IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧 ▶ 独立行政法人地域医療機能推進機構の特許一覧

<>
  • 特開-防災支援装置及び防災支援方法 図1
  • 特開-防災支援装置及び防災支援方法 図2
  • 特開-防災支援装置及び防災支援方法 図3
  • 特開-防災支援装置及び防災支援方法 図4
  • 特開-防災支援装置及び防災支援方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163961
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】防災支援装置及び防災支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20231102BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075216
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】516389639
【氏名又は名称】独立行政法人地域医療機能推進機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】角 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐山 敬洋
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓
(72)【発明者】
【氏名】松原 正芳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 聡
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 夏来
(72)【発明者】
【氏名】木村 正美
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】従来よりも実用性の高い防災計画の作成を支援することが可能な防災支援装置及び防災支援方法を提供する。
【解決手段】防災対象施設の施設情報を取得する施設情報取得部と、防災情報を取得する防災情報取得部と、施設情報及び防災情報に基づいて防災タイムラインを防災支援情報として作成する支援情報作成部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災対象施設の施設情報を取得する施設情報取得部と、
防災情報を取得する防災情報取得部と、
前記施設情報及び前記防災情報に基づいて防災タイムラインを防災支援情報として作成する支援情報作成部と
を備えることを特徴とする防災支援装置。
【請求項2】
前記支援情報作成部は、災害発生の前段階において前記防災対象施設の取るべき防災行動を時系列的に示す防災行動関連表を前記防災支援情報として作成することを特徴とする請求項1に記載の防災支援装置。
【請求項3】
前記施設情報は、前記防災対象施設を構成する建物あるいは設備に関する測量情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の防災支援装置。
【請求項4】
水害を防災対象とする場合、
前記防災情報は、対象地域に存在する河川の過去の水害時における水位予測情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の防災支援装置。
【請求項5】
前記防災タイムラインは、前記防災対象施設における防災行動を誰がどのタイミングで行うかを示す行動計画表であることを特徴とする請求項1または2に記載の防災支援装置。
【請求項6】
防災対象施設の施設情報をコンピュータに取得する施設情報取得工程と、
防災情報を取得する前記コンピュータに防災情報取得工程と、
前記コンピュータで前記施設情報及び前記防災情報に基づいて防災タイムラインを作成する支援情報作成工程と
を有することを特徴とする防災支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災支援装置及び防災支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年水害による被害が多発している。病院等の医療施設には、水害に備えて止水壁及び止水板等からなる防水設備を設置しているところがあるが、人的な要因により防水設備が十分な機能を発揮せず、被害が拡大している現状がある。また、防災関連技術として、下記特許文献1にはタイムラインに記録された防災行動時間に基づいて各項目の対応リードタイムを予測し、この予測結果に基づいてタイムラインの見直しを提案する防災情報管理システムが開示されている。また、下記特許文献2には、タイムラインの防災項目情報と移動系関係者とを連携させることができる防災情報システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-009496号公報
