IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 因幡電機産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-措置具 図1
  • 特開-措置具 図2
  • 特開-措置具 図3
  • 特開-措置具 図4
  • 特開-措置具 図5
  • 特開-措置具 図6
  • 特開-措置具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163872
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】措置具
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20231102BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16L5/04
E04B1/94 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075075
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古賀 誠一
(72)【発明者】
【氏名】萩森 之一
(72)【発明者】
【氏名】勝部 翔太
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE04
2E001FA03
2E001FA31
2E001GA24
2E001HF12
(57)【要約】
【課題】十分な耐火性能が得られる措置具を提供する。
【解決手段】建築物の区画体2に横向きの区画貫通孔3が形成され、区画貫通孔3に長尺体が挿通される区画貫通構造に用いられる措置具であって、区画貫通孔3に挿通可能な筒状のスリーブ本体41と、スリーブ本体41の内面41Aに設けられる筒状の熱膨張材42と、熱膨張材42の少なくとも軸方向一端部をスリーブ本体41に取り付ける一端取付部61を含む取付手段6と、を備え、一端取付部61は、火災の熱により取付性能が低下するよう構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の区画体に横向きの区画貫通孔が形成され、該区画貫通孔に長尺体が挿通される区画貫通構造に用いられる措置具であって、
前記区画貫通孔に挿通可能な筒状のスリーブ本体と、該スリーブ本体の内面に設けられる筒状の熱膨張材と、該熱膨張材の少なくとも軸方向一端部を前記スリーブ本体に取り付ける一端取付部を含む取付手段と、を備え、
前記一端取付部は、火災の熱により取付性能が低下するよう構成されていることを特徴とする措置具。
【請求項2】
前記取付手段は、前記熱膨張材の軸方向他端部を前記スリーブ本体に取り付ける他端取付部を更に含み、前記一端取付部と前記他端取付部との間に非取付部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の措置具。
【請求項3】
前記熱膨張材の軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面が、前記スリーブ本体に貼り付け可能な粘着面であり、前記軸方向一端部と前記軸方向他端部との間が非粘着面であり、前記粘着面と前記非粘着面とで前記取付手段が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の措置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の仕切り部に設けられる区画体に区画貫通孔が形成され、該区画貫通孔に配管が挿通される区画貫通構造に用いられる措置具に関する。
【0002】
従来から、建築物の仕切り部に設けられる区画体としての壁に形成される横向きの貫通孔に管状部材を挿通してから固定部材により壁に固定し、固定した管状部材の内部に配管類やケーブル類等の内挿部材を挿通する。続いて、管状部材の内部に熱膨張性部材を内挿部材との間に隙間ができるように配置してから、管状部材の軸方向一方の端部を遮蔽部材により遮蔽する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-191694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、例えば大径の管状部材に対して小径の内挿部材を挿通すると、熱膨張性部材の内面と内挿部材の外面との間の隙間が大きくなってしまう。この状態で火炎が発生すると、発生した火炎の熱で熱膨張性部材が膨張して管状部材の内面と内挿部材の外面との間の大きな隙間を塞ぐまでに多くの時間がかかってしまい、十分な耐火性能が得られない場合があり、早期改善が望まれている。
