(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163915
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】伝送装置、伝送システム、および伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/23 20110101AFI20231102BHJP
H04N 21/647 20110101ALI20231102BHJP
H04H 20/12 20080101ALI20231102BHJP
H04H 20/26 20080101ALI20231102BHJP
【FI】
H04N21/23
H04N21/647
H04H20/12
H04H20/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075137
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114226
【氏名又は名称】ミハル通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】下山 由洋
(72)【発明者】
【氏名】三橋 靖大
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌寛
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164SA11S
5C164SB23S
5C164SB46P
5C164TA14S
5C164TA22S
5C164TB44P
5C164YA25
(57)【要約】
【課題】 異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号を切り替える。
【解決手段】 フォーマット変換部251,252は、放送信号に含まれる基準時間情報で指定される1フレームを、出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、放送信号に含まれる基準時間情報をその複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加する。読出部281は、選択中の放送信号において複数のスロットのいずれかで異常が検知された場合、異常が検知されたスロットの含まれる出力伝送フレームの個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量に基づいて、異常が検知されたスロットに対応する、複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択する。出力部282は、選択されたスロットを所定の出力伝送方式で出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある放送信号を複数の伝送経路を介して複数の放送信号として入力し、前記複数の放送信号のいずれかを選択して出力する伝送装置において、
前記複数の放送信号を入力する入力手段と、
前記複数の放送信号の異常を検知する検知手段と、
前記複数の放送信号のフォーマット変換を行うフォーマット変換手段と、
前記フォーマット変換後の前記複数の放送信号のいずれか1つを選択する選択手段と、
選択された前記フォーマット変換後の前記放送信号を所定の出力伝送方式で出力する出力手段とを備え、
前記フォーマット変換手段は、前記放送信号に含まれる基準時間情報で指定される1フレームを、前記出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報を前記複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加し、
前記選択手段は、(a)前記複数の放送信号のうちの選択中の放送信号において、前記出力伝送フレームを構成する複数のスロットのいずれでも前記異常が検知されていない場合、前記選択中の放送信号のスロットを選択し、(b)前記選択中の放送信号において前記複数のスロットのいずれかで前記異常が検知された場合、前記異常が検知されたスロットの含まれる前記出力伝送フレームの前記個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量に基づいて、前記異常が検知されたスロットに対応する、前記複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択し、
前記出力手段は、選択された前記スロットを前記所定の出力伝送方式で出力すること、
を特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記放送信号は、MMT/TLV(MPEG Media Transport/Type Length Value)方式の放送信号であって、
前記放送信号に含まれる基準時間情報は、NTP(Network Time Protocol)のUTC(Coordinated Universal Time)であり、
前記フォーマット変換手段は、前記NTPのUTCの出現間隔を1フレームとし、当該1フレームを前記複数の出力伝送フレームに変換し、前記UTCの値を前記複数の出力伝送フレームにそれぞれ付加し、
前記複数のスロットは、それぞれ、1または複数のTLVパケットを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記複数の伝送経路のうちの少なくとも1つである双方向通信の可能な伝送経路で、前記異常が検知されたパケットの送信要求を送信する送信要求手段と、
前記双方向通信の可能な伝送経路で、前記送信要求されたパケットを受信する受信手段とをさらに備え、
前記検知手段は、受信された前記パケットで、前記選択中の放送信号において前記異常が検知されたパケットを代替し、代替後に前記選択中の放送信号の異常の有無を判定すること、
を特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項4】
下流側の伝送装置としての請求項3に記載の伝送装置と、
前記下流側の伝送装置へ前記放送信号を出力する上流側の伝送装置とを備え、
