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特開2023-163950半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163950
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20231102BHJP
【FI】
H01S5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075205
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】道上 敦生
(72)【発明者】
【氏名】大前 邦途
(72)【発明者】
【氏名】湊 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野田 進
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB13
5F173AB52
5F173AB90
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP33
5F173AQ03
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】 フォトニック結晶を含む半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法を提供する。
【解決手段】 第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、第1半導体層部上に設けられた活性層と、活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、第2半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、第3半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部と、を備え、第1濃度は、第2濃度よりも高く、第3半導体層部は、第4半導体層部と直接接合しており、第3半導体層部と第4半導体層部の少なくとも一方にフォトニック結晶を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、
前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、
前記第2半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、
前記第3半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部と、
を備え、
前記第1濃度は、前記第2濃度よりも高く、
前記第3半導体層部は、前記第4半導体層部と直接接合しており、
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方にフォトニック結晶を含む、半導体レーザ。
【請求項2】
前記第3半導体層部は、
前記第1導電型の不純物を前記第1濃度で含有する半導体層である第1層と、
第1導電型の不純物を、前記第2濃度よりも大きくかつ前記第1濃度よりも小さい第3濃度で含有する半導体層である第2層と、
を含み、
前記第2半導体層部側から順に、前記第1層および前記第2層が設けられている、請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記第3半導体層部が前記フォトニック結晶を含み、
前記フォトニック結晶を構成する穴の上端は、前記第4半導体層部の接合面に位置する、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記フォトニック結晶を構成する穴の下端は、前記第2半導体層部内に位置する、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記活性層は、1以上の井戸層と、複数の障壁層とを含み、
前記障壁層は、前記第1半導体層部と接する第1障壁層と、前記第2半導体層部と接する第2障壁層と、を少なくとも含み、
前記フォトニック結晶を構成する穴の下端は、前記第2障壁層内に位置する、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部とは、同一材料で構成されている、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記第1半導体層部、前記第2半導体層部、前記第3半導体層部および前記第4半導体層部はいずれも窒化物半導体層部である、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記第1導電型はn型であり、
前記第2導電型はp型である、請求項1又は2に記載の半導体レーザ。
【請求項9】
第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、前記第2半導体層部上に設けられ、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、を備える半導体部を準備する工程と、
第1導電型の不純物を、前記第1濃度よりも低い第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部を準備する工程と、
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方に、フォトニック結晶を形成する工程と、
前記第3半導体層部の、前記第2半導体層部が配置される面と反対側に位置する第1接合面及び前記第4半導体層部の第2接合面を直接接合する工程と、
を含む、半導体レーザの製造方法。
【請求項10】
前記直接接合する工程は、表面活性化接合により行う、請求項9に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項11】
前記半導体部を準備する工程において、
前記第3半導体層部は、
前記第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層である第1層と、
前記第1導電型の不純物を、第2濃度よりも大きくかつ前記第1濃度よりも小さい第3濃度で含有する第2層と、
を含む、請求項9又は10に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項12】
前記フォトニック結晶を形成する工程において、前記第3半導体層部に複数の穴を形成することで、前記フォトニック結晶を形成し、
前記複数の穴の上端は、前記第4半導体層部の接合面に配置される、請求項9又は10に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項13】
前記半導体部を準備する工程において、
前記第3半導体層部は、前記第4半導体層部と同一材料である、請求項9又は10に記載の半導体レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトニック結晶構造を利用した半導体発光素子の開発が盛んに行われている。このような半導体発光素子は、半導体レーザ等に利用される。例えば、特許文献1には、窒化ガリウム系半導体面発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-54864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フォトニック結晶構造を利用した半導体レーザ等はまだ開発途上にあり、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、フォトニック結晶を含む半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザは、第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、前記第2半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、前記第3半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部と、を備え、前記第1濃度は、前記第2濃度よりも高く、前記第3半導体層部は、前記第4半導体層部と直接接合しており、前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方にフォトニック結晶を含む。
【0007】
