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特開2023-163854内燃機関及びインジェクションキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163854
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】内燃機関及びインジェクションキット
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/22 20060101AFI20231102BHJP
   F01N 3/34 20060101ALI20231102BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20231102BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F01N3/22
F01N3/34 301C
F02D9/02 351Z
F02M35/10 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075045
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】511256417
【氏名又は名称】株式会社ノーブレスト
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 博行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠太郎
【テーマコード(参考)】
3G065
3G091
【Fターム(参考)】
3G065BA01
3G065CA12
3G065DA04
3G091AA03
3G091BA13
3G091CA22
3G091HA02
3G091HB01
(57)【要約】
【課題】インジェクション式の燃料供給装置を取り付けると共に、未燃焼ガスを再燃焼させて、排気ガスを浄化する内燃機関及びインジェクションキットを提供する。
【解決手段】本発明は、内燃機関10に関するものであり、キャブレタが取り外された後の燃焼室23の吸気側に接続され、空気MAが通過する吸気通路部50と、燃焼室23から排出された排気ガスEX1が通過し、排気ガス浄化触媒装置90を介して大気中に排気ガスEX3を放出する排気通路部80と、吸気通路部50における回動モータ52及びフラップ53のエンジン本体20側に設けられ、燃料Fを吸気通路部50内に供給するインジェクタ110と、排気通路部80のエンジン本体20との接続位置近傍に設けられ、大気中から吸入された二次燃焼用外気SAを排気通路部80内に供給するエアインジェクタ79を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室及び前記燃焼室内に配置された点火プラグを有するエンジン本体と、
キャブレタが取り外された後の前記燃焼室の吸気側に接続され、大気中から空気を吸入する大気吸入口を有し、前記燃焼室に供給される空気が通過する吸気通路部と、
前記燃焼室の排気側に接続され、前記燃焼室から排出された排気ガスが通過し、排気ガス浄化触媒装置を介して大気中に排気ガスを放出する大気放出口を有する排気通路部と、
前記吸気通路部に設けられ、空気吸入量を調整する吸入量調整部と、
前記吸気通路部における前記吸入量調整部の前記エンジン本体側に設けられ、燃料を前記吸気通路部内に供給するインジェクタと、
前記排気通路部の前記エンジン本体との接続位置近傍に設けられ、大気中から吸入された空気を前記排気通路部内に供給する二次燃焼外気注入ノズルとを備えていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記吸入量調整部による空気吸入制御、前記点火プラグの点火タイミング、前記インジェクタによる燃料の供給タイミング及び供給量を制御する電子制御部をさらに備えていることを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関において、
前記二次燃焼外気注入ノズルは、大気中から空気を導入する二次燃焼用外気導入部に接続され、
前記二次燃焼用外気導入部は、前記吸気通路部内に生ずる負圧に基づいて前記二次燃焼外気注入ノズルに空気を供給することを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関において、
前記排気ガス浄化触媒装置の大気中側には、前記排気ガス中の特定の気体の割合を測定する気体センサが設けられ、
