特開 2023-163944 トリガー式液体噴出器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023163944

(43)【公開日】2023-11-10

(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器

(51)【国際特許分類】

   B05B 11/00 20230101AFI20231102BHJP

   B65D 47/34 20060101ALI20231102BHJP

【ＦＩ】

B05B11/00 102J

B05B11/00 102E

B65D47/34 100

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022075192

(22)【出願日】2022-04-28

(71)【出願人】

【識別番号】000006909

【氏名又は名称】株式会社吉野工業所

(74)【代理人】

【識別番号】100141139

【弁理士】

【氏名又は名称】及川 周

(74)【代理人】

【識別番号】100140718

【弁理士】

【氏名又は名称】仁内 宏紀

(74)【代理人】

【識別番号】100140774

【弁理士】

【氏名又は名称】大浪 一徳

(74)【代理人】

【識別番号】100188592

【弁理士】

【氏名又は名称】山口 洋

(72)【発明者】

【氏名】阿部 孝之

【テーマコード（参考）】

3E084

【Ｆターム（参考）】

3E084AA12

3E084AA24

3E084AB01

3E084BA02

3E084CA01

3E084CC03

3E084DA01

3E084DB12

3E084DC03

3E084FB01

3E084GA04

3E084GB04

3E084KB01

3E084LB02

3E084LD22

3E084LD26

(57)【要約】

【課題】貯留ポンプ部の大型化を抑制した上で、回収通路に連通する時点での貯留シリンダ内に貯留される液体の量を増大させることができるトリガー式液体噴出器を提供する。
【解決手段】本発明に係る態様のトリガー式液体噴出器は、噴出器本体と、ノズル部材と、を備えている。噴出器本体は、縦供給筒部と、トリガー機構と、貯留シリンダと、貯留プランジャと、を備えている。貯留シリンダには、貯留プランジャの後方への移動に伴い、貯留シリンダの内外を連通させる開放口が形成されている。噴出器本体は、開放口に対して前後方向で異なる位置に形成され、容器体内に連通する回収通路と、回収通路及び開放口間を接続する接続通路と、を備えている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延び、液体が流通する縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方移動可能に設けられたトリガー部、及び前記トリガー部の後方への移動によって前記縦供給筒部を通じて液体を前記噴出孔に向けて送り出すトリガー機構と、
前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に、上下方向に交差する第１方向を軸方向として設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記第１方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記第１方向の一方側に移動する貯留プランジャと、
前記貯留プランジャを前記第１方向の他方側に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記貯留シリンダは、
前記貯留プランジャの前記第１方向の一方側への移動に伴い、内外を連通させる開放口を有し、前記貯留プランジャが前記第１方向に摺動可能なシリンダ内筒と、
前記シリンダ内筒の周囲を取り囲むとともに、前記シリンダ内筒との間に前記開放口に連通する接続通路が形成されたシリンダ外筒と、を備え、
前記噴出器本体のうち、前記開放口に対して前記第１方向で異なる位置には、前記容器体内と前記接続通路との間を接続する回収通路が形成されているトリガー式液体噴出器。

【請求項2】

前記シリンダ外筒は、前記縦供給筒部と一体に形成され、
前記シリンダ外筒には、前記第１方向の一方側の開口部を閉塞する閉塞部材が設けられ、
前記付勢部材は、前記シリンダ内筒内において前記貯留プランジャと前記閉塞部材との間に介在している請求項１に記載のトリガー式液体噴出器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。

【背景技術】

【0002】

トリガー式液体噴出器として、液体を貯留する主ポンプ部と、主ポンプ部を動作させるトリガー部と、を備える構成が開示されている。この構成によれば、トリガー部を後方に引くと、主ポンプ部のシリンダ内が加圧されることで、シリンダ内の液体が噴出孔に向けて流れる。これにより、液体が噴出孔を通じて噴出される。一方、トリガー部が前方に復帰する過程でシリンダ内が減圧されることで、容器体内の液体がシリンダ内に流入する。

【0003】

例えば下記特許文献１には、主ポンプ部に加え、貯留ポンプ部を備えるトリガー式液体噴出器が開示されている。この種のトリガー式液体噴出器では、トリガー部の操作に伴い、主ポンプ部から送り出される液体のうち、一部の液体が噴出孔を通じて噴出される一方、残りの液体が貯留ポンプ部のシリンダ内に貯留される。そのため、トリガー部の操作を停止した場合には、貯留ポンプ部のシリンダ内に貯留された液体が噴出孔に向けて流れる。これにより、トリガー部を操作しない状態であっても、液体を連続的に噴出できるとされている。