【特許文献2】特開2021-033968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した背景技術があるものの、防災設備やタイムラインが十分に機能しておらず、施設が被災することによって施設の機能が損なわれ、該当地域における施設の役割が果たし得ない状況が発生している。例えば、医療施設では被災によって医療機能が損なわれることにより、所定期間に亘って地域医療に支障をきたすという深刻な状況が発生している。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも実用性の高い防災計画の作成を支援することが可能な防災支援装置及び防災支援方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、防災支援装置に係る第1の解決手段として、防災対象施設の施設情報を取得する施設情報取得部と、防災情報を取得する防災情報取得部と、前記施設情報及び前記防災情報に基づいて防災タイムラインを防災支援情報として作成する支援情報作成部とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、防災支援装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記支援情報作成部は、災害発生の前段階において前記防災対象施設の取るべき防災行動を時系列的に示す防災行動関連表を前記防災支援情報として作成する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、防災支援装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記施設情報は、前記防災対象施設を構成する建物あるいは設備に関する測量情報を含む、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、防災支援装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、水害を防災対象とする場合、前記防災情報は、対象地域に存在する河川の水位予測情報を含む、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、防災支援装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記防災タイムラインは、前記防災対象施設における防災行動を誰がどのタイミングで行うかを示す行動計画表である、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、防災支援方法に係る解決手段として、防災対象施設の施設情報をコンピュータに取得する施設情報取得工程と、防災情報を取得する前記コンピュータに防災情報取得工程と、前記コンピュータで前記施設情報及び前記防災情報に基づいて防災タイムラインを作成する支援情報作成工程とを有する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも実用性の高い防災計画の作成を支援することが可能な防災支援装置及び防災支援方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る防災支援装置Aの機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る防災支援装置Aの動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態における防災タイムラインを示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態における防災行動関連表を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態における防災タイムラインを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る防災支援装置Aは、各種の災害のうち水害を防災対象とする防災計画の作成及び実施を支援するものである。防災対象となる施設(防災対象施設)には様々なものがあるが、本実施形態に係る防災支援装置Aは、一例として地域医療を担う医療施設を防災対象施設とするものである。
【0015】
この防災支援装置Aは、例えば防災支援プログラム(アプリケーションプログラム)が搭載された汎用コンピュータである。防災支援装置Aは、防災計画の作成支援に必要な情報を外部サーバBあるいは施設サーバCから取得することにより、医療施設に特化した防災支援情報の作成及び更新を行う。防災支援情報は、医療施設における防災計画の作成及び実施に必要不可欠な防災タイムライン及び防災行動関連表である。
