(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163867
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】通信制御装置及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20231102BHJP
H04W 88/10 20090101ALI20231102BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
H04W48/18
H04W88/10
H04W4/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075070
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 晋司
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE04
5K067EE25
5K067HH22
5K067JJ37
(57)【要約】
【課題】通信方式の切り替えを適切な頻度で行うこと。
【解決手段】複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部と、前記複数の通信部から所定のデータの送受信に使用する通信部を選択する通信部選択部とを備え、複数の通信部の各々について遅延時間を含む通信状況を取得して記憶する。記憶部を参照し、前記通信部選択部で選択している通信部である選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定し、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、前記記憶部を参照し、各通信部の通信状況から前記所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する。前記通信部選択部は、前記切替判定部が切替先通信部を判定した場合に、前記切替先通信部を新たな選択中通信部として選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部と、
前記複数の通信部から所定のデータの送受信に使用する通信部を選択する通信部選択部と、
前記複数の通信部の各々について、遅延時間を含む通信状況を取得する通信状況取得部と、
前記通信状況取得部で取得した通信状況を記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記通信部選択部で選択している通信部である選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する遅延時間判定部と、
前記遅延時間判定部による判定の結果、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、前記記憶部を参照し、各通信部の通信状況から前記所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する切替判定部と、を備え、
前記通信部選択部は、前記切替判定部が切替先通信部を判定した場合に、前記切替先通信部を新たな選択中通信部として選択することを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記通信制御装置は、車両に搭載され、
前記所定のデータは、前記車両の制御に関するデータであり、
前記選択中通信部は、前記車両の状態を示すデータを所定の端末に送信し、前記端末から前記車両の走行に対する指示を示すデータを受信することを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記通信状況取得部は、所定時間ごとに遅延時間を取得し、
前記記憶部は、少なくとも前記選択中通信部について前記所定時間ごとの遅延時間を記憶し、
前記遅延時間判定部は、所定の期間における遅延時間の増減を合計し、合計値が基準値を超える場合に、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示していると判定することを特徴とする通信制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信制御装置であって、
前記遅延時間判定部は、第1の期間における遅延時間の増減の合計と、第2の期間における遅延時間の増減の合計とを用いて、前記増加傾向を判定することを特徴とする通信制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記切替判定部は、前記選択中通信部以外の通信部に、前記所定の増加傾向に該当しない通信部が存在するならば、当該通信部を前記切替先通信部の候補とし、前記所定の増加傾向に該当しない通信部が存在しなければ、信号強度及び/又はノイズに基づいて前記切替先通信部の候補を決定することを特徴とする通信制御装置。
【請求項6】