【0004】

下記特許文献１の構成において、容器体と貯留シリンダとの間を接続する縦供給筒部には、貯留プランジャが後方移動した際に、貯留シリンダ内と容器体内との間を連通させる回収通路が設けられている。この構成によれば、貯留シリンダと回収通路とが連通することで、貯留シリンダに貯留された液体が回収通路を通じて容器体に戻される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２０１７－２１３４９７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、上述した従来技術にあっては、貯留シリンダ内が回収通路の上端開口部を通じて直接連通しているため、貯留ポンプ部の大型化を抑制した上で、回収通路に連通する時点での貯留シリンダ内に貯留される液体の量（貯留プランジャのストローク量）を増加させることが難しかった。この場合、トリガー部の操作停止後における貯留シリンダ内からの内容物の噴出時間を確保することができない。

【0007】

本発明は、貯留ポンプ部の大型化を抑制した上で、回収通路に連通する時点での貯留シリンダ内に貯留される液体の量を増大させることができるトリガー式液体噴出器を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延び、液体が流通する縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方移動可能に設けられたトリガー部、及び前記トリガー部の後方への移動によって前記縦供給筒部を通じて液体を前記噴出孔に向けて送り出すトリガー機構と、前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に、上下方向に交差する第１方向を軸方向として設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内に前記第１方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記第１方向の一方側に移動する貯留プランジャと、前記貯留プランジャを前記第１方向の他方側に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記貯留シリンダは、前記貯留プランジャの前記第１方向の一方側への移動に伴い、内外を連通させる開放口を有し、前記貯留プランジャが前記第１方向に摺動可能なシリンダ内筒と、前記シリンダ内筒の周囲を取り囲むとともに、前記シリンダ内筒との間に前記開放口に連通する接続通路が形成されたシリンダ外筒と、を備え、前記噴出器本体のうち、前記開放口に対して前記第１方向で異なる位置には、前記容器体内と前記接続通路との間を接続する回収通路が形成されている。

【0009】

本態様によれば、貯留シリンダ内と回収通路とが開放口及び接続通路を介して連通することで、貯留シリンダ内と回収通路とが直接連通する構成に比べて、貯留プランジャが開放位置（貯留プランジャが開放口を通過した位置）に到達するまでのストロークの自由度を向上させることができる。この場合、開放口を回収通路よりも第１方向の一方側に設定することで、貯留ポンプ部の大型化を抑制した上で、開放位置に到達する時点での貯留シリンダ内への液体の貯留量を増加させることができる。その結果、トリガー機構の操作停止後における貯留シリンダ内からの内容物の噴出時間を確保できる。

【0010】

上記態様に係るトリガー式液体噴出器において、前記シリンダ外筒は、前記縦供給筒部と一体に形成され、前記シリンダ外筒には、前記第１方向の一方側の開口部を閉塞する閉塞部材が設けられ、前記付勢部材は、前記シリンダ内筒内において前記貯留プランジャと前記閉塞部材との間に介在していることが好ましい。
本態様によれば、シリンダ外筒を縦供給筒部と共通部材とすることができる。そのため、シリンダ内筒に貯留プランジャ（及び付勢部材）をプリアセンブリした状態で、シリンダ外筒の内側にシリンダ内筒を嵌め込んだ後、閉塞部材によってシリンダ外筒の開口部を閉塞することで、貯留プランジャと閉塞部材との間に付勢部材が介在した状態で、貯留ポンプとして組み上げることができる。これにより、上述した作用効果を奏するトリガー式液体噴出器を容易に製造することができる。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、貯留シリンダ及び貯留プランジャの大型化を抑制した上で、開放位置に到達する時点での貯留シリンダ内への液体の貯留量を増加させることができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】実施形態に係るトリガー式液体噴出器の縦断面図である。

【図2】貯留プランジャが開放位置にある状態を示すトリガー式液体噴出器の部分断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器１が容器体Ａに取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
図１に示すトリガー式液体噴出器１は、液体を収容する容器体Ａに装着される噴出器本体２と、液体を噴出する噴出孔４が形成されたノズル部材３と、噴出器本体２及びノズル部材３を覆うカバー１００と、を備えている。