【0005】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、十分な耐火性能が得られる措置具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の措置具は、前述の課題解決のために、建築物の区画体に横向きの区画貫通孔が形成され、該区画貫通孔に長尺体が挿通される区画貫通構造に用いられる措置具であって、前記区画貫通孔内に挿通可能な筒状のスリーブ本体と、該スリーブ本体の内面に設けられる筒状の熱膨張材と、該熱膨張材の少なくとも軸方向一端部を前記スリーブ本体に取り付ける一端取付部を含む取付手段と、を備え、前記一端取付部は、火災の熱により取付性能が低下するよう構成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、区画体の軸方向一端側で火炎が発生すると、火炎の熱により一端取付部の取付性能が低下する。これにより、熱膨張材の軸方向一端部がスリーブ本体の内面から剥がれて下方へ垂れる。この熱膨張材の垂れた部分が長尺体に近づいた状態で膨張するので、熱膨張材がスリーブ本体の内面と長尺体の外面との間の隙間を塞ぐまでの時間を短くすることができ、十分な耐火性能を得ることができる。
【0008】
又、本発明の措置具として、前記取付手段は、前記熱膨張材の軸方向他端部を前記スリーブ本体に取り付ける他端取付部を更に含み、前記一端取付部と前記他端取付部との間に非取付部が設けられていてもよい。
【0009】
上記のように、一端取付部と他端取付部との間に非取付部を設けることによって、火炎が発生した時に、火炎の熱で一端取付部の取付性能が低下して一端取付部から非取付部までの部分が下方に垂れることで、一端取付部の先端部が長尺体に近づきやすくなり、耐火性能を向上させることができる。
【0010】
又、本発明の措置具として、前記熱膨張材の軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面が、前記スリーブ本体に貼り付け可能な粘着面であり、前記軸方向一端部と前記軸方向他端部との間が非粘着面であり、前記粘着面と前記非粘着面とで前記取付手段が構成されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、熱膨張材の軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面の粘着面でスリーブ本体に熱膨張材を貼り付けることによって、熱膨張材をスリーブ本体に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱膨張材の少なくとも軸方向一端部を前記スリーブ本体に取り付ける一端取付部を、火災の熱により取付性能が低下するよう構成することによって、十分な耐火性能が得られる措置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の措置具が取り付けられた区画貫通構造の縦断側面図である。
図2】措置具のカバー部材の先端部を省略した斜視図である。
図3図1の熱膨張部材の取付部の拡大図である。
図4図1における熱膨張材とスリーブ本体とを示す拡大断面図である。
図5図4の熱膨張材の先端部が熱によりスリーブ本体から剥がれた状態を示す断面図である。
図6】スリーブ本体に対する熱膨張材の軸方向の位置を変更した第1の別の形態を示す要部の拡大図である。
図7】スリーブ本体に対する熱膨張材の軸方向の位置を変更した第2の別の形態を示す要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の区画貫通構造に用いられる措置具の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
区画貫通構造では、建築物の仕切り部に設けられる区画体である壁に横向きの区画貫通孔が形成され、区画貫通孔に長尺体である配管が挿通される。挿通された配管と区画貫通孔との間には、隙間が発生しており、この隙間をなくすために措置具が用いられる。
【0016】