複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部を備える通信制御装置の通信制御方法であって、
前記複数の通信部から所定のデータの送受信に使用する通信部を選択する通信部選択ステップと、
前記複数の通信部の各々について、遅延時間を含む通信状況を取得する通信状況取得ステップと、
前記通信状況取得ステップで取得した通信状況を記憶部に格納する記憶ステップと、
前記記憶部を参照し、前記通信部選択ステップで選択した通信部である選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する遅延時間判定ステップと、
前記遅延時間判定ステップによる判定の結果、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、前記記憶部を参照し、各通信部の通信状況から前記所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する切替判定ステップと、
前記切替判定ステップで切替先通信部を判定した場合に、前記切替先通信部を新たな選択中通信部として選択する切り替えステップとを含むことを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信方式を切り替えて使用する技術が知られている。例えば、特許文献1には、「通信装置は、移動体に搭載される通信装置であって、第1通信方式の通信、又は前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信する通信部と、アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定する決定部と、前記決定部により決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、アクセスポイントのそれぞれに対して前記通信部に送信させる通信制御部とを備え、前記通信制御部は、前記通信部に、決定された通信優先度により前記外部装置と通信させ、通信が切り替わる際、決定された通信優先度によって前記通信部に通信させる。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術にかかる通信装置は、通信の遅延時間、スループット、通信速度、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数等に基づいて、通信方式を切り替えることができる。しかしながら、従来の技術では、通信の品質が許容範囲外となる前に切り替えを行うこと、通信方式の切り替わり頻度を少なくすることが考慮されていない。
【0005】
例えば、車両が自車両の状態や周辺の状態を示す情報をユーザが携帯する端末に送信し、ユーザが端末を操作して車両の状態を確認し、必要に応じて走行に対する指示を送信するケースを想定する。このようなケースで送受信の遅延が大きくなると、時間的な余裕がなくなり、車両の制御が間に合わなくなる可能性がある。そこで、遅延の大きさが許容範囲を超える前に他の通信方式に切り替えることが求められる。しかし、通信方式の切り替え自体も遅延や通信品質低下の要因となり得ることから、通信方式の切り替えの発生頻度は極力抑えることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明では、通信方式の切り替えを適切な頻度で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の通信制御装置の一つは、複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部と、前記複数の通信部から所定のデータの送受信に使用する通信部を選択する通信部選択部と、前記複数の通信部の各々について、遅延時間を含む通信状況を取得する通信状況取得部と、前記通信状況取得部で取得した通信状況を記憶する記憶部と、前記記憶部を参照し、前記通信部選択部で選択している通信部である選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する遅延時間判定部と、前記遅延時間判定部による判定の結果、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、前記記憶部を参照し、各通信部の通信状況から前記所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する切替判定部と、を備え、前記通信部選択部は、前記切替判定部が切替先通信部を判定した場合に、前記切替先通信部を新たな選択中通信部として選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信方式の切り替えを適切な頻度で行うことができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0011】
図1は、実施例1に係る車両の制御の説明図である。