また、本開示の一実施形態に係る半導体レーザの製造方法は、第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、前記第2半導体層部上に設けられ、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、を備える半導体部を準備する工程と、第1導電型の不純物を、前記第1濃度よりも低い第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部を準備する工程と、前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方に、フォトニック結晶を形成する工程と、前記第3半導体層部の、前記2半導体層部が配置される面と反対側に位置する第1接合面及び前記第4半導体層部の第2接合面を直接接合する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法は、フォトニック結晶を含む半導体レーザ及び半導体レーザの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の実施形態1に係る半導体レーザの概略断面図である。
図1B図1Aに示す半導体レーザのフォトニック結晶に関して別の形態を示す概略断面図である。
図2図1Aに示す半導体レーザの概略上面図である。
図3図1Aに示す半導体レーザが含むフォトニック結晶の一例を示す図である。
図4A図1Aに示す半導体レーザのフォトニック結晶に関して別の形態を示す概略断面図である。
図4B】分布ブラッグ反射膜を有する半導体レーザの概略断面図である。
図4C】分布ブラッグ反射膜を有する半導体レーザの別の概略断面図である。
図5A】光取り出し面に光反射防止コーティングを施した半導体レーザの概略断面図である。
図5B図1Aに示す半導体レーザの光取り出し面の位置を変更した場合の概略断面図である。
図6】本開示の実施形態2に係る半導体レーザの概略断面図である。
図7】本開示の実施形態3に係る半導体レーザの概略断面図である。
図8A図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8B図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8C図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8D図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8E図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8F図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8G図1Aに示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9A図7に示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9B図7に示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9C図7に示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9D図7に示す半導体レーザの製造方法の一工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る発明を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する、本開示に係る半導体レーザは、本開示に係る発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示に係る発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
本明細書において、フォトニック結晶とは、活性層から出射される光の波長の長さと同程度の周期で屈折率が変化する、屈折率分布を有する構造をいう。フォトニック結晶は、1つの層において構成される場合もあるし、複数の層にわたって構成される場合もある。フォトニック結晶は、第1屈折率媒質からなる第1屈折率領域中に、屈折率が第1屈折率媒質とは異なる第2屈折率媒質からなる複数の第2屈折率領域が配置され、少なくとも第2屈折率領域の一部が周期的に配列されたものである。また、フォトニック結晶は、好ましくは、第1屈折率媒質からなる第1屈折率領域中に、屈折率が第1屈折率媒質とは異なる第2屈折率媒質からなる複数の第2屈折率領域の全てが周期的に配列されることにより構成される。これら第2屈折率領域の周期配列が1次元的であるとき、半導体レーザは、分布帰還型レーザ(Distributed Feedback Laser; DFB Laser)である。また、これら第2屈折率領域の周期配列が2次元的であるとき、半導体レーザは、フォトニック結晶面発光レーザ(Photonic Crystal Surface Emitting Laser; PCSEL)である。なお、周期配列が1次元的であるとは、各図における面内方向のうち1方向、すなわち、第1方向(例えばx方向)および第2方向(例えばy方向)のうちの一方向において屈折率に周期変化があることを指す。また、周期配列が2次元的であるとは、図における面内方向のうち2方向、すなわち、第1方向(例えばx方向)および第2方向(例えばy方向)の両方において屈折率に周期変化があることを指す。周期配列が2次元的である場合、第1方向の周期と第2方向の周期は同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、フォトニック結晶中の複数の第2屈折率領域に着目するとき、当該第2屈折率領域と隣りあう第2屈折率領域との組を最小単位として、1周期としてもよい。また、3以上の第2屈折率領域を含むような組を屈折率変化の1周期とみなすこともできる。この3以上の第2屈折率領域を含むような組における屈折率の変化は、x方向および/またはy方向に屈折率のうねりが生じるように形成されてもよい。また、フォトニック結晶中には、DFBレーザおよびPCSELのレーザ発振を妨げない程度の結晶欠陥が含まれていてもよい。結晶欠陥は、例えば、結晶成長やエッチング等のプロセスダメージに起因するものが挙げられる。
【0012】
本明細書において、直接接合とは、樹脂や接着剤を介さずに第3半導体層部30と第4半導体層部40とが直接接触していることを指す。第3半導体層部30と第4半導体層部40とが直接接合している場合、第3半導体層部30と第4半導体層部40との間で単なる接触ではなく原子間の結合が起きており、大きな接合強度が得られる。原子間の結合は、例えば、高分解能電子顕微鏡により観察することができる。直接接合は、例えば、表面活性化接合、原子拡散接合により行うことができる。
【0013】
実施形態
1.実施形態1
実施形態1に係る半導体レーザ100は、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)である。以下、図1A図5Bを参照して、実施形態1の半導体レーザ100について説明する。
図1Aに示すように、半導体レーザ100は、基板60上に設けられた第1半導体層部10と、第1半導体層部10上に設けられた活性層50と、活性層50上に設けられた第2半導体層部20と、第2半導体層部20上に設けられた第3半導体層部30と、第3半導体層部30上に設けられた第4半導体層部40と、を含む。
第1半導体層部10は、第1導電型の半導体層を含む。
第2半導体層部20は、第2導電型の半導体層を含む。
第3半導体層部30は、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む。
第4半導体層部40は、第1導電型の不純物を第2濃度で含有する半導体層を含む。第2濃度は第1濃度より小さい。すなわち、第1濃度は第2濃度よりも高い。
本実施形態において、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。
第3半導体層部30は、第4半導体層部40と直接接合している。第3半導体層部30は、フォトニック結晶を含む。
また、第4半導体層部40には第1電極1が電気的に接続されており、第1半導体層部10には基板60を介して第2電極2が電気的に接続されている。
フォトニック結晶面発光レーザである半導体レーザ100では、活性層50から発せられた光がフォトニック結晶内に定在波を形成して共振する。共振した光はレーザ光として、フォトニック結晶から上下方向(図面における+z方向および-z方向)に発振する。この半導体レーザ100から上下に発振したレーザ光は、例えば、それぞれ同一波長であり、また、同強度でありうる。本実施形態では、下方に出射された光と、上方に出射し、第1電極1で反射された光とが、半導体レーザ100の下方から出射される。また、基板60の下面60aには、透光性電極4が設けられていてもよい。従って、透光性電極4が設けられていない場合の半導体レーザ100の光取り出し面は、基板60の下面60aに含まれる。また、透光性電極4が設けられている場合の半導体レーザ100の光取り出し面5は、透光性電極4の下面4aに含まれる。
