を示す。
図4の直線Bは、データに対して最小二乗法でフィッティングした直線である。円形状の基板の中心線上の成長速度を測定した全ての位置において、成長速度の成長温度依存性が線形性を有することが確認された。
【0093】
図5に、円形状の基板の中心線上の成長速度を測定した全ての点において、データに対して最小二乗法でフィッティングした直線の傾きを測定した位置に対してプロットしたグラフを示す。データCとデータDは、それぞれ異なる2つのハードウェアについてのデータを示すものである。
【0094】
上記の実験例において、特性Q(x,P
i)は成長速度分布、プロセスパラメータP
iは成長温度、応答関数F
Qj(x,ΔP
k)は、
図4に示すデータにおいては、直線Bを表す一次関数であり、
図5は応答関数F
Qj(x,ΔP
k)の係数A(x)を位置に対して示したグラフである。
図5の横軸は、ウェハの中心を通る直径上の中心点を原点として、正方向と負方向への原点からの距離を示している。
図5の縦軸は、各位置での係数A(x)を示している。
図5の係数A(x)は成長速度の温度に対する傾き、即ち成長速度の温度に対する感度である。
【0095】
データCとデータDを比較すると、係数A(x)が異なる値となっており、ハードウェアが異なると応答関数が変わることがわかる。また、
図5の結果から、位置がウェハの中心から離れると、成長速度の温度に対する感度が高くなるということがわかる。このことは、ウェハの中心から離れた位置において、成長温度の変動に対して、成長速度が敏感に反映されることを示しており、従って、例えば、ハードウェアのデザイン変更を検証する上で、応答関数を指標の一つとすることができると考えられる。
【0096】
(第2の実験例)
次に、本実施形態に係るパラメータ決定方法を用いて、実際にエピタキシャル成膜工程における応答関数の導出、及びプロセスパラメータの最適値の算出を行った。その詳細を以下に説明する。
【0097】
第1の実験例と同様、
図1及び
図2に示すエピタキシャル成長装置を用いて、実際にエピタキシャル成膜を行った。特性Q(x,P
1,P
2,P
3)は成長速度分布、プロセスパラメータP
iは、P
1:ガス流量のバランスを固定した状態でのガス導入分配機構部の開度、P
2:キャリアガスである水素の流量、P
3:ガスのIn比率(トータル開度を固定)である。プロセスパラメータP
1は、図示されていないが、ガスをIn側とOut側に分配する調整バルブのIn/Out比率を固定した開度である。プロセスパラメータP
2は、
図1に示すガス導入路18に接続されている、図示しないガス供給源から供給されるキャリアガスの流量であり、ガス導入路18とガス供給源との間に設置されたガス弁によって調整される。プロセスパラメータP
3は、前述のガスをIn側とOut側に分配する調整バルブの開度の比率である。
【0098】
プロセスパラメータP1、P2、P3のそれぞれを、3水準で変量してエピタキシャル成膜を行った。詳細には、プロセスパラメータP1、P2、P3のうち、2つのプロセスパラメータを固定し、残りの1つのプロセスパラメータを3水準で変量してエピタキシャル成膜を行った。この場合、各プロセスパラメータが3パターンであるから、得られるエピタキシャル膜の個数は9である。
【0099】
第1の実験例と同様に、得られた9枚のエピタキシャル膜の円形状の基板の中心線上の複数の点において、膜厚を測定し、膜厚と成長時間とから成長速度を求め、プロセスパラメータに対する成長速度の変化量を調べた。その結果、全てのプロセスパラメータP1、P2、P3に対して、円形状の基板の中心線上の成長速度を測定した全ての位置において、成長速度がプロセスパラメータに対して線形的に変化していることが確認された。
【0100】
図4に示すグラフと同様に、成長速度に対してプロセスパラメータをプロットし、直線でフィッティングして得られた1次関数を応答関数とする。
図6に、プロセスパラメータP
1、P
2、P
3のそれぞれについて、エピタキシャル膜の円形状の基板の中心線上の中心からの距離に対する応答関数の係数をプロットした図を示す。
