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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163948
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】エジェクタ
(51)【国際特許分類】
   F04F 5/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F04F5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075200
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小室 吉輝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜之
(72)【発明者】
【氏名】中西 紘章
(72)【発明者】
【氏名】谷本 浩一
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA15
3H079AA23
3H079BB10
3H079CC03
3H079CC12
3H079DD03
3H079DD23
(57)【要約】
【課題】吸引流量を容易に変更することができるエジェクタを提供する。
【解決手段】エジェクタは、内側の導入空間に吸引流体が供給される基部、導入空間に接続されて軸線方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ空間を形成するテーパ部、及び、テーパ空間から軸線方向一方側に延びる混合空間を形成する混合管を有するケーシングと、軸線を中心として延びて導入空間に軸線方向他方側から挿入されているとともに、駆動流体を噴出する先端開口がテーパ空間内に位置する駆動流ノズルと、先端開口の軸線方向位置を、テーパ空間の軸線方向位置の範囲で可変とする移動機構と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の導入空間に吸引流体が供給される基部、前記導入空間に接続されて軸線方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ空間を形成するテーパ部、及び、前記テーパ空間から前記軸線方向一方側に延びる混合空間を形成する混合管を有するケーシングと、
前記軸線を中心として延びて前記導入空間に前記軸線方向他方側から挿入されているとともに、駆動流体を噴出する先端開口が前記テーパ空間内に位置する駆動流ノズルと、
前記先端開口の前記軸線方向位置を、前記テーパ空間の前記軸線方向位置の範囲で可変とする移動機構と、
を備えるエジェクタ。
【請求項2】
前記移動機構は、前記ケーシングに対して、前記駆動流ノズルの全体を前記軸線方向に相対移動させて、前記先端開口の前記軸線方向位置を可変とする、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項3】
前記移動機構は、前記駆動流ノズルのうち前記先端開口を含む前記軸線方向一方側のみを前記軸線方向に伸縮させて、前記先端開口の前記軸線方向位置を可変とする、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記基部を外側から覆って前記基部との間に導入前空間を形成するとともに、前記導入前空間内に前記吸引流体が供給される外部ケーシングをさらに有し、
前記基部の側壁には、全周にわたって、前記導入空間と前記導入前空間とを連通させる連通部が形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエジェクタ。
【請求項5】
前記連通部は、前記軸線の周方向に延びるスリットである、
請求項4に記載のエジェクタ。
【請求項6】
前記連通部は、前記軸線の周方向に並んで複数設けられたホールである、
請求項4に記載のエジェクタ。
【請求項7】
前記駆動流ノズルは、
前記軸線方向他方側に設けられた大径管と、
前記軸線方向一方側に設けられ、前記大径管よりも小径の小径管と、
を有し、
前記大径管の全体が前記基部よりも前記軸線方向他方側に位置し、
前記小径管は、前記導入空間内に挿入されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエジェクタ。
【請求項8】
