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特開2023-1639ヒュームフード管理システムおよびヒュームフード管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001639
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ヒュームフード管理システムおよびヒュームフード管理方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20221226BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
B01L1/00 A
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102477
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 正仁
(72)【発明者】
【氏名】福永 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智之
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽雄
【テーマコード(参考)】
3L058
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BF03
4G057AA02
(57)【要約】
【課題】複数台のヒュームフードを設置することが可能な建屋に設けられる排気用ファンの最大風量が、全ヒュームフードの総排気風量以下に設定されてなるヒュームフード管理システムにおいて、稼動中のヒュームフードの稼動を厳重に管理できるようにする。
【解決手段】フード制御システム300は、ヒュームフード1が稼動されるごとに、風量算出部317により稼動状態の全ヒュームフード1の総排気風量を求め、その求めた総排気風量が予め設定される閾値Aを超えると制御装置319が判断すると、該制御装置319によって、最後に稼動されたヒュームフード1の状態表示部が警告の発光色で発光するように制御されて、該当する作業者に排気用ファン202の排気容量不足による使用制限状態であることが報知されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のヒュームフードを設置することが可能な建屋に設けられる排気用ファンの最大風量が、前記ヒュームフードのそれぞれの排気風量の合計である総排気風量以下に設定されてなるヒュームフード管理システムであって、
前記ヒュームフードが稼動されるごとに、稼動中の全ヒュームフードの総排気風量を算出する風量算出部と、
前記風量算出部で算出された前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が第1閾値を超える場合に、最後に稼動されたヒュームフードに対して警告を行う制御装置と、
を備えることを特徴とするヒュームフード管理システム。
【請求項2】
前記ヒュームフードは報知器をそれぞれ有し、
前記制御装置は、前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が前記第1閾値を超える場合に、最後に稼動されたヒュームフードの報知器を用いて、前記排気用ファンの排気風量不足を報知させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のヒュームフード管理システム。
【請求項3】
前記ヒュームフードは昇降可能なサッシをそれぞれ有し、
前記制御装置は、前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が前記第1閾値を超える場合に、最後に稼動されたヒュームフードに対して、当該サッシの上昇を抑制させるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載のヒュームフード管理システム。
【請求項4】
前記ヒュームフードは昇降可能なサッシをそれぞれ有し、
前記制御装置は、前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が前記第1閾値を超える場合に、最後にサッシの上昇が行われたヒュームフードに対して、当該サッシの上昇を抑制させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のヒュームフード管理システム。
【請求項5】
前記ヒュームフードは昇降可能なサッシをそれぞれ有し、
前記制御装置は、前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が第2閾値(第2閾値>第1閾値)を超える場合に、稼動中の全ヒュームフードに対して、サッシの上昇を禁止させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のヒュームフード管理システム。
【請求項6】
複数台のヒュームフードを設置することが可能な建屋に設けられる排気用ファンの最大風量が、前記ヒュームフードのそれぞれの排気風量の合計である総排気風量以下に設定されてなる場合において、
前記請求項1から5のいずれか1項に記載のヒュームフード管理システムを用いて、稼動中の全ヒュームフードの稼動を制御するようにしたことを特徴とするヒュームフード管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒュームフードの稼動を管理するヒュームフード管理システムおよびヒュームフード管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、実験や研究などの各種の作業を行う施設では、作業過程において、人体に有害な化学物質(有害物質)が発生する場合がある。
【0003】
これらの有害物質の室内への拡散を防止し、人体への汚染を防ぐ装置として、ヒュームフード(ドラフトチャンバまたは封入装置などとも称される)が知られている。
【0004】
一般的なヒュームフードは、例えば、開閉可能なサッシ付のエンクロージャを備え、作業者がサッシ下の開口部(空気通路)からエンクロージャ内の作業空間にアクセスできるように構成されている。
【0005】
そして、該ヒュームフードにおいては、作業中の作業者が有害物質に曝されないようにするために、エンクロージャには排気用ダクトが接続されている。これにより、作業中に発生した有害物質は、排気用ダクトを介して、浄化後に屋外へと吸引・排出させることができる。