図1に示す車両10は、通信制御装置20を搭載している。通信制御装置20は、電子制御装置(ECU)であり、車両10のユーザが携行する端末40と通信可能である。また、通信制御装置20は、駐車に関する車両の走行制御を自動で実行する自動駐車機能を有する。
【0012】
ユーザが、車両10を運転し、駐車場の出入り口で降車し、自動駐車機能を実行すると、車両10は、駐車区画まで自動で走行し、駐車区画内に駐車する走行制御を行う。このように自動で走行制御を行っている間、通信制御装置20は、端末40に対して車両走行状態に関する情報を送信する。車両走行状態に関する情報には、車両10自体の状態に関する情報(車速など)と、車両10周辺の状態に関する情報(レーダ検知結果やカメラ画像など)が含まれる。
【0013】
ユーザは、端末40を用いて車両走行状態を確認することができる。そして、必要に応じて車両10の走行を制御する操作を行うことができる。例えば、ユーザが周辺の画像を確認することで、緊急停止が必要であると判断したならば、端末40に緊急停止操作を行う。端末40は、緊急停止操作を受け付けて、緊急停止を要求する指示を車両制御装置20に送信する。緊急停止を要求する指示を受信した通信制御装置20は、端末40からの指示を自動の走行制御よりも優先し、車両10が停止する。
【0014】
このように、通信制御装置20は、車両走行状態を端末40に送信し、端末40から走行制御操作を受信する。ここで、通信制御装置20は、複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部を備える。通信制御装置20が複数の通信方式で端末40と通信可能な状況であれば、車両走行状態の送信や、走行制御操作の受信は、通信品質が良好な通信方式で行うことが望ましい。通信品質の中でも、送受信の遅延は重要な項目である。送受信の遅延が大きくなると、ユーザの判断や操作に時間的な余裕がなくなり、ユーザからの緊急停止の操作が間に合わない、といった事態が生じ得るからである。
【0015】
通信制御装置20は、複数の通信方式のうち、遅延が小さい通信方式を選択し、端末40との車両の制御に関するデータの送受信を行う。しかし、遅延は一定とは限らない。選択中の通信方式の遅延が変動し、その結果、遅延が許容範囲外になると、車両の制御が間に合わなくなる可能性がある。そのため、遅延が許容範囲外となる前に通信方式を切り替えることが求められる。一方で、通信方式の切り替え自体も遅延や通信品質低下の要因となり得ることから、通信方式の切り替えの発生頻度は極力抑えることが望ましい。
【0016】
そこで、通信制御装置20は、選択中以外の通信方式についても通信品質の確認のための通信を適宜行い、選択中の通信方式の遅延時間に増加の傾向がある場合に、各通信方式の品質を判定して必要であれば通信方式の切替を実行する。
【0017】
具体的には、通信制御装置20は、選択中の通信方式の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する(ステップS11)。通信制御装置20は、選択中の通信方式の遅延時間に増加の傾向がなければ(ステップS12;No)、現在の通信方式を維持し(ステップS13)、ステップS11に戻る。選択中の通信方式の遅延時間に増加の傾向がある場合には(ステップS12;Yes)、通信制御装置20は、各通信方式の品質を判定して通信方式を選択(選択された通信方式が選択中の通信方式と異なる場合には他の通信方式への切替を実行する)し(ステップS14)、選択された通信方式を新しい選択中の通信方式としてステップS11に戻る。
【0018】
このように、通信制御装置20は、遅延時間の増加傾向を評価することで遅延時間が許容範囲外となるよりも前に通信方式を切り替えることができる。また、通信制御装置20は、増加の傾向が顕著でなければ選択中の通信方式を維持するので、通信方式の切替頻度を抑えることができる。なお、遅延時間の増加傾向の評価に際しては、短時間での変動、長時間での変動、遅延時間の大きさ自体などを指標として用いることができるが、この点の詳細については後述する。
【0019】
図2は、通信制御装置20の構成を示す構成図である。通信制御装置20は、車両10に搭載する。また、通信制御装置20は、1又は複数のカメラ11、1又は複数のレーダ12、駆動制御ユニット13などと接続する。カメラ11は、車両10の周囲を撮像する。レーダ12は、車両10の周囲に存在する物体を検知する。レーダ12は、電波式であってもよいし、音波式のソナーであってもよい。また、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)であってもよい。駆動制御ユニット13は、車両の加減速制御や操舵制御などを行うユニット群である。
【0020】
通信制御装置20は、その内部に、通信部21~23、車両判定部31、車両制御部32、位置取得部33、通信状況取得部34、記憶部35、遅延時間判定部36、切替判定部37及び通信部選択部38を有する。
【0021】
通信部21~23は、それぞれ通信方式の異なる通信部である。
通信部21は、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultrawideband)等による通信を行う。
