(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163955
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】積層フィルムの分離回収方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20231102BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20231102BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B29B17/02
B29B17/04
B32B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075210
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】門田 昌久
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 達也
(72)【発明者】
【氏名】野田 倫弘
【テーマコード(参考)】
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4F100AK07
4F100AK51
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EJ65
4F100EJ65B
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JA07
4F100JB09B
4F100JL10
4F100JL10C
4F100JL14
4F100JL14B
4F100JL16
4F401AA26
4F401AC10
4F401AC11
4F401AC13
4F401AD02
4F401AD07
4F401BB20
4F401CA14
4F401EA07
4F401FA01Z
(57)【要約】
【課題】細断面の脱離層の露出を妨げることなく、効率的に積層フィルムから樹脂基材を分離回収する方法の提供。
【解決手段】上記課題は、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する積層フィルムの分離回収方法であって、下記(1)~(3)の工程を有することを特徴とする積層フィルムの分離回収方法によって解決される。
(1)積層フィルムを、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断し、細断物を得る細断工程
(2)前記細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる分離工程
(3)分離した樹脂基材層を回収する回収工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する積層フィルムの分離回収方法であって、下記(1)~(3)の工程を有することを特徴とする積層フィルムの分離回収方法。
(1)積層フィルムを、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断し、細断物を得る細断工程
(2)前記細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる分離工程
(3)分離した樹脂基材層を回収する回収工程
【請求項2】
前記工程(1)と前記工程(2)の間に、下記(4)の工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの分離回収方法。
(4)前記細断物を水で洗浄し、微細片を取り除く洗浄ろ過工程
【請求項3】
前記工程(4)が、ろ過スクリーンを用いてろ過することを特徴とする、請求項2に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項4】
前記細断工程に用いる水の質量が、積層フィルムの質量を基準として2~500倍である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項5】
前記脱離層は、酸性基を有する化合物を含む層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項6】
前記脱離層は、水溶性の樹脂を含む層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項7】
前記積層フィルムが、樹脂基材層、プライマー層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記プライマー層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項8】
前記積層フィルムが、接着剤層を介して2つの樹脂基材層が積層された部分構造を有し、前記接着剤層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【請求項9】
前記積層フィルムが、樹脂基材層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記インキ層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも樹脂基材層と、樹脂基材層に接して脱離層とを有する積層フィルムの分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は環境汚染の要因として問題となっており、廃プラスチックに対する規制は厳しくなっている。例えば、これらのプラスチック製品が海洋ゴミとして廃棄・投棄されると、海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類等の海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮され、当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。
【0003】
上記プラスチック製品としては、例えば、プラスチック基材を使用した食品包装パッケージ等が挙げられる。当該パッケージに使用される積層フィルムは、一般的に、ポリエステル(PET)基材、ナイロン(NY)基材、ポリプロピレン(PP)基材等、種々のプラスチック基材に、グラビアインキ、フレキソインキ、その他の印刷インキにより印刷層が設けられている。積層フィルムは、さらに接着剤等を介してシーラント基材と貼り合わされていてもよく、用途や内容物に応じて、多種多様な構成の積層フィルムから適宜選択され用いられる。
【0004】
プラスチック由来の環境問題を解決するための試みとして、例えば、特許文献1には、アルカリ脱離性を有する接着剤を用いることで、積層フィルムからシーラント基材を回収することが開示されている。しかしながら、このような積層フィルムの分離は、脱離層と、アルカリ溶液との接触状況の影響が大きく、脱離層がいかに積層フィルムの端面から露出しているかが重要になる。
【0005】
フィルムの分離を伴わないプラスチック廃材等のリサイクル工程で用いる細断方法として、例えば特許文献2には、固定刃と回転刃を有した細断機を用いて、回転刃と固定刃とのせん断力により乾式細断する方法が記載されている。
また、例えば特許文献3には、使用済みボトル等の廃プラスチックを、粉砕すると同時に水洗浄することで、短時間で効率的にボトル内外面の汚れを洗浄することができることが記載されている。
【0006】
積層フィルムの分離回収方法として、例えば特許文献4には、水又は洗浄剤中で積層体を破砕しながら、積層体を単層に分離するリサイクルシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/111226号
【特許文献2】特開平10-137615号公報
【特許文献3】特開2002-200433号公報
【特許文献4】国際公開第2021/230033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プラスチック基材を含む積層フィルムでは、細断時の熱によりプラスチック基材が融着して断面を塞ぎ、脱離層が露出しないという課題がある。したがって、特許文献2に記載の方法では、脱離層が露出せず、アルカリ溶液と接触できず、積層フィルムの分離効率が著しく低下する。
また、特許文献3に記載の方法は、PETボトルのような厚みのある廃プラスチックを再利用するための洗浄破砕を目的とするものであって、積層フィルムを細断することは記載されていない。また、特許文献3は、廃プラスチックの表面に付着した糖分等の汚れを洗浄・除去することを目的とするものであって、洗浄水の温度は、一般的に高い方が洗浄効率に優れると考えられる。さらに、特許文献3の方法は、インキ層や接着剤層等を脱離する工程、及び脱離後の基材を回収する工程を含まないため、得られるリサイクルプラスチックは機械物性が低い又は濃色のものとなり、リサイクル可能な適用範囲が限られる。
また、特許文献4に記載の方法は、破砕のせん断力により分離を行うため、分離性能を発現させるためには、破砕装置の攪拌部内での滞留時間や攪拌力を増加させる必要がある。そして、このような強力な破砕条件下においては、過剰なせん断により微細化された積層フィルムの微細片が大量に発生し水中に分散するため、以降のインキ片や洗浄液 との分離、回収が困難になるという課題がある。また、特許文献4に記載の方法では、破砕分離の際に生じるインキ片や接着剤片などが、破砕装置内や樹脂基材に付着・蓄積し、特許文献3同様に、得られるリサイクルプラスチックの品質が低下するという課題がある。さらに、特許文献4には、積層体に設けられたインキ層等の剥離除去を効率的に行うために、用いる水又は洗浄剤の液温は高い方が好ましいことが記載されている。
【0009】
すなわち、特許文献1は、積層フィルムの細断方法について詳細を記載しておらず、また、特許文献1に記載の積層フィルムを、実際のリサイクル工程を想定して、特許文献2~4に記載の従来の方法を用いて大量に細断すると、脱離層が露出せず分離されない積層フィルムが発生する、又は、細断時に発生するインキ片などが基材に付着・蓄積することによりリサイクルプラスチックの品質が低下するという課題がある。そして、冷却手段を用いて液温50℃以下に調整した水で冷却することで、細断時の断面における樹脂基材層の融着を抑制し、脱離層から効率的に剥離させるという、実用性に優れた積層フィルムの分離回収方法はいまだ報告されていない。
【0010】
すなわち本発明の目的は、細断面の脱離層の露出を妨げることなく、効率的に樹脂基材を分離回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する積層フィルムの分離回収方法であって、下記(1)~(3)の工程を有することを特徴とする。
(1)積層フィルムを、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断し、細断物を得る細断工程
(2)前記細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる分離工程
(3)分離した樹脂基材層を回収する回収工程
【0012】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記工程(1)と前記工程(2)の間に、下記(4)の工程を有することを特徴とする。
(4)前記細断物を水で洗浄し、微細片を取り除く洗浄ろ過工程
【0013】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記工程(4)が、ろ過スクリーンを用いてろ過することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記細断工程に用いる水の質量が、積層フィルムの質量を基準として2~500倍であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記脱離層は、酸性基を有する化合物を含む層であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記脱離層は、水溶性の樹脂を含む層であることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記積層フィルムが、樹脂基材層、プライマー層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記プライマー層が脱離層であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記積層フィルムが、接着剤層を介して2つの樹脂基材層が積層された部分構造を有し、前記接着剤層が脱離層であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る積層フィルムの分離回収方法は、前記積層フィルムが、樹脂基材層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記インキ層が脱離層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する積層フィルムにおいて、細断面の脱離層の露出を妨げることなく、効率的に樹脂基材を分離回収する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する積層フィルムの分離回収方法であって、下記(1)~(3)に示す工程を、順次行うことを特徴とする積層フィルムの分離回収方法である。
