(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163952
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】レンズカバーアッセンブリーおよびカメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 11/04 20210101AFI20231102BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231102BHJP
【FI】
G03B11/04 A
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075207
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】古河 憲一
【テーマコード(参考)】
2H044
2H083
【Fターム(参考)】
2H044AJ06
2H083AA01
2H083AA26
2H083AA41
2H083AA44
2H083AA47
(57)【要約】
【課題】部品点数を抑え、製造コストを削減することのできるレンズカバーアッセンブリーおよびこのレンズカバーアッセンブリーを含むカメラを提供すること。
【解決手段】レンズカバーアッセンブリー800は、光透過性を有するレンズカバー890と、レンズカバー890を保持する保持部材810と、を有している。また、保持部材810は、レンズカバー890が挿入される筒状の壁部820と、壁部820に挿入されたレンズカバー890の挿入方向前方側の第1主面891に当接する当接部850と、壁部820の内周面から内側に突出し、壁部820に挿入されたレンズカバー890の挿入方向後方側の第2主面892に当接する爪部860と、を有している。また、当接部850と爪部860との離間距離D1は、レンズカバー890の厚みTよりも小さく、爪部860は、挿入方向後方側に弾性変形した状態で第2主面892に当接している。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するレンズカバーと、
前記レンズカバーを保持する保持部材と、を有し、
前記保持部材は、
前記レンズカバーが挿入される筒状の壁部と、
前記壁部に挿入された前記レンズカバーの挿入方向前方側の第1主面に当接する当接部と、
前記壁部の内周面から内側に突出し、前記壁部に挿入された前記レンズカバーの挿入方向後方側の第2主面に当接する爪部と、を有し、
前記当接部と前記爪部との離間距離は、前記レンズカバーの厚みよりも小さく、
前記爪部は、前記挿入方向後方側に弾性変形した状態で前記第2主面に当接していることを特徴とするレンズカバーアッセンブリー。
【請求項2】
前記爪部を前記壁部の外側へ弾性変形させることで、前記レンズカバーを前記保持部材から取り外すことができる請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項3】
前記爪部は、前記壁部の周方向に離間して複数配置されている請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項4】
前記爪部は、前記壁部の周方向に沿って延びる梁部と、前記梁部の先端部から前記壁部の内側へ突出する第1突出部と、を有し、
前記第1突出部が前記第2主面に当接している請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項5】
前記爪部は、前記梁部の先端部から前記壁部の外側へ突出する第2突出部を有している請求項4に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項6】
前記爪部は、前記挿入方向前方側を向き、前記レンズカバーと当接する第1面を有し、
前記第1面は、前記壁部の中心軸に直交する面である請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項7】
前記爪部は、前記第1面と対向し、前記挿入方向後方側を向く第2面を有し、
前記第2面は、前記壁部の中心軸に直交する面に対して前記壁部の内側に傾いた傾斜面である請求項6に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項8】
前記保持部材は、前記壁部の外周面に形成された雄ネジ構造を有している請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項9】
前記保持部材は、前記壁部から外側に突出するフランジを有している請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項10】
カメラのレンズアッセンブリーの先端部に取り付けられる請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項11】
前記挿入方向後方側から前記レンズアッセンブリーに挿入され、
前記レンズアッセンブリーに取り付けられた状態では、前記爪部の前記壁部の外側への弾性変形が規制される請求項10に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項12】
前記レンズアッセンブリーに取り付けられた状態では、前記爪部の前記挿入方向後方側への弾性変形が規制される請求項11に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のレンズカバーアッセンブリーを有していることを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズカバーアッセンブリーおよびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場の生産ラインにおいて、作業の自動化・無人化を図るため、部品の寸法測定、検査、組立、加工等を実行するための産業用ロボットが広く用いられている。産業用ロボットは、工場の生産ラインにおいて、ワークテーブル上に載置された作業対象物(これを「ワーク」という)に対する所定の作業、例えば、部品の取り付け、液体材料の塗布や切削等の加工、導電検査等を行う。このような産業用ロボットは、ロボットアームや可動ステージ等の可動部と、ワークに対する所定の作業を実行するための作業部(例えば、ピックアップハンド、ノズル、コンタクトプローブ)とを備えており、可動部によって作業部とワークとの相対位置を制御することにより、ワークに対する所定の作業を実現する。
【0003】
ワークに対する所定の作業を実行するためには、ワークテーブル上に載置されたワークの大きさ、形状、および位置を正確に取得する必要がある。そのため、一般的に、産業用ロボットは、ワークを撮影するためのカメラを備えており、カメラを用いてワークを撮影することによって取得される画像から、ワークの大きさ、形状、および位置を取得する。このような産業用ロボットに用いられるカメラにおいて、カメラのレンズアッセンブリー内に塵やゴミ等が浸入することを防止する防塵機能を提供するために、カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダーの先端部に取り付けられるレンズカバーアッセンブリーが広く利用されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、ガラス等の透明材料から構成されるディスク状のレンズカバー(透明防塵フィルター)と、レンズカバーを載置するためのリング状の受け部材と、レンズカバーを受け部材上に押圧し、受け部材上でレンズカバーを固定するための複数の押圧部材と、を含むレンズカバーアッセンブリーを開示している。しかしながら、特許文献1の押圧部材は、複数の板金および固定ネジを含む多くの部品によって構成される複雑な構成を有しているため、組立の際の要求精度が高く、小型化が困難であった。そのため、複雑な構成を有する特許文献1のレンズカバーアッセンブリーは、産業用ロボットで用いられるような小型化が要求されるカメラに不向きであった。
