(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163871
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231102BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20231102BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L21/60 301B
H01L21/56 R
H01L23/50 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075074
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多 俊幸
【テーマコード(参考)】
5F044
5F061
5F067
【Fターム(参考)】
5F044AA01
5F044FF04
5F044FF05
5F061AA01
5F061BA01
5F067AB02
5F067BA01
5F067BD05
5F067DA13
5F067DC02
5F067DC13
5F067DC17
5F067DF01
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】互いに離れながら並行してx方向に延在する第1領域R1と第2領域R2とを有するフレーム材FMにおいて、第1めっき膜を第1領域R1に形成した後、第1めっき膜とは種類が異なる第2めっき膜を第2領域R2に形成する。その後、第1めっき膜を形成した第1領域R1と第2めっき膜を形成した第2領域R2を有するフレーム材FMに対して、スタンピング加工を施すことにより、複数のリードを有するリードフレームを形成する。リードフレームには、第1リード群と、第2リード群とが含まれ、第1リード群には、第1めっき膜は形成されるが第2めっき膜は形成されいない一方、第2リード群には、第2めっき膜は形成されるが第1めっき膜は形成されない。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、半導体装置の製造方法:
(a)互いに離れながら並行して第1方向に延在する第1領域と第2領域とを含むフレーム材を準備する工程;
(b)第1めっき膜を、前記第1領域に形成する工程;
(c)前記第1めっき膜とは種類が異なる第2めっき膜を、前記第2領域に形成する工程;および
(d)前記(b)工程および前記(c)工程の後、前記フレーム材に対してスタンピング加工を施し、前記第1領域の一部および前記第2領域の一部をそれぞれ含む複数のデバイス領域を形成する工程、
ここで、前記(d)工程で形成された前記複数のデバイス領域のそれぞれは、
第1ダイパッド;
第2ダイパッド;
前記第1方向に並ぶ複数の第1リード;および
前記第1方向に並ぶ複数の第2リード、
を有し、
前記複数の第1リード、前記第1ダイパッド、前記第2ダイパッドおよび前記複数の第2リードは、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置され、
前記複数の第1リードのそれぞれは、前記第1領域の前記一部を含むが、前記第2領域の前記一部は含まず、
前記複数の第2リードのそれぞれは、前記第2領域の前記一部を含むが、前記第1領域の前記一部は含まない。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、前記複数のデバイス領域にわたって前記第1めっき膜を形成し、
前記(c)工程では、前記複数のデバイス領域にわたって前記第2めっき膜を形成する。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
(e)前記(d)工程の後、第1半導体チップを前記第1ダイパッド上に搭載する工程、
(f)前記(d)工程の後、第2半導体チップを前記第2ダイパッド上に搭載する工程、
(g)前記(e)工程および前記(f)工程の後、前記第1半導体チップを、複数の第1導電性部材を介して前記複数の第1リードと電気的に接続する工程、
(h)前記(e)工程および前記(f)工程の後、前記第2半導体チップを、複数の第2導電性部材を介して前記複数の第2リードと電気的に接続する工程、
(i)少なくとも、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、前記第1領域の一部および前記第2領域の一部を封止体で封止する工程、
を、更に有する。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1めっき膜は、ニッケルめっき膜であり、
前記第2めっき膜は、銀めっき膜であり、
前記複数の第1導電性部材のそれぞれは、アルミニウムを主成分とする第1ボンディングワイヤであり、
前記複数の第2導電性部材のそれぞれは、金を主成分とする第2ボンディングワイヤであり、
前記(g)工程は、前記第1めっき膜を介して、前記複数の第1導電性部材を前記複数の第1リードにそれぞれ電気的に接続する工程であり、
前記(h)工程は、前記第2めっき膜を介して、前記複数の第2導電性部材を前記複数の第2リードにそれぞれ電気的に接続する工程である。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程の後、前記複数の第1リードは、前記フレーム材の前記第1領域の前記一部を介して互いに繋がっており、
前記第1ボンディングワイヤの径は、前記第2ボンディングワイヤの径よりも太い。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体チップには、パワートランジスタが形成されており、
前記第2半導体チップには、前記パワートランジスタの制御回路が形成されており、
前記第1ボンディングワイヤは、前記パワートランジスタのソースと電気的に接続された前記第1半導体チップのソースパッドと電気的に接続されている。
【請求項7】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
(j)前記(e)工程および前記(f)工程の後、かつ、前記(i)工程の前、前記第1半導体チップを、複数の第3導電性部材を介して前記第2半導体チップと電気的に接続する工程、
を、更に有する。
【請求項8】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程の後、前記第1ダイパッドの下面および前記第2ダイパッドの下面は、前記封止体から露出している。