図6(a)はプロセスパラメータP
1、
図6(b)はプロセスパラメータP
2、
図6(c)はプロセスパラメータP
3についてのグラフである。
【0101】
次に、エピタキシャル膜の円形状の基板の中心線上の中心からの距離xにおける、プロセスパラメータ変量前の膜厚をTc(x,P1,P2,P3)、プロセスパラメータP1、P2、P3のそれぞれをΔP1、ΔP2、ΔP3だけ変量させたときの膜厚をTo(x,P1+ΔP1,P2+ΔP2,P3+ΔP3)、プロセスパラメータP1、P2、P3のそれぞれの応答関数の係数をαi(x,Pi)とすると、To(x,P1+ΔP1,P2+ΔP2,P3+ΔP3)は以下の式(7)で表される。
【0102】
【0103】
式(5)で表される膜厚の変動量が測定したxの範囲で最小となるように、シミュレーションを行った。その結果得られたプロセスパラメータを以下の表1に示す。
【0104】
【0105】
プロセスパラメータの変量前と変量後の膜厚T
c(x,P
1,P
2,P
3)、T
o(x,P
1+ΔP
1,P
2+ΔP
2,P
3+ΔP
3)のそれぞれを
図7に示す。表1及び
図7から、プロセスパラメータ変量後は変量前と比較して、膜厚の変動が減少していることがわかる。
【0106】
なお、上述した方法では、膜厚の分布の変動量が最小となるようなΔP1、ΔP2、ΔP3を決定したが、膜厚分布にターゲットの分布があるときは、膜厚分布とターゲットの分布との差分が最小となるようにΔP1、ΔP2、ΔP3を決定すればよい。
【0107】
応答関数は、ハードウェアのデザイン変更やハードウェアごとのばらつきによっても敏感に変化する。第3の実施形態において後述するように、上記の手順により、プロセスパラメータに対して、応答関数を得ることは、条件調整アルゴリズムへの適用に加えて、ハードウェアデザインの変更等の効果検証や装置間の違いの検証にも有効であると考えられる。
【0108】
図8のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係るパラメータ決定方法を説明する。以下に説明する方法は、
図1に示すエピタキシャル成長装置1、及び特性Q
j(x,P
1,…,P
M)を測定する特性測定装置を用いて基板上にエピタキシャル膜を成長させたときの、変数xの所定の範囲内における、エピタキシャル膜の特性Q
j(x,P
1,…,P
M)の所望の定数又は所望の関数からずれを最小にするプロセスパラメータP
1、…、P
Mの最適値を算出する方法であり、本実施形態に係るパラメータ決定方法の一例である。
【0109】
ステップS801において、プロセスパラメータP1、…、PMのときのエピタキシャル膜を成膜する。
【0110】
ステップS802において、i=kのときのプロセスパラメータPkをΔPkだけ変量し、プロセスパラメータP1、…、PMのうち、i≠kのときのプロセスパラメータPiは変量させないようにしたときのエピタキシャル膜を成膜する。
【0111】
ステップS803において、成膜したエピタキシャル膜の、変数xの所定の範囲内における、特性Qjの変化量ΔQj,kを測定する。
【0112】
ステップS804において、プロセスパラメータPkの変量ΔPkに対する、特性Qjの変化量ΔQj,kから、次の式より応答関数FQj(x,ΔPk)を導出する。
【0113】
【0114】
【0115】
ステップS805において、全てのプロセスパラメータP1、…、PMについてステップS802~ステップS804の手順を行う。
【0116】
ステップS806において、シミュレーションにより、エピタキシャル膜の特性Qj(x,P1,…,PM)の所望の定数又は所望の関数からずれを最小にするプロセスパラメータP1、…、PMの最適値を算出する。
【0117】
図9のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係るパラメータ決定装置の動作の一例を説明する。
【0118】
ステップS901において、エピタキシャル成長装置1に基板が導入されたのち、エピタキシャル膜の成膜のためのプロセスパラメータの値等の条件の入力を入力部309が受け付ける。
