(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163937
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】オール電化型集合住宅の車両充電システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231102BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20231102BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075180
(22)【出願日】2022-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】500281752
【氏名又は名称】関電不動産開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】北矢 努
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝男
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 裕之
(72)【発明者】
【氏名】越智 直樹
(72)【発明者】
【氏名】駒井 克哉
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】高圧一括受電のオール電化型集合住宅において、住民に経済的負担を強いることなく、電動車両6の充電可能台数を増やす。
【解決手段】集合住宅の駐車場において電動車両6の充電を行う複数の充電部13と、集合住宅におけるデマンド制御に応じて各充電部13の動作を制御して電動車両6の充電を管理する充電制御装置10と、共用部5、専有部3および充電部13の電力メータ26~29からデータを収集する収集装置17を備え、各充電部13に、電動車両6への電力供給をオンオフする開閉器30が設けられる。充電制御装置10は、集合住宅1の総電力使用量を予測し、予測された総電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断して、超えると判断すると、一部の充電部13での電力供給を即座にオフする。最大デマンド値を超えない範囲で多くの電動車両6を充電できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸からなる専有部と共用部をまとめて高圧一括受電する集合住宅の駐車場において電動車両の充電を行う複数の充電部と、各充電部の動作を制御して電動車両の充電を管理し、集合住宅におけるデマンドに応じて充電制御部を動作させる充電制御装置を備えた車両充電システムであって、各充電部に、電力使用量を計測する電力メータと、電動車両への電力供給をオンオフする開閉器とが設けられ、
充電制御装置は、最大デマンド値と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差を充電可能電力量とし、この充電可能電力量の範囲にて、各充電部の開閉器のオンオフを制御し、
予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断して、超えると判断すると、一部の充電部での電力供給を即座にオフすることを特徴とする車両充電システム。
【請求項2】
各充電部が複数のグループに分けられ、充電制御装置は、時限単位でグループ毎に充電動作を制御し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断したとき、1または複数のグループの電力供給をオフし、次の時限で総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合、他のグループの電力供給をオフすることを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項3】
各グループの順位が予め設定され、充電制御装置は、ある時限で電力供給をオフしたグループに対して次の時限ではそのグループの順位を最後にすることを特徴とする請求項2記載の車両充電システム。
【請求項4】
電力使用に関する情報を収集する収集装置は、充電部における電動車両の充電に関する情報を電力メータを通じて収集し、サーバーを経由して受け取った情報を利用者に表示することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項5】
個々の住戸の電力使用量と充電部の電力使用量が紐付けられ、住戸における電力使用量に基づく電気料金と充電部における電力使用量に基づく電気料金とを合算して課金することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項6】
