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特開2023-163917可変光減衰器及び可変光減衰システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163917
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】可変光減衰器及び可変光減衰システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20231102BHJP
   G02B 26/02 20060101ALI20231102BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231102BHJP
   G02B 6/02 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
G02F1/01 D
G02B26/02 B
G02F1/13 505
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075142
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501392361
【氏名又は名称】株式会社 オプトクエスト
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】古川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福光 賢
(72)【発明者】
【氏名】高畠 武敏
(72)【発明者】
【氏名】長山 さやか
【テーマコード(参考)】
2H088
2H141
2H250
2K102
【Fターム(参考)】
2H088EA32
2H088EA33
2H088HA18
2H088MA20
2H141MA02
2H141MB02
2H141MD12
2H141MD19
2H141ME01
2H141ME04
2H141ME06
2H141ME09
2H141MF28
2H141MZ13
2H250AC62
2H250AC64
2H250AC65
2H250AC66
2H250AC83
2H250AC94
2H250AC95
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA20
2K102DA01
2K102DA06
2K102DC08
2K102DD02
2K102EA25
2K102EB02
2K102EB04
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB22
2K102EB26
2K102EB29
(57)【要約】
【課題】複数のコアを伝搬する光の光量を個別に調整可能な可変光減衰器を簡易な構成で実現する。
【解決手段】可変光減衰器10は、複数のコアを持つ第1の光ファイバ41を伝搬する光が入射し、各コアを伝搬した光の光量を個別に調整して、複数のコアを持つ第2の光ファイバ42へと出射する。可変光減衰器10は、第1の光ファイバ41の複数のコアから空間中に放出された複数の光ビームを空間的に分離する分離光学系11,12と、この分離光学系11,12により分離された複数の光ビームの減衰量を個別に調整可能な光減衰手段15(a),15(b)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアを持つ第1の光ファイバを伝搬する光が入射し、各コアを伝搬した光の光量を個別に調整して、複数のコアを持つ第2の光ファイバへと出射するための可変光減衰器であって、
前記複数のコアから空間中に放出された複数の光ビームを空間的に分離する分離光学系と、
前記分離光学系により分離された複数の光ビームの減衰量を個別に調整可能な光減衰手段と、を備える
可変光減衰器。
【請求項2】
前記光減衰手段は、前記複数の光ビームを個別に遮光する複数の遮光素子を含み、
前記複数の遮光素子のそれぞれは、前記光ビームの遮光量を個別に調整可能に構成されている
請求項1に記載の可変光減衰器。
【請求項3】
前記遮光素子は、前記光ビームを透過しない不透明材料で形成されている
請求項2に記載の可変光減衰器。
【請求項4】
前記遮光素子は、前記光ビームの向きを偏向させことにより、前記光ビームの一部を光路外に切り出すことのできる光学部材で構成されている
請求項2に記載の可変光減衰器。
【請求項5】
前記光減衰手段は、前記複数の光ビームの透過率を個別に調整可能な液晶素子を含む