前記上流側の伝送装置は、前記伝送経路で前記複数の放送信号のいずれかを前記下流側の伝送装置へ送信し、前記下流側の伝送装置から前記送信要求を受信すると、前記送信要求されたパケットを前記下流側の伝送装置へ送信すること、
を特徴とする伝送システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の伝送装置と、
前記伝送装置から出力される前記放送信号を受信する下流側の伝送装置とを備え、
前記下流側の伝送装置は、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報が有効に受信されなかった場合、前記出力伝送フレームに付加された前記個別時間情報から、前記基準時間情報を復元すること、
を特徴とする伝送システム。
【請求項6】
ある放送信号を複数の伝送経路を介して複数の放送信号として入力し、前記複数の放送信号のいずれかを選択して出力する伝送方法において、
前記複数の放送信号を入力する入力ステップと、
前記複数の放送信号の異常を検知する検知ステップと、
前記複数の放送信号のフォーマット変換を行うフォーマット変換ステップと、
前記フォーマット変換後の前記複数の放送信号のいずれか1つを選択する選択ステップと、
選択された前記フォーマット変換後の前記放送信号を所定の出力伝送方式で出力する出力ステップとを備え、
前記フォーマット変換ステップでは、前記放送信号に含まれる基準時間情報で指定される1フレームを、前記出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報を前記複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加し、
前記選択ステップでは、(a)前記複数の放送信号のうちの選択中の放送信号において、前記出力伝送フレームを構成する複数のスロットのいずれでも前記異常が検知されていない場合、前記選択中の放送信号のスロットを選択し、(b)前記選択中の放送信号において前記複数のスロットのいずれかで前記異常が検知された場合、前記異常が検知されたスロットの含まれる前記出力伝送フレームの前記個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量に基づいて、前記異常が検知されたスロットに対応する、前記複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択し、
前記出力ステップでは、選択された前記スロットを前記所定の出力伝送方式で出力すること、
を特徴とする伝送方法。
【請求項7】
前記複数の伝送経路のうちの少なくとも1つである双方向通信の可能な伝送経路で、前記異常が検知されたパケットの送信要求を下流側の伝送装置から上流側の伝送装置へ送信する送信要求ステップと、
前記上流側の伝送装置において前記送信要求を受信すると、前記双方向通信の可能な伝送経路で、前記送信要求されたパケットを上流側の伝送装置から下流側の伝送装置へ送信するパケット送信ステップと、
前記双方向通信の可能な伝送経路で、前記下流側の伝送装置において前記送信要求されたパケットを受信するパケット受信ステップとをさらに備え、
前記検知ステップにおいて、前記下流側の伝送装置により受信された前記パケットで、前記選択中の放送信号において前記異常が検知されたパケットを代替し、代替後に前記選択中の放送信号の異常の有無を判定すること、
を特徴とする請求項6に記載の伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置、伝送システム、および伝送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MMT/TLV(MPEG Media Transport/Type Length Value)方式の複数の放送信号を入力し、複数の放送信号のいずれか1つを選択し、選択されている放送信号において異常が検知された場合には、異常が検知されていない、または、異常の検知数が少ない放送信号を特定し、特定した放送信号に選択を変更している放送信号切替装置が開示されている。
【0003】
このような放送システムによれば、伝送路の異常を検出し、伝送路の切替を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、TLVパケットごとに異常の有無が判定され、異常がある場合、異常のあるTLVパケットに対して異常情報を生成し、その異常情報に基づいてTLVパケット単位で放送信号を切り替えている。
【0006】
他方、上述のように選択された放送信号は、所定の伝送方式(IPネットワークなどのパケット通信や、CATVなどで所定の変調方式で変調された伝送信号など)で放送信号切替装置から出力されている。上述の技術では、出力の伝送方式を特に考慮せずに、放送信号の切替単位がTLVパケット単位に設定されている。このため、放送信号の切替単位が、出力の伝送方式に対して適切にならない可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号を切り替える伝送装置、伝送システムおよび伝送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ある放送信号を複数の伝送経路を介して複数の放送信号として入力し、前記複数の放送信号のいずれかを選択して出力する伝送装置において、前記複数の放送信号を入力する入力手段と、前記複数の放送信号の異常を検知する検知手段と、前記複数の放送信号のフォーマット変換を行うフォーマット変換手段と、前記フォーマット変換後の前記複数の放送信号のいずれか1つを選択する選択手段と、選択された前記フォーマット変換後の前記放送信号を所定の出力伝送方式で出力する出力手段とを備え、前記フォーマット変換手段は、前記放送信号に含まれる基準時間情報で指定される1フレームを、前記出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報を前記複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加し、前記選択手段は、(a)前記複数の放送信号のうちの選択中の放送信号において、前記出力伝送フレームを構成する複数のスロットのいずれでも前記異常が検知されていない場合、前記選択中の放送信号のスロットを選択し、(b)前記選択中の放送信号において前記複数のスロットのいずれかで前記異常が検知された場合、前記異常が検知されたスロットの含まれる前記出力伝送フレームの前記個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量に基づいて、前記異常が検知されたスロットに対応する、前記複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択し、前記出力手段は、選択された前記スロットを前記所定の出力伝送方式で出力すること、を特徴とする。