前記ケーシングは、前記混合空間に接続されて前記軸線方向一方側に向かって徐々に拡径するディフューザ空間を形成するディフューザ部をさらに有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のエジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、混合冷媒を用いた冷凍サイクルに適用されるエジェクタが開示されている。このエジェクタは、コンデンサから流出した高圧冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させるノズルと、ノズルから噴出する高い速度の冷媒流により蒸発器にて蒸発した気相冷媒を吸引する昇圧部と、を有する。昇圧部は、ノズルから噴出する冷媒と蒸発器から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒を昇圧させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3433737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエジェクタでは、供給される高圧冷媒、吸引される冷媒、及び、これらの冷媒が混合される昇圧部の3つの圧力によって、冷媒の流れが決定される。このため、固定されたサイクル内で、吸引流量を可変とすることが困難であった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、吸引流量を容易に変更することができるエジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るエジェクタは、内側の導入空間に吸引流体が供給される基部、前記導入空間に接続されて軸線方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ空間を形成するテーパ部、及び、前記テーパ空間から前記軸線方向一方側に延びる混合空間を形成する混合管を有するケーシングと、前記軸線を中心として延びて前記導入空間に前記軸線方向他方側から挿入されているとともに、駆動流体を噴出する先端開口が前記テーパ空間内に位置する駆動流ノズルと、前記先端開口の前記軸線方向位置を、前記テーパ空間の前記軸線方向位置の範囲で可変とする移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエジェクタによれば、吸引流量を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係るターボ冷凍機の冷凍サイクルの模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るエジェクタの斜視図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るエジェクタの断面図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る駆動流ノズルの先端開口を示す斜視図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るエジェクタの断面図である。
図6】本開示の第三実施形態に係るエジェクタの斜視図である。
図7】本開示の第三実施形態に係るエジェクタの断面図である。
図8】本開示の第三実施形態の変形例に係るエジェクタの斜視図である。
図9】本開示の第三実施形態の変形例に係るエジェクタの断面図である。
図10】本開示の第四実施形態に係るエジェクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(ターボ冷凍機)
以下、本開示の実施形態に係るエジェクタ10が搭載されたターボ冷凍機1について、図1から図4を参照して説明する。
ターボ冷凍機1は、遠心圧縮機等のターボ式の圧縮機を用いた冷却装置である。ターボ冷凍機1は、例えばオフィスビル等の大規模設備における空調装置に用いられる。図1に、ターボ冷凍機1の冷凍サイクルの一例を示す。
【0010】
図1に示すように、ターボ冷凍機1は、圧縮機2と、凝縮器3と、膨張弁4と、蒸発器5と、エジェクタ10と、を備える。
【0011】
圧縮機2は、気体の冷媒Wを圧縮して冷媒Wを昇圧する。凝縮器3は、圧縮機2で圧縮された冷媒Wを冷却して、液体に凝縮する。膨張弁4は、凝縮器3からの冷媒Wを減圧する。蒸発器5は、膨張弁4で減圧された液体の冷媒Wを蒸発させて、外気と熱交換を行う。外気は、蒸発器5と熱交換を行うことで冷却されて冷風となる。蒸発器5で作られた冷風は、冷却対象の室内に送風される。蒸発器5で蒸発し、気体となった冷媒Wは、再び圧縮機2へと送られる。このようにして、冷媒Wは、ターボ冷凍機1の冷凍サイクル内を循環する。