【0016】
詳細については後述するが、防災タイムラインは、防災支援情報の1つであり、防災のために行う各種の防災行動(災害発生前の予防措置)を誰がどのタイミングで行うかを示す行動計画表である。例えば、医療施設には水害に備えて止水壁及び止水板等からなる防水設備を設置しているところがあるが、防水設備は、可動式の止水板を作動または設置させることによって所望の防水機能を発揮する。
【0017】
したがって、防水機能を有効に機能させるためには止水板を適切なタイミングで作動または設置させる必要があるが、止水板の作動は、医療施設の防災担当者による判断に基づいて実施される。防災タイムラインには、防災行動の1つである止水板の作動をどのタイミングで行うかが記載(計画)されている。
【0018】
防災行動関連表は、防災支援情報の1つであり、水害発生の前段階において医療施設の取るべき防災行動を時系列的に示す行動表である。この防災行動関連表は、水害を想定した医療施設の防災訓練に利用可能なものである。防災行動関連表に従って防災訓練を行うことにより、防災計画をより実効的なものにブラッシュアップさせることができる。
【0019】
外部サーバB及び施設サーバCについて先に説明すると、外部サーバBは、医療施設に関係する防災情報を防災支援装置Aに提供する複数のサーバの集合体である。防災情報は、例えば医療施設が存在する地域(対象地域)のハザードマップや過去の水害情報、過去の水害時における対象地域の降雨量や河川の水位等からなる気象情報、対象地域に存在する河川のある時点以降の水位予測情報(RRI情報)等である。
【0020】
なお、RRI情報は、公知のRRIモデルに基づいて4時間先までの河川水位を予測した水位予測結果であり、国内の複数の河川に関する過去の水位予測結果をも含むものである。RRIモデルは、地域における降雨(Rainfall)、流出(Runoff)及び氾濫(Inundation)に基づいて河川水位を予測する。
【0021】
施設サーバCは、医療施設が管理するサーバであり、医療施設に関する各種情報(施設情報)を防災支援装置Aに提供する。施設情報は、医療施設を構成する各建物や各種設備の設置場所や設置高さ等の建築情報、医療施設における各種組織に関する組織情報、各種組織の構成員(病院職員)の業務内容、水害に対する医療施設の防災マニュアル、病院職員からのヒアリング情報、過去の水害対応記録、過去の浸水記録等を少なくとも含む。
【0022】
ここで、上記建築情報は、医療施設に関する設計図書に加え、医療施設における各建物及び各種設備に関する測量情報、写真や映像、維持保全記録、また各建物及び各種設備に関する在来手法による測量情報、3D点群測量情報を含んでいる。すなわち、建築情報は、医療施設の建設時における情報に加え、防災計画の作成時点(現在)における各建物及び各種設備の状態を示す情報である。
【0023】
防災支援装置Aは、図1に示すように、通信部1、記憶部2、操作部3、演算部4及び表示部5を少なくとも備える汎用コンピュータである。これら通信部1、記憶部2、操作部3、演算部4及び表示部5は、汎用コンピュータを構成するハードウエア要素である。防災支援装置Aは、このようなハードウエア要素とソフトウエア要素(防災支援プログラム)とが協働することによって防災タイムライン及び防災行動関連表の作成及び更新を行う。
【0024】
通信部1は、演算部4と電気的に接続されるとともに外部サーバBと通信自在に接続されている。通信部1は、演算部4から入力される情報取得指示に基づいて外部サーバBと通信を行うことにより防災情報、気象情報及び水位予測情報を取得する。通信部1は、外部サーバBから取得した防災情報、気象情報及び水位予測情報を演算部4に出力する。なお、この通信部1は、本実施形態における施設情報取得部兼防災情報取得部である。
【0025】
記憶部2は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等、複数の記憶装置の集合体であり、演算部4と電気的に接続されている。記憶部2は、上述した防災支援プログラムを予めROMに記憶するととともに、演算部4から入力される書込指示に基づいて防災情報、気象情報及び水位予測情報を例えばハードディスクに記憶する。また、記憶部2は、演算部4から入力される読出指示に基づいて防災情報、気象情報及び水位予測情報を演算部4に提供する。
【0026】
操作部3は、キーボードやマウス等の集合体であり、演算部4と電気的に接続されている。操作部3は、防災タイムライン及び防災行動関連表の作成及び更新に関する操作者の指示(操作指示)を受け付け、当該操作指示を演算部4に出力する。この操作指示は、演算部4で防災支援プログラムに基づいて処理される。なお、上記操作者は、防災タイムライン及び防災行動関連表の作成及び更新に関与する医療施設の防災担当者(施設職員)である。