このような構成によれば、異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号を切り替えることが可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記放送信号は、MMT/TLV方式の放送信号であって、前記放送信号に含まれる基準時間情報は、NTP(Network Time Protocol)のUTC(Coordinated Universal Time)であり、前記フォーマット変換手段は、前記NTPのUTCの出現間隔を1フレームとし、当該1フレームを前記複数の出力伝送フレームに変換し、前記UTCの値を前記複数の出力伝送フレームにそれぞれ付加し、前記複数のスロットは、それぞれ、1または複数のTLVパケットを含むこと、を特徴とする。
このような構成によれば、MMT/TLV方式の放送信号について、異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号の切り替えを行える。
【0010】
また、本発明は、前記複数の伝送経路のうちの少なくとも1つである双方向通信の可能な伝送経路で、前記異常が検知されたパケットの送信要求を送信する送信手段と、前記双方向通信の可能な伝送経路で、前記送信要求されたパケットを受信する受信手段とをさらに備え、前記検知手段は、受信された前記パケットで、前記選択中の放送信号において前記異常が検知されたパケットを代替し、代替後に前記選択中の放送信号の異常の有無を判定すること、を特徴とする。
このような構成によれば、異常検出時に代替パケットを取得するため、放送信号の切り替え頻度が低くなる。
【0011】
また、本発明は、上流側の伝送装置としての上記の伝送装置と、前記上流側の伝送装置から出力される前記放送信号を受信する下流側の伝送装置とを備え、前記上流側の伝送装置は、前記伝送経路で前記複数の放送信号のいずれかを前記下流側の伝送装置へ送信し、前記下流側の伝送装置から前記送信要求を受信すると、前記送信要求されたパケットを前記下流側の伝送装置へ送信すること、を特徴とする。
このような構成によれば、異常検出時に代替パケットを上流側から取得するため、放送信号の切り替え頻度が低くなる。
【0012】
また、本発明は、上記のいずれか1項に記載の伝送装置と、前記伝送装置から出力される前記放送信号を受信する別の伝送装置とを備え、前記別の伝送装置は、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報が有効に受信されなかった場合、前記出力伝送フレームに付加された前記個別時間情報から、前記基準時間情報を復元すること、を特徴とする。
このような構成によれば、伝送経路の途中での基準時間情報の欠損の頻度が低くなる。
【0013】
また、本発明は、ある放送信号を複数の伝送経路を介して複数の放送信号として入力し、前記複数の放送信号のいずれかを選択して出力する伝送方法において、前記複数の放送信号を入力する入力ステップと、前記複数の放送信号の異常を検知する検知ステップと、前記複数の放送信号のフォーマット変換を行うフォーマット変換ステップと、前記フォーマット変換後の前記複数の放送信号のいずれか1つを選択する選択ステップと、選択された前記フォーマット変換後の前記放送信号を所定の出力伝送方式で出力する出力ステップとを備え、前記フォーマット変換ステップでは、前記放送信号に含まれる基準時間情報で指定される1フレームを、前記出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、前記放送信号に含まれる前記基準時間情報を前記複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加し、前記選択ステップでは、(a)前記複数の放送信号のうちの選択中の放送信号において、前記出力伝送フレームを構成する複数のスロットのいずれでも前記異常が検知されていない場合、前記選択中の放送信号のスロットを選択し、(b)前記選択中の放送信号において前記複数のスロットのいずれかで前記異常が検知された場合、前記異常が検知されたスロットの含まれる前記出力伝送フレームの前記個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量に基づいて、前記異常が検知されたスロットに対応する、前記複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択し、前記出力ステップでは、選択された前記スロットを前記所定の出力伝送方式で出力すること、を特徴とする。
このような構成によれば、異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号を切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異常検出時に、出力の伝送方式に対して適切な切替単位で放送信号を切り替える伝送装置、伝送システムおよび伝送方法を提供することができる。
【0015】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伝送装置20を含む伝送システム1の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す伝送装置20の詳細な構成例を示す図である。
【
図3】MMT/TLV方式の放送信号のフレーム構造を説明する図である。
【
図4】出力伝送方式の放送信号のフレーム構造を説明する図である。
【