【0006】
また、従来のヒュームフードにおいては、サッシ下の開口部より作業空間内に室内の空気(外気)を流入させることで、有害物質がサッシ下の開口部から室内に拡散するのを防止できるようになっている。
【0007】
ところで、有害物質の室内への拡散を防止可能なヒュームフードには、人体への汚染から作業者を守る観点から、種々の基準が法令などによって定められている。
【0008】
例えば、労働安全衛生法では、作業者の安全性を守るための「有機溶剤中毒予防規則」や、発がん性物質を中心に薬品の取り扱い時の安全性を確保するための「特定化学物質等障害予防規則」などが定められている。
【0009】
従って、特定の有害物質を取り扱う場合には、これらの法・規則を準拠するヒュームフードの、空調(換気)システムを備えた建屋内での使用が義務付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-175315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、従来のヒュームフードは、上記の「有機溶剤中毒予防規則」を遵守するように、例えば、最低風速(面速)が0.4m/s程度と規定されている。また、上記の「特定化学物質等障害予防規則」を遵守するように、例えば、最低風速(面速)がガス状で0.5m/s、粒子状で1.0m/sと規定されている。そして、「濃度観測:エンクロージャ外側の濃度測定で許容濃度以下」などの規格値を満たす必要がある。
【0012】
そのため、ヒュームフードを設置する建屋においては、上記の規格値を下回らないように、余裕(安全率)をみて、該規格値よりも大きい風量(最大風量)で吸引が行われるように、空調システムの吸引ファン(排気用ファン)を駆動させることが行われていた。
【0013】
しかしながら、規格値よりも大きい風量で吸引が行われるように吸引ファンを駆動させることは、安全性を確保できる一方で、吸引ファンを回転させるための電動モータ(ファンモータ)の消費電力を高騰させることになる。
【0014】
特に、複数台のヒュームフードが設置される建屋において、規格値よりも大きい風量で吸引が行われるように吸引ファンを駆動させることは、作業(稼動)中のヒュームフードの台数に応じて排気風量を調節できるようにしたとしても、多大なランニングコストがかかる。
【0015】
即ち、複数台のヒュームフードを設置可能な建屋においては、通常、全ヒュームフードを一斉に使用して同時に作業する場合を想定し、吸引ファンの能力(吸引・排出時の最大風量)を決定するのが望ましい。そのため、設置可能なヒュームフードの台数が多い建屋の場合ほど、吸引ファンを回転させるためのファンモータは大型化(高出力化)し、高価なものとなる。従って、たとえ作業中のヒュームフードの台数に応じて排気風量を調節することで省電力化を図るようにしたとしても、その効果は限定的である。
【0016】
しかも、複数台のヒュームフードを設置可能な施設の場合であっても、全ヒュームフードを一斉に使用して同時に作業することはほとんどない。従って、全ヒュームフードを使用して同時に作業する場合を想定して、予め大出力のファンモータを準備することは、建屋の設備投資や建設費の面からも無駄の多いものであった。
【0017】
そこで、従来の複数台のヒュームフードを設置可能な施設においては、例えば、同時に作業可能なフードの台数を予め規定し、その規定台数に応じた総排気風量に見合った出力のファンモータを建屋内に備えるとともに、規定台数以上のフードが同時に稼動されないように厳重に管理することで、労働基準監督署(監督官庁)への認可の届け出などを行っていた。
【0018】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数台のヒュームフードを設置可能な施設の建屋において、稼動率(総排気風量)が常に排気用ファンの最大風量以下となるように、同時に作業可能なヒュームフードを厳重に管理でき、低コスト化にとって、より好適なヒュームフード管理システムおよびヒュームフード管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成するため、本発明の一態様に係るヒュームフード管理システムは、複数台のヒュームフードを設置することが可能な建屋に設けられる排気用ファンの最大風量が、前記ヒュームフードのそれぞれの排気風量の合計である総排気風量以下に設定されてなるものであって、前記ヒュームフードが稼動されるごとに、稼動中の全ヒュームフードの総排気風量を算出する風量算出部と、前記風量算出部で算出された前記稼動中の全ヒュームフードの総排気風量の、前記排気用ファンの最大風量に対する割合が第1閾値を超える場合に、最後に稼動されたヒュームフードに対して警告を行う制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の他の態様に係るヒュームフード管理方法は、複数台のヒュームフードを設置することが可能な建屋に設けられる排気用ファンの最大風量が、前記ヒュームフードのそれぞれの排気風量の合計である総排気風量以下に設定されてなる場合において、前記一態様に係るヒュームフード管理システムを用いて、稼動中の全ヒュームフードの稼動を制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数台のヒュームフードを設置可能な施設において、稼動率が常に排気用ファンの最大風量以下となるように、同時に作業可能なヒュームフードを厳重に管理でき、低コスト化にとって、より好適なヒュームフード管理システムおよびヒュームフード管理方法を提供できる。
【0022】
しかも、総排気風量が最大風量を超過させる、規定台数以上のフードには管理者が施錠をするなどの煩わしさもなく、同時に作業可能なヒュームフードを厳重に管理できるようになる結果、監督官庁への届け出による認可の取得も容易に可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る、ヒュームフード管理システムの構成例を示す概略図である。
図2】一実施形態に係るヒュームフード管理システムの構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態のヒュームフード管理システムに適用可能なヒュームフードの概略構成を示す正面図である。
図4】一実施形態のヒュームフード管理システムに適用可能なヒュームフードの概略構成を示す側断面図である。