【0014】
(基板)
基板60は、第1導電型の不純物が含有されており、導電性を有する。基板60は、例えば、n型GaN基板である。基板60の厚さは、半導体レーザ100に注入される電流が所定の範囲で面内方向に広がる厚さであればよく、例えば、10μm以上500μm以下、好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上100μm以下である。基板60と第1半導体層部10との間には、バッファ層を設けてもよい。半導体レーザ100は基板60を有していなくてもよい。
【0015】
(第1半導体層部)
第1半導体層部10に含まれる第1導電型の半導体層は、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等のn型不純物を含んだ窒化物半導体層である。すなわち、第1導電型はn型であり、第1半導体層部10はn型窒化物半導体層を含む。第1半導体層部10におけるn型不純物の不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下であってよい。本実施形態では、第1半導体層部10は、窒化物半導体層部である。また、後述するように、本実施形態では、第2半導体層部20、第3半導体層部30及び第4半導体層部40も、窒化物半導体層部である。このように、各層部を窒化物半導体層部とすることで、各層部に発振波長に対する透光性を持たすことができる。第1半導体層部10、第2半導体層部20、第3半導体層部30及び第4半導体層部40は、後述の井戸層のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有することができる。これにより、各半導体層部が活性層から発せられる光を透過して、効率よく光を取り出すことができる。
第1半導体層部10は、1以上の第1導電型の半導体層を含む。第1半導体層部10は、アンドープの半導体層を一部に含んでいてもよい。ここで、アンドープの半導体層とは、n型不純物及び/又はp側不純物を意図的に添加していない層のことをいう。アンドープの半導体層のn型不純物及びp型不純物の濃度は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy;SIMS)等の分析結果において検出限界以下の濃度である。アンドープの半導体層は、例えば、Siがn型不純物として含まれる場合は、1×1016cm-3以下であり、Geがn型不純物として含まれる場合は、1×1017cm-3以下である。第1半導体層部10の厚さは、例えば、1μm以上5μm以下である。第1半導体層部10は、例えば、n型GaN層を含み、n型GaN層の厚さは、0.1μm以上5μm以下、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下とすることができる。n型GaN層がn型不純物としてSiを含む場合、n型GaN層の不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下とすることができる。また、第1半導体層部10は、GaNに限定されず、In及び/又はAlを含んでいてもよい。
【0016】
(活性層)
図1A及び図1Bに示すように、活性層50は、第1半導体層部10上に設けられる発光層である。活性層50が発する光は、例えば、発光ピーク波長が200nm以上760nm以下の範囲の光である。活性層50は、例えば、1以上の井戸層52と複数の障壁層を有する量子井戸構造を有する。量子井戸構造は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造であってよい。活性層50が上記の波長範囲の光を発光する量子井戸構造である場合、井戸層および障壁層は、例えばGaN、InGaN、AlGaN、AlInGaNである。井戸層は、例えばAlGaN、GaN、InGaNであり、障壁層よりバンドギャップの小さい窒化物半導体である。なお、第1半導体層部10と活性層50との間に、アンドープのGaN層とアンドープのInGaN層とを交互に積層した超格子層を形成してもよい。障壁層は、第1半導体層部10と接する第1障壁層51と、第2半導体層部20と接する第2障壁層53と、を少なくとも含む。
【0017】
(第2半導体層部)
第2半導体層部20に含まれる第2導電型の半導体層は、例えば、マグネシウム(Mg)等のp型不純物を含む窒化物半導体層である。第2半導体層部20は、1以上の第2導電型の半導体層を含む。p型不純物の不純物濃度は、例えば、1×1016cm-3以上3×1022cm-3以下であってよい。第2導電型の半導体層は、例えばp型GaN層である。第2導電型の半導体層は、In及び/又はAlを含んでいてもよい。p型GaN層の厚さは、0.04μm以上1.5μm以下、好ましくは0.04μm以上0.5μm以下とすることができる。また、p型GaN層がp型不純物としてMgを含む場合、p型GaN層の不純物濃度は、例えば、1×1016cm-3以上3×1022cm-3以下、好ましくは、5×1016cm-3以上1×1021cm-3以下とすることができる。また、第2半導体層部20は、例えば、アンドープの半導体層を含んでいてもよい。後述する第1層31とトンネル接合を形成するために、少なくとも第1層31と接する層はp型不純物を含む窒化物半導体層であることが好ましく、1×1020cm-3以上3×1022cm-3以下の不純物濃度もとりうる。
【0018】
(第3半導体層部)
第3半導体層部30は、第2半導体層部20とpn接合を形成しており、いわゆるトンネル接合を形成することができる。また、第3半導体層部30の、第2半導体層部20が配置される面とは反対側の第1接合面30aは、後述する第4半導体層部40の第2接合面40aと、例えば、表面活性化接合等により直接接合することができる。
【0019】
トンネル接合は、p型半導体層中のp型不純物とn型半導体層中のn型不純物のうち少なくとも一方を高濃度とすることにより形成することができる。このトンネル接合において、電子が空乏層を通過する確率を向上させるためには、p型半導体層と、n型半導体層のpn接合によって形成される空乏層の幅が狭いほど好ましい。空乏層の幅は、p型不純物濃度とn型不純物濃度の少なくとも一方が高ければ高いほど狭くすることができる。
【0020】
本実施形態に係る第3半導体層部30は、例えば、第2半導体層部20側から順に、第1層31及び第2層32が設けられている。そのため、本実施形態では、トンネル接合を形成する第1層31のn型不純物濃度を高くすることにより、pn接合の空乏層の幅を比較的狭くして、電子が空乏層を通過しやすくしている。第1層31は、第1導電型(n型)の不純物を第1濃度で含有する窒化物半導体層である。第1濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1022cm-3以下であってよい。第2層32は、第1導電型(n型)の不純物を、第1濃度よりも小さい第3濃度で含有する窒化物半導体層である。第3濃度は、第1濃度よりも小さい。これにより、第2層32の結晶性を第1層31の結晶性よりも高くすることができるので、第2層32と後述する第4半導体層部40とを直接接合するときに十分な平坦面を形成することができる。また、後述する第4半導体層部40のn型不純物濃度と比べて、第2層32の第3濃度は高いので、半導体レーザを駆動する際に注入される電流は、面内方向(図面における幅方向(x方向)及び奥行き方向(y方向))に広がりやすくなる。第3濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってよい。
第1層31の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1022cm-3以下、好ましくは、5×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であり、より好ましくは1×1020cm-3以上1×1021cm-3以下とすることができる。また、第1層31の厚さは、例えば、1nm以上500nm以下、好ましくは1nm以上300nm以下とすることができる。第1層31はn型GaNを含むことができる。n型GaN層がn型不純物としてSiを含む場合、n型GaN層の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1022cm-3以下、好ましくは、5×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であり、より好ましくは1×1020cm-3以上1×1021cm-3以下とすることができる。これにより、第2半導体層部20と第3半導体層部30との間でトンネル接合を形成することができ、順方向電圧の上昇を低減させることができる。また、面内方向(図面における幅方向(x方向)及び奥行き方向(y方向))に電流を広げることができる。第2層32は、例えば、n型GaN層を含み、n型GaN層の厚さは、10nm以上500nm以下、好ましくは、50nm以上300nm以下とすることができる。第2層32に含まれるn型GaN層がn型不純物としてSiを含む場合、n型GaN層の不純物濃度は、第1層31に含まれるn型GaN層の不純物濃度よりも小さく、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下、このましくは、1×1019cm-3以上5×1019cm-3以下とすることができる。