【0027】
演算部4は、通信部1、記憶部2、操作部3及び表示部5と電気的に接続されている。演算部4は、防災支援プログラム(アプリケーションプログラム)を記憶部2から読み出して実行することにより、また操作部3から入力される操作指示に基づいて、防災タイムライン及び防災行動関連表の作成及び更新を行う。
【0028】
また、この演算部4は、防災支援プログラム及び操作指示に基づいて作成した防災タイムライン及び防災行動関連表を表示部5に出力するとともに記憶部2に記憶させる。また、演算部4は、防災タイムライン及び防災行動関連表を操作指示に基づいて所定の送信先に転送する。このような演算部4は、本実施形態における支援情報作成部である。
【0029】
表示部5は、例えば液晶表示装置であり、演算部4と電気的に接続されている。表示部5は、演算部4から入力された防災タイムライン及び防災行動関連表を画像として表示する。医療施設の担当者は、表示部5に画面表示される防災タイムライン及び防災行動関連表に基づいて、医療施設における防災計画の作成を行う。
【0030】
次に、本実施形態に係る防災支援装置Aの動作つまり防災支援装置Aを用いた防災支援方法について、図2~5を参照して詳しく説明する。
【0031】
防災支援装置Aの演算部4は、防災支援プログラムの実行を開始すると、最初に外部サーバBから防災情報を取得する(ステップS1)。すなわち、演算部4は、通信部1に防災情報の取得指示を出力することにより防災情報の送信要求を外部サーバB宛に送信させる。外部サーバBは、上記送信要求に応答することにより対象地域の防災情報を防災支援装置A宛に送信する。通信部1は、外部サーバBから防災情報を受信して演算部4に出力する。なお、ステップS1は、本実施形態における防災情報取得工程である。
【0032】
続いて、演算部4は施設サーバCから施設情報を取得する(ステップS2)。すなわち、演算部4は、通信部1に施設情報の取得指示を出力することにより施設情報の送信要求を施設サーバC宛に送信させる。施設サーバCは、上記送信要求に応答することにより医療施設の施設情報を防災支援装置A宛に送信する。通信部1は、施設サーバCから施設情報を受信して演算部4に出力する。なお、ステップS2は、本実施形態における施設情報取得工程である。
【0033】
通信部1は、このようにして対象地域の防災情報及び医療施設の施設情報を取得すると、医療施設の各種設備に関する浸水評価マトリクスを生成する(ステップS3)。この浸水評価マトリクスは、医療施設の浸水高さと医療施設における各種設備との関係をマトリクス状に表す一覧表である。
【0034】
例えば、医療施設は固有の電源設備を備えている。この電源設備は、電力事業者から供給される通常電源が遮断されると作動することにより、医療施設の必要箇所に電力を供給して医療機能を維持するためのものである。浸水評価マトリクスには、このような電源設備と浸水高さとの関係が記載されている。
【0035】
電源設備の健全性と浸水高さとの関係は、電源設備を構成する各種機器がどのような高さに設置されているかに依存する。医療施設には、電源設備の他に給水設備、汚水排水設備、雨水排水設備、医療ガス設備、電子カルテ、エレベーター、防災センター、薬剤・診療材料及び食事等、様々な設備があるが、これらの各種設備の健全性は、各種設備を構成する各種機器の設置高さや建物のフロアー高さに依存する。
【0036】
そして、演算部4は、施設情報に含まれる建築情報から医療施設における各建物及び各種設備に関する設置高さ及びフロアー高さを抽出し、設置高さ及びフロアー高さと浸水高さとを比較することにより、評価マトリクスに示された医療施設の各種設備のリスク評価(浸水リスク評価)を行う(ステップS4)。
【0037】
図3は、演算部4がステップS4の処理の結果として作成するリスク評価表の一例である。演算部4は、ステップS3で作成した浸水評価マトリクスにステップS4の処理によって得られた評価結果を正常(〇)、一部正常(△)または機能不全(×)として追記することによりリスク評価表を作成する。
【0038】
このようにしてリスク評価表を作成すると、演算部4は、医療施設の組織構造、水害時における各部署の施設職員の業務内容、各業務の担当者、各業務の作業時間及び防災マニュアル等を水害時個別業務内容として施設情報から取得(抽出)する(ステップS5)。そして、演算部4は、このような水害時個別業務内容に基づいて水害に関する防災行動関連表を作成する(ステップS6)。このステップS6は、本実施形態における支援情報作成工程である。
【0039】
図4は、ステップS6で作成される防災行動関連表の一例である。この防災行動関連表は、図示するように、水害発生の前段階において医療施設の各部署や施設職員(災害対策本部、院長、管理職、総務企画課等)の防災行動を時系列的かつ河川の水位とRRI情報とに基づく水害ステージに関連付けて示す行動表である。
