(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163920
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】推定装置、学習装置、および方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/08 20230101AFI20231102BHJP
G01V 1/28 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G06N3/08
G01V1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075149
(22)【出願日】2022-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022 EAGE(European Association of Geoscientists and Engineers)83rd EAGE Annual Conference and Exhibition 6-9 JUNE 2022 投稿日 令和4年1月14日
(71)【出願人】
【識別番号】515130201
【氏名又は名称】株式会社Preferred Networks
(71)【出願人】
【識別番号】000005913
【氏名又は名称】三井物産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩切 秀規
(72)【発明者】
【氏名】水野 尚人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 僚
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 政人
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB01
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105GG06
2G105LL05
(57)【要約】
【課題】観測対象の推定に関するユーザの負担を軽減して、地質学的に妥当性が高い地下構造モデルを推定すること。
【解決手段】実施形態に係る推定装置は、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、地下構造に関する観測値と学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間における潜在変数を生成し、前記潜在変数と学習済みの生成モデルとを用いて、地下構造モデルを生成し、前記地下構造モデルに対する物理シミュレーションにより、前記地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成し、前記模擬データと前記観測値とに基づいて評価値を算出し、前記評価値に基づいて、前記潜在変数を更新し、前記更新された潜在変数に基づいて生成された前記地下構造モデルを出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備える推定装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
地下構造に関する観測値と学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間における潜在変数を生成し、
前記潜在変数と学習済みの生成モデルとを用いて、地下構造モデルを生成し、
前記地下構造モデルに対する物理シミュレーションにより、前記地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成し、
前記模擬データと前記観測値とに基づいて評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、前記潜在変数を更新し、
前記更新された潜在変数に基づいて生成された前記地下構造モデルを出力する、
推定装置。
【請求項2】
前記更新された潜在変数と前記生成モデルとを用いて、新たな地下構造モデルを生成し、
前記新たな地下構造モデルに対する物理シミュレーションにより、前記地下構造に関する観測値を模擬的に示す新たな模擬データを生成し、
前記新たな模擬データと前記地下構造に関する観測値とに基づいて、前記観測値と前記新たな模擬データとの差異に関する新たな評価値を算出し、
前記新たな評価値に基づいて、前記潜在変数を更新する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記学習済みの生成モデルは、複数の地下構造モデルを学習データとして用いて学習されたオートエンコーダに含まれるデコーダに対応する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記学習済みのエンコーダは、学習データに対する前記物理シミュレーションにより生成された計算値を学習データとして用い、かつ前記学習データを教師データとして用いて、学習前のエンコーダの後段に前記学習済みの生成モデルを接続した構造推定モデルを学習することにより生成される、
請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項5】
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備える推定装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
地下構造に関する観測値と学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間における潜在変数を出力し、
前記潜在変数と学習済みの生成モデルとを用いて、地下構造モデルを生成し、
前記地下構造モデルに対する物理シミュレーションにより、前記地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成し、
前記模擬データと前記観測値に基づいて評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、前記地下構造モデルを更新する、
推定装置。
【請求項6】
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備える学習装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
観測対象に関して異なる構造を示す複数の構造モデルを用いてオートエンコーダを学習することにより、前記複数の構造モデル各々を潜在空間における複数の潜在変数各々に変換するための第1エンコーダと、前記複数の潜在変数各々の入力により前記複数の構造モデル各々を生成するデコーダと、を生成し、
前記複数の構造モデル各々に対する物理シミュレーションの実行により、前記複数の構造モデルに対応し、前記構造に関する観測値を模擬的に示す複数の模擬データを生成し、
前記複数の構造モデルと前記複数の模擬データとを用いて、学習前の第2エンコーダの後段に学習済みの前記デコーダを接続した構造推定モデルを学習することにより、前記構造に関する観測値のデータを前記潜在変数に変換する前記第2エンコーダを生成する、
学習装置。
【請求項7】
前記観測対象は、地下であって、
前記構造は、地下構造であって、
前記物理シミュレーションは、波動伝播シミュレーションであって、
前記構造モデルは、疑似的な地下構造モデルであって、
前記観測値のデータは、地震波のデータである、
請求項6に記載の学習装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の学習装置を用いて前記第2エンコーダと前記デコーダを生成する方法。
【請求項9】
請求項1乃至3および請求項5のうちいずれか一項に記載の推定装置を用いて前記地下構造モデルを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、推定装置、学習装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下探査手法のひとつである地震探査では、例えば、地上で人工的に地震を起こすことにより、地下地層境界において反射された反射波や臨界屈折した屈折波が、地震波として観測される。次いで、観測された地震波のデータ(以下、観測データと呼ぶ)を再現するように、地下の地震波伝播速度構造を示すモデル(以下、地下構造モデルと呼ぶ)が、逆問題における最適解を求める手続きを経て推定される。このとき、地震波動方程式の数値解法に基づくフルウェーブフォームインバージョン(Full Waveform Inversion:以下、FWIと呼ぶ)という手法が用いられることがある。FWIは、例えば、地下構造モデルを仮定して地震シミュレーションを行い、シミュレーション結果と観測データとの誤差を小さくするように、地下構造モデルを反復的に修正していくことによって、最適な地下構造モデルを得る。しかし、従来のFWIでは、地下構造モデルの最適化において、大域的な最適解ではなく局所解に陥りやすい。このことからFWI実施の際に予め用意する初期解としての地下構造モデルは最適解に限りなく近いものであることが要求され、初期解の選択のためにヒューリスティックス(heuristic:経験則)および/または観測データに対する地下構造の豊富な事前知識が必要となる。そして事前知識が乏しい場合には地下構造モデルの推定精度が悪化する、などの問題がある。
【0003】
また、従来、上記逆問題の解法として、深層学習による学習済みのニューラルネットワーク(以下、DNN(Deep Neural Network)と呼ぶ)モデルを用いた地震波形インバージョンがある。DNNによる地震波形インバージョンは、観測データをDNNに入力することにより、地下構造モデルを推定する。このとき、DNNにより推定された地下構造モデルは、観測データにより検証されない。このため、DNNにより推定された地下構造モデルは、観測データに対する地下構造モデルの妥当性、例えば物理学的裏付けが弱いという問題がある。
【0004】
また、従来、逆問題の解法として、例えば、確率分布の変数変換則を用いたノーマライジングフロー(Normalizing Flow:正規化流)または潜在空間最適化(以下、LSO(Latent Space Optimization)と呼ぶ)を用いる手法がある。地下探査に関する逆問題へのこれらの手法の適用は、観測データと地下構造とは物理学的な関係があることと、初期解を設定するために地震シミュレーションに対する疑似的な逆写像の存在が要求されるため、困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】An overview of full-waveform inversion in exploration geophysics、Virieux,J. et al.、GEOPHYSICS(2009),74(6):WCC1-WCC26、http://dx.doi.org/10.1190/1.3238367.