【0021】
第3半導体層部30は、フォトニック結晶7を含む。半導体レーザ100において、フォトニック結晶7は、活性層50から発せられる光を面内方向(図のxおよびy方向)において共振させ、上下方向(図の+z方向および-z方向)にレーザ光を発振させる。半導体レーザ100は、フォトニック結晶7を備えることにより、高次モードの発生を低減したレーザ光を出射することができる。半導体レーザ100は、例えば、縦モード及び横モードのそれぞれにおいて単一モードの光を出射することができる。
【0022】
(フォトニック結晶)
本実施形態におけるフォトニック結晶7は、少なくとも第3半導体層部30に設けられる。第1屈折率領域は、例えば窒化物半導体を第1屈折率媒質とする第3半導体層部30である。また、第2屈折率領域は第1屈折率領域内に配置される複数の穴70であり、第2屈折率媒質は例えば空気である。フォトニック結晶7は、例えば、円柱形状の複数の穴70を含み、例えば、第3半導体層部30及び/又は第2半導体層部20の一部を含む。各穴70の直径は、例えば、20nm以上150nm以下であってよく、20nm以上80nm以下であってよい。また、穴70の深さは50nm以上2500nm以下であってよく、100nm以上1000nm以下であってよく、300nm以上600nm以下であってよい。各穴70の形状は柱状、錐状であってもよい。また、各穴70の断面形状は円形に限定されず、例えば、楕円、多角形等であってもよい。各穴70の中は、第2屈折率媒質として、例えば、真空、空気、アルゴンのような希ガスまたはGaNよりも屈折率が小さい誘電体を充填することができる。誘電体は、例えば、SiOである。これにより、フォトニック結晶と共振器光の結合効率を上げることができる。
【0023】
フォトニック結晶に含まれる複数の穴70は、上面視において、例えば、正方形の正方格子、長方形の長方格子または三角形の三角格子をなすように形成することができる。また、λを真空における波長、neffを実効屈折率としたとき、単位格子内に、x方向およびy方向にそれぞれ1/(4×neff×λ)ずつ離して2つの穴を形成することができる。このような構造は、ダブルホール格子点構造と呼ばれる。ダブルホール格子点構造により、発光面積を大面積にしても、高次モードの発生を低減したレーザ光を出射することができる。例えば、縦モードと横モードを単一モードとして維持することができる。他にも、2つの異なる周期からなる格子点構造が重なるように複数の穴70を設けてもよい。例えば、x方向およびy方向のいずれも格子定数aの正方格子と、面内方向のうちx方向またはy方向の一方の格子定数がaであり、他方の格子定数がaの長方格子が重なるようにしてもよい。これにより、格子点構造が1種類だけ設けられた場合と比較して、面内に対応する波数ベクトル方向に対して所定の波数δk=π(1/a-1/a)だけΓ点からずれた位置に、新たなバンド端を形成することができる。このようなバンド端を利用することで、発光面に垂直な方向に対して角度θ=sin-1(δk/k)、k=2π/λだけ、レーザ光の出射方向を傾斜させることができる。したがって、これにより、レーザ光の出射方向を制御することができる。この格子定数aは、所定の範囲内で連続的に変化させることができる。
【0024】
フォトニック結晶7を構成する穴70の上端7bは、第4半導体層部40の第2接合面40aに位置する。本実施形態では、フォトニック結晶7を構成する穴70の下端7aは、図1Aに示すように第2半導体層部20内に位置する。また、例えば、穴70の下端7aは、図4Aに示すように第3半導体層部30内に位置していてもよい。穴70の下端7aが活性層50に近いほど、活性層50で発せられた光が、光強度の減衰が小さいうちにフォトニック結晶7に到達するので、フォトニック結晶7内での光強度を高めることができる。従って、穴70の下端7aは、第3半導体層部30内に位置するよりも、第2半導体層部20内に位置することが望ましい。また、穴70の下端7aは、活性層50内に位置してもよく、第1半導体層部10内に位置してもよい。穴70の下端7aが第3半導体層部30または第2半導体層部20に位置する場合と比べて、穴70の下端7aが活性層50内に位置する場合、もしくは第1半導体層部10内に位置する場合は、活性層50の体積が減少するので、閾値電流を下げることができる。また、この場合は、フォトニック結晶7に閉じ込められる光が多くなるので、半導体レーザ100がレーザ光を発振する電流である閾値電流を下げることができる。また、穴70の下端7aが活性層50内に位置する場合、図1Bに示すように、穴70の下端7aは第2障壁層53内に位置してもよい。これにより、閾値電流密度を下げつつ、フォトニック結晶における光の2次元回折の割合を高めることができる。このとき、例えば、穴70の直径は20nm以上80nm以下であってよく、穴70の深さは300nm以上600nm以下であってよい。なお、穴70の深さとは、穴70の上端7bから下端7aまでの距離を指す。
半導体レーザ100は、第2半導体層部20とトンネル接合をしている第3半導体層部30及び第2半導体層部20で電流を面内方向に広げることができる。これにより、絶縁性である穴70の直下にも電流を広げることができる。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、上面視における半導体レーザ100の外形は、幅方向(x方向)の長さ及び奥行き方向(y方向)の長さが等しい正方形である。また、図2の破線で示すように、上面透視におけるフォトニック結晶7が形成される領域は、幅方向の長さ及び奥行き方向の長さが等しい長さLである正方形に近似できる。ここで、長さLは、図1Aに示される幅方向の断面、及び奥行き方向の断面において、フォトニック結晶7の最も外側の第1端71と、第1端71とは反対側の最も外側の第2端72との間の長さである。長さLは、例えば、0.5mm以上2mm以下であり、好ましくは、0.8mm以上1.5mm以下である。なお、上面透視におけるフォトニック結晶7の外形は、上述のような矩形に限定されない。例えば、直径がLの円形であってもよい。直径は例えば、0.5mm以上2mm以下であり、好ましくは、0.8mm以上1.5mm以下である。
【0026】
図3に示すフォトニック結晶の格子定数aと、真空における波長λと、実効屈折率neffとは、a=λ/neffの関係式を満たす。
ここで、実効屈折率neffとは、基板の屈折率、各半導体層部の屈折率及び活性層の屈折率をそれぞれの層に伝搬する光の強度分布に基づいて重みづけされた平均屈折率である。実施形態1における実効屈折率neffは、基板60、第1半導体層部10、活性層50、第2半導体層部20、第3半導体層部30及び第4半導体層部40それぞれの屈折率を、各半導体層部及び活性層に伝搬する光の強度分布に基づいて重みづけされた平均屈折率である。実効屈折率neffは、シミュレーションによって狙いとする値を見積もることができる。実際の製造においては、フォトニック結晶の格子定数aと、真空における波長λが測定可能であるから、上記関係式を変形して得られるneff=λ/aの関係式により、実効屈折率neffは見積もることができる。フォトニック結晶7の格子定数aおよび真空における波長λは製造バラツキによって変化し得るため、シミュレーションから見積もられる実効屈折率neffと、実際の製造において上記関係式から見積もられる実効屈折率neffと、が一致するとは限らない。
半導体レーザ素子が青色光を発する場合、例えば、実効屈折率neffは2.4以上2.5以下であり、フォトニック結晶7の格子定数aは180nm以上200nm以下の範囲で形成することができる。また、半導体レーザ素子が緑色光を発する場合、例えば、実効屈折率neffは2.3以上2.4以下であり、フォトニック結晶7の格子定数aは210nm以上230nm以下の範囲で形成することができる。また、半導体レーザ素子が赤色光を発する場合、例えば、実効屈折率neffは2.2以上2.3以下であり、フォトニック結晶7の格子定数aは250nm以上280nm以下の範囲で形成することができる。
【0027】
(第4半導体層部)
第4半導体層部40は、n型不純物(第1導電型の不純物)を第2濃度で含有する。第2濃度は、第1濃度及び第3濃度よりも小さい。第2濃度は、第1濃度及び第3濃度よりも小さく、例えば、1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下とすることができる。上述したように、第4半導体層部40は、第3半導体層部30と、例えば、表面活性化接合により直接接合をしている。すなわち、第4半導体層部40と第3半導体層部30とが、接着剤を介することなく互いに接している。第4半導体層部40と第3半導体層部30とを、直接接合することで、第4半導体層部40と第3半導体層部30との間の接触抵抗を小さくすることができる。