冷媒Wには、例えばフロンガスや、代替フロン等が用いられる。
【0012】
以下では、冷凍サイクルの冷媒Wの流通方向を単に「流通方向」と称し、流通方向の上流を単に「上流」と称し、「流通方向」の下流を単に「下流」と称して説明する場合がある。
【0013】
本実施形態の蒸発器5は、液膜式蒸発器である。このため、蒸発器5の底部には、未蒸発の液体の冷媒Wが貯留される。蒸発器5の底部に貯留された冷媒Wを再循環させるために、エジェクタ10が設けられている。
【0014】
(エジェクタ)
エジェクタ10は、駆動流配管6によって凝縮器3の下流側と接続されている。エジェクタ10には、駆動流配管6を介して、凝縮器3で液化した冷媒Wの一部が供給される。また、エジェクタ10は、吸引流配管7によって蒸発器5の底部と接続されている。エジェクタ10には、吸引流配管7を介して、蒸発器5の底部に貯留された液体の冷媒Wが供給される。エジェクタ10内では、駆動流配管6を介して供給された冷媒Wと、吸引流配管7を介して供給された冷媒Wとが混合される。また、エジェクタ10は、戻り配管8によって、蒸発器5の上流側に接続されている。エジェクタ10は、駆動流配管6及び吸引流配管7を介して供給された冷媒Wを、戻り配管8を介して蒸発器5に戻す。
【0015】
続いて、エジェクタ10の構造について詳細に説明する。
以下では、駆動流配管6を介してエジェクタ10に供給される冷媒Wを「駆動流体W1」と称し、吸引流配管7を介してエジェクタ10に供給される冷媒Wを「吸引流体W2」と称し、エジェクタ10内で駆動流体W1と吸引流体W2が混合されることによって生成される流体を「混合流体W3」と称して説明する場合がある。
本実施形態の駆動流体W1、吸引流体W2、及び混合流体W3は、全て液体である。
エジェクタ10は、上流側と下流側の圧力差を利用して、吸引流体W2を吸引して下流側に送る装置である。
【0016】
図2図3に示すように、エジェクタ10は、ケーシング20と、駆動流ノズル30と、シール機構40と、移動機構50と、を備える。
【0017】
(ケーシング)
ケーシング20は、一方向に延びる筒状に形成されている。
以下では、ケーシング20の軸線Oを単に「軸線O」と称して説明する場合がある。また、軸線Oの延在方向を、単に「軸線O方向」と称し、軸線Oの径方向を単に「径方向」と称し、軸線Oの周方向を単に「周方向」と称して説明する場合がある。また、軸線O方向のうち、下流側を「軸線O方向一方側」と称し、上流側を「軸線O方向他方側」と称して説明する場合がある。
ケーシング20は、基部21と、テーパ部22と、混合管23と、ディフューザ部24と、を有する。
【0018】
(基部)
基部21は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。基部21の内部には、導入空間V1が形成されている。基部21の内側の導入空間V1には、吸引流体W2が供給される。基部21は、軸線O周りに形成された側壁25と、側壁25の軸線O方向他方側に設けられた底部26と、を有する。
【0019】
側壁25には、吸引孔27が形成されている。本実施形態では、吸引孔27は、側壁25に1つ形成されている。吸引孔27は、側壁25を径方向に貫通する。吸引孔27は、断面円形状に形成されている。吸引孔27には、吸引流配管7の下流側の端部(蒸発器5とは反対側の端部)が接続されている。吸引流体W2は、吸引流配管7から吸引孔27を通って導入空間V1に供給される。
【0020】
底部26は、側壁25の軸線O方向他方側を閉塞する。底部26は、軸線Oと直交する円板状に形成されている。底部26の中心には、挿入孔28が形成されている。挿入孔28は、底部26の中心に設けられている。挿入孔28は、底部26を軸線O方向に貫通している。
【0021】
(テーパ部)
テーパ部22は、基部21の軸線O方向一方側の端部に設けられている。テーパ部22は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。テーパ部22は、基部21と同軸に配置されている。テーパ部22は、軸線O方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。テーパ部22の内部には、テーパ空間V2が形成されている。テーパ空間V2は、導入空間V1に接続されて軸線O方向一方側に向かって徐々に縮径している。
【0022】
(混合管)