(1)積層フィルムを、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断し、細断物を得る細断工程
(2)前記細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる分離工程
(3)分離した樹脂基材層を回収する回収工程
冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断することで、細断面における樹脂基材層の融着により脱離層の断面が覆われることを抑制することができる。そして、細断された積層フィルムにおける脱離層が好適に露出することで、効率的に樹脂基材と脱離層とを分離させ、樹脂基材を回収することができる。
また、工程(1)と工程(2)とを順次行う、即ち、同時ではなく別々に実施することで、工程(1)で発生したインキ片などの不純物が、工程(2)に混入することを防ぐことができる。これにより、インキ片等の不純物が樹脂基材に付着・蓄積することを防ぐことができ、品質の優れたリサイクルプラスチックを得ることができる。さらに、積層フィルムを過剰に微細化させることなく樹脂基材層を分離および回収できるため、樹脂基材の分離回収性を高めることができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0022】
<積層フィルム>
本発明における積層フィルムは、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有しており、脱離層は、樹脂基材層に接して配置される。樹脂基材層は、分離工程後に回収される基材を表し、脱離層は、脱離液に浸漬することで樹脂基材層から脱離(剥離ともいう)し、樹脂基材層の分離に寄与する役割を担う。
【0023】
<脱離層>
本発明における脱離層は、公知の脱離液により樹脂基材より脱離可能な層であればよく、好ましくは、水溶性樹脂を含む層、酸性基を有する化合物(但し、水溶性樹脂を除く)を含む層、金属蒸着層、又は無機酸化物(金属酸化物)蒸着層である。基材汎用性の観点から、脱離層としてより好ましくは酸性基を有する化合物を含む層である。また、環境負荷低減の観点から、脱離層としてより好ましくは水溶性樹脂を含む層である。
【0024】
脱離層が金属蒸着層、又は無機酸化物(金属酸化物)蒸着層である場合、蒸着層は、樹脂基材上に形成されていることが好ましい。
脱離層が水溶性樹脂を含む層、酸性基を有する化合物を含む層である場合、脱離層は、樹脂基材層に接する層であることから、好ましくは、プライマー層、インキ層及び接着剤層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層である。すなわち、プライマー層、インキ層及び接着剤層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層が、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を含む層であることが好ましい。
上記酸性基を有する化合物は、樹脂であってもよく、低分子化合物であってもよい。これらの水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記プライマー層、インキ層及び接着剤層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層は、それらの層を構成する樹脂成分(以下、バインダー樹脂ともいう)が、水溶性樹脂又は酸性基を有する樹脂を含んでいてもよく、バインダー樹脂と酸性基を有する低分子化合物とを含んでいてもよい。
以下に、脱離層がプライマー層、インキ層、接着剤層である場合について各々説明する。
【0026】
[脱離プライマー層]
脱離層がプライマー層である場合、該プライマー層は、樹脂基材と接して配置され、脱離液による溶解・剥離等により樹脂基材を脱離する役割を担う。プライマー層は、好ましくは、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を含む。
【0027】
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、水で膨潤又は溶解し、樹脂基材から脱離することができる樹脂であればよい。水は温度25~100℃程度に加温されていてもよい。これにより、プライマー層を水(温水含む)で脱離することができる。
このような樹脂としては、水溶性を損なわない範囲で、公知の樹脂から選択でき、例えば、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、入手のしやすさ、脱離性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂が好適に用いられる。
水溶性樹脂が造膜性を有する場合、プライマー層を構成するバインダー樹脂として水溶性樹脂を用いてもよい。
【0028】
ポリビニルアルコール樹脂としては、未変性のポリビニルアルコールの他に、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性ポリビニルアルコールや、未変性ポリビニルアルコールに後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。また、変性ポリビニルアルコールを更に後変性させたものでもよい。これらの変性は、ポリビニルアルコール樹脂の水溶性が損なわれない範囲で行うことができる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリビニルアルコール樹脂として好ましくは、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有する樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。中でも水溶性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するポリビニルアルコール樹脂が好ましい。これらの構造単位における一級水酸基の数は、通常1~5個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
【0030】
本発明で用いられるポリビニルアルコール樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常60~100モル%である。また、ケン化度の好ましい範囲は、変性種によって異なり、例えば、未変性ポリビニルアルコール樹脂の場合、通常60~99.9モル%、好ましくは70~99.0モル%、より好ましくは75~98.5%である。側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60~99.9モル%、好ましくは65~99.8モル%、より好ましくは70~99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。少量のエチレンで変性されたエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60モル%以上、好ましくは70~99.5モル%、特に好ましくは75~99.0モル%である。
ケン化度が上記範囲内であると、水溶性に優れ脱離性が良好になるため好ましい。また、プライマー層を形成する際の、塗工性にも優れるため好ましい。
【0031】
ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常100~3000であり、好ましくは150~2000、より好ましくは180~1000、特に好ましくは200~800である。
【0032】
(酸性基を有する化合物)
酸性基を有する化合物としては、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を用いてもよい。これにより、プライマー層を上述する塩基性水溶液で脱離することができる。
【0033】
酸性基を有する樹脂における樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。上記酸性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、スルフィノ基等若しくはそれらのエステル又は塩が挙げられる。
また、酸性基を有する樹脂として、マレイン化ロジンやフマル化ロジン等の酸価を有するロジン変性樹脂を用いることができる。
また、酸性基を有する樹脂として、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシ基を有する重合性モノマー;無水イタコン酸、無水マレイン酸等の酸無水物である重合性モノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー;のような酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体や、酸変性されたポリオレフィン樹脂を用いることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
酸性基を有する低分子化合物は、分子量分布を有しない化合物であって、且つ分子量が1,000以下の化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;アコニット酸等のトリカルボン酸;ピルビン酸、オキサロ酢酸等のオキソカルボン酸;アミノ酸、ニトロカルボン酸等のカルボン酸誘導体;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物が挙げられる。
酸性基を有する低分子化合物は、上述する酸性基を有する樹脂又は公知のプライマー層を構成する公知のバインダー樹脂と組合せて用いることで、プライマー層を形成することができる。
【0035】
プライマー層は、リコート適正の観点から、酸性基を有する化合物を含むことが好ましい。また、印刷適性の観点から、酸性基を有するウレタン樹脂、酸性基を有するアクリル樹脂、ロジン変性樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
〔酸性基を有するウレタン樹脂〕
酸性基を有するウレタン樹脂は特に制限されず、例えば、酸性基を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中の水酸基を酸変性してなる樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中のイソシアネート基にポリアミンを反応させてなるウレタンウレア樹脂中のアミノ基を酸変性してなる樹脂が挙げられる。
また、酸性基を有するウレタン樹脂として、ヒドロキシ酸を含むポリオール及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂を用いてもよい。ポリオールとしてヒドロキシ酸を使用することで、ウレタン樹脂にカルボキシ基に由来する酸価を付与することができ、脱離性を向上させることができる。また、上記酸性基を有するウレタン樹脂がイソシアネート基を有する場合、該イソシアネート基の一部にポリアミンを反応させてウレア結合を導入し、ウレタンウレアとしてもよい。
【0037】
《ポリオール》
ポリオールは、一つの分子内に少なくとも二つの水酸基を有する化合物の総称である。ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000である。上記数平均分子量とは、ポリオールの水酸基価から算出されるものであり、当該水酸基価はJISK0070による測定値を指す。ポリオールの数平均分子量が500以上であると、プライマー層の柔軟性に優れ、ポリオレフィン基材への密着性が向上する。数平均分子量が10,000以下であると、ポリオレフィン基材に対する耐ブロッキング性に優れる。
【0038】
ポリオールとしては特に制限されず、より好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールが用いられる。更にポリオールは、その他ダイマージオール、水添ダイマージオール、ひまし油変性ポリオール等を含んでもよい。
即ち、上記ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール由来の構成単位を含むことが好ましい。ポリエステルポリオールのエステル結合部位がアルカリ加水分解することにより脱離性が向上するため、より好ましくは、ポリエステルポリオール由来の構成単位を含むものである。
ポリオール由来の構成単位の含有量は、ウレタン樹脂全量に対して、好ましくは10~75質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~65質量%である。ポリエステルポリオール由来の構成単位の含有量は、ポリオール由来の構成単位全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0039】
《ヒドロキシ酸》