第4半導体層部40を構成する材料は、第3半導体層部30を構成する材料と同一であることが望ましい。すなわち、第3半導体層部30と第4半導体層部40とは、同一材料で構成されていることが望ましい。第4半導体層部40を構成する材料と第3半導体層部30を構成する材料を同一にすることで、実効屈折率を制御しやすくなる。また、第4半導体層部40を構成する材料と第3半導体層部30を構成する材料を同一にすることで、第4半導体層部40の熱膨張係数と第3半導体層部30の熱膨張係数が同一となり、第4半導体層部40と第3半導体層部30の接合強度を高くすることができる。ただし、第4半導体層部40と第3半導体層部30とを構成する材料が同一であるとは、両半導体層部を構成する母材が同一であればよく、不純物濃度は異なっていてもよい。例えば、第4半導体層部40と第3半導体層部30は、ともに窒化物半導体層であり、例えば、n型GaN層である。
【0028】
また、第4半導体層部40の屈折率は、フォトニック結晶7の平均屈折率よりも大きい方が好ましい。フォトニック結晶7の平均屈折率とは、穴70の屈折率と穴70が設けられる半導体層部の屈折率との平均屈折率である。このような第4半導体層部40をフォトニック結晶7の上に設けることで、第4半導体層部40にも光強度を配分することができる。これに伴ってこれにより、第4半導体層部が設けられておらず、第3半導体層部30の上面が空気と接している場合と比較して、フォトニック結晶の光強度を増やし、共振に寄与する光量を増やして、効果的にレーザ発振することができる。
【0029】
第4半導体層部40の厚さは、例えば1μm以上500μm以下であってよく、好ましくは1μm以上400μm以下あってよく、より好ましくは1μm以上10μm以下であってよい。n型GaN層がn型不純物としてSiを含む場合、n型GaN層の不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下とすることができる。第4半導体層部40の厚さは、後述する第1電極1との接触面積の大きさに応じて適宜調整することが望ましい。
【0030】
上記のように、第4半導体層部40を設けることで、第4半導体層部40に光強度をもたせるとともに、フォトニック結晶を含む半導体層部の光強度を高めることができる。また、第4半導体層部40の厚さ、屈折率等の条件を所定の範囲とすることにより、活性層50において光強度を最大とすることができる。フォトニック結晶を含む層部の光強度を高めた状態で、活性層50の光強度を最大とすることにより、効率的に面発光をする半導体レーザ100を得ることができる。
【0031】
また、図4B及び図4Cに示すように、第4半導体層部40内、又は第4半導体層部40の上面40bに分布ブラッグ反射膜(DBR膜)45を配置してもよい。DBR膜は、例えば、SiO/Nbのペアを2ペア以上積層させることで得ることができる。DBR膜を構成するペアは、他にも、SiO/Taのペア、SiO/Alのペア、またはSiドープGaN/SiドープAlInNのペアであってよい。これにより、フォトニック結晶7で共振され上方に出射した光を下方へ反射させることができ、半導体レーザの光取り出し効率を高めることができる。
【0032】
(第1電極及び第2電極)
第1電極1は、光反射性部材であり、かつ導電性部材である。第1電極1の材料は、例えばAgまたはAlである。第1電極1は、平面視において、フォトニック結晶7と重なる位置に配置されている。本実施形態において、第1電極1は正電極であり、第4半導体層部40の上面40bに配置されている。フォトニック結晶7で共振した光は、上下方向へレーザ発振するので、このように、第1電極1がフォトニック結晶7と重なるように第4半導体層部40上に配置されることにより、上方に発振したレーザ光を半導体レーザ100の下方に向けて反射させることができる。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0033】
第1電極1の上面視形状は、例えば、図2に示されるように、上面視において、直径がLの円であってよい。これにより、面内方向に電流を等方的に広げることができるので、効率的に電流注入が行える。第1電極1の直径に制限はないが、上面透視におけるフォトニック結晶7が形成される領域の長径よりも小さい方が好ましい。また、第1電極1が設けられる位置は、上面透視におけるフォトニック結晶7が形成される領域の内部である方が好ましい。これにより、フォトニック結晶7において、電流が注入される領域と電流が注入されにくい領域を形成することができる。フォトニック結晶7に閉じ込められる光の空間分布はフォトニック結晶の構造により決まるので、電極の大きさに依存しない。したがって、電流が注入される領域が制限されるような電極構造をとることで、ゲインが発生する領域を制限することができる。そして、上面視において、フォトニック結晶7の中央部に第1電極1を設けることで、フォトニック結晶の外へ光が漏れることを低減できる。これにより、半導体レーザ100の駆動に必要な電流を小さくすることができる。また、フォトニック結晶7において、電流が注入されにくい領域は、面内方向に漏れる光を電流が注入される領域の方向へ戻す反射鏡の役割を有し、共振に寄与する光が減少するのを抑制することができる。なお、第1電極1の形状は円に限られず、正方形、長方形、三角形、その他多角形などであってもよい。
第4半導体層部40の上面40bに、平面視においてフォトニック結晶7と少なくとも一部が重なるようにDBR膜45が配置されている場合、第1電極1の少なくとも一部がDBR膜45と重ならないように配置してもよいし、図4Bおよび4Cに示すように、第1電極1の少なくとも一部がDBR膜45と重なるように配置してもよい。DBR膜45を設ける場合は、第1電極1は、光反射性部材でなくてもよい。DBR膜45を設ける場合は、第1電極1は、平面視において、フォトニック結晶7と重なる位置に配置されていなくてもよい。なお、図4Cに示すように、第1電極1の少なくとも一部がDBR膜45と重なるように配置されている場合、第4半導体層部40は、例えば、厚さが1μm以上450μm以下であってよい。これにより、DBR膜45の直下にも電流を広げることができる。なお、図4Cに示すように、DBR膜45の側面に配置された第1電極1の直下から第2電極2側へ電流が流れることを抑制するために、第3半導体層部30および第4半導体層部40の少なくとも一方に絶縁領域35を設けることが好ましい。例えば、DBR膜45の側面に配置される第1電極1の直下にある第3半導体層部30の第2層32に対するイオン注入や溝の形成により、絶縁領域35は設けられる。あるいは同様な方法で第4半導体層部40に絶縁領域35を設けてもよい。この絶縁領域35は、例えば、接合界面から厚さ5nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上100nm以下まで設けられる。これにより、電流をDBR膜45の直下へ効果的に広げることができる。したがって、DBR膜45直下の領域に含まれる活性層が電流注入により発光し、共振した光の一部はDBR膜45で反射され、光取り出し面5から取り出すことができる。
【0034】
第2電極2は、導電性部材である。第2電極2の材料は、例えば、Al、Ti、Pt、Auなどの単層膜又は多層膜により形成することができる。多層膜としては、例えば、Ti、PtおよびAuの多層膜である。本実施形態において、第2電極2は負電極である。第2電極2は、例えば、平面視において、フォトニック結晶7を囲むように配置されたリング形状の電極である。また、第2電極2は、平面視においてフォトニック結晶7と重なるように配置されたリング形状であってもよい。また、図5Aに示すように、リングの内側に位置する基板60の下面60aに光反射防止コーティング3を施してもよい。このように光反射防止コーティング3を施すことで、基板60と空気との間で生じる反射による戻り光を抑制し、光の損失を低減することができる。このとき、光反射防止コーティング3の下面が光取り出し面5となる。なお、基板60と第2電極2との間に透光性電極4をさらに配置することができる。透光性電極4は、例えば、ITOが挙げられる。
【0035】
ここで、図5Bに示すように、光反射性及び導電性を有する第1電極1を、基板60の下面60aであって、平面視において、フォトニック結晶7と重なる位置に配置してもよい。また、導電性を有する第2電極2を、第4半導体層部40の上面40b側に配置してもよい。第2電極2と第4半導体層部40との間には、透光性電極4をさらに設けてもよい。基板60の下面60aに配置された第1電極1は負電極として機能し、第4半導体層部40の上面40bに配置された第2電極2は正電極として機能する。第1電極1及び第2電極2をこのように配置することで、第4半導体層部40の上面40bから光を取り出すことができる。つまり、透光性電極4が設けられていない場合の光取り出し面は、第4半導体層部40の上面40bに含まれ、透光性電極4が設けられている場合の光取り出し面5は、透光性電極4の上面4bに含まれる。このような形態において、DBR膜45を、基板60の下面60a側に配置してもよい。この場合、第1電極1は、DBR膜45の周囲又は、DBR膜45の周囲及びDBR膜45の下に配置することができる。