請求項1に記載の可変光減衰器。
【請求項6】
前記分離光学系は、
前記第1の光ファイバの各コアからの各光ビームが入射し、各光ビームの光路に角度差をもたせて分離幅を広げるための第1のレンズと、
前記第1のレンズを通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を実質的に平行に配列するための第2のレンズと、
前記第2のレンズを通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路の分離幅を狭めるための第3のレンズと、
前記第3のレンズを通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を前記2の光ファイバのそれぞれのコアに結合させる第4のレンズと、を含み、
前記光減衰手段は、
前記第2のレンズと前記第3のレンズの間に設けられている
請求項1に記載の可変光減衰器。
【請求項7】
前記分離光学系は、
前記第1の光ファイバの各コアからの各光ビームが入射し、各光ビームの光路に角度差をもたせて分離幅を広げるための第1のレンズと、
前記第1のレンズを通過した各光ビームが入射し、各光ビームを後段の反射素子に向けて集光するための第2のレンズと、
前記第2のレンズで集光された各光ビームを反射する反射素子と、
前記反射素子で反射されて前記第2のレンズを再度通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を前記2の光ファイバのそれぞれのコアに結合させる第3のレンズと、を含み、
前記光減衰手段は、
前記第2のレンズと前記反射素子の間に設けられている
請求項1に記載の可変光減衰器。
【請求項8】
前記反射素子は、各光ビームの一部を透過するものであり、
前記可変光減衰器は、
前記反射素子を透過した各光ビームの一部の光量を検出する光検出手段をさらに備え、
前記光検出手段で検出した光量に応じて、前記光減衰手段による各ビームの減衰量が個別に調整される
請求項7に記載の可変光減衰器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の可変光減衰器と、
前記第2の光ファイバの各コアを伝搬する光の光量を検出して、検出した光量に応じて前記光減衰手段を制御し、前記光減衰手段による各ビームの減衰量を個別に調整する制装置と、を備える
可変光減衰システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバ(MCF)等の複数のコアを持つ光ファイバに適した可変光減衰器及び可変光減衰システムに関する。より具体的には、本発明は、MCFの各コアから放出された光ビームの伝搬光量を個別に調整可能な可変光減衰器等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバネットワークにおけるトラヒック量の増大に対して、その要求に応えるべく空間分割多重伝送(SDM)が提唱され、その中の1つの方式として、マルチコアファイバ(MCF)が提案されている。MCFとしては、1本の光ファイバに複数の光伝搬コアを有するものが知られている。また、1つのコアを有するシングルモードファイバ(SMF)を複数本束ねたファイババンドルを、MCFの代用品として用いることも知られている。
【0003】
例えばMCFを用いた光伝送では、コネクタ接続時や融着接続時における各コアの損失差や、光がMCFを通過する際の各コアの損失差が積み重なり、光を長距離伝送した際にコア間での損失差が発生する。また、MC-EDFA(光増幅器)にてMCFを伝搬する光の光量を一括して増幅しようとすると、各コアへ入力される光の光量の違いにより各コアでの増幅率が異なる結果、各コアを伝搬する光の光量差が更に大きくなってしまうことも懸念される。このため、MCFの各コアを伝搬する光の光量を独立して調整するための可変光減衰器(VOA)が必要となる。
【0004】