上記ポリオールはヒドロキシ酸を含んでもよい。上記ヒドロキシ酸は、活性水素基である水酸基及び酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物を指す。該酸性官能基とは、酸価を測定する際に、水酸化カリウムで中和されうる官能基を示し、具体的にはカルボキシ基やスルホン酸基等が挙げられ、好ましくはカルボキシ基である。このようなヒドロキシ酸としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸のようなジメチロールアルカン酸が好適に用いられる。
【0040】
《ポリイソシアネート》
上記ポリイソシアネートは特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができる。好ましくは、ジイソシアネート又はトリイソシアネートを含み、より好ましくは、芳香族、脂肪族又は脂環式のジイソシアネートを含む。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
《ポリアミン》
ウレタンウレアとするためのポリアミンは特に制限されず、好ましくはジアミン化合物である。また、ウレタン樹脂に水酸基を導入できる点で、水酸基を有するジアミンを用いてもよい。
【0042】
酸性基を有するウレタン樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上であり、より好ましくは15~70mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~50mgKOH/gである。15mgKOH/g以上であると、脱離液による脱離性が良好となるため好ましく、70mgKOH/g以下であると、基材密着性や耐レトルト性が良好となるため好ましい。 ウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは1~35mgKOH/gであり、より好ましくは10~30mgKOH/gである。1mgKOH/g以上であると、脱離液による脱離性が良好となるため好ましく、35mgKOH/g以下であると、基材密着性が良好となるため好ましい。
【0043】
酸性基を有するウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは15,000~70,000、さらに好ましくは15,000~50,000である。ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6以下である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。分子量分布が6以下であると脱離性、プライマー組成物の乾燥性、耐レトルト適性に優れる。また、分子量分布が小さい、即ち分子量分布がシャープであるほど、脱離液による溶解・剥離作用が均一に起こり、樹脂基材の脱離性が向上する。分子量分布は、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。また、分子量分布は好ましくは1.5以上、より好ましくは1.2以上である。
本明細書において、Mw、Mn及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により求めたポリスチレン換算値である。
【0044】
酸性基を有するウレタン樹脂はアミン価を有していてもよい。ウレタン樹脂がアミン価を有する場合、アミン価は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~10mgKOH/gである。上記範囲内であると基材密着性に優れる。
【0045】
酸性基を有するポリウレタン樹脂のウレタン結合数は、好ましくは1~3mmol/g、より好ましくは1.5~2mmol/gである。また、ウレア結合数は、好ましくは0~3mmol/g、より好ましくは0.2~1mmol/gである。また、ウレタン結合数とウレア結合数の合計は、好ましくは1~6mmol/g、より好ましくは1.7~3mmol/gである。
ウレタン結合数及びウレア結合数を該当範囲に設定することで、脱離性及び基材密着性が向上する。
【0046】
〔酸性基を有するアクリル樹脂〕
酸性基を有するアクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した重合体;水酸基やグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した後、当該官能基を変性してカルボキシ基を導入した樹脂(例えば無水マレイン酸変性樹脂);が挙げられる。
酸性基を有するアクリル樹脂の酸価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上である。
【0047】
〔ロジン変性樹脂〕
ロジン変性樹脂は、原料の一つとしてロジンを用いて調製された樹脂である。ロジンには、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸、レボピマール酸等の樹脂酸が混合物として含まれ、これら樹脂酸は、親水性で化学活性なカルボキシ基が含まれ、中には共役二重結合を備えるものもある。そのため、多価アルコールや多塩基酸を組み合わせて縮重合させたり、ロジン骨格に含まれるベンゼン環にフェノールの縮合体であるレゾールを付加させたり、ジエノフィルである無水マレイン酸やマレイン酸とディールスアルダー反応をさせてマレイン酸や無水マレイン酸骨格を付加させさせたりすること等により、様々なロジン変性樹脂が調製されている。このようなロジン変性樹脂は、各種のものが市販されており、それを入手して用いることも可能である。
【0048】
ロジン変性樹脂としては、例えば、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。本発明においては、いずれのロジン変性樹脂を用いてもよいが、これらの中でも、その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含むものが好ましく用いられる。「その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含む」樹脂とは、原料の一部としてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを用いて調製されたものであり、例えば、多塩基酸の一部としてマレイン酸やフマル酸を縮重合させたロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂や、ジエノフィルとしてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸や無水フマル酸をディールスアルダー反応で付加させた構造を備えるマレイン化ロジン、フマル化ロジンや、これらに含まれる官能基を用いてさらに他の化学種を重合させた樹脂等を意味する。
【0049】
ロジン変性樹脂の酸価は、好ましくは10~400mgKOH/gであり、より好ましくは100~300mgKOH/gである。
【0050】
(その他成分)
プライマー層は、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物以外の樹脂を含有してもよい。
このような樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂若しくは塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂等の塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、プライマー層は、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン樹脂、アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくも1種の樹脂を含むことが好ましい。より好ましくは、塩化ビニル樹脂、又はアクリル樹脂を含む。
酸性基を有するウレタン樹脂と、その他樹脂との質量比(酸性基を有するウレタン樹脂:その他樹脂)は、好ましくは95:5~50:50である。上記範囲内であると、塩基性水溶液中において、プライマー層と共にインキ層が剥離した際に、インキ層が薄膜の状態で剥離され、回収が容易となるため好ましい。
【0051】
プライマー層は、体質顔料を含有してもよい。体質顔料としては、例えば、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。中でも好ましくはシリカであり、より好ましくは親水性シリカである。
体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μmであり、より好ましくは1~8μmである。体質顔料の含有量は、プライマー層中に0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%である。平均粒子径及び体質顔料の含有量が、上記範囲内であると、インキ層の濡れ性が向上し画質が向上する。
【0052】
プライマー層は、上述する酸性基を有するウレタン樹脂が硬化剤で架橋された層であってもよい。プライマー層に架橋構造が導入されることで、プライマー層上に形成されるインキ層の浸透や滲みが抑制され、優れた画質を示すことができる。
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート又は芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0053】
プライマー層は、さらに公知の添加剤を含有してもよい。公知の添加剤としては、例えば、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、シランカップリング剤が挙げられる。
【0054】
プライマー層の厚みは、好ましくは0.5~3.0μm、より好ましくは0.6~2.0μm、さらに好ましくは0.8~1.5μmの範囲であり、公知の方法を用いて形成することができる。
【0055】
[脱離インキ層]
インキ層とは、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。
脱離層がインキ層である場合、該インキ層は、樹脂基材に接して配置され、脱離液による溶解・剥離等により樹脂基材を脱離する役割を担う。インキ層は、好ましくは、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物と、着色剤とを含む。またインキ層の形成方法は制限されず、公知の方法を用いて形成することができる。
インキ層は、リコート適正の観点から、酸性基を含む化合物を含むことが好ましい。また、印刷適性の観点から、酸性基を有するウレタン樹脂、酸性基を有するアクリル樹脂、ロジン変性樹脂を含むことが好ましい。
上記水溶性樹脂及び酸性基を有する化合物、並びに、酸性基を有するウレタン樹脂、酸性基を有するアクリル樹脂及びロジン変性樹脂は、上述する[脱離プライマー層]の項における(水溶性樹脂)、(酸性基を有する化合物)、〔酸性基を有するウレタン樹脂〕、〔酸性基を有するアクリル樹脂〕及び〔ロジン変性樹脂〕の記載を援用できる。
【0056】
(着色剤)
インキ層は、有色であっても無色であってもよく、印刷インキや塗料で使用される公知の着色剤を含有する。このような着色剤は特に制限されず、無機顔料、有機顔料、染料のほか、金属光沢を与える金属粉、近赤外吸収材料、紫外線吸収材料を用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料;炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料;が挙げられる。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が好適に用いられる。
なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用できる。中でも、脱離液が塩基性水溶液である場合、塩基性水溶液に溶出しない、アルカリ耐性を有する顔料が好ましい。顔料の溶出を防ぐことで塩基水溶液の再利用が容易となる。
顔料のアルカリ耐性は、概ね顔料の骨格又は構造で推定され、アルカリ耐性のある顔料としては、例えば、無機顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントイエロー83が挙げられる。
顔料が酸化チタンである場合、酸化チタンの含有量は、インキ層中に好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~75質量%である。また顔料が、酸化チタンを除く無機顔料、体質顔料、有機顔料である場合、これらの顔料の含有量はいずれも、インキ層中に好ましくは0.5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0057】
(その他成分)
インキ層は、着色剤の分散剤として、顔料誘導体又は樹脂型分散剤を含有してもよい。