【0005】
非常にシンプルな構成を有するレンズカバーアッセンブリーとして、
図1に示されているような、レンズカバー910と、レンズカバー910を収納するためのキャップ920と、キャップ920内においてレンズカバー910を固定するための固定部材930と、を備えるレンズカバーアッセンブリー900が広く用いられている。
図1に示されているように、キャップ920は、リング状の本体部921と、本体部921の内周面上に形成され、レンズカバー910を収納するための受け部922と、本体部921の内周面のうち、受け部922よりも基端側の部分に形成された雌ネジ構造923と、本体部921の外周面上に形成された雄ネジ構造924と、を備えている。一方、固定部材930は、リング状の本体部931と、本体部931の外周面上に形成された雄ネジ構造932と、を備えている。
【0006】
図2は、レンズカバーアッセンブリー900を組み立てた状態の断面図を示している。
図2に示されているように、キャップ920の受け部922内にレンズカバー910が収納される。さらに、キャップ920の内周面上に形成された雌ネジ構造923と固定部材930の本体部931の外周面上に形成された雄ネジ構造932とを螺合させることにより、固定部材930がキャップ920に取り付けられる。このような構成により、キャップ920の受け部922内でレンズカバー910を固定することができる。
【0007】
さらに、レンズカバーアッセンブリー900が組み立てられた状態において、キャップ920の外周面上に形成された雄ネジ構造924と、カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダー(図示せず)の先端側開口の内周面上に形成された雌ネジ構造とを螺合させることにより、レンズカバーアッセンブリー900がシリンダーの先端部に取り付けられ、レンズアッセンブリー内に塵やゴミ等が浸入する防塵機能を提供することができる。このようなレンズカバーアッセンブリー900は、部品点数が少なく、かつ、非常にシンプルな構成を有しているため、産業用ロボットで用いられるような小型カメラにおいて、広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レンズカバーアッセンブリー900は、レンズカバー910、キャップ920および固定部材930の3つの部材から構成されているため、部品点数が多く、製造コストが高いという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、部品点数を抑え、製造コストを削減することのできるレンズカバーアッセンブリーおよびこのレンズカバーアッセンブリーを含むカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、以下の(1)および(2)の本発明により達成される。
【0012】
(1) 光透過性を有するレンズカバーと、
前記レンズカバーを保持する保持部材と、を有し、
前記保持部材は、
前記レンズカバーが挿入される筒状の壁部と、
前記壁部に挿入された前記レンズカバーの挿入方向前方側の第1主面に当接する当接部と、
前記壁部の内周面から内側に突出し、前記壁部に挿入された前記レンズカバーの挿入方向後方側の第2主面に当接する爪部と、を有し、
前記当接部と前記爪部との離間距離は、前記レンズカバーの厚みよりも小さく、
前記爪部は、前記挿入方向後方側に弾性変形した状態で前記第2主面に当接していることを特徴とするレンズカバーアッセンブリー。
【0013】
(2) 上記(1)に記載のレンズカバーアッセンブリーを有していることを特徴とするカメラ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレンズカバーアッセンブリーは、レンズカバーと、このレンズカバーを保持する保持部材810と、の2つの部材から構成されている。そのため、
図1および
図2で示した従来技術のように3つの部材(レンズカバー910、キャップ920、固定部材930)を組み立てる構成と比べて部品点数を削減することができる。したがって、製造コストを削減することができ、より安価なレンズカバーアッセンブリーを提供することができる。また、本発明のレンズカバーアセンブリーは、組み立てが容易で、さらには薄型化および軽量化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来技術のレンズカバーアセンブリーの一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すレンズカバーアセンブリーを組み立てた状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の好適な実施形態に係るカメラを前方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示すカメラをY軸方向から見た断面図である。
【
図5】
図3に示すカメラをY軸方向から見た断面図である。
【
図6】
図3に示すカメラに取り付けられたレンズカバーアッセンブリーを前方から見た斜視図である。
【
図7】
図6に示すレンズカバーアッセンブリーを前方から見た分解斜視図である。
【
図8】
図6に示すレンズカバーアッセンブリーを後方から見た分解斜視図である。
【
図9】
図6に示すレンズカバーアッセンブリーの断面図である。
【
図10】
図6に示すレンズカバーアッセンブリーをカメラに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図11】レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【
図12】レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【
図13】レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【
図14】レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【
図15】レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のレンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図3は、本発明の好適な実施形態に係るカメラを前方から見た斜視図である。
図4および
図5は、それぞれ、
図3に示すカメラをY軸方向から見た断面図である。
図6は、
図3に示すカメラに取り付けられたレンズカバーアッセンブリーを前方から見た斜視図である。
図7は、
図6に示すレンズカバーアッセンブリーを前方から見た分解斜視図である。
図8は、
図6に示すレンズカバーアッセンブリーを後方から見た分解斜視図である。
図9は、
図6に示すレンズカバーアッセンブリーの断面図である。
図10は、
図6に示すレンズカバーアッセンブリーをカメラに取り付けた状態を示す断面図である。
図11ないし
図15は、それぞれ、レンズカバーアッセンブリーの組み立て手順を説明するための断面図である。
【0018】
なお、以下では、説明の便宜上、
図3、
図4、
図5および
図10の各図に、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を図示している。そして、X軸がカメラ100の光軸Oと一致している。また、X軸方向プラス側が受光側であり、以下では「先端側」、「前方」とも言う。また、X軸方向マイナス側が結像側であり、以下では、「基端側」、「後方」とも言う。
【0019】