図5】フォーマット変換後の放送信号におけるスロットの選択について説明する図である。
【
図6】第1実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る伝送装置20Aを含む伝送システム1Aの構成例を示す図である。
【
図8】
図7に示す伝送装置20Aの詳細な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
(A)本発明の第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る伝送装置20を含む伝送システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、伝送システム1は、アンテナ10、受信装置11、送信装置12、ネットワーク13、アンテナ14、伝送装置20、CATV(Cable Television)網30、加入者宅40-1~40-n(n>1)を有している。
【0019】
ここで、アンテナ10は、図示しない放送衛星から送信される放送信号を捕捉し、電気信号に変換して受信装置11に供給する。受信装置11は、アンテナ10によって捕捉された放送信号に対して、復調処理および誤り訂正処理を施し、得られた映像および音声データ等を送信装置12に供給する。なお、放送信号としては、一例として、高度BS放送信号および高度CS放送信号がある。もちろん、これら以外の放送信号を対象とするようにしてもよい。
【0020】
送信装置12は、受信装置11から供給される映像および音声データ等を、ネットワーク13の伝送方式(IPネットワークのパケット通信)に対応したパケットに変換し、ネットワーク13に送出する。
【0021】
ネットワーク13は、例えば、複数のサーバが相互に接続されて構成される世界規模のネットワークであるインターネット等のIP(Internet Protocol)ネットワークであって、送信装置12から送出されるパケットを、伝送装置20に伝送する。
【0022】
アンテナ14は、図示しない放送衛星から送信される放送信号を捕捉し、電気信号に変換して伝送装置20に供給する。なお、放送衛星から送信された放送信号が、互いに異なる地点に設置されたアンテナ10、14でそれぞれ捕捉される。
【0023】
伝送装置20は、ある放送信号を複数の伝送経路を介して複数の放送信号として入力し、その複数の放送信号のいずれかを選択して出力する。ここでは、伝送装置20は、ネットワーク13およびアンテナ14から供給される放送信号を入力し、一方を選択して出力するとともに、選択中の放送信号に異常が生じた場合には、他方に切り替える動作を実行する。
【0024】
CATV網30は、例えば、光ケーブルまたは同軸ケーブル等によって構成され、伝送装置20から出力される放送信号を加入者宅40-1~40-nにそれぞれ伝送する。
【0025】
加入者宅40-1~40-nは、ケーブルテレビサービスの加入者宅であり、CATV網30を介して伝送される放送信号を受信する加入者受信装置41(専用の受信機、テレビジョン受像機など)が配置されている。なお、CATV網30を介して伝送される放送信号は、所定の変調方式で変調された搬送波や、パケット化されたIPパケットなどである。
【0026】
図2は、
図1に示す伝送装置20の詳細な構成例を示す図である。
図2に示すように、伝送装置20は、受信部211,212、TLV SYNC部221,222、TLV-NTP検出部231,232、異常検出部241,242、フォーマット変換部251,252、バッファ261,262、制御部280、読出部281、および、出力部282を有している。
【0027】
ここで、受信部211は、アンテナ14から供給される電気信号(RF信号)を入力し、復調処理を施し、得られたデータをTLV SYNC部221に供給する。受信部212は、ネットワーク13から供給されるパケットを入力し、パケットに含まれるデータを抽出し、抽出したデータをTLV SYNC部222に供給する。
【0028】
TLV SYNC部221,222は、受信部211,212からそれぞれ供給されるデータストリームからTLVパケットを抽出し、それぞれ出力する。なお、TLV SYNC部221,222は、このTLVパケットとして、単一TLVパケットを出力してもよいし、合成TLVパケットを出力してもよい。
【0029】
TLV-NTP検出部231,232は、TLV SYNC部221,222から供給されるTLVパケットに定期的に含まれるNTP(以下、TLV-NTPという)を検出し、NTPに含まれる時刻情報としてのUTCを取得して、制御部280に供給する。
【0030】
異常検出部241,242は、受信部211,212およびTLV SYNC221,222によって検出された異常を制御部280にそれぞれ供給するとともに、TLV SYNC部221,222から供給されるTLVパケットの異常を検出し、検出された異常をそれぞれ制御部280に通知する。
【0031】
フォーマット変換部251,252は、入力された複数の放送信号のフォーマット変換をそれぞれ行う。ここでは、フォーマット変換部251,252は、TLV SYNC部221,222から供給されるTLVパケット(単一TLVパケットまたは合成TLVパケット)を、所定のデータフォーマット(フレーム構造)で、バッファ261,262にそれぞれ書き込む。
【0032】
具体的には、フォーマット変換部251,252は、それぞれ、放送信号に含まれる基準時間情報(ここでは、TLVパケットに定期的に含まれるNTPのUTC)で指定される1フレームを、出力伝送方式に応じたフレーム構成の複数の出力伝送フレームに変換し、放送信号に含まれる基準時間情報を複数の出力伝送フレームに個別時間情報としてそれぞれ付加する。各出力伝送フレームは、複数のスロットを有し、1つのスロットは、所定の1または複数のTLVパケットを収容可能となっている。
【0033】
バッファ261,262は、例えば、リングバッファによって構成され、フォーマット変換部251,252によってTLVパケットが、上述のデータフォーマットでそれぞれ書き込まれる。
【0034】
制御部280は、TLV-NTP検出部231,232から供給されるUTCを参照して、フォーマット変換部251,252によるバッファへの書込を制御するとともに、異常検出部241,242によって検出された異常に基づいて読出部281を制御し、読み出し対象となるバッファを選択する。