【請求項9】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程の後、前記第1ダイパッドの下面および前記第2ダイパッドの下面は、前記封止体で覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、例えば、2種類のめっき膜を使用する半導体装置の製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-93431号公報(特許文献1)には、ニッケルを主成分とするめっき膜と金を主成分とするめっき膜を使用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、2つの半導体チップを1パッケージ化し、1つの半導体装置とする技術がある。この技術では、一方の半導体チップ(「第1半導体チップ」とする)とあるリードとを第1ボンディングワイヤで接続するとともに、他方の半導体チップ(「第2半導体チップ」とする)と他のリードとを第2ボンディングワイヤで接続する。このとき、第1半導体チップと接続するボンディングワイヤを構成する材料と、第2半導体チップと接続するボンディングワイヤを構成する材料とが互いに異なることがある。つまり、2つの半導体チップを1パッケージ化した半導体装置において、2種類の異なる材料からなるボンディングワイヤを使用することがある。
【0005】
ここで、ボンディングワイヤとリードとの接続信頼性を確保するために、リードの表面にめっき膜を形成することが行われる。この場合、ボンディングワイヤの材料に応じて、リードの表面に形成されるめっき膜の種類が選択されることになる。したがって、2種類の異なる材料からなるボンディングワイヤを使用する半導体装置においては、2種類の異なるめっき膜が使用されることになる。
【0006】
本発明者の検討によると、2種類の異なるめっき膜を使用する半導体装置の製造技術においては、製造される半導体装置の信頼性を向上する観点から改善の余地が存在することが明らかになった。したがって、2種類の異なるめっき膜を使用する半導体装置の製造技術においては、半導体装置の信頼性を向上させるための工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態における半導体装置の製造方法は、(a)互いに離れながら並行して第1方向に延在する第1領域と第2領域とを含むフレーム材を準備する工程、(b)第1めっき膜を、第1領域に形成する工程、(c)第1めっき膜とは種類が異なる第2めっき膜を、第2領域に形成する工程、および、(d)(b)工程および(c)工程の後、フレーム材に対してスタンピング加工を施し、第1領域の一部および第2領域の一部をそれぞれ含む複数のデバイス領域を形成する工程、を備える。ここで、(d)工程で形成された複数のデバイス領域のそれぞれは、第1ダイパッドと、第2ダイパッドと、第1方向に並ぶ複数の第1リードと、第1方向に並ぶ複数の第2リードと、を有する。そして、複数の第1リード、第1ダイパッド、第2ダイパッドおよび複数の第2リードは、第1方向と交差する第2方向に並んで配置されている。複数の第1リードのそれぞれは、第1領域の一部を含むが、第2領域の一部は含まず、複数の第2リードのそれぞれは、第2領域の前記一部を含むが、第1領域の一部は含まない。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】パワートランジスタおよびパワートランジスタを制御する制御回路を含む半導体装置の回路構成を示す図である。
【
図2】「スポットめっき法」を概念的に説明する図である。
【
図3】「めっき漏れ」に対する対策の一例を示す図である
【
図4】「めっき漏れ」に対する対策の一例を示す図である。
【
図5】「ストライプめっき法」を概念的に説明する図である。
【
図6】関連技術におけるパッケージ構造体を示す図であり、封止体を透視したパッケージ構造体の上面図である。
【
図7】関連技術に存在する改善の余地を説明する図である。
【
図8】関連技術に存在する改善の余地を説明する図である。
【
図9】実施の形態におけるパッケージ構造体を示す図であり、封止体を透視したパッケージ構造体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0011】
<パワートランジスタおよび制御回路の構成>
図1は、パワートランジスタおよびパワートランジスタを制御する制御回路を含む半導体装置SA1の回路構成を示す図である。
【0012】
図1において、半導体装置SA1は、スイッチング回路100と制御回路200とを有しており、スイッチング回路100は、パワートランジスタからなるメイントランジスタ10と、センストランジスタ20と、温度センサ30とを有している。
【0013】
このように構成されているスイッチング回路100において、メイントランジスタ10は、電源電位を供給する電源端子であるリードLD4と出力端子であるリードLD1(リードLD7)との間に設けられており、電源端子と出力端子との間を流れる電流のオン/オフを行うためのスイッチング素子として機能する。一方、センストランジスタ20は、メイントランジスタ10を流れる電流の電流値を検出する機能を有し、温度センサ30は、スイッチング回路100の温度を検出する機能を有している。
【0014】
続いて、制御回路200は、スイッチング回路100を制御する機能を有し、例えば、メイントランジスタ10のゲート電極やセンストランジスタ20のゲート電極にゲート電圧を印加するプリドライバを含んでいる。そして、
図1において、制御回路200は、半導体装置SA1の入力端子であるリードLD3およびリードLD6、グランド端子であるリードLD2、制御回路200からの出力を半導体装置SA1の外部に出力するための出力端子であるリードLD5と電気的に接続されている。
【0015】
制御回路200は、リードLD3から入力される制御信号に基づいて、スイッチング回路100に含まれるメイントランジスタ10のオン/オフを制御するように構成されている。すなわち、制御回路200は、メイントランジスタ10のゲート電極に印加されるゲート電圧を切り替えることにより、メイントランジスタ10のオン/オフを制御する。
【0016】
このようにして、メイントランジスタ10のオン/オフ制御によって、メイントランジスタ10のソースと電気的に接続された出力端子であるリードLD1から半導体装置SA1の外部に接続される負荷に電流を供給することができる。
【0017】
以上のようにして、半導体装置SA1が回路構成されている。
【0018】
<改善の検討>