図3に示すカメラ100は、FA(ファクトリーオートメーション)用のカメラである。典型的には、カメラ100は、部品の組み立て、加工、検査等を実行するFA用のロボットのアーム等に取り付けられ、部品の形状や位置、部品とロボットのアームとの間の相対関係等を取得するために部品を撮影する。ただし、カメラ100の用途は、これに限定されない。
【0020】
図3および
図4に示すように、カメラ100は、ケーシング200と、ケーシング200の前方に装着されているシリンダー300と、シリンダー300に挿入されたレンズアッセンブリー400と、レンズアッセンブリー400をシリンダー300に対して移動させる移動機構500と、レンズアッセンブリー400に装着されたレンズカバーアッセンブリー800と、を有している。
【0021】
また、カメラ100は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光する撮像素子600と、撮像素子600を支持している第1回路基板610と、不図示の配線を介して第1回路基板610と電気的に接続されている第2回路基板620と、を有している。これら撮像素子600、第1回路基板610および第2回路基板620は、それぞれ、ケーシング200に収容されている。なお、以下では、説明の便宜上、光軸Oに沿う方向を「光軸方向LL」とも言う。
【0022】
このようなカメラ100では、移動機構500によってレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させることによりレンズアッセンブリー400と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整することができる。撮影距離(被写体との距離)に応じて離間距離Dを調整することによりフォーカス調整(ピント合わせ)が可能となる。
【0023】
以下、カメラ100を構成する各部について、順次詳細に説明する。
【0024】
≪シリンダー300≫
図4に示すように、シリンダー300は、円筒形状を有している。また、シリンダー300の内径は、光軸方向LLに沿ってほぼ一定である。
【0025】
また、シリンダー300は、第1外径部310と、第1外径部310よりも外径が大きい第2外径部320と、を有している。これらは、前方から第1外径部310、第2外径部320の順に光軸方向LLに並び、一体的に形成されている。また、第1外径部310の外周面の上端部と下端部とには、円筒形状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面311が形成されている。また、第2外径部320の外周面の上端部と下端部とには、円筒形状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面321が形成されている。各Dカット面311、321は、それぞれ、Z軸を法線とする平坦面である。
【0026】
シリンダー300は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。そのため、十分な剛性を有するシリンダー300が得られ、内部に収容されたレンズアッセンブリー400を安定して保持することができる。また、シリンダー300は、例えば、NC(Numerical Control)旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でシリンダー300を形成することができる。そのため、シリンダー300内でのレンズアッセンブリー400のガタツキを抑え、かつ、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。
【0027】
以上、シリンダー300について説明したが、シリンダー300の構成、材質、製造方法等は、特に限定されない。
【0028】
≪ケーシング200≫
図4に示すように、ケーシング200は、シリンダー300の後方に位置し、シリンダー300と光軸方向LLに並んで配置されている。また、ケーシング200は、後方上部を切り欠いた形状となっている。そのため、ケーシング200は、シリンダー300を保持する高背部201と、高背部201の後方に位置し、高背部201よりも背が低い低背部202と、を有している。そして、高背部201の後面201bから後述する送り装置550が突出しており、低背部202の後面202bには外部装置との接続を行う端子群690が設けられている。
【0029】
このように、低背部202の後面202bすなわちケーシング200の最後方に位置する部分に端子群690を設けることにより、端子群690の周囲がひらけ、端子群690へのアプローチが容易となる。また、端子群690にケーブルを接続した状態ではケーブルがカメラ100の後方へ延びるため、ケーブルを含めたカメラ100全体の光軸Oに直交する方向への広がり、換言すると、光軸方向LLからの平面視でのカメラ100の輪郭の広がりを抑えることができる。そのため、カメラ100の小型化を図ることができる。
【0030】
また、ケーシング200は、その下側部分を構成するベースシャーシ210と、上側部分を構成するアッパーケース220と、を有している。そして、ベースシャーシ210とアッパーケース220とでシリンダー300の基端部を挟み込むことにより、シリンダー300を保持している。ただし、ケーシング200がシリンダー300を保持する方法は、特に限定されない。
【0031】
ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するケーシング200が得られ、シリンダー300を安定して保持することができる。特に、本実施形態では、ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、それぞれ、ダイカストすなわち鋳造品である。ダイカストを用いることにより、安価なベースシャーシ210およびアッパーケース220が得られる。また、二次加工により部分的に高い寸法精度を出すことができる。
【0032】
以上、ケーシング200について説明したが、ケーシング200の構成、材質、製造方法等は、特に限定されない。
【0033】
≪レンズアッセンブリー400≫
図4に示すように、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300に挿入され、シリンダー300と同軸的に配置されている。また、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300に対して光軸方向LLに移動可能である。このようなレンズアッセンブリー400は、レンズユニット420と、レンズユニット420の基端部に接続されているスリーブ410と、を有している。
【0034】
スリーブ410は、筒状であり、シリンダー300に挿入されている。また、スリーブ410の外径は、光軸方向LLに沿ってほぼ一定である。そして、スリーブ410の外周面がシリンダー300の内周面に接触している。なお、スリーブ410の外周面とシリンダー300の内周面との間には、これらの摺動抵抗を低減するための図示しない潤滑剤が設けられている。そのため、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。潤滑剤としては、特に限定されず、例えば、モリブテン系、グラファイト系、フッ素系等の各種固体潤滑剤を用いることができる。
【0035】
また、スリーブ410は、その前方開口に臨むレンズユニット挿入部413を有している。そして、レンズユニット挿入部413に鏡筒430の基端部が挿入され、これらが螺合している。なお、本実施形態のレンズユニット挿入部413は、Cマウント規格で構成されている。そのため、Cマウント規格に対応したものであれば、用途に合わせてレンズユニット420を交換することもできる。ただし、レンズユニット挿入部413の規格としては、特に限定されず、例えば、Sマウント規格で構成されていてもよいし、それ以外の規格で構成されていてもよい。