【0035】
読出部281は、フォーマット変換後の複数の放送信号のいずれか1つを選択する。ここでは、読出部281は、制御部280の制御に応じて、スロットごとにバッファ261およびバッファ262のいずれか一方を選択し、そのバッファ261およびバッファ262のいずれか一方からスロットを読み出し、出力部282に供給する。出力部282は、選択されたフォーマット変換後の放送信号を所定の出力伝送方式で出力する。ここでは、出力部282は、読出部281により順番に選択されたスロットを、CATV網30の伝送方式(出力伝送方式)で、CATV網30を介して加入者宅40-1~40-nに向けて送信する。
【0036】
具体的には、読出部281は、(a)上述の複数の放送信号のうちの選択中の放送信号において、出力伝送フレームを構成する複数のスロットのいずれでも異常が検知されていない場合、選択中の放送信号のスロットを選択し、(b)選択中の放送信号において複数のスロットのいずれかで異常が検知された場合、異常が検知されたスロットの含まれる出力伝送フレームの個別時間情報から当該異常が検知されたスロットまでのオフセット量(例えば各出力伝送フレーム内でのスロット番号)に基づいて、異常が検知されたスロットに対応する、複数の放送信号のうちの別の放送信号におけるスロットを特定して選択する。そして、出力部282は、選択されたスロットを所定の出力伝送方式で出力する。
【0037】
なお、各出力伝送フレーム内でのスロット番号で、異常が検知されたスロットが通知されることで、出力伝送フレーム内のすべてのスロットをバッファリングしなくても、出力伝送フレームの先頭からスロットをカウントすることで異常が検知されたスロットを特定できる。
【0038】
(B)本発明の第1実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第1実施形態の動作について説明する。図示しない放送局は、テレビ放送サービスを実現するための情報を含む圧縮符号化された映像および音声、ならびに、コンテンツダウンロードサービスを実現するためのコンテンツを含むデータを、MMT/TLVと呼ばれる方式に基づいて多重化する。多重化されたデータは、例えば、16APSK(Amplitude Phase Shift Keying)変調された後、放送信号として送信される。放送局から送信された放送信号は、図示しない放送衛星によって受信され、地上に向かって送信される。
【0039】
アンテナ10は、放送衛星から送信される放送信号(電波)を捕捉して電気信号に変換し、受信装置11に供給する。また、アンテナ14は、放送衛星から送信される放送信号を捕捉して電気信号に変換し、伝送装置20に供給する。なお、アンテナ10とアンテナ14は、異なる場所に配置されている。このため、例えば、アンテナ10が配置されている場所が、例えば、降雨等によって受信状況が良くない場合でも、アンテナ14は降雨の影響を受けない場合があり、これら2つのアンテナ10,14の受信状況は異なり、放送信号に発生する異常の状況(異常の有無、異常の度合など)も異なる。
【0040】
受信装置11は、アンテナ10から供給される放送信号に対して、例えば、16APSK復調を施し、得られたTLVパケットを送信装置12に供給する。送信装置12は、受信装置11から供給されるTLVパケットを、ネットワーク13に対応するパケット(例えば、IPパケット)に変換し、ネットワーク13を介して伝送装置20に供給する。
【0041】
伝送装置20では、アンテナ14およびネットワーク13を介して供給される放送信号を入力し、これらの放送信号から、異常の相対的に少ない放送信号を選択して出力する。
【0042】
より詳細には、受信部211は、アンテナ14から供給される放送信号を復調し、多重化されたデータを抽出してTLV SYNC部221に供給する。受信部211は、放送信号のレベルが低下している場合、または、放送信号が遮断された場合には、異常検出部241に異常を通知する。また、受信部211は、放送信号を復調する際に、MER(Modulation Error Ratio)およびBER(Bit Error Rate)を検出し、例えば、MERが22dB未満の場合、または、BERが2.0×10-4を超える場合には、異常検出部241に異常を通知する。
【0043】
受信部212は、ネットワーク13を伝送されるパケットを受信し、パケットに含まれているデータを取り出してTLV SYNC部222に供給する。受信部212は、例えば、受信したパケットが欠落していたり、リンク断が発生したり、IPタイムアウトが生じたりしている場合には、異常検出部242に異常を通知する。
【0044】
TLV SYNC部221,222は、受信部211,212から供給されるデータからTLVパケットを抽出し出力する。また、TLV SYNC部221,222は、TLVパケットの同期が外れている場合には、異常検出部241,242に異常をそれぞれ通知する。
【0045】
図3は、MMT/TLV方式の放送信号のフレーム構造を説明する図である。
【0046】
Typeが02のTLVパケットには、IP HeaderおよびUDP(User Datagram Protocol)とともにNTPが格納され、NTPにはUTCが格納されている。
図3に示すように、NTPが格納されたTLVパケットは、約33msec間隔で送信される。また、Typeが03のTLVパケットには、IP HeaderおよびUDPとともにVideoデータ等が格納されている。
【0047】
なお、前述したように、
図1に示すアンテナ10とアンテナ14は異なる場所に配置され、また、放送信号が異なる伝送経路を介して伝送されることから、TLV SYNC部221,222から出力されるTLVパケットは、時間的なずれを有している。
【0048】
そして、TLV-NTP検出部231,232は、TLV SYNC部221,222から出力されるTLVパケットからNTPを検出して制御部280に通知する。
【0049】
異常検出部241,242は、TLV SYNC部221,222から出力されるTLVパケットの異常(データ化け、パケット欠落、データロス、デコード不良など)をそれぞれ検出し、異常検出部241,242において異常を検出したTLVパケット、受信部211,212から異常が通知されたTLVパケット、TLV SYNC部221,222から異常が通知されたTLVパケットをそれぞれ特定する。