【0014】

噴出器本体２は、縦供給筒部１０と、装着キャップ１１と、貯留ポンプ部１２と、射出筒部１３と、主ポンプ部１４を有するトリガー機構１５と、を有している。

【0015】

本実施形態では、縦供給筒部１０の中心軸線を軸線Ｏと呼ぶ。軸線Ｏに沿う方向を上下方向とし、上下方向において、容器体Ａ側を下側とし、その反対側を上側とする。上下方向から見て、軸線Ｏに交差する一方向を前後方向Ｌ１と呼び、上下方向及び前後方向Ｌ１の双方に直交する方向を左右方向Ｌ２と呼ぶ。前後方向Ｌ１において、ノズル部材３側を前側とし、その反対側を後側とする。

【0016】

縦供給筒部１０は、内筒１０ａと、内筒１０ａが嵌め込まれた有頂筒状の外筒１０ｂと、を備える二重筒状に形成されている。内筒１０ａ内には、主ポンプ部１４によって容器体Ａ内から吸い上げられる液体が流通する。縦供給筒部１０は、装着キャップ１１によって、容器体Ａに装着される。縦供給筒部１０（内筒１０ａ）の下端開口部内には、パイプ１６の上部が嵌合されている。パイプ１６は、トリガー式液体噴出器１が容器体Ａに装着された状態において、容器体Ａ内を下方に延びている。

【0017】

内筒１０ａ内には、ボール弁２１が設けられている。ボール弁２１は、内筒１０ａに設けられた下弁座部１０ｃに対し、下弁座部１０ｃの上方から接離可能に設けられている。ボール弁２１は、縦供給筒部１０内を通じた容器体Ａ内と主ポンプ部１４との間の連通及び遮断を切り替える。具体的に、ボール弁２１は、主ポンプ部１４（後述する主シリンダ４１）による加圧時に容器体Ａ内と主ポンプ部１４との連通を遮断するとともに、主ポンプ部１４による減圧時に容器体Ａ内と主ポンプ部１４との連通を許容する逆止弁とされている。

【0018】

内筒１０ａ内において、ボール弁２１よりも上方に位置する部分には、貯留弁２６が設けられている。貯留弁２６は、内筒１０ａに設けられた上弁座部１０ｄに対し、上弁座部１０ｄの上方から接離可能に設けられている。貯留弁２６は、縦供給筒部１０を通じた主ポンプ部１４と貯留ポンプ部１２との連通及び遮断を切り替える。具体的に、貯留弁２６は、主ポンプ部１４の加圧時に縦供給筒部１０から貯留ポンプ部１２（後述する貯留シリンダ３１）内への液体の供給を許容するとともに、貯留ポンプ部１２から縦供給筒部１０内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。

【0019】

内筒１０ａと外筒１０ｂとの間には、回収通路１７ａ、残圧解放通路１７ｂ及び連絡通路１７ｃが設けられている。回収通路１７ａは、軸線Ｏに対して後方に位置する部分を上下方向に延びている。回収通路１７ａの上端部は、外筒１０ｂの頂部に形成された上連通口１７ｄを通じて上方に向けて開口している。一方、回収通路１７ａの下端部は、内筒１０ａの下端部に形成された閉塞部１７ｅによって閉塞されている。

【0020】

残圧解放通路１７ｂは、軸線Ｏに対して前方に位置する部分を上下方向に延びている。残圧解放通路１７ｂの上端部は、縦供給筒部１０における上下方向の中間部分で終端している。一方、残圧解放通路１７ｂの下端部は、縦供給筒部１０を上下方向に貫通している。残圧解放通路１７ｂの下端開口部は、容器体Ａ内に向けて開放されている。

【0021】

連絡通路１７ｃは、回収通路１７ａと残圧解放通路１７ｂの下端部同士を接続している。連絡通路１７ｃは、内筒１０ａと外筒１０ｂとの間を周方向に延びている。すなわち、回収通路１７ａの下端部は、連絡通路１７ｃを経た後、残圧解放通路１７ｂの下端開口部を通じて容器体Ａ内に開放されている。なお、回収通路１７ａ及び残圧解放通路１７ｂは、連絡通路１７ｃを介さず別々に容器体Ａ内に開口していてもよい。