【0036】
以上、フォトニック結晶7が、少なくとも第3半導体層部30を含む第1屈折率領域と複数の穴70による第2屈折率領域からなる場合のPCSELについて説明したが、本実施形態はこれに限定されない。フォトニック結晶7は、例えば、真空、空気、希ガス、またはSiOなどの誘電体による第1屈折率媒質からなる第1屈折率領域と、周期的に配置された複数の柱状の半導体層部による第2屈折率媒質からなる第2屈折率領域を備えていてもよい。これにより、PCSELの閾値電流を下げることができる。
【0037】
2.実施形態2
図6に示す本実施形態に係る半導体レーザ200は、分布帰還型レーザである点で実施形態1の半導体レーザ100と異なる。フォトニック結晶7は、少なくとも第3半導体層部30の一部を含む第1屈折率領域と、半導体層中に配置される溝75からなる第2屈折率領域による屈折率の周期変化を備える。第1屈折率領域を形成する第1屈折率媒質は、例えばGaN系半導体であり、第2屈折率領域を形成する第2屈折率媒質は、例えば真空または空気である。フォトニック結晶の格子定数aと、真空における発振波長λと、実効屈折率neffとは、a=λ/(2×neff)の関係式を満たす。これにより、劈開端面から高次モードの発生を低減したレーザ光を出射することができる。例えば、半導体レーザ200は、縦モードが単一モードのレーザ光を出射することができる。
本実施形態に係る半導体レーザ200は、半導体積層体の両端面200a及び200bに光反射膜203a、203bが施されている。光反射膜203a、203bは、例えばAl、ZrOまたはSiOの単層膜もしくは多層膜である。光反射膜203bの反射率は、光反射膜203aの反射率よりも低い。半導体レーザ200では活性層50から発せられる光が、両方の端面で共振し、他方の端面200bである光取り出し面205から出射する。
【0038】
3.実施形態3
本実施形態に係る半導体レーザ300は、PCSELである点において実施形態1に係る半導体レーザ100とは同一であるが、図7に示すように、フォトニック結晶が第4半導体層部340に形成されている点で実施形態1に係る半導体レーザ100と異なる。半導体レーザ300において、フォトニック結晶7を構成する穴70の下端7aは、第4半導体層部340の第2接合面340aに位置する。フォトニック結晶7を構成する穴70の上端7bは、第4半導体層部340内に位置する。
【0039】
製造方法
1.実施形態1に係る半導体レーザの製造方法の一例(製造方法1)
製造方法1は、
(1)第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部10と、第1半導体層部10上に設けられた活性層50と、活性層50上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部20と、第2半導体層部20上に設けられ、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部30と、を備える半導体部90を準備する工程と、
(2)第1導電型の不純物を、第1濃度よりも低い第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部40を準備する工程と、
(3)第3半導体層部30に、フォトニック結晶を形成する工程と、
(4)第3半導体層部30の、第2半導体層部20が配置される面と反対側に位置する第1接合面30a及び第4半導体層部40の第2接合面40aを直接接合する工程と、
を含む。
【0040】
半導体レーザ100は、圧力および温度の調整が可能な炉内において、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法によって製造される。各半導体層部及び半導体層は、炉内にキャリアガスおよび原料ガスを導入することで形成することができる。キャリアガスとしては、水素(H)ガスまたは窒素(N)ガスを用いることができる。N源の原料ガスとしては、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。Ga源の原料ガスとしては、トリメチルガリウム(TMG)ガス、またはトリエチルガリウム(TEG)ガスを用いることができる。In源の原料ガスとしては、トリメチルインジウム(TMI)ガスを用いることができる。Al源の原料ガスとしては、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いることができる。Si源の原料ガスとしては、モノシラン(SiH)ガスを用いることができる。Mg源の原料ガスとしては、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(CpMg)ガスを用いることができる。以下に説明する製造方法の一例は、各層部及び層をMOCVD法によってエピタキシャル成長させる方法である。MOCVD法は量産性に優れる製造方法である。また、MOCVD法以外にも、リモートプラズマCVD法を利用してもよい。リモートプラズマCVD法を利用することにより、半導体層中のキャリア密度を高めることができる。他にも、物理気相成長法(物理蒸着法(Physical Vapor Deposition;PVD)ともいう)により形成することができる。PVD法を利用することにより、キャリアを多く導入することができる。PVD法としては、スパッタリング法や分子線エピタキシー法(Morecular Beam Epitaxy;MBE法)が挙げられる。
【0041】
(半導体部を準備する工程)
図8Aを参照しながら半導体部90を準備する工程を説明する。
まず、例えばn型GaNからなる基板60を準備する。
次に、基板60上に、基板60側から順に、第1導電型(n型)の半導体層を含む第1半導体層部10、活性層50、第2導電型(p型)の半導体層を含む第2半導体層部20、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部30を形成し、半導体部90を準備する。第3半導体層部30の形成は、基板60側から順に、第1層31、第2層32を形成する。
【0042】
第1半導体層部10は、例えば、基板60側にn型クラッド層を成長させることにより形成される。尚、基板60上にバッファ層を設けてから第1半導体層部10を形成してもよい。また、バッファ層とn型クラッド層との間に、さらにアンドープの半導体層を設けてもよい。
【0043】
次に、第1半導体層部10の上に活性層50を形成する。例えば、活性層50が多重量子井戸構造である場合、基板60側から順に障壁層と井戸層とを所望の層数だけ交互に形成し、活性層50を形成する。なお、この場合、活性層50を形成する工程は、障壁層を形成する工程で終了される。
【0044】
次に、活性層50の上に、例えば、p型クラッド層を成長させることにより第2半導体層部20を形成する。
【0045】
次に、第2半導体層部20の上に第1層31と第2層32とを含む第3半導体層部30を形成する。
まず、第2半導体層部20の上に、第1濃度のn型不純物(第1導電型の不純物)を含有する半導体層である第1層31を形成させる。第1層31は、例えば、n型GaNであり、In及び/又はAlを含んでいてもよい。第1濃度は、例えば、5×1019cm-3以上5×1022cm-3以下であり、好ましくは1×1020cm-3以上1×1021cm-3以下である。
第1濃度のn型不純物を含む第1層31は、キャリアガスと、第1層31を形成する原料ガスと、n型不純物となる元素を含む原料ガスとを導入することで形成することができる。例えば、n型不純物がSiである場合、第1層31を形成する原料ガスにSiを含む原料ガスを所定の流量で供給することで、第1濃度のn型不純物を含む第1層31を形成することができる。
【0046】
次に、第1層31の上に、第3濃度のn型不純物(第1導電型の不純物)を含有する第2層32を形成させる。第3濃度は、第1濃度よりも小さい。第3濃度は、後述する第4半導体層部40に含有されるn型不純物の第2濃度よりも大きい。第2層32を構成する材料は、第1層31を構成する材料と同一であることが望ましい。第2層32は、例えば、n型GaNであり、In及び/又はAlを含んでいてもよい。第3濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下、このましくは、1×1019cm-3以上5×1019cm-3以下である。