通信部22は、移動通信システムによる通信を行う。移動体通信は、例えば第4世代(4G)、第5世代(5G)などでさらに区別することもできる。
通信部23は、無線LAN(Local Area Network)による通信を行う。
【0022】
通信部21は、端末40と直接通信が可能である。通信部22は、基地局51を介してユーザの端末40や、サーバ60と通信が可能である。通信部23は、ルータ52を介して端末40やサーバ60と通信が可能である。サーバ60は、駐車場における駐車区画の配置などを示す駐車場データと、各駐車区画の空き状況を示す空き状況データを管理している。
【0023】
車両判定部31は、車両10の周囲に存在する障害物の情報を取得する。具体的には、車両判定部31は、カメラ11の画像や、レーダ12の出力から障害物を識別する。
障害物の情報は、車両の状態を示すデータの一つである。
【0024】
位置取得部33は、車両10の位置情報を取得する。位置情報の取得には、一例として、グローバル・ポジショニング・システムを用いればよい。車両10の位置情報は、車両の状態を示すデータの一つである。
【0025】
車両制御部32は、駆動制御ユニット13から車速、加減速の制御状態、操舵状態などを取得し、車両の状態を示すデータの一つとする。
車両制御部32は、車両判定部31による判定結果、位置取得部33が取得した位置情報、駆動制御ユニット13から取得した自車両の状態等を用いて車両10の走行を制御する。
車両制御部32は、端末40から車両10の走行に対する指示を示すデータを受信した場合には端末40からの指示を優先する。例えば、車両制御部32は、駐車区画に車両を駐車する制御を行っている途中で、端末40から停止の指示を受け付けた場合には、車両10が停止する制御を行う。また、車両制御部32は、車両10の走行を制御している状態で、端末40から駐車区画の情報を受け付けた場合に、受け付けた駐車区画に駐車する制御を開始することもできる。
【0026】
通信部選択部38は、複数の通信部21~23から、車両の制御に関するデータの送受信に使用する通信部を選択する。通信部選択部38が選択している通信部を、選択中通信部という。車両の制御に関するデータには、車両の状態を示すデータと車両10の走行に対する指示を示すデータとが含まれる。
【0027】
通信状況取得部34は、複数の通信部21~23の各々について、所定の時間間隔で通信状況を取得する。通信状況の取得は、選択中通信部についても、選択中以外の通信部についても行う。通信状況には、遅延時間、信号強度、ノイズなどが含まれる。
記憶部35は、通信状況取得部で取得した通信状況を通信部21~23に対応付けて記憶する。
【0028】
遅延時間判定部36は、記憶部35を参照し、選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する。また、選択中通信部以外の通信部についても遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する。
切替判定部37は、遅延時間判定部36による判定の結果、選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、記憶部35を参照し、各通信部の通信状況から所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する。
通信部選択部38は、切替判定部37が切替先通信部を判定した場合に、切替先通信部を新たな選択中通信部として選択する。
【0029】
図3は、実施例1の自動駐車の処理手順を示すフローチャートである。通信制御装置は、自動駐車の処理に際し、次のステップS101~S111を順次実行する。
ステップS101 端末40からの指示を受けて、車両制御部32は、車両10単独での自動駐車を開始する。端末40からの指示の他、リモコンキー、タイマー設定等により開始することも可能である。
【0030】
ステップS102 通信部21~23は、それぞれ疎通確認および通信遅延の把握を行う。具体的には、通信部21~23は、端末40に疎通確認するための疎通データを送信する。疎通データは、内部に送信時間データを有する。
ステップS103 通信部21~23は、それぞれステップS102で送信した疎通データに対する応答を受信する。通信状況取得部34は、応答の受信時間と送信時間データとの差分から遅延時間を算出し、記憶部35に蓄積する。
【0031】
ステップS104 遅延時間判定部36は、記憶部35に蓄積した複数回の遅延時間を参照し、遅延時間の変動が所定の増加傾向を示しているか否か等を判定する。
ステップS105 通信状況取得部34は、通信部21~23の各々について、疎通データに対する応答から通信方式の信号強度を取得し、記憶部35に蓄積する。
ステップS106 通信状況取得部34は、通信部21~23の各々について、疎通データに対する応答から通信方式のノイズ量を取得し、記憶部35に蓄積する。
【0032】