ある一定の規模を有する集合住宅において、専有部の複数の電力負荷を群制御することにより、最大デマンド値と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差が少ない時間帯の電力負荷の稼働をその他の時間帯に分散し、充電可能電力量を増加させることを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の車両充電システムを運用するエネルギー管理システムであって、充電制御装置は、集合住宅全体の電力使用量を監視して、充電部および電力負荷に対してデマンド制御を行うことを特徴とする集合住宅におけるエネルギー管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全てのエネルギーを電気(以下「オール電化」)とし、高圧にて専有部と共用部を一括して受電するオール電化型集合住宅の駐車場で電動車両の充電を行う車両充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅において、脱炭素社会の実現に貢献するために、オール電化高圧一括受電が採用される。集合住宅の専有部や共用部は、一括して高圧電力を使用し、最適なエネルギー管理を行うために、年間の最大デマンド値を超えないように、一括受電会社によってエネルギー管理を行う。また、今後は、集合住宅における自動車部門の脱炭素に向けて電気自動車やプラグインハイブリッド車(以下「電動車両」)などの電動車両が普及していき、集合住宅に設置される駐車場で電動車両の充電が必要になっていく。
【0003】
特許文献1には、集合住宅の複数の充電器を複数のグループに分け、各グループへの電力供給のオンオフを切り替える複数のスイッチのうち、1つのスイッチがオンされ、1日ごとにスイッチがオンする時間帯をずらすことが記載されている。これにより、充電装置の導入コストを低減できる。
【0004】
特許文献2には、事業所において、複数の充電器を交代させるローテーションにより、電力量目標値を超えない範囲で優先順位の順に充電器をオンすることが記載されている。これにより、全ての電動車両を満遍なく充電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6251444号公報
【特許文献2】特開2021-35171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧一括受電のオール電化集合住宅において、電動車両の充電台数が益々増加していくと、充電に伴う電力使用量が増えて、集合住宅全体の最大デマンド値を超えることがある。最大デマンド値を超えると、超えた電力量に応じて最大デマンド値が更新され、その月から向こう1年間の契約電気料金が高くなり、住民や管理組合の経済的負担が増大する。特許文献1のように、1つのグループのみ充電するようにしたり、特許文献2のように、優先順位にしたがって充電器をオンすることにより、電力使用量を抑えることができる。しかし、最大デマンド値を超えない範囲で充電を行うと、電動車両の充電台数の増加に対応することができないおそれがある。
【0007】
そこで、最大デマンド値を超えない範囲で、専有部での電力使用をコントロールして、充電用に使用可能な電力を増やしたり、充電器そのものの電力使用量をコントロールすることによって、電動車両の充電可能台数を最大限増やすことが可能となる。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、高圧一括受電のオール電化型集合住宅において、集合住宅の住民などに経済的負担を強いることなく、電動車両の充電可能台数を増やすことができる車両充電システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のオール電化型集合住宅の車両充電システムは、複数の住戸からなる専有部と共用部をまとめて高圧一括受電する集合住宅の駐車場において、電動車両の充電を行う複数の充電部と、各充電部の動作を制御して電動車両の充電を管理し、集合住宅におけるデマンドに応じて充電制御部を動作させる充電制御装置を備え、各充電部に、電力使用量を計測する電力メータと、電動車両への電力供給をオンオフする開閉器とが設けられる。充電制御装置は、最大デマンド値(最大需要電力)と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差を充電可能電力量とし、この充電可能電力量の範囲にて、各充電部の開閉器のオンオフを制御し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断して、超えると判断すると、一部の充電部での電力供給を即座にオフし、超えないときは、充電部での電力供給を継続する。これにより、最大デマンド値を超えない範囲で多くの電動車両を充電できる。
【0010】