第3濃度のn型不純物を含む第2層32は、第2層32を形成する原料ガスに、n型不純物となる元素を導入することで形成することができる。例えば、n型不純物がSiである場合、第2層32を形成する原料ガスにSiを含む原料ガスを所定の流量で供給することで、第3濃度のn型不純物を含む第2層32を形成することができる。
【0047】
(第4半導体層部を準備する工程)
次に、n型不純物を第2濃度で含有する第4半導体層部40を準備する。第4半導体層部40を構成する材料は、第3半導体層部30を構成する材料と同一であることが望ましい。第4半導体層部40は、例えば、GaNである。第4半導体層部40の厚さは、例えば1μm以上500μm以下であってよく、好ましくは1μm以上400μm以下あってよく、より好ましくは1μm以上10μm以下であってよい。第4半導体層部40は、まず、図8Bに示すように、例えば、サファイアからなる成長基板85上にn型不純物を含む窒化物半導体からなる第4半導体層部40をMOCVD法により成長させる。次に、図8Cに示すように、第4半導体層部40上に樹脂層86および支持基板87をこの順に設けて、その後、成長基板85を除去する。
【0048】
(フォトニック結晶を形成する工程)
次に少なくとも第3半導体層部に複数の穴を形成することで、フォトニック結晶を形成する。フォトニック結晶は、例えば、以下のような方法で形成することができる。図8Dに示すように、SiO等で形成された第1マスク81で第3半導体層部30の第1接合面30aを覆う。これにより、後述するエッチング工程において、第1マスク81に対する第3半導体層部30の選択比を大きくすることができる。さらに第1マスク81の上面に、樹脂等で形成された第2マスク82を配置する。これにより、後述するリソグラフィー工程において、第1マスク81に対する第2マスク82の選択比を大きくすることができる。第2マスク82は、所定の周期で設けられた複数の穴を含む穴集合部8が設けられている。穴集合部8は、例えば、電子ビームリソグラフィーやナノインプリントによって形成される。例えば、図3に示すような正方格子をなすように各穴80が設けられる場合、穴集合部8の各穴80において、その中心が隣りあう穴80の中心となす距離が、フォトニック結晶7の格子定数aである。なお、格子定数aと、真空における波長λと、実効屈折率neffとは、a=λ/neffの関係式を満たす。
【0049】
次に、図8Eに示すように、第2マスク82から露出した第1マスク81、第3半導体層部30及び第2半導体層部20を除去し、下端7aが第2半導体層部20内に位置し、所望の深さの穴70を形成することでフォトニック結晶7を形成する。第1マスク81、第3半導体層部30及び第2半導体層部20の除去方法は、例えば、塩素系ガスを用いた反応性イオンエッチング等のエッチングである。第1マスク81および第2マスク82を用いて穴70を形成することで、穴70のアスペクト比を高くすることができる。なお、このとき、エッチングする深さを変えることで、穴70の下端7aを第3半導体層部30内に位置させることができる。その後、第1マスク81を除去する。なお、第2マスク82は、この反応性イオンエッチングの際に、多くの場合除去される。しかしながら、穴70の深さを調整することで、第2マスク82の一部は残る場合がある。このときは、第1マスク81だけでなく第2マスク82も除去する。
【0050】
(直接接合する工程)
次に、図8Fに示すように、第3半導体層部30の、第2半導体層部20が配置される面と反対側に位置する第1接合面30a及び第4半導体層部40の第2接合面40aを直接接合する。第1接合面30aと第2接合面40aとは、例えば、表面活性化接合で直接接合することができる。表面活性化接合は、第1接合面30aおよび第2接合面40aの両方を平坦化および清浄化した後、接合する方法である。
【0051】
平坦化の工程は、例えば、各接合面を化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)したり、酸又はアルカリで浸漬したりすることにより行われる。これらの処理によって、算術平均粗さRaが例えば1nm以下、好ましくは0.5nm以下の平坦面を形成することができる。平坦化の工程は、平坦化する対象がGaNの+c面である場合、酸又はアルカリ溶液で浸漬することが好ましい。これにより、第1主面上の雑晶を除去することができる。酸又はアルカリ溶液は、例えば、HSO(硫酸)、HF(フッ酸)、HCl(塩酸)、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、KOH(水酸化カリウム)を用いることができる。酸又はアルカリ溶液は、好ましくはTMAHを用いることができる。また、平坦化する対象がGaNのーc面である場合は、CMPを行うことで平坦化することが好ましい。これにより、算術平均粗さが1nm以下、好ましくは0.5nm以下の第2接合面を形成することができる。
【0052】
接合工程は、アルゴン等のイオンビームやプラズマなどでスパッタエッチングを行うことで活性化された第1接合面30aと第2接合面40aとが、所定の条件で直接接合される。接合時の温度は、例えば、0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上70℃以下、さらに好ましくは0℃以上50℃以下である。表面活性化接合は、例えば、融着のように高温を必要とせず、比較的低温で強固に接合することができる。また、フォトニック結晶7を形成したあとで、フォトニック結晶7の上端を閉じるためにMOCVD法やPVD法などによって、第4半導体層部40を成長させる場合と比較して、活性層が受ける熱ダメージを低減することができる。また、結晶成長により上端を閉じる場合は、穴の形状や大きさなどが上端を閉じるための条件に制約を受けるが、直接接合により上端を閉じる場合は自由に穴の設計が可能になる。なお、表面活性化接合時の圧力は、例えば、10MPa以上、200MPa以下、好ましくは50MPa以上、100MPa以下である。
【0053】
また、直接接合する工程において、接合する際、第1結晶面の面内における結晶軸方向と、第2結晶面の面内における結晶軸方向は一致していてもよいし、一致していなくてもよい。例えば、第1結晶面が+c面であり、第2結晶面が-c面であるとした場合、第1結晶面(+c面)の面内におけるa軸方向と、第2結晶面(-c面)の面内におけるa軸方向と、をずらして接合してもよい。これにより、直接接合する工程において、各接合面内の方位を揃える工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。本実施形態1の製造方法によれば、直接接合の際における第1結晶面の面内における結晶軸方向と第2結晶面の面内における結晶軸方向とがずれていても、結晶面どうし(第1結晶面と第2結晶面)を接合させることができる。結晶軸がずれていることは、非対称面の回転対称性を、X線回折のφスキャンを行うことで、確認することができる。第1結晶面と第2結晶面のずれは、回転対称性に応じて繰り返し観察される。非対称面は、例えば、窒化ガリウムの(102)面である。
【0054】
また、直接接合する工程において、第1接合面30aと第2接合面40aとを直接接合した後に、アニールすることができる。これにより、得られる半導体レーザの電気抵抗を低減することできる。このアニールにより接合界面近傍の結晶性を維持しつつ、密着性が向上するためと考えられる。このアニールは、例えば、圧力を印加することなく行う。アニールの温度範囲は、例えば、300℃~500℃、好ましくは350℃~450℃である。このアニール温度は、第3半導体層部30及び第4半導体層部40を構成する材料に応じて上記温度範囲に適宜設定するが、例えば、第3半導体層部30及び第4半導体層部40をいずれもGaNにより構成する場合には、上記温度範囲でアニールすることにより、例えば、結晶性を維持しつつ、第3半導体層部30及び第4半導体層部40との密着性を向上させることができると考えられる。
また、このアニールにより、第4半導体層部40上に設けられた樹脂層86および支持基板87を同時に加熱することができる。つまり、このアニールにより、樹脂層86を溶融または焼いて除去することにより支持基板87を取り除くことができる。これにより、支持基板87を樹脂層86から除去する際に、第4半導体層部40が第3半導体層部30から剥がれることを抑制することができる。樹脂層86および支持基板87を取り除いたあと、第4半導体層部40の表面を洗浄し、洗浄した面に第1電極1を形成することができる。なお、樹脂層86および支持基板87を、他の方法により除去して、その後、第1電極1を形成することもできる。また、樹脂層86および支持基板87を用いずに、第4半導体層部40を含む基板を第3半導体層部30に直接接合することもできる。
上記のフォトニック結晶を形成する工程と、直接接合をする工程とにより、フォトニック結晶7が第3半導体層部30に形成され、フォトニック結晶7を構成する複数の穴70の上端7bが第4半導体層部40の第2接合面40aに配置される。
【0055】
(電極形成工程)
