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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163862
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20231102BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20231102BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20231102BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16H1/06
F16C19/54
F16C19/16
F16C33/58
F16C33/32
F16C23/08
F16C33/76 A
F16J15/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075060
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】野元 宣寿
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】小柴 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛
【テーマコード(参考)】
3J009
3J012
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J009DA13
3J009DA16
3J009EA05
3J009EA11
3J009EB17
3J009EB23
3J009EC02
3J009EC05
3J009FA03
3J012AB01
3J012BB03
3J012DB01
3J012EB01
3J012FB08
3J012FB10
3J012GB10
3J012HB01
3J043AA16
3J043DA06
3J043FB20
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB04
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB03
3J216CC45
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA72
3J701AA83
3J701BA55
3J701FA13
3J701FA31
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】変速機の性能向上を図る。
【解決手段】減速機1に設けられたインプットギヤユニット10は、外周面に第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12を有するインプットシャフト11と、第1インプットシャフト軌道面K11の周りに配置された複数の玉14と、第2インプットシャフト軌道面K12の周りに配置された複数の玉17とを含む。動等価荷重が大きい側である玉14と第1インプットシャフト軌道面K11とにおける溝曲率半径比は、玉17と第2インプットシャフト軌道面K12とにおける溝曲率半径比よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、
を有し、
前記第1軸軌道面、前記第1玉、及び前記第1外輪における動等価荷重は、前記第2軸軌道面、前記第2玉、及び前記第2外輪における動等価荷重よりも大きく、
前記第1玉と前記第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比は、前記第2玉と前記第2軸軌道面とにおける溝曲率半径比よりも小さい、変速機。
【請求項2】
前記第1玉と前記第1外輪軌道面とにおける溝曲率半径比は、前記第2玉と前記第2外輪軌道面とにおける溝曲率半径比よりも小さい、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記第1軸軌道面、前記第1転動体、及び前記第1外輪における動等価荷重は、前記第2軸軌道面、前記第2転動体、及び前記第2外輪における動等価荷重よりも大きく、
前記第1軸軌道面の軌道径は、前記第2軸軌道面の軌道径よりも大きく、
前記第1外輪軌道面の軌道径は、前記第2外輪軌道面の軌道径よりも大きい、変速機。
【請求項4】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、
を有し、
前記第1軸軌道面が受けるアキシアル荷重は、前記第2軸軌道面が受けるアキシアル荷重よりも大きく、
前記第1玉と前記第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比は、前記第2玉と前記第2軸軌道面とにおける溝曲率半径比よりも大きい、変速機。
【請求項5】
前記第1玉と前記第1外輪軌道面とにおける溝曲率半径比は、前記第2玉と前記第2外輪軌道面とにおける溝曲率半径比よりも大きい、請求項4に記載の変速機。
【請求項6】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記第1軸軌道面、前記第1転動体、及び前記第1外輪における動等価荷重は、前記第2軸軌道面、前記第2転動体、及び前記第2外輪における動等価荷重よりも大きく、
前記第1転動体の直径は、前記第2転動体の直径よりも大きく、
前記第1転動体の数は、前記第2転動体の数よりも多い、変速機。
【請求項7】
前記第1軸軌道面の軌道径と前記第2軸軌道面の軌道径とは互いに異なっている、請求項6に記載の変速機。
【請求項8】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記ギヤは、前記第1転動体側に向う荷重を受け、
前記第1転動体の数は、前記第2転動体の数よりも多い、変速機。
【請求項9】
前記第1転動体の直径は、前記第2転動体の直径よりも大きい、請求項8に記載の変速機。
【請求項10】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、
を有し、
前記回転軸における前記第2軸軌道面が設けられる側の端部には、前記回転力が入力される入力部が設けられ、
前記ギヤは、前記入力部から前記回転軸に入力された前記回転力を出力し、
前記第2軸軌道面の溝曲率半径は、前記第1軸軌道面の溝曲率半径よりも大きい、変速機。
【請求項11】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記回転軸における前記第2軸軌道面が設けられる側の端部には、前記回転力が入力される入力部が設けられ、
前記ギヤは、前記入力部から前記回転軸に入力された前記回転力を出力し、
前記第2軸軌道面の軌道径は、前記第1軸軌道面の軌道径よりも大きい、変速機。
【請求項12】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記回転軸における前記第2軸軌道面が設けられる側の端部には、前記回転力が入力される入力部が設けられ、
前記ギヤは、前記入力部から前記回転軸に入力された前記回転力を出力し、
前記回転軸において前記第2軸軌道面と前記ギヤとの間の部分には、大径部が設けられ、
前記大径部は、前記第1軸軌道面と前記ギヤとの間における前記回転軸の最も外径が大きい部分よりも外径が大きい、変速機。
【請求項13】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する支持部に取り付けられ、前記軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記軸軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、
を有し、
前記回転軸の一方の端部から前記軸軌道面の幅方向の中央位置までの前記回転軸の外径は、前記軸軌道面の軌道径となっている、変速機。
【請求項14】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する支持部に取り付けられ、前記軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記軸軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、
を有し、
前記複数の転動体は、前記回転軸の周方向に沿って並ぶ第1群の前記複数の転動体と、前記第1群の前記複数の転動体と前記回転軸の延在方向において隣接するとともに前記回転軸の周方向に沿って並ぶ第2群の前記複数の転動体とを含み、
前記外輪軌道面は、前記回転軸の延在方向の一方の端部と他方の端部との間の中間部が径方向外側に向って円弧状に湾曲する形状を呈している、変速機。
【請求項15】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する支持部に取り付けられ、前記軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記軸軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、
前記外輪における前記回転軸の延在方向の一方の端部に固定され、前記回転軸の外周面に向って延びるシール部材と、
を有する、変速機。
【請求項16】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する支持部に取り付けられ、前記軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記軸軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、
を有し、
前記回転軸は、前記ギヤが設けられるギヤ取付部と、前記ギヤ取付部に隣接するとともに前記軸軌道面が形成される軌道面形成部と、を有し、
前記ギヤ取付部の外径は、前記軌道面形成部の外径よりも大きく、
前記ギヤ取付部と前記軌道面形成部との段差部分の隅部は、円弧状に湾曲した面となっている、変速機。
【請求項17】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記回転軸における前記第2軸軌道面が設けられる側の端部には、前記回転力が入力される入力部が設けられ、
前記ギヤは、前記入力部から前記回転軸に入力された前記回転力を出力し、
前記入力部と前記第2軸軌道面との間における前記回転軸の外周面には、周方向に沿って延在する溝部が設けられている、変速機。
【請求項18】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記回転軸における前記第2軸軌道面が設けられる側の端部には、前記回転力が入力される入力部が設けられ、
前記ギヤは、前記入力部から前記回転軸に入力された前記回転力を出力し、
前記回転軸の内部には、前記回転軸の延在方向に沿って延在する軸孔が設けられ、
前記軸孔は、第1の孔径を有する第1軸孔部と、第1の孔径よりも小径の第2の孔径を有する第2軸孔部とを含んで構成され、
前記第1軸孔部と前記第2軸孔部とは互いに隣接するとともに、前記第1軸孔部が前記入力部に近い側に位置し、
前記第1軸孔部と前記第2軸孔部との段差部は、前記回転軸の延在方向において、前記第2軸軌道面と前記入力部との間に位置している、変速機。
【請求項19】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する支持部に取り付けられ、前記軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記軸軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、
を有し、
前記外輪における軸方向の幅は、前記玉の直径とほぼ同等以下である、変速機。
【請求項20】
複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を前記回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、
前記複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、
外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、
前記回転軸において前記第1軸軌道面と前記第2軸軌道面との間に設けられ、前記回転軸と一体回転するギヤと、
前記回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
前記回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記第1外輪の内径は、前記第2外輪の外径よりも大きい、変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された回転力の回転速度を変速して出力する変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、駆動ユニットの駆動軸の回転速度を減速させて出力する変速機がある。このような変速機は、ギヤが設けられた回転軸を複数備えており、ギヤ同士を係合させて、駆動軸の回転を複数の回転軸に順次伝達することによって、回転速度を減速させている。このため、このような変速機には、筐体に対して回転軸を回転可能に支持する軸受が複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-3048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような変速機では、回転軸、及び回転軸を支持する軸受等の部品が用いられている。そして、このような変速機では、適正に変速できるように、これらの部品の耐久性等の各種性能の向上が求められている。そこで、本発明は、性能向上を図ることが可能な変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、を有し、第1軸軌道面、第1玉、及び第1外輪における動等価荷重は、第2軸軌道面、第2玉、及び第2外輪における動等価荷重よりも大きく、第1玉と第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比は、第2玉と第2軸軌道面とにおける溝曲率半径比よりも小さい。