措置具Hは、図1に示すように、外径の大きさが異なる複数本(図1では2本)の長尺体としての配管1A,1Bに外装されるとともに壁(区画体)2に形成された円形の区画貫通孔3に挿入可能に構成される円筒状のスリーブ部材4と、スリーブ部材4の軸方向外方向きに延設され、かつ、スリーブ部材4を挿通する複数の配管1A,1Bに対して縮径可能な円筒状のカバー部材5と、を備えている。尚、前記長尺体としては、冷媒管、熱媒管、給湯管、給水管、排水管、油圧配管、ガス管、電線管、電線(電源線や信号線)、ケーブル等が挙げられる。壁2は、2枚の壁2A,2Bが軸方向に間隔を置いて設置されて内部中空の壁に構成されている。
【0017】
スリーブ部材4は、図2に示すように、金属製(例えば、鋼製)の薄板状体をリング状に丸めることで円筒状に構成されるスリーブ本体41と、スリーブ本体41の内面41A(図1参照)に設けられる熱膨張材42と、スリーブ本体41の軸方向一端部(図2では右側端部)の外面41Bに設けられる隙間隠し部43と、を備えている。したがって、スリーブ本体41を区画貫通孔3の内径寸法に対応した外径寸法になるように丸めることで区画貫通孔3に挿通可能に構成できる。スリーブ本体41を区画貫通孔3に挿通した後は、縮径させたスリーブ本体41が弾性復元力により外側に拡開することによって、スリーブ本体41を区画貫通孔3に押し付けてスリーブ本体41と区画貫通孔3との間に隙間が発生することがなく、スリーブ本体41と区画貫通孔3とを遮蔽することができる。
【0018】
また、スリーブ本体41は、軸方向と直交する周方向の寸法が、区画貫通孔3の直径寸法よりも大きな寸法を有し、軸方向の寸法が区画貫通孔3の軸方向の寸法よりも長い寸法を有している。また、スリーブ本体41には、図2に示すように、スリーブ本体41に設けられた熱膨張材42の軸方向略中央部付近に、周方向全周に亘って間隔を置いて複数の長孔41a,41bが2列形成されている。これら2列の長孔41a,41bは、それぞれ平行に形成され、かつ、千鳥状に配置され、しかも、周方向で隣り合う一方(図2の上側)の長孔41aと他方(図2の下側)の長孔41bとが軸方向で重複するように長さが設定されている。つまり、スリーブ本体41の周方向のどの部分においても長孔41a又は41bが存在する。したがって、熱膨張材42が膨張した場合に、長孔41a,41bを通してスリーブ本体41の外部側へ熱膨張材42の一部が膨出して、壁2の区画孔3とスリーブ本体41の外面との隙間を埋めることができるようになっている。
【0019】
熱膨張材42は、スリーブ本体41の軸方向と直交する周方向一端から周方向他端の周方向全域に亘る寸法を有し、かつ、軸方向一端から軸方向他端の軸方向全域に亘る寸法を有している。したがって、スリーブ本体41が区画貫通孔3内に挿通された状態において、熱膨張材42の軸方向一端及び軸方向他端の両方とも区画貫通孔3の軸方向外側へ突出した状態(この実施形態では、区画貫通孔3の軸方向外側へ同一の突出量)になっている。この実施形態では、熱膨張材42を、スリーブ本体41の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向全域に亘る寸法にしたが、軸方向全域よりも短い寸法にしてもよい。
【0020】
また、熱膨張材42は、熱膨張性(加熱により体積が増加する性質)と耐火性(熱に耐えやすい性質、溶融温度が高く燃えにくい性質)とを有する部材である。熱膨張材42としては、公知の材質のものを特に制限なく用いることができ、例えばシート状部材(熱膨張性シート状耐火材)を用いることができる。また、熱膨張材42は、例えば所定温度(例えば約180℃)以上に加熱された際に、その厚み方向に膨張して図1に示す配管1A,1Bの外面1a,1bとスリーブ本体41の内面41Aとの間の隙間を埋めることで区画貫通孔3の一方側で発生した火炎が区画貫通孔3の他方側へ移動することを防止する。
【0021】
前記構成の熱膨張材42は、図3及び図4に示すように、取付手段6によりスリーブ本体41の内面41Aに取り付けられている。この取付手段6は、熱膨張材42の軸方向一端部をスリーブ本体41に取り付ける一端取付部61と、熱膨張材42の軸方向他端部をスリーブ本体41に取り付ける他端取付部62と、を含み、一端取付部61と他端取付部62との間に非取付部63が設けられている。
【0022】