【0119】
ステップS902において、入力されたプロセスパラメータの値等の条件を、成長装置制御部306がI/O305を介してエピタキシャル成長装置1に送信する。
【0120】
ステップS903において、エピタキシャル成長装置1において成膜が開始される。
【0121】
ステップS904において、成膜が実行されたのち、上面にエピタキシャル膜が成膜された基板は、膜厚測定装置に導入される。
【0122】
ステップS905において、膜厚装置制御部307は、膜厚測定装置に、入力部309より入力された膜厚を測定する位置を、I/O305を介して膜厚測定装置に送信する。
【0123】
ステップS906において、膜厚測定装置において膜厚測定が開始される。
【0124】
ステップS907において、膜厚装置制御部307は、膜厚測定装置から、測定によって得られた膜厚値と、膜厚値に対応する基板上の位置のデータを取得し、膜厚値と位置データを、演算部308に送信する。また、成長装置制御部306は、このときのプロセスパラメータの値を、演算部308に送信する。
【0125】
ステップS908において、演算部308は、膜厚値、位置データ、及びプロセスパラメータの値を用いて、プロセスパラメータの最適値を算出する。
【0126】
ステップS909において、成長装置制御部306は、算出したプロセスパラメータの最適値を、エピタキシャル成長装置1に送信する。
【0127】
ステップS910において、エピタキシャル膜の成膜が開始される。
【0128】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、パラメータ決定装置は、エピタキシャル膜の成膜開始時のプロセスパラメータの最適値を算出した。第1の実施形態に係るパラメータ決定装置は、例えばメンテナンス後に行われる、プロセスパラメータの最適値の算出等に適用されるものであった。
【0129】
しかしながら、エピタキシャル膜を生成する過程においても、エピタキシャル成長装置の内部の状態は徐々に変化する。作成されたエピタキシャル膜の特性分布は、エピタキシャル成長装置の内部の状態の変化に伴い変化し、ある時点において特性分布の変動量が所定の範囲内から逸脱する恐れがある。本実施形態に係るパラメータ決定装置は、成膜したエピタキシャル膜の特性分布変動量が所定の範囲内から逸脱した場合、プロセスパラメータの新たな最適値を算出する。
【0130】
図10は演算装置1000の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るパラメータ決定装置は、第1の実施形態に係るパラメータ決定装置と比較すると、
図3に示す演算装置27の替わりに、演算装置1000を備える。演算装置1000は、
図3に示す演算装置27と同様であるが、特性分布判定部1001、膜厚装置制御部1002をさらに備えている。
【0131】
本実施形態において、膜厚測定装置は演算装置1000に接続されており、エピタキシャル成長装置1からの成膜後のウェハの搬出、膜厚測定装置における膜厚測定等が、演算装置1000によって制御されるとする。
【0132】
膜厚装置制御部1002は、膜厚測定装置に、入力部309より入力された膜厚測定の条件を、I/O305を介して膜厚測定装置に送信する。また、膜厚測定装置から、測定によって得られた膜厚値と、膜厚値に対応する基板上の位置のデータを取得する。
【0133】
演算部308によってプロセスパラメータの最適値が算出されると、算出したプロセスパラメータの最適値に基づいてエピタキシャル膜の成膜が開始される。1枚のウェハの成膜を完成させる毎に、完成したエピタキシャル膜の特性分布が測定される。特性分布判定部1001は、このようにして測定された特性分布のデータを受信し、特性分布の変動量が所定の範囲内から逸脱しているか否かを判定する。
【0134】
特性分布判定部1001は、特性分布の変動量が所定の範囲内から逸脱していなければ、エピタキシャル膜の成膜を続行し、逸脱していれば、パラメータ決定装置は、プロセスパラメータの新たな最適値を算出し、算出した新たな最適値が、次の1枚の成膜に反映される。