【0006】
この変速機では、動等価荷重が大きい側である第1玉と第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比が、動等価荷重が小さい側の溝曲率半径比よりも小さい。ここで、溝曲率半径比が小さくなるにしたがって、玉と回転軸に設けられた軌道面との接触楕円(接触面)が大きくなり、玉と軌道面との間での面圧が低下する。このため、この変速機では、動等価荷重が大きい側の第1玉と第1軸軌道面との面圧が低減され、これらの寿命向上及び静的面圧の低減が可能となる。このように、この変速機では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0007】
上記の変速機において、第1玉と第1外輪軌道面とにおける溝曲率半径比は、第2玉と第2外輪軌道面とにおける溝曲率半径比よりも小さくてもよい。ここで、溝曲率半径比が小さくなるにしたがって、玉と外輪に設けられた軌道面との接触楕円が大きくなり、玉と軌道面との間での面圧が低下する。このため、この変速機では、動等価荷重が大きい側の第1玉と第1外輪軌道面との面圧が低減され、これらの寿命向上及び静的面圧の低減が可能となる。このように、この変速機では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上をさらに図ることができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、第1軸軌道面、第1転動体、及び第1外輪における動等価荷重は、第2軸軌道面、第2転動体、及び第2外輪における動等価荷重よりも大きく、第1軸軌道面の軌道径は、第2軸軌道面の軌道径よりも大きく、第1外輪軌道面の軌道径は、第2外輪軌道面の軌道径よりも大きい。
【0009】
この変速機では、動等価荷重が大きい側である第1軸軌道面の軌道径及び第1外輪軌道面の軌道径が、それぞれ動等価荷重が小さい側の第2軸軌道面の軌道径及び第2外輪軌道面の軌道径よりも大きい。これにより、動等価荷重が大きい側のPCD(Pitch Circle Diameter)を上げることで第1転動体の数を増加させ、動等価荷重が大きい側の軸受の容量を増加させることができる。このように、この変速機では、動等価荷重が大きい側の第1転動体の数を増加させることができるため、動等価荷重が大きい側の軸受における寿命を向上させることができる。したがって、この変速機では、軸軌道面及び外輪軌道面の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、を有し、第1軸軌道面が受けるアキシアル荷重は、第2軸軌道面が受けるアキシアル荷重よりも大きく、第1玉と第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比は、第2玉と第2軸軌道面とにおける溝曲率半径比よりも大きい。
【0011】
この変速機では、アキシアル荷重が大きい側である第1玉と第1軸軌道面とにおける溝曲率半径比が、動等価荷重が小さい側の第2玉と第2軸軌道面とにおける溝曲率半径比よりも大きい。ここで、溝曲率半径比が大きくなるにしたがって、玉と回転軸に設けられた軌道面との接触楕円が小さくなり、玉が回転軸に設けられた軌道面を乗り上げにくくなる。なお、玉が軌道面を乗り上げることとは、玉と軌道面との接触楕円(接触面)が溝(軌道面)からはみ出ることをいう。このため、この変速機では、アキシアル荷重が大きい側の第1玉と第1軸軌道面との接触楕円を小さくすることができ、第1玉の乗り上げを抑制できる。このように、この変速機では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0012】
上記の変速機において、第1玉と第1外輪軌道面とにおける溝曲率半径比は、第2玉と第2外輪軌道面とにおける溝曲率半径比よりも大きくてもよい。溝曲率半径比が大きくなるにしたがって、玉と外輪に設けられた軌道面との接触楕円が小さくなり、玉が外輪の軌道面を乗り上げにくくなる。このため、この変速機では、アキシアル荷重が大きい側の第1玉と第1外輪軌道面との接触楕円を小さくすることができ、第1玉の乗り上げを抑制できる。このように、この変速機では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上をさらに図ることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、第1軸軌道面、第1転動体、及び第1外輪における動等価荷重は、第2軸軌道面、第2転動体、及び第2外輪における動等価荷重よりも大きく、第1転動体の直径は、第2転動体の直径よりも大きく、第1転動体の数は、第2転動体の数よりも多い。
【0014】
この変速機では、動等価荷重が大きい側である第1転動体の直径が動等価荷重が小さい側の第2転動体の直径よりも大きく、動等価荷重が大きい側である第1転動体の数が動等価荷重が小さい側の第2転動体の数よりも多い。ここで、負荷が高い側(動等価荷重が大きい側)の軸受は、より高い動定格荷重が求められる。このため、動等価荷重が大きい側の第1転動体の直径を大きく且つ第1転動体の数を多くすることにより、負荷が高い場合であっても第1転動体によって回転軸を回転可能に適切に支持することができる。このように、回転軸を第1転動体周り及び第2転動体周りの2カ所で支持する場合において、負荷に応じた適切な設計が可能となる。したがって、この変速機では、転動体の直径及び数の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0015】
上記の変速機において、第1軸軌道面の軌道径と第2軸軌道面の軌道径とは互いに異なっていてもよい。ここで、回転軸では、第1転動体で支持される部分と第2転動体で支持される部分とにおいて求められる強度レベルが互いに異なることがある。このような場合において、第1軸軌道面の軌道径と第2軸軌道面の軌道径とを互いに異ならせることにより、求められる強度レベルに応じた回転軸を得ることができる。例えば、第1軸軌道面の軌道径と第2軸軌道面の軌道径とを、それぞれ求められる強度レベルに応じた大きさとすることにより、回転軸が過剰に太くなることを抑制し、回転軸の小型化を図ることができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、ギヤには、第1転動体側に向う荷重を受け、第1転動体の数は、第2転動体の数よりも多い。
【0017】
この変速機では、ギヤが第1転動体側に向う荷重を受ける。つまりギヤは、第1転動体側に傾く荷重を受ける。そして、ギヤが荷重を受ける側の第1転動体の数が第2転動体の数よりも多い。これにより、この変速機では、荷重を受ける第1転動体側において、第1転動体が回転軸を支持するときのラジアル剛性を向上させることができる。このように、この変速機では、荷重を受ける側の転動体の数の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0018】
上記の変速機において、第1転動体の直径は、第2転動体の直径よりも大きくてもよい。この場合、変速機は、荷重を受ける第1転動体側において、第1転動体が回転軸を支持するときのラジアル剛性をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1玉と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2玉と、を有し、回転軸における第2軸軌道面が設けられる側の端部には、回転力が入力される入力部が設けられ、ギヤは、入力部から回転軸に入力された回転力を出力し、第2軸軌道面の溝曲率半径は、第1軸軌道面の溝曲率半径よりも大きい。
【0020】
この変速機では、回転軸において、回転力が入力される入力部と回転力を出力するギヤとの間に第2軸軌道面が設けられている。そして、第2軸軌道面の溝曲率半径は、第1軸軌道面の溝曲率半径よりも大きい。ここで、入力部とギヤとの間に設けられた第2軸軌道面には、第1軸軌道面よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2軸軌道面の溝曲率半径を大きくすることにより、第2軸軌道面に応力が集中することを抑制できる。このように、この変速機では、溝曲率半径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、回転軸における第2軸軌道面が設けられる側の端部には、回転力が入力される入力部が設けられ、ギヤは、入力部から回転軸に入力された回転力を出力し、第2軸軌道面の軌道径は、第1軸軌道面の軌道径よりも大きい。
【0022】
この変速機では、回転軸において、回転力が入力される入力部と回転力を出力するギヤとの間に第2軸軌道面が設けられている。そして、第2軸軌道面の軌道径は、第1軸軌道面の軌道径よりも大きい。ここで、入力部とギヤとの間に設けられた第2軸軌道面には、第1軸軌道面よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2軸軌道面の軌道径を大きくすることにより、第2軸軌道面に応力が集中することを抑制できる。このように、この変速機では、軸軌道面の軌道径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、回転軸における第2軸軌道面が設けられる側の端部には、回転力が入力される入力部が設けられ、ギヤは、入力部から回転軸に入力された回転力を出力し、回転軸において第2軸軌道面とギヤとの間の部分には、大径部が設けられ、大径部は、第1軸軌道面とギヤとの間における回転軸の最も外径が大きい部分よりも外径が大きい。
【0024】
この変速機では、回転軸において、第2軸軌道面とギヤとの間の部分に、第1軸軌道面とギヤとの間における回転軸の最も外径が大きい部分よりも外径が大きい大径部が設けられている。ここで、回転軸には入力部から回転力が入力される。そして、回転軸では、入力された回転力がギヤから出力される。これにより、回転軸において、第2軸軌道面とギヤとの間の部分には、ギヤと第1軸軌道面との間の部分よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2軸軌道面とギヤとの間に大径部を設けることにより、第2軸軌道面とギヤとの間の部分に応力が集中することを抑制できる。このように、この変速機では、回転軸の外径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に軸軌道面を有する回転軸と、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する支持部に取り付けられ、軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、軸軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、を有し、回転軸の一方の端部から軸軌道面の幅方向の中央位置までの回転軸の外径は、軸軌道面の軌道径となっている。
【0026】
この変速機では、回転軸の一方の端部の外径が、軸軌道面の軌道径と同じとなっている。このため、外輪の内側に複数の玉が配置された状態で、これらを回転軸の一方の端部から軸軌道面の位置にスライドさせることによって、外輪及び玉を容易に回転軸に組み付けることができる。このように、この変速機では、回転軸ユニットの組立性の向上を図ることができる。
【0027】
本発明の第10の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に軸軌道面を有する回転軸と、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する支持部に取り付けられ、軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、軸軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を有し、複数の転動体は、回転軸の周方向に沿って並ぶ第1群の複数の転動体と、第1群の複数の転動体と回転軸の延在方向において隣接するとともに回転軸の周方向に沿って並ぶ第2群の複数の転動体とを含み、外輪軌道面は、回転軸の延在方向の一方の端部と他方の端部との間の中間部が径方向外側に向って円弧状に湾曲する形状を呈している。
【0028】
この変速機では、第1群の複数の転動体と第2群の複数の転動体とが回転軸周りに2列に並べて配置され、これらの転動体が円弧状に湾曲する外輪軌道面に当接する。つまり、この変速機では、第1群の転動体と第2群の転動体とが、大きな溝曲率半径を有する共通の外輪軌道面に当接する。これにより、この変速機では、軸受の内輪と回転軸とを一体化する場合であっても回転軸の自動調心機能を付与でき、ロバスト性を向上させることができる。このように、この変速機では、性能向上を図ることができる。
【0029】
本発明の第11の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に軸軌道面を有する回転軸と、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する支持部に取り付けられ、軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、軸軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、外輪における回転軸の延在方向の一方の端部に固定され、回転軸の外周面に向って延びるシール部材と、を有する。
【0030】
