(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163895
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】モータ制御方法及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231102BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H02M7/48 V ZHV
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075106
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ26
5H505LL22
5H505LL44
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA02
5H770JA11W
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】バッテリの充放電電力を多相モータに対する要求出力に応じて定めるモータ制御システムにおいて、より好適なバッテリの暖機制御を実現する。
【解決手段】
キャリア信号Cと相電圧指令値に基づくパルス幅変調によりスイッチング指令信号S
pを生成し、該スイッチング指令信号S
pに基づいてインバータ40を操作してバッテリ30から多相モータ10に供給する電力を制御するモータ制御方法であって、バッテリ30が低温であると判断した場合には、キャリア信号Cの少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定してスイッチング指令信号S
pを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア信号と相電圧指令値に基づくパルス幅変調によりスイッチング指令信号を生成し、該スイッチング指令信号に基づいてインバータを操作してバッテリから多相モータに供給する電力を制御するモータ制御方法であって、
前記バッテリが低温であると判断した場合には、前記キャリア信号の少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定して前記スイッチング指令信号を生成する、
モータ制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御方法であって、
バッテリ温度が所定の閾値温度以上である場合には、各相の位相を相互に同一に設定した基本キャリア信号から前記スイッチング指令信号を生成する基本制御モードを実行し、
前記バッテリ温度が前記閾値温度未満である場合には、少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定した暖機用キャリア信号から前記スイッチング指令信号を生成する暖機制御モードを実行する、
モータ制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ制御方法であって、
前記基本制御モードでは、前記基本キャリア信号のキャリア周波数を所定の基本周波数に設定し、
前記暖機制御モードでは、前記暖機用キャリア信号の前記キャリア周波数を前記基本周波数とは異なる暖機用周波数に設定する、
モータ制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ制御方法であって、
前記暖機用周波数を、前記基本周波数よりも低く設定する、
モータ制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載のモータ制御方法であって、
前記暖機用周波数を、前記バッテリに流れる電流の実効値が前記多相モータの相電流の実効値よりも大きくなるように設定する、
モータ制御方法。
【請求項6】
請求項3に記載のモータ制御方法であって、
前記インバータは、前記バッテリに対して並列接続された平滑コンデンサを備え、
前記暖機制御モードでは、
前記暖機用周波数を、前記平滑コンデンサの静電容量と、前記バッテリと前記平滑コンデンサとの間の電気接続により生じる寄生インダクタンスと、を含む共振系における共振周波数と略同一に定める、
モータ制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ制御方法であって、
前記バッテリと前記平滑コンデンサとの間の前記電気接続に、該バッテリに対して並列接続される共振特性調節用コンデンサを設ける、
モータ制御方法。
【請求項8】
請求項3に記載のモータ制御方法であって、
前記暖機制御モードでは、所定時間ごとに前記暖機用周波数を探索して設定する周波数探索処理を実行し、
前記周波数探索処理では、
前記キャリア周波数を所定の探索範囲で変化させて前記バッテリの電流を観測し、
前記探索範囲において前記バッテリの電流が最も高くなる周波数を前記暖機用周波数に設定する、
モータ制御方法。
【請求項9】
請求項2に記載のモータ制御方法であって、
前記暖機制御モードでは、