混合管23は、テーパ部22の軸線O方向一方側の端部に設けられている。混合管23は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。混合管23は、テーパ部22と同軸に配置されている。混合管23の内部には、混合空間V3が形成されている。混合空間V3は、テーパ空間V2から軸線O方向一方側に延びている。
【0023】
(ディフューザ部)
ディフューザ部24は、混合管23の軸線O方向一方側の端部に設けられている。ディフューザ部24は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。ディフューザ部24は、混合管23と同軸に配置されている。ディフューザ部24の内部には、ディフューザ空間V4が形成されている。ディフューザ空間V4は、混合空間V3に接続されて軸線O方向一方側に向かって徐々に拡径している。
【0024】
(駆動流ノズル)
駆動流ノズル30は、軸線Oを中心として延びる円筒状に形成されている。すなわち、駆動流ノズル30は、ケーシング20と同軸に配置されている。駆動流ノズル30は、導入空間V1に軸線O方向他方側から挿入されている。駆動流ノズル30は、大径管31と、接続管32と、小径管33と、を有する。
【0025】
(大径管)
大径管31は、駆動流ノズル30の軸線O方向他方側に設けられている。大径管31は、ケーシング20の底部26に設けられた挿入孔28に挿入されている。大径管31は、軸線O方向に延びる円筒状の部材である。大径管31の軸線O方向他方側の端部は、導入空間V1の外側に位置している。大径管31の軸線O方向他方側の端部には、駆動流配管6の下流側の端部(凝縮器3とは反対側の端部)が接続されている。大径管31内には、駆動流配管6から駆動流体W1が供給される。
【0026】
(接続管)
接続管32は、大径管31の軸線O方向一方側の端部に設けられている。接続管32は、大径管31から軸線O方向一方側に延びる円筒状に形成されている。接続管32は、大径管31と同軸に配置されている。接続管32は、軸線O方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。
【0027】
(小径管)
小径管33は、駆動流ノズル30の軸線O方向一方側に設けられている。より詳細には、小径管33は、接続管32の軸線O方向一方側の端部に設けられている。小径管33は、接続管32から軸線O方向一方側に延びる円筒状に形成されている。小径管33は、接続管32と同軸に配置されている。小径管33は、大径管31よりも小径に形成されている。小径管33は、軸線O方向一方側の端部に先端開口34を有する。
【0028】
(先端開口)
先端開口34は、駆動流ノズル30内に供給された駆動流体W1を噴出する。先端開口34は、テーパ空間V2内に位置する。先端開口34の軸線Oに直交する断面形状は、円形状に形成されている。
【0029】
(シール機構)
シール機構40は、ケーシング20の底部26に設けられた挿入孔28に配置されている。シール機構40は、挿入孔28と駆動流ノズル30との間に設けられている。シール機構40は、駆動流ノズル30を軸線O方向に移動可能に支持する。さらに、シール機構40は、ケーシング20と駆動流ノズル30とをシールして、導入空間V1から冷媒Wが漏れ出るのを防止する。本実施形態では、シール機構40は、駆動流ノズル30の大径管31の全周に設けられている。
【0030】
(移動機構)
移動機構50は、駆動流ノズル30の先端開口34の軸線O方向位置を、テーパ空間V2の軸線O方向位置の範囲で可変とする。すなわち、先端開口34の可動域は、テーパ空間V2内となる。本実施形態では、移動機構50は、駆動流ノズル30の全体を軸線O方向に移動させて、先端開口34の軸線O方向位置を可変とする。移動機構50として、例えばボールネジ等を用いた電動機構等が挙げられる。
【0031】
(エジェクタの吸引の仕組み)
続いて、エジェクタ10の吸引の仕組みついて説明する。
駆動流ノズル30よりも上流側(凝縮器3側)は、駆動流ノズル30の下流側よりも圧力が高くなっている。この圧力差により、駆動流ノズル30よりも上流側から駆動流ノズル30に駆動流体W1が流入する。駆動流体W1は、駆動流ノズル30のテーパ状に形成された接続管32で縮流する。これにより、駆動流体W1は減圧されて、混合空間V3に導かれる。これにより、駆動流体W1の圧力エネルギー(膨張エネルギー)が速度エネルギーに変換されて、先端開口34から駆動流体W1が高速で噴出する。
【0032】
先端開口34から噴出した駆動流体W1は、蒸発器5の底に貯留された冷媒Wを吸引する。この蒸発器5から吸引された冷媒Wが吸引流体W2となる。吸引流体W2が、吸引流配管7を通ってケーシング20内の導入空間V1に流入する。さらに、吸引流体W2は、駆動流体W1によって軸線O方向一方側(下流側)へ引き込まれる。これにより、吸引流体W2は、導入空間V1からテーパ空間V2を通って混合空間V3に導かれる。