この変速機では、回転軸周りにおいて、外輪の外側の領域と、玉が配置される外輪の内側の領域とをシール部材によって仕切ることができる。これにより、例えば、外輪の内側から潤滑油が外部に流出することを抑制し、潤滑性能を向上させることができる。また、例えば、外輪の外側から外輪の内側に異物が入り込むことを抑制し、回転性能の低下を抑制できる。このように、この変速機では、シール部材を設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0031】
本発明の第12の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に軸軌道面を有する回転軸と、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する支持部に取り付けられ、軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、軸軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を有し、回転軸は、ギヤが設けられるギヤ取付部と、ギヤ取付部に隣接するとともに軸軌道面が形成される軌道面形成部と、を有し、ギヤ取付部の外径は、軌道面形成部の外径よりも大きく、ギヤ取付部と軌道面形成部との段差部分の隅部は、円弧状に湾曲した面となっている。
【0032】
この変速機において、ギヤ取付部と軌道面形成部との段差部分の隅部は、円弧状に湾曲した面となっている。これにより、荷重負荷時において、ギヤ取付部と軌道面形成部との段差部分の隅部に応力が集中することを抑制でき、回転軸の強度を向上させることができる。このように、この変速機では、段差部分の隅部を円弧状に湾曲した面とすることによって、性能向上を図ることができる。
【0033】
本発明の第13の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、回転軸における第2軸軌道面が設けられる側の端部には、回転力が入力される入力部が設けられ、ギヤは、入力部から回転軸に入力された回転力を出力し、入力部と第2軸軌道面との間における回転軸の外周面には、周方向に沿って延在する溝部が設けられている。
【0034】
この変速機では、回転軸において、回転力が入力される入力部と第2軸軌道面との間に溝部が設けられている。このように、回転軸に溝部を設けることにより、入力部と第2軸軌道面との間に強度が弱い部分をあえて設けることができる。これにより、変速機では、回転軸に入力部から回転力が入力された場合であっても、第2軸軌道面の応力を低減することができ、第2軸軌道面周りの軸受としての強度を向上させることができる。このように、この変速機では、回転軸に溝部を設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0035】
本発明の第14の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、回転軸における第2軸軌道面が設けられる側の端部には、回転力が入力される入力部が設けられ、ギヤは、入力部から回転軸に入力された回転力を出力し、回転軸の内部には、回転軸の延在方向に沿って延在する軸孔が設けられ、軸孔は、第1の孔径を有する第1軸孔部と、第1の孔径よりも小径の第2の孔径を有する第2軸孔部とを含んで構成され、第1軸孔部と第2軸孔部とは互いに隣接するとともに、第1軸孔部が入力部に近い側に位置し、第1軸孔部と第2軸孔部との段差部は、回転軸の延在方向において、第2軸軌道面と入力部との間に位置している。
【0036】
この変速機では、回転軸の内側に大径の第1軸孔部と小径の第2軸孔部とが設けられている。また、第1軸孔部と第2軸孔部との段差部は、第2軸軌道面と入力部との間に位置している。つまり、第2軸軌道面は、回転軸の肉厚部分(小径の第2軸孔部が設けられた部分)に設けられている。入力部は、回転軸の肉薄部分(大径の第1軸孔部が設けられた部分)に設けられている。これにより、変速機では、回転軸に入力部から回転力が入力された場合であっても、第2軸軌道面の応力を低減することができ、第2軸軌道面周りの軸受としての強度を向上させることができる。このように、この変速機では、回転軸の内部に孔径の異なる軸孔部を設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0037】
本発明の第15の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に軸軌道面を有する回転軸と、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する支持部に取り付けられ、軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、軸軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の玉と、を有し、外輪における軸方向の幅は、玉の直径とほぼ同等以下である。
【0038】
この変速機では、外輪の幅が小さいことによって、軸方向における外輪とギヤとの隙間を大きく確保することができる。ここで、例えば、回転軸に対して外輪及び玉を組み付ける場合、回転軸に対して外輪を偏心させた状態で配置し、軸軌道面と外輪軌道面との間に玉を配置する。その際、外輪の下側に治具を配置し、外輪(外輪軌道面)と回転軸(軸軌道面)との間に配置された玉が落下しないように支えることが行われる。この変速機では、外輪とギヤとの隙間が大きく確保されているため、ギヤに干渉することなく外輪の下側に治具を配置し、玉が落下しないように治具によって支えることができる。これにより、この変速機は、組立性という性能の向上を図ることができる。
【0039】
本発明の第16の態様に係る変速機は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する変速機であって、複数の回転軸ユニットのうちの少なくともいずれかは、外周面に第1軸軌道面及び第2軸軌道面を有する回転軸と、回転軸において第1軸軌道面と第2軸軌道面との間に設けられ、回転軸と一体回転するギヤと、回転軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、回転軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、第1外輪の内径は、第2外輪の外径よりも大きい。
【0040】
ここで、一般に、軸受の外輪は鍛造によって成型される。本発明の第1外輪の内径は、第2外輪の外径よりも大きくなっている。このため、外輪の素材に対して、1回鍛造工程を行うことにより、第1外輪の素形材と第2外輪の素形材とを一度で成型することが可能となる。このように、本発明では、第1外輪及び第2外輪を成型するための鍛造工程の回数を少なくすることができ、第1外輪及び第2外輪の生産性を向上させることができる。これにより、この変速機は、生産性という性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の種々の態様によれば、性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、実施形態に係る減速機の主要部を示す断面図である。
図2図2は、図1のインプットギヤユニット周りの拡大断面図である。
図3図3は、溝曲率半径比を説明するための玉及び軌道面周りの断面図である。
図4図4は、図1のカウンターギヤユニット周りの拡大断面図である。
図5図5は、図1のデファレンシャルギヤユニット周りの拡大断面図である。
図6図6は、図1の駆動ユニット周りの拡大断面図である。
図7図7は、第3変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
図8図8は、変形例に係る軸受の拡大断面図である。
図9図9は、第4変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
図10図10は、第4変形例に係るインプットギヤユニットのインプットシャフトに対して第1インプットシャフト外輪及び玉を組み付ける様子を示す断面図である。
図11図11は、第5変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では、本発明に係る変速機として、駆動ユニットの回転速度を減速する減速機を用いて説明する。
【0044】
図1に示されるように、減速機(変速機)1は、複数の回転軸ユニットを備え、入力された回転力の回転速度を回転軸ユニット間で変速して出力する。具体的には、減速機1は、回転軸ユニットとしてのインプットギヤユニット10、回転軸ユニットとしてのカウンターギヤユニット20、デファレンシャルギヤユニット30、及び駆動ユニット40を備えている。駆動ユニット40は、電動モータを備えている。本実施形態における減速機1は、一例として、駆動ユニット40を有するEV(Electric Vehicle)用3軸並行減速機として構成されている。減速機1は、図1では省略されているが、インプットギヤユニット10等の各機構を収容する筐体を備えている。
【0045】
[インプットギヤユニットの構成]
インプットギヤユニット10は、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続される。つまり、インプットギヤユニット10には、駆動ユニット40のロータシャフト42の回転が直接伝達される。より詳細には、インプットギヤユニット10は、図2に示されるように、インプットシャフト(回転軸)11、インプットシャフト出力ギヤ(ギヤ)12、第1インプットシャフト外輪(第1外輪、外輪)13、複数の玉(第1玉、玉、第1転動体、転動体)14、第1インプットシャフト保持器15、第2インプットシャフト外輪(第2外輪、外輪)16、複数の玉(第2玉、玉、第2転動体、転動体)17、及び第2インプットシャフト保持器18を備えている。
【0046】
インプットシャフト11は、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続される。ここでは、インプットシャフト11において、ロータシャフト42に接続される側の端部の外周面には、スプライン(入力部)11sが形成されている。インプットシャフト11は、スプライン11sによってロータシャフト42とスプライン結合する。また、インプットシャフト11は、外周面に、第1インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面、軸軌道面)K11及び第2インプットシャフト軌道面(第2軸軌道面、軸軌道面)K12を有している。
【0047】
第1インプットシャフト軌道面K11は、インプットシャフト11におけるスプライン11sが形成された側の端部に対して反対側の端部近傍の外周面に設けられている。第2インプットシャフト軌道面K12は、インプットシャフト11におけるスプライン11sの近傍の外周面に設けられている。第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12は、インプットシャフト11の外周面の周方向に延びる溝である。
【0048】
インプットシャフト出力ギヤ12は、インプットシャフト11に設けられ、インプットシャフト11と一体回転する。インプットシャフト出力ギヤ12は、第1インプットシャフト軌道面K11と第2インプットシャフト軌道面K12との間の位置に設けられている。本実施形態においてインプットシャフト出力ギヤ12は、インプットシャフト11と一体に設けられている。インプットシャフト出力ギヤ12は、インプットシャフト11に入力された回転力をカウンターギヤユニット20に出力する。
【0049】
第1インプットシャフト外輪13は、インプットシャフト11を支持するインプットシャフト支持部(第1支持部、支持部)C1aに取り付けられている。なお、インプットシャフト支持部C1aは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1インプットシャフト外輪13は、第1インプットシャフト軌道面K11を囲むように設けられている。第1インプットシャフト外輪13は、インプットシャフト支持部C1aに取り付けられる外周面13a、及びインプットシャフト11の外周面(第1インプットシャフト軌道面K11)に対向する内周面13bを有している。
【0050】
第1インプットシャフト外輪13は、第1インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面、外輪軌道面)L11を内周面13bに有している。第1インプットシャフト外輪軌道面L11は、第1インプットシャフト外輪13の内周面13bの周方向に延びる溝である。
【0051】
複数の玉14は、インプットシャフト11の第1インプットシャフト軌道面K11と、第1インプットシャフト外輪13の第1インプットシャフト外輪軌道面L11との間に配置されている。玉14は、球状を呈している。第1インプットシャフト保持器15は、インプットシャフト11の外周面と第1インプットシャフト外輪13の内周面13bとの間において、複数の玉14のそれぞれを転動自在に保持する。
【0052】
第2インプットシャフト外輪16は、インプットシャフト11を支持するインプットシャフト支持部(第2支持部、支持部)C1bに取り付けられている。なお、インプットシャフト支持部C1bは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第2インプットシャフト外輪16は、第2インプットシャフト軌道面K12を囲むように設けられている。第2インプットシャフト外輪16は、インプットシャフト支持部C1bに取り付けられる外周面16a、及びインプットシャフト11の外周面(第2インプットシャフト軌道面K12)に対向する内周面16bを有している。
【0053】
第2インプットシャフト外輪16は、第2インプットシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面、外輪軌道面)L12を内周面16bに有している。第2インプットシャフト外輪軌道面L12は、第2インプットシャフト外輪16の内周面16bの周方向に延びる溝である。
【0054】