【0050】
なお、TLVパケットのデータ化けは、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)値によって検出される。また、データロスは、例えば、TLV LengthやMMTP内のPayload Lengthなどに基づいて検出される。パケット欠落は、例えば、ARIB TR-B39 12章 12.4,12.5に記載されているパケットID毎のMMTP連続性指標であるパケットシーケンス番号に基づいて、パケットの不連続として検出される。
【0051】
フォーマット変換部251,252は、TLV-NTP検出部231,232により検出されたTLV-NTPを使用して、TLV SYNC部221,222により出力されたTLVパケットを、出力部282の出力伝送方式に対応するフレーム構造となるように、バッファ261,262にそれぞれ書き込む。
【0052】
図4は、出力伝送方式の放送信号のフレーム構造を説明する図である。
図4に示す出力伝送方式のフレーム構造では、33msで定期的に、NTPを含むTLVパケット(受信したものと同じもの)が挿入され、NTPを含むTLVパケットから次のNTPを含むTLVパケットまでに、複数(例えば10個)の出力伝送フレームが設定されており、1つの出力伝送フレームは、複数(ここでは、120個)のスロットを含む。さらに、各出力伝送フレームの先頭には、NTP値のフィールドが設定される。このNTP値は、NTPを含むTLVパケットに含まれるNTPのUTC値と同一の値を有する。つまり、次のNTPを含むTLVパケットまでの複数の出力伝送フレームには、当該複数の出力伝送フレームの直前の、NTPを含むTLVパケットにおけるUTC値と同一のNTP値が設定される。
【0053】
出力伝送方式においては、放送信号のビットレートや、出力時の変調方式(16APSK,32APSKなど)の伝送容量などによって、1出力伝送フレームにおけるスロット数、スロットのサイズなどが規定されており、そのような出力伝送方式の仕様に対応したフレーム構造にフォーマット変換した後にスロット単位で放送信号が選択されている。これにより、スロット選択後にただちに放送信号の送出処理(搬送波の変調、パケット化など)を行うことができる。
【0054】
図2に戻り、制御部280は、異常の検出されたTLVパケットの含まれるスロットの、出力伝送フレーム先頭のNTPからのオフセット量を、異常の検出されたTLVパケットの伝送経路に対応するフォーマット変換部(フォーマット変換部251またはフォーマット変換部252)に問い合わせ、そのオフセット量を特定すると、そのオフセット量を読出部281に通知する。
【0055】
そして、読出部281は、制御部280の制御に応じて、バッファ261およびバッファ262のいずれか一方からスロット(具体的にはスロット内のデータ)を読み出し、出力部282に供給する。
【0056】
図5は、フォーマット変換後の放送信号におけるスロットの選択について説明する図である。具体的には、例えば
図5に示すように、読出部281は、現在選択している伝送経路(
図5では伝送経路#1)の現時点の出力伝送フレームにおいて異常が検出されなかった場合には、その出力伝送フレームのスロットを順番に読み出し、現在選択している伝送経路の現時点の出力伝送フレームにおいて異常が検出された場合には、通知されたオフセット量(ここではスロット番号)に基づいて異常の検出されたスロットを特定し、そのスロットについては、別の伝送経路(
図5では伝送経路#2)の現時点の出力伝送フレームにおける、対応するスロットを読み出す。
【0057】
なお、すべての伝送経路の出力伝送フレームのスロットが異常である場合には、再生の際に影響が少ないスロットを選択して読み出す。再生の際に影響が少ないとは、再生される映像や音声に対する擾乱が少ないことをいう。例えば、TLVのUDPチェックサムが異常である場合、MMTパケットエラーが生じている場合、MMTP内のシーケンス番号が異常である場合には、この順番で影響が少ない。
【0058】
読出部281によって読み出されたスロットは、出力部282に供給される。出力部282は、読出部281から供給されるスロットを、所定の出力伝送方式で、CATV網30を介して加入者宅40-1~40-nに放送信号として送信する。この放送信号は、加入者宅40-1~40-nに配置された加入者受信装置41(例えば、STB(Set Top Box)やテレビジョン受像機)によって受信され、加入者受信装置41や、加入者受信装置41に接続されたテレビジョン受像機で、放送信号に含まれる映像および音声が再生される。
【0059】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、出力伝送方式のフレーム構造におけるスロットを単位として放送信号が切り替えるため、放送信号が途絶せずに適切に切り替えられる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、複数の伝送経路について、出力伝送方式のフレーム構造で放送信号のデータをそれぞれバッファリングし、スロット単位で放送信号を選択しただちに出力が可能であり、TLVパケット単位で放送信号を選択した後に出力伝送方式のフレーム構造に変換する場合に比べ、TLVパケットごとの放送信号の選択の処理時間が不要となるため、伝送装置での遅延が短くなる。
【0061】
つぎに、
図6を参照して、第1実施形態における信号処理の流れの一例を説明する。
図6は、第1実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図2に示す伝送装置20に対して放送信号が入力されると、
図6に示すように、以下のステップが実行される。
【0062】
ステップS1では、受信部211,212は、放送信号を受信する処理を実行する。例えば、
図2の例では、受信部211は、アンテナ14から供給される放送信号を受信し、受信部212は、ネットワーク13から供給される放送信号を受信する。なお、受信部211は、放送信号のレベル低下、低MER、高BERなどの異常を検知すると、異常検出部241に通知する。また、受信部212は、パケット欠落、リンク断、IPタイムアウトなどの異常を検知すると、異常検出部242に通知する。