上述した半導体装置SA1は、スイッチング回路100と制御回路200とを有している。このとき、半導体装置SA1のパッケージ構造体を考えると、スイッチング回路100が形成された第1半導体チップと、制御回路200が形成された第2半導体チップとを1パッケージ化する技術がある。この技術では、第1半導体チップのソースパッドと第1リードとを第1ボンディングワイヤで接続する一方、第2半導体チップのパッドと第2リードとを第2ボンディングワイヤで接続することが行われることがある。
【0019】
この場合、第1半導体チップでは、大電流を流すことから、第1半導体チップのソースパッドと第1リードとを接続する第1ボンディングワイヤとして、アルミニウムを主成分とする径の太いアルミニウムワイヤが使用されることが多い。
【0020】
一方、第2半導体チップでは、第1半導体チップと異なり大電流を流さないことから、第2半導体チップのパッドと第2リードとを接続する第2ボンディングワイヤとして、金を主成分とする径の細い金ワイヤが使用されることが多い。
【0021】
例えば、アルミニウムワイヤと第1リードとを接続する場合、アルミニウムワイヤの接続信頼性を確保するため、第1リードの表面にニッケルを主成分とするニッケルめっき膜を形成することが行われる。一方、金ワイヤと第2リードとを接続する場合には、金ワイヤの接続信頼性を確保するため、第2リードの表面に銀を主成分とする銀めっき膜を形成することが行われる。このように、第1半導体チップと第2半導体チップとを1パッケージ化したパッケージ構造体では、2種類の異なる材料からなるボンディングワイヤを使用することに対応して、2種類の異なるめっき膜が使用される。
【0022】
以下では、まず、めっき膜をリードの表面に形成する技術について説明する。
【0023】
<<スポットめっき法>>
図2は、「スポットめっき法」を概念的に説明する図である。
【0024】
図2において、「スポットめっき法」では、フレーム材FMを準備した後、このフレーム材FMに対してスタンピング加工(打ち抜き加工)を施すことによりリードLDを形成し、このリードLDの表面にマスクを用いてめっき膜PFを形成する。
【0025】
ここで、「スポットめっき法」では、マスクの位置ずれを考慮して、クリアランスAが必要となる。ところが、このクリアランスAが狭いと、リードLDの側面に「めっき漏れ」が発生することがあり、最悪の場合、パッケージ構造体の外側にめっきが漏れ出すおそれがある。特に、めっき膜PFが銀めっき膜の場合、銀めっき膜がパッケージ構造体の外側に漏れ出すと、銀マイグレーションが発生して、隣り合うリード間でショート不良が発生することが懸念される。
【0026】
そこで、「スポットめっき法」では、マスクの位置ずれに起因する「めっき漏れ」を抑制するために、例えば、
図3に示すように、リードLDの幅を拡大することにより、クリアランスAを確保することが考えられる。これにより、マスクの位置ずれが生じても、「めっき漏れ」の可能性を低減することができる。ただし、リードLDのサイズが大きくなることから、半導体装置(パッケージ構造体)のサイズが大きくなってしまう。
【0027】
また、
図4に示すように、リードLDに対して曲げ加工を施して、「めっき漏れ」が発生しても影響を与えないリード構造とすることが考えられる。しかしながら、この場合、リードの折り曲げ工程が追加されることになり、リードフレームの製造コストが上昇する。
【0028】
したがって、「スポットめっき法」に替わる技術として、以下に示す「ストライプめっき法」が検討されているので、この「ストライプめっき法」について説明する。
【0029】
<<ストライプめっき法>>
図5は、「ストライプめっき法」を概念的に説明する図である。
【0030】
図5において、「ストライプめっき法」では、フレーム材FMを準備した後、このフレーム材FMに対してライン状(ストライプ状)にめっき膜PFを形成し、その後、めっき膜PFを形成したフレーム材FMに対してスタンピング加工を施すことにより、リードLDを形成する。このような「ストライプめっき法」では、めっき膜PFを形成した後にスタンピング加工を行うため、「めっき漏れ」のおそれはない。このことから、「ストライプめっき法」では、「めっき漏れ」に対する対策を取る必要性がないため、リードフレームの製造コストを削減することができる。つまり、「ストライプめっき法」では、リードLDの側面への「めっき漏れ」を考慮する必要がないため、リード幅を最小にすることができる結果、半導体装置の小型化を図ることができるという利点が得られる。さらに、「ストライプめっき法」では、リードの曲げ加工も不要となることから、リードフレームの製造コスト(引いては半導体装置の製造コスト)を削減できるという利点が得られる。
【0031】
そこで、以下では、「スポットめっき法」では得られない利点を有する「ストライプめっき法」を使用した関連技術について説明する。
【0032】
<<関連技術の説明>>
本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0033】
図6は、関連技術におけるパッケージ構造体PKGを示す図であり、封止体MRを透視したパッケージ構造体PKGの上面図である。
【0034】
図6に示すように、パッケージ構造体PKGは、チップ搭載部であるダイパッドDPを有し、このダイパッドDP上に半田や銀ペーストを原料とする導電性接着材40を介して半導体チップCHP1が搭載されている。この半導体チップCHP1には、パワートランジスタが形成されている。そして、半導体チップCHP1上には、絶縁性接着材(図示せず)を介して半導体チップCHP2が搭載されている。この半導体チップCHP2には、パワートランジスタを制御する制御回路が形成されている。
【0035】
次に、半導体チップCHP1の表面は、ソースパッドSP1が形成されている第1ソースパッド形成領域と、ソースパッドSP2が形成されている第2ソースパッド形成領域と、平面視において第1ソースパッド形成領域と第2ソースパッド形成領域で挟まれた領域を有しており、この挟まれた領域には、絶縁性接着材(図示せず)を介して半導体チップCHP2が搭載されている。
【0036】
そして、ソースパッドSP1は、太ワイヤW1を介してリードLD1と接続されている。一方、ソースパッドSP2は、太ワイヤW2を介してリードLD7と接続されている。さらに、半導体チップCHP1には、複数のパッドPD3が形成されている一方、半導体チップCHP2には、複数のパッドPD4および複数のパッドPD5が形成されている。このとき、複数のパッドPD3のそれぞれは、ワイヤW3を介して複数のパッドPD4のそれぞれと接続されており、複数のパッドPD5のそれぞれは、リードLD2、リードLD3、リードLD5またはリードLD6と接続されている。また、ダイパッドDPは、リードLD4と接続されている。