前記インバータと前記バッテリとの間の電気接続状態を切り替えるスイッチを操作して、前記インバータの電気接続に流れる電流当たりの前記バッテリで生じるリプル電流を前記基本制御モードの実行時に比べて増大させる、
モータ制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のモータ制御方法であって、
前記インバータの平滑コンデンサは、複数のコンデンサ素子により構成され、
前記暖機制御モードでは、
前記バッテリの昇温速度が所定の閾値速度未満である場合には、前記各コンデンサ素子の何れかを前記バッテリから電気的に切り離す、
モータ制御方法。
【請求項11】
請求項9に記載のモータ制御方法であって、
前記バッテリは、複数の単位蓄電部を備え、
前記暖機制御モードでは、
それぞれの前記単位蓄電部の温度ばらつきが一定値以上である場合に、各単位蓄電部の中で相対的に温度の高い前記単位蓄電部を前記インバータから電気的に切り離す、
モータ制御方法。
【請求項12】
請求項9に記載のモータ制御方法であって、
前記バッテリは、複数の単位蓄電部を備え、
前記基本制御モードでは、各単位蓄電部を前記インバータに対して直接接続とし、
前記暖機制御モードでは、前記各単位蓄電部を前記インバータに対して並列接続とする、
モータ制御方法。
【請求項13】
請求項2に記載のモータ制御方法であって、
前記暖機制御モードでは、
前記相電圧指令値に基づく変調率を、前記多相モータ内に発生する合成起磁力の方向がロータ磁極位置と一致するように定め、
前記合成起磁力の方向は、前記多相モータの各相電流におけるキャリア周期あたりの平均値により決定される、
モータ制御方法。
【請求項14】
キャリア信号と相電圧指令値に基づくパルス幅変調によりスイッチング指令信号を生成し、該スイッチング指令信号に基づいてインバータを操作してバッテリから多相モータに供給する電力を制御するモータ制御装置であって、
前記バッテリが低温であると判断した場合には、前記キャリア信号の少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定して前記スイッチング指令信号を生成する、
モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御方法及びモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車両に搭載されるバッテリの充放電を制御して、当該バッテリの内部発熱を利用して昇温を行うウォームアップ(暖機)制御装置が記載されている。特に、特許文献1に記載のバッテリ暖機制御では、充電と放電とを交互にパルス状に繰り返す充電パターンをとることで、バッテリの昇温を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のバッテリ暖機制御は、バッテリの充放電電力を負荷(特に多相モータ)に対する要求出力(要求駆動力や要求回生力)に応じて決定するモータ制御システムへの適用が考慮されていない。このようなモータ制御システムでは、多相モータの出力に対する制御との兼ね合いでバッテリの充放電電力を定めるので、上述したバッテリの充電パターンを変更する暖機制御をスムーズに適用できない場合がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、バッテリの充放電電力を多相モータに対する要求出力に応じて定めるモータ制御システムにおいて、より好適なバッテリの暖機制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、キャリア信号と相電圧指令値に基づくパルス幅変調によりスイッチング指令信号を生成し、該スイッチング指令信号に基づいてインバータを操作してバッテリから多相モータに供給する電力を制御するモータ制御方法が提供される。このモータ制御方法では、バッテリが低温であると判断した場合には、キャリア信号の少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定してスイッチング指令信号を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリの充放電電力を多相モータに対する要求出力に応じて定めるモータ制御システムにおいて、より好適なバッテリの暖機制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、各実施形態によるモータ制御方法が実行されるモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、周波数制御の一実施形態を説明する図である。
【
図3】
図3は、周波数制御の一実施形態を説明する図である。
【
図4】
図4は、周波数制御の一実施形態を説明する図である。
【
図5】
図5は、伝達特性向上処理の一実施形態を説明する図である。
【
図6】
図6は、伝達特性向上処理の一実施形態を説明する図である。
【
図7】
図7は、伝達特性向上処理の一実施形態を説明する図である。
【
図8】