前記電子制御部は、前記気体センサの測定結果によって、前記空気吸入量、前記点火タイミング、前記燃料の供給タイミング及び前記供給量が制御されることを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
燃焼室及び前記燃焼室内に配置された点火プラグを有するエンジン本体と、キャブレタが取り外された後の前記燃焼室の吸気側に接続されて前記燃焼室に供給される空気が通過する吸気通路部と、前記燃焼室の排気側に接続されて大気中に排気ガス浄化触媒装置を介して排気ガスを放出する大気放出口を有する排気通路部とを備える内燃機関に用いられるインジェクションキットにおいて、
前記吸気通路部に設けられ、空気吸入量を調整する吸入量調整部と、
前記吸気通路部における前記吸入量調整部の前記エンジン本体側に設けられ、燃料を前記吸気通路部内に供給するインジェクタと、
前記排気通路部の前記エンジン本体との接続位置近傍に設けられ、大気中から吸入された空気を前記排気通路部内に供給する二次燃焼外気注入ノズルとを備えていることを特徴とするインジェクションキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旧年式オートバイの排気ガス、現代適合化キットに関して、特に、キャブレタ式の燃料供給装置を取り外した後にインジェクション式の燃料供給装置を取り付けた内燃機関及びこのような内燃機関に取り付けるためのインジェクションキットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される内燃機関は、燃料供給装置から供給されたガソリンを燃焼室で燃焼し、この時に発生した動力をピストン、クランクシャフト等の駆動力伝達装置を介して駆動輪に伝えて、駆動力を得るものである。燃焼室内部でガソリンを燃焼して発生させた燃焼ガスは、排気側に設置されている排気装置を通じて浄化された後、外部に放出される。
【0003】
自動二輪車は、西暦1999年頃までは、四輪車のような排気ガス規制がなされていないことから、燃料供給装置として機械式キャブレタ式を用いるものが主流であった。キャブレタ式は構造が単純である一方、燃料供給の微調整が難しく排気ガス中に未燃焼ガスが残る等、環境に悪影響を及ぼすという短所があった。なお、燃料供給の最適化を図るインジェクション式の燃料供給装置(電子制御式燃料噴射装置)を用いるものも出始めていたが、実用初期段階であったため、厳密な制御が行うことができず、排気ガスはクリーンとはいえなかった。
【0004】
これに対し、四輪車においては厳しい排気ガス規制によって、インジェクション式の燃料供給装置(電子制御式燃料噴射装置)が早くから採用されると共に、その制御手法も成熟していた。近年、二輪車においても、厳しい排気ガス規制が課せられ、新型車は、ほぼインジェクション式の燃料供給装置に切り替えられていた。
【0005】
図3は、キャブレタ式の内燃機関310が搭載された旧型の二輪車300の一例を示す側面図である。二輪車300は、フレーム301を有している。フレーム301の前後は、前輪302及び後輪303によって支持され、上部にはシート304、操舵装置305、燃料タンク306が取り付けられている。また、フレーム301は、内燃機関310を保持している。内燃機関310は、エンジン本体320と、燃焼室330とを備えている。燃焼室330の吸気側には、機械式キャブレタ340を介してエアフィルタ350が接続され、燃焼室330の排気側には排気通路部360が接続され、排気ガス浄化触媒装置370及びマフラ380を介して、大気側に開放されている。
【0006】
一方、キャブレタ式を採用していた旧型の自動二輪車は、その無骨なスタイリングに注目され、あえて旧型に乗り続けたり、中古車を購入したりする愛好家も多かった。旧型の自動二輪車は、現行の排気ガス規制は適用されないため、エンジンを改造することなく、そのまま乗り続けても違法とはならない。しかしながら、前述したように現代の排気ガス規制に沿わない以上、環境面に配慮する旧型の愛好家も十分に楽しめないという問題があった。このため、キャブレタ式の燃料供給装置をインジェクション式の燃料供給装置に置き換えるということが考えられる。
【0007】
なお、エンジンのクランクケースを通じて外部に漏出する未燃焼のブローバイガスが、排気ガスと共に外部に放出されて環境を汚染させることを防止するため、燃焼室に戻して再燃焼させて排気ガスを浄化する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-317324号公報