【0036】
レンズユニット420は、円筒形状の鏡筒430と、鏡筒430内に配置されたレンズ群440、絞り450およびこれらを保持する保持具460と、を有している。レンズユニット420は、テレセントリック光学系のレンズユニットである。テレセントリック光学系は、主光線が光軸Oと平行となり、被写体との距離が変化しても光学倍率が変わらないという計測用途に適した特性を持つ。そのため、テレセントリック光学系のレンズユニット420は、FA用として適している。
【0037】
特に、本実施形態のレンズユニット420は、物体側および像側が共にテレセントリック光学系である両側テレセントリック構造である。ただし、レンズユニット420は、これに限定されず、例えば、物体側のみをテレセントリック構造とした物体側テレセントリック光学系であってもよいし、像側のみをテレセントリック構造とした像側テレセントリック光学系であってもよい。また、テレセントリック光学系以外のレンズユニットであってもよい。
【0038】
鏡筒430は、第1外径部431と、第1外径部431よりも外径が小さい第2外径部432と、第2外径部432よりも外径が小さい第3外径部433と、第3外径部433よりも外径が小さい第4外径部434と、を有している。これらは、前方から第1外径部431、第2外径部432、第3外径部433、第4外径部434の順に光軸方向LLに並び、一体的に形成されている。また、第1外径部431の先端部の内周面には、レンズカバーアッセンブリー800と螺合する雌ネジ構造439が形成されている。また、第4外径部434の基端部の外周面には、レンズユニット挿入部413と螺合する雄ネジ構造438が形成されている。
【0039】
また、鏡筒430の基端側の部分、具体的には第3外径部433および第4外径部434がスリーブ410と共にシリンダー300内に挿入されており、先端側の部分、具体的には第1外径部431および第2外径部432がシリンダー300から突出している。このように、鏡筒430の先端側の部分をシリンダー300から突出させる構成とすることにより、シリンダー300を鏡筒430の基端側の部分の径に合わせて設計することができるため、シリンダー300を短くかつ小径にすることができる。図示の構成では、シリンダー300の外径は、鏡筒430の先端部すなわち第1外径部431の外径よりも小さく、シリンダー300の長さは、レンズアッセンブリー400の長さよりも短い。そのため、カメラ100の軽量化および小型化を図ることができる。特に、カメラ100の先端重量を低減することができるため、カメラ100の重心をカメラ100の中心に寄せることができ、重量バランスの向上を合わせて図ることができる。
【0040】
スリーブ410および鏡筒430は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するスリーブ410および鏡筒430が得られる。特に、本実施形態では、スリーブ410および鏡筒430は、シリンダー300と同一の材料で構成されている。これにより、シリンダー300、スリーブ410および鏡筒430の線膨張係数が等しくなり、昇温によってスリーブ410とシリンダー300との間にガタが生じたり、反対に、スリーブ410の動きが鈍くなったりするのを効果的に抑制することができる。
【0041】
また、スリーブ410および鏡筒430は、例えば、NC旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でスリーブ410および鏡筒430を形成することができる。ただし、スリーブ410および鏡筒430の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0042】
このように、本実施形態では、シリンダー300およびスリーブ410が共にNC旋盤加工により形成されている。そのため、これらのクリアランスを高精度に管理することができ、スリーブ410をシリンダー300に精度よく組み付けることができる。したがって、レンズユニット420をシリンダー300内でスムーズに動かすことができると共に、シリンダー300内でのレンズユニット420の光軸Oに対する偏心や傾斜を抑制することができる。
【0043】
以上、レンズアッセンブリー400について説明したが、レンズアッセンブリー400の構成、材質、製造方法等は、特に限定されない。
【0044】
≪撮像素子600≫
図4に示すように、撮像素子600は、レンズアッセンブリー400の後方に位置しており、レンズアッセンブリー400と光軸方向LLに並んで配置されている。また、撮像素子600の受光面は、光軸Oに直交している。撮像素子600は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光し、受光に応じた光電変換信号を出力する。撮像素子600としては、特に限定されず、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等を用いることができる。また、撮像素子600の素子サイズ、解像度等の各種スペックは、カメラ100に求められるスペックに合わせて適宜設定することができる。
【0045】
以上、撮像素子600について説明したが、撮像素子600の構成は、特に限定されない。
【0046】
≪第1回路基板610≫
図4に示すように、第1回路基板610は、撮像素子600が搭載されているセンサー基板であり、光軸Oに直交する姿勢で配置されている。また、第1回路基板610は、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。上述したように、シリンダー300は、NC旋盤加工により形成されているため、基端面の形成精度が高く、光軸Oに対する垂直度を高精度に管理することができる。そのため、第1回路基板610をシリンダー300の基端面に固定することにより、撮像素子600を光軸Oに対して精度よく位置決めすることができる。また、第1回路基板610には、孔611が形成されており、この孔611には後述するロッド510が挿通されている。
【0047】
また、第1回路基板610は、筒状の支持部材630を介してIRカットフィルター640(赤外線カットフィルター)を支持している。IRカットフィルター640は、レンズアッセンブリー400と撮像素子600との間に位置し、撮像素子600の手前で赤外線をカットする。
【0048】
以上、第1回路基板610について説明したが、第1回路基板610の構成、固定方法、固定される対象等は、特に限定されない。
【0049】
≪第2回路基板620≫
図4に示すように、第2回路基板620は、ケーシング200内において、第1回路基板610の後方に設けられ、光軸Oと平行な向きで配置されている。また、第2回路基板620は、ネジB2によってベースシャーシ210にネジ止めされている。
【0050】
第2回路基板620には、カメラ100の駆動を制御する回路素子であるICチップ650が搭載されている。ICチップ650は、第1回路基板610および端子群690と電気的に接続されている。ICチップ650は、端子群690を介して受信した制御信号に基づいてカメラ100の駆動を制御する。また、ICチップ650は、撮像素子600から出力された光電変換信号に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを端子群690から出力する。
【0051】
ICチップ650は、例えば、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、を有している。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0052】
以上、第2回路基板620について説明したが、第2回路基板620の構成、固定方法、固定される対象等は、特に限定されない。