ここで、既存技術を利用してMCFの各コアを伝搬する光の光量を個別に調整することを考える。この場合、Fan-outデバイスと呼ばれる分岐デバイスにてMCFの各コアの光を複数のSMFに結合させ、各SMFに設けられた可変光減衰器にて各光路の光量を個別に調整した後、Fan-inデバイスと呼ばれる合流デバイスにて複数のSMFをMCFの各コアへ再度結合させるという構成が考えられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-195036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにFan-outデバイス及びFan-inデバイスを利用した構成では、これらの物理的な導波路を持つデバイスが必要になることで、デバイス内での損失や、各デバイスにMCFやSMFを接続する際の損失により、光の伝搬損失が増大するという問題が発生する。また、MCFのコア数に対応する数の可変光減衰器を実装する必要があることから、装置全体が複雑化及び大型化し、製造コストも嵩むという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、複数のコアを伝搬する光の光量を個別に調整可能な可変光減衰器を簡易な構成で実現することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、従来技術が抱える問題を解決する手段について鋭意検討した結果、MCF等の各コアを伝搬する光を一旦空間中に放出して分離させるとともに、空間光学系内に各光ビームの光量を個別に調整可能な光減衰手段を内蔵することで、MCF用の可変減衰器を簡易な構成で実現できるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば従来技術の問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明の第1の側面は、可変光減衰器10に関する。本発明に係る可変光減衰器10は、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42の間に配置して用いられる。第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42は、それぞれ複数のコアを持つ光ファイバであり、その代表例はマルチコアファイバ(MCF)である。ただし、これらはMCFに限られず、1つのコアを持つシングルモードファイバ(SMF)を複数本束ねたバンドルファイバであってもよいし、MCFを複数本束ねたバンドルファイバであってもよい。また、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42の組み合わせは、MCF同士の組み合わせ又はバンドルファイバ同士の組み合わせに限られず、一方をMCFとし他方をバンドルファイバとした組み合わせとすることも可能である。本発明に係る可変光減衰器10は、第1の光ファイバ41を伝搬する光が入射し、各コアを伝搬した光の光量を個別に調整して、第2の光ファイバ42へと出射するための機能を有している。なお、「光量」とは、一定の面を一定時間内に通過する光のエネルギーの総量であり、光ファイバを伝搬する光信号の強さ(光パワー)を表す物理量である。
【0010】
可変光減衰器10は、分離光学系と光減衰手段を備える。分離光学系は、第1の光ファイバ41の複数のコアから空間中に放出された複数の光ビームを空間的に分離する。分離光学系は、例えば複数のレンズによって構成されている。分離光学系は、空間において複数の光ビームを分離するとともに、最終的には各光ビームを第2の光ファイバ42の各コアへと導くように構成されている。光減衰手段は、分離光学系により分離された複数の光ビームの減衰量を個別に調整可能なように構成されている。光減衰手段は、光ビームの一部を物理的に遮光することにより光ビームを減衰させるものであってもよいし、光ビームの透過率を調整可能な半透明材料によって形成されていてもよい。
【0011】
上記構成のように、本発明では、MCF等の各コアを伝搬する光を空間中に放出し、分離光学系によって各光ビームを分離する。そして、この分離光学系内に各光ビームの光量を個別に調整するための光減衰手段を設ける。これにより、例えばFan-outデバイス及びFan-inデバイスのような接続デバイスが不要になることから、光の伝搬損失を抑えることができる。また、本発明では、空間中において光ビームの光量を調整することとしており、光ファイバのコアを伝搬する光の光量を調整するような光学機器(個別の可変減衰器)が不要になる。その結果、装置全体を簡易かつコンパクトなものとすることができる。
【0012】
本発明に係る可変光減衰器10において、光減衰手段は、複数の光ビームを個別に遮光する複数の遮光素子15を含むこととしてもよい。この場合、複数の遮光素子15のそれぞれは、光ビームの遮光量を個別に調整可能に構成されている。例えば、遮光素子15の先端で光ビームのビーム幅の一部を遮光することで、光ビームは個別に減衰できる。また、遮光素子15が遮光するビーム幅の量を調整できるように、遮光素子15の動作をアクチュエーターによって制御すればよい。このように、遮光素子15を用いることで、光ビームの減衰量の調整を簡易な構成で行うことができる。