顔料誘導体は、顔料の骨格に置換基を導入した化合物であり、顔料誘導体の含有量は、着色剤の質量を基準として、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~6質量%であり、さらに好ましくは0.1~4質量%である。0.01質量%以上であると樹脂基材の脱離性に優れ、10質量%以下であると、インキ層の再付着を抑制することができる。
樹脂型分散剤は、着色剤に吸着して印刷インキ等への分散を安定化する働きをするものであり、公知の樹脂型分散剤から適宜選択できる。樹脂型分散剤の含有量は、着色剤の質量を基準として、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.05~20質量%、さら好ましくは0.1~10質量%である。0.01質量%以上であると樹脂基材の脱離性に優れ、30質量%以下であるとインキ層の耐水性に優れる。
【0058】
インキ層は、水溶性樹脂又は酸性基を含む化合物以外の樹脂を含有してもよい。
このような樹脂としては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテート・プロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン樹脂系及びアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
インキ層の厚みは、好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0060】
[脱離接着剤層]
脱離層が接着剤層である場合、該接着剤層は、樹脂基材と接して配置され、脱離液による溶解・剥離等により樹脂基材を脱離する役割を担う。接着剤層は、好ましくは、酸性基を有する化合物を含む。接着剤層が、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を含むことで、上述する塩基性水溶液を用いて接着剤層を脱離することができる。
上記酸性基を有する化合物、酸性基を有する樹脂及び酸性基を有する低分子化合物は、上述する[脱離プライマー層]の項における(酸性基を有する化合物)の記載を援用できる。
また接着剤層の形成方法は制限されず、公知の方法を用いて形成することができる。
【0061】
接着剤層は、脱離性の観点から、酸性基を有するポリエステルポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートとを含む接着剤の硬化物であってもよい。上記硬化物は、酸性基を有する樹脂に該当する。
また、接着剤層は、ポリエステルポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートと、酸性基を有する低分子化合物とを含む接着剤の硬化物であってもよい。
【0062】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、酸性基を有していればよく、公知のポリエステルポリオールから適宜選択できる。このようなポリエステルポリオールを含むことにより、脱離液として塩基性水溶液を用いた場合、塩基性化合物との親和性が高いエステル結合を有することで、脱離性が向上するため好ましい。ポリエステルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
ポリエステルポリオールは、特に限定されないが、カルボキシ基成分(多価カルボン酸ともいう)と水酸基成分(多価アルコールともいう)とを反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が好適に用いられる。
上記カルボキシ基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
上記水酸基成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記カルボキシ基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ポリエステルポリオールは、ポリオール中の水酸基にポリイソシアネートを反応させたポリエステルウレタンポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールがウレタン結合を有することで、優れた耐熱性、接着性を発揮する。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0065】
また、ポリエステルポリオールは、ポリオール中の水酸基に酸無水物を反応させた酸無水物変性物であってもよい。これにより、ポリエステルポリオールに酸性基であるカルボキシ基を導入することができる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0066】
ポリエステルポリオールの酸価は、好ましくは5.0mgKOH/g以上、より好ましくは10.0mgKOH/g以上である。また、ポリエステルポリオールの酸価は、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは80mgKOH/g以下である。ポリエステルポリオールの酸価が上記範囲であると、塩基性水溶液である脱離液と接触させた際に、塩基性水溶液が浸透して分解され、より優れた脱離性を発揮する。
接着剤が複数のポリエステルポリオールを含む場合、ポリエステルポリオール全体の酸価は、各々のポリエステルポリオール分の酸価とその質量比率から求めることができる。
【0067】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000~25,000、より好ましくは5,000~20,000、特に好ましくは7,000~15,000である。ポリエステルポリオールの数平均分子量が3,000以上であると、塗工性だけでなく十分なレトルト適性を発揮することができ、20,000以下であると塗工性だけでなく脱離性が向上するため好ましい。
【0068】
ポリエステルポリオール分は、包装材料に要求される各種物性を満たすために、複数のポリエステルポリオール成分を併用してもよく、例えば、数平均分子量5,000~20,000のポリエステルポリオールを含んでもよく、さらに、基材密着性を向上させるために、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールを含んでもよい。
数平均分子量が3,000未満のポリエステルポリオールの含有量は、ポリエステルポリオールの全質量を基準として、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%である。30質量%以下であると、レトルト耐性を維持できる。
【0069】
(その他ポリオール)
接着剤層を構成する接着剤は、ポリエステルポリオール以外のその他ポリオールを含有してもよい。ポリエステルポリオール以外に含有してもよいポリオールは、特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。
【0070】
(ポリイソシアネート)
接着剤層を構成するために、上述するポリエステルポリオールと組み合わせるポリイソシアネートは、公知の脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート等の非環状の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、イソホロンジイソシアネート)等の脂環式ジイソシアネート;上記ジイソシアネートから誘導された、アロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;が挙げられる。
誘導体として好ましくは、ヌレートタイプ、アダクトタイプであり、より好ましくはアダクトタイプである。脂肪族ポリイソシアネートとしては、脱離性とラミネート物性のバランスが確保しやすいヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)から誘導されたポリイソシアネートが好ましい。
【0072】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;上記芳香脂肪族ジイソシアネートから誘導された、アロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;が挙げられる。
【0073】
(その他ポリイソシアネート)
接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート以外のその他ポリイソシアネートを含有してもよい。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;上記ジイソシアネートの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;が挙げられる。
【0074】
上記ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が0.3~10.0になるよう配合してもよい。好ましくは、0.3~7.0であり、より好ましくは0.5~5.0である。
【0075】
(その他成分)
接着剤層は、シランカップリング剤、リンの酸素酸若しくはその誘導体、レベリング剤、消泡剤、反応促進剤のほか、無機充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク)、層状無機化合物、安定剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等を含有してもよい。
【0076】
接着剤層の厚みは、好ましくは1~10μm、さらに好ましくは1~6μmの範囲である。
【0077】
[金属蒸着層、無機酸化物蒸着層]
アルミニウム等の金属蒸着層、及びアルミナ、シリカ等の無機酸化物蒸着層は、塩基性水溶液に溶解し、脱離するため、脱離層として機能し、隣接する樹脂基材を分離することができる。
金属蒸着層、無機酸化物蒸着層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは、0.001~5μmである。
【0078】
<樹脂基材層>
樹脂基材層を構成する樹脂基材は特に制限されないが、好ましくはシート状の樹脂基材であって、例えば、従来公知のプラスチックフィルムが挙げられる。樹脂基材層は、1つの樹脂基材からなる単層構造であってもよく、複数の樹脂基材からなる多層構造であってもよい。また、樹脂基材層が接着剤層を介して2つの樹脂基材を積層した構成である場合、該2つの樹脂基材は、同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。
【0079】
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
樹脂基材は、脱離層として、上述する[金属蒸着層]若しくは[無機酸化物蒸着層]の項に記載の蒸着層(バリア層)を備えていてもよい。
【0080】
プラスチックフィルムの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚みは特に制限されないが、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~50μmである。
【0081】
また、プラスチックフィルムとしてシーラント基材を用いることができる。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に制限されないが、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~200μm、より好ましくは15~150μmである。また、シーラント基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
【0082】
樹脂基材層を構成する樹脂基材は、細断時に軟化して脱離層の断面を塞がないことが重要である。そのため、樹脂基材の融点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。
【0083】
<積層フィルムの構成>
本発明における積層フィルムは、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有していればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに別の層を有していてもよい。有していてもよい層としては、例えば、脱離層に該当しない樹脂を含む層(例えば、インキ層、接着剤層、プライマー層、オーバーコート層)のほか、アルミニウム箔等の金属箔、天然紙や合成紙等の紙が挙げられる。
【0084】
積層フィルムとしては、例えば、下記の構成が挙げられ、下記の構成の内2つ以上を満たす構成であってもよい。
(1)樹脂基材層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、インキ層が脱離層である。
(2)樹脂基材層、プライマー層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、プライマー層が脱離層である。
(3)接着剤層を介して2つの樹脂基材層が積層された部分構造を有し、接着剤層が脱離層である。
上記構成の具体例を以下に示す。
樹脂基材層/脱離インキ層、
樹脂基材層/脱離プライマー層/インキ層、