複数の玉17は、インプットシャフト11の第2インプットシャフト軌道面K12と、第2インプットシャフト外輪16の第2インプットシャフト外輪軌道面L12との間に配置されている。玉17は、球状を呈している。第2インプットシャフト保持器18は、インプットシャフト11の外周面と第2インプットシャフト外輪16の内周面16bとの間において、複数の玉17のそれぞれを転動自在に保持する。
【0055】
このように、インプットシャフト11は、第1インプットシャフト軌道面K11の部位と第2インプットシャフト軌道面K12の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるインプットギヤユニット10は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるインプットギヤユニット10では、インプットシャフト11が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0056】
また、本実施形態におけるインプットギヤユニット10では、第1インプットシャフト外輪13、玉14、及びインプットシャフト11の第1インプットシャフト軌道面K11により、深溝玉軸受である軸受機構G1Aが構成されている。同様に、第2インプットシャフト外輪16、玉17、及びインプットシャフト11の第2インプットシャフト軌道面K12により、深溝玉軸受である軸受機構G1Bが構成されている。つまり、インプットギヤユニット10においてインプットシャフト11は、軸受機構G1A及び軸受機構G1Bによって回転可能に支持される。
【0057】
本実施形態におけるインプットシャフト11は、第1軌道面形成部(軌道面形成部)11aと、ギヤ取付部11bと、第2軌道面形成部(軌道面形成部)11cとを有している。第1軌道面形成部11aは、インプットシャフト11のうち、第1インプットシャフト軌道面K11が設けられる部分である。第2軌道面形成部11cは、インプットシャフト11のうち、第2インプットシャフト軌道面K12が設けられる部分である。ギヤ取付部11bは、第1軌道面形成部11aと第2軌道面形成部11cとの間に位置している。つまり、第1軌道面形成部11aは、ギヤ取付部11bに隣接している。同様に、第2軌道面形成部11cは、ギヤ取付部11bに隣接している。ギヤ取付部11bには、インプットシャフト出力ギヤ12が設けられる。
【0058】
ギヤ取付部11bの外径は、第1軌道面形成部11aの外径よりも大きい。すなわち、第1軌道面形成部11aとギヤ取付部11bとの接続部分は、段差部となっている。この段差部分への応力集中を抑制する構成として、ギヤ取付部11bと第1軌道面形成部11aとの段差部分の隅部E1は、円弧状に湾曲した面となっている。すなわち、ギヤ取付部11bにおける第1軌道面形成部11a側の端面と、第1軌道面形成部11aの外周面とが、隅部E1において、円弧状に湾曲した面となるように互いに接続されている。隅部E1における曲率半径(隅R)は、大きいほどよい。
【0059】
また、ギヤ取付部11bの外径は、第2軌道面形成部11cの外径よりも大きい。すなわち、第2軌道面形成部11cとギヤ取付部11bとの接続部分は、段差部となっている。段差部分への応力集中を抑制する構成として、ギヤ取付部11bと第2軌道面形成部11cとの段差部分の隅部E2は、円弧状に湾曲した面となっている。すなわち、ギヤ取付部11bにおける第2軌道面形成部11c側の端面と、第2軌道面形成部11cの外周面とが、隅部E2において、円弧状に湾曲した面となるように互いに接続されている。隅部E2における曲率半径(隅R)は、大きいほどよい。
【0060】
ここで、本実施形態のインプットギヤユニット10では、一例として、軸受機構G1Aにおける動等価荷重が、軸受機構G1Bにおける動等価荷重よりも高いとする。インプットギヤユニット10は、この動等価荷重に対応するための構成を有している。具体的には、動等価荷重に対応するための構成として、軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとにおいて溝曲率半径比が互いに異なっている。
【0061】
ここで、溝曲率半径比について図3を用いて説明する。図3に示されるように、シャフトSの外周面に溝状の軌道面Kが形成されている。軌道面Kの溝におけるシャフトSの軸方向の形状は、軌道溝仮想円S1に沿った円弧状を呈している。軌道溝仮想円S1の半径をr1とする。また、球状の玉Tの半径をr2とする。シャフトSの軌道面Kと玉Tとの溝曲率半径比は、r1/r2で表される。
【0062】
本実施形態において、玉14と第1インプットシャフト軌道面K11とにおける溝曲率半径比は、玉17と第2インプットシャフト軌道面K12とにおける溝曲率半径比よりも小さい。これにより、玉14と第1インプットシャフト軌道面K11との接触楕円(接触面)は、玉17と第2インプットシャフト軌道面K12との接触楕円よりも大きくなる。したがって、玉14と第1インプットシャフト軌道面K11との面圧が、玉17と第2インプットシャフト軌道面K12との面圧よりも小さくなる。
【0063】
また、玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11とにおける溝曲率半径比は、玉17と第2インプットシャフト外輪軌道面L12とにおける溝曲率半径比よりも小さい。これにより、玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11との接触楕円は、玉17と第2インプットシャフト外輪軌道面L12との接触楕円よりも大きくなる。したがって、玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11との面圧が、玉17と第2インプットシャフト外輪軌道面L12との面圧よりも小さくなる。
【0064】
このように、インプットギヤユニット10は、動等価荷重が大きい側である軸受機構G1Aの溝曲率半径比を小さくすることで、軸受機構G1A側における面圧を小さくすることができる。
【0065】
また、動等価荷重に対応するための構成として、軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとにおいて軸軌道面の軌道径が互いに異なっている。具体的には、動等価荷重が大きい側の軸受機構G1Aの第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径は、軸受機構G1Bの第2インプットシャフト軌道面K12の軌道径よりも大きい。また、動等価荷重が大きい側の軸受機構G1Aの第1インプットシャフト外輪軌道面L11の軌道径は、軸受機構G1B側の第2インプットシャフト外輪軌道面L12の軌道径よりも大きい。軌道径を大きくすることにより、第1インプットシャフト軌道面K11と第1インプットシャフト外輪軌道面L11との間に配置される玉14の数を増加させることができる。なお、この場合、玉14の直径と玉17の直径とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0066】
さらに、動等価荷重に対応するための構成として、軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとにおいて玉の構成が互いに異なっている。具体的には、動等価荷重が大きい側の軸受機構G1Aの玉14の直径は、軸受機構G1Bの玉17の直径よりも大きい。また、動等価荷重が大きい側の軸受機構G1Aの玉14の数は、軸受機構G1Bの玉17の数よりも多い。
【0067】
なお、ここでは、一例として軸受機構G1A側の動等価荷重が高い場合を例に説明したが、軸受機構G1Bの動等価荷重が軸受機構G1Aよりも高くてもよい。この場合、上述した軸受機構G1A及び軸受機構G1Bのそれぞれに適用されている構成を逆にして適用すればよい。
【0068】
次に、インプットギヤユニット10の各部の強度を向上させるための構成について説明する。玉14及び17には、特殊熱処理が施されていてもよい。この場合、インプットシャフト11の回転によって生じる第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12の面荒れを軽減し、インプットシャフト11の耐疲労強度を向上させることができる。
【0069】
また、強度を向上させるための構成として、第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12に高周波焼入れが施されていてもよい。これにより、インプットシャフト11の耐疲労強度を向上させることができる。なお、高周波焼入れを行う際に、第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12からインプットシャフト11の内径面(第2軸孔部M2の内周面)まで硬化させるとよい。これにより、第1インプットシャフト軌道面K11上を玉14が転がる際にインプットシャフト11の内径面に応力が発生するが、この部分の強度を向上させることができる。同様に、第2インプットシャフト外輪軌道面L12上を玉17が転がる際にインプットシャフト11の内径面に応力が発生するが、この部分の強度を向上させることができる。
【0070】
次に、軸軌道面の応力を低減させるための構成について説明する。ここで、インプットシャフト11にはスプライン11sから回転力が入力され、入力された回転力はインプットシャフト出力ギヤ12から出力される。このため、インプットシャフト11におけるスプライン11sとインプットシャフト出力ギヤ12との間に特に大きなねじり力が生じる。このため、第2インプットシャフト軌道面K12の応力を低減させる構成について説明する。
【0071】
インプットシャフト11の内部には、インプットシャフト11の軸方向(回転軸A1の方向)に沿って延びる軸孔Mが設けられている。軸孔Mは、例えば、油路として利用されてもよい。軸孔Mは、第1の孔径を有する第1軸孔部M1と、第1の孔径よりも小径の第2の孔径を有する第2軸孔部M2とを含んで構成されている。第1軸孔部M1と第2軸孔部M2とは互いに隣接して連通するとともに、第1軸孔部M1がスプライン11sに近い側に位置している。第1軸孔部M1と第2軸孔部M2との段差部(接続部分)は、インプットシャフト11の延在方向において、第2インプットシャフト軌道面K12とスプライン11sとの間に位置している。つまり、第2インプットシャフト軌道面K12は、スプライン11sが設けられた部位よりもインプットシャフト11の肉厚部分に設けられる。これにより、インプットシャフト11にスプライン11sから回転力(トルク)が入力されたときに、第2インプットシャフト軌道面K12の応力が低減される。
【0072】
また、軸軌道面の応力を低減させるための構成として、インプットシャフト11の外周面には、周方向に沿って延在する溝部が設けられている。具体的には、スプライン11sと第2インプットシャフト軌道面K12との間におけるインプットシャフト11の外周面に、周方向に沿って延在する溝部11dが設けられている。溝部11dの溝形状は、円弧状を呈していてもよく、矩形状を呈していてもよい。つまり、溝部11dを設けることにより、溝部11dの部位が脆弱部となる。これにより、インプットシャフト11にスプライン11sから回転力(トルク)が入力されたときに、溝部11dに応力が集中し、第2インプットシャフト軌道面K12の応力が低減される。
【0073】
次に、製造時におけるインプットシャフト11の精度を向上させるための構成について説明する。インプットシャフト11は、研磨されることによって第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12の形状の仕上げが行われる。このため、インプットシャフト11は、仕上げの研磨前の状態において、第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12の取り代(削り代)を十分備える構成とされている。これにより、仕上げの研磨の際に、第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12における芯ずれを抑制できる。
【0074】
[カウンターギヤユニットの構成]
図1に示されるように、カウンターギヤユニット20には、インプットギヤユニット10から回転力が伝達される。より詳細には、カウンターギヤユニット20は、図4に示されるように、カウンターシャフト(回転軸)21、カウンターシャフト入力ギヤ22、カウンターシャフト出力ギヤ(ギヤ)23、第1カウンターシャフト外輪(第1外輪、外輪)24、複数の玉(第1玉、玉)25、第1カウンターシャフト保持器26、第2カウンターシャフト外輪(第2外輪、外輪)27、複数の玉(第2玉、玉)28、及び第2カウンターシャフト保持器29を備えている。
【0075】
カウンターシャフト21には、カウンターシャフト入力ギヤ22を介してインプットギヤユニット10から回転力が伝達される。カウンターシャフト21の回転軸A2とインプットシャフト11の回転軸A1とは互いに並行である(図1参照)。カウンターシャフト21は、外周面に、第1カウンターシャフト軌道面(第1軸軌道面、軸軌道面)K21及び第2カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面、軸軌道面)K22を有している。
【0076】
第1カウンターシャフト軌道面K21は、カウンターシャフト21の一方の端部近傍の外周面に設けられている。第2カウンターシャフト軌道面K22は、カウンターシャフト21の他方の端部近傍の外周面に設けられている。第1カウンターシャフト軌道面K21及び第2カウンターシャフト軌道面K22は、カウンターシャフト21の外周面の周方向に延びる溝である。
【0077】
カウンターシャフト入力ギヤ22は、カウンターシャフト21に設けられ、カウンターシャフト21と一体回転する。カウンターシャフト入力ギヤ22は、第1カウンターシャフト軌道面K21と第2カウンターシャフト軌道面K22との間の位置に設けられている。カウンターシャフト入力ギヤ22は、インプットギヤユニット10のインプットシャフト出力ギヤ12に噛み合う。これにより、カウンターシャフト21には、カウンターシャフト入力ギヤ22を介してインプットギヤユニット10から回転力が伝達される。
