(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016390
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】鏡ボルト
(51)【国際特許分類】
E21D 21/00 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
E21D21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120660
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
(57)【要約】
【課題】トンネル施工の補助工法に用いる鏡ボルトを軽量化して、作業性を向上させる。
【解決手段】鏡ボルト10は、トンネル1の鏡面に打ち込まれる。鏡ボルト10は、引張強度700N/mm
2~950N/mm
2、厚み3.2mm以下、単位長さあたりの重さ4kg/m~8kg/mの高張力鋼管からなる。鏡ボルト10には、部分環状の貫通スリット11又は環状の溝13からなる1又は複数の易破断処理部が長手方向に間隔を置いて形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの鏡面に打ち込まれる鏡ボルトであって、
引張強度700N/mm2~950N/mm2、厚み3.2mm以下、単位長さあたりの重さ4kg/m~8kg/mの高張力鋼管からなり、部分環状の貫通スリット又は環状の溝からなる1又は複数の易破断処理部が長手方向に間隔を置いて形成されていることを特徴とする鏡ボルト。
【請求項2】
引張強度が720N/mm2~800N/mm2であることを特徴とする請求項1に記載の鏡ボルト。
【請求項3】
厚みが2.2mm以上3.2mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鏡ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル等の掘進施工の補助工法として用いられる鏡ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM(New Austrian Tunneling Method)トンネル等の山岳トンネルの構築においては、その補助工法として、鏡面に鏡ボルトを打設することが知られている。鏡ボルトによって鏡面の押し出し変位を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-080674号公報(
図1(e)及び(f))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種の鏡ボルトは、引張強度400N/mm2程度の普通鋼によって構成され、所要強度を確保するために厚肉になっている。このため、鏡ボルト1本あたりの重量が重く、これを人力で持ち運んで、打設機に組み込むのは、大変な重労働になる。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネル施工の補助工法に用いる鏡ボルトを軽量化して、作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、トンネルの鏡面に打ち込まれる鏡ボルトであって、
引張強度700N/mm2~950N/mm2、厚み3.2mm以下、単位長さあたりの重さ4kg/m~8kg/mの高張力鋼管からなり、部分環状の貫通スリット又は環状の溝からなる1又は複数の易破断処理部が長手方向に間隔を置いて形成されていることを特徴とする。
【0006】
引張強度が720N/mm2~800N/mm2であることが好ましい。
厚みが2.2mm以上3.2mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鏡ボルトを軽量化して、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る鏡ボルトを用いた鏡ボルト工法を適用した施工中のNATMトンネルの側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う、前記鏡ボルトの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る鏡ボルトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図3)>
図1に示すように、NATMトンネル1の鏡面1c(切羽)には、鏡ボルト10が、鏡面1c(切羽)から前方の地山2へほぼ水平に打ち込まれている。1~6本の鏡ボルト10が一直線に継ぎ足されている。これら一直線をなす鏡ボルトの継足体19が、鏡面1cの面内に分散して複数配置されている。
【0010】
図2及び
図3に示すように、鏡ボルト10は、円管状に形成されている。
図2に示すように、鏡ボルト10の両端部には、継ぎ足し用の雄ネジ部12及び雌ネジ部14が形成されている。なお、継足体19の先端及び末端の鏡ボルト10には、片方の端部だけにネジ部12,14の一方が形成されている。
【0011】
図2に示すように、鏡ボルト10には、貫通スリット11(易破断処理部)が複数形成されている。各貫通スリット11は、鏡ボルト10の外周面から内周面に貫通するとともに、鏡ボルト10の周方向へ延びる部分環状になっている。
図3に示すように、鏡ボルト10の周方向に沿う、貫通スリット11の中心角θ
11は、好ましくはθ
11=90°~150°程度、より好ましくはθ
11=120°程度である。
【0012】
図2に示すように、複数の貫通スリット11が、鏡ボルト10の軸方向へ間隔を置いて、好ましくは千鳥に形成されている。すなわち、隣接する貫通スリット11は、鏡ボルト10の周方向の互いに180°反対側に配置されている。隣接する貫通スリット11どうしの間隔は、好ましくは500mm~1000mm程度である。
【0013】
鏡ボルト10は、好ましくは引張強度700N/mm2~950N/mm2程度、より好ましくは800N/mm2~880N/mm2程度の高張力鋼管によって構成されている。
鏡ボルト10の厚みは、好ましくは3.2mm以下であり、より好ましくは2.2mm以上3.2mm以下である。
鏡ボルト10の単位長さあたりの重さは、好ましくは4kg/m~8kg/m程度である。
【0014】
鏡ボルト10の1本あたりの重さは、好ましくは12kg~28kg程度であり、より好ましくは15kg~25kg程度である。
鏡ボルト10の1本あたりの長さは、例えば3m~3.7m程度である。
鏡ボルト10の外直径は、例えば60mm~80mm程度、より好ましくは76mm程度である。
【0015】
なお、鏡ボルト10の端部のネジ部12,14は、引張強度400N/mm2程度の普通鋼の短管で構成され、前記高張力鋼管からなる鏡ボルト本体部10a(ネジ部12,14を除く部分)と溶接等により接合されていてもよい。ネジ部12,14を含む鏡ボルト10の全体が、前記高張力鋼管によって構成されていてもよい。
【0016】
本発明に係る鏡ボルト10によれば、引張強度を700N/mm2~950N/mm2、好ましくは720N/mm2~800N/mm2程度とすることで、薄肉(厚み3.2mm以下)であっても、鏡ボルトとしての所要耐力を確保でき、鏡面1cの押し出し変位を十分に抑えることができる。
鏡ボルト10を薄肉化できるために、鏡ボルト10の1本あたりの重さを軽減できる。したがって、鏡ボルト10を持ち運び等する際の作業者の負担を軽減でき、作業性を向上できる。
トンネル1の掘進の際は、図示しない掘削機によって、鏡ボルト10を破砕しながら、鏡面1cの地山を掘削する。鏡ボルト10は、薄肉であるために破砕が容易である。更に貫通スリット11の形成部分において容易に破断することができる。
【0017】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図4)>
図4に示すように、第2実施形態の鏡ボルト10Bにおいては、易破断処理部として、貫通スリット11(
図3)に代えて、環状溝13が形成されている。複数の環状溝13が、鏡ボルト10の軸方向へ間隔を置いて形成されている。隣接する環状溝13どうしの間隔は、好ましくは500mm~1000mm程度である。
【0018】
各環状溝13は、鏡ボルト10Bの外周面から凹むとともに、鏡ボルト10の全周にわたる環状になっている。環状溝13は、鏡ボルト10Bの内周面には達していない。環状溝13の深さは、鏡ボルト10Bの厚み(好ましくは2.2mm~3.2mm)より小さく、例えば1mm~2mm程度である。
【0019】
環状溝13が形成された部分では、鏡ボルト10Bの厚みが十分に小さくなっている。
したがって、トンネル1の掘進の際は、鏡ボルト10Bを、前記環状溝13の形成部分において容易に破断することができる。
【0020】
本発明は、前記実施形態に限定されず、種々の改変をなすことができる。
例えば、1の鏡ボルトに易破断処理部として貫通スリット11と環状溝13が形成されていてもよい。易破断処理部の数は、1つだけでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、トンネル施工の補助工法として適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 トンネル
1c 鏡面(切羽)
10 鏡ボルト
10B 鏡ボルト
11 貫通スリット(易破断処理部)
13 環状溝(易破断処理部)