樹脂基材層/脱離インキ層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
樹脂基材層/脱離プライマー層/インキ層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
樹脂基材層/インキ層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
インキ層/樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
インキ層/樹脂基材層/接着剤層/樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
脱離インキ層/樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
インキ層/脱離プライマー層/樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層、
樹脂基材層/脱離プライマー層/インキ層/脱離接着剤層/無機酸化物蒸着層(脱離層)/樹脂基材層、
樹脂基材層/脱離プライマー層/インキ層/接着剤層/無機酸化物蒸着層(脱離層)/樹脂基材層/脱離接着剤層/樹脂基材層。
【0085】
<積層フィルムの分離回収方法>
本発明の分離回収方法は、以下の工程を含む。
(1)積層フィルムを、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断し、細断物を得る細断工程
(2)前記細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる分離工程
(3)分離した樹脂基材層を回収する回収工程
【0086】
[工程(1)]細断工程
工程(1)は、積層フィルムを細断して細断物を得る工程であり、冷却手段を用いて液温を50℃以下に保った水で冷却しながら細断することが重要である。50℃以下の水で冷却しながら細断することで、細断装置で大量に細断する際に発生する熱により樹脂基材が溶融し、脱離層の断面が塞がれることを防ぐことができる。これにより、脱離層の断面の露出が妨げられず、脱離性を低下させることがない。
さらに、冷却手段を用いることで、水の温度を常時50℃以下に保つことができるため、細断工程の全体において、脱離層の断面が塞がれることを防ぐことができる。冷却手段を用いない場合、細断時に発生する熱により液温は上昇し、冷却効果を発揮することが困難になる。
水の液温は、細断時の軟化や融着を防ぐ観点から低い方が良く、好ましくは39℃以下、より好ましくは29℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。上記範囲内であると、細断時のせん断による温度上昇が抑制され、積層フィルムの樹脂基材が溶融・軟化し難く、脱離層の断面が露出しやすくなるため好ましい。
【0087】
水の液温を50℃以下にするための冷却手段は特に制限されず、例えば、50℃以下の新しい水を細断部に随時投入する方法、水を循環利用する場合、温まった水を、冷却装置を用いて50℃以下に冷却した後に、細断部に投入随時投入する方法、細断装置に冷却装置を設けて液温を50℃以下に保つ方法、が挙げられるがこれらに限定されない。冷却装置の方式は限定されず、空冷方式、液冷方式等、公知の方式から適宜できる。
【0088】
細断方法としては、例えば、カッターミル(ロータリーカッター)を用いる方法が挙げられ、カッターミルを用いた細断装置としては、例えば、タナカ製MF45-700WRS、日本シーム製PF-2000型が挙げられる。
【0089】
本発明における細断工程の一例を以下に示す。
細断装置の水流入口から連続的に50℃以下の水を投入する。連続的に投入するという冷却手段により、液温50℃以下にした水での冷却細断を可能とする。水流入口から注入される水は、装置内の細断物を効率的に湿潤・冷却させるためにスプレーノズルなどを用いて注入してもよい。
一方、積層フィルムは、積層フィルム投入口から投入され、水流入口から供給される水とともに細断部で所定の大きさ以下まで細断する。細断部については公知の構造を用いることができる。細断部では、せん断力を用いて細断するロータリーカッターを用いることが好ましい。
【0090】
細断工程において、積層フィルムに付着した内容物等の汚れを洗浄するために、水に洗剤等を含有させてもよい。また、該水は、細断工程に用いる水は脱離液の成分を含有してもよい。細断工程に用いる水が、洗浄剤や脱離液の成分を含むことで、分離工程での分離を促進することができる。
しかしながら、本願発明では、インキ片等の不純物が樹脂基材に付着・蓄積することを防ぐ観点から、細断工程と分離工程とを別々に実施することを特徴とするものであり、細断工程に用いる水が含み得る洗浄剤や脱離液の成分は、樹脂基材層の分離が進行しない範囲である必要がある。
【0091】
細断が進み、細断物のサイズが一定以下になると、水とともに自重により細断部の下部に設けられたスクリーンを通過する。スクリーンとは、一定のサイズ以下のものを通過させるフィルターの役割を有するものを指し、フィルター、又はグリッドと言う場合もある。スクリーンの形状は、円形状、ひし形状、扇状などがあり、細断物の硬さや厚みに応じて適宜選択できる。
細断物の長辺は、使用するスクリーンの大きさによって調整でき、例えば、スクリーンの形状が円形の場合、直径15mmのスクリーンを使用することで、細断物のサイズのうち最も長い辺の長さ(長辺)を15mmに制御することができる。
細断物の長辺は、好ましくは5~50mm、より好ましくは5~40mm、さらに好ましくは10~30mmである。上記範囲内であると、後述する工程(2)において、脱離液が細断物の端面から中心部まで浸透する時間が短縮され、効率的に分離回収を行うことができる。
【0092】
細断工程に用いる水の質量は、積層フィルムの質量を基準として、好ましくは2~500倍であり、より好ましくは10~250倍、さらに好ましくは15~150倍である。
上記範囲内であると、積層フィルムに対する冷却するための水の量が十分となり、細断部に絶えず水の流入と流出が繰り返されるため、せん断による細断部の局所的な温度上昇が抑制される。これにより、積層フィルムの樹脂基材の融着や軟化を抑制することができる。
また、水の量が上記範囲内であることで、細断物だけでなく、細断時に生じた微細なインキ片、接着剤片といった不要成分が、上述するスクリーンを通過しやすくなり、細断部における積層フィルムの滞留や、不要成分によるスクリーン詰まりを防ぐことができる。
これにより、細断部に過剰に積層フィルムが滞留することがなく、樹脂基材の融着や過剰な細断による微細片の発生を抑制できる。また、スクリーン詰まりの抑制により、サイズが一定の細断物を連続的に生産することができる。
なお、細断工程に用いる水の質量とは、1分間に細断装置に投入される水の質量を表し、積層フィルムの質量とは、1分間に細断装置に投入される積層フィルムの質量を表す。
【0093】
本発明の分離回収方法は、細断工程を効率液に行うため、細断工程の前に、少なくとも樹脂基材層と脱離層とを有する本発明における積層フィルムを選別する選別工程を有していてもよい。
また、細断工程の前に、積層フィルムを細断装置に投入しやすい大きさに細断する粗破砕工程を有していてもよい。粗破砕工程に用いる装置としては、例えば油圧式切断機等が挙げられる。
【0094】
[工程(4)]洗浄ろ過工程
本発明の分離回収方法は、工程(1)と後述する工程(2)の間に、下記(4)の工程を有していてもよい。
(4)前記細断物を水で洗浄し、微細片を取り除く洗浄ろ過工程
スクリーンを通過した積層フィルムには、食品残渣、細断時に生じた微細なインキ片や接着剤片といった、回収後の樹脂基材を再生するにあたり品質を低下させる不要成分が混合しているため、細断物を水で洗浄し、微細片を取り除くための洗浄ろ過を行うことが好ましい。洗浄ろ過工程によって、付着した食品残渣、微細片(インキ片、接着剤片等)等の汚れの大部分が除去される。
細断から乾燥、搬出までの一連の工程は、水冷細断装置から水と積層フィルムが連続的に投入されながら処理を進めると作業効率が良いため、連続処理方式を用いることが好ましい。
【0095】
洗浄ろ過工程のうち、洗浄にはシャワリングによる水洗等の公知の方法を使用できる。ろ過には、フィルタープレス、ろ過スクリーン、遠心脱水機等の、ろ液とともに不純物を取り除く公知の方法を使用できる。ろ過の工程には、一定サイズ以上の細断物を回収し、それ以外の微細片を除去するという観点から、ろ過スクリーンを使用することが好ましい。
ろ過スクリーンは、フィルター又はグリッドと言う場合がある。スクリーンの形状は、例えば円形状、ひし形状、扇状があり、ろ過対象の形状に応じて適宜選択できる。細断物を水で洗浄し、ろ過スクリーンを用いて細断物を残し、微細片を通過させて取り除くことで、より高品質のフィルムを分離回収することが可能である。
中でも遠心力により洗浄とろ過をしながら搬出口まで送られる遠心洗浄・ろ過機構は、工程(4)に好適である。遠心洗浄ろ過機は、主に円筒状の外筒の内面に、円筒状のろ過スクリーンが、外筒に対し二重円筒状に固定されている。ろ過スクリーンの内側には、洗浄ろ過装置の中心軸と同軸の回転軸を有した回転ローターが設けられている。また、回転ローターには掻き羽根が取り付けられており、回転しながら細断物を搬出口まで輸送する。これらの機構により、上記工程(1)を通過した細断物と微細片を含んだ水は、洗浄ろ過装置内で、ろ過スクリーンのサイズ以上の細断物のみが搬出口まで送られ、水や微細片は、連続的にろ過スクリーンの外に排出される。
ろ過スクリーンのスクリーン形状及びサイズは、回収対象の細断物をできる限りスクリーン内に残し、不要成分である微細片をスクリーン外に排出できるように調整することが好ましい。スクリーンの形状が円形である場合、その直径は、好ましくは0.1mm~45mm、より好ましくは0.5mm~30mm、さらに好ましくは0.5mm~15mmでである。ろ過スクリーン外に排出された水と微細片は、排水溝から排出される。
微細片の形状は特に制限されないが、その長片又は直径は、好ましくは10mm以下である。
【0096】
洗浄ろ過装置の形状は、縦型、横型のいずれであってもよく、装置のサイズやその他の装置との連結しやすさなどから適宜選択される。
上記工程(1)工程(4)で用いた水は、不純物の除去プロセスを経た後、再利用してもよい。
【0097】
細断及び洗浄ろ過装置は特に制限されないが、例えば、タナカ製、日本シーム製、のものを用いることができる。
【0098】
[工程(2)]分離工程
工程(2)は、得られた細断物を脱離液に浸漬し、樹脂基材層を分離させる工程であり、公知の方法から適宜選択できる。
【0099】
(脱離液)
脱離液は、脱離層を膨潤・溶解させることにより、樹脂基材が剥離するものであればよく、脱離層の脱離のしやすさを考慮し、適宜選択することができる。このような脱離液としては、例えば、水、塩基性水溶液、酸性水溶液、フッ素系溶剤が挙げられる。環境面及び回収された樹脂基材を用いた再生材料の性状維持の観点から、好ましくは、水又は水溶液である。また、酸性基を有する化合物を含む層及び水溶性樹脂を含む層のいずれも脱離することが可能であることから、塩基性化合物を含む塩基性水溶液がさらに好ましい。これらの脱離液は加温されていてもよい。
【0100】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好適に用いられる。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
塩基性水溶液中の塩基性化合物の含有量は、塩基性水溶液の質量を基準として、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~15質量%の範囲である。上記範囲内にあると、塩基性水溶液は、脱離層を溶解又は膨潤により脱離させて樹脂基材層を回収するのに充分な塩基性を保持することができる。
【0101】
脱離液は、前述の通り細断物の端面から浸透して脱離層に接触し、溶解又は膨潤することで、樹脂基材層と脱離層とを分離する。工程(1)で得られた細断物は、冷却手段を用いて液温50℃以下にした水で冷却しながら細断しているため、樹脂基材層の融着・軟化が抑制され、脱離層の断面を露出した状態となっている。そのため、より短時間で脱離液が脱離層に浸透し、効率的に樹脂基材層を脱離することができる。
【0102】
細断物を浸漬する時の脱離液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃の範囲である。脱離液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、好ましくは1分間~6時間の範囲である。脱離液の使用量は、細断物の質量に対して、好ましくは5~10万倍量、より好ましくは10~1万倍の範囲であり、脱離効率を向上させるために、脱離液の撹拌又は循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~5000rpm、より好ましくは80~4000rpmである。
【0103】
脱離液として、前記工程(1)又は工程(4)で使用した水を、不純物を除去した後に、再利用してもよい。
【0104】
[工程(3)]回収工程