【非特許文献2】Practical deep learning inversion using neural architecture search and a flexible training dataset generator、T.Shibayama,N.Mizuno, H.Kusano,A.Kinoshita,M.Minegishi,R.Sakamoto,K.Hasegawa and F.Kachi、Conference Proceedings, 82nd EAGE Annual Conference & Exhibition,Oct 2021, Volume 2021,pp.1-5、https://doi.org/10.3997/2214-4609.202112777.
【非特許文献3】Trumpets: Injective Flows for Inference and Inverse Problems、Konik Kothari, AmirEhsan Khorashadizadeh, Maarten de Hoop, Ivan Dokmanic’、https://arxiv.org/abs/2102.10461、20 Feb 2021.
【非特許文献4】Sample-Efficient Optimization in the Latent Space of Deep Generative Models via Weighted Retraining、Austin Tripp, Erik Daxberger, Jose’ Miguel Herna’ndez-Lobato、https://arxiv.o 20 Feb 2021rg/abs/2006.09191、 Tue, 16 Jun 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、観測対象の推定に関するユーザの負担を軽減して、地質学的に妥当性が高い地下構造モデルを推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態にかかる推定装置は、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、地下構造に関する観測値と学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間における潜在変数を生成し、前記潜在変数と学習済みの生成モデルとを用いて、地下構造モデルを生成し、前記地下構造モデルに対する物理シミュレーションにより、前記地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成し、前記模擬データと前記観測値とに基づいて評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記潜在変数を更新し、前記更新された潜在変数に基づいて生成された前記地下構造モデルを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる推定装置を有する探査システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプロセッサにおける機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係り、推定装置により実行される地下構造推定処理の概要を、学習装置により実行される学習の概要とともに示す概要図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る地下構造推定処理における手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係り、推定装置により実行される地下構造推定処理の概要を、学習装置により実行される学習の概要とともに示す概要図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係り、学習装置に搭載されたプロセッサにおける機能ブロックの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係り、第1学習部により学習される変分オートエンコーダの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係り、第2学習部により学習される構造推定モデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(実施形態)
図1は、本実施形態にかかる推定装置3を有する探査システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、探査システム1は、推定装置3と、通信ネットワーク5を介して推定装置3に接続された取得装置7と、通信ネットワーク5を介して推定装置3に接続された外部装置9Aと、デバイスインタフェース39を介して接続された外部装置9Bと、を備えてもよい。探査システム1は、観測対象に対して音波、電磁波、放射線などを出力し、観測対象の内部を伝播した波の応答に基づいて当該観測対象の構造を探査するシステムであってもよい。構造の一部として、例えば、内部構造がある。取得装置7は、例えば、観測対象に対して音波、電磁波などを出力し、観測対象の内部で反射し伝播した反射波を、観測データとして取得する装置である。推定装置3は、反射波に基づいて、当該内部構造における物性値の空間分布を推定してもよい。観測対象は、例えば、地下、柱や橋などの人工構造物、雲、生体などである。探査システム1は、例えば、非破壊検査、構造物に対する音波診断、エコー検査、潜水艦ソナー、リモートセンシングなどに適用可能である。以下、説明を具体的にするために、観測対象は、地下であるものとして説明する。このとき、推定装置3は、地下の内部構造における物性値の空間分布(以下、地下構造モデルと呼ぶ)を推定してもよい。物性値とは、例えば、地震波伝播速度である。
【0011】
実施形態における各装置(推定装置3)の一部又は全部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が実行するソフトウェア(プログラム)の情報処理で構成されてもよい。ソフトウェアの情報処理で構成される場合には、前述した実施形態における各装置の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェアを、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的な記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)に収納し、コンピュータ30に読み込ませることにより、ソフトウェアの情報処理を実行してもよい。また、通信ネットワーク5を介して当該ソフトウェアがダウンロードされてもよい。さらに、ソフトウェアの処理の全部又は一部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路に実装されることにより、当該ソフトウェアによる情報処理がハードウェアにより実行されてもよい。
【0012】
ソフトウェアを収納する記憶媒体は、光ディスク等の着脱可能なものでもよいし、ハードディスク、メモリ等の固定型の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ内部に備えられてもよいし(主記憶装置、補助記憶装置等)、コンピュータ外部に備えられてもよい。
【0013】
推定装置3は、コンピュータ30と、デバイスインタフェース39を介してコンピュータ30に接続された外部装置9Bと、を有する。また、取得装置7は、デバイスインタフェース39を介してコンピュータ30に接続されてもよい。コンピュータ30は、一例として、プロセッサ31と、主記憶装置(メモリ)33と、補助記憶装置(メモリ)35と、ネットワークインタフェース37と、デバイスインタフェース39と、を備える。推定装置3は、プロセッサ31と、主記憶装置33と、補助記憶装置35と、ネットワークインタフェース37と、デバイスインタフェース39とがバス41を介して接続されたコンピュータ30として実現されてもよい。なお、コンピュータ30は、取得装置7に搭載されてもよい。
【0014】
図1に示すコンピュータ30は、各構成要素を一つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、