図5】一実施形態のヒュームフード管理システムに適用可能なヒュームフードの構成例を示すブロック図である。
図6】一実施形態のヒュームフード管理システムに適用可能なヒュームフードの、サッシ昇降ユニットにおけるブレーキユニットの構成例を示す斜視図である。
図7】(a)は、図6のブレーキユニットの上面(平面)図であり、(b)は、一側面図である。
図8】(a)は、図6のブレーキユニットの一部を透過して示す図であり、(b)は、逆側から見た概略図である。
図9】一実施形態のヒュームフード管理システムに係るヒュームフードの管理方法を説明するために示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係るヒュームフード管理システムの一実施形態について説明する。なお、本実施形態において、図面は、発明の概要を模式的に示すものであって、実際のものとは異なるものであることに留意すべきである。
【0025】
<一実施形態>
(ヒュームフード管理システムの概要)
図1は、一実施形態に係るヒュームフード管理システムの構成例を示す概略図である。
【0026】
本実施形態に係るヒュームフード管理システムにおいては、複数台のヒュームフード(FH)1を設置することが可能な建屋100に設けられる排気用ファン(空調システムの吸引ファン)202の最大排気風量が、全ヒュームフード1のそれぞれの排気風量の合計である総排気風量(必要風量)以下に設定されている。そして、ヒュームフード1が稼動されるごとに、稼動中の全ヒュームフード1の総排気風量の、排気用ファン202の最大排気風量に対する割合(稼動率)に応じて、稼動中の全ヒュームフード1の稼動を管理するようになっている。
【0027】
即ち、本実施形態に係るヒュームフード管理システムは、例えば図1に示すように、実験や研究、検査などを行う施設の建屋100内に設置される複数台のヒュームフード1と、空調システム200と、フード制御システム300と、で構成されている。
【0028】
建屋100は、例えば、地上4階建て構造とされ、最大で30台(1階から3階までの各フロア101~103に10台ずつ)のヒュームフード1を設置できるようになっている。
【0029】
建屋100の入出口110には、例えば図1に示すように、廂111や開閉式の扉112が設けられるとともに、建屋100内への入出を監視する監視カメラ113や、入出の際のセキュリティチェックを行うための認証装置114が配置されている。
【0030】
建屋100の、例えば最上階(4階のフロア)104には、建屋100内を集中管理するとともに、空調システム200やヒュームフード1を制御するためのフード制御システム300が設置されている(詳細については、後述する)。
【0031】
また、建屋100内には、空調システム200としての、排気用ダクト201や排気用ファン202が配設されている。排気用ダクト201は、一端側が全ヒュームフード1に個々に接続されるとともに、各フロア101~103の天井裏105を介して、建屋100の一画に設けられた排気路106内に配設されている。排気用ファン202は、排気路106の上方において、排気用ダクト201の他端側に共通に接続されている。
【0032】
ここで、排気用ファン202は、各ヒュームフード1からの排気を建屋100の外部(屋外)へと吸引・排出させるためのもので、排気用ファン202を駆動するファンモータ301の最高出力が、必要風量の、例えば50%程度となるように設定されている。
【0033】
必要風量とは、例えば、30台の全ヒュームフード1を一斉に使用して、それぞれ標準風量(制御風量)で作業した際の、排気風量の合計である総排気風量の排気を十分に行い得る余裕の風量である。
【0034】
本実施形態に係るヒュームフード管理システムにおいては、例えば、同時に作業が可能と想定される最大数のヒュームフード1の台数を15台と規定している。そして、その規定台数に応じた総排気風量(例えば、15台分の排気風量の合計値、標準風量換算)での排気用ファン202の駆動が可能なように、ファンモータ301の最高出力が設定されている。これにより、ファンモータ301の設置に係る、建屋100の設備投資や建設費、ランニングコストの低廉化が図られている。
【0035】
よって、30台のヒュームフード1を一斉に使用して同時に作業するような状況が滅多にない場合に、必要風量(30台分の総排気風量)での排気用ファン202の駆動が可能な高出力のファンモータの設置に伴う無駄を削減できる。
【0036】
即ち、ヒュームフード管理システムにおいて、ファンモータ301の最高出力は、本来ならば、排気用ファン202の最大排気風量が、全ヒュームフード1の総排気風量の排気が可能な必要風量となるように設定するのが望ましい。しかしながら、全台数のヒュームフード1が一斉に使用されて同時に作業することは、ほとんどない。そのため、30台分のヒュームフード1の稼動を想定(規定)して、ファンモータ301の最高出力を設定することは、建屋100の設備投資や建設費、ランニングコストなどの高騰を招く。
【0037】
そこで、ファンモータ301の最高出力は、1台当たりのヒュームフード1の標準風量(サッシの最大開口時)を、例えば10m3 /minとした場合、排気用ファン202の最大排気風量が150m3 /min余程度となるように設定される。
【0038】
したがって、本実施形態に係るヒュームフード管理システムの場合、詳細については後述するが、例えば、14台目のヒュームフード1までは普通に稼動させることが可能であるが、15台目以降のヒュームフード1の稼動が確認された時点において、その使用が制限される。
【0039】
このように、複数台(例えば、15台分)のヒュームフード1を一斉に使用して同時に作業できるようにすることで、ある程度の作業性の確保とコストの削減との両立が図られている。
【0040】
なお、本実施形態の“複数台のヒュームフード1を一斉に使用して同時に作業する”とは、15台のヒュームフード1を同一のタイミングで稼動させるということではなく、15台のヒュームフード1を並行的に稼動状態に設定可能であるということを指す。
【0041】
また、建屋100は地上4階建て構造に限定されるものではなく、設置可能なヒュームフード1の台数や、同時に作業が可能と想定されるヒュームフード1の台数も一例であって、限定されないことは勿論である。
【0042】
(フード制御システム300)
図2は、本実施形態に係るヒュームフード管理システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【0043】