【0022】

縦供給筒部１０の上端部には、前方に向けて延びる接続筒部２９が設けられている。接続筒部２９の後端部は、縦供給筒部１０内に連通している。縦供給筒部１０の前方であって、接続筒部２９と装着キャップ１１との間に位置する部分には、シリンダ用筒部３０が設けられている。シリンダ用筒部３０は、前方に向けて開口する有底筒状に形成されている。

【0023】

貯留ポンプ部１２は、貯留シリンダ３１と、貯留プランジャ３２と、付勢部材３３と、を備えている。
貯留シリンダ３１は、縦供給筒部１０の上方において、前後方向Ｌ１を軸方向として設けられている。すなわち、本実施形態において前後方向Ｌ１は、第１方向に相当する。本実施形態において前側は、第１方向の他方側に相当する。また、本実施形態において後側は、第１方向の一方側に相当する。但し、第１方向は、上下方向に交差する方向であれば、前後方向Ｌ１と一致していなくてもよい。

【0024】

貯留シリンダ３１内には、主ポンプ部１４によって送り出された液体が、縦供給筒部１０内及び接続筒部２９内を通じて供給される。具体的に、貯留シリンダ３１は、シリンダ外筒３１ａと、シリンダ内筒３１ｂと、閉塞部材３１ｃと、を備えている。
シリンダ外筒３１ａは、頂壁３４及び周壁３５を有し、後方に開口する有頂筒状に形成されている。シリンダ外筒３１ａは、シリンダ内筒３１ｂの周囲を取り囲んでいる。本実施形態において、シリンダ外筒３１ａは、縦供給筒部１０や接続筒部２９、シリンダ用筒部３０と一体に形成されている。なお、シリンダ外筒３１ａは、縦供給筒部１０等とは別体で形成されていてもよい。

【0025】

頂壁３４には、貯留シリンダ３１内と射出筒部１３内とを連通させる通過孔３４ａが形成されている。
周壁３５は、後方に位置するものほど内径が拡大された多段筒状に形成されている。具体的に、周壁３５は、周壁３５のうち後端部以外の部分を構成する外筒小径部３５ａと、周壁３５の後端部を構成する外筒大径部３５ｂと、を備えている。
外筒小径部３５ａの下端部において、前後方向の中間部分は、縦供給筒部１０（外筒１０ｂ）の頂壁を兼ねている。外筒小径部３５ａの前端部には、シリンダ外筒３１ａ内と接続筒部２９内とを接続する供給孔３６が形成されている。供給孔３６は、周壁３５の下端部を上下方向に貫通している。供給孔３６は、上連通口１７ｄに対して前方に離れて設けられている。

【0026】

外筒大径部３５ｂは、外筒小径部３５ａに比べて内径を拡大させた部分である。外筒大径部３５ｂは、後方に向かうに従い内径が漸次拡大する外筒傾斜部３５ｂ１と、外筒傾斜部３５ｂ１から後方に向けて一様な内径で延びる外筒ストレート部３５ｂ２と、を備えている。

【0027】

シリンダ内筒３１ｂは、シリンダ外筒３１ａと同軸に配置された多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ内筒３１ｂは、シリンダ内筒３１ｂのうち後端部以外の部分を構成する内筒小径部３７ａと、シリンダ内筒３１ｂの後端部を構成する内筒大径部３７ｂと、を備えている。
内筒小径部３７ａは、外筒小径部３５ａ内に密に嵌め込まれている。内筒小径部３７ａの前端部には、内筒小径部３７ａの外周面から突出するシール突部５０ａが形成されている。シール突部５０ａは、内筒小径部３７ａの全周に亘って環状に延びている。シール突部５０ａは、外筒小径部３５ａの内周面に密に接している。図示の例において、シール突部５０ａは、前後方向Ｌ１に間隔をあけて複数形成されている。なお、シール突部５０ａは、外筒小径部３５ａに形成されていてもよく、内筒小径部３７ａと外筒小径部３５ａとの間に別体で設けられていてもよい。