【特許文献2】特開2003-120246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、燃焼室で燃料を完全に燃焼させることは難しく、未燃焼ガスはどうしても燃焼ガス中に残留する。燃焼室で発生した燃焼ガスは排気装置を通じて浄化されるものの、未燃焼ガスは浄化されずに外部放出され、環境を汚染する。また、未燃焼のブローバイガスを燃焼室に戻して再燃焼させる技術も知られているが、特許文献1,2の構成では、エンジン本体そのものに加工が必要であると共に、多くの新たな部品やホースを追加しなければならず、改造コストが高くなっていた。
【0010】
なお、キャブレタ式の燃料供給装置を単にインジェクション式に置き換えただけでは、内燃機関及びその周辺機器の状態はそれぞれ異なっているため、一律の制御では排気ガスをクリーンにできない。
【0011】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、キャブレタ式の燃料供給装置が搭載された旧型の内燃機関であっても、インジェクション式の燃料供給装置を取り付けて、燃料供給の最適化を図ると共に、未燃焼ガスを効果的に再燃焼させることで、排気ガスを浄化することができる内燃機関及びこのような内燃機関に取り付けるためのインジェクションキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る内燃機関は、キャブレタが取り外された後の、燃焼室及び前記燃焼室内に配置された点火プラグを有するエンジン本体と、前記燃焼室の吸気側に接続され、大気中から空気を吸入する大気吸入口を有し、前記燃焼室に供給される空気が通過する吸気通路部と、前記燃焼室の排気側に接続され、前記燃焼室から排出された排気ガスが通過し、排気ガス浄化触媒装置を介して大気中に排気ガスを放出する大気放出口を有する排気通路部と、前記吸気通路部に設けられ、空気吸入量を調整する吸入量調整部と、前記吸気通路部における前記吸入量調整部の前記エンジン本体側に設けられ、燃料を前記吸気通路部内に供給するインジェクタと、前記排気通路部の前記エンジン本体との接続位置近傍に設けられ、大気中から吸入された空気を前記排気通路部内に供給する二次燃焼外気注入ノズルとを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記内燃機関において、前記吸入量調整部による空気吸入制御、前記点火プラグの点火タイミング、前記インジェクタによる燃料の供給タイミング及び供給量を制御する電子制御部をさらに備えていることを特徴とする。
【0014】
前記内燃機関において、前記二次燃焼外気注入ノズルは、大気中から空気を導入する二次燃焼用外気導入部に接続され、前記二次燃焼用外気導入部は、前記吸気通路部内に生ずる負圧に基づいて前記二次燃焼外気注入ノズルに空気を供給することを特徴とする。
【0015】
前記内燃機関において、前記排気ガス浄化触媒装置の大気中側には、前記排気ガス中の特定の気体の割合を測定する気体センサが設けられ、前記電子制御部は、前記気体センサの測定結果によって、前記空気吸入制御、前記点火タイミング、前記燃料の供給タイミング及び前記供給量が制御されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るインジェクションキットは、キャブレタが取り外された後の、燃焼室及び前記燃焼室内に配置された点火プラグを有するエンジン本体と、前記燃焼室の吸気側に接続されて前記燃焼室に供給される空気が通過する吸気通路部と、前記燃焼室の排気側に接続されて大気中に排気ガス浄化触媒装置を介して排気ガスを放出する大気放出口を有する排気通路部とを備える内燃機関に用いられ、前記吸気通路部に設けられ、前記空気吸入量を調整する吸入量調整部と、前記吸気通路部における前記吸入量調整部の前記エンジン本体側に設けられ、燃料を前記吸気通路部内に供給するインジェクタと、前記排気通路部の前記エンジン本体との接続位置近傍に設けられ、大気中から吸入された空気を前記排気通路部内に供給する二次燃焼外気注入ノズルとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内燃機関では、空気吸入量を調整する吸入量調整部を通して吸入された空気に、インジェクタによって供給量と供給タイミングが最適化された状態で燃料が吸気通路部内に供給され、空気と燃料の混合気として燃焼室内に導入される。燃焼室内では、点火プラグによって混合気が点火され、燃焼される。燃焼室から排出された排気ガスのうち、燃料が燃焼しないで残った高温の未燃焼ガスがエンジン本体との接続位置近傍の排気通路部に二次燃焼外気注入ノズルから供給された空気により、再燃焼される。このため、排気ガス中の未燃焼ガスを十分に減らすことができ、最終的に排気ガス浄化触媒装置を介して大気中に浄化されて排出される。
【0018】