【0013】
本発明に係る可変光減衰器10において、遮光素子15(特に光ビームに触れる部位)は、光ビームを透過しない不透明材料で形成されていることとしてもよい。また、遮光素子15は、光ビームの向きを偏向させことにより、光ビームの一部を光路外に切り出すことのできる光学部材で構成されていてもよい。このように、遮光素子15を不透明材料又は偏向部材で構成することで、光ビームの減衰量の調整を簡易な構成で行うことができる。
【0014】
本発明に係る可変光減衰器10において、光減衰手段は、複数の光ビームの透過率を個別に調整可能な液晶素子19を含むこととしてもよい。液晶素子19によれば、各光ビームの透過領域の透過率を個別に調整できるため、コンパクトな構成で光ビームの減衰量の調整を行うことができる。
【0015】
本発明に係る可変光減衰器10において、分離光学系は、第1のレンズ11、第2のレンズ12、第3のレンズ13、及び第4のレンズ14を含むこととしてもよい。第1のレンズ11は、第1の光ファイバ41の各コアからの各光ビームが入射し、各光ビームの光路に角度差をもたせて分離幅を広げる。第2のレンズ12は、第1のレンズ11を通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を実質的に平行に配列する。第3のレンズ13は、第2のレンズ12を通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路の分離幅を狭める。第4のレンズ14は、第3のレンズ13を通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を第2の光ファイバ42のそれぞれのコアに結合させる。この場合において、光減衰手段は、第2のレンズ12と第3のレンズ13の間に設けられていることが好ましい。このように、複数のレンズによって分離光学系を構成することにより、各光ビームの伝搬損失を抑えることができる。
【0016】
本発明に係る可変光減衰器10において、分離光学系は、第1のレンズ(図3:第1のレンズ11)、第2のレンズ(図3:第5のレンズ16)、反射素子17、及び第3のレンズ(図3:第4のレンズ14)を含むこととしてもよい。第1のレンズ(11)は、第1の光ファイバ41の各コアからの各光ビームが入射し、各光ビームの光路に角度差をもたせて分離幅を広げる。第2のレンズ(16)は、第1のレンズ(11)を通過した各光ビームが入射し、各光ビームを後段の反射素子17に向けて集光する。反射素子17は、第2のレンズ(16)で集光された各光ビームを反射する。第3のレンズ(14)は、反射素子17で反射されて第2のレンズ(16)を再度通過した各光ビームが入射し、各光ビームの光路を2の光ファイバ42のそれぞれのコアに結合させる。この場合に、第2のレンズ(16)と反射素子17の間に設けられていることが好ましい。このように、反射素子17を用いることで可変光減衰器10全体をコンパクトにすることができる。また、反射素子17を用いることで光ビームの光路を折り返すことができるため、例えば第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42を隣同士に並べて結合することもできる。
【0017】
本発明に係る可変光減衰器10において、反射素子17は、各光ビームの一部を透過するものであってもよい。このような反射素子17の例はハーフミラーである。この場合、可変光減衰器10は、反射素子17を透過した各光ビームの一部の光量を検出する光検出手段をさらに備えることが好ましい。この場合、光検出手段で検出した光量に応じて、光減衰手段による各ビームの減衰量が個別に調整されることとなる。このように、反射素子17の透過した一部の光をモニタ光として利用することで、可変光減衰器10の制御を簡易な構成で行うことができる。
【0018】
本発明の第2の側面は、可変光減衰システム100である。本発明に係る可変光減衰システム100は、可変光減衰器10と制御装置30を備える。可変光減衰器10は、第1の側面に係るものであり、その構成は前述したとおりである。制御装置30は、第2の光ファイバ42の各コアを伝搬する光の光量を検出して、検出した光量に応じて光減衰手段を制御し、光減衰手段による各ビームの減衰量を個別に調整する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のコアを伝搬する光の光量を個別に調整可能な可変光減衰器を簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、可変光減衰システムの一実施形態を模式的に示している。