図8は、変調率調節制御の一実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態によるモータ制御方法が実行されるモータ制御システム100の構成を示すブロック図である。図示のように、モータ制御システム100は、主として、モータ10と、モータ制御装置20と、バッテリ30と、インバータ40と、により構成される。
【0011】
モータ10は、例えば、永久磁石(IPM:Interior Permanent Magnet)型の三相同期電動機により構成される。
【0012】
モータ制御装置20は、所望の要求出力に応じて定まるトルク指令値に基づいて、モータ10に印加すべき交流電圧に相当する相電圧指令値を算出し、当該相電圧指令値及びバッテリ電圧に基づいて変調率M(U相変調率Mu、V相変調率Mv、W相変調率Mw)を演算する。
【0013】
また、モータ制御装置20は、変調率M、及び所定のキャリア発生器により生成されるキャリア信号(キャリアC)から、PWM(Pulse Width Modulation)信号Spを生成する。より具体的に、モータ制御装置20は、各相の変調率Mu,Mv,Mwと、各相のキャリアCu,Cv,Cwと、の大小関係を比較し、当該比較結果に基づいて各スイッチング素子SWのオン・オフパターン(デューティーパターン)を定め、これをPWM信号Spとする。特に、モータ制御装置20は、U相変調率MuがU相キャリアCuよりも大きい場合にU相に対応するスイッチング素子SWuの上アームをオン且つ下アームをオフにし、小さい場合には上アームをオフ且つ下アームをオンにするU相デューティーパターンを定める。V相デューティーパターン及びW相デューティーパターンについても同様に設定される。
【0014】
さらに、本実施形態のモータ制御装置20は、バッテリ30の温度検出値(以下、単に「バッテリ温度TB」とも称する)に応じて、制御モードを基本制御モード及び暖機制御モードの何れかを実行する。そして、モータ制御装置20は、基本制御モードにおいて、後述する基本キャリアC1を用いてPWM信号Spを生成する。一方、モータ制御装置20は、暖機制御モードにおいて、基本キャリアC1とは異なる後述の暖機用キャリアC2を用いてPWM信号Spを生成する。なお、基本制御モード及び暖機制御モードの詳細は後述する。
【0015】
また、モータ制御装置20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備え、上述した各構成を実行可能となるようにプログラムされたコンピュータにより実現される。また、モータ制御装置20を、各処理を分散して実行する複数のコンピュータハードウェアにより構成することも可能である。
【0016】
インバータ40は、バッテリ30に対して並列に接続される平滑コンデンサ42と、上述した各スイッチング素子SWと、を備える。さらに、インバータ40は、モータ制御装置20により生成されたPWM信号により規定されるスイッチングパターンに応じて、各スイッチング素子SWuを駆動するための図示しない駆動回路を備える。
【0017】
バッテリ30は、リチウムイオン二次電池等の車載用の二次電池により構成される。
【0018】
以下、モータ制御装置20による処理の詳細については説明する。モータ制御装置20は、バッテリ温度TBが所定の閾値温度以上である場合に基本制御モードを実行する一方、バッテリ温度TBが閾値温度未満である場合には、暖機制御モードを実行する。なお、閾値温度は、暖機を要する程度にバッテリ温度TBが低下しているか否かを判断する観点から適宜定められる。
【0019】
基本制御モードは、エネルギー効率(電費)を考慮して、モータ10のトルク指令値に基づく相電圧指令値に応じたデューティーパターンを定めるキャリアCを設定する制御モードである。特に、基本制御モードでは、各相の位相を同一に設定した基本キャリアC1を用いてPWM信号Spを生成する。
【0020】
一方、暖機制御モードは、低温環境下などにおいて、モータ10のトルク指令値を満たしつつバッテリ30の昇温を促進させるデューティーパターンを定めるキャリアCを設定する制御モードである。特に、暖機制御モードでは、基本キャリアC1とは異なる暖機用キャリアC2を用いてPWM信号Spを生成する。
【0021】
ここで、暖機用キャリアC2は、各相の位相の内の少なくとも2つが異なる値に設定される。特に、本実施形態では、
図1に示すように、U相キャリアC2
uの位相を、V相キャリアC2
v及びW相キャリアC2
wの各位相に対して180°ずらして定められる。
【0022】
これにより、暖機制御モードでは、各相間で位相差を持った暖機用キャリアC2を用いて各相のスイッチング素子SWu,SWv,SWwが駆動されることとなる。このため、各スイッチング素子SWu,SWv,SWwと平滑コンデンサ42を電気的に接続するバスバ44に、基本制御モード時に比べてより大きい電流振幅(以下、「リプル電流I」とも称する)を生じさせることができる。そして、このリプル電流Iがインバータ40とバッテリ30の間の電気接続50を介してバッテリ30に伝達されることで、当該バッテリ30にキャリア周波数fと同一周波数成分を持つリプル電流I´が誘起される。結果として、バッテリ30に流れる電流が当該リプル電流I´の発生により内部抵抗Rに流れる電流(発熱量)が増加し、昇温が促進されることとなる。