工程(3)は、工程(2)で分離した樹脂基材層を回収する工程であり、公知の回収方法から適宜選択することができる。上記回収方法としては、例えば、フィルター濾過を用いた方法が挙げられる。該方法は、カートリッジフィルター、ベルトフィルター、ドラムフィルター、ダイナフィルター、ロータリーフィルター、メッシュ、スクリーン、ドラムスクリーン、スラリースクリーナー、オートストレーナ、押出型遠心分離機、連続遠心分離機、及びろ過システムなどの、フィルターを含む任意の分離手段を含むものであり、フィルターで濾過しながら搬送可能なメッシュコンベアを用いてもよい。
【0105】
工程(3)では、樹脂基材層を回収する前に、積層フィルムから分離したインキ及び接着剤などの樹脂基材層以外の成分を除去する工程を設けてもよい。上記インキ及び接着剤などの成分は、工程(2)におけるせん断力により微細化されるため、工程(1)で細断された細断物とのサイズの違いを利用し、フィルターのサイズを調整することで、樹脂基材成分に付着したインキや接着剤成分の微細片を除去しながら、樹脂基材層を回収することができる。
樹脂基材層を回収し、さらに、インキ及び接着剤などの樹脂基材層以外の成分を除去した後の脱離液は、工程(2)で再利用してもよい。
【0106】
工程(3)は、樹脂基材層の樹脂種を選別する工程(選別工程)を有していてもよい。選別工程としては、例えば、液体を用いた比重選別法、風力選別法、近赤外線選別法が挙げられ、生産性の観点から、好ましくは液体を用いた比重選別法である。
液体を用いた比重選別法において、例えば比重液に水を用いた場合、ポリエチレン、ポリプロピレン等の水より比重の軽い樹脂基材と、ポリエステル、ナイロン、セロファン等の水より比重の重い樹脂基材とを選別することができる。比重液は、有機溶剤、金属塩化合物の水溶液等を単独又は混合して配合し、比重を適宜調整してもよい。このような比重選別は複数回行うこともできる。
回収された樹脂基材層は、必要に応じて脱水処理、乾燥処理等の処理を経て、再利用される。
【0107】
<樹脂基材層の再利用>
上述する分離回収方法により回収された樹脂基材層は、溶融混練することで、成形用材料を製造することができる。
溶融混錬工程は、必要に応じて各種添加剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合した後、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を用いて、混合や分散することを指す。これにより樹脂組成物である再生樹脂が得られる。再生樹脂の形状は、特に制限されず、ペレット状、粉体状、顆粒状、ビーズ状であってもよい。溶融混錬工程は、二軸押出機を用いるのが好ましい。
【0108】
成形用材料は、さらにマスターバッチを含有してもよい。マスターバッチは、再生樹脂に対して相溶性を有するものであれば特に制限されず、一般的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と着色剤とを混練したものを使用できる。マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
マスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属又は亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系又は金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤を含有してもよい。
【0109】
上述により得られる成形用材料を加熱成形することで、成形体を得ることができる。加熱成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出し成形、ブロー成形、圧縮成形が挙げられる。
本発明の分離回収方法により回収された樹脂基材層を用いて製造された成形用材料は、細断物の断面が塞がれておらず脱離性に優れるため、付着成分が抑制され高品位であり、家電製品や文房具、自動車用のパーツ、おもちゃやスポーツ用品、医療用や建築・建設資材の材料等、様々な分野に用いることができる。
【実施例0110】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における「部」及び「%」は、特に注釈の無い場合、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0111】
<分子量及び分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。測定条件を以下に示す。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0112】
<酸価、水酸基価>
酸価及び水酸基価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定した。
【0113】
<プライマー用樹脂の製造>
[合成例1-1](ポリウレタン樹脂P1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、Mn2,000のポリエステルポリオール)を101.2部、PPG(ポリプロピレングリコールからなる、Mn2,000のポリエーテルポリオール)を10.1部、DMPA(2,2-ジメチロールプロパン酸)を17.2部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)を70.9部、NPAC(酢酸ノルマルプロピル)を140部仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。
次いで、AEA(2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール)を10.5部、IPA(イソプロピルアルコール)を245部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPAC56部とIPA49部を加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、Mw24,000、Mw/Mn=3.4、酸価34.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂P1の溶液を得た。
【0114】
[合成例1-2](ポリウレタン樹脂P2)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPAを104.4部、PPGを10.4部、BD(1,4-ブタンジオール)を11.8部、IPDIを73.1部、NPACを140部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、AEAを10.3部、IPAを245部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPAC56部とIPA49部を加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、Mw23,000、Mw/Mn=2.9、酸価0mgKOH/gのポリウレタン樹脂P2の溶液を得た。
【0115】
【0116】
以下に、表1中の略称を示す。
PPA:プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、Mn2,000のポリエステルポリオール
PPG:ポリプロピレングリコールからなる、Mn2,000のポリエーテルポリオール
DMPA:2,2-ジメチロールプロパン酸
BD:1,4-ブタンジオール
IPDI:イソホロンジイソシアネート
NPAC:酢酸ノルマルプロピル
AEA:2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール
IPA:イソプロピルアルコール
【0117】
<プライマー層形成用組成物>
[製造例1-1](プライマー組成物S1)
ポリウレタン樹脂P1溶液87部、EA5部、IPA5部、シリカ粒子(水澤化学製P-73:平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、プライマー組成物S1を得た。
【0118】
[製造例1-2~3](プライマー組成物S2、S3)
表2に示した原料及び配合比に変更した以外は、製造例1-1と同様の手法により、プライマー組成物S2、S3を得た。
【表2】
【0119】
以下に、表2中の略称を示す。
マレイン化ロジン溶液:荒川化学工業社製 マルキードNo.32(酸価135mgKOH/g、固形分濃度100%品)を酢酸エチルにて固形分濃度30%に希釈した溶液。
PVA溶液:クラレ製 クラレポバール5-88(けん化度86.5~89.0%)の固形分濃度15%水溶液。
EA:酢酸エチル
【0120】
<インキ層形成用組成物>
[印刷インキI1]
リオアルファR39藍(東洋インキ社製)95部、マレイン化ロジン溶液5部をディスパーを用いて撹拌混合して、印刷インキ組成物I1を得た。マレイン化ロジン溶液には、荒川化学工業社製 マルキードNo.32(酸価135mgKOH/g、固形分濃度100%品)を酢酸エチルにて固形分濃度30%に希釈した溶液を用いた。
【0121】
[印刷インキI2]
リオアルファR39藍(東洋インキ社製)を印刷インキI2とした。
【0122】
<接着剤に用いるポリオールの製造>
[合成例2-1](ポリエステルポリオールA1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール204部、ネオペンチルグリコール215部、1,6-ヘキサンジオール210部、イソフタル酸579部、アジピン酸61部、セバシン酸232部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート34部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部にエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを13.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、Mn9,500、酸価31.5mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールA1の溶液を得た。
【0123】
[合成例2-2](ポリエステルポリオールA2)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール242部、ネオペンチルグリコール401部、イソフタル酸404部、アジピン酸452部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に無水トリメリット酸を3.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、Mn2,000、酸価21.3mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールA2の溶液を得た。
【0124】
[合成例2-3](ポリエステルポリオールA3)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール166部、ネオペンチルグリコール279部、1,6-ヘキサンジオール158部、テレフタル酸278部、イソフタル酸278部、アジピン酸56部、セバシン酸285部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート7.5部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に無水トリメリット酸を0.7部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後固形分濃度50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、Mn7,500、酸価2.1mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールA3の溶液を得た。
【0125】
<高酸価樹脂の製造>
(高酸価樹脂H1)
荒川化学製 マルキードNo.32(酸価135mgKOH/g、固形分濃度100%品)を酢酸エチルにて固形分濃度30%に希釈し、高酸価樹脂H1の溶液を得た。
【0126】
(高酸価樹脂H2)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に滴下槽1にメタクリル酸メチル80部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸100部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃に保ちながら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、重量平均分子量2,300、酸価465mgKOH/gの(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂を得た。ついで、酢酸エチルにて固形分濃度30%に希釈し、高酸価樹脂H2の溶液を得た。
【0127】
<ポリイソシアネートの調整>
(ポリイソシアネートC1)