図1では、1台のコンピュータ30が示されているが、ソフトウェアが複数台のコンピュータにインストールされて、当該複数台のコンピュータそれぞれがソフトウェアの同一の又は異なる一部の処理を実行してもよい。この場合、コンピュータそれぞれがネットワークインタフェース37等を介して通信して処理を実行する分散コンピューティングの形態であってもよい。つまり、本実施形態における推定装置3は、1又は複数の記憶装置に記憶された命令を1台又は複数台のコンピュータが実行することで後述の各種機能を実現するシステムとして構成されてもよい。また、端末から送信された情報は、クラウド上に設けられた1台又は複数台のコンピュータで処理され、この処理結果は、表示装置などの端末に送信するような構成であってもよい。
【0015】
本実施形態における推定装置3の各種演算は、1又は複数のプロセッサを用いて、又はネットワークを介した複数台のコンピュータを用いて、並列処理で実行されてもよい。また、各種演算が、プロセッサ内に複数ある演算コアに振り分けられて、並列処理で実行されてもよい。また、本開示の処理、手段等の一部又は全部は、ネットワークを介してコンピュータ30と通信可能なクラウド上に設けられたプロセッサ及び記憶装置の少なくとも一方により実行されてもよい。このように、本実施形態における後述の各種は、1台又は複数台のコンピュータによる並列コンピューティングの形態であってもよい。
【0016】
プロセッサ31は、コンピュータ30の制御装置及び演算装置を含む電子回路(処理回路、Processing circuit、Processing circuitry、CPU、GPU、FPGA、ASIC等)であってもよい。また、プロセッサ31は、汎用プロセッサ、特定の演算を実行するために設計された専用の処理回路又は汎用プロセッサと専用の処理回路との両方を含む半導体装置のいずれであってもよい。プロセッサ31は、光回路を含むものであってもよいし、量子コンピューティングに基づく演算機能を含むものであってもよい。
【0017】
プロセッサ31は、コンピュータ30の内部構成の各装置等から入力されたデータやソフトウェア(プログラム)に基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を各装置等に出力することができる。プロセッサ31は、コンピュータ30のOS(Operating System)や、アプリケーション等を実行することにより、コンピュータ30を構成する各構成要素を制御してもよい。
【0018】
本実施形態における推定装置3は、1又は複数のプロセッサ31により実現されてもよい。ここで、プロセッサ31は、1チップ上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよいし、2つ以上のチップあるいは2つ以上のデバイス上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよい。複数の電子回路を用いる場合、各電子回路は有線又は無線により通信してもよい。
【0019】
主記憶装置33は、プロセッサ31が実行する命令及び各種データ等を記憶する記憶装置であり、主記憶装置33に記憶された情報がプロセッサ31により読み出される。補助記憶装置35は、主記憶装置33以外の記憶装置である。なお、これらの記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとし、半導体のメモリでもよい。半導体のメモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリのいずれでもよい。本実施形態における推定装置3において用いられる各種データを保存するための記憶装置は、主記憶装置33又は補助記憶装置35により実現されてもよく、プロセッサ31に内蔵される内蔵メモリにより実現されてもよい。例えば、本実施形態における記憶部は、主記憶装置33又は補助記憶装置35により実現されてもよい。
【0020】
推定装置3が、少なくとも1つの記憶装置(メモリ)と、この少なくとも1つの記憶装置に接続(結合)される少なくとも1つのプロセッサで構成される場合、記憶装置(メモリ)1つに対して、複数のプロセッサが接続されてもよい。また、複数のプロセッサのうち少なくとも1つのプロセッサが、複数の記憶装置のうち少なくとも1つの記憶装置に接続される構成を含んでもよい。また、複数台のコンピュータに含まれる記憶装置とプロセッサによって、この構成が実現されてもよい。さらに、記憶装置がプロセッサと一体になっている構成(例えば、L1キャッシュ、L2キャッシュを含むキャッシュメモリ)を含んでもよい。
【0021】
ネットワークインタフェース37は、無線又は有線により、通信ネットワーク5に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース37は、既存の通信規格に適合したもの等、適切なインタフェースを用いればよい。ネットワークインタフェース37により、通信ネットワーク5を介して接続された取得装置7および外部装置9Aと情報のやり取りが行われてもよい。なお、通信ネットワーク5は、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、PAN(Personal Area Network)等の何れか、又は、それらの組み合わせであってよく、コンピュータ30と外部装置9Aとの間で情報のやり取りが行われるものであればよい。WANの一例としてインターネット等があり、LANの一例としてIEEE802.11やイーサネット(登録商標)等があり、PANの一例としてBluetooth(登録商標)やNFC(Near Field Communication)等がある。
【0022】
デバイスインタフェース39は、表示装置等の出力装置、入力装置、および外部装置9Bと直接接続するUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースである。なお、出力装置は、音声等を出力するスピーカなどを有していてもよい。
【0023】
外部装置9Aはコンピュータ30とネットワークを介して接続されている装置である。外部装置9Bはコンピュータ30と直接接続されている装置である。
【0024】
外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、入力装置(入力部)であってもよい。入力装置は、例えば、カメラ、マイクロフォン、モーションキャプチャ、各種センサ、キーボード、マウス、タッチパネル等のデバイスであり、取得した情報をコンピュータ30に与える。また、外部装置9A又は外部装置9Bは、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の入力部とメモリとプロセッサを備えるデバイス等であってもよい。
【0025】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、出力装置(出力部)でもよい。出力装置は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、又は有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示装置であってもよいし、音声等を出力するスピーカ等であってもよい。また、外部装置9A又は外部装置9Bは、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、又はスマートフォン等の出力部321とメモリとプロセッサを備えるデバイス等であってもよい。
【0026】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、記憶装置(メモリ)であってもよい。例えば、外部装置9Aはネットワークストレージ等であってもよく、外部装置9BはHDD等のストレージであってもよい。
【0027】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、本実施形態における推定装置3の構成要素の一部の機能を有する装置でもよい。つまり、コンピュータ30は、外部装置9A又は外部装置9Bの処理結果の一部又は全部を、送信してもよいし、外部装置9A又は外部装置9Bから処理結果の一部又は全部を受信してもよい。
【0028】