図2において、例えば制御装置319には、ファンモータ制御部311、カメラ制御部312、認証部313、管理部314、扉制御部315、記憶部316、風量算出部317、および、警告部318が接続されている。警告部318としては、例えば、異常などの報知を行う表示器やブザーなどの報知器を備えるようにしても良い。
【0044】
また、制御装置319は、建屋100内に設置される全ヒュームフード1の各制御部(後述する)と接続されるようになっている。
【0045】
ファンモータ制御部311は、排気用ファン202を駆動するファンモータ301を制御する。
【0046】
カメラ制御部312は、監視カメラ113による撮影を制御する。
【0047】
認証部313は、認証装置114の出力に基づいて個人認証などを実行する。
【0048】
管理部314は、建屋100内の各設備、例えば、図示していないエレベータや照明などを集中的に管理する。
【0049】
扉制御部315は、入出口110の扉112の開閉(施解錠)を制御する。
【0050】
記憶部316は、後述するヒュームフード1の稼動率である稼動状態を管理する際の閾値(第1閾値,第2閾値)などを記憶する。
【0051】
風量算出部317は、後述するヒュームフード1の稼動状態を管理する際の、総排気風量を算出する。
【0052】
警告部318は、図示していない報知器を用いて異常の報知などを行う。
【0053】
制御装置319は、建屋100内の各部を制御するとともに、後述するヒュームフード1の稼動状態を排気用ファン202の最大排気風量に応じて制御するもので、例えば、対象のヒュームフード1に警告(排気風量不足など)の報知を行うように指示を出す。
【0054】
即ち、制御装置319は、例えば、ヒュームフード1が稼動されるごとに、稼動中の全ヒュームフード1の総排気風量を風量算出部317によって算出させる。そして、算出された総排気風量の、排気用ファン202の最大排気風量に対する割合に応じて、各ヒュームフード1の稼動を管理(制御)する。
【0055】
一例として、算出された総排気風量の、記憶部316に予め記憶された排気用ファン202の最大排気風量に対する割合が95%(第1閾値)を超える場合に、最後に稼動されたヒュームフード1の報知器(後述する)を用いて、排気用ファン202の排気風量不足を報知させる。これにより、最後に稼動されたヒュームフード1に該当する作業者に使用の制限が促される。
【0056】
また、算出された総排気風量の、排気用ファン202の最大排気風量に対する割合が95%(第1閾値)を超える場合、最後に稼動されたヒュームフード1のサッシ(後述する)が開口し辛くなるように制御する。これにより、排気用ファン202の排気風量不足から、最後に稼動されたヒュームフード1のサッシの上昇が抑制されることによって、該当する作業者に使用の制限が促される。
【0057】
また、算出された総排気風量の、排気用ファン202の最大排気風量に対する割合が98%(第2閾値)を超える場合、稼動中の全ヒュームフード1のサッシの開口を禁止させるように制御する。これにより、排気用ファン202の排気風量不足から、稼動中の全ヒュームフード1のサッシの上昇が禁止されることによって、各作業者に使用の制限が促される。
【0058】
このように、稼動中の全ヒュームフード1の総排気風量の、排気用ファン202の最大排気風量に対する割合に応じて、稼動中の全ヒュームフード1を容易に管理できる。
【0059】
(ヒュームフードの概要)
次に、本実施形態に係るヒュームフード管理システムに適用可能なヒュームフード1の基本構成について説明する。なお、図3は、ヒュームフード1の正面図であり、図4は、内部構造例を示す側断面図であり、図5は、機能ブロック図である。
【0060】
ヒュームフード1は、例えば、研究者や実験者などの作業者が、種々の器具類や薬品などを用いて、被処理物としての微生物などの試料の無菌操作や化学実験または検査といった各種の作業を行うために用いられる。
【0061】
このヒュームフード1は、例えば、標準風量(サッシの最大開口時)が10m3 /min程度とされるとともに、最小風量(サッシの最小開口時)が3m3 /min程度とされている。
【0062】
最小風量とは、例えば、サッシ14が最も下端のホームポジションHPの位置まで閉じられて、前面開口部13の大きさとして、最小面積の空気通路17が形成されている場合の風量である。
【0063】
標準風量とは、サッシ14が最も上端の、例えばホームポジションHPの位置から400mmも開けられて、前面開口部13の大きさとして、最大面積の空気通路17が形成されている場合の風量である。
【0064】
なお、本ヒュームフード1は、「有機溶剤中毒予防規則」または「特定化学物質等障害予防規則」を遵守するように、最低風速(面速)が規定されている。
【0065】
このヒュームフード1は、作業する被処理物や薬品、特に、有害な化学物質などを含む雰囲気が外部(室内)に漏れないように封じ込めながら作業をするために、箱状の囲い部分であるエンクロージャ(本体部)10を備えている。
【0066】
エンクロージャ10は、ドラフト庫内11を有し、該ドラフト庫内11には、広い作業空間12が確保されている。
【0067】
ここで、作業空間12において、被処理物を処理する際に作業者が被処理物などの影響を受けないようにするために、ドラフト庫内11は、作業空間12内の雰囲気を外部から隔離する構造を有している。
【0068】
即ち、ヒュームフード1は、作業者を有害な化学物質などから保護することを目的とした局所排気装置(封入装置)である。そのため、作業空間12内における風量は、好ましくは可変可能であり、作業空間12としては、標準風量領域だけでなく、低風量(最小風量)領域においても、スムーズな換気を実現して、有害な化学物質などを封じ込めることができる封じ込め性能を有している。これにより、作業者の安全性が確保される。
【0069】
よって、作業中に有害な化学物質などを含む雰囲気が外部に漏洩して、作業者が有害な化学物質などによって汚染されるのを回避できる。
【0070】
特に、低風量型と称されるヒュームフードは、エネルギーコストの低減を目的として、少ないランニングコストで運転できるように設計されている。低風量型のヒュームフードの排気風量は、一般的(標準的)なヒュームフードの排気風量に比較して、例えば、40~60%の低減(低風量化)が可能とされている。
【0071】
つまり、低風量型のヒュームフードは、作業空間内に低風量ドラフトで空気を送ることで、標準の風量のドラフトを作業空間内に送る場合に比べて、稼動時(作業時)の省電力化(エコ化)や低騒音化を図ることができる。