【0028】

内筒大径部３７ｂは、後方に向かうに従い外径が漸次拡大する内筒傾斜部３７ｂ１と、内筒傾斜部３７ｂ１から後方に向けて一様な外径で延びる内筒ストレート部３７ｂ２と、を備えている。内筒大径部３７ｂは、内筒傾斜部３７ｂ１の外周面が外筒傾斜部３５ｂ１の内周面に密に接し、内筒ストレート部３７ｂ２の外周面が外筒ストレート部３５ｂ２の内周面に密に接した状態で、外筒大径部３５ｂ内に嵌め込まれている。内筒ストレート部３７ｂ２には、内筒ストレート部３７ｂ２の外周面から突出するシール突部５０ｂが形成されている。シール突部５０ｂは、内筒ストレート部３７ｂ２の全周に亘って環状に延びている。シール突部５０ｂは、外筒ストレート部３５ｂ２の内周面に密に接している。図示の例において、シール突部５０ｂは、前後方向Ｌ１に間隔をあけて複数形成されている。なお、シール突部５０ｂは、外筒ストレート部３５ｂ２に形成されていてもよく、内筒ストレート部３７ｂ２と外筒ストレート部３５ｂ２との間に別体で設けられていてもよい。

【0029】

内筒小径部３７ａにおいて、上連通口１７ｄよりも後方に位置する部分には、開放口３８が形成されている。開放口３８は、内筒小径部３７ａの下端部を上下方向に貫通している。

【0030】

外筒小径部３５ａと内筒小径部３７ａとの間には、上連通口１７ｄと開放口３８との間を接続させる接続通路３９が形成されている。接続通路３９は、例えば外筒小径部３５ａの下端部において前後方向Ｌ１に延びる溝である。接続通路３９は、前端部において上連通口１７ｄに連通している。一方、接続通路３９は、前後方向Ｌ１の中間部分において開放口３８に連通している。したがって、開放口３８は、接続通路３９及び上連通口１７ｄを通じて回収通路１７ａに連通している。図示の例において、接続通路３９は、外筒小径部３５ａの後端縁まで延びている。接続通路３９の後端開口部は、内筒傾斜部３７ｂ１によって閉塞されている。但し、接続通路３９は、少なくとも上連通口１７ｄと開放口３８との間に形成されていればよい。また、接続通路３９は、上連通口１７ｄと開放口３８との間を接続する構成であれば、開放口３８に対して周方向で異なる位置で前後方向Ｌ１に延びていてもよい。

【0031】

閉塞部材３１ｃは、前方に開口する有底筒状に形成されている。閉塞部材３１ｃは、シリンダ外筒３１ａの後端部に螺着等によって強固に装着されている。閉塞部材３１ｃの底部は、シリンダ内筒３１ｂ及びシリンダ外筒３１ａの後端開口縁に当接して、シリンダ内筒３１ｂ及びシリンダ外筒３１ａの後端開口部を閉塞している。閉塞部材３１ｃの底部には、シール筒３１ｃ１が形成されている。シール筒３１ｃ１は、内筒ストレート部３７ｂ２の内側に密に嵌め込まれている。なお、閉塞部材３１ｃは、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によってシリンダ外筒３１ａに装着されていてもよい。

【0032】

貯留プランジャ３２は、貯留シリンダ３１内を前後方向Ｌ１に移動可能に設けられている。貯留プランジャ３２は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。貯留プランジャ３２は、貯留シリンダ３１（シリンダ内筒３１ｂ）の内周面上を前後方向Ｌ１に密に摺動する。貯留プランジャ３２は、最前方位置において、通過孔３４ａを後方から閉塞することで、縦供給筒部１０内と噴出孔４（射出筒部１３内）との連通を遮断する。貯留プランジャ３２は、最前方位置から後方に移動したときに、通過孔３４ａから離間することで、通過孔３４ａを通じて縦供給筒部１０内と射出筒部１３内（噴出孔４）とを連通させる。貯留シリンダ３１において、貯留プランジャ３２よりも前方に位置する空間は、貯留空間Ｓとして機能する。

【0033】

貯留空間Ｓは、接続筒部２９を通して縦供給筒部１０内に常時連通している。したがって、貯留空間Ｓには、縦供給筒部１０内を通過した液体が貯留される。貯留空間Ｓは、貯留シリンダ３１内への液体の供給によって貯留プランジャ３２が後方に向けて移動することで拡張する。したがって、貯留空間Ｓは、貯留プランジャ３２の移動によって通過孔３４ａを通じて射出筒部１３内に連通可能である。また、貯留空間Ｓは、貯留プランジャ３２が開放口３８よりも後方に移動した時点（開放位置）で、開放口３８に連通する。すなわち、貯留空間Ｓは、貯留プランジャ３２が開放位置に到達すると、開放口３８及び接続通路３９を通じて回収通路１７ａに連通する。