【0078】
本実施形態においてカウンターシャフト入力ギヤ22は、カウンターシャフト21と別体として設けられている。カウンターシャフト21とカウンターシャフト入力ギヤ22とは、例えばスプライン結合している。この場合、例えば、カウンターシャフト入力ギヤ22がカウンターシャフト21から抜け出ないように、ナット22aによって抜け止めがされていてもよい。
【0079】
インプットギヤユニット10のインプットシャフト出力ギヤ12に設けられた歯数よりも、カウンターシャフト入力ギヤ22に設けられた歯数の方が多い。このため、インプットギヤユニット10からカウンターギヤユニット20に回転力が伝達される際に回転速度が減速される。
【0080】
カウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト21に設けられ、カウンターシャフト21と一体回転する。カウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト入力ギヤ22と第2カウンターシャフト軌道面K22との間の位置に設けられている。本実施形態においてカウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト21と一体に設けられている。カウンターシャフト出力ギヤ23は、デファレンシャルギヤユニット30に回転力を出力する。
【0081】
第1カウンターシャフト外輪24は、カウンターシャフト21を支持するカウンターシャフト支持部(第1支持部、支持部)C2aに取り付けられている。なお、カウンターシャフト支持部C2aは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1カウンターシャフト外輪24は、第1カウンターシャフト軌道面K21を囲むように設けられている。第1カウンターシャフト外輪24は、カウンターシャフト支持部C2aに取り付けられる外周面24aを有している。第1カウンターシャフト外輪24の内周面には、第1カウンターシャフト軌道面K21に対向する第1カウンターシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面、外輪軌道面)L21が設けられている。第1カウンターシャフト外輪軌道面L21は、第1カウンターシャフト外輪24の内周面24bの周方向に延びる溝である。
【0082】
複数の玉25は、カウンターシャフト21の第1カウンターシャフト軌道面K21と第1カウンターシャフト外輪24の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21との間に配置されている。玉25は、球状を呈している。第1カウンターシャフト保持器26は、カウンターシャフト21の外周面と第1カウンターシャフト外輪24の内周面24bとの間において、複数の玉25のそれぞれを転動自在に保持する。
【0083】
第2カウンターシャフト外輪27は、カウンターシャフト21を支持するカウンターシャフト支持部(第2支持部、支持部)C2bに取り付けられている。第2カウンターシャフト外輪27は、第2カウンターシャフト軌道面K22を囲むように設けられている。第2カウンターシャフト外輪27は、カウンターシャフト支持部C2bに取り付けられる外周面27aを有している。第2カウンターシャフト外輪27の内周面27bには、第2カウンターシャフト軌道面K22に対向する第2カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面、外輪軌道面)L22が設けられている。第2カウンターシャフト外輪軌道面L22は、第2カウンターシャフト外輪27の内周面27bの周方向に延びる溝である。
【0084】
複数の玉28は、カウンターシャフト21の第2カウンターシャフト軌道面K22と第2カウンターシャフト外輪27の第2カウンターシャフト外輪軌道面L22との間に配置されている。玉28は、球状を呈している。第2カウンターシャフト保持器29は、カウンターシャフト21の外周面と第2カウンターシャフト外輪27の内周面27bとの間において、複数の玉28のそれぞれを転動自在に保持する。
【0085】
このように、カウンターシャフト21は、第1カウンターシャフト軌道面K21の部位と第2カウンターシャフト軌道面K22の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるカウンターギヤユニット20は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるカウンターギヤユニット20では、カウンターシャフト21が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0086】
また、本実施形態におけるカウンターギヤユニット20では、第1カウンターシャフト外輪24、玉25、及びカウンターシャフト21の第1カウンターシャフト軌道面K21により、深溝玉軸受である軸受機構G2Aが構成されている。同様に、第2カウンターシャフト外輪27、玉28、及びカウンターシャフト21の第2カウンターシャフト軌道面K22により、深溝玉軸受である軸受機構G2Bが構成されている。つまり、カウンターギヤユニット20においてカウンターシャフト21は、軸受機構G2A及び軸受機構G2Bによって回転可能に支持される。
【0087】
カウンターギヤユニット20は、上述したインプットギヤユニット10の「段差部分への応力集中を抑制する構成」、「動等価荷重に対応するための構成」、「強度を向上させるための構成」、「軸軌道面の応力を低減させるための構成」、及び「精度を向上させるための構成」の少なくともいずれかを備えることができる。
【0088】
[デファレンシャルギヤユニットの構成]
図1に示されるように、デファレンシャルギヤユニット30には、カウンターギヤユニット20から回転力が伝達される。より詳細には、デファレンシャルギヤユニット30は、図5に示されるように、デファレンシャルケース31、デファレンシャル入力ギヤ32、差動機構33、第1デファレンシャル外輪34、複数の転動体35、第1デファレンシャル保持器36、第2デファレンシャル外輪37、複数の転動体38、及び第2デファレンシャル保持器39を備えている。
【0089】
デファレンシャルケース31には、デファレンシャル入力ギヤ32を介してカウンターギヤユニット20から回転力が伝達される。デファレンシャルケース31の回転軸A3とカウンターギヤユニット20の回転軸A2とは互いに並行である(図1参照)。デファレンシャルケース31は、差動機構33を収容する収容空間を内部に有している。デファレンシャルケース31は、外周面に、第1デファレンシャル軌道面K31及び第2デファレンシャル軌道面K32を有している。
【0090】
第1デファレンシャル軌道面K31は、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向における一方の端部近傍の外周面に設けられている。第1デファレンシャル軌道面K31は、デファレンシャルケース31の一方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。第2デファレンシャル軌道面K32は、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向における他方の端部近傍の外周面に設けられている。第2デファレンシャル軌道面K32は、デファレンシャルケース31の他方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0091】
デファレンシャル入力ギヤ32は、デファレンシャルケース31に設けられ、デファレンシャルケース31と一体回転する。デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31と第2デファレンシャル軌道面K32との間の位置に設けられている。デファレンシャル入力ギヤ32は、カウンターギヤユニット20のカウンターシャフト出力ギヤ23と噛み合う。これにより、デファレンシャルケース31には、デファレンシャル入力ギヤ32を介してカウンターギヤユニット20から回転力が伝達される。本実施形態において、デファレンシャル入力ギヤ32は、デファレンシャルケース31と一体に設けられている。
【0092】
カウンターギヤユニット20のカウンターシャフト出力ギヤ23に設けられた歯数よりも、デファレンシャル入力ギヤ32に設けられた歯数の方が多い。このため、カウンターギヤユニット20からデファレンシャルギヤユニット30に回転力が伝達される際に回転速度が減速される。
【0093】
差動機構33は、デファレンシャルケース31の内部に設けられる。差動機構33は、例えば、ピニオンギヤ及びサイドギヤ等を備える車両用デファレンシャルギヤユニットの差動機構である。差動機構33としては、周知の種々の機構を用いることができる。デファレンシャルケース31には、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向の両端部に第1差込口h1及び第2差込口h2がそれぞれ設けられている。差動機構33は、第1差込口h1及び第2差込口h2から差し込まれたドライブシャフト等に回転力を伝達する。なお、第1差込口h1は、環状に延在する第1デファレンシャル軌道面K31の内側に位置している。第2差込口h2は、環状に延在する第2デファレンシャル軌道面K32の内側に位置している。
【0094】
第1デファレンシャル外輪34は、デファレンシャルケース31を支持するデファレンシャル支持部C3aに取り付けられている。なお、デファレンシャル支持部C3aは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1デファレンシャル外輪34は、第1デファレンシャル軌道面K31を囲むように設けられている。第1デファレンシャル外輪34は、デファレンシャル支持部C3aに取り付けられる外周面34aを有している。第1デファレンシャル外輪34の内周面には、第1デファレンシャル軌道面K31に対向する第1デファレンシャル外輪軌道面L31が設けられている。第1デファレンシャル外輪軌道面L31は、デファレンシャルケース31の一方の端部側(外側)に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0095】
複数の転動体35は、デファレンシャルケース31の第1デファレンシャル軌道面K31と第1デファレンシャル外輪34の第1デファレンシャル外輪軌道面L31との間に配置されている。転動体35は、円すいころである。第1デファレンシャル保持器36は、デファレンシャルケース31の外周面と第1デファレンシャル外輪34の内周面との間において、複数の転動体35のそれぞれを転動自在に保持する。
【0096】
なお、デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31の小径側端部に隣接して設けられた第1デファレンシャル小鍔部31aと、第1デファレンシャル軌道面K31の大径側端部に隣接して設けられた第1デファレンシャル大鍔部31bと、を有している。
【0097】
第2デファレンシャル外輪37は、デファレンシャルケース31を支持するデファレンシャル支持部C3bに取り付けられている。なお、デファレンシャル支持部C3bは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第2デファレンシャル外輪37は、第2デファレンシャル軌道面K32を囲むように設けられている。第2デファレンシャル外輪37は、デファレンシャル支持部C3bに取り付けられる外周面37aを有している。第2デファレンシャル外輪37の内周面には、第2デファレンシャル軌道面K32に対向する第2デファレンシャル外輪軌道面L32が設けられている。第2デファレンシャル外輪軌道面L32は、デファレンシャルケース31の他方の端部側(外側)に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0098】
複数の転動体38は、デファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32と第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32との間に配置されている。転動体38は、円すいころである。第2デファレンシャル保持器39は、デファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32と第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32との間において、複数の転動体38のそれぞれを転動自在に保持する。
【0099】
なお、デファレンシャルケース31は、第2デファレンシャル軌道面K32の小径側端部に隣接して設けられた第2デファレンシャル小鍔部31cと、第2デファレンシャル軌道面K32の大径側端部に隣接して設けられた第2デファレンシャル大鍔部31dと、を有している。
【0100】
このように、デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31の部位と第2デファレンシャル軌道面K32の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30では、デファレンシャルケース31が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0101】
また、本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30では、第1デファレンシャル外輪34、転動体35、及びデファレンシャルケース31の第1デファレンシャル軌道面K31により、円すいころ軸受が構成されている。同様に、第2デファレンシャル外輪37、転動体38、及びデファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32により、円すいころ軸受が構成されている。
【0102】