図2図2は、可変減衰器の第1の実施形態を模式的に示している。
図3図3は、可変減衰器の第2の実施形態を模式的に示している。
図4図4は、可変減衰器の第3の実施形態を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0022】
図1は、可変光減衰システム100の全体構成を示したものである。可変光減衰システム100は、主に、複数のコアを持つ第1の光ファイバ41を伝搬する光を個別に減衰させ、同様に複数のコアを持つ第2の光ファイバ42に結合させる。本実施形態では、第1及び第2の光ファイバ41,42は、それぞれマルチコアファイバ(MCF)である。
【0023】
図1に示されるように、可変光減衰システム100は、可変光減衰器10、タップ20、及び制御装置30を備える。可変光減衰器10は、本システムの中核を担うものであり、第1の光ファイバ41の各コアを伝搬する光を個別に減衰させる機能を持つ。可変光減衰器10の詳細については後述する。タップ20(光カプラともいう)は、第2の光ファイバ42の各コアを伝搬する光量の一部をそれぞれシングルモードファイバ(SMF)43に分岐させる。例えば、SMF43は第2の光ファイバ42のコア数と同じ数設けられており、例えば第2の光ファイバ42が4コアである場合にはSMF43も4本設けられる。SMF43はそれぞれ制御装置30に接続されている。制御装置30は、各SMF43を伝搬する光の光量に基づいて、可変光減衰器10をフィードバック制御する。すなわち、制御装置30は、図示は省略するが、各SMF43に分岐された光の光量を検出する光検出器と、検出した光量から第2の光ファイバ42の各コアを伝搬する光の光量を推定して、その推定値に基づいて可変光減衰器10へ制御信号を送出する演算装置(PCなど)を含む。タップ20及び制御装置30については公知のものをそれぞれ利用すればよい。
【0024】
続いて、可変光減衰器10の構成について詳しく説明する。図2は、可変光減衰器10の第1の実施形態を示している。図2に示されるように、本実施形態に係る可変光減衰器10は、複数のレンズ11~14と複数の遮光素子15を含んで構成されている。なお、本実施形態では、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42については、それぞれ4つのコアを有するMCFを例に挙げて説明する。ただし、第1及び第2の光ファイバ41,42のコア数は、4つに限定されず、例えば2コアや、5コア、6コア、7コアであってもよい。
【0025】
可変光減衰器10の入力側の端部には第1の光ファイバ41の出射端が接続されている。可変光減衰器10の内部は中空となっていることから、第1の光ファイバ41の出射端からは、第1の光ファイバ41の各コアを伝搬している光が可変光減衰器10内に放出される。本願明細書では、このように空間を伝搬する光を「光ビーム」と称している。第1の光ファイバ41の各コアからの光ビームは、ビーム径が拡大するように拡散しながら、可変光減衰器10内へと放出される。
【0026】
第1の光ファイバ41から可変光減衰器10内に放出された複数の光ビームは、すべて第1のレンズ11に入射する。第1のレンズ11は、第1の光ファイバ41の出射端に前側焦点位置を持つコリメートレンズである。このため、もし第1のレンズ11の光軸上に光ビームが入射した場合、その光ビームはコリメート化(平行光化)されて第1のレンズ11の光軸に沿って直進することとなるが、図2に示された例のように、第1のレンズ11の光軸からずれた位置に光ビームが入射すると、その光ビームは、コリメート化されるとともに、第1のレンズ11の光軸に対して角度差を持って直進する。このため、第1の光ファイバ41の各コアから出射された光ビームは、第1のレンズ11を通過した後、この第1のレンズ11の後側焦点位置において交差して、その後は次第に空間的に分離されることとなる。これにより、各光ビームの分離幅が拡大する。このように、第1のレンズ11は、複数の光ビームのコリメート化する機能と分離幅を拡大する機能を持つ。
【0027】