【0063】
ステップS2では、TLV SYNC部221,222は、放送信号に含まれるTLVパケットを抽出し、TLV-NTP検出部231,232は、NTPを含むTLVパケットを検出する。このようにして検出されたNTPは、制御部280に供給される。なお、このとき、TLV SYNC部221,222は、TLVパケットの同期が外れている場合には、異常検出部241,242に対して異常を通知する。
【0064】
ステップS3では、異常検出部241,242は、上述のTLVパケットの異常を検出する処理を実行するとともに、検出された異常(異常のあったパケットの識別情報、異常の種別など)を制御部280に通知する。
【0065】
ステップS4では、フォーマット変換部251,252は、抽出されたTLVパケットを、放送信号の時間差に応じてバッファリングしつつ、フォーマット変換後のフレーム構成でバッファ261,262に対して書き込む処理を実行する。
【0066】
より詳細には、例えば、制御部280は、TLV-NTP検出部231,232によって検出されるNTPを含むTLVパケットの検出タイミングのずれから2つの放送信号の時間差τを求める。そして、制御部280は、先行する放送信号に対応する個数のTLVパケットをフォーマット変換部251またはフォーマット変換部252にバッファリングさせる。なお、ネットワーク13を経由する放送信号は、ネットワーク13のトラフィックの状況等に応じて時間差τが時々刻々と変わるため、バッファリングされるパケット数は、ある程度の余裕(マージン)を持って設定されることが望ましい。
【0067】
ステップS5では、制御部280は、読出部281を制御し、バッファ261,262に格納されているスロットのうち、異常の影響が少ない方を選択して読み出させる。より詳細には、制御部280は、少なくとも一方が異常を有していない場合には異常を有しないスロットを選択して読み出させる。また、双方のスロットが異常を有する場合には、再生の際に影響が少ないスロットを選択して読み出させる。
【0068】
ここで、制御部280は、読み出し対象を提示する。より詳細には、2つのバッファ261,262のうち、読出部281が読み出し対象としているバッファを特定するための情報(例えば、バッファ261なら「伝送経路#1」、バッファ262なら「伝送経路#2」等)を図示しない表示部に表示する。
【0069】
ステップS6では、出力部282は、読出部281により順番に読み出された、NTPを含むTLVパケットおよび出力伝送フレーム内のスロット(スロットに含まれるTLVパケットなど)を所定の出力伝送方式で送出する。
【0070】
以上に説明したように、
図6に示す処理により、放送信号が切り替えつつ出力される。
【0071】
(C)本発明の第2実施形態の構成の説明
【0072】
つぎに、
図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、
図7において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する
【0073】
図7は、本発明の第1実施形態に係る伝送装置20Aを含む伝送システム1Aの構成例を示す図である。
【0074】
この伝送システム1Aでは、アンテナ14と同様のアンテナ15が、アンテナ14とは別の地点に設置されており、アンテナ15は、図示しない放送衛星から送信される放送信号を捕捉し、電気信号に変換して伝送装置20に供給する。
【0075】
また、第2実施形態では、伝送装置20Aは、アンテナ14およびアンテナ15から供給される放送信号をそれぞれ入力し、一方を選択して出力するとともに、選択中の放送信号に異常が生じた場合には、他方に切り替える動作を実行する。
【0076】
また、第2実施形態では、送信装置12Aは、送信装置12と同様の機能を有するが、放送信号に対応するパケットを常時は送信せず、送信要求のあったパケットのみを送信する。
【0077】
図8は、
図7に示す伝送装置20Aの詳細な構成例を示す図である。なお、
図8において、
図2と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。第2実施形態では、伝送装置20Aは、受信部212の代わりに、受信部211と同様の受信部211Aを備え、受信部211Aは、アンテナ15から供給される電気信号(RF信号)を入力し、復調処理を施し、得られたデータをTLV SYNC部222に供給する。
【0078】
さらに、伝送装置20Aは、送信要求部310と、受信部320とを備える。送信要求部310は、複数の伝送経路のうちの少なくとも1つである双方向通信の可能な伝送経路(ここでは、IPネットワークなどのネットワーク13)で、異常が検知されたパケットの送信要求を送信する。受信部320は、その双方向通信の可能な伝送経路で、送信要求されたパケットを受信する。そして、第2実施形態では、異常検出部241,242は、受信部320により受信されたパケットで、選択中の放送信号において異常が検知されたパケットを代替し、代替後に選択中の放送信号の異常の有無を判定する。つまり、代替パケットへのパケットの代替後も異常がある場合には、第1実施形態と同様に異常が検出される。
【0079】
(D)本発明の第2実施形態の動作の説明
【0080】
第2実施形態では、異常検出部241,242は、異常が検出された場合、異常の検出されたTLVパケットの回復(正常なTLVパケットへの差し替え)を試みる。具体的には、異常検出部241,242により異常が検出されたTLVパケットが制御部280に通知されると、制御部280は、そのTLVパケットの送信要求を、送信要求部310に送信装置12Aに向けて送信させる。
【0081】
送信装置12Aは、その送信要求を受信すると、その送信要求により指定されたTLVパケットを送信する。なお、その際、送信要求されるパケットは、上述のスロット番号で指定され、そのスロット番号のスロットに含まれるパケットが送信装置12Aから送信されるようにしてもよい。
【0082】