取得装置7は、例えば、人工地震を発生して地中に地震波を伝播させる起震部と、人工地震による反射波を含む地震波応答を受振する受振部とを有する。起震部は、例えば、起震車により実現される。受振部は、反射波の振動を受振し、当該振動を電気信号に変換する複数のセンサにより実現されてもよい。当該センサは、例えば、地震計により実現される。複数のセンサは、空間的に規則的に配置されてもよい。また、起震部と受信部とは、例えば、船舶に曳航されてもよいし、船舶に配置されてもよく、起震部は、エアガンアレイなどにより実現されてもよい。取得装置7は、1回の人工地震(ショット)に応じて受振されたデータに基づいて画像(以下、ショット画像と呼ぶ)を生成してもよい。ショット画像は、観測対象の内部構造に関する地震波のデータに対応し、例えば、地下構造に関する観測値であって、ショットギャザーと称されてもよい。例えば、ショット画像の縦軸はショットの発振時刻からの経過時間に対応し、ショット画像の横軸は、取得装置7における受信部に関して、規則的に空間的に配置された複数のセンサの番号(空間方向)に対応する。換言すれば、本実施形態における地震波のデータは、少なくとも、地下構造に関する観測値または当該観測値に対する所定の前処理により生成されたデータのいずれか1つに関するデータであってもよい。なお、ショット画像は、ショットデータと称されてもよい。
【0029】
取得装置7は、地震波のデータを推定装置3に転送してもよい。なお、デバイスインタフェース39と取得装置7とが接続されている場合、取得装置7は、デバイスインタフェース39を介して、地震波のデータをコンピュータ30に出力してもよい。なお、取得装置7は、ショット画像などを表示するディスプレイを有していてもよい。
【0030】
図2は、プロセッサ31における機能ブロックの一例を示す図である。プロセッサ31は、当該プロセッサ31により実現される機能として、初期推定部311と、モデル生成部313と、模擬データ生成部315と、評価部317と、更新部319と、出力部321とを有してもよい。初期推定部311と、モデル生成部313と、模擬データ生成部315と、評価部317と、更新部319と、出力部321とにより実現される機能は、それぞれプログラムとして、例えば、主記憶装置33または補助記憶装置35などに格納されてもよい。プロセッサ31は、主記憶装置33または補助記憶装置35などに格納されたプログラムを読み出し、実行することで、初期推定部311と、モデル生成部313と、模擬データ生成部315と、評価部317と、更新部319と、出力部321とに関する機能を実現してもよい。
【0031】
初期推定部311は、地下構造に関する地震波のデータを学習済みのエンコーダに入力することで、当該地震波のデータを潜在空間における初期の潜在変数に変換してもよい。学習済みのエンコーダは、例えば、学習前のエンコーダの後段に学習済みのデコーダ(学習済みの生成モデル)を接続した構造推定モデルを学習することにより生成される。学習済みのデコーダは、例えば、既知の学習データ生成装置により生成された複数の疑似的な地下構造モデルを学習データとして用いて学習されたオートエンコーダに含まれる。学習前のエンコーダは、例えば、ディープニューラルネットワーク(以下、DNN(Deep Neural Network)と呼ぶ)により構成される。
【0032】
学習前のエンコーダは、例えば、変分オートエンコーダ(Variational Autoencoder:VAE)におけるエンコーダ部分に相当する。なお、初期推定部311において用いられるエンコーダとしては、VAEにおけるエンコーダに限定されず、例えば、ノーマライジングフローまたは敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Networks)などにおけるエンコーダに該当する部分が用いられてもよい。初期推定部311により出力される初期の潜在変数は、初期解(初期条件)としての地下構造モデルに関する潜在変数に相当する。このため、初期推定部311により実現される機能は、初期解推定器として実現されてもよい。
【0033】
学習済みのエンコーダは、学習データに対する物理シミュレーション(例えば、波動伝播シミュレーション)により生成された計算値を学習データとして用い、かつ学習データを教師データとして用いて構造推定モデルを学習することにより生成されてもよい。学習済みのエンコーダがVAEにおけるエンコーダ部分である場合、初期推定部311は、地下構造に関する地震波のデータと学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間(Latent space、潜在特徴空間:Latent Feature Spaceとも称される)における潜在変数を出力してもよい。潜在変数は、例えば、正規分布などで示された確率分布を構成する。当該確率分布を表す潜在変数は、例えば、VAEへ入力された地震波データに対応する地下構造モデルの再現に関する確率に相当する。すなわち、潜在変数は、例えば、地震波のデータを再現する地下構造モデルとして地質学的に非現実的な構造、すなわち最適化における局所解を取り除いたものとして生成される。
【0034】
モデル生成部313は、潜在変数と学習済みの生成モデルとを用いて、地下構造モデルを生成してもよい。生成モデルは、既知の学習データ生成装置により生成された複数の地下構造モデルを学習データとして用いて学習されたオートエンコーダに含まれるデコーダに対応してもよい。学習前のデコーダは、例えば、DNNにより構成される。具体的には、学習前のデコーダは、例えば、変分オートエンコーダ(Variational Autoencode:VAE)におけるデコーダ部分に相当する。
【0035】
なお、モデル生成部313において用いられるデコーダとしては、VAEにおけるデコーダに限定されず、例えば、ノーマライジングフローまたは敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Networks)などの他の手法におけるデコーダに該当する部分が用いられてもよい。
【0036】
学習済みのエンコーダおよび学習済みの生成モデルの生成における学習方法については、後ほど説明する。
【0037】
模擬データ生成部315は、生成モデルにより生成された地下構造モデルに対する波動伝播シミュレーションにより、地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成してもよい。波動伝搬シミュレーションは、例えば、微分可能な地震シミュレータにより実現される。模擬データは、生成された地下構造モデルに対する模擬的な観測値、すなわち模擬的な地震波のデータに対応してもよい。模擬データ生成部315は、波動伝播シミュレーションを実現するシミュレータにより実現されてもよい。波動伝播シミュレーションとしては、既知の物理シミュレーションの手法が適宜利用可能であるため、説明は省略する。
【0038】
評価部317は、模擬データと観測値とに基づいて評価値を算出する。例えば、評価部317は、波動伝播シミュレーションにより生成された模擬データと、取得装置7により取得された地震波のデータとの差異に関する評価値を算出してもよい。評価値は、類似性や整合性を算出することにより得ても良い。評価値は、例えば、模擬データと地震波のデータとの差分であって、誤差に相当してもよい。誤差は、例えば、L2誤差である。なお、評価値は、L2誤差に限定されず、地下構造モデルにより地震波のデータが再現される精度(再現精度(予測誤差ともいう))を示す指標値であってもよい。なお、評価値は、上記L2誤差に限定されず、既知の各種誤差が用いられてもよい。なお、評価部317により実現される機能は、評価器として実現されてもよい。
【0039】
更新部319は、評価値に基づいて、潜在変数を更新する。例えば、更新部319は、評価値が基準値を超える場合、誤差に相当する評価値を考慮して、生成モデルにより生成された地下構造モデルに対応する潜在変数を変更してもよい。これにより、更新部319は、生成モデルにより生成された地下構造モデルに対応する潜在変数を、新たな潜在変数に更新する。例えば、更新部319は、評価値に基づいて、模擬データと地震波のデータとの差異を低減するように潜在変数を更新する。
【0040】
具体的には、更新部139は、評価値(例えば、誤差)を、波動伝播シミュレーションと生成モデルとを介して、潜在空間まで逆伝播させることにより、生成モデルにより生成された地下構造モデルに関する潜在変数を更新してもよい。更新部319により実施される誤差の逆伝播は、既知の誤差逆伝播法(バックプロパゲーション:Back Propagation)を利用可能であるため、説明は省略する。なお、更新部319は、誤差の逆伝播の代わりに、潜在空間をランダムに選択することで、生成モデルに入力される潜在変数を更新してもよい。
【0041】