【0053】
≪移動機構500≫
移動機構500は、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させ、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整するための機構である。
図4に示すように、移動機構500は、レンズアッセンブリー400に接続されているロッド510と、ロッド510の基端部に接続されているロッドヘッド520と、ロッド510を光軸方向LLに誘導するロッドガイド530と、ロッド510を後方に向けて付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね540と、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を前方に向けて送り出す送り装置550と、を有している。
【0054】
ロッド510は、ケーシング200内において、レンズアッセンブリー400の後方に設けられている。また、ロッド510は、棒状であり、光軸方向LLに延在している。また、ロッド510は、光軸方向LLからの平面視で、レンズアッセンブリー400と重なっている。ロッド510をこのように配置することで、カメラ100の光軸Oに直交する方向への広がり、換言すると、光軸方向LLからの平面視でのカメラ100の輪郭の広がりを抑えることができ、カメラ100の小型化を図ることができる。また、ロッド510は、光軸Oから上方にずれて配置されている。このように、ロッド510を光軸Oからずらすことで、ロッド510と撮像素子600との干渉を防ぐことができる。
【0055】
また、ロッド510は、その先端部においてスリーブ410の基端部に接続されている。そのため、ロッド510が前方に移動すると、ロッド510に押されてレンズアッセンブリー400が前方に移動する。反対に、ロッド510が後方に移動すると、ロッド510に引っ張られてレンズアッセンブリー400が後方に移動する。このように、ロッド510をスリーブ410に接続することにより、レンズユニット420がロッド510によって直接押圧されないため、レンズユニット420に加わる負荷を低減することができる。
【0056】
ロッド510は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するロッド510が得られ、送り装置550からの押圧力を効率的にレンズアッセンブリー400に伝達することができる。そのため、レンズアッセンブリー400をスムーズに移動させることができる。
【0057】
ロッドヘッド520は、ロッド510の基端部に接続されている。また、ロッドヘッド520は、ロッド510よりも大径な頭部521を有する。頭部521の先端面は、圧縮コイルばね540が当接する当接面であり、基端面は、送り装置550が当接する当接面である。
【0058】
ロッドヘッド520は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の各種樹脂材料で構成されている。PEEKで構成することにより、優れた機械的強度、耐摩擦特性を発揮することができるため、圧縮コイルばね540および送り装置550との接点に用いるのに適した材質となる。ただし、これに限定されず、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成してもよい。これにより、PEEKに比べてロッドヘッド520を安価に製造することができる。
【0059】
ロッドガイド530は、ケーシング200内において、第1回路基板610の後方に設けられている。ロッドガイド530は、第1回路基板610と共に、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。ロッドガイド530は、光軸方向LLに延在する筒状をなし、ロッドガイド530を貫通する貫通孔531が第1回路基板610の孔611と連通するように配置されている。
【0060】
そして、ロッドガイド530および孔611にロッド510が挿通されている。そのため、ロッド510は、光軸方向LLへの移動が許容されるが、それ以外の方向への移動、特に光軸Oまわりの回転が規制される。これにより、ロッド510の操作性が向上し、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。
【0061】
また、ロッドガイド530は、圧縮コイルばね540の形状に合わせて円錐台形状となっている。これにより、圧縮コイルばね540を安定して伸縮させることができ、安定した付勢力を得ることができる。
【0062】
圧縮コイルばね540は、ロッド510およびロッドガイド530に巻回されている。また、圧縮コイルばね540は、ロッドガイド530とロッドヘッド520との間に収縮した状態で配置されている。そのため、圧縮コイルばね540の復元力によって、ロッド510が後方に付勢されている。
【0063】
また、圧縮コイルばね540は、前方から後方に向けて径が漸減する円錐形状を有する。そのため、ロッド510の中心軸に向けて力を集中させ易くなる。したがって、当該構成によっても、圧縮コイルばね540からロッド510に光軸Oに対して傾斜する方向の付勢力が加わり難くなる。よって、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。
【0064】
なお、圧縮コイルばね540としては、特に限定されず、例えば、円筒コイルばね、樽型コイルばね、鼓型コイルばね等を用いてもよい。また、圧縮コイルばね540に替えて、引張コイルばね、板バネ等を付勢部材として用いてもよい。また、引張コイルばねを用いてロッド510を後方へ付勢してもよい。
【0065】
送り装置550は、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を前方に向けて押圧する。本実施形態では、送り装置550として、マイクロメーターヘッド550Aを用いている。マイクロメーターヘッド550Aは、公知の構成であり、例えば、押圧子としてのスピンドル551と、スリーブ552と、操作部としてのシンブル553と、ラチェットストップ554と、を有している。送り装置550としてマイクロメーターヘッド550Aを用いることにより、離間距離Dをより微細にかつ精度よく調整することができる。なお、本実施形態では、ラチェットストップ554を使用しないため、省略してもよい。
【0066】
マイクロメーターヘッド550Aは、スリーブ552においてケーシング200のアッパーケース220に固定されている。本実施形態では、アッパーケース220に形成された挿通孔221にマイクロメーターヘッド550Aが挿通され、さらにイモネジB3によってケーシング200に対して固定、位置決めされている。
【0067】
マイクロメーターヘッド550Aがケーシング200に固定された状態では、スピンドル551がケーシング200内に位置し、その先端面がロッドヘッド520の基端面に当接している。スピンドル551の先端部は、球面形状となっている。そのため、例えば、先端部が平坦面で構成されている場合と比べて、スピンドル551およびロッドヘッド520の摩耗や、マイクロメーターヘッド550Aの傾きによる誤差を抑えることができる。一方、シンブル553およびラチェットストップ554は、ケーシング200外に突出し、露出している。そして、ケーシング200外に突出した部分は、低背部202の上方の切り欠かれた部分に位置している。
【0068】
図5に示すように、シンブル553を順回転させるとスピンドル551がその中心軸J551まわりに順方向に回転しながら中心軸J551に沿って前進し、スピンドル551に押されたロッド510が圧縮コイルばね540の付勢力に抗して前方へ移動し、ロッド510に押されたレンズアッセンブリー400が前方へ移動する。これにより、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dが大きくなる。