【0135】
このとき、プロセスパラメータの新たな最適値を算出する手順は、第1の実施形態に記載された手順と同様のものであるか、又は、例えば、特性分布判定部1001によって、特性分布の変動量が所定の範囲内から逸脱していることが明らかになった時点で、プロセスパラメータの調整を行い、成膜後に特性分布を測定し、プロセスパラメータの調整前と調整後のデータを用いて応答関数を導出し、プロセスパラメータの新たな最適値を算出するという手順でも構わない。後者の手順は、リアルタイムにパラメータの調整が可能であり、時間や手間のロスが少ないというメリットがある。
【0136】
(第3の実施形態)
第1の実施形態、及び第2の実施形態において、特性Qjは変数x、プロセスパラメータP1、…、PMの関数であるとし、特性Qjの応答関数FQj,i(x,Pi)を導出して、プロセスパラメータの最適値を算出した。本実施形態においては、特性Qjは変数xと、プロセスパラメータではなく、ハードウェアの特性を決定するハードウェア設計パラメータの関数であるとする。
【0137】
ハードウェア設計パラメータとは、例えば、加熱システムデザイン、サセプタデザイン、チャンバーデザイン等を特徴づける設計値であり、設計コンセプトに応じて、目的や手法等によって特徴づける設計値は異なる。
【0138】
ハードウェア設計パラメータと特性Qjの一例として、サセプタデザインにおけるポケットの高さ、及びポケット壁とウェハエッジまでの距離と、ウェハエッジの膜厚が挙げられる。ウェハエッジの膜厚は、サセプタのポケットの高さHと、ポケット壁とウェハエッジまでの距離Wとに依存して変化することが報告されている(特許文献3参照)。サセプタのポケットの高さHと、ポケット壁とウェハエッジまでの距離Wとをハードウェア設計パラメータとし、ウェハエッジの膜厚を特性Qjとする。実施形態1に記載の方法と同様にして、ウェハエッジの膜厚を所望の値に近い値とするためのサセプタのポケットの高さH、及びポケット壁とウェハエッジまでの距離Wの最適値を算出することが出来る。
【0139】
ハードウェア設計パラメータと特性Q
jの別の一例として、エピタキシャル成長装置におけるガス流が形成される空間の高さと、エピタキシャル膜の膜厚分布が挙げられる。ガス流が形成される空間の高さHをハードウェア設計パラメータとし、エピタキシャル膜の膜厚分布を特性Q
jとする。ガス流が形成される空間の高さHは、
図11に示すように、チャンバ10内部の、天井部11とサセプタ13との間の距離である。実施形態1に記載の方法と同様にして、エピタキシャル膜の膜厚分布の拡がりが所望値内となるような、高さHの最適値を算出することが出来る。
【0140】
ハードウェア設計パラメータと特性Q
jの別の一例として、エピタキシャル成長装置における加熱ランプ用リフレクターの傾きαと、エピタキシャル膜の膜厚分布が挙げられる。加熱ランプ用リフレクターの傾きαは、
図11に示すように、加熱手段15a~15dの傾きである。この例においても、上述した例と同様に、エピタキシャル膜の膜厚分布の拡がりが所望値内となるような、傾きαの最適値を算出することが出来る。
【0141】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0142】
1 エピタキシャル成長装置
10 チャンバ
11 天井部
12a 上部側壁部
12b 下部側壁部
13 サセプタ
14 サセプタ支持部
15a~15d 加熱手段
16a ガス流入口
16b ガス排出口
17a 供給路
17b 排出路
18 ガス導入路
22、23 反応ガス
24 側壁部
25 挟持部
26 ガス排出路
27 制御装置
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 記憶部
305 I/O(インプット・アウトプットインターフェース)
306 成長装置制御部
308 演算部
309 入力部
310 出力部
1000 制御装置
1001 特性分布判定部
1002 膜厚装置制御部