各充電部が複数のグループに分けられ、充電制御装置は、時限単位でグループ毎に充電動作を制御し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断したとき、1または複数のグループの電力供給をオフし、次の時限で総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合、他のグループの電力供給をオフする。各グループの順位が予め設定され、充電制御装置は、ある時限で電力供給をオフしたグループに対して次の時限ではそのグループの順位を最後にする。これにより、各グループの電動車両を満遍なく充電できる。
【0011】
電力使用に関する情報を収集する収集装置は、充電部における電動車両の充電に関する情報を電力メータを通じて収集し、サーバーを経由して受け取った情報を利用者に表示する。電力使用量などの情報の見える化が図れる。
【0012】
個々の住戸の電力使用量と充電部の電力使用量が紐付けられ、サーバーは、住戸における電力使用量に基づく電気料金と充電部における電力使用量に基づく電気料金とを仕分け、それらを合算して課金する。住戸に居住する駐車場の利用者に一括して電気料金を請求できる。
【0013】
ある一定の規模を有する集合住宅において、専有部の複数の電力負荷、例えばエコキュートを群制御することにより、最大デマンド値と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差が少ない時間帯の電力負荷の稼働をその他の時間帯に分散し、充電可能電力量を増加させる。これにより、多くの電動車両を充電できる。
【0014】
車両充電システムを運用する集合住宅におけるエネルギー管理システムにおいて、充電制御装置は、集合住宅全体の電力使用量を監視して、充電部およびデマンド制御を行う。電動車両の充電台数が増えても最大デマンド値を超えることがなく、電気基本料金がアップせず、住民に経済的な負担をかけることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、集合住宅において電動車両の充電器の設置を効率よく推進することにより、集合住宅での省エネ化、住民の経済的負担の軽減、集合住宅の管理組合における持続可能な建物管理をそれぞれ実現でき、また集合住宅での脱炭素化に寄与する電動車両需要増加への対応といった環境問題に貢献する集合住宅を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の電動車両の充電部を備えた集合住宅を示す図
【
図2】集合住宅におけるエネルギー管理システムの計測系構成図
【
図5】エコキュートの群制御を行ったときの1日の電力使用量の例を示す図
【
図6】最大デマンド値を超えないときの充電の電力使用量を示す図
【
図7】最大デマンド値を超えるときに充電のデマンド制御を行ったときの充電の電力使用量を示す図
【
図8】見える化による1時間ごとの電力使用量(a)と1日ごとの電力使用量(b)を示す図
【
図9】見える化による充電による電力使用量を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るエネルギー管理システムは、高圧一括受電サービスを受けているオール電化型集合住宅に導入されるものであり、
図1~3に示すように、集合住宅1は、住民が居住する複数の住戸2からなる専有部3と、エレベータ、照明、空調装置などの電力負荷4を備えた共用部5とから構成され、専有部系統の一部として、電動車両などの電動車両6を充電可能な駐車場7が設置されている。駐車場7の利用者が集合住宅の住民であり、住民が居住する各住戸2では、エコキュート(登録商標)8などのヒートポンプ式給湯器や家電製品などの電力負荷4を備えている。
【0018】
そして、
図2に示すように、エネルギー管理システムは、集合住宅1全体の電力使用量を監視して、集合住宅1にて発生する年間の最大デマンド値を超えない範囲で電動車両6の充電に対してデマンド制御を行う充電制御装置10を備え、集合住宅1全体で最適かつ合理的、継続的にエネルギー管理を行う。そのために、エネルギー管理システムでは、各住戸2の電力負荷4の一部であるエコキュート8による電力使用を管理し、電力負荷4の動作を制御するホームエネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)と電動車両6の充電を管理する車両充電システムとを併せて、集合住宅全体のエネルギー管理を行う。すなわち、ホームエネルギー管理システムおよび車両充電システムは、エネルギー管理システムの下で運用される。
【0019】
図3に示すように、HEMSでは、各住戸2に設けられたHEMSコントローラ11が住戸2内のエコキュート8の動作を制御する。車両充電システムは、充電制御装置10が、集合住宅1における最大デマンド値に応じて、駐車場7における電動車両6の充電を行う複数の充電部13と、各充電部13の動作を制御する。
【0020】
HEMSコントローラ11、充電制御装置10は、インターネット網などのネットワーク15を介して集合住宅1の電力使用を管理するサーバー16と通信を行う。集合住宅1の住民が駐車場7を利用するので、充電部13の利用者が住民である。その住民の住戸2に紐付けられて充電部13がサーバー16に登録される。