前記熱膨張材42の軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面が、スリーブ本体41に貼り付け可能な粘着面であり、前記熱膨張材42の軸方向一端部と軸方向他端部との間の外面が、非粘着面である。そして、前記2つの粘着面と前記非粘着面とで前記取付手段6が構成される。つまり、前記一端取付部61及び他端取付部62が、前記軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面の粘着面である。また、前記非取付部63が、前記非粘着面である。粘着面61,62は、いずれもスリーブ本体41の周方向一端から周方向他端までの周方向全域に亘って備え、かつ、軸方向一端(又は他端)から軸方向内方側へ所定長さまでの範囲に備え、同一面積に構成されている。
【0023】
粘着面61,62は、軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面のそれぞれに塗布された粘着剤から構成される。また、非粘着面63は、熱膨張材42の軸方向一端部と軸方向他端部との間の外面に貼り付けられたフィルムから構成される。フィルムは、熱膨張材42の周方向一端から周方向他端に亘る周方向全域に亘る寸法を有し、軸方向の寸法は、熱膨張材42の軸方向両端部を除く中間部の領域に亘る寸法を有し、軸方向の寸法を長くすれば、粘着剤の面積が減少し、軸方向の寸法を短くすれば、粘着剤の面積が増大する。前記フィルム63は、粘着剤64により熱膨張材42の外面42Bに貼り付けられ、熱膨張材42の軸方向両端部を粘着面61,62を介してスリーブ本体41の内面41Aに貼り付けることによって、フィルム63の厚み分だけ熱膨張材42が凹むように変形して熱膨張材42がスリーブ本体41の内面41Aに取り付けられる。
【0024】
また、前記構成の一端取付部(粘着剤)61及び他端取付部(粘着剤)62は、火炎の熱により取付性能が低下するように構成されている。したがって、軸方向一端側(カバー部材5側)で火炎が発生すると、火炎の熱により一端取付部(粘着剤)61の取付性能が低下する。これにより、熱膨張材42の一端部42Aがスリーブ本体41の内面41Aから剥がれて下方へ垂れる(図5参照)。具体的には、熱膨張材42の一端部42Aに備える粘着剤の粘着力が、熱膨張材42の粘着力で保持している部分における重さよりも小さくなると、粘着が剥がれて熱膨張材42の一端部42Aが下方へ垂れる(図5参照)。言い換えれば、粘着剤は、所定温度(例えば約180℃)未満で粘着力が弱くなる又は喪失し、熱膨張材42は、所定温度(例えば約180℃)になると軟化する。したがって、熱膨張材42の粘着剤で保持されている一端部(図5ではカバー部材5側となる軸方向前端部)42Aが、火災発生前は、粘着剤の粘着力でスリーブ本体41の内面41Aに保持されている(図4参照)が、火災が発生して温度が上昇し、所定温度(例えば約180℃)付近になると、粘着剤の粘着力が低下又は喪失するとともに、熱膨張材42の少なくとも前端部が軟化する。そして、前端部を含む粘着剤で保持している部分の重さが粘着力を上回った時点で、図5に示すように、粘着が剥がれて熱膨張材42の前端部が垂れる。この熱膨張材42の垂れた一端部42Aが配管1A,1Bに近づいた状態(図5では熱膨張材42の垂れた一端部42Aの先端42aが大径の配管1Aの外面1aに当接している状態)で膨張するので、スリーブ本体41の内面41Aと配管1Aの外面1aとの間の隙間を塞ぐまでに熱膨張材42が膨張する時間を短くすることができ、十分な耐火性能を得ることができる。
【0025】
熱膨張材42の垂れるタイミングは、粘着剤の軸方向の寸法でコントロールできる。つまり、粘着剤の軸方向の寸法を大きくすると、垂れるタイミングを遅らせることができ、粘着剤の軸方向の寸法を小さくすると、垂れるタイミングを早くすることができる。また、粘着剤を設けた熱膨張材42の前端部の位置を調整することによって、火災発生から垂れるまでの時間を調整できる。具体的には、図6に示すように、熱膨張材42の前端部42Fを壁2よりも外側に配置すると、火炎の熱が早く伝わるため、火災発生から短時間で昇温して前端部42Fが早く垂れる。また、図7に示すように、熱膨張材42の前端部42Fを壁2の内側に配置すると、火炎の熱が遅く伝わるため、火災発生からある程度時間が経過しないと昇温せず、垂れるのが遅れる。図示していないが、火災が、カバー部材5を装着していない側で発生した場合には、図6のように、熱膨張材42の後端部を壁2の内側に配置していたとしても、カバー部材5が無い分、火災発生から短時間で昇温して早く垂れるので、問題にならない。
【0026】