【0069】
反対に、シンブル553を逆回転させるとスピンドル551が中心軸J551まわりに逆回転しながら中心軸J551に沿って後退し、圧縮コイルばね540の付勢力によってロッド510が後方へ移動し、ロッド510に引っ張られたレンズアッセンブリー400が後方へ移動する。これにより、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dが小さくなる。
【0070】
このように、カメラ100では、マイクロメーターヘッド550Aの操作によってフォーカス調整が可能となる。そのため、カメラ100によれば、レンズユニット420を交換することなく、カメラ100の撮影距離および分解能(物理的解像度)を変更することができる。
【0071】
マイクロメーターヘッド550Aによれば、シンブル553を回転させるだけで離間距離Dを変更することができるため、使用者の操作による過度な応力がカメラ100に加わり難い。そのため、カメラ100を構成する各部品の破損が抑制される。また、マイクロメーターヘッド550Aにはスピンドル551の繰り出し量を表示する不図示の目盛が設けられているため、当該目盛から離間距離Dを読み取ることも可能である。
【0072】
なお、フォーカス調整の方法としては、特に限定されない。例えば、カメラ100で撮像した画像をモニター等に表示し、操作者が当該画像を目視しながらマイクロメーターヘッド550Aを操作することによりフォーカス調整を行ってもよい。また、物理的解像度が最も高くなるようにフォーカス調整を自動で行うソフトウェアを用いてもよい。
【0073】
スピンドル551の中心軸J551は、後方が上側に位置するように、光軸Oに対して傾斜している。このように、中心軸J551を光軸Oに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aとケーシング200との干渉を防ぎ、マイクロメーターヘッド550Aを配置し易くなる。また、シンブル553の周囲に操作スペースを確保し易くなり、シンブル553を操作し易くなる。また、中心軸J551が光軸Oと平行な場合と比べて、シンブル553の回転量に対するレンズアッセンブリー400の変位量を小さくすることができ、離間距離Dをより微細に調整することができる。
【0074】
なお、中心軸J551を光軸Oに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aに表示されるシンブル553の送り量とレンズアッセンブリー400の実際の変位量との間に誤差が生じるが、前述したように、フォーカス調整の際にマイクロメーターヘッド550Aの表示を使用しないため特段の問題とならない。光軸Oに対する中心軸J551の傾斜角θとしては、特に限定されないが、例えば、5°~10°程度とすることが好ましく、7°~9°程度とすることがより好ましい。これにより、上述した効果を十分に発揮しつつ、マイクロメーターヘッド550Aのケーシング200から突出している部分がケーシング200の上方へ過度に突出するのを抑制することができる。そのため、カメラ100の小型化を図ることができる。
【0075】
このような移動機構500によれば、レンズアッセンブリー400に対して、その後方側から光軸方向LLの力を加えることにより、シリンダー300内でレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させる。そのため、レンズアッセンブリー400に光軸Oに対して傾斜した力が加わり難くなり、レンズアッセンブリー400が光軸Oに対して偏心したり、傾いたりし難くなる。したがって、安定した撮像特性を発揮し、良質な画像を取得することができるカメラ100となる。
【0076】
以上、移動機構500について説明した。ただし、移動機構500としては、ロッド510を前方に送り出すことができれば、特に限定されない。
【0077】
<レンズカバーアッセンブリー800>
図4および
図5に示すように、レンズカバーアッセンブリー800は、鏡筒430の先端部に取り付けられ、鏡筒430の先端側開口430Aを覆っている。レンズカバーアッセンブリー800は、先端側開口430Aから鏡筒430内部へ塵やゴミ等が浸入することを防止する防塵機能を提供する。
【0078】
図6ないし
図8に示すように、レンズカバーアッセンブリー800は、筒状の保持部材810と、保持部材810の内部に保持されるレンズカバー890と、を有している。レンズカバーアッセンブリー800は、これら2つの部材(保持部材810、レンズカバー890)を組み立てて構成される。そのため、
図1および
図2で示した従来技術のように3つの部材(レンズカバー910、キャップ920、固定部材930)を組み立てる構成と比べて部品点数を削減することができる。したがって、製造コストを削減することができ、より安価なレンズカバーアッセンブリー800となる。また、レンズカバーアッセンブリー800は、組み立てが容易で、さらには薄型化および軽量化を図ることもできる。
【0079】
レンズカバー890は、光透過性を有している。レンズカバー890は、実質的に無色透明のディスク状部材であり、
図7および
図8に示すように、表裏関係にある第1主面891および第2主面892を有している。第1主面891および第2主面892は、互いに平行であり、それぞれ平坦面で構成されている。ただし、レンズカバー890の形状は、特に限定されない。このようなレンズカバー890は、例えば、各種ガラス材料、アクリル等の各種樹脂材料により構成することができる。
【0080】
保持部材810は、その内部においてレンズカバー890を保持する。保持部材810は、部分的に弾性変形が可能であり、保持部材810の軽量化および低コスト化の観点から、樹脂材料により構成することが好ましい。
【0081】
また、
図7および
図8に示すように、保持部材810は、筒状の壁部820と、壁部820の先端部から外周側へ突出するリング状のフランジ830と、壁部820の内側に配置され、レンズカバー890と当接する当接部850と、壁部820に形成され、壁部820の内側に突出する爪部860と、を有している。このような保持部材810では、
図9に示すように、当接部850と爪部860との間にレンズカバー890を配置し、当接部850と爪部860とでレンズカバー890を挟持して保持する。
【0082】
図6ないし
図8に示すように、壁部820は、円筒形状を有している。また、壁部820の外径は、鏡筒430の第1外径部431の内径とほぼ等しい。また、壁部820の外周面には、雄ネジ構造821が形成されている。雄ネジ構造821は、第1外径部431の内周面に形成された雌ネジ構造439と螺合する構成となっている。そのため、保持部材810を回転させながら先端側開口430Aから鏡筒430内へ挿入すると、雄ネジ構造821と雌ネジ構造439とが螺合し、レンズカバーアッセンブリー800が鏡筒430の先端部に取り付けられる。このように、壁部820の外周面に雄ネジ構造821を形成することで、鏡筒430へのレンズカバーアッセンブリー800の取り付けが容易となる。
【0083】
フランジ830は、壁部820の先端部から外周側へ突出している。また、フランジ830は、壁部820と同心的な円環状である。また、フランジ830は、保持部材810の先端面810aでもある先端面830aと、先端面830aと対向する基端面830bと、を有している。また、基端面830bの外径は、鏡筒430の先端側開口430Aの内径よりも大きい。そのため、保持部材810を回転させながら先端側開口430Aから鏡筒430内に挿入すると、