[駆動ユニットの構成]
図1に示されるように、駆動ユニット40は、車両の駆動源となる電動モータユニットを構成する。より詳細には、駆動ユニット40は、図6に示されるように、モータロータ41、ロータシャフト42、第1ロータシャフト外輪43、複数の玉44、第1ロータシャフト保持器45、第2ロータシャフト外輪46、複数の玉47、及び第2ロータシャフト保持器48を備えている。
【0103】
モータロータ41は、電動モータのロータを構成する。図示は省略するが、駆動ユニット40は、駆動機構として、電動モータを構成するマグネット等の部品を備えている。また、駆動ユニット40は、インバータ等の電子部品を備えていてもよい。
【0104】
ロータシャフト42は、モータロータ41の中心部分に設けられている。ロータシャフト42は、モータロータ41によって回転駆動される。ロータシャフト42は、駆動ユニット40の回転力(駆動力)の出力軸となる。ロータシャフト42は、インプットギヤユニット10のインプットシャフト11に接続される。ロータシャフト42の回転軸A4とインプットシャフト11の回転軸A1とは同一軸線上となっている。
【0105】
ここでは、ロータシャフト42において、インプットシャフト11に接続される側の端部の内周面には、スプライン42sが形成されている。ロータシャフト42のスプライン42sとインプットシャフト11のスプライン11sとがスプライン結合することにより、ロータシャフト42とインプットシャフト11とが接続される。また、ロータシャフト42は、外周面に、第1ロータシャフト軌道面K41及び第2ロータシャフト軌道面K42を有している。
【0106】
第1ロータシャフト軌道面K41は、ロータシャフト42におけるインプットシャフト11に接続される側の端部近傍の外周面に設けられている。第2ロータシャフト軌道面K42は、ロータシャフト42における第1ロータシャフト軌道面K41とは反対側の端部近傍の外周面に設けられている。第1ロータシャフト軌道面K41及び第2ロータシャフト軌道面K42は、ロータシャフト42の外周面の周方向に延びる溝である。
【0107】
第1ロータシャフト外輪43は、ロータシャフト42を支持するロータシャフト支持部C4aに取り付けられている。なお、ロータシャフト支持部C4aは、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1ロータシャフト外輪43は、第1ロータシャフト軌道面K41を囲むように設けられている。第1ロータシャフト外輪43は、ロータシャフト支持部C4aに取り付けられる外周面43a、及びロータシャフト42の外周面(第1ロータシャフト軌道面K41)に対向する内周面43bを有している。
【0108】
第1ロータシャフト外輪43は、第1ロータシャフト外輪軌道面L41を内周面43bに有している。第1ロータシャフト外輪軌道面L41は、第1ロータシャフト外輪43の内周面43bの周方向に延びる溝である。
【0109】
複数の玉44は、ロータシャフト42の第1ロータシャフト軌道面K41と、第1ロータシャフト外輪43の第1ロータシャフト外輪軌道面L41との間に配置されている。玉44は、球状を呈している。第1ロータシャフト保持器45は、ロータシャフト42の外周面と第1ロータシャフト外輪43の内周面43bとの間において、複数の玉44のそれぞれを転動自在に保持する。
【0110】
第2ロータシャフト外輪46は、ロータシャフト42を支持するロータシャフト支持部C4bに取り付けられている。第2ロータシャフト外輪46は、第2ロータシャフト軌道面K42を囲むように設けられている。第2ロータシャフト外輪46は、ロータシャフト支持部C4bに取り付けられる外周面46a、及びロータシャフト42の外周面(第2ロータシャフト軌道面K42)に対向する内周面46bを有している。
【0111】
第2ロータシャフト外輪46は、第2ロータシャフト外輪軌道面L42を内周面46bに有している。第2ロータシャフト外輪軌道面L42は、第2ロータシャフト外輪46の内周面46bの周方向に延びる溝である。
【0112】
複数の玉47は、ロータシャフト42の第2ロータシャフト軌道面K42と、第2ロータシャフト外輪46の第2ロータシャフト外輪軌道面L42との間に配置されている。玉47は、球状を呈している。第2ロータシャフト保持器48は、ロータシャフト42の外周面と第2ロータシャフト外輪46の内周面46bとの間において、複数の玉47のそれぞれを転動自在に保持する。
【0113】
このように、ロータシャフト42は、第1ロータシャフト軌道面K41の部位と第2ロータシャフト軌道面K42の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態における駆動ユニット40は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態における駆動ユニット40では、ロータシャフト42が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0114】
また、本実施形態における駆動ユニット40では、第1ロータシャフト外輪43、複数の玉44、及びロータシャフト42の第1ロータシャフト軌道面K41により、深溝玉軸受が構成されている。同様に、第2ロータシャフト外輪46、玉47、及びロータシャフト42の第2ロータシャフト軌道面K42により、深溝玉軸受が構成されている。
【0115】
以上のように、この減速機1のインプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト軌道面K11とにおける溝曲率半径比が、動等価荷重が小さい軸受機構G1B側の玉17と第2インプットシャフト軌道面K12とにおける溝曲率半径比よりも小さい。ここで、溝曲率半径比が小さくなるにしたがって、玉と回転軸に設けられた軌道面との接触楕円(接触面)が大きくなり、玉と軌道面との間での面圧が低下する。このため、このインプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト軌道面K11との面圧が低減され、これらの寿命向上及び静的面圧の低減が可能となる。このように、この減速機1では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0116】
また、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11とにおける溝曲率半径比は、動等価荷重が小さい軸受機構G1B側の玉17と第2インプットシャフト外輪軌道面L12とにおける溝曲率半径比よりも小さい。このため、このインプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11との面圧が低減され、これらの寿命向上及び静的面圧の低減が可能となる。このように、この減速機1では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上をさらに図ることができる。
【0117】
インプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径及び第1インプットシャフト外輪軌道面L11の軌道径が、それぞれ動等価荷重が小さい軸受機構G1B側の第2インプットシャフト軌道面K12の軌道径及び第2インプットシャフト外輪軌道面L12の軌道径よりも大きい。これにより、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側のPCD(Pitch Circle Diameter)を上げることで玉14の数を増加させ、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の軸受の容量を増加させることができる。このように、このインプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい側の玉14の数を増加させることができるため、動等価荷重が大きい軸受機構G1Aにおける寿命を向上させることができる。したがって、この減速機1では、軸軌道面及び外輪軌道面の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0118】
インプットギヤユニット10では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14の直径が動等価荷重が小さい軸受機構G1B側の玉17の直径よりも大きい。また、減速機1では、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14の数が動等価荷重が小さい軸受機構G1B側の玉17の数よりも多い。ここで、負荷が高い側(動等価荷重が大きい側)の軸受は、より高い動定格荷重が求められる。このため、動等価荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14の直径を大きく且つ玉14の数を多くすることにより、負荷が高い場合であっても玉14によってインプットシャフト11を回転可能に適切に支持することができる。このように、インプットシャフト11を玉14周り及び玉17周りの2カ所で支持する場合において、負荷に応じた適切な設計が可能となる。したがって、この減速機では、玉14及び17の直径及び数の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0119】
インプットギヤユニット10では、第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径と第2インプットシャフト軌道面K12の軌道径とが互いに異なっている。ここで、インプットシャフト11では、玉14で支持される部分と玉17で支持される部分とにおいて求められる強度レベルが互いに異なることがある。このような場合において、第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径と第2インプットシャフト軌道面K12の軌道径とを互いに異ならせることにより、求められる強度レベルに応じたインプットシャフト11を得ることができる。例えば、第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径と第2インプットシャフト軌道面K12の軌道径とを、それぞれ求められる強度レベルに応じた大きさとすることにより、インプットシャフト11が過剰に太くなることを抑制し、インプットシャフト11の小型化を図ることができる。
【0120】
インプットギヤユニット10において、ギヤ取付部11bと第1軌道面形成部11aとの段差部分の隅部E1、及びギヤ取付部11bと第2軌道面形成部11cとの段差部分の隅部E2は、それぞれ円弧状に湾曲した面となっている。これにより、荷重負荷時において、ギヤ取付部11bと軌道面形成部11a,11cとの段差部分の隅部E1,E2に応力が集中することを抑制でき、インプットシャフト11の強度を向上させることができる。このように、この減速機1では、段差部分の隅部E1,E2を円弧状に湾曲した面とすることによって、性能向上を図ることができる。
【0121】
インプットシャフト11において、回転力が入力されるスプライン11sと第2インプットシャフト軌道面K12との間に溝部11dが設けられている。このように、インプットシャフト11に溝部11dを設けることにより、スプライン11sと第2インプットシャフト軌道面K12との間に強度が弱い部分をあえて設けることができる。これにより、インプットギヤユニット10では、インプットシャフト11にスプライン11sから回転力が入力された場合であっても、第2インプットシャフト軌道面K12の応力を低減することができ、第2インプットシャフト軌道面K12周りの軸受としての強度を向上させることができる。このように、この減速機1では、インプットシャフト11に溝部11dを設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0122】
インプットギヤユニット10では、インプットシャフト11の内側に大径の第1軸孔部M1と小径の第2軸孔部M2とが設けられている。また、第1軸孔部M1と第2軸孔部M2との段差部は、第2インプットシャフト軌道面K12とスプライン11sとの間に位置している。つまり、第2インプットシャフト軌道面K12は、インプットシャフト11の肉厚部分(小径の第2軸孔部M2が設けられた部分)に設けられている。スプライン11sは、インプットシャフト11の肉薄部分(大径の第1軸孔部M1が設けられた部分)に設けられている。これにより、インプットギヤユニット10では、インプットシャフト11にスプライン11sから回転力が入力された場合であっても、第2インプットシャフト軌道面K12の応力を低減することができ、第2インプットシャフト軌道面K12周りの軸受としての強度を向上させることができる。このように、この減速機1では、インプットシャフト11の内部に孔径の異なる軸孔部(第1軸孔部M1、第2軸孔部M2)を設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0123】
[変形例]
次に、本実施形態に係る減速機1の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0124】
[インプットギヤユニットの第1変形例]
上記実施形態においてインプットギヤユニット10は、動等価荷重に対応するための構成として、軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとにおいて溝曲率半径比を異なるものとした。第1変形例に係るインプットギヤユニット10では、軌道面からの玉の乗り上げに対応するための構成として、軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとにおいて溝曲率半径比を異なるものとすることができる。具体的には、第1変形例に係るインプットギヤユニット10では、軸受機構G1A及び軸受機構G1Bのうち、アキシアル荷重が大きい側の溝曲率半径比を大きくする。
【0125】