隙間隠し部43は、例えば、スポンジ、柔らかいゴム、発泡ポリウレタン等発泡材などの復元可能に変形可能な帯状の弾性部材から構成され、区画貫通穴3とスリーブ本体41の外面との間の隙間を隠す目的で使用されているが、スリーブ本体41を区画貫通孔3内に挿入したときに、区画貫通孔3を構成する一方の壁2Aの壁面2aに当接して区画貫通孔3内に対するスリーブ本体41の位置決めを行うためのストッパとしても機能する(図1参照)。
【0027】
また、隙間隠し部43は、スリーブ本体41の軸方向一端部の外面に接着剤により貼り付けられている。そして、スリーブ本体41を縮径した際にその縮径状態を維持することができるようにスリーブ本体41の外面に貼り付けることができるようにしている。具体的には、図2に示すように、隙間隠し部43の一端部が、スリーブ本体41の一端部から周方向外側に延出する延出部43Aを備え、かつ、隙間隠し部43の他端部がスリーブ本体41の他端部よりも一端部側に位置するように、隙間隠し部43がスリーブ本体41に貼り付けられている。したがって、スリーブ本体41を区画貫通孔3内に挿入できる外径寸法になるように縮径した状態で、隙間隠し部43の延出部43Aをスリーブ本体41の他端部の外面に貼り付けることによって、スリーブ本体41を縮径した状態を維持できる。尚、延出部43Aの内面には、接着剤(図示せず)が塗布され、その接着剤が剥離紙(図示せず)で覆われており、延出部43Aをスリーブ本体41の他端部の外面に貼り付ける際には、隙間隠し部43の延出部43Aの先端と隙間隠し部43の他端との間に隙間が発生しないように、延出部43Aを切断して周方向の長さ調整を行ったうえで剥離紙を外して隙間隠し部43の延出部43Aをスリーブ本体41の他端部の外面に貼り付けて、スリーブ本体41を縮径した状態を維持するとともに、途切れることがない環状の隙間隠し部43を構成することができる。
【0028】
図1に示すように、カバー部材5は、例えば難燃性を有する1枚のアルミガラスクロスから構成されたカバー本体51と、カバー本体51の先端部側の内面に備えるカバー側熱膨張材52と、カバー側熱膨張材52よりも先端側に配置され先端部を縮径形状に保形するための保形手段53と、該保形手段53をカバー本体51の内面に固定し、かつ、配管1A,1Bとカバー本体51の内面51Aとの間の隙間を埋めるための発泡材54と、を備えている。
【0029】
カバー本体51の基端部が、スリーブ本体41の軸方向一端部の外面に周方向全域に亘って接着剤により貼り付けられている。そして、カバー本体51の周方向一端部には、スリーブ本体41の周方向一端部から周方向外側に延びる延出部51B(図2参照)を備えている。したがって、スリーブ本体41をリング状に丸めて縮径させた時に、カバー本体51の重ね合わせ部分で隙間が発生しないように、延出部51Bをカバー本体51の周方向他端部の外面51C(図2参照)に接着剤により貼り付けている。尚、延出部51Bの内面51bに接着剤(図示せず)が塗布されていて、図示していない剥離紙が取り付けられている。そして、延出部51Bをスリーブ本体41の周方向他端部の外面に貼り付ける際に、剥離紙を剥すことになる。
【0030】
カバー側熱膨張材52は、カバー本体51の周方向全域に亘る寸法を有する帯状体から構成されている。カバー側熱膨張材52は、前述したように、例えば所定温度(例えば180℃)以上に加熱された際に、その厚み方向に膨張して配管1A,1Bの外面とカバー本体51の内面51Aとの間の隙間を埋めることで区画貫通孔3の一方側で発生した火炎が区画貫通孔3の他方側へ移動することを防止する。
【0031】
保形手段53は、カバー本体51の先端部が縮径された状態を維持する線材としての金属製のワイヤ53A(図1参照)から構成されている。このワイヤ53Aは、前述したように発泡材54でカバー本体51の先端部の内面に固定されており、スリーブ本体41を縮径した(丸めた)ときに環状に構成され、カバー本体51の先端部の保形性能を高めることができる。
【0032】
発泡材54は、例えば、1本の帯状のスポンジから構成されているが、柔らかいゴム、発泡ポリウレタン等発泡材などの復元可能に変形可能な帯状の弾性部材から構成されていてもよい。この発泡材54は、カバー本体51を縮径したときに、配管1A,1Bとカバー本体51の内面51Aとの間の隙間を埋める。
【0033】
上記のように構成された措置具Hを区画貫通孔3に取り付ける手順について説明する。
【0034】