【0033】
混合空間V3では、駆動流体W1と吸引流体W2とが混合されながら下流側に向けて流れる。駆動流体W1と吸引流体W2が混合されることにより混合流体W3が生成される。混合流体W3は、混合空間V3からディフューザ空間V4に導かれる。
【0034】
ディフューザ空間V4では、混合流体W3が拡散されながら下流側に向けて流れる。これにより、混合流体W3は昇圧される。ディフューザ空間V4で昇圧された混合流体W3は、エジェクタ10から下流側(蒸発器5側)に送られる。
【0035】
(作用効果)
以下、本実施形態のエジェクタ10の作用効果について説明する。
本実施形態では、駆動流体W1を噴出する駆動流ノズル30の先端開口34がテーパ空間V2内に位置する。移動機構50は、先端開口34の軸線O方向位置を、テーパ空間V2の軸線O方向位置の範囲で可変とする。
【0036】
駆動流体W1の流れによって吸引流体W2が導入空間V1に吸引される。このため、図4に示すように、吸引流量は、先端開口34の軸線O方向位置における吸引流体W2の流路断面Amsと駆動流体W1の流路断面Amdの面積比(Ams/Amd)によって決定される。先端開口34の軸線O方向位置では、駆動流体W1の流路断面Amdは、先端開口34の内側空間の断面であり、吸引流体W2の流路断面Amsは、テーパ空間V2の断面のうち先端開口34の内側空間の断面を除く部分である。本実施形態によれば、エジェクタ10は、テーパ空間V2内で先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。これにより、先端開口34の軸線O方向位置における吸引流体W2の流路断面Amsのみを変更して、吸引流体W2の流路断面Amsと駆動流体W1の流路断面Amdの面積比(Ams/Amd)を変更することができる。このように、先端開口34の位置を変更するだけで、面積比(Ams/Amd)を変更し、吸引流量を変更することができる。したがって、エジェクタ10を用いることにより、吸引流量を容易に変更することができる。
【0037】
吸引流量を変更することにより、ターボ冷凍機1の部分負荷運転や負荷追従運転への対応が見込める。例えば、部分負荷運転時には、駆動流体W1の圧力は定格時よりも低くなるため、駆動流体W1の流量は減少し、その場合、一般的に吸引流体W2の流量も減少する。しかし、液膜式蒸発器の冷媒循環に使用する場合、一定の流量を循環させることが望ましいため、駆動流体W1の流量に対する吸引流体W2の流量の割合を増加させる必要がある。その場合に、本実施形態のエジェクタ10によれば、駆動流ノズル30の先端開口34の軸線O方向位置を調整することにより、吸引流体W2の流路断面Amsを拡大し、駆動流体W1の流量に対する吸引流体W2の流量の割合を増加させることができる。
【0038】
本実施形態では、移動機構50は、駆動流ノズル30の全体を軸線O方向に移動させて、先端開口34の軸線O方向位置を可変とする。
【0039】
本実施形態によれば、移動機構50は、簡単な構成で、先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。したがって、エジェクタ10の生産効率を向上させるとともに、エジェクタ10の製造コストを低減することができる。
【0040】
本実施形態では、ケーシング20は、混合空間V3に接続されて軸線O方向一方側に向かって徐々に拡径するディフューザ空間V4を形成するディフューザ部24を有する。
【0041】
本実施形態によれば、エジェクタ10は、混合管23で混合した流体をディフューザ部24で拡散させて膨張させることができる。これにより、エジェクタ10は、混合流体W3をディフューザ部24で昇圧させてから下流側に送ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、エジェクタ10によって冷媒Wを蒸発器5から吸引し、冷凍サイクル内を再循環させている。ところで、例えばポンプを用いて冷媒を循環させる場合、ポンプの可動部を頻繁にメンテナンスする必要があり、メンテナンスコストがかかる。そもそも、ポンプを用いずに、液体の冷媒をサイクル内で循環させることについては、過去に知見がない。これに対し、エジェクタ10は、サイクル内の圧力差を利用して液体の冷媒Wを吸引し、サイクル内を循環させる。このため、液体の冷媒Wを循環させるためにポンプを用いる必要がなくなる。よって、ポンプのメンテナンスコストが不要となり、コストを低減することが可能となる。また、ターボ冷凍機1の全体としてメンテナンスの頻度を低減することができる。