【0023】
なお、
図1においては簡略化のため、モータ10の停止時を想定した各相の変調率M
u,M
v,M
wがゼロに固定される(キャリアの変位中心に一致する)態様を示している。一方で、モータ駆動時には、駆動状況(相電圧指令値やモータ誘起電圧など)に同期して各相の変調率M
u,M
v,M
wが変化するが、その場合も上記の制御ロジックは同様に適用可能である。
【0024】
以上説明した本実施形態のモータ制御方法による作用効果をまとめて説明する。
【0025】
本実施形態のモータ制御方法では、キャリア信号(キャリアC)と相電圧指令値に基づくパルス幅変調によりスイッチング指令信号(PWM信号Sp)を生成し、該PWM信号Spに基づいてインバータ40を操作してバッテリ30から多相モータ(モータ10)に供給する電力を制御する。特に、このモータ制御方法では、バッテリ30が低温であると判断した場合には、キャリアCの少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定した暖機用キャリア信号(暖機用キャリアC2)に基づいて、PWM信号Spを生成する。
【0026】
これにより、モータ10の要求出力に応じた相電圧指令値に基づいてPWM信号Spを生成しバッテリ30からモータ10に電力を供給するモータ制御システム100を前提として、キャリアCの位相を調節するという簡素な手法によりバッテリ30の自己発熱を増大させて暖機を促進することができる。結果として、低温環境下などの暖機が要求されるシーンにおいて、モータ10に対する制御を維持しつつバッテリ30の昇温効果を高めて充放電特性を改善させることができる。
【0027】
特に、本実施形態では、モータ10に対する要求出力に応じた相電圧指令値そのものは維持した状態としつつ、キャリアCの位相を調節してバッテリ30に流す電流を増大させて昇温を促進する。このため、モータ10の駆動制御への影響を抑えつつ、バッテリ30を昇温させることができる。
【0028】
より具体的に、本実施形態では、バッテリ温度TBが所定の閾値温度以上である場合には、各相の位相を相互に同一に設定した基本キャリア信号(基本キャリアC1)からPWM信号Spを生成する基本制御モードを実行する。一方、バッテリ温度TBが所定の閾値温度未満である場合には、少なくとも2相の位相を相互に異なる値に設定した暖機用キャリア信号(暖機用キャリアC2)からPWM信号Spを生成する暖機制御モードを実行する。
【0029】
これにより、バッテリ30の暖機の要否に応じて、キャリアCを基本キャリアC1と暖機用キャリアC2の間で適切に選択することができる。したがって、バッテリ30の暖機を要しないシーンでは、モータ10の駆動制御により適した基本キャリアC1を用いる一方で、暖機を要するシーンではバッテリ30の昇温に適した暖機用キャリアC2を用いることを可能とする具体的な制御ロジックが実現される。
【0030】
さらに、本実施形態では、上記モータ制御方法の実行に適したモータ制御装置20が提供される。
【0031】
なお、本実施形態では、暖機用キャリアC2におけるU相キャリアC2uの位相を、V相キャリアC2v及びW相キャリアC2wの各位相に対して180°ずらす例を説明した。しかしながら、暖機用キャリアC2の各相キャリアC2u,C2v,C2wの位相設定に係る具体的な態様はこれに限定されるものでは無く、モータ10の駆動制御への影響とバッテリ30の昇温効果の大きさのバランス等を考慮して、適宜調整することができる。
【0032】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、先の実施形態で説明した構成と同様の構成に関して、その説明を適宜省略する。
【0033】
本実施形態のモータ制御装置20は、基本制御モード及び暖機制御モードの間で、上述したキャリア位相に加えてキャリア周波数fを変えてバッテリ30の昇温をより促進する制御(以下、「周波数制御」とも称する)を実行する。
【0034】
具体的に、モータ制御装置20は、基本制御モード中のキャリア周波数f(すなわち、基本キャリアC1の周波数)を基本周波数f1に設定する。なお、基本周波数f1は、モータ10の駆動時におけるスイッチング損失の低減などを考慮して適宜定められる周波数である。
【0035】
一方、モータ制御装置20は、暖気制御モード中のキャリア周波数f(すなわち、暖機用キャリアC2の周波数)を、基本周波数f1とは異なる暖機用周波数f2に設定する。なお、暖機用周波数f2は、暖機時のバッテリ30の昇温効果をより高める観点から適宜定められる。
【0036】
特に、本実施形態では、既に説明したバスバ44で発生するリプル電流Iからバッテリ30で誘起されるリプル電流I´への伝達特性TI´/I(f)を考慮して、暖機用周波数f2を定める。以下、その詳細を説明する。
【0037】
図2(A)は、本実施形態におけるバッテリ30とインバータ40の間の回路構成の要部を示す図である。
【0038】