まず、図2に示す措置具のスリーブ本体41を丸めて区画貫通孔3に挿通可能な大きさになるように調整し、調整後に隙間隠し部43の延出部43Aをスリーブ本体41の他端部の外面41Bに貼り付けてスリーブ本体41を縮径した状態を維持する。続いて、カバー本体51の延出部51B(図2参照)をカバー本体51の周方向他端部の外面51C(図2参照)に貼り付ける。こののち、区画貫通孔3に円筒状になったスリーブ本体41をカバー部材5側とは反対側の基端側から挿通する。この挿通しているときに、スリーブ本体41の隙間隠し部43が区画貫通孔3の一方の壁2Aの壁面2aに当接する(図1参照)。これによりスリーブ本体41の区画貫通孔3への挿通が完了する。
【0035】
次に、措置具Hに配管1A,1Bを挿通させてから、カバー本体51の先端部を縮径させてカバー本体51の内面51Aを配管1A,1Bの外面1a,1bに当接させて作業が終了する(図1参照)。尚、縮径させたカバー本体51の先端部にテープを貼り付ける又はバンドを巻き付けることによりカバー本体51の先端部を配管1A,1Bに固定してもよい。
【0036】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
前記実施形態では、スリーブ部材4に別体のカバー部材5を取り付けたが、スリーブ部材4とカバー部材5とが一体になった1つの部材から構成してもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、区画貫通孔3が円形状であったが、矩形状であってもよいし、楕円状や多角形状であってもよい。この場合、区画貫通孔3の形状に合わせた形状の措置具を作製することになる。
【0039】
また、前記実施形態では、区画貫通孔3に措置具Hを取り付けてから配管1A,1Bを措置具Hに挿通させたが、区画貫通孔3に配管1A,1Bを挿通させた後に、措置具Hを区画貫通孔3に取り付けてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、薄板状体をリング状に丸めることで筒状のスリーブ部材4を構成したが、筒状に形成されたスリーブ部材であってもよい。この場合、外径寸法を調整可能な機構を備えたスリーブ部材に構成することが好ましい。また、C型形状(C字形状)のスリーブ部材であってもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、熱膨張材42の軸方向一端部の外面及び軸方向他端部の外面の全面を粘着面にしたが、一部のみを粘着面に構成してもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、熱膨張材42に備えた非粘着面をフィルムから構成したが、フィルムを省略し、粘着剤を塗布していない非粘着面から構成してもよいし、軸方向両端の粘着面よりも粘着力が弱い粘着面から構成してもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、熱膨張材42に備えた一端取付部61及び他端取付部62を、スリーブ本体41の内面41Aに貼り付ける粘着面から構成したが、スリーブ本体41の軸方向両端部それぞれの内面に係止部を備え、この係止部に係止する被係止部を熱膨張材42の軸方向両端部に備え、被係止部を火災の熱により溶融して係止部との係止が解除されて熱膨張材42の軸方向一端部又は軸方向他端部が垂れるように構成されていてもよい。また、前記粘着面は、接着剤で構成されていたが、熱膨張材42が自粘着性を有している場合には、熱膨張材42がそれ自体の粘着力でスリーブ本体41の内面41Aに貼り付けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B…配管、1a,1b…外面、2…壁(区画体)、2A,2B…壁、2a…壁面、3…区画貫通孔、4…スリーブ部材、5…カバー部材、6…取付手段、41…スリーブ本体、41A…内面、41B…外面、41a,41b…長孔、42…熱膨張材、42A…一端部、42B…外面、42F…前端部、42a…先端、43隙間隠し部、43A…延出部、51…カバー本体、51A…内面、51B…延出部、51C…外面、51b…内面、52…カバー側熱膨張材、53…保形手段、53A…ワイヤ、54…発泡材、61…一端取付部(粘着面)、62…他端取付部(粘着面)、63…非取付部(フィルム)、64…粘着剤、H…措置具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7