【0043】
なお、第一実施形態では、駆動流ノズル30を移動させる場合について説明したが、これに限るものではない。駆動流ノズル30とケーシング20とが軸線O方向に相対移動すればよく、例えば、移動機構50とケーシング20とを接続し、ケーシング20を軸線O方向に移動させてもよい。
【0044】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係るエジェクタ210について、図5を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0045】
図5に示すように、駆動流ノズル230の小径管233は、軸線O方向に伸縮可能に設けられている。
また、本実施形態の移動機構250は、駆動流ノズル230のうち先端開口34を含む軸線O方向一方側のみを軸線O方向に伸縮させて、先端開口34の軸線O方向位置を可変とする。移動機構250は、例えば、駆動流ノズル30のうち小径管33に接続されるとともに、外部からの信号を受信するアンテナ251を有する。
【0046】
さらに、エジェクタ210は、操作装置260を有している。操作装置260は、例えばターボ冷凍機1の外部に設置されている。使用者は、操作装置260を操作して、操作信号をアンテナ251に送信する。これにより、アンテナ251が操作装置260から操作信号を受信すると、移動機構250は、操作信号に応じて小径管233を軸線O方向に伸縮させる。これにより、先端開口34の軸線O方向の位置が可変となる。
【0047】
本実施形態では、移動機構250は、駆動流ノズル230のうち先端開口34を含む軸線O方向一方側のみを軸線O方向に伸縮させて、先端開口34の軸線O方向位置を可変とする。
【0048】
本実施形態によれば、移動機構250は、駆動流ノズル230とケーシング20とのシール(シール機構240)を動かすことなく、先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。したがって、吸引流体W2の漏れをより確実に防止することができる。
【0049】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係るエジェクタ310について、図6図7を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0050】
図6図7に示すように、ケーシング320は、基部21を外側から覆う外部ケーシング321をさらに有する。外部ケーシング321は、ケーシング320の全周にわたって設けられている。外部ケーシング321と基部21との間には、導入前空間V5が形成される。導入前空間V5には、導入空間V1よりも先に、吸引流体W2が供給される。
【0051】
外部ケーシング321には、吸引孔322が形成されている。吸引孔322は、外部ケーシング321を径方向に貫通している。
【0052】
基部21の軸線O周りの側壁25には、全周にわたって、導入空間V1と導入前空間V5とを連通させる連通部323が形成されている。本実施形態の連通部323は、周方向に延びるスリット324である。スリット324は、基部21の側壁25を径方向に貫通している。スリット324は、周方向に切れ目なく、円環状に形成されている。スリット324の軸線O方向の幅寸法は、周方向位置によらず一定である。
【0053】
本実施形態では、ケーシング320は、基部21を外側から覆って基部21との間に導入前空間V5を形成するとともに、導入前空間V5内に吸引流体W2が供給される外部ケーシング321をさらに有する。基部21の側壁25には、全周にわたって、導入空間V1と導入前空間V5とを連通させる連通部323が形成されている。
【0054】
本実施形態によれば、吸引流体W2は、まず吸引流配管7から導入前空間V5に導かれる。吸引流体W2は、導入前空間V5内に周方向全体にわたって広がる。その後、吸引流体W2は、連通部323を介して、導入空間V1に流入する。このように、本実施形態のエジェクタ310は、連通部323を介して、基部21の側壁25の全周から導入空間V1内に吸引流体W2を供給することができる。これにより、エジェクタ310は、吸引流体W2の周方向の流量分布を均一化できる。
【0055】
本実施形態では、連通部323は、軸線Oの周方向に延びるスリット324である。
【0056】
本実施形態によれば、基部21の側壁25に連通部323を容易に形成することができる。したがって、エジェクタ310の生産効率を向上させることができる。