例えば、軸受機構G1A側の第1インプットシャフト軌道面K11が受けるアキシアル荷重は、軸受機構G1B側の第2インプットシャフト軌道面K12が受けるアキシアル荷重よりも大きいとする。この場合、インプットギヤユニット10において、玉14と第1インプットシャフト軌道面K11とにおける溝曲率半径比を、玉17と第2インプットシャフト軌道面K12とにおける溝曲率半径比よりも大きくする。同様に、インプットギヤユニット10において、玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11とにおける溝曲率半径比を、玉17と第2インプットシャフト外輪軌道面L12とにおける溝曲率半径比よりも大きくする。
【0126】
ここで、溝曲率半径比が大きくなるにしたがって、玉と軌道面との接触楕円が小さくなり、玉が軌道面を乗り上げにくくなる。なお、玉が軌道面を乗り上げることとは、玉と軌道面との接触楕円(接触面)が溝(軌道面)からはみ出ることをいう。このため、第1変形例に係るインプットギヤユニット10では、アキシアル荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト軌道面K11との接触楕円を小さくすることができ、玉14の乗り上げを抑制できる。また、第1変形例に係るインプットギヤユニット10では、アキシアル荷重が大きい軸受機構G1A側の玉14と第1インプットシャフト外輪軌道面L11との接触楕円を小さくすることができ、玉14の乗り上げを抑制できる。このように、第1変形例に係るインプットギヤユニット10を備える減速機1では、溝曲率半径比の設定によって、性能向上をさらに図ることができる。
【0127】
なお、軸受機構G1A側が軸受機構G1B側よりもアキシアル荷重が大きいとしたが、軸受機構G1B側が軸受機構G1A側よりもアキシアル荷重が大きくてもよい。この場合、上述した溝曲率半径比の大小関係を軸受機構G1A側と軸受機構G1B側とで逆にすればよい。
【0128】
また、カウンターギヤユニット20は、この第1変形例に係るインプットギヤユニット10の「軌道面からの玉の乗り上げに対応するための構成」を備えることができる。
【0129】
[インプットギヤユニットの第2変形例]
上記実施形態においてインプットギヤユニット10は、動等価荷重に対応するための構成として、玉の直径及び数を軸受機構G1A側と軸受機構G1B側とで異なるものとした。第2変形例に係るインプットギヤユニット10では、ギヤが傾く側のラジアル剛性を向上させるための構成として、玉(転動体)の直径及び数を軸受機構G1Aと軸受機構G1Bとで異なるものとすることができる。具体的には、第2変形例に係るインプットギヤユニット10では、軸受機構G1A及び軸受機構G1Bのうち、インプットシャフト出力ギヤ12が傾く側の玉の数を多くし、さらに玉の直径を大きくする。
【0130】
例えば、インプットシャフト出力ギヤ12は、軸受機構G1A(玉14)側に向う荷重を受けているとする。つまり、インプットシャフト出力ギヤ12は、軸受機構G1A(玉14)側に傾く荷重を受けているとする。この場合、軸受機構G1A側の玉14の数は、軸受機構G1B側の玉17の数よりも多くなっている。また、軸受機構G1A側の玉14の直径は、軸受機構G1B側の玉17の直径よりも大きくなっている。
【0131】
この第2変形例に係るインプットギヤユニット10では、インプットシャフト出力ギヤ12が荷重を受ける軸受機構G1A側の玉14の数が玉17の数よりも多い。これにより、この第2変形例に係るインプットギヤユニット10では、荷重を受ける玉14側において、玉14がインプットシャフト11を支持するときのラジアル剛性を向上させることができる。このように、この第2変形例に係るインプットギヤユニット10を備える減速機1では、荷重を受ける側の玉の数の設定によって、性能向上を図ることができる。また、インプットシャフト出力ギヤ12が荷重を受ける軸受機構G1A側の玉14の直径が玉17の直径よりも大きい。これにより、この第2変形例に係るインプットギヤユニット10を備える減速機1では、インプットシャフト出力ギヤ12が荷重を受ける玉14側において、玉14がインプットシャフト11を支持するときのラジアル剛性をさらに向上させることができる。
【0132】
なお、インプットシャフト出力ギヤ12が軸受機構G1A側に傾く場合を例に説明したが、インプットシャフト出力ギヤ12が軸受機構G1B側に傾く構成であってもよい。この場合、上述した玉の数及び直径の大小関係を軸受機構G1A側と軸受機構G1B側とで逆にすればよい。
【0133】
また、カウンターギヤユニット20は、この第2変形例に係るインプットギヤユニット10の「ギヤが傾く側のラジアル剛性を向上させるための構成」を備えることができる。この場合の「ギヤ」とは、カウンターギヤユニット20のカウンターシャフト入力ギヤ(ギヤ)22であってもよく、カウンターシャフト出力ギヤ(ギヤ)23であってもよい。
【0134】
[インプットギヤユニットの第3変形例]
次に、インプットギヤユニットの第3変形例について説明する。図7に示されるように第3変形例に係るインプットギヤユニット(回転軸ユニット)10Aのインプットシャフト(回転軸)11Aにはスプライン11sから回転力が入力され、入力された回転力はインプットシャフト出力ギヤ12から出力される。このため、インプットシャフト11Aにおけるスプライン11sとインプットシャフト出力ギヤ12との間に特に大きなねじり力が生じる。まず、第2インプットシャフト軌道面(第2外輪軌道面、外輪軌道面)K12Aの応力を低減させる構成について説明する。
【0135】
本変形例に係るインプットギヤユニット10Aは、実施形態に係るインプットギヤユニット10とは異なり、軸受機構G1B側の軌道径が軸受機構G1A側の軌道径よりも大きくなっている。具体的には、第2インプットシャフト外輪(第2外輪、外輪)16A、玉17、及びインプットシャフト11Aの第2インプットシャフト軌道面(第2軸軌道面、軸軌道面)K12Aにより、深溝玉軸受である軸受機構G1Bが構成されている。軸受機構G1Bは、スプライン11sとインプットシャフト出力ギヤ12との間に設けられる。つまり、インプットシャフト11Aにおける第2インプットシャフト軌道面K12Aが設けられる側の端部にはスプライン11sが設けられる。
【0136】
インプットシャフト11Aに加わる応力を低減させるための構成として、軸受機構G1B側の第2インプットシャフト軌道面K12Aの軌道径は、軸受機構G1A側の第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径よりも大きくなっている。なお、軸受機構G1B側の第2インプットシャフト外輪軌道面L12Aの軌道径は、軸受機構G1A側の第1インプットシャフト外輪軌道面L11の軌道径よりも大きくなっている。ここで、スプライン11sとインプットシャフト出力ギヤ12との間に設けられた第2インプットシャフト軌道面K12Aには、第1インプットシャフト軌道面K11よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2インプットシャフト軌道面K12Aの軌道径を大きくすることにより、第2インプットシャフト軌道面K12Aに応力が集中することを抑制できる。このように、この第3変形例に係るインプットギヤユニット10Aを備える減速機1では、軸軌道面の軌道径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0137】
インプットシャフト11Aに加わる応力を低減させるための構成として、インプットシャフト11Aの外径は、軸受機構G1A側と軸受機構G1B側とで互いに異なる部分を有している。具体的には、インプットシャフト11Aにおいて、第2インプットシャフト軌道面K12Aとインプットシャフト出力ギヤ12との間の部分には、第2軸部(大径部)11fが設けられている。第2軸部11fは、第1インプットシャフト軌道面K11とインプットシャフト出力ギヤ12との間におけるインプットシャフト11Aの最も外径が大きい部分よりも、外径が大きい。本実施形態では、第1インプットシャフト軌道面K11とインプットシャフト出力ギヤ12との間の全域が同じ外径の第1軸部11gとなっている。つまり、第2軸部11fは、第1軸部11gよりも外径が大きい。
【0138】
ここで、インプットシャフト11Aにはスプライン11sから回転力が入力される。そして、インプットシャフト11Aでは、入力された回転力がインプットシャフト出力ギヤ12から出力される。これにより、インプットシャフト11Aにおいて、第2インプットシャフト軌道面K12Aとインプットシャフト出力ギヤ12との間の部分には、インプットシャフト出力ギヤ12と第1インプットシャフト軌道面K11との間の部分よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2インプットシャフト軌道面K12Aとインプットシャフト出力ギヤ12との間に外径が大きい第2軸部11fを設けることにより、第2インプットシャフト軌道面K12Aとインプットシャフト出力ギヤ12との間の部分に応力が集中することを抑制できる。このように、この第3変形例に係るインプットギヤユニット10Aを備える減速機1では、インプットシャフト11Aの外径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0139】
また、インプットシャフト11Aに加わる応力を低減させるための構成として、第2インプットシャフト軌道面K12Aの溝曲率半径は、第1インプットシャフト軌道面K11の溝曲率半径よりも大きくなっている。ここで、スプライン11sとインプットシャフト出力ギヤ12との間に設けられた第2インプットシャフト軌道面K12Aには、第1インプットシャフト軌道面K11よりも大きなねじり(ねじる力)が加わる。このため、第2インプットシャフト軌道面K12Aの溝曲率半径を大きくすることにより、第2インプットシャフト軌道面K12Aに応力が集中することを抑制できる。このように、この第3変形例に係るインプットギヤユニット10Aを備える減速機1では、溝曲率半径の設定によって、性能向上を図ることができる。
【0140】
さらに、インプットギヤユニット10Aは、インプットギヤユニット10Aの組立性を向上させる構成を有している。具体的には、インプットシャフト11Aにおいて第1インプットシャフト軌道面K11が設けられる側の端部11eの外径が、第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径と同じとなっている。換言すると、インプットシャフト11Aの一方の端部から第1インプットシャフト軌道面K11の幅方向の中央位置までのインプットシャフト11Aの外径は、第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径となっている。
【0141】
このため、第1インプットシャフト外輪13の内側に複数の玉14が配置された状態で、これらをインプットシャフト11Aの端部11eから第1インプットシャフト軌道面K11の位置にスライドさせることによって、第1インプットシャフト外輪13及び玉14を容易にインプットシャフト11Aに組み付けることができる。このように、この第3変形例に係るインプットギヤユニット10Aを備える減速機1では、減速機1の性能として、インプットギヤユニット10Aの組立性の向上を図ることができる。
【0142】
なお、このインプットギヤユニット10Aの組立性を向上させる構成は、軸受機構G1B側に適用することができる。また、カウンターギヤユニット20に対しても、この「組立性を向上させる構成」を適用することができる。
【0143】
また、インプットギヤユニット10Aは、潤滑性能を向上させる構成を有している。具体的には、軸受機構G1Bは、シール部材19を更に備えている。シール部材19は、環状を呈している。シール部材19の外周縁は、第2インプットシャフト外輪16Aにおけるインプットシャフト11Aの延在方向の一方の端部に固定されている。本変形例において、第2インプットシャフト外輪16Aにおけるスプライン11s側の端部には、シール取付部16cが設けられている。シール取付部16cは、第2インプットシャフト軌道面K12Aが形成される第2インプットシャフト外輪16Aの内周面16bよりも大径となっている。
【0144】
シール部材19は、シール部材19の外周縁がシール取付部16cに嵌め込まれることによって、第2インプットシャフト外輪16Aに固定されている。シール部材19の内周縁は、インプットシャフト11Aの外周面に向って延びている。つまり、シール部材19は、第2インプットシャフト外輪16Aの内周面16bとインプットシャフト11Aの外周面との間を覆っている。
【0145】
このように、インプットギヤユニット10Aでは、インプットシャフト11Aの軸受機構G1B周りにおいて、第2インプットシャフト外輪16Aの外側の領域と、玉17が配置される第2インプットシャフト外輪16Aの内側の領域とをシール部材19によって仕切ることができる。
【0146】
これにより、例えば、インプットギヤユニット10Aは、第2インプットシャフト外輪16Aの内側から潤滑油が外部に流出することを抑制し、軸受機構G1Bにおける潤滑性能を向上させることができる。また、例えば、インプットギヤユニット10Aは、第2インプットシャフト外輪16Aの外側(スプライン11s側)から第2インプットシャフト外輪16Aの内側に異物が入り込むことを抑制し、回転性能の低下を抑制できる。このように、この第3変形例に係るインプットギヤユニット10Aを備える減速機1では、シール部材19を設けることによって、性能向上を図ることができる。
【0147】
なお、このインプットギヤユニット10Aの潤滑性能を向上させる構成は、軸受機構G1A側に適用することができる。また、カウンターギヤユニット20に対しても、この「潤滑性能を向上させる構成」を適用することができる。
【0148】