【0072】
次に、図3ないし図5を参照して、本実施形態に係るヒュームフード管理システムに用いて好適なヒュームフード1の構成について、さらに具体的に説明する。
【0073】
例えば、縦長箱形状のエンクロージャ10は、その前面側に、長方形状の前面開口部13を有している。前面開口部13の、その下側には、図示Z方向である上下方向に移動(昇降動作)する可動ガラス扉としてのサッシ14が、上側には、固定ガラス部15が設けられている。
【0074】
サッシ14および固定ガラス部15は、作業空間12が見えるように、透明板もしくは透光板であり、好ましくは強化ガラスが用いられる。
【0075】
本実施形態において、固定ガラス部15は、サッシ14に比べての面積が小さく、エンクロージャ10に対して、はめ込んで固定させることで、前面開口部13の一部分である上部領域を閉鎖させている。
【0076】
前面開口部13の一部分である下部領域は、サッシ14の昇降動作に応じて、その開口面積が変化される。
【0077】
図3ないし図5に示すように、例えば、サッシ14が最も下端まで下げられていて、前面開口部13のかなりの部分が閉鎖されている状態(ホームポジションHPの位置)でも、サッシ14の上縁部分14Uと固定ガラス部15の下縁部分15Dとが重なり合うようになっている。
【0078】
つまり、サッシ14の上縁部分14Uと固定ガラス部15の下縁部分15Dとの間の接触部分には、隙間ができないように設計されている。
【0079】
サッシ14が最も下端まで下げられている状態であるホームポジションHPの位置では、サッシ14の下縁部分14Dと作業面16との間に、前面開口部13における最小面積の空気通路(空気取込用の開口部)17が形成されるようになっている。この場合、前面開口部13の下部に形成される空気通路17からは、例えば3m3 /min程度の最小風量の外気がエンクロージャ10の内部の作業空間12に送り込まれる。
【0080】
図3および図4に示すように、エンクロージャ10は、前面部10Fと、左右の側面部10L,10Rと、背面部10Bと、天井面部10Uと、を有している。
【0081】
そして、サッシ14は、左右の縁部分14L,14Rが、エンクロージャ10の前面部10Fの左右のガラス案内部11L,11Rにはめ込まれており、該ガラス案内部11L,11Rに沿って、図示Z方向(上下方向)に移動可能とされている。
【0082】
サッシ14の下縁部分14Dには、作業者が手で持ってサッシ14を上げ下げするための把持部14Aが設けられている。
【0083】
(サッシ昇降ユニット)
一方、サッシ14の上縁部分14Uには、図4に示すように、吊線材(サッシ吊用タイミングベルト)21の一端部が固定されている。この吊線材21は、滑車22A,22Bにかけ渡されている。そして、吊線材21の他端側が昇降用の電動モータ(モータユニット)Mの巻き取り車23により巻き取られることで、サッシ14を上昇させて前面開口部13を開けたり、降下させて前面開口部13を閉めたりすることができる。
【0084】
電動モータMは、後述する制御部50の制御により、作業状況などに応じてサッシ14を自動で昇降させることによって、前面開口部13の開度(空気通路17の開口面積)を調整することができる。
【0085】
サッシ14は、例えば、ホームポジションHPの位置から最大で400mm程度まで上昇させることが可能とされている(サッシの最大開口時)。この場合、前面開口部13の最大開口からは、例えば10m3 /min程度の標準風量の外気がエンクロージャ10の内部の作業空間12に送り込まれる。
【0086】
なお、サッシ14を、例えば、ホームポジションHPの位置から200mm程度まで上昇させた場合の、前面開口部13の中間開口からは、例えば5m3 /min程度の中間風量の外気がエンクロージャ10の内部の作業空間12に送り込まれる。
【0087】
詳細については後述するが、サッシ昇降ユニットは、サッシ14の開度を検出するサッシ開度センサ58や、サッシ14の昇降動作を制限するブレーキユニット59などを備えている。
【0088】
サッシ開度センサ58は、例えば図4に示すように、電動モータMの回転によって巻き取り車23により巻き取られる吊線材21の量(滑車22A,22B間の移動距離)を検出することで、サッシ14の開度を検出する。
【0089】
ブレーキユニット59は、例えば、滑車22Aの回転に制動をかけることによって、サッシ14の開(上昇)動作を抑制させるためのものである。例えば、滑車22Aの回転に制動をかける際の制御量を調整することによって、サッシ14の上昇動作を遅く(重く)したり、禁止(ロック)したりできる。
【0090】
エンクロージャ10の内部には、例えば図5に示すように、ヒュームフード1の動作を制御するための制御部50や、図示しない浄化装置が収容されている。この浄化装置は、例えば、図示省略の排気用の送風ファンや雰囲気から微粒子を除去するHEPAフィルタ(高性能フィルタ)などを備え、作業空間12内の空気を清浄化した後、風量制御ダンパとしての排気バルブ30を介して、排気用ダクト201に排気し続けるようになっている。
【0091】
これにより、例えばサッシ14がホームポジションHPの位置では、3m3 /min程度の最小風量の外気が、前面開口部13の下部に形成される空気通路17を通じて、エンクロージャ10の内部の作業空間12に送り込まれる。
【0092】
そして、作業空間12内の空気は、作業空間12内に封じ込めるべき物質を含む雰囲気とともに、作業空間12の背面側の排気孔31を通じて背部通路32に入り、浄化装置のHEPAフィルタによってろ過された後に外部へと排気されるようになっている。
【0093】
エンクロージャ10のドラフト庫内11において、作業空間12は、図示X方向(左右方向)、図示Y方向(奥行方向)、図示Z方向(上下方向)に沿って形成された、ほぼ直方体形状の閉鎖空間である。作業面16は、作業空間12の底部に対応している。
【0094】
この作業面16の高さ位置は、作業者が作業用の椅子(図示省略)に座った状態で、前面開口部13の空気通路17を通じて、ドラフト庫内11に手を入れることにより、作業空間12内で所定の作業ができるように設定されている。
【0095】
また、エンクロージャ10の下部には、空間部SPが設けられている。この空間部SPには、作業用の椅子に座った作業者の膝を入れることができる。
【0096】