【0057】
続いて、第三実施形態の変形例について、図8図9を参照して説明する。
図8図9に示すように、連通部323は、軸線Oの周方向に並んで複数設けられたホール325であってもよい。ホール325は、基部21の側壁25を径方向に貫通している。複数のホール325は、周方向に等間隔に設けられている。ホール325は、断面円形状に形成されている。各ホール325は、全て同一形状に形成されている。
【0058】
本変形例では、連通部323は、軸線Oの周方向に並んで複数設けられたホール325である。
【0059】
本実施形態によれば、エジェクタ310は、吸引流体W2の周方向の流量分布をより一層均一化できる。
【0060】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係るエジェクタ410について、図10を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0061】
図10に示すように、駆動流ノズル430のうち大径管31の全体が基部21よりも軸線O方向他方側に位置し、駆動流ノズル430うち小径管433が導入空間V1内に挿入されている。本実施形態では、小径管433の軸線O方向中間部がケーシング20の挿入孔28に位置している。シール機構440は、小径管433の全周に設けられている。
【0062】
本実施形態では、大径管31の全体が基部21よりも軸線O方向他方側に位置している。さらに、小径管433は、導入空間V1内に挿入されている。
【0063】
本実施形態によれば、駆動流ノズル430とケーシング20とをシールするシール(シール機構440)の周長が短くなる。これにより、シール機構440が簡易となる。このため、エジェクタ410の生産効率を向上させるとともに、エジェクタ10の製造コストを低減することができる。また、シールが必要な箇所を小さくできるので、吸引流体W2の漏れをより確実に防止することができる。また、ケーシング20に、大径管31の収容に必要な容積を確保する必要がなくなる。このため、ケーシング20を細くすることができる。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0065】
なお、上記実施形態では、エジェクタ10がターボ冷凍機1の冷凍サイクルに用いられる場合について説明したが、これに限るものではない。エジェクタ10は、ターボ冷凍機1以外の冷凍・冷却サイクルに用いられてもよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、駆動流体W1及び吸引流体W2がともに液体の場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、駆動流体W1及び吸引流体W2がともに気体であってもよく、駆動流体W1及び吸引流体W2のいずれか一方が気体であってもよい。
【0067】
<付記>
各実施形態に記載のエジェクタ10,210,310,410は、例えば以下のように把握される。
【0068】
(1)第1の態様に係るエジェクタ10,210,310,410は、内側の導入空間V1に吸引流体W2が供給される基部21、前記導入空間V1に接続されて軸線O方向一方側に向かって徐々に縮径するテーパ空間V2を形成するテーパ部22、及び、前記テーパ空間V2から前記軸線O方向一方側に延びる混合空間V3を形成する混合管23を有するケーシング20,320と、前記軸線Oを中心として延びて前記導入空間V1に前記軸線O方向他方側から挿入されているとともに、駆動流体W1を噴出する先端開口34が前記テーパ空間V2内に位置する駆動流ノズル30,230,430と、前記先端開口34の前記軸線O方向位置を、前記テーパ空間V2の前記軸線O方向位置の範囲で可変とする移動機構50,250と、を備える。
移動機構50,250として、例えばボールネジ等を用いた電動機構等が挙げられる。
【0069】
本態様によれば、エジェクタ10,210,310,410は、テーパ空間V2内で先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。これにより、先端開口34の軸線O方向位置における吸引流体W2の流路断面Amsのみを変更して、吸引流体W2の流路断面Amsと駆動流体W1の流路断面Amdの面積比(Ams/Amd)を変更することができる。
【0070】
(2)第2の態様のエジェクタ10,310,410は、(1)のエジェクタ10,310,410であって、前記移動機構50は、前記ケーシング20に対して、前記駆動流ノズル30,430の全体を前記軸線O方向に相対移動させて、前記先端開口34の前記軸線O方向位置を可変としてもよい。