なお、更新部319は、誤差の逆伝播の代わりに、潜在空間における潜在変数をランダムに選択することで、生成モデルに入力される潜在変数を更新してもよい。例えば、更新部319は、既知のブラックボックス最適化の手法を用いて、潜在変数を更新してもよい。ブラックボックス最適化は、例えば、ランダムもしくは所定のルールにより複数の潜在変数を生成して、生成された複数の潜在変数を用いた評価値のうち、最適な潜在変数を選択する処理である。更新部319により実現される機能は、潜在変数の最適化に相当する。このため、更新部319により実現される機能は、最適化器として実現されてもよい。
【0042】
出力部321は、評価値が所定の基準値以下である場合、潜在変数に基づいて生成された地下構造モデルを、出力してもよい。具体的には、更新された潜在変数に基づく地下構造モデルの生成に伴って算出された評価値が基準値以下である場合、出力部321は、更新された潜在変数に基づく地下構造モデルを、地震波のデータに対応する地下構造として出力してもよい。基準値は、予め設定されて、主記憶装置33または補助記憶装置35に記憶される。なお、基準値は、入力装置を介したユーザの指示により、適宜設定、変更、調整されてもよい。
【0043】
出力部321は、当該評価値の計算の元となる地下構造モデルを、主記憶装置33または補助記憶装置35に記憶させてもよい。このとき、出力部321は、地震波のデータと関連付けて、地下構造モデルを主記憶装置33または補助記憶装置35に記憶させてもよい。また、出力部321は、当該評価値の計算の元となる地下構造モデルを表示装置に表示させてもよい。
【0044】
以上、探査システム1における構成について説明した。以下、推定装置3により地下構造モデルを推定する処理(以下、地下構造推定処理と呼ぶ)について、
図3および
図4を用いて説明する。
【0045】
図3は、推定装置3により実行される地下構造推定処理の概要を、学習装置40により実行される学習の概要とともに示す概要図である。
図3における学習装置40により実現される学習については、後ほど説明する。
図4は、地下構造推定処理における手順の一例を示すフローチャートである。地下構造推定処理の実行に先立って、取得装置7は、起震部の駆動により人工地震を発生させ、受信した人工地震の反射波のデータに基づいて地震波のデータ(ショット画像)を取得する。地震波のデータは、主記憶装置33または補助記憶装置35に記憶されてもよい。
【0046】
(地下構造推定処理)
(ステップS401)
初期推定部311は、主記憶装置33または補助記憶装置35から観測された地震波のデータを読み出してもよい。初期推定部311は、観測された地震波のデータと学習済みのエンコーダとを用いて、潜在空間における潜在変数を出力してもよい。具体的には、初期推定部311は、観測された地震波のデータを学習済みのエンコーダに入力して、当該地震波のデータを初期の潜在変数に変換してもよい。初期の潜在変数は、観測された地震波のデータに対応する地下構造モデルの初期解に関する潜在変数に相当する。具体的には、初期の潜在変数は、地震波のデータを再現する地下構造モデルとして物理的に有意義な(すなわち地質学的に妥当な)地下構造モデルを、デコーダにより生成可能な潜在変数である。
【0047】
(ステップS402)
モデル生成部313は、初期の潜在変数と生成モデルとを用いて、初期の地下構造モデルを生成してもよい。具体的には、モデル生成部313は、初期の潜在変数を生成モデルに入力することで、初期の地下構造モデルを生成してもよい。初期の地下構造モデルは、観測された地震波のデータに対応する地下構造モデルの初期解に対応する。以下のステップS403乃至S405により、初期の地下構造モデルの妥当性が検証されてもよい。
【0048】
(ステップS403)
模擬データ生成部315は、初期の地下構造モデルに対する波動伝播シミュレーションにより、初期の模擬データを生成してもよい。模擬データは、例えば、初期の地下構造モデルに対して疑似的な地震を発生させたときの反射波に関するデータに相当する。
【0049】
(ステップS404)
評価部317は、初期の地下構造モデルに関する模擬データと地震波のデータとの差異に関する評価値を算出してもよい。評価値が小さいほど、模擬データと地震波のデータとの差異は小さいものとなる。
【0050】
(ステップS405)
評価部317は、評価値と基準値とを比較する。なお、評価値と基準値との比較は、出力部321などの他の構成要素により実行されてもよい。評価値が基準値以下であれば(ステップS405のYes)、ステップS410の処理が実行される。評価値が基準値を超えていれば(ステップS405のNo)、ステップS406の処理が実行される。評価部317は、基準値以上だったときのループの実行回数を基準にしてステップS410の処理を実行してもよい。さらに、評価部317は、評価値の変化量を基準に基準値以上であればステップS406の処理を実行し、基準値以上であればステップS410の処理を実行してもよく、また、ユーザの裁量でステップS410の処理を実行するようにしてもよい。
【0051】
(ステップS406)
更新部319は、評価値に基づいて、模擬データと地震波のデータとの差異を低減するように潜在変数を更新してもよい。具体的には、更新部319は、更新前の潜在変数を、当該評価値を最小化するように変更してもよい。更新された潜在変数では、更新前の潜在変数に比べて、模擬データと地震波のデータとの差異が低減されることが期待される。
【0052】
(ステップS407)
モデル生成部313は、更新された潜在変数と生成モデルとを用いて、新たな地下構造モデルを生成してもよい。具体的には、モデル生成部313は、ステップS406において更新された潜在変数を生成モデルに入力することで、新たな地下構造モデルを生成してもよい。新たな地下構造モデルは、上記差異が低減された地下構造モデルに対応する。以下のステップS408とS409とS405とにより、新たな地下構造モデルの妥当性が検証されてもよい。
【0053】
(ステップS408)
模擬データ生成部315は、新たな地下構造モデルに対する物理シミュレーション(例えば、波動伝播シミュレーション)により、新たな模擬データを生成してもよい。新たな模擬データは、新たな地下構造モデルに関して、地下構造に関する観測値を模擬的に示すデータに相当する。新たな模擬データは、上記差異が低減された地下構造モデルに関する模擬データに対応する。
【0054】
(ステップS409)
評価部317は、新たな模擬データと地下構造に関する観測値とに基づいて、観測値と前記新たな模擬データとの差異に関する新たな評価値を算出する。例えば、評価部317は、新たな地下構造モデルに関する新たな模擬データと地震波のデータとの差異に関する新たな評価値を算出してもよい。ステップS406乃至S409の処理、すなわち、潜在変数の更新と、新たな地下構造モデルの生成と、新たな模擬データの生成と、新たな評価値の算出とは、新たな評価値が基準値以下となるまで繰り返し実行されてもよい。例えば、更新部319は、新たな評価値に基づいて、潜在変数を更新する。
【0055】
(ステップS410)
出力部321は、ステップS407が実行された場合はステップS407で生成した最新の地下構造モデルを出力し、ステップS407が実行されなかった場合はステップ402で生成された地下構造モデルを出力する。すなわち、出力部321は、最新の潜在変数に基づいて生成された地下構造モデルを、地震波のデータに対応する地下構造として出力する。
【0056】
本実施形態に係る推定装置3によれば、地下構造に関する地震波のデータを学習済みのエンコーダに入力することで、地震波のデータを潜在空間LSにおける初期の潜在変数に変換し、当該変換された潜在変数を学習済みの生成モデルに入力することで地下構造モデルを生成し、当該生成された地下構造モデルに対する波動伝播シミュレーションにより、地下構造に関する観測値を模擬的に示す模擬データを生成し、当該生成された模擬データと地震波のデータとの差異に関する評価値を算出し、評価値に基づいて、当該差異を低減するように潜在変数を更新し、当該更新された潜在変数に関する評価値が基準値以下である場合、更新された潜在変数に基づいて生成された地下構造モデルを、地震波のデータに対応する地下構造として出力する。
【0057】
また、本推定装置3によれば、例えば、更新された潜在変数を生成モデルに入力することで新たな地下構造モデルを生成し、生成された新たな地下構造モデルに対する波動伝播シミュレーションにより、地下構造に関する観測値を模擬的に示す新たな模擬データを生成し、生成された新たな模擬データと地震波のデータとに基づいて、地震波のデータと新たな模擬データとの差異に関する新たな評価値を算出し、算出された新たな評価値に基づいて、当該差異を低減するように潜在変数を更新し、更新された新たな地下構造モデルの生成と、新たな模擬データの生成と、新たな評価値の算出と、潜在変数の更新とは、前記新たな評価値が基準値以下となるまで繰り返し実行される。