既に説明したように、バッテリ30で生じるリプル電流I´は、インバータ40のバスバ44で発生するリプル電流Iに誘起されて生じる。したがって、リプル電流Iからリプル電流I´への伝達特性TI´/I(f)は、バスバ44からバッテリ30までの間の電気接続50の構成に依存する。
【0039】
より具体的に、
図2(A)に示す回路構成を前提とした場合、伝達特性T
I´/I(f)は、平滑コンデンサ42の静電容量及び電気接続50の寄生インダクタンスLにより定まることとなる。
【0040】
図2(B)は、
図2(A)に示される回路構成による伝達特性T
I´/I(f)を表す図である。
【0041】
図示のように、本実施形態における伝達特性TI´/I(f)は、バスバ44のリプル電流Iを基準とした一次のローパスフィルタ特性を示す。したがって、上記回路構成を前提とした場合、キャリア周波数fが低いほど伝達特性TI´/I(f)が向上する。すなわち、キャリア周波数fが低いほど、同一のリプル電流Iに対してより大きいリプル電流I´が誘起される。
【0042】
このため、本実施形態では、暖機用周波数f2を基本周波数f1よりも低く設定する(第1の周波数制御)。これにより、暖機制御モード中のリプル電流I´をより大きくしてバッテリ30の自己発熱量を増加させることができる。
【0043】
以上説明した本実施形態のモータ制御方法によれば、基本制御モードでは、基本キャリアC1のキャリア周波数fを所定の基本周波数f1に設定する。一方、暖機制御モードでは、暖機用キャリア信号(暖機用キャリアC2)のキャリア周波数fを、基本周波数f1とは異なる暖機用周波数f2に設定する。
【0044】
これにより、非暖機時(基本制御モード中)と暖機時(暖機制御モード中)において、キャリア周波数fをそれぞれのモードにおいて好ましい値に切り替えることができる。より詳細には、非暖機時にはモータ10の駆動に適したPWM信号Spを生成しつつ、暖機時にはバッテリ30の自己発熱をより促進し得るPWM信号Spを生成するための具体的な制御ロジックが実現される。
【0045】
特に、本実施形態では、暖機用周波数f2を基本周波数f1よりも低く設定する。
【0046】
これにより、バッテリ30とインバータ40の間の特定の回路構成(
図2A)を前提とした場合において、暖機時にバッテリ30の昇温効果をより高めるための具体的な制御ロジックが実現される。
【0047】
[第3実施形態]
本実施形態では、モータ制御装置20が、第2の周波数制御を実行する例を説明する。より具体的に、第2の周波数制御では、暖機用周波数f2を、バッテリ30に流れる電流の実効値がモータ10の相電流の実効値よりも大きくなるように設定する。なお、バッテリ30に流れる電流の実効値及びモータ10の相電流の実効値は、それぞれ、図示しない電流センサにより検出される検出値から演算することができる。
【0048】
これにより、暖機制御モードにおけるリプル電流I´をより増大させることができ、バッテリ30の昇温効果をより高めることができる。
【0049】
[第4実施形態]
本実施形態では、モータ制御装置20が、第3の周波数制御を実行する例を説明する。
特に、本実施形態では、第2実施形態で説明した回路構成(
図2(A))と同一の回路構成(
図3(A))において、バッテリ30の内部抵抗Rが一定値以下となるシーン(より詳細にはバッテリ温度T
Bが特に低いシーン)における伝達特性T
I´/I(f)を考慮して暖機用周波数f2を定める。
【0050】
図3(B)は、
図3(A)の回路構成を前提とした特定のシーンの伝達特性T
I´/I(f)を表す図である。
【0051】
暖機制御モード中において特にバッテリ30の内部抵抗Rが低いシーンでは、平滑コンデンサ42の静電容量と電気接続50の寄生インダクタンスLの間に共振現象が発生する。そのため、
図3(B)に示すように、伝達特性T
I´/I(f)は特定の周波数(共振周波数)にピークを持つプロファイルを示す。したがって、当該シーンでは、暖機用周波数f2を上記共振周波数と同一又はその近傍領域内の周波数に定めることで、バッテリ30の昇温効果をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、共振周波数は、既知の平滑コンデンサ42の静電容量及び寄生インダクタンスLから予め算出して記憶し、適宜、モータ制御装置20により参照される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、インバータ40は、バッテリ30に対して並列接続された平滑コンデンサ42を備える。そして、暖機制御モードでは、暖機用周波数f2を、平滑コンデンサ42と、バッテリ30と平滑コンデンサ42との間の電気接続50により生じる寄生インダクタンスLと、を含む共振系における共振周波数と略同一に定める。
【0054】
これにより、バッテリ30の内部抵抗が一定値以下となる特定のシーン(低温環境下など)で示される伝達特性TI´/I(f)を考慮して、バッテリ30の自己発熱が好適に促進される暖機用周波数f2を定めることができる。結果として、暖機制御モード中におけるバッテリ30の昇温効果をさらに向上させることができる。
【0055】
[第5実施形態]
本実施形態では、第4の周波数制御の態様を説明する。
【0056】