エンクロージャ10には、空間部SPの上部に操作パネル40が設けられている。操作パネル40には、電源コンセント41、サッシ14の上昇スイッチ42A、サッシ14の下降スイッチ42B、および、当該ヒュームフード1を稼動させるための起動スイッチ43などが設けられている。
【0097】
起動スイッチ43は、当該ヒュームフード1を作業の開始(稼動)時にはオン状態に、作業の終了後にはオフ状態に設定するための制御信号Sを、制御部50に送信する。
【0098】
上昇スイッチ42Aは、例えば、作業者の操作に応じて、制御信号が制御部50に送られることにより電動モータMが駆動されて、サッシ14を図示Z1方向に上昇させることができる。
【0099】
下降スイッチ42Bは、例えば、作業者の操作に応じて、制御信号が制御部50に送られることにより電動モータMが駆動されて、サッシ14を図示Z2方向に下降させることができる。
【0100】
また、エンクロージャ10は、サッシ14がホームポジションHPに位置していることを検出して制御信号HPを制御部50に出力するサッシ位置検出器51を備えている。
【0101】
また、エンクロージャ10は、固定ガラス部15の上側の位置に、当該ヒュームフード1の稼動状態などを、発光色の違いで表示する状態表示部(報知器)45を備えている。この状態表示部45は、制御部50の制御により、複数種類の色を選択して発光することができる発光体、例えば複数のLED(発光ダイオード)を配列することで構成されている。この状態表示部45は、例えば、ヒュームフード1の稼動状態である、例えば待機状態、運転中、風量低下の警告、異常時などを、異なる発光色で視覚的に通知することができる。
【0102】
本実施形態においては、例えば、当該ヒュームフード1の稼動に伴う排気風量の増加により、稼動中の全ヒュームフード1の総排気風量が後述する第1閾値を超えると予想される場合に、状態表示部45の発光色によって排気風量不足を作業者に警告する。
【0103】
また、本実施形態のヒュームフード1は、例えば図5に示すように、排気バルブ30の開度を制御するアクチュエータ53と、内カメラ54と、ストッパ装置55と、モニタ用表示装置56と、記憶媒体接続部57と、を備えている。また、温度センサ46や風速検出器(圧力センサ)52などを備えている。
【0104】
風速検出器52は、例えば排気バルブ30の内外の差圧量に基づいて風速を検出し、検出信号Wを制御部50に送信する。
【0105】
内カメラ54は、作業空間12内の作業状況などを撮影し、その撮影した作業空間12内の撮影情報Pを制御部50に送信する。内カメラ54としては、例えば、CCD(電荷結合素子)カメラを採用できる。
【0106】
モニタ用表示装置56は、内カメラ54により撮影された撮影情報Pや情報記憶媒体57Aに記憶されている撮影情報Pなどを、制御部50を介して、画面上に表示するものである。
【0107】
記憶媒体接続部57は、接続されている情報記憶媒体57Aに、作業空間12内の作業状況などを撮影した撮影情報Pを記憶させたり、情報記憶媒体57Aに記憶されている撮影情報Pなどを読み出したりする。なお、情報記憶媒体57Aとしては、例えば、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)やSD(Safe Driver)メモリーカードなどが好ましいが、特に限定されない。
【0108】
ストッパ装置55は、サッシ14が最も下端のホームポジションHPに位置している状態において、制御部50の制御により、ピン55Aによってサッシ14が不用意に開けられないようにサッシ14の上昇を禁止して、作業中のセキュリティを保つことができる。
【0109】
また、制御部50は、上述したヒュームフード管理システム内の、フード制御システム300の制御装置319と電気的に接続されている。
【0110】
(ブレーキユニット)
次に、ヒュームフード1のサッシ昇降ユニットに適用されるブレーキユニット59について説明する。なお、図6は、ブレーキユニット59の斜視図であり、図7(a)は、ブレーキユニット59の上面図であり、図7(b)は、一側面図である。また、図8(a)は、ブレーキユニット59の一部を透過して示す図であり、図8(b)は、逆側から見た図である。
【0111】
即ち、本実施形態におけるブレーキユニット59は、例えば、サッシ昇降ユニットを構成する、回転軸24上に設けられた一対の滑車22Aの、少なくとも一方の内軸部分に設けられている。
【0112】
ブレーキユニット59は、例えば図6ないし図8に示すように、天板60に固定されるほぼL字型の取付け部材59a、取付け部材59aの滑車22A側に設けられた樹脂ドラム59b、その樹脂ドラム59bにかけ渡されたブレーキ用ゴムベルト59c、および、このブレーキ用ゴムベルト59cの樹脂ドラム59bに対する摺動抵抗を可変させるためのソレノイド59dなどを有している。
【0113】
樹脂ドラム59bは、例えば、吊線材21がかけ渡される滑車22Aの回転軸24と同軸上に固定されている。
【0114】
ブレーキ用ゴムベルト59cは、一端が固定され、他端が可動部59eを介してソレノイド59dに接続されており、例えば、サッシ14を開け辛くする際とロックする際とで、樹脂ドラム59bに対する摺動の強さ(引張り量)が変更可能な構成とされている。
【0115】
ソレノイド59dは、制御装置319からの指示(例えば、ブレーキ制御信号S1,S2)にしたがって、その引張り量(制御量)が制御部50により制御される。
【0116】
即ち、ヒュームフード1の稼動時においては、例えば第1閾値に基づいて、制御装置319によって当該ヒュームフード1の稼動により排気用ファン202の排気容量不足が予見される場合(ブレーキ制御信号S1の出力時)には、制御部50によりソレノイド59dがブレーキ用ゴムベルト59cを軽く引くように制御される。これにより、樹脂ドラム59bに対してブレーキがかけられた状態となって、サッシ14の昇降動作が抑制されて、特に、サッシ14の移動が重く上昇し難くなることにより、対象のヒュームフード1の作業者に対して排気容量不足の注意喚起が促される。
【0117】
一方、ヒュームフード1の稼動時において、例えば第2閾値に基づいて、制御装置319によって当該ヒュームフード1の稼動により排気用ファン202の排気容量不足が予見される場合(ブレーキ制御信号S2の出力時)には、稼動中の全ヒュームフード1の制御部50によりソレノイド59dがブレーキ用ゴムベルト59cを強く引くように制御される。これにより、樹脂ドラム59bに対してロックがかけられた状態となって、サッシ14の昇降動作が禁止されて、特に、サッシ14を上昇できなくすることにより、全てのヒュームフード1の作業者に対して排気容量不足の警告が促される。