ステップS107 切替判定部37は、遅延時間の増加傾向、信号強度、ノイズ量などに基づいて通信状態を比較し、切替先通信部を決定する。初期状態では、選択中通信部が決まっていないため、このステップで決定した切替先通信部が最初の選択中通信部となる。その後は、選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に切替先通信部の選択を行うことになる。
ステップS108 通信部選択部38は、車両の制御に関するデータの送受信に使用する通信部を選択し、選択中通信部とする。
ステップS109 車両判定部31及び車両制御部32は、選択中通信部を使用し、車両の制御に関するデータの送受信を行う。
ステップS110 車両制御部32は、自動駐車が完了したか否かを判定する。自動駐車未完了の場合は、ステップS101に戻る。自動駐車が完了していれば、ステップS111に進む。
ステップS111 通信制御装置20は、自動駐車処理を終了する。
【0033】
図4は、
図3に示した通信状態比較の詳細を示すフローチャートである。通信状態比較が開始すると(ステップS201)、遅延時間判定部36は、選択中通信部の遅延が所定の基準以内であるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、遅延時間判定部36は、短期変動、長期変動、遅延量が、それぞれ基準値以下である場合に、遅延が基準以内と判定する。短期変動は、遅延時間の短時間での変動である。長期変動は、遅延時間の長時間での変動である。遅延量は、遅延時間の大きさである。短期変動、長期変動、遅延量のいずれかが基準値を超えていれば、遅延が所定の基準以内ではなく、所定の増加傾向を示していると判定する。
【0034】
選択中通信部の遅延が基準以内であれば(ステップS202;Yes)、通信部選択部38は、現在の選択中通信部を継続して(ステップS203)、通信状態比較を終了する(ステップS214)。
【0035】
選択中通信部の遅延が基準以内でなければ(ステップS202;No)、切替判定部37は、他の通信部の遅延が基準以内であるか否かを判定する(ステップS204)。遅延が基準以内の通信部があるならば(ステップS204;Yes)、切替判定部37は、遅延が基準以内の通信部の中から、遅延の増加傾向が少ない通信部を選択し、切替先通信部とする(ステップS205)。そして、通信部選択部38が、切替先通信部を新たな選択中通信部にすることで選択中通信部の切替を行って(ステップS206)、通信状態比較を終了する(ステップS214)。
【0036】
遅延が基準以内の通信部がなければ(ステップS204;No)、切替判定部37は、記憶部35に格納した他の通信部の信号強度を参照し(ステップS207)、信号強度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS208)。信号強度が閾値以上の通信部があるならば(ステップS208;Yes)、切替判定部37は、信号強度が閾値以上の通信部の中から、信号強度が高い通信部を選択し、切替先通信部とする(ステップS209)。そして、通信部選択部38が、切替先通信部を新たな選択中通信部にすることで選択中通信部の切替を行って(ステップS210)、通信状態比較を終了する(ステップS214)。
【0037】
信号強度が閾値以上の通信部がなければ(ステップS208;No)、切替判定部37は、記憶部35に格納した他の通信部のノイズを参照し(ステップS211)、ノイズが小さい通信部を選択し、切替先通信部とする(ステップS212)。そして、通信部選択部38が、切替先通信部を新たな選択中通信部にすることで選択中通信部の切替を行って(ステップS213)、通信状態比較を終了する(ステップS214)。
【0038】
図5は、遅延の変動の判定についての説明図である。
図5では、遅延時間を0~10の11段階で評価し、遅延がない場合の評価値を「0」、遅延が最大の場合の評価値を「10」としている。また、t0は最新のタイミングで求めた遅延時間の評価値、t1は1つ前のタイミングで求めた遅延時間の評価値である。
【0039】
まず、初期状態において、t0~t4の評価値は全て「0」である。初回の遅延時間の評価により、t0は「1」となり、t1~t4は「0」のままである。2回目の遅延時間の評価では、前回の評価値が1つずつ後ろにずれ、t0は「4」となっている。3回目の遅延時間の評価では、前回の評価値が1つずつ後ろにずれ、t0は「3」となっている。4回目の遅延時間の評価では、前回の評価値が1つずつ後ろにずれ、t0は「7」となっている。したがって、4回目の遅延時間の評価の時点では、t1は「3」、t2は「4」、t3は「1」、t4は「0」である。
【0040】
遅延時間判定部36は、遅延時間の増減を合計し、合計値が基準値を超える場合に、選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示していると判定する。
図5では、
(t0-t1)+(t1-t2)+(t2-t3)+(t3-t4)を合計値として求めている。この合計値と基準値「5」とを比較しているので、合計値が5を超えるときに遅延時間判定部36は遅延時間が増加傾向にあると判定することになる。
【0041】