図4(A)は、本実施形態におけるバッテリ30とインバータ40の間の回路構成の要部を示す図である。図示のように、本実施形態の回路構成では、インバータ40の平滑コンデンサ42と、バッテリ30と、の間にこれらに並列接続された共振特性調節用コンデンサ60が設けられる。すなわち、
図4(A)の回路構成は、共振特性調節用コンデンサ60が設けられる点で
図3(A)の回路構成と異なる。
【0057】
このように共振特性調節用コンデンサ60を設けたことにより、インバータ40からバッテリ30のまでの電気接続50における特性が変化する。このため、
図3(A)の回路構成に対して共振系の特性を調節して、伝達特性T
I´/I(f)のプロファイル(ピーク周波数、ピーク位置及び/又はピーク幅)を変化させることができる。
【0058】
図4(B)は、
図4(A)の回路構成を前提とした伝達特性T
I´/I(f)を表す図である。図示のように、本実施形態の伝達特性T
I´/I(f)では、
図3(B)に示す伝達特性T
I´/I(f)と比べてピーク幅が狭く且つピーク高さが大きくなっている。このため、暖機用周波数f2を共振周波数と同一に設定することで、リプル電流Iあたりのリプル電流I´の値がより大きくなり、バッテリ30の昇温効果をより一層向上させることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、バッテリ30と平滑コンデンサ42の間の電気接続50に、バッテリ30に対して並列接続される共振特性調節用コンデンサ60が設けられる。
【0060】
これにより、インバータ40及びバッテリ30を含む回路構成における共振系の特性を変化させて、伝達特性TI´/I(f)のプロファイルを調節することができる。特に、本実施形態では、伝達特性TI´/I(f)のプロファイルが、ピークをとる周波数(すなわち、共振周波数)においてより高い値をとるように調節される。このため、暖機用周波数f2を共振周波数に一致させることで、バッテリ30の昇温効果をより一層向上させることができる。
【0061】
特に、本実施形態の制御であれば、極低温環境下などのバッテリ30の内部抵抗が低くなるシーンにおいても、バッテリ30の自己発熱を適切に促して十分な昇温効果を実現することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、
図4(A)に示す回路構成を前提として、バッテリ30に並列に共振特性調節用コンデンサ60を接続することで、共振特性(伝達特性プロファイル)を変化させる例を説明した。一方で、共振特性を変化させるための具体的な構成はこれに限られず、前提とする回路構成などに応じて適宜変更が可能である。
【0063】
[第6実施形態]
本実施形態では、第5の周波数制御の態様を説明する。
【0064】
具体的に、本実施形態において、暖機制御モード中のキャリア周波数fの変化に応じたバッテリ30の電流を計測し、その計測結果に応じて暖機用周波数f2を求める処理(周波数探索処理)を実行する。
【0065】
より具体的に、周波数探索処理では、暖機制御モードの開始時点などの所定のタイミングを基点として、キャリア周波数fを所定範囲でスイープさせる。そして、スイープさせた所定範囲の中でバッテリ30の電流が最大となる周波数を特定し、暖機用周波数f2を当該周波数とする。さらに、周波数探索処理を所定時間ごとに実行して、適宜、暖機用周波数f2を更新する。
【0066】
これにより、暖機制御モード中におけるバッテリ30の実電流挙動に応じて、適宜、高いリプル電流I´を誘起し得る暖機用周波数f2を定めることができる。
【0067】
以上説明した本実施形態のモータ制御方法によれば、暖機制御モードでは、所定時間ごとに暖機用周波数f2を探索して設定する周波数探索処理を実行する。特に、周波数探索処理では、キャリア周波数fを所定の探索範囲で変化させてバッテリ30の電流を観測し、当該探索範囲においてバッテリ30の電流が最も高くなる周波数を暖機用周波数f2に設定する。
【0068】
これにより、暖機制御モード中においてバッテリ温度TBが変化するなどの理由で、高いリプル電流I´を実現し得る周波数が変化する場合であっても、適宜、リプル電流I´を最大化し得る周波数を特定して、これを暖機用周波数f2とすることができる。このため、暖機制御モードにおけるバッテリ30の昇温効果をさらに向上させることができる。
【0069】
なお、上述の第4実施形態で説明したように、回路構成由来の共振系によって伝達特性TI´/I(f)が共振周波数にピークを持つプロファイルをとる場合に、予め当該ピークを含む周波数範囲を特定して周波数探索処理を実行する構成を採用しても良い。これにより、バッテリ30の実電流の挙動を観測した上で伝達特性TI´/I(f)がピークをとる周波数をより適確に特定することができる。特に、第5実施形態で説明したように、伝達特性TI´/I(f)のピーク幅が比較的狭い場合(比較的シャープである場合)に、周波数探索処理を実行して伝達特性TI´/I(f)がピークをとる周波数をより確実に特定することで、暖機用周波数f2が当該周波数からずれて設定されることによるリプル電流I´の大幅な低下(バッテリ30の昇温効果の低下)をより確実に防止することができる。
【0070】