本発明のインジェクタキットでは、キャブレタが取り外された後の吸気通路部に空気吸入量を調整する吸入量調整部が取り付けられ、この吸入量調整部のエンジン本体側に供給量と供給タイミングが最適化された状態で燃料を吸気通路部内に供給するインジェクタが取り付けられる。燃焼室の排気側には、エンジン本体との接続位置近傍に、大気中から吸入された空気を排気通路部内に供給する二次燃焼外気注入ノズルを有する排気通路部を取り付けられることで、内燃機関にインジェクションが取り付けられる。本発明のインジェクタキットによれば、エンジン本体に大幅な改造を加えることなく、キャブレタ式の燃料供給装置を取り外した後にインジェクション式の燃料供給装置を取り付けることができ、排気ガス中に含まれる未燃焼ガスを再燃焼させて、排気ガスを浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る内燃機関が搭載された二輪車を示す側面図である。
図3】キャブレタ式の内燃機関が搭載された二輪車の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<内燃機関10の構成>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係る内燃機関10の構成を示す説明図、図2は内燃機関10が搭載された二輪車1を示す側面図である。
【0021】
二輪車1は、フレーム2を有する。フレーム2の前後は、前輪3及び後輪4によって支持され、上部にはシート5、操舵装置6が取り付けられている。また、フレーム2は、回転駆動力を生じる内燃機関10を保持している。
【0022】
内燃機関10は、エンジン本体20、吸気通路部50、エアフィルタ60、二次燃焼用外気導入装置(二次燃焼用外気導入部)70、排気通路部(エキゾーストパイプ)80、排気ガス浄化触媒装置90、マフラ100、インジェクタ110及び電子制御ユニット(電子制御部)200を備える。
【0023】
エンジン本体20は、シリンダブロック21、ヘッド部22、燃焼室23、吸気ポート24及び排気ポート25を備える。ヘッド部22は、シリンダブロック21の上部に設けられる。シリンダブロック21の中央には、燃焼室23が設けられ、図中左側の吸気ポート24、右側の排気ポート25に連通する。シリンダブロック21の下部中央にはピストン30が往復動自在に挿通されている。
【0024】
燃焼室23と吸気ポート24との境界部分には、吸気バルブ31が介装されている。燃焼室23と排気ポート25との境界部分には、排気バルブ32が介装されている。吸気バルブ31は、コイルバネ33によって燃焼室23と吸気ポート24との境界部分を閉塞する方向に付勢される。排気バルブ32は、コイルバネ34によって燃焼室23と排気ポート25との境界部分を閉塞する方向に付勢されている。
【0025】
吸気バルブ31は、カムシャフト35によってコイルバネ33の付勢力に抗して、下方に突出し、燃焼室23と吸気ポート24との境界部分が開放される。排気バルブ32は、カムシャフト36によってコイルバネ34の付勢力に抗して、下方に突出し、燃焼室23と排気ポート25との境界部分が開放される。
【0026】
燃焼室23の上部には、点火プラグ37が配置されている。点火プラグ37は、リード線38を介して後述する電子制御ユニット200に接続される。点火プラグ37は、電子制御ユニット200から所定のタイミングで通電されることで燃焼室23内に火花を発生し、後述する混合気MXに着火させる。
【0027】
吸気ポート24の開口部24aには、ブラケット40を介して、吸気通路部50が取り付けられている。
【0028】
吸気通路部50は、通路本体51、回動モータ52及びフラップ53を備える。通路本体51は、図1中左側に入口51aを備え、右側に出口51bを備える。回動モータ52は、通路本体51の中央部に配置され、図1中上下方向を軸として回動する。フラップ53は、回動モータ52の軸に取り付けられ、通路本体51の内径より僅かに小さい外径を有する円板状に形成される。フラップ53は、電子制御ユニット200によって制御される回動モータ52の回動位置によってその向きが変化し、通路本体51の開口面積を調整することで、吸気量を調整する。すなわち、回動モータ52及びフラップ53によって吸入量調整部が構成される。
【0029】
通路本体51におけるフラップ53の上流側には、後述する吸気負圧パイプ77が接続され、下流側には後述するインジェクタ110が設けられている。
【0030】
エアフィルタ60は、通路本体61及びフィルタ62を備える。エアフィルタ60は、吸気通路部50の入口51aに取り付けられる。通路本体61は、図1中左側に大気吸入口61aを備え、右側に大気出口61bを備える。フィルタ62は、通路本体61の中央に配置される。フィルタ62は大気中のゴミ等を除去する機能を有している。