【0118】
なお、ブレーキユニット59としては、電磁ブレーキなどを用いて構成することも容易に可能である。
【0119】
(ヒュームフードの使用例)
次に、上述したヒュームフード1の基本的な動作について説明する。
【0120】
作業者が、ヒュームフード1を用いて所定の作業を行う場合、例えば、サッシ14は、最も下端のホームポジションHPに位置されている状態になっている。この状態において、作業者により操作パネル40の起動スイッチ43がオンされると、制御部50に制御信号Sが送信される。
【0121】
これにより、制御部50によって、状態表示部45、内カメラ54、モニタ用表示装置56、記憶媒体接続部57、および、排気バルブ30のアクチュエータ53などが動作状態とされる。その際、このヒュームフード1の排気風量は、最小風量(例えば、3m3 /min程度)とされる。これにより、当該ヒュームフード1は、作業者による所定の作業の開始が可能な稼動状態となる。
【0122】
なお、起動スイッチ43の操作時においては、例えば、当該ヒュームフード1を使用する作業者が、所持するIDタグなどの認証キーを許可指令部(図示省略)に近付けることによって認識された場合に、制御部50は、起動スイッチ43からの制御信号Sを受け付けるようにしても良い。このように、作業者が認証された場合にのみ、制御部50が起動スイッチ43の操作に伴う制御信号Sを受け付けるようにすることで、ヒュームフード1の操作上のセキュリティ性を高めることができる。
【0123】
また、サッシ14および固定ガラス部15に遮蔽装置(図示省略)を設けて、作業中の作業空間12内を目隠しできるようにしても良い。
【0124】
ヒュームフード1が稼動可能な状態においては、作業者の操作による上昇スイッチ42Aからの信号または下降スイッチ42Bからの信号が、制御部50に送られる。これにより、作業者は、サッシ14の昇降動作を自動にて行わせることができる。
【0125】
ただし、サッシ14が最も下端のホームポジションHPの位置となっている場合には、制御部50によってストッパ装置55のピン55Aが突出されて、手動であってもサッシ14をホームポジションHPの位置から移動(上昇)させることができないようになっている。これにより、第三者によってサッシ14が不用意に開けられるのを抑制でき、作業中の作業空間12内からの空気に作業者が晒されるのを回避できる。
【0126】
そして、サッシ14が最も下端のホームポジションHPの位置となっている状態においては、作業者が、空気通路17を通じて、ドラフト庫内11に手を入れることにより、作業空間12内での各種の作業が可能とされる。
【0127】
ところで、当該ヒュームフード1においては、例えば、作業中に作業空間12内の温度の上昇が温度センサ46によって検出されると、制御部50は、局所的に排気風量を増加させる。
【0128】
即ち、制御部50は、発熱時、ストッパ装置55を制御してピン55Aを抜き、サッシ14の上昇動作を可能にするとともに、アクチュエータ53を制御して、排気バルブ30による排気風量を局所排気風量(例えば、10m3 /min程度の標準風量)に設定する。
【0129】
このように、発熱時のみに排気風量の増加を可能とし、通常時(非発熱時)には最小風量での作業を可能とすることで、作業の安全性の確保と低コスト化とを両立させることができる。
【0130】
(ヒュームフードの管理方法)
次に、図9を参照して、本実施形態のヒュームフード管理システムに係るヒュームフードの管理方法について説明する。
【0131】
まずは、ヒュームフード管理システムのフード制御システム300において、制御装置319によって、複数台のヒュームフード1をトータルで制御するための最大風量(最大排気風量)が、予め記憶部316に記憶されているものとする(ステップST1)。
【0132】
また、記憶部316には、例えば制御装置319によって、最大風量の95%に値する閾値A(第1閾値)と、最大風量の98%に値する閾値B(第2閾値)と、が設定されている(ステップST2,ST3)。
【0133】
例えば、標準風量が10m3 /minのヒュームフード1を最大で30台設置可能な建屋100の場合において、最大風量として、150m3 /min(必要風量の1/2)が設定されているとする。すると、閾値Aとしては、例えば142.5m3 /minが、閾値Bとしては、例えば147m3 /minが、それぞれ設定される。
【0134】
本実施形態において、ここでの詳細な説明は省略するが、例えば、最大風量、閾値Aおよび閾値Bは、管理者らによって予め自由に設定できるものとする。
【0135】
このような状況において、例えば、建屋100内のヒュームフード1が稼動されるごとに、フード制御システム300の風量算出部317によって、稼動中の全ヒュームフード1の排気風量の合計(総排気風量)が求められる(ステップST4)。
【0136】
そして、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Aよりも大きいか否か(A≦総風量)が、制御装置319にて比較される(ステップST5)。
【0137】
ここで、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Aよりも小さい場合(ステップST5のNO)、上記ステップST4での処理が繰り返される。つまり、最大風量不足が予見されない場合には、対象のヒュームフード1は何の制限もなく、使用が可能とされる。
【0138】
仮に、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Aと同じか、閾値Aよりも大きい場合(ステップST5のYES)、ステップST6に処理が移行される。
【0139】
即ち、ステップST6においては、当該ヒュームフード1の稼動により排気用ファン202の排気容量不足が予見されるとして、最後に稼動された対象のヒュームフード1に対して、例えば、制御装置319よりブレーキ制御信号S1が出力される。
【0140】
例えば、既に14台のヒュームフード1が標準風量で稼動している状況においては、たとえ最後に稼動された15台目のヒュームフード1を最小風量の3m3 /minで使用するとしても、総排気風量(143m3 /min)が閾値Aを超えることになる。
【0141】
または、例えばステップST4において、稼動中のヒュームフード1のサッシ14が上昇されるたびに、フード制御システム300の風量算出部317によって、稼動中の全ヒュームフード1の排気風量の合計(総排気風量)が求められる。