【0058】
また、本推定装置3によれば、学習済みの生成モデルは、複数の地下構造モデルを学習データとして用いて学習されたオートエンコーダに含まれるデコーダに対応してもよい。また、本推定装置3によれば、学習済みのエンコーダは、学習データに対する波動伝播シミュレーションにより生成された計算値を学習データとして用い、かつ学習データを正解データとして用いて、学習前のエンコーダの後段に学習済みのデコーダを接続した構造推定モデルを学習することにより生成されてもよい。
【0059】
これらのことから、本実施形態に係る推定装置3によれば、学習済みのエンコーダおよびデコーダにより地震波データに対して物理的に有意義な初期解を設定して、地下構造モデルの推定に利用してもよい。このため、本推定装置3によれば、初期解の設定に関して、地震シミュレーションに対する疑似的な逆写像は、当該逆写像の存在の有無にかかわらず不要となる。これらのことから、本推定装置3によれば、地震波のデータに地下構造の推定において、ユーザによる初期解の設定が不要となるため、すなわちユーザによる初期解の選択のためのヒューリスティックス(発見的手法)および事前知識がユーザに要求されないため、初期解の生成に関するユーザの負担(手間)を軽減することができる。また、本推定装置3によれば、潜在変数を介して地震波データに対して物理的に有意義な高精度の初期解を推定しているため、地震波のデータを実現する地下構造モデルの推定精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る推定装置3によれば、推定される地下構造モデルにおける最適化対象の画素数(次元)より低次元の潜在空間(最適化にとって現実的な解空間)での潜在変数に対して、最適化の処理を実行してもよい。これにより、本推定装置3によれば、潜在変数の最適化において地質学的に非現実的な地下構造モデルに対応する局所解への収束を低減でき、かつ推定された初期解への依存性を低減することができる。これらのことから、本推定装置3によれば、地震波のデータに対して地質学的に有意義な地下構造モデルを推定することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る推定装置3によれば、潜在変数の最適化の処理の繰り返しにおいて地下構造モデルが生成される度に、生成された地下構造モデルを用いて生成された模擬データと地震波のデータとの差異を評価してもよい。これにより、本推定装置3によれば、地震波データに対する地下構造モデルの物理的な妥当性を検証することができる。これらのことから、本推定装置3によれば、地震波データに対する物理的な信頼性が高い地下構造モデル、換言すれば、地質学的により地震波データの再現性が高いと評価される(推定精度が高い)地下構造モデルを、推定することができる。
【0062】
以上のことから、本実施形態に係る推定装置3によれば、地下構造に関する地震波のデータに基づいて初期の地下構造モデルを推定し、推定された初期の地下構造モデルを用いて、かつ地下構造モデルを復元する潜在空間LSを介して、地下構造に関する地震波のデータから地質学的に妥当な地下構造モデルを推定することができる。
【0063】
(変形例)
本変形例は、更新部319による更新対象が潜在変数ではなく地下構造モデルとなることにある。
図5は、本変形例における推定装置3により実行される地下構造推定処理の概要を、学習装置40により実行される学習の概要とともに示す概要図である。
図5における学習装置40による学習については、
図3と同様なため、後ほど説明する。
【0064】
更新部319は、評価値に基づいて、地下構造モデルを更新する。例えば、更新部319は、評価値に基づいて、模擬データと地震波のデータとの差異を低減するように、地下構造モデルを更新してもよい。これにより、更新部319は、生成モデルにより生成された地下構造モデルを、新たな地下構造モデルに更新してもよい。例えば、更新部319は、評価値に基づいて、模擬データと地震波のデータとの差異を低減するように、生成された地下構造モデルを更新してもよい。
【0065】
具体的には、更新部139は、評価値(例えば、誤差)を、波動伝播シミュレーションを介して、地下構造モデルまで逆伝播させることにより、生成モデルにより生成された地下構造モデルを、新たな潜在変数に更新してもよい。更新部319により実施される誤差の逆伝播は、既知の誤差逆伝播法(バックプロパゲーション:Back Propagation)を利用可能であるため、説明は省略する。なお、更新部319は、誤差の逆伝播の代わりに、地下構造モデルをランダムに選択することで、生成モデルに入力される潜在変数を更新してもよい。更新部319により実現される機能は、地下構造モデルの最適化に相当する。
【0066】
以下、本変形例における地下構造推定処理について、実施形態と相違する処理ステップを説明する。ステップS406及びステップS407における処理内容は、以下に示す処理となる。
【0067】
更新部319は、評価値に基づいて、模擬データと地震波のデータとの差異を低減するように、地下構造モデルを更新する。具体的には、評価部317は、更新前の地下構造モデルを、当該差異を最小化するように変更する。更新された地下構造モデルでは、更新前の地下構造モデルに比べて、模擬データと地震波のデータとの差異が低減されることとなる。更新後の地下構造モデルは、新たな地下構造モデルに対応する。
【0068】
本変形例における効果は、実施形態における潜在変数の更新に関する効果を除いて同様なため説明は省略する。
【0069】
(学習装置)
以下、実施形態の初期推定部311において用いられるエンコーダと、モデル生成部313において用いられる生成モデル(デコーダ)とに関する学習を実行する学習装置40について説明する。学習装置40のハードウェア構成は、
図1に示す推定装置3と同様なため、説明は省略する。以下、学習装置40に搭載されたプロセッサにおいて実現される各種処理に関する機能ブロックについて説明する。
【0070】
図6は、学習装置40に搭載されたプロセッサ81における機能ブロックの一例を示す図である。プロセッサ81は、当該プロセッサ81により実現される機能として、第1学習部811と、模擬データ生成部813と、第2学習部815とを有してもよい。第1学習部811と、模擬データ生成部813と、第2学習部815とにより実現される機能は、それぞれプログラムとして、例えば、主記憶装置33または補助記憶装置35などに格納されてもよい。プロセッサ81は、主記憶装置33または補助記憶装置35などに格納されたプログラムを読み出し、実行することで、第1学習部811と、模擬データ生成部813と、第2学習部815とに関する機能を実現してもよい。
【0071】
以下、本学習装置40による学習の処理(以下、学習処理と呼ぶ)の手順の一例について、
図7を用いて説明する。
図7は、学習処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0072】
(学習処理)
(ステップS701)
第1学習部811は、観測対象に関して異なる構造を示す複数の構造モデルを用いてオートエンコーダAEを学習する。これにより、第1学習部811は、当該オートエンコーダAEにおける第1エンコーダENC1とデコーダDECとを生成してもよい。オートエンコーダは、例えば、ニューラルネットワークにより構成される変分オートエンコーダVAEであるものとする。第1エンコーダENC1は、複数の構造モデル各々を潜在空間における複数の潜在変数各々に変換してもよい。デコーダDECは、複数の潜在変数各々の入力により複数の構造モデル各々を生成してもよい。学習済みのデコーダDECは、モデル生成部313に用いられる生成モデルに相当してもよい。
【0073】
以下、説明を具体的にするために、上記観測対象は地下であって、上記構造は、地下構造であって、上記構造モデルは、疑似的な地下構造モデルPUSMであるものとする。このとき、
図1および
図5に示すように、第1学習部811は、疑似的な地下構造モデルのデータベースから複数の疑似的な地下構造モデル各々PUSMを読み出し、読み出された疑似的な地下構造モデルPUSMを用いて、オートエンコーダAEを学習してもよい。
【0074】
図8は、第1学習部811により学習される変分オートエンコーダVAEの一例を示す図である。