【0031】
二次燃焼用外気導入装置70は、ハウジング71、上膜72、下膜73、二次燃焼用外気導入路74、サブハウジング75、吸気負圧パイプ77、エアパイプ78及びエアインジェクタ(二次燃焼外気注入ノズル)79を備える。
【0032】
ハウジング71は、金属材によって形成され、中央で上下に分割されている。上膜72及び下膜73は、ハウジング71の分割面に二次燃焼用外気導入路74を挟んで対向配置され、ハウジング71の分割面を気密に閉塞している。
【0033】
上膜72及び下膜73は、柔軟な膜材で形成され、上膜72の中央には硬質ゴムで形成された上弁72aが設けられ、下膜73の中央には硬質ゴムで形成された下弁73aが設けられる。ハウジング71内の気圧によって上弁72a及び下弁73aが離接する。
【0034】
二次燃焼用外気導入路74は、図1中左側に大気吸入口74aを備え、右側に大気出口74bを備える。大気吸入口74aは大気に開放される。サブハウジング75は、大気出口74b側に配置される。サブハウジング75は、逆止弁76を有し、大気出口74bを閉塞している。
【0035】
吸気負圧パイプ77は、一端がハウジング71に連通し、他端が吸気通路部50の通路本体51に連通する。エアパイプ78は、一端がサブハウジング75に連通し、他端がエアインジェクタ79に連通する。エアインジェクタ79は、排気通路部80内にその先端を露出して配置される。エアインジェクタ79は、エアパイプ78を介して供給された二次燃焼用外気SAを排気通路部80内に導入する。
【0036】
二次燃焼用外気導入装置70は、通路本体51内が負圧になると、吸気負圧パイプ77を通じてハウジング71内が負圧となる。これにより、上膜72及び下膜73は、それぞれハウジング71の内側に変形され、上弁72a及び下弁73aが離間する。これにより、二次燃焼用外気導入路74が開き、エアパイプ78を通じて、排気通路部80内に突出したエアインジェクタ79に二次燃焼用外気が供給される。なお、逆止弁76の機能によりエアパイプ78側に高い気圧のガスが発生しても、ガスが逆戻りすることはない。
【0037】
排気通路部80は、入口部(接続位置近傍)81及び出口部82を備える。入口部81は、排気ポート25の出口25aに接続される。出口部82は、排気ガス浄化触媒装置90に接続されている。
【0038】
排気ガス浄化触媒装置90は、入口側が排気通路部80の出口部82に連通し、出口側がマフラ100に連通する。排気ガス浄化触媒装置90は、排気ガス中の酸化窒素濃度、一酸化炭素濃度を除去する機能を有している。マフラ100は、排気ガスが生じる排気音を低減する機能を有している。
【0039】
インジェクタ110は、リード線111、タンク112及び燃料パイプ113を備える。インジェクタ110は、吸気通路部50の通路本体51のフラップ53より下流側に配置される。インジェクタ110は、リード線111を介して電子制御ユニット200によって燃料Fの噴射量・噴射タイミングが制御される。タンク112は、燃料Fを貯留する。燃料パイプ113は、ガソリン等の燃料Fを通路本体51のフラップ53より下流側に供給するインジェクタ110が設けられる。インジェクタ110の噴射量・噴射タイミングは、リード線111を介して電子制御ユニット200によって制御される。インジェクタ110は、燃料Fを貯留するタンク112と、燃料パイプ113を介して接続されている。
【0040】
次に、内燃機関10の各部に設けられた気体センサ120及び温度センサ130について説明する。気体センサ120は、マフラ100に設けられる。気体センサ120は、例えば酸素濃度、酸化窒素濃度、一酸化炭素濃度、炭化水素濃度を測定する機能を有する。気体センサ120の出力は、リード線121を介して電子制御ユニット200に入力されている。
【0041】
温度センサ130は、シリンダブロック21に設けられる。温度センサ130の出力は、リード線131を介して電子制御ユニット200に入力されている。
【0042】
電子制御ユニット200は、予め組み込まれたプログラムに沿って内燃機関10の各部の連携制御を行う。電子制御ユニット200には、気体センサ120及び温度センサ130の出力が入力されると共に、電子制御ユニット200の制御の下、回動モータ52及びフラップ53で構成される吸入量調整部によって空気吸入量が調整され、インジェクタ110からの燃料Fの噴射量・噴射タイミング、点火プラグ37の点火タイミングが調整される。なお、上述した予め組み込まれるプログラムは、二輪車毎の内燃機関や周辺機器のコンデションに合わせて各種パラメータを最適に調整し、作成されたものである。
【0043】
<内燃機関10の動作>