【0034】

付勢部材３３は、貯留プランジャ３２と貯留シリンダ３１との間に介在して、貯留プランジャ３２を前方に向けて付勢している。本実施形態において、付勢部材３３は、前端部が貯留プランジャ３２の後部に支持され、後端部が閉塞部材３１ｃの底部に支持されている。なお、付勢部材３３は、例えば金属製のコイルばねである。

【0035】

本実施形態の貯留ポンプ部１２は、例えば以下のように組み上げられる。
まず、シリンダ内筒３１ｂ内に貯留プランジャ３２を嵌め込んだ後、付勢部材３３を挿入する。その後、シリンダ内筒３１ｂをシリンダ外筒３１ａ内に嵌め込む。最後に、シリンダ外筒３１ａに対して閉塞部材３１ｃを装着する。この際、閉塞部材３１ｃがシリンダ外筒３１ａに対して前方に移動するに従い、付勢部材３３に付勢力を付与することができる。

【0036】

射出筒部１３は、貯留シリンダ３１から前方に向けて延びている。射出筒部１３内は、通過孔３４ａを通じて貯留空間３１に連通可能である。

【0037】

トリガー機構１５は、主ポンプ部１４と、トリガー部４０と、を備えている。
主ポンプ部１４は、トリガー部４０の操作に応じて容器体Ａ内の液体の貯留及び圧送を行う。主ポンプ部１４は、主シリンダ４１と、主ピストン４２と、を備えている。
主シリンダ４１は、シリンダ用筒部３０にシリンダ用筒部３０の前方から嵌め込まれている。主シリンダ４１は、前方に向けて開口する有底筒状に形成されている。主シリンダ４１の底部には、主シリンダ４１内と縦供給筒部１０（内筒１０ａ）内とを連通させる連通筒４１ａが設けられている。連通筒４１ａは、主シリンダ４１の底部のうち外周部分から後方に向けて突出している。連通筒４１ａの後端部は、縦供給筒部１０のうち、ボール弁２１よりも上方に位置する部分に差し込まれている。連通筒４１ａの後端開口部は、縦供給筒部１０内で開放されている。すなわち、主シリンダ４１内と縦供給筒部１０内とは、連通筒４１ａを通じて常時連通している。

【0038】

主ピストン４２は、前後方向Ｌ１に移動可能に主シリンダ４１内に設けられている。主ピストン４２は、連係部４２ａと、摺動部４２ｂと、を備えている。
連係部４２ａは、後方に開口する有頂筒状に形成されている。連係部４２ａは、主シリンダ４１の底部から突出するピストンガイド４１ｂに、前後動可能に支持されている。連係部４２ａとピストンガイド４１ｂとの間には、付勢部材４３が介在している。付勢部材４３は、連係部４２ａを介して主ピストン４２を前方に向けて付勢している。これにより、主ピストン４２は、前方付勢状態で後方に移動可能である。なお、付勢部材４３は、例えば金属製のコイルばねである。

【0039】

縦供給筒部１０（外筒１０ｂ）のうち、ピストンガイド４１ｂ内に露呈する部分には、排出孔４７が形成されている。排出孔４７は、外筒１０ｂを前後方向Ｌ１に貫通している。排出孔４７の後端開口部は、上述した残圧解放通路１７ｂに連通している。

【0040】

摺動部４２ｂは、連係部４２ａの後端部に連なっている。摺動部４２ｂは、主シリンダ４１と同軸に配置された筒状に形成されている。摺動部４２ｂは、連係部４２ａの周囲を取り囲んでいる。摺動部４２ｂは、主シリンダ４１の内周面に密接している。摺動部４２ｂは、主シリンダ４１に対する主ピストン４２の前後動に伴い、主シリンダ４１の内周面上を密に摺動する。

【0041】

トリガー部４０は、縦供給筒部１０の前方において、下方に向かうに従い前方に延びている。トリガー部４０の上端部は、射出筒部１３の下方に設けられた軸受部４８に、左右方向Ｌ２に沿う軸線回りに回動可能に支持されている。トリガー部４０のうち、上下方向の中間部には、連係部４２ａの前端部が接続されている。したがって、主ピストン４２は、トリガー部４０の後方への回動に伴い、主シリンダ４１に対して後方に移動する。