[第7実施形態]
本実施形態では、モータ制御装置20が、リプル電流Iからリプル電流I´への伝達特性TI´/I(f)をより向上させる制御(以下、「伝達特性向上処理」)を実行する例を説明する。
【0071】
図5(A)は、本実施形態において、リプル電流Iからリプル電流I´への伝達特性T
I´/I(f)を定める回路構成を示す図である。図示のように、本実施形態の回路構成では、インバータ40の平滑コンデンサ42は、バッテリ30に対して並列接続された2つのコンデンサ素子42a,42bにより構成される。また、これら2つの内、バスバ44側に設けられるコンデンサ素子42aにはスイッチ70が設けられる。そして、モータ制御装置20が、当該スイッチ70のオン・オフ操作を制御することにより、コンデンサ素子42aとバッテリ30との間の電気的接続が接続状態(オン状態)及び非接続状態(オフ状態)の間で切り替えられる。
【0072】
特に、本実施形態において、モータ制御装置20は、バッテリ30の昇温速度が所定の閾値速度以上である場合に、スイッチ70をオンにする。一方、バッテリ30の昇温速度が上記閾値未満である場合には、スイッチ70をオフにする(第1の伝達特性向上処理)。なお、バッテリ30の昇温速度について、例えば、温度センサ値の経時変化から定めることができる。
【0073】
図5(B)は、スイッチ70のオン・オフ状態に応じた伝達特性T
I´/I(f)を示す図である。
【0074】
図示のように、スイッチ70をオフにしてコンデンサ素子42aをバッテリ30に対して電気的に切り離した状態では、スイッチ70をオンとしている状態と比べて同一周波数に対する伝達特性TI´/I(f)の値が向上する。このため、暖機中にバッテリ30の昇温速度が所望の速度に達しない場合には、スイッチ70をオフにすることで伝達特性TI´/I(f)を向上させ、バッテリ30の昇温をより促進させることができる。
【0075】
以上説明した本実施形態のモータ制御方法によれば、暖機制御モードでは、バッテリ30の温度を示唆する温度パラメータ(昇温速度)に基づいてインバータ40とバッテリ30との間の電気的断続を切り替えるスイッチ70を操作し、インバータ40の電気配線に流れる電流当たりの(すなわちリプル電流I当たりの)バッテリ30で生じるリプル電流(すなわちリプル電流I´)を増大させる。
【0076】
これにより、暖機制御モード中におけるバッテリ30の昇温状態に応じて、適宜、伝達特性向上処理が実行されることとなるので、バッテリ30の昇温効果をさらに向上させることができる。
【0077】
特に、本実施形態のインバータ40の平滑コンデンサ42は、バッテリ30に対して並列接続された複数(本実施形態では2つ)のコンデンサ素子42a,42bにより構成される。そして、暖機制御モードでは、バッテリ30の昇温速度が所定の閾値速度未満である場合には、スイッチ70を操作して各コンデンサ素子42a,42bの何れか(本実施形態ではコンデンサ素子42a)をバッテリ30から電気的に切り離す。
【0078】
これにより、暖機中に意図したバッテリ30の昇温効果が得られていないシーンを適切に検知して、昇温効果を向上させる処理を実行することができる。
【0079】
[第8実施形態]
本実施形態では、第2の伝達特性向上処理の態様を説明する。
【0080】
図6は、本実施形態におけるバッテリ30とインバータ40の間の回路構成の要部を示す図である。
【0081】
図示のように、バッテリ30は、インバータ40に対して相互に並列に接続された複数(図では2つ)の単位蓄電部30a,30bを備える。さらに、各単位蓄電部30a,30bにはそれぞれ、インバータ40との間の電気的接続を切り替えるためのスイッチ70a,70bが設けられている。
【0082】
そして、モータ制御装置20は、暖機制御モードにおいて、各単位蓄電部30a,30bの温度ばらつきの大きさに応じて、各スイッチ70a,70bを個別にオン又はオフに操作する。
【0083】
より具体的に、温度ばらつきが一定値以上である場合には、各単位蓄電部30a,30bの中で相対的に高い温度をとる方を特定する。そして、例えば、単位蓄電部30aが相対的に高い温度をとる場合、スイッチ70aをオフ及びスイッチ70bをオンにする。これにより、相対的に高い温度をとる単位蓄電部30aがインバータ40から電気的に切り離され、相対的に低い温度をとる単位蓄電部30bのみがインバータ40に電気的に接続される。なお、単位蓄電部30bが相対的に高い温度をとる場合においても同様のロジックで各スイッチ70a,70bのオン/オフを制御する。
【0084】
これにより、各単位蓄電部30a,30bの間の温度ばらつきが大きいシーンでは、伝達特性TI´/I(f)のゲイン(リプル電流I当たりのリプル電流I´)を相対的に低い温度の単位蓄電部30bに集中させて、当該単位蓄電部30bの昇温を優先させることができる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態では、バッテリ30は、複数の単位蓄電部30a,30bを備える。そして、暖機制御モードでは、それぞれの単位蓄電部30a,30bの温度ばらつきが一定値以上である場合に、各単位蓄電部30a,30bの中で相対的に温度の高い単位蓄電部30aをインバータ40から電気的に切り離す。