図8に示すように、疑似的な地下構造モデルPUSMがニューラルネットワークで構成された第1エンコーダENC1に入力されると、第1エンコーダENC1は、潜在空間LSにおける潜在変数の分布を出力してもよい。
図8に示すように、第1エンコーダENC1は、疑似的な地下構造モデルPUSMにおけるデータを、疑似的な地下構造モデルPUSM(例えば、数千、数百万次元)より低次元(例えば、百数十次元)の潜在空間LSに出力してもよい。
【0075】
また、
図8に示すように、潜在空間LSにおける潜在変数の分布を用いてランダムサンプリングを行って得られる潜在変数がニューラルネットワークで構成されたデコーダDECに入力されると、デコーダDECは、再現された地下構造モデル(以下、再現モデルと呼ぶ)RMを出力してもよい。第1学習部811は、第1エンコーダENC1に入力された疑似的な地下構造モデルPUSMとデコーダDECから出力された再現モデルRMとの差異(誤差)を用いて、例えば、既知の誤差逆伝播法(バックプロパゲーション:Back Propagation)により、デコーダDECと第1エンコーダENC1とにおけるニューラルネットワークの重みを修正してもよい。
【0076】
第1学習部811は、ニューラルネットワークの重みの修正を、複数の疑似的な地下構造モデルに対して実行してもよい。これらにより、第1学習部811は、デコーダDECと第1エンコーダENC1とを含む変分オートエンコーダVAEの学習を完了させてもよい。学習済みのデコーダDECは、推定装置3における主記憶装置33または補助記憶装置35に、生成モデル(地下構造モデルのジェネレータ)として記憶されてもよい。このとき、潜在空間LSは、学習済みのデコーダDECと共有されることとなる。
【0077】
(ステップS702)
模擬データ生成部813は、複数の構造モデル(すなわち複数の疑似的な地下構造モデル)各々に対する物理シミュレーションの実行により、複数の構造モデルに対応し、構造に関する観測値を模擬的に示す複数の模擬データを生成してもよい。物理シミュレーションは、実施形態に即した場合、波動伝播シミュレーションである。模擬データ生成部813の構成および機能は、推定装置3における模擬データ生成部315と同様なため説明は、省略する。
【0078】
(ステップS703)
第2学習部815は、複数の構造モデル(すなわち複数の疑似的な地下構造モデル)と複数の構造モデルに対応する複数の模擬データとを用いて、学習前の第2エンコーダの後段に前記学習済みのデコーダDECを接続して構造推定モデルを生成してもよい。
【0079】
図9は、第2学習部815により学習される構造推定モデルSEMの一例を示す図である。
図9に示す潜在空間LSとデコーダDECとは、第1学習部811により学習された変分オートエンコーダVAEの生成器(ジェネレータ)に相当する。
【0080】
(ステップS704)
第2学習部815は、構造推定モデルSEMを学習することにより、第2エンコーダを生成する。第2エンコーダは、構造に関する観測値のデータを潜在変数に変換するエンコーダ(符号化器)である。実施形態に即した場合、観測値のデータは、地震波のデータであってもよい。学習済みの第2エンコーダは、初期推定部311で用いられる学習済みのエンコーダに相当してもよい。
【0081】
図9に示すように、模擬データSDがニューラルネットワークで構成された第2エンコーダENC2に入力されると、第2エンコーダENC2は、潜在空間LSにおける潜在変数を出力してもよい。
図8に示すように、第2エンコーダENC2は、模擬データを、模擬データより低次元(例えば、百数十次元)の潜在空間LSにマップ(写像)する。また、
図9に示すように、潜在空間LSにおける潜在変数がニューラルネットワークで構成されたデコーダDECに入力されると、デコーダDECは、再現モデルRMを出力する。
【0082】
第2学習部815は、第2エンコーダENC2に入力された疑似データSDに対応する地下構造モデルPUSMとデコーダDECから出力された再現モデルRMとの差異(誤差)を、例えば、既知の誤差逆伝播法により、デコーダDECを介して第2エンコーダENC2におけるニューラルネットワークの重みを修正する。第2学習部815は、ニューラルネットワークの重みの修正を、複数の疑似データと複数の疑似データに対応する複数の疑似的な地下構造モデルとに対して実行する。これらにより、第2学習部815は、第2エンコーダENC2の学習を完了させる。学習済みの第2エンコーダENC2は、推定装置3における主記憶装置33または補助記憶装置35に、初期推定部311において用いられるエンコーダとして記憶される。
【0083】
なお、模擬データと潜在変数とが地下構造モデルPUSMを介して関連付けられていた場合、第2学習部815は、潜在変数を教師データとして用いて、第2エンコーダENC2を学習してもよい。このとき、ステップS703における処理は不要となる。加えて、ステップS704における処理では、第2学習部815は、模擬データの入力によって第2エンコーダENC2から出力された潜在変数と教師データとの差異を用いた誤差逆伝播法により、第2エンコーダENC2を学習する。
【0084】
本実施形態に係る学習装置40によれば、観測対象に関して異なる構造を示す複数の構造モデルを用いてオートエンコーダAEを学習することにより、複数の構造モデル各々を潜在空間LSにおける複数の潜在変数各々に変換する第1エンコーダENC1と、前記複数の潜在変数各々の入力により前記複数の構造モデル各々を生成するデコーダDECとを生成してもよく、複数の構造モデル各々に対する物理シミュレーションの実行により、複数の構造モデルに対応してもよく、当該構造に関する観測値を模擬的に示す複数の模擬データSDを生成してもよく、複数の構造モデルと複数の模擬データとを用いて、学習前の第2エンコーダENC2の後段に学習済みのデコーダDECを接続した構造推定モデルSEMを学習することにより、当該構造に関する観測値のデータを潜在変数に変換する第2エンコーダを生成してもよい。また、実施形態に即した場合、上記観測対象は地下であって、上記構造は地下構造であって、上記物理シミュレーションは波動伝播シミュレーションであって、上記構造モデルは疑似的な地下構造モデルPUSMであって、観測値のデータは地震波のデータであってもよい。
【0085】
これらにより、本学習装置40によれば、既知の学習生成データ生成装置により生成された複数の疑似的な地下構造モデルを用いることで、推定装置3において用いられる生成モデルおよびエンコーダを、簡便かつ容易に生成することができる。すなわち、本学習装置40を用いて、第2エンコーダとデコーダとを生成することができる。
【0086】
以上のことから、実施形態などによれば、地下構造の推定に関するユーザの負担を軽減して、地質学的に妥当性が高い地下構造モデルを推定することができる。すなわち、本推定装置3を用いて、地下構造モデルを生成することができる。
【0087】
前述した実施形態における各装置の一部又は全部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、CPU、又はGPU等が実行するソフトウェア(プログラム)の情報処理で構成されてもよい。ソフトウェアの情報処理で構成される場合には、前述した実施形態における各装置の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェアを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、又はUSBメモリ等の非一時的な記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)に収納し、コンピュータ30に読み込ませることにより、ソフトウェアの情報処理を実行してもよい。また、通信ネットワーク5を介して当該ソフトウェアがダウンロードされてもよい。さらに、ソフトウェアがASIC、又はFPGA等の回路に実装されることにより、情報処理がハードウェアにより実行されてもよい。
【0088】
ソフトウェアを収納する記憶媒体の種類は限定されるものではない。記憶媒体は、磁気ディスク、又は光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク、又はメモリ等の固定型の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ内部に備えられてもよいし、コンピュータ外部に備えられてもよい。
【0089】