第1のレンズ11の後段には第2のレンズ12が設けられている。第2のレンズ12は集光レンズであり、第2のレンズ12の前側焦点位置は、第1のレンズ11の後側焦点位置(すなわち各光ビームの交点)に位置合わせされている。これにより、第1のレンズ11を通過した複数の光ビームは、十分に分離された後、第2のレンズ12に入射して、この第2のレンズ12によって実質的に平行に整列されつつ集光及び拡散していく。すなわち、図2に示されるように、第2のレンズ12を通過した各光ビームは、ビーム径が次第に縮小するように集光され、第2のレンズ12の後側焦点位置において収束した後、再度ビーム径が拡大するように拡散しながら空間内を進み、第3のレンズ13へと入射する。このとき、第2のレンズ12と第3のレンズ13の間の空間において、各光ビームの光軸は実質的に平行となる。
【0028】
また、第2のレンズ12としては、第1のレンズ11よりも焦点距離が長い集光レンズが用いられる。すなわち、第2のレンズ12と第3のレンズ13の間の各光ビームの間隔は、第1のレンズ11(コリメートレンズ)と第2のレンズ12(集光レンズ)の焦点距離の倍率で変化させることができる。例えば、第2のレンズ12として第1のレンズ11の焦点距離の10倍の焦点距離を持つ集光レンズを採用すれば、第2のレンズ12と第3のレンズ13の間の各光ビームの間隔を、第1の光ファイバ41における各コア間の間隔に対して10倍に拡げることができる。各光ビームの間隔を十分に確保する観点から、第2のレンズ12は、第1のレンズ11よりも2倍以上、5倍以上、又は10倍以上の焦点距離を持つことが好ましい。
【0029】
図2に示されるように、各光ビームの焦点(収束点)を繋ぐ線を対称軸として、第1のレンズ11及び第2のレンズ12の組み合わせと線対称をなす位置に、第3のレンズ13及び第4のレンズ14の組み合わせが配置されている。これにより、第1から第4のレンズ11~14によって、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42を結合するリレー光学系が構成されている。
【0030】
具体的に説明すると、第2のレンズ12の後段には第3のレンズ13が設けられている。第3のレンズ13はコリメートレンズであり、第3のレンズ13の前側焦点位置は、第2のレンズ12の後側焦点位置(すなわち各光ビームの収束点)に位置合わせされている。図2に示された例のように、第2のレンズ12を通過した光ビームは、第3のレンズ13の光軸からずれた位置に入射すると、コリメート化されるとともに、第3のレンズ13の光軸に対して角度差を持って直進する。その結果、第3のレンズ13を通過した複数の光ビームは、次第に分離幅を縮小させながら、第3のレンズ13の後側焦点位置において交差して、その後は再度空間的に分離される。これにより、各光ビームの分離幅は縮小する。このように、第3のレンズ13は、複数の光ビームのコリメート化する機能と分離幅を縮小する機能を持つ。
【0031】
第3のレンズ13の後段には第4のレンズ14が設けられている。第4のレンズ14は集光レンズであり、第4のレンズ14の前側焦点位置は、第3のレンズ13の後側焦点位置(すなわち各光ビームの交点)に位置合わせされている。また、第4のレンズ14の後側焦点位置は、第2の光ファイバ42の入射端に位置合わせされている。これにより、図2に示されるように、第4のレンズ14を通過した光ビームは、この第4のレンズ14によって実質的に平行に整列されつつ、第2の光ファイバ42の各コアへ集光される。このとき、第4のレンズ14と第2の光ファイバ42の間の空間において、各光ビームの光軸は実質的に平行となる。このようにして、第1から第4のレンズ11~14は、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42とを光学的に結合する空間光学系をなす。
【0032】
ここで、図2に示されるように、第2のレンズ12と第3のレンズ13の間には、複数の光ビームの光路上に、それぞれ遮光素子15が配置されている。遮光素子15は、可変光減衰器10の空間中を伝搬する光ビームの数、すなわち第1及び第2の光ファイバ41,42のコア数と同じ数だけ設けられている。図2では、2つの遮光素子15(a),(b)が描画されているが、実際には第1及び第2の光ファイバ41,42は4コアであることから、遮光素子15も4つ設けられていることになる。
【0033】
遮光素子15は、光ビームを個別に遮光することができ、光ビームの遮光量を個別に調整できるように構成されている。このように、遮光素子15は、光ビームの一部を遮光することにより、光ビームの光量を減衰させることを目的として用いられるものである。具体的には、遮光素子15は、光ビームのビーム幅の一部のみを遮光するとともに、その遮するビーム幅を調整することができるように構成されている。これにより、各遮光素子15によって各光ビームの減衰量が個別に調整される。なお、本発明において遮光素子15によって光ビームを完全に遮断することは想定されていないが、用途によっては光ビームを完全に遮断ことも可能である。