図10に示すように、基端面830bが鏡筒430の先端面に当接し、レンズカバーアッセンブリー800のそれ以上の挿入が規制される。そのため、レンズカバーアッセンブリー800の鏡筒430内への挿入量が制御され、レンズカバーアッセンブリー800を鏡筒430に対して適切に取り付けることができる。さらには、過度な挿入によりレンズカバーアッセンブリー800が鏡筒430内の部品に接触するのを防止でき、前記部品の傷付き、破損等を防止することもできる。
【0084】
特に、本実施形態では、基端面830bの外径は、鏡筒430の第1外径部431の外径とほぼ等しい。そのため、レンズカバーアッセンブリー800を鏡筒430に取り付けた状態では、レンズカバーアッセンブリー800の外周面と鏡筒430の外周面とが段差なく連続して接続され、例えば、当該部分への指等の引っ掛かりが防止される。そのため、カメラ100のハンドリング性が向上する。ただし、基端面830bの外径は、特に限定されず、第1外径部431の外径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0085】
また、
図6ないし
図8に示すように、フランジ830の先端面830aには一対の凹部831が形成されている。一対の凹部831は、保持部材810の中心点を対象中心として点対称となるように、先端面830a上に径方向に延伸して一直線上に形成されている。そのため、これら一対の凹部831は、工具を係合する係合部として機能する。例えば、一対の凹部831にマイナスドライバー等の工具を係合させ、工具を回転させることにより、レンズカバーアッセンブリー800を鏡筒430に対して簡単に着脱することができる。ただし、一対の凹部831は、省略してもよい。
【0086】
また、壁部820は、保持部材810の先端面810a(先端面830a)と基端面810bとを貫通する貫通孔840を有している。レンズカバー890は、基端側開口から貫通孔840内に挿入されている。貫通孔840は、レンズカバー890の形状に応じた形状、本実施形態では円形形状を有しており、その直径は、レンズカバー890の直径とほぼ等しい。そのため、貫通孔840内でのレンズカバー890のガタツキが抑えられる。また、貫通孔840の先端部は、先端面810aから基端面810bに向かって径が漸減するテーパー状となっている。
【0087】
また、保持部材810は、壁部820の内周面から内側すなわち貫通孔840内に突出する円環状の当接部850を有している。また、
図7および
図8に示すように、当接部850の内径r1は、レンズカバー890の外径r2よりも小さい。つまり、r1<r2である。そのため、レンズカバー890を基端側開口から貫通孔840内に挿入すると、
図9に示すように、レンズカバー890の挿入方向先端側に位置する第1主面891が当接部850の基端面で構成された当接面851に当接する。このように、レンズカバー890が基端側から当接部850に当接することにより、レンズカバー890のそれ以上の先端側への移動が規制される。なお、当接部850とレンズカバー890との間には、ゴムパッキン等の防水機能を有する封止部材が設けられていてもよい。当接部850とレンズカバー890との間に封止部材を設けることにより、これらの隙間から鏡筒430内への水の侵入をより確実に防止することができる。
【0088】
当接部850の構成は、上述したように、レンズカバー890と当接し、レンズカバー890のそれ以上の先端側への移動を規制することができれば、特に限定されない。例えば、壁部820の内周面から内側に突出する複数の突起が、周方向に間隔をあけて配置された構成であってもよい。
【0089】
また、
図6ないし
図8に示すように、保持部材810は、壁部820の内周面から内側すなわち貫通孔840内に突出する爪部860を有している。爪部860は、弾性変形可能である。爪部860の配置数は、特に限定されず、1つ以上であればよい。本実施形態では、3つの爪部860が壁部820の周方向に沿って等間隔(120°間隔)で配置されている。また、各爪部860は、当接部850の基端側に位置し、当接部850との間にレンズカバー890が配置されている。レンズカバー890は、当接部850と各爪部860とで挟持されることにより、保持部材810に保持される。このように、爪部860を壁部820の周方向に離間して複数配置することにより、レンズカバー890をより安定した姿勢で保持することができる。
【0090】
また、各爪部860は、壁部820に形成された切り欠き822に配置されている。また、各爪部860は、壁部820から切り欠き822内に延出し壁部820の周方向に沿って延びる円弧状の梁部861と、梁部861の先端部から壁部820の内側すなわち貫通孔840内へ突出する第1突出部862と、梁部861の先端部から壁部820の外側へ突出する第2突出部863と、を有している。このように、梁部861を壁部820に周方向に延ばすことで、壁部820の径方向および軸方向にそれぞれ弾性変形し易い爪部860となる。そのため、後述する組立方法によって、容易にレンズカバーアッセンブリー800を組み立てることができる。また、保持部材810の薄型化を図ることもできる。
【0091】
各爪部860は、第1突出部862がレンズカバー890の第2主面892に当接している。
図11に示すように、第1突出部862が位置する部分では、壁部820の幅W(第1突出部862と、壁部820の中心を介して第1突出部862と対向する内周面との離間距離)がレンズカバー890の外径r2未満に縮幅されている。つまり、W<r2である。
【0092】
ここで、
図11に示すように、自然状態すなわちレンズカバー890が保持部材810に挿入されていない状態では、当接部850と第1突出部862との離間距離D1は、レンズカバー890の厚みT(第1主面891と第2主面892との離間距離)よりも小さい。つまり、D1<Tである。そのため、上述したように、当接部850と爪部860とでレンズカバー890を挟持した状態では、各爪部860は、基端面810b側(レンズカバー890の挿入方向後方側)に弾性変形した状態でレンズカバー890の第2主面892に当接している。したがって、各爪部860には自然状態に戻ろうとする復元力(弾性力)が生じ、この復元力によってレンズカバー890が当接部850に押し付けられる。そのため、レンズカバー890は、保持部材810に強固に固定される。したがって、保持部材810に対するレンズカバー890のガタツキを抑えることができる。また、当接面851と第1主面891との密着性を高めることもできる。
【0093】
また、
図12に示すように、各爪部860の第1突出部862は、先端面810a側を向き、レンズカバー890と当接する第1面862aと、第1面862aと対向し、基端面810b側を向く第2面862bと、第1面862aと第2面862bとを接続する第3面862cと、を有している。
【0094】
各爪部860の第1面862aは、壁部820の中心軸J820に直交する平坦面である。このように、第1面862aを中心軸J820に直交する面とすることで、第1面862aがレンズカバー890の第2主面892に面接触し、これらの間の摩擦抵抗を高めることができる。そのため、保持部材810に対するレンズカバー890のガタツキが抑えられる。ただし、第1面862aとしては、特に限定されず、壁部820の中心軸J820に直交する面に対して傾斜していてもよい。また、第1面862aは、平坦面ではなくて、微小な凹凸が形成された凹凸面、凸湾曲面、凹湾曲面等であってもよい。
【0095】
また、各爪部860の第2面862bは、壁部820の中心軸J820に直交する面に対して壁部820の内側に傾いた傾斜面で構成されている。つまり、各第2面862bは、梁部861から遠い側が先端面810a側に位置するように傾いた傾斜面で構成されている。また、中心軸J820に沿う方向からの平面視で、各第2面862bは、レンズカバー890の第1主面891の外周と重なっている。各第2面862bをこのような構成とすることにより、後述するように、壁部820内へのレンズカバー890の挿入が容易となる。