【0037】
続いて、
図6に示すように、封止体MRからは、リードLD1~リードLD7のそれぞれのアウタリード部が突出している。以上のようにして、関連技術におけるパッケージ構造体PKGが実装構成されている。
【0038】
ここで、
図6に示すように、リードLD1~LD3、LD5~LD7の表面の一部領域には、ニッケルを主成分とするニッケルめっき膜PF1と銀を主成分とする銀めっき膜PF2とが形成されている。
【0039】
なお、本明細書でいう「主成分」とは、最も多く含まれている成分のことをいい、その他の成分も含まれていることを排除するものではないことを示すために使用している。例えば、「ニッケルを主成分とする」とは、ニッケルを最も多く含んでいることを意味し、同様に、「銀を主成分とする」とは、銀を最も多く含んでいることを意味している。
【0040】
そして、リードLD1には、ニッケルめっき膜PF2を介して太ワイヤW1が接続されているとともに、リードLD7には、ニッケルめっき膜PF2を介して太ワイヤW2が接続されている。一方、リードLD2、LD3、LD5、LD6には、銀めっき膜PF1を介してワイヤW4が接続されている。
【0041】
このとき、ニッケルめっき膜PF1および銀めっき膜PF2は、それぞれ「ストライプめっき法」を使用することにより形成されている。具体的に、関連技術では、フレーム材を準備した後、このフレーム材に対してライン状(ストライプ状)に銀めっき膜形成し、その後、ストライプ状の銀めっき膜上に、銀めっき膜のストライプ幅よりも小さいストライプ幅を有するニッケルめっき膜をライン状に形成する。このようにして、ストライプ状の銀めっき膜とストライプ状のニッケルめっき膜を形成することができる。続いて、銀めっき膜とニッケルめっき膜を形成したフレーム材に対してスタンピング加工を施す。これにより、銀めっき膜とニッケルめっき膜を有するリードLD1~LD3、LD5~LD7を含むリードフレームを形成する。その後、このリードフレームを使用して、例えば、
図6に示す関連技術におけるパッケージ構造体PKGを製造することができる。
【0042】
<<改善の余地>>
上述した関連技術におけるパッケージ構造体PKGでは、「ストライプめっき法」で形成された2種類のめっき膜を使用している。例えば、
図7の左図に示すように、リードLD3にストライプ状の銀めっき膜PF1とストライプ状のニッケルめっき膜PF2とが形成されている。この点に関し、例えば、
図7の右上図に示すように、下層に形成されている銀めっき膜PF1が右側に位置ずれを起こしたとすると、銀めっき膜PF1の露出領域が狭くなる結果、ワイヤW4と銀めっき膜PF1とを接続することが困難となって、ワイヤ剥がれが生じるおそれがある。一方、例えば、
図7の右下図に示すように、下層に形成されている銀めっき膜PF1が左側に位置ずれを起こしたとすると、封止体MRから露出しているリードLD3の表面にまで銀めっき膜PF1が形成される結果、銀マイグレーションの原因となる。そして、リードLD3において銀マイグレーションが生じると、例えば、隣り合うリードLD2とリードLD3との間でショート不良を引き起こすおそれがある。このように、下層に形成されている銀めっき膜PF1が位置ずれを起こすと、パッケージ構造体PKGの信頼性に大きな悪影響を及ぼすことになる。
【0043】
同様に、例えば、
図8の右上図に示すように、上層に形成されているニッケルめっき膜PF2が右側に位置ずれを起こすと、ニッケルめっき膜PF2の露出領域が狭くなる結果、図示しない太ワイヤとの接続が困難となり、ワイヤ剥がれが生じるおそれがある。一方、例えば、
図8の右下図に示すように、上層に形成されているニッケルめっき膜PF2が左側に位置ずれを起こしたとすると、ニッケルめっき膜PF2上にワイヤW4が接続されることになる結果、ワイヤ剥がれが生じるおそれが高まる。このように、上層に形成されているニッケルめっき膜PF2が位置ずれを起こす場合も、パッケージ構造体PKGの信頼性に大きな悪影響を及ぼすことになる。
【0044】
以上のことから、関連技術においては、パッケージ構造体PKGの信頼性を確保する観点から改善の余地が存在する。そこで、本実施の形態では、関連技術に存在する改善の余地を克服するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0045】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、「ストライプめっき法」を使用することを前提として、上述した関連技術のように複数のリードのそれぞれにニッケルめっき膜と銀めっき膜という2種類のめっき膜を形成するのではなく、ニッケルめっき膜を形成する第1リード群と、銀めっき膜を形成する第2リード群とに複数のリードを分ける思想である。
【0046】
すなわち、基本思想は、「ストライプめっき法」を使用して、ニッケルめっき膜あるいは銀めっき膜のいずれか一方のめっき膜だけをリードに形成する思想である。
【0047】
具体的に、基本思想では、例えば、互いに離れながら並行して第1方向に延在する第1領域と第2領域とを有するフレーム材において、第1領域に「ストライプめっき法」を使用して、ニッケルめっき膜を形成した後、第2領域に「ストライプめっき法」を使用して、銀めっき膜を形成する。その後、ニッケルめっき膜を形成した第1領域と銀めっき膜を形成した第2領域を有するフレーム材に対して、スタンピング加工を施すことにより、複数のリードを有するリードフレームを形成する。このとき、リードフレームには、第1領域をスタンピング加工することにより形成された第1リード群と、第2領域をスタンピング加工することにより形成された第2リード群とが含まれ、第1リード群には、ニッケルめっき膜だけが形成される一方、第2リード群には、銀めっき膜だけが形成される。
【0048】
これにより、基本思想によれば、複数のリードのそれぞれには、ニッケルめっき膜あるいは銀めっき膜のいずれか一方のめっき膜しか形成されていない。このため、基本思想によれば、複数のリードのそれぞれにニッケルめっき膜と銀めっき膜という2種類のめっき膜を形成する関連技術とは異なり、ニッケルめっき膜と銀めっき膜との相対的な位置ずれが問題とならない。このことから、基本思想によれば、ニッケルめっき膜と銀めっき膜との相対的な位置ずれに起因するワイヤ剥がれや銀マイグレーションを抑制できる結果、半導体装置(パッケージ構造体)の信頼性を向上させることができる。
【0049】
以下では、上述した基本思想を具現化した具現化態様について説明する。
【0050】
<パッケージ構造体(半導体装置)の構成>
図9は、本実施の形態におけるパッケージ構造体PKG1を示す図であり、封止体MRを透視したパッケージ構造体PKG1の上面図である。