次に、図8Gに示すように、第4半導体層部40の上面40bに所定のパターンの第1電極1を形成し、基板60の下面60aに所定のパターンの第2電極2を形成する。さらに、第2電極2と基板60との間に透光性電極4を形成してもよい。第1電極1は、平面視においてフォトニック結晶7と少なくとも一部が重なるように設けられる。
第1電極1及び第2電極2は、公知の方法を適宜用いて形成することができる。第1電極1及び第2電極2は、例えば、レジストを用いたリフトオフプロセスやエッチングプロセスにより形成することができる。
【0056】
(個片化工程)
次に、半導体レーザ100毎に個片化する。この個片化は、レーザスクライブもしくはダイシングなどにより、図8Gに示す所定の個片化位置CLに沿って行う。レーザスクライブは、基板内部にレーザ光を集光させて、改質領域を形成し、これから伸展する亀裂を起点としてウェハを分割する方法である。
【0057】
2.実施形態2に係る半導体レーザの製造方法の一例(製造方法2)
製造方法2は、実施形態1に係る半導体レーザの製造方法1に加えて、端面200aに光反射膜203aおよび端面200bに光反射膜203bを施す工程を有する点で、実施形態1に係る半導体レーザ100の製造方法1と異なる。
光反射膜203aおよび203bを施す工程は、個片化工程の後または個片化工程の途中に実施される。光反射膜203aおよび203bは、例えば、真空蒸着方法、スパッタリング法で実施される。
なお、本製造方法のフォトニック結晶7を形成する工程において、格子定数aと、真空における波長λと、実効屈折率neffとは、a=λ/(2×neff)の関係式を満たすように溝75が設けられる。溝75による屈折率の周期変化は、1次元的である。すなわち、本製造方法2により製造される半導体レーザは、DFBレーザである。
【0058】
3.実施形態3に係る半導体レーザの製造方法の一例(製造方法3)
製造方法3は、フォトニック結晶7を形成する工程において、実施形態1に係る半導体レーザの製造方法1と異なる。
製造方法3におけるフォトニック結晶7を形成する工程では、第4半導体層部340にフォトニック結晶7を形成する。具体的には、図9Aに示すように、第4半導体層部340の第2接合面340aに、第1マスク81及び穴集合部8を有する第2マスク82を配置する。その後、図9Bに示すように、第2マスク82から露出した第1マスク81及び第4半導体層部340を除去し、フォトニック結晶7を構成する穴70の上端7bが第4半導体層部340内に位置するように穴70を形成する。
半導体部90を準備する工程、第4半導体層部40を準備する工程、図9Cに示す直接接合する工程、及び図9Dに示す電極形成工程と個片化工程とは、製造方法1におけるそれらの工程と同様である。
【0059】
以上のような製造方法では、活性層50を有さない第4半導体層部340にフォトニック結晶7を形成し、その後、活性層50を有する半導体部90と第4半導体層部340を接合している。この方法は、エッチング等による活性層50へのダメージを抑制することができる。
【0060】
また、例えば、本開示は、以下のような構成をとることができる。
項(1)
第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、
前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、
前記第2半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、
前記第3半導体層部上に設けられた第1導電型の不純物を第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部と、
を備え、
前記第1濃度は、前記第2濃度よりも高く、
前記第3半導体層部は、前記第4半導体層部と直接接合しており、
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方にフォトニック結晶を含む、半導体レーザ。
項(2)
前記第3半導体層部は、
前記第1導電型の不純物を前記第1濃度で含有する半導体層である第1層と、
第1導電型の不純物を、前記第2濃度よりも大きくかつ前記第1濃度よりも小さい第3濃度で含有する半導体層である第2層と、
を含み、
前記第2半導体層部側から順に、前記第1層および前記第2層が設けられている、項1に記載の半導体レーザ。
項(3)
前記第3半導体層部が前記フォトニック結晶を含み、
前記フォトニック結晶を構成する穴の上端は、前記第4半導体層部の接合面に位置する、項1又は2に記載の半導体レーザ。
項(4)
前記フォトニック結晶を構成する穴の下端は、前記第2半導体層部内に位置する、項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
項(5)
前記活性層は、1以上の井戸層と、複数の障壁層とを含み、
前記障壁層は、前記第1半導体層部と接する第1障壁層と、前記第2半導体層部20と接する第2障壁層と、を少なくとも含み、
前記フォトニック結晶を構成する穴の下端は、前記第2障壁層内に位置する、項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
項(6)
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部とは、同一材料で構成されている、項1~5のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
項(7)
前記第1半導体層部、前記第2半導体層部、前記第3半導体層部および前記第4半導体層部はいずれも窒化物半導体層部である、項1~6のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
項(8)
前記第1導電型はn型であり、
前記第2導電型はp型である、項1~7のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
項(9)
第1導電型の半導体層を含む第1半導体層部と、前記第1半導体層部上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体層を含む第2半導体層部と、前記第2半導体層部上に設けられ、第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層を含む第3半導体層部と、を備える半導体部を準備する工程と、
第1導電型の不純物を、前記第1濃度よりも低い第2濃度で含有する半導体層を含む第4半導体層部を準備する工程と、
前記第3半導体層部と前記第4半導体層部の少なくとも一方に、フォトニック結晶を形成する工程と、
前記第3半導体層部の、前記第2半導体層部が配置される面と反対側に位置する第1接合面及び前記第4半導体層部の第2接合面を直接接合する工程と、
を含む、半導体レーザの製造方法。
項(10)
前記直接接合する工程は、表面活性化接合により行う、項9に記載の半導体レーザの製造方法。
項(11)
前記半導体部を準備する工程において、
前記第3半導体層部は、
前記第1導電型の不純物を第1濃度で含有する半導体層である第1層と、
前記第1導電型の不純物を、第2濃度よりも大きくかつ前記第1濃度よりも小さい第3濃度で含有する第2層と、
を含む、項9又は10に記載の半導体レーザの製造方法。
項(12)
前記フォトニック結晶を形成する工程において、前記第3半導体層部に複数の穴を形成することで、前記フォトニック結晶を形成し、
前記複数の穴の上端は、前記第4半導体層部の接合面に配置される、項9~11のいずれか1項に記載の半導体レーザの製造方法。
項(13)
前記半導体部を準備する工程において、
前記第3半導体層部は、前記第4半導体層部と同一材料である、項9~12のいずれか1項に記載の半導体レーザの製造方法。
【0061】
以上、本開示の実施形態及び変形例を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施形態及び変形例における要素の組合せや順序の変化等は請求された本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0062】
1 第1電極
2 第2電極
3 光反射防止コーティング
4 透光性電極
5、205 光取り出し面
7 フォトニック結晶
7a 下端
7b 上端
8 穴集合部
10 第1半導体層部
20 第2半導体層部
30 第3半導体層部
30a 第1接合面
31 第1層
32 第2層
40、340 第4半導体層部
40a、340a 第2接合面
40b 上面
45 分布ブラッグ反射膜(DBR膜)
50 活性層
51 第1障壁層
52 井戸層
53 第2障壁層
60 基板
60a、4a 下面
70 穴
71 第1端
72 第2端
75 溝
80 穴
81 第1マスク
82 第2マスク
85 成長基板
86 樹脂層
87 支持基板
90 半導体部
100、200、300 半導体レーザ
203a、203b 光反射膜
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図9D