【0021】
図1,2に示すように、集合住宅1は、電力系統20から受電した高圧電力を、共用部系統の動力トランス21や電灯系トランス22により低圧電力に変圧して、エレベータや電灯などの共用部5の電力負荷4に配電するとともに、専用部系統では同様に電灯系トランス23により低圧電力に変圧して、各住戸2の電力負荷4に配電する。充電部13では、駐車場7の各駐車区画に充電器24がそれぞれ設置され、充電用トランス25を通じて変圧された低圧電力が各充電器24に配電される。この充電器24は普通充電器とされる。
【0022】
集合住宅1には、全体の電力使用量を計量する通信機能付きの電力メータ(スマートメータ)26が設けられ、専有部3には、各住戸2における電力使用量を計量する通信機能付きの電力メータ(スマートメータ)27が設けられ、共用部5にも、各電力負荷4の電力使用量を計量するために、通信機能付きの電力メータ(スマートメータ)28がそれぞれ設けられる。充電部13でも、充電器24に対して通信機能付きの電力メータ(スマートメータ)29が設けられる。なお、スマートメータに使われる通信は、有線通信、無線通信あるいは電力線通信(PLC)とされる。
【0023】
電力メータ26~29は、所定の時限ごとの電力使用量を計測して送信する。充電制御装置10は電力メータ26から電力使用量を収集する。電力メータ27~29と通信可能な収集装置17は、共用部5、専有部3および充電部13の電力メータ27~29から電力使用量などの集合住宅1の電力使用に関する情報を収集する。収集装置17は、電力使用に関する情報をサーバー16に送信する。サーバー16は、電力使用量などの情報を蓄積して管理し、収集装置17は、サーバー16を通じて各住戸2や充電部13の電力使用量をグラフなどによって一目でわかるように住戸2の利用者が使用する端末機器18に利用状況を表示する。
【0024】
充電部13に、電動車両6への電力供給をオンオフする開閉器30が設けられる。開閉器30は遠隔操作可能なリレーあるいはスイッチとされ、電力メータ29と充電器24との間に介装される。開閉器30がオンすると、充電器24に通電されて、電動車両6に電力が供給され、開閉器30がオフすると、充電器24への通電が遮断され、電動車両6には電力が供給されない。
【0025】
充電制御装置10は、集合住宅1の全住戸の入居があり、概ね1シーズン(1年)を通し、専有部3や共用部5の電力負荷4の全負荷電力使用量から最大デマンド値が設定される。
図4に示すように、最大デマンド値に対して、年間を通じて専有部3と共用部5における各電力負荷4から使用された負荷電力使用量は、最大デマンド値を超えないようにエネルギー管理を行う。ここで、最大デマンド値と負荷電力使用量との差が充電可能電力量とされ、この充電可能電力量の範囲内で電動車両6の充電を行うように、充電制御装置10は各充電部13の開閉器30のオンオフを制御する。
【0026】
ところで、
図5に示すように、エコキュート9を採用している集合住宅1では、一般的に深夜に給湯器が稼働するように設定されており、深夜の電力使用量が増大する。深夜に電動車両6の充電が行われていると、負荷電力使用量と充電による電力使用量とを合わせた総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合がある。この場合、充電部13の開閉器30をオフして、充電を停止し、総計電力使用量が最大デマンド値を超えないようにしなければならない。一方、昼間では、充電可能電力量に余裕があり、多くの電動車両6を充電することが可能である。
【0027】
ここで、最大デマンド値を超えない範囲で充電できる台数を増やすためには、特定の時間帯における充電可能電力量、特に深夜の充電可能電力量を増やす必要があり、深夜に電力使用が多いエコキュート9の稼働時間を使用可能な電力量に余裕がある昼間などの他の時間帯に分散すればよい。そのため、サーバー16はHEMSコントローラ11に指示して、エコキュート9の群制御を行い、深夜の充電可能電力量を増やすように、給湯機の稼働を深夜から電力使用量の少ない他の時間帯にシフトさせる。
【0028】
車両充電システムでは、エネルギー管理システムによる集合住宅1全体の充電可能電力量の範囲で電動車両6の充電を行えるようにデマンド制御が行われる。まず、
図2に示すように、複数の充電部13が複数のグループに分けられる。このグルーピングは特にルールはなく、自由に設定してよく、各グループの順位も予め設定される。なお、集合住宅1の規模に応じて、最大10グループとされる。ここでは、グループA~Dの順に4つのグループとされる。
【0029】
充電制御装置10は、電力メータ26から収集した電力使用量に基づき、時限単位(30分単位)内でグループ毎に充電動作を制御する。総計電力使用量が最大デマンド値を超えない場合、
図6に示すように、全てのグループA~Dの充電部13は電動車両6の充電を行う。なお、この最大デマンド値は、予め決められた年間の最大デマンド値でもよいが、年間の最大デマンド値よりも低いデマンド値に予め設定しておくとよい。