【0051】
図9に示すように、パッケージ構造体PKG1は、ダイパッドDP1とダイパッドDP2とを有している。そして、ダイパッドDP1上には、例えば、パワートランジスタが形成された半導体チップCHP1が搭載されている。この半導体チップCHP1の表面には、ソースパッドSPおよび複数のパッドPDAが形成されている。一方、ダイパッドDP2上には、例えば、パワートランジスタを制御する制御回路が形成された半導体チップCHP2が搭載されている。この半導体チップCHP2の表面には、複数のパッドPDBおよび複数のパッドPDCが形成されている。
【0052】
次に、パッケージ構造体PKG1は、複数のリードLDAを有している。これらの複数のリードLDAは、ポスト部PSTと一体化されている。そして、ポスト部PSTの表面には、ニッケルを主成分とするニッケルめっき膜PFAが形成されている。複数のリードLDAは、x方向(第1方向)に並んで配置されている。
【0053】
また、パッケージ構造体PKG1は、複数のリードLDBを有している。これらの複数のリードLDBのそれぞれの一端部には、銀を主成分とする銀めっき膜PFBが形成されている。複数のリードLDBも、x方向に並んで配置されている。
【0054】
ここで、複数のリードLDA、ダイパッドDP1、ダイパッドDP2および複数のリードLDBは、この順番でx方向と交差するy方向(第2方向)に並んで配置されている。
【0055】
続いて、
図9に示すように、半導体チップCHP1に形成されているソースパッドSPと、複数のリードLDAと一体化されたポスト部PSTとは、複数のボンディングワイヤBW1で接続されている。ここで、複数のボンディングワイヤBW1のそれぞれは、アルミニウムを主成分とする材料から構成されており、それぞれの径は、300μm程度である。このとき、ポスト部PSTの表面には、ニッケルめっき膜PFAが形成されていることから、ポスト部PSTと接続されるボンディングワイヤBW1は、ニッケルめっき膜PFAと接触することになる。これにより、ボンディングワイヤBW1とポスト部PSTとの接続信頼性を向上することができる。すなわち、ボンディングワイヤBW1をニッケルめっき膜PFAと接続させることにより、ワイヤ剥がれを抑制することができる。
【0056】
一方、半導体チップCHP1の表面に形成されている複数のパッドPDAのそれぞれと、半導体チップCHP2の表面に形成されている複数のパッドPDBのそれぞれとは、ボンディングワイヤBW2で接続されている。ここで、ボンディングワイヤBW2は、金を主成分とする材料から構成されており、その径は、25μm程度である。
【0057】
次に、
図9に示すように、半導体チップCHP2に形成されている複数のパッドPDCのそれぞれと、複数のリードLDBのそれぞれとは、ボンディングワイヤBW3で接続されている。ここで、複数のボンディングワイヤBW3のそれぞれは、金を主成分とする材料から構成されており、それぞれの径は、25μm程度である。このとき、リードLDBの一端部の表面には、銀めっき膜PFBが形成されていることから、リードLDBと接続されるボンディングワイヤBW3は、銀めっき膜PFBと接触することになる。これにより、ボンディングワイヤBW3とリードLDBとの接続信頼性を向上することができる。すなわち、ボンディングワイヤBW3を銀めっき膜PFBと接続させることにより、ワイヤ剥がれを抑制することができる。
【0058】
上述した半導体チップCHP1、半導体チップCHP2、ポスト部PST、複数のリードLDAのそれぞれの一部分、一端部を含む複数のリードLDBのそれぞれの一部分、複数のボンディングワイヤBW1~BW3は、封止体MRで封止されている。
【0059】
ここで、
図9に示すように、封止体MRは、矩形形状の平面形状をしており、x方向に延在する第1辺S1と、この第1辺S1と対向する第2辺S2とを有している。このとき、封止体MRの第1辺S1に沿って、複数のリードLDAが並んで配置されており、複数のリードLDAのそれぞれの他部分は、第1辺S1からのみ露出している。同様に、封止体MRの第2辺S2に沿って、複数のリードLDBが並んで配置されており、複数のリードLDBのそれぞれの他部分は、第2辺S2からのみ露出している。
【0060】
続いて、
図10は、パッケージ構造体PKG1の下面図である。
図10に示すように、封止体MRの裏面からは、ダイパッドDP1の下面およびダイパッドDP2の下面が露出している。以上のようにして、パッケージ構造体PKG1が構成されている。
【0061】
ここでは、パッケージ構造体PKG1として、「SON(Small Outline Non-leaded package)パッケージ」を例に挙げて説明しているが、本実施の形態における基本思想は、「SOP(Small Outline Package)パッケージ」としても具現化することができる。
【0062】
<半導体装置の製造方法>
次に、パッケージ構造体(半導体装置)PKG1の製造方法について説明する。
【0063】
まず、
図11に示すように、互いに離れながら並行してx方向(第1方向)に延在する第1領域R1と第2領域R2とを含むフレーム材FMを準備する。
【0064】
そして、
図12に示すように、第1領域R1以外の領域を覆うように、マスキングテープMSK1をフレーム材FMに貼り付ける。その後、ニッケルを含む第1めっき液に、マスキングテープMSK1を貼り付けたフレーム材FMを浸漬する。これにより、
図13に示すように、マスキングテープMSK1から露出した第1領域R1にニッケルめっき膜PFAが形成される。
【0065】
次に、マスキングテープMSK1をフレーム材FMから剥がした後、
図14に示すように、第2領域R2以外の領域を覆うように、マスキングテープMSK2をフレーム材FMに貼り付ける。そして、銀を含む第2めっき液に、マスキングテープMSK2を貼り付けたフレーム材FMを浸漬する。これにより、
図15に示すように、マスキングテープMSK2から露出した第2領域R2に銀めっき膜PFBが形成される。
【0066】
その後、マスキングテープMSK2をフレーム材FMから剥がす。これにより、
図16に示すように、第1領域R1にニッケルめっき膜PFAが形成され、かつ、第2領域R2に銀めっき膜PFBが形成されたフレーム材FMを取得することができる。
【0067】
次に、フレーム材FMに対してスタンピング加工(打ち抜き加工)を施す。これにより、
図17に示すように、それぞれ第1領域R1の一部および第2領域R2の一部を含む複数のデバイス領域DRがフレーム材FMに形成される。この結果、複数のデバイス領域DRが形成されたフレーム材FMであるリードフレームLFを製造することができる。