また、上述した実施形態において、インプットギヤユニット10の軸受機構G1Aは、図8に示されるように自動調心機能を有する玉軸受(自動調心玉軸受)を構成していてもよい。具体的には、軸受機構G1Aは、インプットシャフト11の外周面の周方向に沿って並ぶ第1群の複数の玉(転動体)14Aと、第1群の複数の玉14Aとインプットシャフト11の延在方向において隣接するとともにインプットシャフト11の外周面の周方向に沿って並ぶ第2群の複数の玉(転動体)14Bとを含む。第1インプットシャフト外輪13の内周面には、第1インプットシャフト外輪軌道面(外輪軌道面)L11Bが設けられている。第1インプットシャフト外輪軌道面L11Bは、インプットシャフト11の延在方向の一方の端部と他方の端部との間の中間部が径方向外側に向って円弧状に湾曲する形状を呈している。
【0149】
また、インプットシャフト11の外周面には、第1群の玉14Aが転がる第1インプットシャフト軌道面(軸軌道面)K11Aと、第2群の玉14Bが転がる第1インプットシャフト軌道面(軸軌道面)K11Bとがそれぞれ設けられている。第1インプットシャフト軌道面K11A及びK11Bは、それぞれインプットシャフト11の周方向に延在する溝である。
【0150】
つまり、この自動調心機能を有する軸受機構G1Aを備えるインプットギヤユニット10では、第1群の複数の玉14Aと第2群の複数の玉14Bとがインプットシャフト11周りに2列に並べて配置され、これらの玉14A及び14Bが円弧状に湾曲する第1インプットシャフト外輪軌道面L11Bに当接する。つまり、このインプットギヤユニット10では、第1群の玉14Aと第2群の玉14Bとが、大きな溝曲率半径を有する共通の第1インプットシャフト外輪軌道面L11Bに当接する。これにより、この軸受機構G1Aを備えるインプットギヤユニット10では、軸受の内輪と回転軸とを一体化させた場合であってもインプットシャフト11の自動調心機能を付与でき、ロバスト性を向上させることができる。このように、この軸受機構G1Aを備える減速機では、性能向上を図ることができる。
【0151】
なお、軸受機構G1B側も軸受機構G1A側と同様に、図8に示される自動調心機能を有する軸受の構成であってもよい。上述した実施形態に係るインプットギヤユニット10以外にも、各変形例に係るインプットギヤユニットに自動調心機能を有する軸受の構成が適用されてもよい。同様に、カウンターギヤユニット20に対して、自動調心機能を有する軸受の構成が適用されてもよい。
【0152】
[インプットギヤユニットの第4変形例]
次に、インプットギヤユニットの第4変形例について説明する。図9に示されるように第4変形例に係るインプットギヤユニット(回転軸ユニット)10Bは、軸受部分の組立性を向上させることが可能な構成を有している。具体的には、インプットギヤユニット10Bは、実施形態における第1インプットシャフト外輪13及び第2インプットシャフト外輪16に代えて、第1インプットシャフト外輪(外輪)13B及び第2インプットシャフト外輪(外輪)16Bを備えている。本変形例において、第1インプットシャフト外輪13Bにおける軸方向の幅は、玉14の直径とほぼ同等以下となっている。また、第2インプットシャフト外輪16Bにおける軸方向の幅は、玉17の直径とほぼ同等以下となっている。
【0153】
なお、ここでの「ほぼ同等」とは、玉の直径と外輪の幅とが同じ状態だけでなく、玉の直径よりも外輪の幅が僅かに大きい場合も含む。例えば、この「僅かに大きい」とは、外輪の強度確保のために僅かに大きくなる場合であってもよく、他の理由により、玉の直径よりも外輪の幅が僅かに大きくなってもよい。また、「ほぼ同等」とは、後述するように、インプットシャフト出力ギヤ12と第1インプットシャフト外輪13B等との隙間を大きく確保する目的から逸れない程度に、玉の直径よりも外輪の幅が僅かに大きくなる場合を含む。一例として、玉の直径よりも外輪の幅が僅かに大きい場合とは、外輪の幅が玉の直径の110%程度(玉の直径×1.1)までの場合を含み、場合によっては外輪の幅が玉の直径の120%程度(玉の直径×1.2)までの場合を含む。
【0154】
ここで、一例として、インプットシャフト11に対して第1インプットシャフト外輪13B及び玉14を組み付ける場合について説明する。この組み付けを行う場合、図10に示されるように、インプットシャフト11に対して第1インプットシャフト外輪13Bを偏心させた状態で配置する。そして、第1インプットシャフト外輪13Bの第1インプットシャフト外輪軌道面L11とインプットシャフト11の第1インプットシャフト軌道面K11との間に玉14を配置する。その際、第1インプットシャフト外輪13Bの下側に治具50を配置する。そして、第1インプットシャフト外輪13Bとインプットシャフト11との間に配置された玉14が落下しないように治具50によって支えることが行われる。
【0155】
例えば、インプットギヤユニット10の小型化等のために、図10に示されるように、インプットシャフト出力ギヤ12と第1インプットシャフト外輪13Bとの隙間が小さいことがある。この場合であっても、第1インプットシャフト外輪13Bの軸方向の幅が玉14の直径とほぼ同等以下となっていることにより、軸方向における第1インプットシャフト外輪13Bとインプットシャフト出力ギヤ12との隙間を大きく確保することができる。そして、この隙間に治具50を配置することができる。例えば、図10において破線で示されるように第1インプットシャフト外輪13Bの幅が大きい場合、第1インプットシャフト外輪13Bとインプットシャフト出力ギヤ12との隙間が小さくなり、この隙間に治具50を配置することが困難となる。
【0156】
このように、インプットギヤユニット10Bは、治具50を用いて軸受機構G1Aを組み立てる場合において、軸受機構G1Aの組立性を向上させることができる。したがって、インプットギヤユニット10Bを備える変速機は、組立性という性能の向上を図ることができる。また、第2インプットシャフト外輪16B側も第1インプットシャフト外輪13Bと同様の構成となっている。このため、インプットギヤユニット10Bは、治具50を用いて軸受機構G1Bを組み立てる場合において、軸受機構G1Bの組立性を向上させることができる。
【0157】
なお、本変形例では第1インプットシャフト外輪13B及び第2インプットシャフト外輪16Bの両方の幅をそれぞれ玉14及び17の直径とほぼ同等以下とした。これに限定されず、いずれか一方の外輪の幅のみ玉の直径とほぼ同等以下とされていてもよい。また、インプットギヤユニット10Bの組立性を向上させる構成は、上述した実施形態及び各変形例のインプットギヤユニットに対して適用することができる。さらに、インプットギヤユニット10Bの組立性を向上させる構成は、カウンターギヤユニット20等に対しても適用することができる。
【0158】
[インプットギヤユニットの第5変形例]
次に、インプットギヤユニットの第5変形例について説明する。図11に示されるように第5変形例に係るインプットギヤユニット(回転軸ユニット)10Cは、外輪の生産性を向上させる構成を有している。具体的には、インプットギヤユニット10Cは、実施形態における第1インプットシャフト外輪13に代えて、第1インプットシャフト外輪13よりも大径の第1インプットシャフト外輪13Cを備えている。また、本変形例では、インプットシャフト11に設けられた第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径は、実施形態における第1インプットシャフト軌道面K11の軌道径よりも大径となっている。第1インプットシャフト外輪13Cの内径(内周面13bの直径)は、第2インプットシャフト外輪16の外径(外周面16aの直径)よりも大きい。
【0159】
ここで、一般に、第1インプットシャフト外輪13C及び第2インプットシャフト外輪16は、鍛造によって成型される。本変形例では、上述したように、第1インプットシャフト外輪13Cの内径が第2インプットシャフト外輪16の外径よりも大きい。このため、外輪の素材に対して1回鍛造工程を行うことにより、第1インプットシャフト外輪13Cの素形材と第2インプットシャフト外輪16の素形材とを一度で成型することが可能となる。その後、第1インプットシャフト外輪13Cの素形材と第2インプットシャフト外輪16の素形材とを分離し、第1インプットシャフト外輪13C及び第2インプットシャフト外輪16をそれぞれ成型することができる。
【0160】
このように、本変形例における外輪の構成では、第1インプットシャフト外輪13C及び第2インプットシャフト外輪16を成型するための鍛造工程の回数を少なくすることができ、第1インプットシャフト外輪13C及び第2インプットシャフト外輪16の生産性を向上させることができる。したがって、この外輪の構成を備える変速機は、生産性という性能の向上を図ることができる。
【0161】
なお、2つの外輪の生産性を向上させる構成は、上述した実施形態及び各変形例のインプットギヤユニットに対して適用することができる。さらに、インプットギヤユニット10Cの外輪の生産性を向上させる構成は、カウンターギヤユニット20、デファレンシャルギヤユニット30、駆動ユニット40のそれぞれの外輪に対しても適用することができる。
【0162】
以上、本発明の実施形態及び種々の変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び種々の変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【0163】
上記実施形態及び変形例では、軸受機構G1Aが玉14を備える深溝玉軸受を構成する場合を例に説明した。これに限定されず、軸受機構G1Aが、玉14の代わりに円すいころ(転動体、第1転動体)を備える円すいころ軸受を構成してもよい。この場合、第1インプットシャフト軌道面K11及び第1インプットシャフト外輪軌道面L11は、溝ではなく、円すい台形を呈していればよい。同様に、軸受機構G1Bが、玉17の代わりに円すいころ(転動体、第2転動体)を備える円すいころ軸受を構成してもよい。さらに、軸受機構G2A及びG2Bも同様に、円すいころ(転動体、第1転動体、第2転動体)を備える円すいころ軸受を構成してもよい。
【0164】
軸受機構G1A等が円すいころ軸受を構成する場合であっても、軸受機構G1A等に対し、上述した性能向上を図るための各種の構成を適用することができる。ここでは、円すいころ軸受を構成する軸受機構G1A等に対して、上述した各種の性能向上を図るための構成のうち、溝曲率半径比に関する構成、溝曲率半径に関する構成、図7を用いて説明したインプットギヤユニット10Aの組立性を向上させる構成、及び潤滑性能を向上させる構成以外の各種構成を適用することができる。なお、円すいころの直径としては、大径側の直径を用いてもよく、小径側の直径を用いてもよく、直径の平均値を用いてもよい。また、軌道面(軸軌道面、外輪軌道面)が円すい台形を呈している場合、軌道径としては、大径側の直径を用いてもよく、小径側の直径を用いてもよく、直径の平均値を用いてもよい。
【0165】
また、図8を用いて、軸受機構G1A等が自動調心玉軸受を構成する場合について説明した。これに限定されず、軸受機構G1A等は、複数の玉を2列備える代わりに、複数の円すいころ(転動体)を2列備える自動調心円すいころ軸受を構成してもよい。
【0166】
また、減速機1は、上述したインプットギヤユニット10,10A,10B、及び10C、カウンターギヤユニット20、デファレンシャルギヤユニット30、及び駆動ユニット40以外に、回転軸を備える回転軸ユニットを更に備えていてもよい。この回転軸ユニットが、上述したインプットギヤユニット10,10A,10B、及び10Cの各種の構成を備えていてもよい。
【0167】
また、上記では、本発明に係る変速機として減速機を用いて説明した。これに限定されず、本発明に係る変速機は、駆動ユニットの回転速度を増速する増速機であってもよい。本発明に係る変速機が増速機である場合であっても、各ユニット間でのギヤによる回転速度の変換比が上述した減速機1と異なるだけで、減速機1で説明した各構成と同様の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0168】
1…減速機(変速機)、10,10A,10B、10C…インプットギヤユニット(回転軸ユニット)、11,11A…インプットシャフト(回転軸)、11a…第1軌道面形成部(軌道面形成部)、11b…ギヤ取付部、11c…第2軌道面形成部(軌道面形成部)、11d…溝部、11f…第2軸部(大径部)、11s…スプライン(入力部)、12…インプットシャフト出力ギヤ(ギヤ)、13,13B,13C…第1インプットシャフト外輪(第1外輪、外輪)、14,25…玉(第1玉、玉、第1転動体、転動体)、14A…玉(第1群の転動体)、14B…玉(第2群の転動体)、16,16A…第2インプットシャフト外輪(第2外輪、外輪)、17,28…玉(第2玉、玉、第2転動体、転動体)、19…シール部材、20…カウンターギヤユニット(回転軸ユニット)、21…カウンターシャフト(回転軸)、22…カウンターシャフト入力ギヤ(ギヤ)、23…カウンターシャフト出力ギヤ(ギヤ)、24…第1カウンターシャフト外輪(第1外輪、外輪)、27…第2カウンターシャフト外輪(第2外輪、外輪)、E1,E2…隅部、K11,K11A,K11B…第1インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面、軸軌道面)、K12,K12A…第2インプットシャフト軌道面(第2軸軌道面、軸軌道面)、K21…第1カウンターシャフト軌道面(第1軸軌道面、軸軌道面)、K22…第2カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面、軸軌道面)、L11,L11B…第1インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面、外輪軌道面)、L12,L12A…第2インプットシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面、外輪軌道面)、L21…第1カウンターシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面、外輪軌道面)、L22…第2カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面、外輪軌道面)、M…軸孔、M1…第1軸孔部、M2…第2軸孔部。
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図11