【0042】

ノズル部材３は、射出筒部１３に対して前方から組み付けられている。ノズル部材３は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。ノズル部材３内は、射出筒部１３内に連通している。ノズル部材３の頂壁部には、噴出孔４が形成されている。噴出孔４は、ノズル部材３の頂壁部を前後方向Ｌ１に貫通している。

【0043】

カバー１００は、側面視においてＴ字状に形成されるとともに、前方及び下方に向けて開口する箱型に形成されている。カバー１００は、噴出孔４を前方に露呈させた状態で、噴出器本体２及びノズル部材３を上方、後方及び側方から取り囲んでいる。カバー１００の後端部には、露出孔１００ａが形成されている。上述した貯留シリンダ３１の後端部（閉塞部材３１ｃ）は、露出孔１００ａを通じてカバー１００よりも後方に突出している。

【0044】

次に、上述したトリガー式液体噴出器１の作用について説明する。
トリガー式液体噴出器１において、液体を噴出させるには、装着キャップ１１に手を掛け回した状態でトリガー部４０に指を引っ掛ける。トリガー式液体噴出器１を把持した状態で、トリガー部４０を後方に引く。すると、主ピストン４２は、主シリンダ４１内を後方に向けて移動する。その結果、主シリンダ４１内が加圧される。すると、主シリンダ４１内の液体が縦供給筒部１０内に供給される。縦供給筒部１０内に供給された液体は、ボール弁２１を下方に向けて押し付けるとともに、貯留弁２６を上方に向けて押し上げる。これにより、ボール弁２１が下弁座部１０ｃに接触した状態で、貯留弁２６が上弁座部１０ｄから上方に離反する。

【0045】

縦供給筒部１０内の液体が、接続筒部２９を通して、貯留シリンダ３１（貯留空間Ｓ）内に供給される。貯留空間Ｓに液体が供給されると、貯留シリンダ３１内が加圧される。これにより、貯留プランジャ３２が付勢部材３３の付勢力に抗して後方に移動する。その結果、貯留空間Ｓに液体が貯留される。

【0046】

貯留プランジャ３２が後方に移動することで、貯留空間Ｓと射出筒部１３内とが連通する。これにより、貯留空間Ｓに貯留されている液体が、射出筒部１３内を噴出孔４に向けて流れる。その後、射出筒部１３を通過した液体は、噴出孔４を通じて外部に噴出される。なお、トリガー部４０の操作を解除すると、付勢部材４３の付勢力によって主ピストン４２が主シリンダ４１内を前方に向けて復元移動し、これに伴いトリガー部４０も前方に復元移動する。その結果、主シリンダ４１内が減圧する。すると、ボール弁２１が下弁座部１０ｃから浮き上がり、容器体Ａ内と主シリンダ４１とが縦供給筒部１０内を通じて連通する。一方、貯留弁２６は、上弁座部１０ｄに着座した状態を維持することで、縦供給筒部１０内を通じた主シリンダ４１内と貯留空間Ｓ内との連通が遮断される。その結果、容器体Ａ内の液体が縦供給筒部１０内に吸い上げられる。縦供給筒部１０内に流入した液体は、主シリンダ４１内に導入されることで、次の噴出操作に備えることができる。

【0047】

本実施形態のように、貯留ポンプ部１２を備える構成では、トリガー部４０を操作する度に、主シリンダ４１から供給される液体のうち、一部の液体が噴出孔４を通じて噴出されるとともに、残りの液体が貯留空間Ｓ内に貯留される。そのため、トリガー部４０の操作を停止した場合、貯留空間Ｓ内への液体の供給は停止するものの、付勢部材３３の付勢力によって貯留プランジャ３２が前方移動することで、貯留空間Ｓ内に貯留された液体が継続的に射出筒部１３に供給される。これにより、噴出孔４を通じて液体を噴出させ続けることができる。