【0030】
充電制御装置10は、時限単位よりも短い間隔で予測を行い、予測した総計電力使用量を基に開閉器30を制御するか判断する。
【0031】
充電制御装置10は、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断する。予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合、充電制御装置10は、充電を停止する制御対象となるグループを順次決める。
【0032】
例えば、直前の時限で全てのグループA~Dが充電中の場合、予め設定された順位のうち、上位の順位のグループ、例えばグループAから停止する。この制御を繰り返し行い、最大デマンド値を超えないと予想されるまで行われる。
【0033】
図7に示すように、時限の途中であっても、グループAとグループBの開閉器30がオフされ、充電が停止される。グループCとグループDの充電は継続される。これにより、総計電力使用量が最大デマンド値を超えることがなくなる。
【0034】
1つの時限が終了すると、充電制御装置10は、制御対象をリセットする。すなわち、グループAとグループBは制御対象から外され、次の時限ではこれらのグループA,Bの順位は最後に回され、グループCが最上位の順位とされる。次の時限において、当初は総電力使用量が最大デマンド値を超えていないとされ、全てのグループA~Dで充電が行われる。充電制御装置10は、予測された総電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断する。総電力使用量が最大デマンド値を超えると判断されると、制御対象として決定されたグループCの電力供給が即座にオフされ、グループA,B,Dの充電は継続される。この時限が終了すると、制御対象がリセットされる。次の時限において、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えない場合、全てのグループA~Dで充電が行われる。なお、リセットのタイミングは、時限の終了時に限らず、任意に設定された時間ごとにしてもよい。
【0035】
次の時限の途中に、予測された総電力使用量が最大デマンド値を超えると判断すると、充電制御装置10は、制御対象を決める。直前の時限では、グループCが制御対象となっていたとき、グループD、グループA、グループB、グループCの順に制御対象になる。この時限が終了すると、充電制御装置10は、制御対象をリセットする。制御対象となったグループは、次の時限での制御順位は最後に回される。
【0036】
上記のエネルギー管理システムで、サーバー16は、電力メータ26~29、HEMSコントローラ11、充電制御部14から電力の使用に関する電力使用情報を収集して、集合住宅全体の電力の使用状況を監視するとともに、住戸2及び住戸2の入居者が利用する充電器24の電力使用情報を利用者に提供する。例えば、収集装置10が利用者である住民の住戸2の電力メータ(スマートメータ)27から電力使用情報を受け取り、
図8(a)に示すような1時間ごとの電力使用量や(b)に示すような1日ごとの電力使用量といったエネルギー管理者(サーバー16)が提供する情報をパソコンやスマートホンなどの端末機器18に表示させる。利用者はエネルギー管理者から提供された情報を入手することができる。
【0037】
また、収集装置10は、充電部13における電動車両6の充電に関する充電情報を電力メータ29を通じて収集する。収集装置10は、サーバー16を経由して充電情報を利用者に表示する。端末機器18は、
図9に示すような充電の電力使用量を表示する。
【0038】
個々の住戸2の住民とその住戸2にて利用される充電部13の利用者は同一であるので、各住戸2の電力使用量と充電部13の電力使用量が紐付けられる。サーバー16は、住戸2における電力使用量に基づく電気料金と充電部13における電力使用量に基づく電気料金とを管理し、それぞれの電気料金を仕分けし、合算して課金する。各電気料金は端末機器18において表示されるので、住民は毎月の電気料金を認識する。これにより、充電部13を利用する住戸2ごとに電気料金を一括して徴収することが可能となり、かつ省エネ意識を高めることができる。
【0039】
上記のような車両充電システムを導入することにより、経済合理性を追求した持続可能なエネルギー管理システムを築くことができる。そして、住民の生活パターンを変えることなく、電動車両6の充電可能台数を増やすことができる。しかも、電動車両6の充電台数が増えても最大デマンド値を超えることがなく、電気基本料金がアップしない。これによって、住民および管理組合に電気料金の負担をかけることはない。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。充電制御装置10とサーバー16とは別々に設けているが、充電制御装置10をサーバー16として機能させてもよい。さらに、充電制御装置10を収集装置17として機能させてもよく、充電制御装置10が課金したり、利用者に情報を提供する。複数棟からなる団地などの集合住宅において、各棟に駐車場7が付設している場合、充電部13のグルーピングとして、1つの棟の駐車場全体を1グループとしもよい。