本明細書(請求項を含む)において、「a、b及びcの少なくとも1つ(一方)」又は「a、b又はcの少なくとも1つ(一方)」の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、a、b、c、a-b、a-c、b-c又はa-b-cのいずれかを含む。また、a-a、a-b-b、a-a-b-b-c-c等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a-b-c-dのようにdを有する等、列挙された要素(a、b及びc)以外の他の要素を加えることも含む。
【0090】
本明細書(請求項を含む)において、「データを入力として/データに基づいて/に従って/に応じて」等の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、特に断りがない場合、各種データそのものを入力として用いる場合や、各種データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、各種データの中間表現等)を入力として用いる場合を含む。また「データに基づいて/に従って/に応じて」何らかの結果が得られる旨が記載されている場合、当該データのみに基づいて当該結果が得られる場合を含むとともに、当該データ以外の他のデータ、要因、条件及び/又は状態にも影響を受けて当該結果が得られる場合をも含み得る。また、「データを出力する」旨が記載されている場合、特に断りがない場合、各種データそのものを出力として用いる場合や、各種データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、各種データの中間表現等)を出力とする場合も含む。
【0091】
本明細書(請求項を含む)において、「接続される(connected)」及び「結合される(coupled)」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的(electrically)な接続/結合、通信的(communicatively)な接続/結合、機能的(operatively)な接続/結合、物理的(physically)な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0092】
本明細書(請求項を含む)において、「AがBするよう構成される(A configured to B)」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的(permanent)又は一時的(temporary)な設定(setting/configuration)が、動作Bを実際に実行するように設定(configured/set)されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的(permanent)又は一時的(temporary)なプログラム(命令)の設定により、動作Bを実際に実行するように設定(configured)されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ又は専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造が動作Bを実際に実行するように構築(implemented)されていればよい。
【0093】
本明細書(請求項を含む)において、含有又は所有を意味する用語(例えば、「含む(comprising/including)」及び有する「(having)等)」が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、open-endedな用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0094】
本明細書(請求項を含む)において、ある箇所において「1つ又は複数(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0095】
本明細書において、ある実施例の有する特定の構成について特定の効果(advantage/result)が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施例についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件及び/又は状態に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件及び/又は状態が満たされたときに実施例に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0096】
本明細書(請求項を含む)において、「最大化する(maximize)/最大化(maximization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最大値を求めること、グローバルな最大値の近似値を求めること、ローカルな最大値を求めること、及びローカルな最大値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最大値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最小化する(minimize)/最小化(minimization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最小値を求めること、グローバルな最小値の近似値を求めること、ローカルな最小値を求めること、及びローカルな最小値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最小値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最適化する(optimize)/最適化(optimization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最適値を求めること、グローバルな最適値の近似値を求めること、ローカルな最適値を求めること、及びローカルな最適値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最適値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。
【0097】
本明細書(請求項を含む)において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書(請求項を含む)において、「1又は複数のハードウェアが第1の処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2の処理を行う」等の表現が用いられている場合、第1の処理を行うハードウェアと第2の処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまりく、第1の処理を行うハードウェア及び第2の処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、電子回路を含む装置を含んでよい。
【0098】
本明細書(請求項を含む)において、複数の記憶装置(メモリ)がデータの記憶を行う場合、複数の記憶装置(メモリ)のうち個々の記憶装置(メモリ)は、データの一部のみを記憶してもよいし、データの全体を記憶してもよい。
【0099】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において種々の追加、変更、置き換え及び部分的削除等が可能である。例えば、前述した全ての実施形態において、数値又は数式を説明に用いている場合は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。また、実施形態における各動作の順序は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0100】
1 探査システム
3 推定装置
5 通信ネットワーク
7 取得装置
9A 外部装置
9B 外部装置
30 コンピュータ
31 プロセッサ
33 主記憶装置
35 補助記憶装置
37 ネットワークインタフェース
39 デバイスインタフェース
40 学習装置
41 バス
81 プロセッサ
311 初期推定部
313 モデル生成部
315 模擬データ生成部
317 評価部
319 更新部
321 出力部
811 第1学習部
813 模擬データ生成部
815 第2学習部