図6は、遅延量、短期変動、長期変動の説明図である。遅延量は、
図5における遅延の評価値に対応する。短期変動は、
図5における遅延時間の増減の合計値である。短期変動では、1つ前のタイミングで取得した遅延時間との差分を求めているのに対し、長期変動は、4つ前のタイミングで取得した遅延時間との差分を求めている。このように、異なる周期で遅延時間の差分を評価することで、急峻な遅延時間の増加に対する迅速な反応と、緩慢な遅延時間の増加に対する高精度な反応とを両立することができる。
【0042】
上述してきたように、開示の通信制御装置20は、複数の通信方式にそれぞれ対応した複数の通信部21~23と、前記複数の通信部から所定のデータの送受信に使用する通信部を選択する通信部選択部38と、前記複数の通信部の各々について、遅延時間を含む通信状況を取得する通信状況取得部34と、前記通信状況取得部で取得した通信状況を記憶する記憶部35と、前記記憶部35を参照し、前記通信部選択部38で選択している通信部である選択中通信部の遅延時間を時系列的に比較して、遅延時間の変動を判定する遅延時間判定部36と、前記遅延時間判定部36による判定の結果、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示している場合に、前記記憶部35を参照し、各通信部21~23の通信状況から前記所定のデータの送受信に使用すべき通信部を切替先通信部として判定する切替判定部37と、を備え、前記通信部選択部38は、前記切替判定部37が切替先通信部を判定した場合に、前記切替先通信部を新たな選択中通信部として選択する。
かかる構成及び動作により、通信制御装置20は、早期の切替の実行と切替の頻度の抑制を両立させ、通信方式の切り替えを適切な頻度で行うことができる。
【0043】
また、開示の通信制御装置20は、車両10に搭載される車載装置である。そして、前記所定のデータは、前記車両の制御に関するデータであり、前記選択中通信部は、前記車両の状態を示すデータを所定の端末に送信し、前記端末から前記車両の走行に対する指示を示すデータを受信する。
このため、車両10を遠隔で制御する場合に、車両10の制御が間に合わなくなる事態を防止することができる。
【0044】
また、開示の通信制御装置20によれば、前記通信状況取得部34は、所定時間ごとに遅延時間を取得し、前記記憶部35は、少なくとも前記選択中通信部について前記所定時間ごとの遅延時間を記憶し、前記遅延時間判定部36は、所定の期間における遅延時間の増減を合計し、合計値が基準値を超える場合に、前記選択中通信部の遅延時間が所定の増加傾向を示していると判定する。
このため、遅延時間の時系列的な比較を簡易且つ効果的に行うことができる。
【0045】
また、開示の通信制御装置20によれば、前記遅延時間判定部36は、第1の期間における遅延時間の増減の合計と、第2の期間における遅延時間の増減の合計とを用いて、前記増加傾向を判定する。
このため、多様な増加の傾向に対応し、選択中通信部の増加傾向を精度よく検出することができる。
【0046】
また、開示の通信制御装置20によれば、前記切替判定部37は、前記選択中通信部以外の通信部に、前記所定の増加傾向に該当しない通信部が存在するならば、当該通信部を前記切替先通信部の候補とし、前記所定の増加傾向に該当しない通信部が存在しなければ、信号強度及び/又はノイズに基づいて前記切替先通信部の候補を決定する。
このように、通信制御装置20は、選択中通信部による所定のデータ通信と並行して、他の通信部による疎通データ通信を行っておくことで、通信部の遅延の増加傾向を比較して切替先を決定することができ、遅延の増加傾向で切替先を決定できない場合には、他の評価指標を用いて切替先の通信部を決定することができる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【0048】
例えば、上記の実施例では、自動の走行制御に対し、遠隔での介入を行う場合を例示した。しかし、本発明は、自動の走行制御に限定されず、車両の走行中に外部と通信し、走行に対する介入を受ける場合に広く適用できるものである。一例として、運転者の訓練や評価を目的として車両及び周辺に関する情報を外部に送信し、運転者への指示や車両制御への介入を行う場合にも適用可能である。具体例としては、運転免許取得のための無線講習、高齢者の運転技術の評価、運転者の希望による運転サポート等が挙げられる。
【0049】
また、自動走行についても駐車に限定されるものでは無く、たとえば、乗用車やバスの公道での自動走行制御、配車センタを介した車両の走行制御、配達などに適用することができる。さらに、車両に限定されるものでもなく、ドローンの制御、工場内の搬送ロボットの制御、レストランでの配膳ロボットの制御などにも適用可能である。
10:車両、11:カメラ、12:レーダ、13:駆動制御ユニット、20:通信制御装置、21~23:通信部、31:車両判定部、32:車両制御部、33:位置取得部、34:通信状況取得部、35:記憶部、36:遅延時間判定部、37:切替判定部、38:通信部選択部、40:端末、51:基地局、52:ルータ、60:サーバ