【0071】
本態様によれば、移動機構50は、簡単な構成で、先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。
【0072】
(3)第3の態様のエジェクタ210は、(1)のエジェクタ210であって、前記移動機構250は、前記駆動流ノズル230のうち前記先端開口34を含む前記軸線O方向一方側のみを前記軸線O方向に伸縮させて、前記先端開口34の前記軸線O方向位置を可変としてもよい。
【0073】
本態様によれば、移動機構250は、駆動流ノズル230とケーシング20とのシールを動かすことなく、先端開口34の軸線O方向位置を可変とすることができる。
【0074】
(4)第4の態様のエジェクタ310は、(1)から(3)のいずれかのエジェクタ310であって、前記ケーシング320は、前記基部21を外側から覆って前記基部21との間に導入前空間V5を形成するとともに、前記導入前空間V5内に前記吸引流体W2が供給される外部ケーシング321をさらに有し、前記基部21の側壁25には、全周にわたって、前記導入空間V1と前記導入前空間V5とを連通させる連通部323が形成されていてもよい。
【0075】
本態様によれば、エジェクタ310は、連通部323を介して、基部21の側壁25の全周から導入空間V1内に吸引流体W2を供給することができる。これにより、エジェクタ310は、吸引流体W2の周方向の流量分布を均一化できる。
【0076】
(5)第5の態様のエジェクタ310は、(4)のエジェクタ310であって、前記連通部323は、前記軸線Oの周方向に延びるスリット324であってもよい。
【0077】
本態様によれば、基部21の側壁25に連通部323を容易に形成することができる。
【0078】
(6)第6の態様のエジェクタ310は、(4)のエジェクタ310であって、前記連通部323は、前記軸線Oの周方向に並んで複数設けられたホール325であってもよい。
【0079】
本態様によれば、エジェクタ310は、吸引流体W2の周方向の流量分布をより一層均一化できる。
【0080】
(7)第7の態様のエジェクタ410は、(1)から(6)のいずれかのエジェクタ410であって、前記駆動流ノズル430は、前記軸線O方向他方側に設けられた大径管31と、前記軸線O方向一方側に設けられ、前記大径管31よりも小径の小径管433と、を有し、前記大径管31の全体が前記基部21よりも前記軸線O方向他方側に位置し、前記小径管433は、前記導入空間V1内に挿入されていてもよい。
【0081】
本態様によれば、駆動流ノズル430とケーシング20とをシールするシールの周長が短くなる。また、ケーシング20に、大径管31の収容に必要な容積を確保する必要がなくなる。
【0082】
(8)第8の態様のエジェクタ10,210,310,410は、(1)から(7)のいずれかのエジェクタ10,210,310,410であって、前記ケーシング20,320は、前記混合空間V3に接続されて前記軸線O方向一方側に向かって徐々に拡径するディフューザ空間V4を形成するディフューザ部24をさらに有してもよい。
【0083】
本態様によれば、エジェクタ10,210,310,410は、混合管23で混合した流体をディフューザ部24で拡散させて膨張させることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…ターボ冷凍機 2…圧縮機 3…凝縮器 4…膨張弁 5…蒸発器 6…駆動流配管 7…吸引流配管 8…戻り配管 10…エジェクタ 20…ケーシング 21…基部 22…テーパ部 23…混合管 24…ディフューザ部 25…側壁 26…底部 27…吸引孔 28…挿入孔 30…駆動流ノズル 31…大径管 32…接続管 33…小径管 34…先端開口 40…シール機構 50…移動機構 210…エジェクタ 230…駆動流ノズル 233…小径管 240…シール機構 250…移動機構 251…アンテナ 260…操作装置 310…エジェクタ 320…ケーシング 321…外部ケーシング 322…吸引孔 323…連通部 324…スリット 325…ホール 410…エジェクタ 430…駆動流ノズル 433…小径管 440…シール機構 Amd…(駆動流体の)流路断面 Ams…(吸引流体の)流路断面 O…軸線 V1…導入空間 V2…テーパ空間 V3…混合空間 V4…ディフューザ空間 V5…導入前空間 W…冷媒 W1…駆動流体 W2…吸引流体 W3…混合流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10