【0048】

ここで、図２に示すように、トリガー部４０が継続的に操作されることで、貯留プランジャ３２が徐々に後方に移動し、貯留空間Ｓ内での液体の貯留量が増加する。一方、貯留プランジャ３２が開放位置に到達すると、貯留空間Ｓと開放口３８とが連通する。すると、貯留空間Ｓ内に貯留された液体の一部が、開放口３８を通じて貯留空間Ｓから排出される。貯留空間Ｓから排出された液体は、接続通路３９及び回収通路１７ａを経て、残圧解放通路１７ｂの下端開口部から容器体Ａ内に戻される。すなわち、開放口３８が貯留空間Ｓに連通している状態では、貯留空間Ｓに貯留された液体のうち、一部の液体が噴出孔４を通じて噴出されるとともに、一部の液体が容器体Ａ内に戻される。これにより、貯留プランジャ３２の最大ストロークが制限され、貯留空間Ｓ内の圧力が過剰に上昇することが抑制される。

【0049】

貯留空間Ｓ内の液体が排出されると、貯留プランジャ３２が貯留シリンダ３１内を前方に移動する。すると、貯留空間Ｓと開放口３８との連通が貯留プランジャ３２によって遮断される。これにより、貯留空間Ｓの液体が開放口３８を通じて排出されることが規制される。

【0050】

このように、本実施形態のトリガー式液体噴出器１において、貯留シリンダ３１には、貯留プランジャ３２の後方移動に伴い、貯留シリンダ３１の内外を連通させる開放口３８が形成されている構成とした。その上で、噴出器本体２は、開放口３８に対して前後方向で異なる位置に形成され、容器体Ａ内に連通する回収通路１７ａと、回収通路１７ａ及び開放口３８間を接続する接続通路３９と、を備えている構成とした。
この構成によれば、貯留シリンダ３１内（貯留空間Ｓ）と回収通路１７ａとが開放口３８及び接続通路３９を介して連通することで、貯留空間Ｓと回収通路１７ａとが直接連通する構成に比べて、貯留プランジャ３２が開放位置に到達するまでのストロークの自由度を向上させることができる。この場合、開放口３８を回収通路１７ａよりも後方に設定することで、貯留ポンプ部１２の大型化を抑制した上で、開放位置に到達する時点での貯留空間Ｓへの液体の貯留量を増加させることができる。その結果、トリガー部４０の操作停止後における貯留シリンダ３１内からの内容物の噴出時間を確保できる。

【0051】

本実施形態のトリガー式液体噴出器１において、貯留シリンダ３１は、開放口３８を有し、貯留プランジャ３２が前後方向Ｌ１に摺動可能なシリンダ内筒３１ｂと、シリンダ内筒３１ｂとの間に接続通路３９を形成するシリンダ外筒３１ａと、を備えている構成とした。
この構成によれば、開放口３８や接続通路３９について設計の自由度を向上させることができる。

【0052】

本実施形態では、シリンダ外筒３１ａが縦供給筒部１０と一体に形成されている構成とした。
この構成によれば、シリンダ外筒３１ａを縦供給筒部１０と共通部材とすることができる。そのため、シリンダ内筒３１ｂに貯留プランジャ３２（及び付勢部材３３）をプリアセンブリした状態で、シリンダ外筒３１ａの内側にシリンダ内筒３１ｂを嵌め込んだ後、閉塞部材３１ｃによってシリンダ外筒３１ａの開口部を閉塞することで、貯留プランジャ３２と閉塞部材３１ｃとの間に付勢部材３３が介在した状態で、貯留ポンプ部１２として組み上げることができる。これにより、上述した作用効果を奏するトリガー式液体噴出器１を容易に製造することができる。

【0053】

以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、開放口３８が上連通口１７ｄよりも後方に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。開放口３８は、上連通口１７ｄに対して前後方向Ｌ１でずれた位置に形成されていればよく、例えば上連通口１７ｄに対して前方に形成されていてもよい。
上述した実施形態では、縦供給筒部１０に回収通路１７ａが形成された構成について説明したが、この構成に限られない。回収通路１７ａは、噴出器本体２に備えられていれば、縦供給筒部１０以外の部材に形成されていてもよい。

【0054】

その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。

【符号の説明】

【0055】

１：トリガー式液体噴出器
２：噴出器本体
３：ノズル部材
４：噴出孔
１０：縦供給筒部
１５：トリガー機構
１７ａ：回収通路
３１：貯留シリンダ
３１ａ：シリンダ外筒
３１ｂ：シリンダ内筒
３１ｃ：閉塞部材
３２：貯留プランジャ
３８：開放口
３９：接続通路
４０：トリガー部
Ａ：容器体

【図1】

【図2】