【0068】
上述した記載を考慮すると、
図13に示すニッケルめっき膜PFAを形成する工程では、複数のデバイス領域にわたってニッケルめっき膜PFAが形成されることになる。同様に、
図15に示す銀めっき膜PFBを形成する工程では、複数のデバイス領域にわたって銀めっき膜PFBが形成されることになる。
【0069】
ここで、
図18は、リードフレームLFに形成されている複数のデバイス領域DRのうちの1つのデバイス領域DRを拡大して示す模式図である。
【0070】
図18に示すように、1つのデバイス領域DRには、ダイパッドDP1と、ダイパッドD2と、x方向に並ぶ複数のリードLDAと、x方向に並ぶ複数のリードLDBとが形成されている。このとき、複数のリードLDA、ダイパッドDP1、ダイパッドDP2および複数のリードLDBは、この順番でx方向と交差するy方向に並んで配置されている。
【0071】
そして、複数のリードLDAは、ニッケルめっき膜PFAが形成された第1領域R1の一部からなるポスト部PSTと一体的に形成されている。言い換えれば、複数のリードLDAは、フレーム材の第1領域R1の一部を介して互いに繋がっている。このように、複数のリードLDAのそれぞれは、第1領域R1の一部を含むが、第2領域R2の一部は含まない。
【0072】
一方、複数のリードLDBのそれぞれは、銀めっき膜PFBが形成された第2領域R2の一部を一端部として含むように形成されている。このように、複数のリードLDBのそれぞれは、第2領域R2の一部を含むが、第1領域R1の一部は含まない。
【0073】
以下では、上述したデバイス領域DRが複数形成されたリードフレームLFを使用してパッケージ構造体PKG1を製造する工程について、1つのデバイス領域DRに着目して説明する。
【0074】
まず、
図19に示すように、パワートランジスタが形成された半導体チップCHP1をダイパッドDP1上に搭載する。具体的には、ダイパッドDP1上に銀ペーストや半田などからなる導電性接着材CP1を塗布した後、この導電性接着材CP1を介して、ダイパッドDP1上に半導体チップCHP1を搭載する。また、制御回路が形成された半導体チップCHP2をダイパッドDP2上に搭載する。具体的には、ダイパッドDP2上に銀ペーストや半田などからなる導電性接着材CP2を塗布した後、この導電性接着材CP2を介して、ダイパッドDP2上に半導体チップCHP2を搭載する。
【0075】
次に、
図20に示すように、半導体チップCHP1の表面に形成されているソースパッドSPと、ニッケルめっき膜PFAが形成されたポスト部PST(第1領域の一部)とを複数のボンディングワイヤBW1で接続する。このとき、複数のボンディングワイヤBW1のそれぞれは、アルミニウムを主成分とする材料から構成されている。
【0076】
続いて、
図21に示すように、半導体チップCHP1の表面に形成されているパッドPDAと、半導体チップCHP2の表面に形成されているパッドPDBとをボンディングワイヤBW2で接続する。また、半導体チップCHP2の表面に形成されているパッドPDCと、リードLDBの銀めっき膜PFBが形成された一端部とをボンディングワイヤBW3で接続する。このとき、ボンディングワイヤBW2およびボンディングワイヤBW3は、金を主成分とする材料から構成されている。
【0077】
このように、半導体チップCHP1には、パワートランジスタが形成されており、半導体チップCHP2には、パワートランジスタの制御回路が形成されている。そして、ボンディングワイヤBW1は、パワートランジスタのソースと電気的に接続された半導体チップCHP1のソースパッドSPと電気的に接続されている。このとき、複数のリードLDAは、フレーム材の第1領域R1の一部を介して互いに繋がっているとともに、ボンディングワイヤBW1の径は、ボンディングワイヤBW2およびボンディングワイヤBW3の径よりも太くなっている。これにより、出力経路となるソースのオン抵抗を低減できる。
【0078】
その後、
図22に示すように、デバイス領域DRに対して、樹脂封止(モールド)を行うことにより封止体MRを形成する。具体的には、少なくとも、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2、ポスト部PST(第1領域の一部)、複数のリードLDAのそれぞれの一部分、一端部(第2領域の一部)を含む複数のリードLDBのそれぞれの一部分、複数のボンディングワイヤBW1~BW3を封止体MRで封止する。
【0079】
そして、封止体MRから露出しているリードLDAおよびリードLDBの他部分に必要に応じてめっき層を形成する。次に、封止体MRの外部において、リードLDAおよびリードLDBを所定の位置で切断する。また、ダイパッドDP1およびダイパッドDP2のそれぞれと接続されている吊りリードも所定の位置で切断する。
【0080】
以上のようにして、パッケージ構造体PKG1を製造することができる。
【0081】
<実施の形態における特徴>
次に、本実施の形態における特徴点について説明する。
【0082】
まず、上述したように、本実施の形態における基本思想は、「ストライプめっき法」を使用することを前提として、ニッケルめっき膜を形成する第1リード群と、銀めっき膜を形成する第2リード群とに複数のリードを分ける思想である。
【0083】
そこで、この基本思想を具現化するために、本実施の形態では、いわゆる「SON(Small Outline Non-leaded package)パッケージ」あるいは「SOP(Small Outline Package)パッケージ」を半導体装置のパッケージ構造体として採用している。
【0084】
具体的に、本実施の形態では、例えば、
図9に示すように、x方向に延在する第1辺S1と、第1辺S1と対向してx方向に延在する第2辺S2を有する封止体MRを備えるパッケージ構造体PKG1において、複数のリードLDAが第1辺S1に沿って配置され、かつ、複数のリードLDBが第2辺S2に沿って配置されている構成を採用している。この構成は、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」で実現される。
【0085】
これにより、
図9に示すように、ニッケルめっき膜PFAが形成されたポスト部PSTと一体的に形成された複数のリードLDAと、銀めっき膜PFBが形成された一端部を有する複数のリードLDBとを分けて形成することができる。このことは、ニッケルめっき膜PFAと銀めっき膜PFBとの相対的な位置ずれが問題とならないことを意味する。
【0086】