コロネート2785(ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=9.6%に調整し、ポリイソシアネートC1の溶液を得た。
【0128】
<接着剤層形成用組成物>
[製造例2-1](接着剤T1)
ポリエステルポリオールA1溶液を90部、ポリエステルポリオールA2溶液を10部、ポリイソシアネートC1溶液を8部配合し、酢酸エチルを加えて固形分濃度30%の接着剤T1の溶液を得た。
【0129】
[製造例2-2~4](接着剤T2~4)
表3に示した原料及び配合組成に変更した以外は、製造例2-1と同様の手法により、接着剤T2~4の溶液を得た。
【表3】
【0130】
<積層フィルムの製造>
以下に積層フィルムの製造方法について説明する。表4に積層フィルムの構成と、プライマー、インキ、接着剤の種類を記載した。回収する樹脂基材層は下線で示した。また、表4中の「-」の表記は、構成が存在しないことを示している。
なお、プライマー組成物(プライマー組成物S3を除く)及び印刷インキは、各々、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、粘度が15秒(25℃、ザーンカップ#3(離合社製))になるように希釈してから使用した。また、プライマー層及びインキ層の厚みは、各々、約1.5μmとなるように調整した。プライマー組成物S3は、希釈溶剤に水を用いた以外は、同様の粘度、厚みになるように調整した。
【0131】
[製造例3-1](積層フィルムL1)
OPP(コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、基材層(OPP)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)の構成である積層フィルムL1を得た。
【0132】
[製造例3-2、3-3](積層フィルムL2、L3)
基材及びプライマー組成物を、表4に記載の内容に変更した以外は製造例3-1と同様の手法により、積層フィルムL2、L3を得た。
【0133】
[製造例3-4](積層フィルムL4)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈した印刷インキI1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて全面に印刷し、50℃で乾燥して、基材層(OPP)/脱離インキ層(I1)の構成である積層フィルムL4を得た。
【0134】
[製造例3-5](積層フィルムL5)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、OPP/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が2.5g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム 厚み25μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(OPP)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL5を得た。
【0135】
[製造例3-6~3-9](積層フィルムL6~9)
基材、プライマー組成物及び接着剤を、表4に記載の内容に変更した以外は製造例3-5と同様の手法により、積層フィルムL6~9を得た。
【0136】
[製造例3-10](積層フィルムL10)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈した印刷インキI1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、OPP/I1の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が2.5g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み25μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(OPP)/脱離インキ層(I1)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL10を得た。
【0137】
[製造例3-11](積層フィルムL11)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、OPP/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が2.5g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム 厚み30μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(OPP)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL11を得た。
【0138】
[製造例3-12](積層フィルムL12)
NY(ナイロンフィルム 厚み15μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、NY/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み80μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(NY)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL12を得た。
【0139】
[製造例3-13](積層フィルムL13)
NY(厚み25μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、NY/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み150μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(NY)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL13を得た。
【0140】
[製造例3-14](積層フィルムL14)
NY(厚み25μm)に対し、希釈した印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、NY/I1の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み150μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(NY)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL14を得た。
【0141】
[製造例3-15](積層フィルムL15)
PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム 厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み40μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL15を得た。
【0142】
[製造例3-16](積層フィルムL16)
NY(厚み15μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、NY/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(NY)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL16を得た。
【0143】
[製造例3-17](積層フィルムL17)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのナイロンフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL17を得た。
【0144】
[製造例3-18](積層フィルムL18)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのナイロンフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み100μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL18を得た。
【0145】
[製造例3-19](積層フィルムL19)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのナイロンフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み150μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL19を得た。
【0146】
[製造例3-20](積層フィルムL20)
透明シリカ蒸着PET(厚み12μm)の蒸着面に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/シリカ蒸着層/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのナイロンフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(シリカ蒸着PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL20を得た。
【0147】
[製造例3-21](積層フィルムL21)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、OPP/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、透明シリカ蒸着PET(厚み12μm)の蒸着面と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのPETフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み30μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(OPP)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(シリカ蒸着PET)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL21を得た。
【0148】
[製造例3-22](積層フィルムL22)
OPP(厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、OPP/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、アルミ(AL)蒸着PET(厚み12μm)の蒸着面と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのPETフィルム面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み25μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(OPP)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(アルミ蒸着PET)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL22を得た。
【0149】
[製造例3-23](積層フィルムL23)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、アルミ蒸着PET(厚み12μm)の蒸着面と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのアルミ蒸着面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み150μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(アルミ蒸着PET)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL23を得た。
【0150】
[製造例3-24](積層フィルムL24)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T4を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、AL(アルミニウム箔 厚み7μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのAL面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/接着剤層(T4)/基材層(AL)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL24を得た。
【0151】