受信部320がそのTLVパケットを受信すると、制御部280は、そのTLVパケットを、異常を検出した異常検出部241または異常検出部242に供給し、その異常検出部241または異常検出部242は、そのTLVパケットで、異常を検出したTLVパケットを差し替える。その後、その異常検出部241または異常検出部242は、差し替え後のそのTLVパケットについて異常の有無を判定し、その判定結果に応じて、第1実施形態と同様に動作する。
【0083】
(E)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、前述した各実施形態では、伝送装置20,20Aは2つの放送信号を入力するようにしたが、3つ以上の放送信号を入力し、異常の影響が少ないスロットを選択して出力するようにしてもよい。
【0084】
また、以上の第1実施形態では、アンテナ14は伝送装置20に接続し、アンテナ10は受信装置11、送信装置12、および、ネットワーク13を介して伝送装置20に接続するようにしたが、これ以外の接続形態としてもよい。例えば、アンテナ10およびアンテナ14の双方を伝送装置20に接続したり、あるいは、アンテナ10およびアンテナ14の双方を受信装置、送信装置、および、ネットワークを介して伝送装置20に接続するようにしたりしてもよい。
【0085】
また、以上の各実施形態では、伝送装置20,20Aは、CATV網30などの伝送路を介して加入者宅40-1~40-nに放送信号を供給しているが、伝送装置20,20Aが同様の加入者宅40-1~40-nに配置され、伝送装置20,20Aが直接、加入者宅40-1~40-nの加入者受信装置41に放送信号を供給するようにしてもよい。
【0086】
また、以上の各実施形態では、放送信号は、MMT/TLV方式の放送信号であって、放送信号に含まれる基準時間情報は、NTPのUTCであり、フォーマット変換部251,252は、NTPのUTCの出現間隔を1フレームとし、当該1フレームを複数の出力伝送フレームに変換し、UTCの値を個別時間情報として複数の出力伝送フレームにそれぞれ付加し、複数のスロットは、それぞれ、1または複数のTLVパケットを含む。その代わりに、放送信号をMPEG-2 TS方式の放送信号とし、放送信号に含まれる基準時間情報としてTOT(Time Offset Table)またはPCR(Program Clock Reference)の時間情報を使用し、フォーマット変換部251,252は、TOTまたはPCRにより規定される一定期間を1フレームとし、当該1フレームを複数の出力伝送フレームに変換し、RTPまたはPCRの示す値を個別時間情報として複数の出力伝送フレームにそれぞれ付加するようにしてもよい。また、上記実施形態では、放送信号が衛星放送で広域に搬送されるものであるが、その代わりに、例えば地上デジタルテレビ放送方式のように地上の送信所(中継局)から広域に搬送されるものであってもよい。その場合、アンテナ10,14、受信装置11、受信部211などは、そのような放送信号の搬送方式に対応したものが使用される。
【0087】
また、上記実施形態において、衛星放送の変調方式としては、16APSKを例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、8PSK、または、32APSK等を用いたり、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を含む他の方式を用いたりするようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、伝送装置20,20Aへの放送信号の入力は、光通信によって行うようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、伝送装置20,20A(上流側の伝送装置)から出力された放送信号は、加入者受信装置41へ供給されているが、その代わりに、他の伝送装置20,20A(下流側の伝送装置)に供給される(つまり、他の伝送装置20,20Aへの入力として使用される)ようにしてもよい。
【0090】
その場合において、上流側の伝送装置20,20Aから放送信号を供給される下流側の伝送装置20,20Aは、上流側の伝送装置20,20Aから出力される放送信号を受信し、放送信号に含まれる基準時間情報が有効に受信されなかった場合(例えば、NTPを含むTLVパケットの欠落、破損などの場合)、出力伝送フレームに付加された個別時間情報から基準時間情報を復元し、復元した基準時間情報を含む放送信号を出力するようにしてもよい。
【0091】
また、その場合において、上述の第2実施形態と同様に、下流側の伝送装置20,20Aが、複数の伝送経路のうちの少なくとも1つである双方向通信の可能な伝送経路(ここでは、IPネットワークなどのネットワーク13)で、異常が検知されたパケットの送信要求を上流側の伝送装置20,20Aへ送信し、上流側の伝送装置20,20Aは、その送信要求を受信すると、送信要求されたパケットを下流側の伝送装置20,20Aへ送信し、下流側の伝送装置20,20Aは、その双方向通信の可能な伝送経路で、送信要求されたパケットを受信し、その受信されたパケットで、選択中の放送信号において異常が検知されたパケットを代替し、代替後に選択中の放送信号の異常の有無を判定するようにしてもよい。その際、送信要求されるパケットは、上述のスロット番号で指定され、そのスロット番号のスロットに含まれるパケットが再送されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、衛星放送による放送信号用の伝送装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,1A 伝送システム
10,14,15 アンテナ
11 受信装置
12,12A 送信装置
20,20A 伝送装置
30 CATV網
40-1~40-n 加入者宅
41 加入者受信装置
211,211A,212 受信部(入力手段の例)
221,222 TLV SYNC部
231,232 TLV-NTP検出部
241,242 異常検出部(検知手段の例)
251,252 フォーマット変換部(フォーマット変換手段の例)
261,262 バッファ
280 制御部
281 読出部(選択手段の一例)
282 出力部(出力手段の一例)
310 送信要求部(送信要求手段の一例)
320 受信部(受信手段の一例)