【0096】
以上、レンズカバーアッセンブリー800の構成について説明した。次に、レンズカバーアッセンブリー800の組み立てについて説明する。レンズカバーアッセンブリー800は、以下のような手順によって組み立てられる。
【0097】
最初に、保持部材810とレンズカバー890とを準備する。次に、レンズカバー890を保持部材810の基端面810b側から壁部820内に挿入し、レンズカバー890の第1主面891を当接部850の当接面851に突き当てる。
図12に示すように、壁部820にレンズカバー890を挿入すると、まず、レンズカバー890の第1主面891の外周が各爪部860の第2面862bに接触する。前述したように、各第2面862bは、傾斜面で構成されているため、この状態からさらにレンズカバー890を押し込むと、
図13に示すように、レンズカバー890からの力を受けた各爪部860が壁部820の外側に向けて弾性変形する。そのため、各爪部860に邪魔されることなく、レンズカバー890をさらに先端側へ押し込むことが可能となる。このように、各第2面862bを傾斜面で構成することにより、レンズカバー890の挿入時に各爪部860が自然に弾性変形する。そのため、作業者や治具によって、爪部860を外側に弾性変形させる必要が無くなり、レンズカバー890の挿入作業が容易となる。
【0098】
前述したように、D1<Tであるため、
図14に示すように、レンズカバー890を当接部850に突き当てた状態では、各爪部860の第1突出部862の第3面862cがレンズカバー890の側面に押し当てられた状態となる。この状態から、
図15に示すように、各爪部860の第1突出部862を基端面810b側にスライドさせ、各第1突出部862の第1面862aをレンズカバー890の第2主面892に当接させる。なお、この際、梁部861から外側へ突出した第2突出部863に指や工具を引っ掛けることにより、当該作業をスムーズに行うことができる。
【0099】
このように、各第1突出部862の第1面862aをレンズカバー890の第2主面892に当接させることで、各爪部860がレンズカバー890に係合する。この状態では、各爪部860が弾性変形しているため、各爪部860の復元力によってレンズカバー890が当接部850に押し付けられる。そのため、レンズカバー890が当接部850と各爪部860とに挟持され、保持部材810に保持された状態となる。以上により、レンズカバーアッセンブリー800の組み立てが完了する。
【0100】
なお、保持部材810からレンズカバー890を取り外したいときは、上述した組み立て手順とは逆の手順を行えばよい。つまり、最初に、各爪部860を外側に向けて弾性変形させて、各爪部860とレンズカバー890との係合を解除する。つまり、
図14に示した状態とする。そして、この状態からレンズカバー890を第1主面891側から押すことで、レンズカバー890を保持部材810から取り外すことができる。このように、レンズカバーアッセンブリー800によれば、各爪部860を弾性変形させてレンズカバー890との係合を解除するだけで保持部材810からレンズカバー890を簡単に取り外すことができる。
【0101】
このような構成のレンズカバーアッセンブリー800によれば、各爪部860の弾性を利用してレンズカバー890を保持するため、接着剤やネジ等の固定具が不要で、かつ、取り外し可能となる。また、レンズカバーアッセンブリー800は、保持部材810とレンズカバー890とを組み立てることで得られる。そのため、
図1および
図2で示した従来技術のように3つの部材(レンズカバー910、キャップ920、固定部材930)を組み立てる構成と比べて部品点数を削減することができる。したがって、レンズカバーアッセンブリー800の薄型化を図ることができる。
【0102】
レンズカバーアッセンブリー800は、上述のように組み立てられた後、鏡筒430の先端部に取り付けられる。レンズカバーアッセンブリー800が鏡筒430の先端部に取り付けられた状態では、
図10に示すように、各爪部860の後方には、保持具460が位置している。各爪部860と保持具460とは、非接触であり、これらの間に僅かな隙間が形成されている。各爪部860は、保持具460との接触によって、それ以上の基端側への弾性変形が規制される。また、各爪部860の外周側には、鏡筒430の内周面が位置している。各爪部860と鏡筒430の内周面とは、非接触であり、これらの間に僅かな隙間が形成されている。各爪部860は、鏡筒430との接触によって、それ以上の外側への弾性変形が規制される。このように、レンズカバーアッセンブリー800が鏡筒430に取り付けられた状態では、各爪部860の後方および外側への弾性変形が規制される。つまり、保持部材810からレンズカバー890が外れないようロックが掛かった状態となる。そのため、鏡筒430に取り付けられた状態でのレンズカバー890の離脱を防止することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、上述したように、各爪部860と保持具460とを非接触とし、レンズカバーアッセンブリー800に応力が加わり難くしているが、これに限定されず、各爪部860と保持具460とが接触していてもよい。同様に、各爪部860と鏡筒430の内周面とを非接触とし、レンズカバーアッセンブリー800に応力が加わり難くしているが、これに限定されず、各爪部860と鏡筒430の内周面とが接触していてもよい。このように、各爪部860を保持具460および鏡筒430に接触させることで、保持具460が基端側および外周側へ弾性変形できなくなり、上述の効果がより顕著となる。
【0104】
以上、本発明のレンズカバーアッセンブリーおよびカメラを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
100…カメラ 200…ケーシング 201…高背部 201b…後面 202…低背部 202b…後面 210…ベースシャーシ 220…アッパーケース 221…挿通孔 300…シリンダー 310…第1外径部 311…Dカット面 320…第2外径部 321…Dカット面 400…レンズアッセンブリー 410…スリーブ 413…レンズユニット挿入部 420…レンズユニット 430…鏡筒 430A…先端側開口 431…第1外径部 432…第2外径部 433…第3外径部 434…第4外径部 438…雄ネジ構造 439…雌ネジ構造 440…レンズ群 450…絞り 460…保持具 500…移動機構 510…ロッド 520…ロッドヘッド 521…頭部 530…ロッドガイド 531…貫通孔 540…圧縮コイルばね 550…送り装置 550A…マイクロメーターヘッド 551…スピンドル 552…スリーブ 553…シンブル 554…ラチェットストップ 600…撮像素子 610…第1回路基板 611…孔 620…第2回路基板 630…支持部材 640…IRカットフィルター
650…ICチップ 690…端子群 800…レンズカバーアッセンブリー 810…保持部材 810a…先端面 810b…基端面 820…壁部 821…雄ネジ構造 822…切り欠き 830…フランジ 830a…先端面 830b…基端面 831…凹部 840…貫通孔 850…当接部 851…当接面 860…爪部 861…梁部 862…第1突出部 862a…第1面 862b…第2面 862c…第3面 863…第2突出部 890…レンズカバー 891…第1主面 892…第2主面 900…レンズカバーアッセンブリー 910…レンズカバー 920…キャップ 921…本体部 922…受け部 923…雌ネジ構造 924…雄ネジ構造 930…固定部材 931…本体部 932…雄ネジ構造 B1…ネジ B2…ネジ B3…イモネジ D…離間距離 D1…離間距離 J551…中心軸 J820…中心軸 LL…光軸方向 O…光軸 T…厚み r1…内径 r2…外径 W…幅 θ…傾斜角