【0041】
集合住宅1などの集合住宅の物件規模に応じてエコキュート9の群制御を行わない場合がある。すなわち、ある一定の規模を有する集合住宅1では、エコキュート9の群制御が行われる。しかし、規模が小さい集合住宅1では、群制御を行っても非効率であり、充電可能電力量をそれほど増やせない。
【符号の説明】
【0042】
1 集合住宅
2 住戸
3 専有部
4 電力負荷
5 共用部
6 電動車両
7 駐車場
10 充電制御装置
11 HEMSコントローラ
13 充電部
16 サーバー
17 収集装置
18 端末機器
24 充電器
26~29 電力メータ
30 開閉器
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸からなる専有部と共用部をまとめて高圧一括受電する集合住宅の駐車場において電動車両の充電を行う複数の充電部と、各充電部の動作を制御して電動車両の充電を管理し、集合住宅における最大デマンド値を超えない範囲で電動車両の充電に対して時限単位でデマンド制御を行う充電制御装置を備えた車両充電システムであって、各充電部に、電力使用量を計測する電力メータと、電動車両への電力供給をオンオフする開閉器とが設けられ、
充電制御装置は、最大デマンド値と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差を充電可能電力量とし、この充電可能電力量の範囲にて、各充電部の開閉器のオンオフを制御し、
負荷電力使用量と充電による電力使用量とを合わせて総計電力使用量とし、時限単位よりも短い間隔で総計電力使用量を予測し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断して、超えると判断すると、一部の充電部での電力供給を即座にオフし、この制御を予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えないと予想されるまで繰り返し行うことを特徴とする車両充電システム。
【請求項2】
各充電部が複数のグループに分けられ、充電制御装置は、グループ毎に充電動作を制御し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断したとき、1つのグループの電力供給をオフし、この後予測を行い、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合、他の1つのグループの電力供給をオフすることを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項3】
各グループの順位が予め設定され、充電制御装置は、ある時限で電力供給をオフしたグループに対して次の時限ではそのグループの順位を最後にすることを特徴とする請求項2記載の車両充電システム。
【請求項4】
電力使用に関する情報を収集する収集装置は、充電部における電動車両の充電に関する情報を電力メータを通じて収集して、集合住宅の電力使用を管理するサーバーに送信し、サーバーを通じて電力使用に関する情報を利用者が使用する端末装置に表示することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項5】
個々の住戸の電力使用量と充電部の電力使用量が紐付けられ、住戸における電力使用量に基づく電気料金と充電部における電力使用量に基づく電気料金とを合算して課金することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項6】
ある一定の規模を有する集合住宅において、専有部の複数の電力負荷を群制御することにより、最大デマンド値と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差が少ない時間帯の電力負荷の稼働をその他の時間帯に分散し、充電可能電力量を増加させることを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の車両充電システムと充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷の動作を制御するホームエネルギー管理システムとを併せて、集合住宅全体のエネルギー管理を行うエネルギー管理システムであって、充電制御装置は、集合住宅全体の電力使用量を監視して、充電部および電力負荷に対してデマンド制御を行うことを特徴とする集合住宅におけるエネルギー管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明のオール電化型集合住宅の車両充電システムは、複数の住戸からなる専有部と共用部をまとめて高圧一括受電する集合住宅の駐車場において電動車両の充電を行う複数の充電部と、各充電部の動作を制御して電動車両の充電を管理し、集合住宅における最大デマンド値を超えない範囲で電動車両の充電に対して時限単位でデマンド制御を行う充電制御装置を備え、各充電部に、電力使用量を計測する電力メータと、電動車両への電力供給をオンオフする開閉器とが設けられる。