そして、本実施の形態では、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」を半導体装置のパッケージ構造体として採用することを前提として、以下に示す「ストライプめっき法」を使用した半導体装置の製造方法を実現することにより、基本思想を具現化している。具体的に、例えば、互いに離れながら並行してx方向に延在する第1領域R1と第2領域R2とを有するフレーム材FMにおいて、第1領域R1に「ストライプめっき法」を使用して、ニッケルめっき膜PFAを形成した後、第2領域R2に「ストライプめっき法」を使用して、銀めっき膜PFBを形成する。その後、ニッケルめっき膜PFAを形成した第1領域R1と銀めっき膜PFBを形成した第2領域R2を有するフレーム材FMに対して、スタンピング加工を施すことにより、リードLDAおよびリードLDBを有するリードフレームLFを形成する。このとき、リードフレームLFには、第1領域R1をスタンピング加工することにより形成された第1リード群(複数のリードLDA)と、第2領域R2をスタンピング加工することにより形成された第2リード群(複数のリードLDB)とが含まれ、複数のリードLDAと一体化したポスト部PSTには、ニッケルめっき膜PFAだけが形成される一方、複数のリードLDBのそれぞれには、銀めっき膜PFBだけが形成される(
図11~
図18参照)。
【0087】
このように、本実施の形態における特徴点は、基本思想を具現化するために、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」を半導体装置のパッケージ構造体として採用し、このパッケージ構造体を製造する方法として、「ストライプめっき法」を取り入れた
図11~
図18に示す半導体装置の製造方法を採用する点にある。
【0088】
これにより、本実施の形態における特徴点によれば、
図9に示すように、ニッケルめっき膜PFAが形成されたポスト部PSTには、アルミニウムを主成分とするボンディングワイヤBW1を接続することができる。一方、銀めっき膜PFBが形成された一端部を有するリードLDBには、金を主成分とするボンディングワイヤBW3を接続することができる。そしてこのとき、本実施の形態では、ニッケルめっき膜PFAが形成されたポスト部PSTと一体化したリードLDAと、銀めっき膜PFBが形成された一端部を有するリードLDBが封止体MRの互いに対向する第1辺S1と第2辺S2とに分けて配置されている。このことから、ニッケルめっき膜PFAと銀めっき膜PFBとの相対的な位置ずれが問題とならない。したがって、本実施の形態によれば、ニッケルめっき膜PFAと銀めっき膜PFBとの相対的な位置ずれに起因するワイヤ剥がれや銀マイグレーションを抑制できる結果、半導体装置(パッケージ構造体)の信頼性を向上させることができる。
【0089】
つまり、関連技術では、例えば、
図6に示すように、半導体チップCHP1と半導体チップCHP2を積層配置するとともに、封止体MRの一辺だけに沿ってリードLD1~LD7が配置されている、いわゆる「TOパッケージ」を採用している。だからこそ、関連技術で「ストライプめっき法」を採用すると、1本のリードにニッケルめっき膜と銀めっき膜という2種類のめっき膜を形成する必要性が必然的に生じる。この結果、関連技術では、製造コストを低減できる「ストライプめっき法」を使用すると、ニッケルめっき膜と銀めっき膜との相対的な位置ずれが問題点として顕在化するのである。この点が、本発明者が見出した新規な知見である。
【0090】
そして、本発明者は、この新規な知見に着目して検討した結果、そもそもニッケルめっき膜が形成される第1リード群と、銀めっき膜が形成される第2リード群とを別々のリード群として構成し、かつ、第1リード群と第2リード群とがパッケージ構造体を構成する封止体の別々の辺に沿って配置すれば、「ストライプめっき法」を使用する場合に、ニッケルめっき膜と銀めっき膜との相対的な位置ずれが問題とならないことに気づいた(基本思想)。その後、本発明者は、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」において、「ストライプめっき法」を取り入れた
図11~
図18に示す半導体装置の製造方法で上述した基本思想を具現化するという本実施の形態における特徴点を想到している。
【0091】
このように考えると、本発明者が見出した新規な知見が動機付けとなって、基本思想が想到され、この基本思想が動機付けとなって、本実施の形態における特徴点が想到されているということができる。したがって、本実施の形態における特徴点を想到するにあたっては、本発明者が見出した新規な知見およびこの知見に基づく基本思想の着想は非常に重要な意義を有しているということができる。
【0092】
さらに、本発明者は、基本思想から具体的な本実施の形態における特徴点を想到するにあたって、いわゆる「QFN(Quad Flat Non-leaded Package)パッケージ」あるいは「QFP(Quad Flat Package)パッケージ」を採用することも検討したが、採用するには至らなかったので、この理由についても説明する。
【0093】
「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」は、封止体の4辺に沿ってリードが配置されているパッケージ構造体である。例えば、
図23は、「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」を形成するためのリードフレームLF2を示す模式図である。
図23において、破線で記載された領域が封止体MRの形成領域を示しており、封止体MRは、x方向に延在する第1辺S1と、第1辺S1と対向する第2辺S2と、y方向に延在する第3辺S3と、第3辺S3と対向する第4辺S4とを有している。このとき、
図23に示すように、第1辺S1に沿ってリードLDAが配置されているとともに、第2辺S2に沿ってリードLDBが配置されている。また、第3辺S3に沿ってリードLDCが配置されているとともに、第4辺S4に沿ってリードLDDが配置されている。
【0094】
ここで、「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」を形成するためのリードフレームLF2では、リードLDAと一体化したポスト部PSTにニッケルめっき膜PFAを形成する一方、リードLDB~LDDに銀めっき膜PFBを形成することになる。
【0095】
このとき、「ストライプめっき法」を使用することを考えると、
図24に示すようにフレーム材FMに対して、ニッケルめっき膜PFAと銀めっき膜PFBを形成した後、スタンピング加工を施すことにより、
図23に示すリードフレームLF2を取得する。これにより、