【0086】
これにより、暖機時に各単位蓄電部30a,30bの間の温度ばらつきが大きくなっても、相対的に低温の単位蓄電部30bを優先的に昇温させることができる。結果として、複数の単位蓄電部30a,30bを均等に昇温させることができ、バッテリ30全体を所望の温度に昇温させるまでの時間(暖機時間)を短縮することができる。
【0087】
なお、本実施形態で示した回路構成は一例であり、温度ばらつきに応じて複数単位蓄電部とインバータ40との電気的接続のオン/オフが可能であるならば、任意の回路構成を採用することができる。
【0088】
[第9実施形態]
本実施形態では、第3の伝達特性向上処理の態様を説明する。
【0089】
特に、本実施形態においても、第9実施形態と同様にバッテリ30が複数(図では2つ)の単位蓄電部30a,30bを備える。そして、バッテリ30の温度に応じて、各単位蓄電部30a,30bのインバータ40に対する電気接続状態を個別に切り替える。
【0090】
図7は、本実施形態におけるバッテリ30とインバータ40の間の回路構成の要部を示す図である。
【0091】
図示のように、本実施形態の回路構成であれば、バッテリ30の温度に応じて各スイッチ70c,70d,70eを個別に操作することで、各単位蓄電部30a,30bのインバータ40に対する電気接続状態(並列、直列、又は非接続)を切り替えることができる。
【0092】
具体的に、モータ制御装置20は、基本制御モード中において、スイッチ70cをオン、スイッチ70dをオフ、及びスイッチ70eをオフにそれぞれ設定する。一方、暖機制御モードにおいて、スイッチ70cをオフ、スイッチ70dをオン、及びスイッチ70eをオンにそれぞれ設定する。
【0093】
これにより、非暖機時(通常のモータ駆動時)には各単位蓄電部30a,30bがインバータ40に対して直列接続されて高いバッテリ出力を確保できる。一方で、暖機時には各単位蓄電部30a,30bがインバータ40に対して直列接続される。このため、バッテリ30の合成内部抵抗値が減少して伝達特性TI´/I(f)が向上し、バッテリ30の昇温がより促進される。
【0094】
以上説明したように、本実施形態では、バッテリ30は、複数の単位蓄電部30a,30bを備える。そして、基本制御モードでは、各単位蓄電部30a,30bをインバータ40に対して直接接続とする。一方で、暖機制御モードでは、各単位蓄電部30a,30bをインバータ40に対して並列接続する。
【0095】
これにより、基本制御モードにおいては高いバッテリ出力を確保しつつ、暖機制御モードにおいては伝達特性TI´/I(f)を向上させてバッテリ30の昇温効果をより高める制御ロジックが実現される。
【0096】
なお、本実施形態で示した回路構成は一例であり、基本制御モードと暖機制御モードにおいて、複数単位蓄電部とインバータ40の接続を直接接続と並列接続の間で切り替えることが可能であるならば、任意の回路構成を採用することができる。
【0097】
[第10実施形態]
本実施形態では、モータ制御装置20が、暖機制御モードにおいて、バッテリ30の昇温を促進する観点から変調率Mを調節する変調率調節制御を実行する。
【0098】
具体的に、本実施形態の変調率調節制御では、変調率Mを、モータ10内に発生する合成起磁力の方向がロータ磁極位置と一致するように定める。
【0099】
図8(A)は、変調率調節制御により調節された変調率M、当該変調率Mに応じたモータ10の各相電流、及び当該各相電流の平均値(特にキャリア周期あたりの平均値)の時間発展を示す図である。また、
図8(B)は、変調率調節制御を実行した際の各相電流ベクトル、合成起磁力の方向、及びロータ磁極位置の関係を示すフェーザ図である。
【0100】
図示のように、変調率調節制御では、三相交流座標系を基準としたフェーザ表示上において、各相電流ベクトルの合成ベクトルの方向(すなわち、各相電流ベクトルが作る合成起磁力の方向)が予め所定のセンサ等により検出されるロータ磁極位置(すなわち、d軸方向)に一致するように変調率Mを調節する。
【0101】
以上説明した本実施形態のモータ制御方法によれば、暖機制御モードでは、相電圧指令値に基づく変調率Mを、モータ10内に発生する合成起磁力の方向がロータ磁極位置と一致するように定める。特に、合成起磁力の方向は、各相電流におけるキャリア周期あたりの平均値により決定される。
【0102】
これにより、上述のように、暖機制御モード中に、基本制御モードとは異なる暖機用キャリアC2からPWM信号Spを生成することによる、モータ10の駆動制御への影響(意図しないモータトルクの発生など)をより確実に防止することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記各実施形態は可能な範囲で任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0104】
10 モータ
20 モータ制御装置
30 バッテリ
40 インバータ
42 平滑コンデンサ
50 電気接続
60 共振特性調節用コンデンサ
70 スイッチ
100 モータ制御システム