【0142】
例えば、既に14台のヒュームフード1が標準風量で稼動している状況においては、たとえ15台目のサッシ14を半分(200mm上昇)だけ上昇させたとしても、総排気風量(145m3 /min)が閾値Aを超えることになる。
【0143】
このような場合、対象のヒュームフード1では、制御部50により、状態表示部45が所定の発光色によって点灯表示されるとともに、ブレーキユニット59がサッシ14の動きを重くするように制御される。これにより、最後に稼動されたもしくは最後にサッシ14が上昇された、対象のヒュームフード1を使用して作業しようとする作業者に対して、総排気風量が既に142.5m3 /minに達しており、排気容量不足による使用制限状態であることが報知される。
【0144】
一方、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Bよりも大きいか否か(B≦総風量)が、制御装置319にて比較される(ステップST7)。
【0145】
ここで、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Bよりも小さい場合(ステップST7のNO)、上記ステップST4での処理が繰り返される。つまり、最大風量不足が予見されない場合には、稼動中の全ヒュームフード1は何の制限もなく、使用が可能とされる。
【0146】
仮に、風量算出部317で求められた総排気風量が閾値Bと同じか、大きい場合(ステップST7のYES)、ステップST8に処理が移行される。
【0147】
即ち、ステップST8においては、サッシ14を上昇させたことにより排気用ファン202の排気容量不足が予見されるとして、稼動中の全ヒュームフード1に対して、例えば、制御装置319よりブレーキ制御信号S2が出力される。
【0148】
例えば、既に14台のヒュームフード1が標準風量で稼動している状況においては、15台目のヒュームフード1を全開(サッシ14を400mm上昇)させることに伴って、総排気風量(150m3 /min)が閾値Bを超えることになる。
【0149】
このような場合、全ヒュームフード1では、制御部50により、ブレーキユニット59がサッシ14の動きをロックするように制御される。これにより、各ヒュームフード1を使用して作業している全作業者に対して、総排気風量が既に147m3 /minに達しており、排気容量不足による使用限度(危険領域)の直前の状態であることが報知される。
【0150】
このように、ヒュームフード1の稼動率として、稼動中の全ヒュームフード1の排気風量の合計である総排気風量に基づいて、排気用ファン202の排気容量不足を報知したり、サッシ14の上昇動作を制限するようにしている。
【0151】
即ち、ヒュームフード1の新たな稼動に伴って、排気用ファン202の排気容量不足が予見される場合には、最後に稼動された対象のヒュームフード1の状態表示部45によって、排気容量不足による使用制限状態であることが作業者に報知される。
【0152】
なお、状態表示部45による報知に限らず、ブザー音やモニタ用表示装置56を用いた報知も可能である。
【0153】
または、サッシ14の上昇に伴って、排気用ファン202の排気容量不足が予見される場合には、ブレーキユニット59により対象のヒュームフード1のサッシ14を開け辛くすることによって、排気容量不足による使用制限状態であることを作業者に認識させることが可能となる。
【0154】
あるいは、サッシ14の上昇に伴って、排気用ファン202の排気容量不足が予見される場合には、ブレーキユニット59により全てのヒュームフード1のサッシ14をロックさせることによって、排気容量不足による使用限度の直前の状態であることを各作業者に認識させることが可能となる。
【0155】
上記したように、本実施形態に係るヒュームフード管理システムによれば、稼動中のヒュームフード1の総排気風量が常に排気用ファン202の最大排気風量以下となるように、同時に作業可能なヒュームフード1を厳重に管理することが可能となる。
【0156】
これにより、複数台のヒュームフード1を設置可能な施設の建屋100において、排気用ファン202の最大排気風量が、全ヒュームフード1の総排気風量(必要風量)以下に設定される場合であっても、低コスト化にとって、より好適なヒュームフード管理システムとすることができる。
【0157】
従って、同時に使用されることがない、規定台数以上のフードには管理者らが施錠をするなどの煩わしさもなく、監督官庁への届け出による認可の取得も容易に可能とされる。
【0158】
なお、15台のヒュームフード1を同時に稼動できるように設定されたヒュームフード管理システムとしては、例えば、ヒュームフード1の総排気風量が閾値Aに達するまでは、16台目以降のヒュームフード1を同時に使用できるようにすることも可能である。
【0159】
また、本実施形態においては、標準風量が一律(例えば、10m3 /min)とされた複数のヒュームフード1が設置される場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、ヒュームフード1としては低風量型と称されるヒュームフードなどであっても良いし、異なる規格のヒュームフードが混在させて設置される場合にも適用可能である。
【0160】
また、本実施形態によれば、発熱時のみに排気風量の増加を可能とし、稼動率の増加や発熱の有無を、ヒュームフード1を使用するたびに確認する必要がなく、状態表示部45の発光色やサッシ14の開け辛さによって、該当する作業者だけに注意を促すことが可能になる。
【0161】
以上、実施形態を例示して本発明の一態様について説明したが、一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0162】
1 ヒュームフード(FH)
12 作業空間
13 前面開口部
14 サッシ(可動ガラス扉)
17 空気通路
22A,22B 滑車
30 排気バルブ(風量制御ダンパ)
45 状態表示部(報知器)
50 制御部
59 ブレーキユニット
59b 樹脂ドラム
59c ブレーキ用ゴムベルト
59d ソレノイド
100 建屋
200 空調システム
201 排気用ダクト
202 排気用ファン
300 フード制御システム
301 ファンモータ
316 記憶部
317 風量算出部
319 制御装置
M 電動モータ(モータユニット)
HP ホームポジション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9