図23に示すリードフレームLF2においては、リードLDAと一体化したポスト部PSTにニッケルめっき膜PFAが形成されるとともに、リードLDBの一端部およびリードLDCとリードLDDの全体に銀めっき膜PFBが形成される。
【0096】
その後、
図23に示すリードフレームLF2から
図25に示すパッケージ構造体PKG2が製造される。ここで、リードLDCおよびリードLDDにおいては、表面全体に銀めっき膜PFBが形成されることから、
図25に示すパッケージ構造体PKG2において、パッケージ構造体PKG2から露出するリードLDCおよびリードLDDの表面に銀めっき膜PFBが形成されてしまう。この結果、銀マイグレーションが発生することが懸念される。そして、リードLDCおよびリードLDDにおいて銀マイグレーションが生じると、例えば、隣り合うリードの間でショート不良を引き起こすおそれがある。
【0097】
このように、「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」を形成するためのリードフレームLF2を「ストライプめっき法」で製造する場合、銀めっき膜PFBの延在方向(x方向)に延在するリードLDCおよびリードLDDが存在することに起因して、これらのリードLDCおよびリードLDDにおいては、表面全体に銀めっき膜PFBが形成されてしまう。この結果、パッケージ構造体PKG2から露出するリードLDCおよびリードLDDの表面にまで銀めっき膜PFBが形成されてしまう結果、銀マイグレーションに起因するショート不良が引き起こされるおそれが高まるのである。
【0098】
以上のことから、基本思想を具現化するパッケージ構造体として、「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」を採用していないのである。これに対し、本実施の形態で採用している「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」では、銀めっき膜PFBの延在方向(x方向)に延在するリードが存在しない結果、「QFNパッケージ」あるいは「QFPパッケージ」と異なり、表面全体に銀めっき膜PFBが形成されるリードが存在しない。このため、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」では、銀マイグレーションに起因するショート不良が発生するポテンシャルを低減できる。したがって、本実施の形態では、基本思想を具現化するパッケージ構造体として、「QFNパッケージ」や「QFPパッケージ」ではなく、「SONパッケージ」あるいは「SOPパッケージ」を採用しているのである。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0100】
本実施の形態では、ダイパッドDP1の下面およびダイパッドDP2の下面が封止体MRの裏面から露出している構成のパッケージ構造体PKG1について説明したが、本実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、ダイパッドDP1の下面およびダイパッドDP2の下面が封止体MRに覆われている構成のパッケージ構造体にも幅広く適用することができる。なお、「ダイパッドの下面」とは、半導体チップが搭載されるチップ搭載面(上面)とは反対側の面として定義される。
【0101】
前記実施の形態では、半導体チップに形成されるパワートランジスタとして、パワーMOSFETを想定して説明を行ったが、前記実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、パワートランジスタとして、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用する半導体装置にも幅広く適用することができる。
【0102】
前記実施の形態は、以下の態様を含む。
【0103】
(付記)
以下を含む、半導体装置:
第1ダイパッド;
第2ダイパッド;
前記第1ダイパッド上に搭載された第1半導体チップ;
前記第2ダイパッド上に搭載された第2半導体チップ;
第1めっき膜が形成されたポスト部と一体化された複数の第1リード;
それぞれ第2めっき膜が形成された一端部を含む複数の第2リード;
前記第1半導体チップと前記ポスト部とを接続する第1導電性部材;
前記第2半導体チップと前記一端部とを接続する第2導電性部材;および
少なくとも、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、前記ポスト部、前記複数の第1リードのそれぞれの一部分、前記一端部を含む前記複数の第2リードのそれぞれの一部分、前記第1導電性部材および前記第2導電性部材を封止する封止体、
ここで、
前記封止体は、
前記第1方向に延在する第1辺と、
前記第1辺と対向する第2辺と、
を有し、
前記複数の第1リードは、前記第1辺に沿ってのみ配置され、
前記複数の第2リードは、前記第2辺に沿ってのみ配置され、
前記複数の第1リード、前記第1ダイパッド、前記第2ダイパッドおよび前記複数の第2リードは、この順番で前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置されている。
【符号の説明】
【0104】
10 メイントランジスタ
20 センストランジスタ
30 温度センサ
40 導電性接着材
50 絶縁性接着材
100 スイッチング回路
200 制御回路
BW1 ボンディングワイヤ
BW2 ボンディングワイヤ
BW3 ボンディングワイヤ
CHP1 半導体チップ
CHP2 半導体チップ
CP1 導電性接着材
CP2 導電性接着材
DP ダイパッド
DP2 ダイパッド
DR デバイス領域
FM フレーム材
LD リード
LDA リード
LDB リード
LDC リード
LDD リード
LD1 リード
LD2 リード
LD3 リード
LD4 リード
LD5 リード
LD6 リード
LD7 リード
LF リードフレーム
LF2 リードフレーム
MR 封止体
MSK1 マスキングテープ
MSK2 マスキングテープ
PDA パッド
PDB パッド
PDC パッド
PD3 パッド
PD4 パッド
PD5 パッド
PF めっき膜
PFA ニッケルめっき膜
PFB 銀めっき膜
PF1 銀めっき膜
PF2 ニッケルめっき膜
PKG パッケージ構造体
PKG1 パッケージ構造体
PKG2 パッケージ構造体
PST ポスト部
R1 第1領域
R2 第2領域
SA1 半導体装置
SP ソースパッド
SP1 ソースパッド
SP2 ソースパッド
S1 第1辺
S2 第2辺
S3 第3辺
S4 第4辺
W1 太ワイヤ
W2 太ワイヤ
W3 ワイヤ
W4 ワイヤ