本実施形態に係る内燃機関10は、基本的には以上のように構成される。次に、内燃機関10の動作について説明する。本実施形態では、内燃機関10が始動すると、ピストン30及びカムシャフト35,36が動作する。さらに、電子制御ユニット200により、予め組み込まれたプログラムに沿って各部の連携動作が行われ、内燃機関10各部の連携制御が行われる。なお、電子制御ユニット200が行う連携制御は一律ではなく、対象となる内燃機関10及び周辺機器の個々の状態に応じて適切な調整を行う必要がある。
【0044】
吸気バルブ31が開いた状態でピストン30が下降すると、吸気通路部50内が負圧となり、エアフィルタ60から空気MAが導入される。空気MAは、フィルタ62によって、ろ過され、吸気通路部50内に導入される。空気導入量は、回動モータ52及びフラップ53によって調節されながら燃焼室23に向かう。この時、インジェクタ110から適切な量で燃料Fが供給され、空気MAと燃料Fの混合気MXとなって燃焼室23に導入される。吸気バルブ31及び排気バルブ32が閉じた状態で、ピストン30が上昇して燃焼室23内で混合気MXが圧縮される。
【0045】
次に、点火プラグ37によって混合気MXが燃焼され、その燃焼によってピストン30が下降する。この下降する力が駆動力となって後輪4を駆動する。さらにピストン30は再上昇し、吸気バルブ31が閉じた状態、及び、排気バルブ32が開いた状態で排気ガスEX1が排気ポート25から排出される。この時の排気ガスEX1の温度は700℃前後の高温であると共に、内部に未燃焼ガスが含まれている。
【0046】
一方、前述した吸気通路部50内が負圧になると、吸気負圧パイプ77を介して二次燃焼用外気導入装置70のハウジング71内も負圧になる。これにより、上膜72及び下膜73が離間して、上弁72a及び下弁73aの間に隙間ができ、二次燃焼用外気SAが導入される。この二次燃焼用外気SAは、エアパイプ78を通じて、エアインジェクタ79に供給される。エアインジェクタ79は、供給された二次燃焼用外気SAを排気通路部80内に導入する。
【0047】
上述したように、排気ガスEX1の温度は高温であると共に未燃焼ガスを含んでいることから酸素を含む二次燃焼用外気SAがエアインジェクタ79によって導入されると、図1中Qに示されるように燃焼し、排気ガスEX2を生ずる。この時の燃焼は、燃焼室23内での圧縮した混合気MXの燃焼とは異なり、緩やかなものであるため、排気ポート25を通じて高圧の燃焼ガスが燃焼室23に逆戻りすることによる不具合(アフターファイア)は生じない。
【0048】
排気ガスEX2は排気ガス浄化触媒装置90を通り、浄化され、マフラ100から大気に排出される。この時、マフラ100に取り付けられた気体センサ120により、排気ガスEX3内の酸素濃度、酸化窒素濃度、一酸化炭素濃度、炭化水素濃度を計測され、電子制御ユニット200に入力される。また、気体センサ120及び温度センサ130の出力が入力されていることから、排気ガスEX3が排気ガス規制値以下となるように、フラップ53の角度、インジェクタ110の噴射量・噴射タイミング、点火プラグ37の点火タイミング等が調整される。
【0049】
内燃機関10は、燃焼室23及び前記燃焼室23内に配置された点火プラグ37を有するエンジン本体20と、キャブレタが取り外された後の前記燃焼室23の吸気側に接続され、大気中から空気を吸入する大気吸入口61aを有し、前記燃焼室23に供給される空気MAが通過する吸気通路部50と、前記燃焼室23の排気側に接続され、前記燃焼室23から排出された排気ガスEX1が通過し、排気ガス浄化触媒装置90を介して大気中に排気ガスEX3を放出する大気放出口を有する排気通路部80と、前記吸気通路部50に設けられ、空気吸入量を調整する吸入量調整部と、前記吸気通路部50における前記吸入量調整部の前記エンジン本体20側に設けられ、燃料Fを前記吸気通路部50内に供給するインジェクタ110と、前記排気通路部80の前記エンジン本体20との入口部81に設けられ、大気中から吸入された二次燃焼用外気SAを前記排気通路部80内に供給するエアインジェクタ79とを備えている。
【0050】
このように構成される内燃機関10によれば、キャブレタ式の燃料供給装置が搭載されていた内燃機関10であっても、インジェクション式の燃料供給装置を取り付けると共に、未燃焼ガスを効果的に再燃焼させることで、排気ガスを浄化することが可能となる。排気ガス中の酸化窒素濃度、一酸化炭素濃度、炭化水素濃度はいずれも90%程度の減少を図ることができると共に、燃費も10~15%の向上がみられた。
【0051】
さらに、この内燃機関10は、エンジン本体20に対しては改造を施すことが無く、エンジン本体20の吸気側をキャブレタ式からインジェクション式に取り換え、排気側に二次燃焼用外気SAを導入するエアインジェクタ79を取り付ける構造であるため、低コストで改造が可能となる。さらに、ブローバイガスを回収して燃焼室に戻すような複雑な構造ではないため、重量を増すことが難しい自動二輪車等には適している。