[製造例3-25](積層フィルムL25)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T4を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、AL箔(厚み7μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのAL面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムのNY面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、CPP(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/接着剤層(T4)/基材層(AL箔)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(CPP)の構成である積層フィルムL25を得た。
【0152】
[製造例3-26](積層フィルムL26)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T4を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、AL箔(厚み7μm)と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのAL面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムのNY面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み100μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/接着剤層(T4)/基材層(AL箔)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL26を得た。
【0153】
[製造例3-27](積層フィルムL27)
PET(厚み12μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキI2を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で全面に印刷し、50℃で乾燥して、PET/S1/I2の構成である積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムのインキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、アルミ蒸着PET(厚み12μm)の蒸着面と貼り合わせた。
次いで、得られた積層フィルムのPET面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、NY(厚み15μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムのNY面に、先程と同様に接着剤T1を乾燥後塗布量が3.0g/m2になるように塗布・乾燥した後、LLDPE(厚み70μm)と貼り合せた。
次いで、得られた積層フィルムを40℃3日間保温し、基材層(PET)/脱離プライマー層(S1)/インキ層(I2)/脱離接着剤層(T1)/基材層(アルミ蒸着PET)/脱離接着剤層(T1)/基材層(NY)/脱離接着剤層(T1)/基材層(LLDPE)の構成である積層フィルムL27を得た。
【0154】
【0155】
表4中の略称を以下に示す。
透明蒸着PET:透明シリカ蒸着PET
VMPET:アルミ蒸着PET
【0156】
<積層フィルムの分離回収方法>
以下に、表5~7中の工程(1)及び工程(4)の条件について説明する。なお、全ての実施例及び比較例は、35cm×35cmの大きさに切り出した積層フィルムを用いた。
【0157】
[工程(1)]
(細断装置)
湿式(1):日本シーム製 PFS-40型(カッターミル及び直径15mmの円形状スクリーンを搭載した縦型細断装置)。細断工程は、水流入口から水を流入させながら細断工程を行った。
湿式(2):ニクニ製 サンカッタ C80H(カッターミルと直径15mmの円形状スクリーンを搭載した横型細断装置)を使用した。本明細書では、水流入口から2質量%水酸化ナトリウム水溶液を流入させながら、積層フィルムの細断と、樹脂基材層の分離とを同時に行った。
乾式:ホーライ製 FG-2060(カッターミル及び直径15mmの円形状スクリーンを搭載)。
【0158】
(積層フィルムの質量)
細断装置の積層フィルム投入口から1分間に投入した積層フィルムの質量。
【0159】
(水の質量)
細断装置の水流入口から1分間に投入した水の質量。
【0160】
(水冷温度)
細断装置の水流入口から投入した水の温度。
【0161】
[工程(4)]
(洗浄ろ過工程)
洗浄ろ過工程は、細断装置に、直径3mmの円形状ろ過スクリーンを備える洗浄ろ過装置(日本シーム製SW-408型)を連結して、連続的に水洗浄と濾過を行った。
【0162】
[実施例1]
積層フィルムL1(35cm×35cm)1.2Kgを、直径15mmの円形状スクリーンを備える湿式細断装置(湿式(1))に1.2Kg/分の速度で投入し、冷却装置を用いて温度20℃に制御した水を60Kg/分の速度で投入しながら細断を行った後、上記スクリーンを通過させて、細断物を得た(工程(1))。得られた細断物の長辺は15mm以下であった。
次いで、細断装置に直結された洗浄ろ過装置(日本シーム製SW-408型)に細断物を輸送し、細断物を水洗浄し、細断時に発生した直径3mm以下の微細片を取り除いた(工程(4))。
次いで、2000mlフラスコ中に、70℃の2質量%水酸化ナトリウム水溶液1500mlを加え、得られた細断物のうち30gを浸漬した。70℃、200rpmの条件で2時間撹拌し、樹脂基材層を分離させた(工程(2))。
次いで、分離した樹脂基材層(OPP)を、比重選別法を用いて回収し、水洗・乾燥した(工程(3))。
【0163】
[実施例2~6、実施例11~40、比較例1~2、比較例4~9]
積層フィルムの種類、工程(1)及び(4)の条件を、表5及び表7に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムの分離回収を行った。なお、分離した樹脂基材層がオレフィンである場合は、比重選別法を用いて回収し、PET又はNYである場合は、フィルターを用いて回収し、水洗・乾燥した。
【0164】
[実施例7]
積層フィルムL3(35cm×35cm)1.2Kgを、直径15mmの円形状スクリーンを備える湿式細断装置(湿式(1))に1.2Kg/分の速度で投入し、冷却装置を用いて温度20℃に制御した水を60Kg/分の速度で投入しながら細断を行った後、上記スクリーンを通過させて、細断物を得た(工程(1))。得られた細断物の長辺は15mm以下であった。
次いで、細断装置に直結された洗浄ろ過装置(日本シーム製SW-408型)に細断物を輸送し、細断物を水洗浄し、細断時に発生した直径3mm以下の微細片を取り除いた(工程(4))。
次いで、2000mlフラスコ中に、70℃の水1500mlを加え、得られた細断物のうち30gを浸漬した。70℃、200rpmの条件で2時間撹拌し、樹脂基材層を分離させた(工程(2))。
次いで、分離した樹脂基材層(OPP)を、比重選別法を用いて回収し、水洗・乾燥した(工程(3))。
【0165】
[実施例8~10、比較例3]
積層フィルムの種類、工程(1)及び(4)の条件を、表6に記載の内容に変更した以外は、実施例7と同様にして、積層フィルムの分離回収を行った。
【0166】
[比較例10]
積層フィルムL5(35cm×35cm)1.2Kgを、直径15mmの円形状スクリーンを備える湿式細断及び分離装置(湿式(2))に1.2Kg/分の速度で投入し、冷却装置を用いて温度20℃に制御した2質量%水酸化ナトリウム水溶液を60Kg/分の速度で投入しながら細断と同時に分離を行った後、上記スクリーンを通過させて、細断物から分離した樹脂基材層を得た。得られた樹脂基材層の長辺は15mm以下であった。
次いで、分離した樹脂基材層(OPP、CPP)を比重選別法を用いて回収し、水洗・乾燥した。
【0167】
[比較例11]
細断及び分離工程の条件を、表7に記載の内容に変更した以外は、比較例10と同様にして、積層フィルムの分離回収を行った。
【0168】
<回収した樹脂基材層の評価>
回収した樹脂基材について、インキの脱離性、除去率を評価した。接着剤を用いて貼り合わせた積層フィルムについては、ラミネート剥離性及び接着剤の除去率を評価した。結果を表5~7に示す。
【0169】
(インキの脱離性)
基材上に脱離プライマー層及び/又は脱離インキ層を備える積層フィルムを用いた実施例等について、分離後の脱離プライマー層及び/又は脱離インキ層を印刷した基材を無作為に10枚サンプリングし、インキ層の脱離面積を目視で確認し、以下の基準で評価した。評価基準は、3以上が使用可能範囲である。
5(優) :剥離面積が90%以上
4(良) :剥離面積が80%以上~90%未満
3(可) :剥離面積が60%以上~80%未満
2(不可):剥離面積が20%以上~60%未満
1(不可):剥離面積が20%未満
【0170】
(プライマー、インキの除去率)
上記インキの脱離性評価に用いた基材10枚について、基材1枚につき2箇所FT-IRを測定し、プライマー又はインキ由来の吸収ピークの有無を確認した。合計20箇所において、吸収ピークが検出されない割合(除去率)を算出し、以下の基準で評価した。例えば20箇所の内、19箇所で吸収ピークが検出されなかった場合、除去率は95%である。評価基準は3以上が使用可能範囲である。
5(優) :除去率が90%以上
4(良) :除去率が80%以上~90%未満
3(可) :除去率が60%以上~80%未満
2(不可):除去率が20%以上~60%未満
1(不可):除去率が20%未満
【0171】
(接着剤の除去率)
脱離接着剤層を備える積層フィルムを用いた実施例等について、脱離接着剤層が接する回収対象基材を無作為に10枚サンプリングし、基材1枚につき2箇所FT-IRを測定し、接着剤由来の吸収ピークの有無を確認した。合計20箇所において、吸収ピークが検出されない割合(除去率)を算出し、以下の基準で評価した。例えば20箇所の内、19箇所で吸収ピークが検出されなかった場合、除去率は95%である。評価基準は3以上が使用可能範囲である。
5(優) :除去率が90%以上
4(良) :除去率が80%以上~90%未満
3(可) :除去率が60%以上~80%未満
2(不可):除去率が20%以上~60%未満
1(不可):除去率が20%未満
【0172】
(ラミネート剥離性)
脱離接着剤層を備える積層フィルムを用いた実施例等について、脱離接着剤層が接する回収対象基材を無作為に30枚サンプリングし、基材同士が剥離していない積層フィルムの枚数を確認し、以下の基準で評価した。評価基準は3以上が使用可能範囲である。
5(優):剥離していない積層フィルムが1枚以下
4(良):剥離していない積層フィルムが2~3枚
3(可):剥離していない積層フィルムが4~6枚
2(不可):剥離していない積層フィルムが7~15枚
1(不可):剥離していない積層フィルムが16枚以上
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
上記の評価結果より、細断工程中50℃以下の水を連続的に投入する方法により、液温50℃以下にした水で冷却しながら細断して得られた積層体は、細断面の脱離層の露出が維持され、効率的に樹脂基材層を分離回収することができた。
特に、細断工程に用いる水の質量が、積層フィルムの質量を基準として2以上であると、ラミネート剥離性が良化した。これは、細断時のフィルム融着が抑制されることにより細断面が露出し、効率的に樹脂基材の分離が進行したためと推察される(実施例11、14~16)。
また、細断工程の後に、洗浄ろ過工程を有することで、細断工程で発生したインキや接着剤成分の微細片が除去され、基材への付着が抑制されたため、その後の分離工程において、樹脂基材の分離回収性に優れていた(実施例11、18)。
一方、乾式細断装置(乾式)を用いると、細断時に積層フィルム同士が融着し、その後の分離工程において積層フィルム内部に脱離液が浸透せず、樹脂基材の分離回収性が低下した(比較例1~3、5~9)。
細断工程と分離工程とを同時に行う湿式細断装置(湿式(2))を用いると、積層フィルムの滞留時間が短いため、十分に脱離しなかった。さらに、細断時に発生するインキや接着剤成分の微細片が基材に付着してしまい、除去率が低下した(比較例10、11)。
前記積層フィルムが、樹脂基材層、プライマー層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記プライマー層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
前記積層フィルムが、接着剤層を介して2つの樹脂基材層が積層された部分構造を有し、前記接着剤層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。
前記積層フィルムが、樹脂基材層、及びインキ層をこの順に備える部分構造を有し、前記インキ層が脱離層である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層フィルムの分離回収方法。