【0034】
遮光素子15は、前述したようにビーム幅の一部を遮るものであるから、各光ビームの光路上のうち、ビーム幅が出来るだけ広い位置に設けておくことがこのましい。すなわち、図2に示されるように、第2のレンズ12と第3のレンズ13の中間地点に各光ビームの焦点が存在し、この焦点において各光ビームのビーム幅は最も小さくなる。一方で、第2のレンズ12と第3のレンズ13に近いほど各光ビームのビーム幅は大きくなる。このため、各遮光素子15は、各ビームの焦点よりも第2のレンズ12寄りの位置又は第3のレンズ13寄りの位置に設けるとよい。例えば、複数の遮光素子15(図2に示した例では4つの遮光素子15)のうち、半数を第2のレンズ12寄りの位置に設け、残りの半数を第3のレンズ13寄りの位置に設けることが好ましい。
【0035】
遮光素子15は、光ビームに接触する先端部位が断面鋭角に形成されており、光ビームの遮光量を微調整することができる。遮光素子15、少なくともその先端部位は、光ビームの一部を遮光できるように、不透明材料又は光反射材料で形成されていることが好ましい。不透明材料で形成された遮光素子15は、光ビームを吸収することにより当該光ビームを不透過とするものである。不透明材料は、光ビームに対する透過率が例えば0~10%又は0~5%となるものを採用すればよい。また、光反射材料で形成された遮光素子15は、光ビームの向きを偏向させことにより、光ビームの一部を光路外に切り出すものである。光ビームの偏光方向は、他の光ビームと干渉しない方向に調整されている好ましい。
【0036】
また、図2に示されるように、遮光素子15には、アクチュエーターが備え付けられており、このアクチュエーターによって遮光素子15を動作させることによって光ビームの遮光量が変化する。ただし、遮光素子15を光ビームの光軸に対して垂直に挿入すると、光ビームの光量が急激に減衰し、その減衰量の微調整が困難になる。このため、遮光素子15は光ビームの光軸に対して斜め方向から挿入することが好ましい。このような観点から、本実施形態では、遮光素子15を動作させるアクチュエーターとして、直線運動機構ではなく、遮光素子15を回動させる回転運動機構が採用されている。これにより、図2に示されるように、遮光素子15の先端部位は、光ビームの光軸に対して斜め方向から挿入されることとなる。このような回転運動機構の代表例はモータである。また、遮光素子15のアクチュエーターの動作は、前述した制御装置30(図1参照)からの制御信号によってそれぞれ個別に制御されている。このように、個別制御可能なアクチュエーターを備えた遮光素子15を複数の光ビームの光路にそれぞれ設けることで、光ビームの遮光量(減衰量)を個別に調整することができる。
【0037】
続いて、図3を参照して、本発明に係る可変光減衰器10の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については、前述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行い、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0038】
図3に示した第2の実施形態は、図2に示した第1の実施形態における第2のレンズ12及び第3のレンズ13の機能を、第5のレンズ16及び反射素子17で代替したものである。すなわち、第2の実施形態では、第2のレンズ12及び第3のレンズ13(図2参照)の機能を第5のレンズ16(図3参照)一枚によって実現するために、各光ビームの焦点(収束点)に反射素子17を配置している。
【0039】
具体的に説明すると、第1の光ファイバ41の各コアから放出された光ビームは、それぞれ第1のレンズ11を通過すると、この第1のレンズ11によってコリメート化されるとともに、各光ビームの間隔が分離しながら第5のレンズ16へと入射する。各光ビームは、この第5のレンズ16によって平行に配列されるとともに集光される。このため、この側面において第5のレンズ16は、図2に示した第2のレンズ12と同様に、集光レンズとして機能する。第5のレンズ16の後側焦点位置には反射素子17が配置されている。このため、第5のレンズ16を通過した各光ビームは、反射素子17の表面にて集光されるともに、反射素子17表面にて反射して、再び第5のレンズ16に入射する。各光ビームは、第5のレンズ16に再度入射すると、この第5のレンズ16によってコリメート化されるとともに、各光ビームの間隔を狭めながら第4のレンズ14へと入射する。このため、この側面において第5のレンズ16は、図2に示した第3のレンズ13と同様に、コリメートレンズとして機能する。各光ビームは、第4のレンズ14により再び集光されて、第2の光ファイバ42の各レンズへと導かれる。