充電制御装置は、最大デマンド値(最大需要電力)と充電部以外の専有部と共用部において電力を消費する電力負荷で使用された負荷電力使用量との差を充電可能電力量とし、この充電可能電力量の範囲にて、各充電部の開閉器のオンオフを制御し、負荷電力使用量と充電による電力使用量とを合わせて総計電力使用量とし、時限単位よりも短い間隔で総計電力使用量を予測し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断して、超えると判断すると、一部の充電部での電力供給を即座にオフし、超えないときは、充電部での電力供給を継続する。この制御を予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えないと予想されるまで繰り返し行う。これにより、最大デマンド値を超えない範囲で多くの電動車両を充電できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
各充電部が複数のグループに分けられ、充電制御装置は、グループ毎に充電動作を制御し、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断したとき、1つのグループの電力供給をオフし、この後予測を行い、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超える場合、他の1つのグループの電力供給をオフする。各グループの順位が予め設定され、充電制御装置は、ある時限で電力供給をオフしたグループに対して次の時限ではそのグループの順位を最後にする。これにより、各グループの電動車両を満遍なく充電できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図3に示すように、HEMSでは、各住戸2に設けられたHEMSコントローラ11が住戸2内のエコキュート8の動作を制御する。車両充電システム
では、充電制御装置10が、集合住宅1における最大デマンド値に応じて、駐車場7における電動車両6の充電を行う複数の充電部1
3の動作を制御する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
1つの時限が終了すると、充電制御装置10は、制御対象をリセットする。すなわち、グループAとグループBは制御対象から外され、次の時限ではこれらのグループA,Bの順位は最後に回され、グループCが最上位の順位とされる。次の時限において、当初は総計電力使用量が最大デマンド値を超えていないとされ、全てのグループA~Dで充電が行われる。充電制御装置10は、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えるか否かを判断する。総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断されると、制御対象として決定されたグループCの電力供給が即座にオフされ、グループA,B,Dの充電は継続される。この時限が終了すると、制御対象がリセットされる。次の時限において、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えない場合、全てのグループA~Dで充電が行われる。なお、リセットのタイミングは、時限の終了時に限らず、任意に設定された時間ごとにしてもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
次の時限の途中に、予測された総計電力使用量が最大デマンド値を超えると判断すると、充電制御装置10は、制御対象を決める。直前の時限では、グループCが制御対象となっていたとき、グループD、グループA、グループB、グループCの順に制御対象になる。この時限が終了すると、充電制御装置10は、制御対象をリセットする。制御対象となったグループは、次の時限での制御順位は最後に回される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
上記のエネルギー管理システムで、サーバー16は、電力メータ26~29、HEMSコントローラ1
1から電力の使用に関する電力使用情報を収集して、集合住宅全体の電力の使用状況を監視するとともに、住戸2及び住戸2の入居者が利用する充電器24の電力使用情報を利用者に提供する。例えば、収集装置10が利用者である住民の住戸2の電力メータ(スマートメータ)27から電力使用情報を受け取り、
図8(a)に示すような1時間ごとの電力使用量や(b)に示すような1日ごとの電力使用量といったエネルギー管理者(サーバー16)が提供する情報をパソコンやスマートホンなどの端末機器18に表示させる。利用者はエネルギー管理者から提供された情報を入手することができる。