【0052】
また、エンジン本体に改造を施さない構造であるため、エンジン本体を含まないインジェクションキットとして市場に流通することができ、輸送コストを低減させることも可能である。
【0053】
なお、上述したように内燃機関にあっては、各部品において精密な内燃機関加工を施すことで、混合気の燃焼がより促進され、未燃焼ガスの比率が減少し、排気ガスの浄化効率を高めることができる。また、自動二輪車に対する排気ガス規制が無かった西暦1999年までに生産されたキャブレタ式の燃料供給装置を有する内燃機関にインジェクションキットを適用してインジェクション式の燃料供給装置を有する内燃機関に改造することで、排気ガス濃度を大幅に低減させることができる。
【0054】
内燃機関10において、前記吸入量調整部による空気吸入制御、前記点火プラグ37の点火タイミング、前記インジェクタ110による燃料の供給タイミング及び供給量を制御する電子制御ユニット200をさらに備えている。
【0055】
内燃機関10において、前記エアインジェクタ79は、大気中から空気を導入する二次燃焼用外気導入装置70に接続され、前記二次燃焼用外気導入装置70は、前記吸気通路部50内に生ずる負圧に基づいて前記エアインジェクタ79に空気を供給する。
【0056】
内燃機関10において、前記排気ガス浄化触媒装置90の大気中側には、前記排気ガスEX3中の特定の気体の割合を測定する気体センサ120が設けられ、前記電子制御ユニット200は、前記気体センサ120の測定結果によって、前記空気吸入量、前記点火タイミング、前記燃料Fの供給タイミング及び前記供給量が制御される。
【0057】
インジェクションキットは、燃焼室23及び前記燃焼室23内に配置された点火プラグ37を有するエンジン本体20と、キャブレタが取り外された後の前記燃焼室23の吸気側に接続されて前記燃焼室23に供給される空気MAが通過する吸気通路部50と、前記燃焼室23の排気側に接続されて大気中に排気ガス浄化触媒装置90を介して排気ガスEX3を放出する大気放出口を有する排気通路部80とを備える内燃機関10に用いられるインジェクションキットにおいて、前記吸気通路部50に設けられ、前記空気吸入量を調整する吸入量調整部と、前記吸気通路部50における前記吸入量調整部の前記エンジン本体20側に設けられ、燃料Fを前記吸気通路部50内に供給するインジェクタ110と、前記排気通路部80の前記エンジン本体20との入口部81に設けられ、大気中から吸入された二次燃焼用外気SAを前記排気通路部80内に供給するエアインジェクタ79とを備えている。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0059】
例えば、上述した例ではシリンダブロック21とピストン30は一組しか説明していないが、2気筒以上の内燃機関にも適用することもできる。またセンサ類は一例として示したものであり、必要に応じて数や種類を変更してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1、300…二輪車
2、301…フレーム
3、302…前輪
4、303…後輪
5、304…シート
6、305…操舵装置
10…内燃機関
20…エンジン本体
21…シリンダブロック
22…ヘッド部
23…燃焼室
24…吸気ポート
24a…開口部
25…排気ポート
25a、51b…出口
30…ピストン
31…吸気バルブ
32…排気バルブ
33、34…コイルバネ
35、36…カムシャフト
37…点火プラグ
38、111、121、131…リード線
40…ブラケット
50…吸気通路部
51…通路本体
51a…入口
52…回動モータ
53…フラップ
60、350…エアフィルタ
61…通路本体
61a、74a…大気吸入口
61b、74b…大気出口
62…フィルタ
70…二次燃焼用外気導入装置
71…ハウジング
72…上膜
72a…上弁
73…下膜
73a…下弁
74…二次燃焼用外気導入路
75…サブハウジング
76…逆止弁
77…吸気負圧パイプ
78…エアパイプ
79…エアインジェクタ
80…排気通路部
81…入口部
82…出口部
90…排気ガス浄化触媒装置
100、380…マフラ
110…インジェクタ
112…タンク
113…燃料パイプ
120…気体センサ
130…温度センサ
200…電子制御ユニット(電子制御部)
306…燃料タンク
310…内燃機関
320…エンジン本体
330…燃焼室
340…機械式キャブレタ
360…排気通路部
370…排気ガス浄化触媒装置
図1
図2
図3