【0040】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数の光ビームのそれぞれの光路上に遮光素子15が設けられている。遮光素子15は、第5のレンズ16と反射素子17の間に設けられる。なお、図3に示されるように、遮光素子15は、第5のレンズ16を通過した光ビームが反射素子17に到達するまでの間の光路(往路)に設けられていてもよいし、反射素子17を反射した光ビームが第5のレンズ16に再び入射するまでの間の光路(復路)に設けられていてもよい。このように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の光学的機能を実現できる。
【0041】
反射素子17は、光ビームの全光量を反射するものであってもよいし、光ビームの光量の一部を反射し残りを透過するいわゆるハーフミラーであってもよい。反射素子17としてハーフミラーを採用する場合、図3に示されるように、反射素子17を透過した光ビームの一部を受光素子18によって検出することとしてもよい。受光素子18は、光ビームの数と同数で配置される。図3に示した例では、受光素子18(a)(b)は2つのみ描画されているが、実際には4本の光ビームに対応するために4つの受光素子18が設けられることとなる。受光素子18としては、光の光量又は強度を電気信号に変換する一般的なフォトダイオード(PD)を採用すればよい。各受光素子18によって検出された電気信号は、制御装置30(図1参照)に伝達されて、遮光素子15の動作の個別制御に利用される。なお、図3に示されるように、可変光減衰器10内に受光素子18を内蔵する場合には、図1に示したタップ20やシングルモードファイバ43は省略することができる。
【0042】
続いて、図4を参照して、本発明に係る可変光減衰器10の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態についても、前述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行い、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
【0043】
図3に示した第3の実施形態は、図2に示した第1の実施形態における複数の遮光素子15の機能を、一つの液晶素子19で代替したものである。すなわち、第3の実施形態では、液晶素子19を全ての光ビームが通過する位置に設けて、各光ビームの透過領域ごとに液晶素子19の透過率を制御することで、各光ビームの減衰量を個別に調整することとしている。
【0044】
なお、液晶素子19としては、領域ごとに光の透過率を制御可能な一般的なものを用いればよい。具体的には、液晶素子19は、偏光方向の異なる2枚の偏光板の間に、透明電極付きのガラス基板が両面に積層された液晶層が配置されている。電極間に電圧をかけるとその間の液晶層において液晶分子の向きが変わる。これにより、液晶分子の動きと2枚の偏光板の偏光方向を組み合わせによって光の透過率を調整することができる。図3に示されるように、液晶素子19は、各光ビームの焦点、すなわち第2のレンズ12の後側焦点位置に配置することが好ましい。ただし、液晶素子19を各ビームの焦点よりも第2のレンズ12寄りの位置又は第3のレンズ13寄りの位置に配置することも可能である。
【0045】
このように液晶素子19を複数の光ビームの減衰量を個別に調整するための光減衰手段として用いることができる。この実施形態においては、光ビームごとに遮光素子15を配置する必要がないことから、可変光減衰器10全体の構成をコンパクト化することができる。
【0046】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0047】
10…可変光減衰器 11…第1のレンズ
12…第2のレンズ 13…第3のレンズ
14…第4のレンズ 15…遮光素子(光減衰手段)
16…第5のレンズ 17…反射素子
18…受光素子(光検出手段) 19…液晶素子(光減衰手段)
20…タップ 30…制御装置
41…第1の光ファイバ 42…第2の光ファイバ
43…シングルモードファイバ 100…可変光減衰システム
図1
図2
図3
図4