【0040】
この防災行動関連表は、例えば総務企画課の担当者が水位及びRRI情報を確認し、事務責任者が対策発動指示を総務企画課の担当者に行うことによって医療施設の水害対策を開始し、水位及びRRI情報の動向を確認しつつ各部署及び院長を含めた各施設職員が必要な行動をとることを示している。
【0041】
また、防災行動関連表は、水位及びRRI情報に基づいて水害ステージが順次変化することを示している。水害ステージは、水位の上昇及びRRI情報の動向に基づいて時間の経過とともに順次変化するものであり、予め想定したリードタイムで段階的に変かする。
【0042】
例えば図4の例では、例えば水位が2.0mを超過した段階で水害ステージをステージ3からステージ4-1に上昇し、水位が3.0mを超過した段階で水害ステージをステージ4-1からステージ4-12上昇する。すなわち、図4の例では、水位が2.0mから3.0mに変化する13:40から14:50の時間(リードタイム)で水害ステージが変化することを示している。
【0043】
演算部4は、このような防災行動関連表を作成すると、防災行動関連表に記載された各部署及び各施設職員の防災行動に要する時間(防災行動時間)が水害ステージ毎に想定したリードタイム内に収まるか否かを評価する(ステップS7)。リードタイム内における防災行動は、複数の組織及び複数の施設職員によって個々にかつ連携して行われるが、全ての防災行動をリードタイム内に実施し得ない場合が想定される。
【0044】
演算部4は、例えば施設職員の操作指示として操作部3から入力される各防災行動の防災行動時間と防災行動関連表のリードタイムとの整合性を判断する。そして、演算部4は、この整合性判断に基づいて防災行動関連表のリードタイムに整合しない防災行動を判定する。
【0045】
そして、演算部4は、ステップS7における評価結果、防災情報のハザードマップや過去の水害時における対象地域の気象情報、また施設情報に含まれる過去の水害対応記録及び過去の浸水記録等に基づいて、防災行動関連表における水害ステージ及び水害ステージを変更する条件(トリガー)を調整する(ステップS8)。すなわち、演算部4は、ステップS8において防災行動関連表のリードタイムを決定する条件(トリガー)を調整する。
【0046】
そして、演算部4は、ステップS8を経ることによって修正された防災行動関連表に基づいて、水害に対する防災タイムラインを作成する(ステップS9)。防災タイムラインは、水害発生の前段階において医療施設における各部署の誰がどの防災行動(実施項目)をどの水害ステージ(どのタイミング)で行うかを示す行動計画表である。なお、ステップS9は、本実施形態における支援情報作成工程である。
【0047】
演算部4は、防災タイムラインを作成すると、当該防災タイムラインを出力する(ステップS10)。すなわち、演算部4は、防災タイムラインを記憶部2に記憶させるとともに表示部5に出力して画面表示させる。また、演算部4は、操作部3から入力される操作指示に基づいて、防災タイムラインを通信部1に出力して施設サーバCに保存させたり、通信部1を介して外部のプリンタに送信することにより印刷させる。
【0048】
図5は、ステップS9で作成される防災タイムラインの一例である。この防災タイムラインは、各々の水害ステージで行うべき防災行動が情報発信拠点となる施設職員毎に示されている。例えば、情報発信拠点となる施設職員の1人である看護師長は、ステージ1の段階で患者搬送状況の確認及び看護部スタッフとの連絡方法の確認が防災行動として割り当てられており、またステージ2の段階で患者搬送順位の確認が防災行動として割り当てられている。
【0049】
演算部4は、ステップS9で防災タイムラインを作成すると、防災タイムラインに基づく防災訓練の結果を訓練情報として取得する。この訓練情報は、防災担当者(施設職員)が操作部3を操作することによって、あるいは施設サーバCから演算部4に入力される。
【0050】
医療施設では、防災支援装置Aを用いて防災タイムラインを作成すると、適当なタイミングで防災タイムラインに従った防災訓練を実施する。そして、この防災訓練の結果は、施設サーバCに施設情報の1つとして保存され、または操作部3を操作することによって操作情報の1つとして演算部4に入力される。
【0051】
演算部4は、訓練情報の取得指示が操作部3から入力されると、この取得指示に続いて操作部3から入力される訓練情報、または通信部1を介した施設サーバCとの通信によって訓練情報を取得し(ステップS11)、記憶部2に一旦記憶させる。そして、演算部4は、訓練に基づく防災タイムラインの更新が必要か否かを判断する(ステップS12)。
【0052】
演算部4は、ステップS11で取得した訓練情報がステップS9で作成した防災タイムラインとを比較することにより、訓練情報に基づく防災タイムラインの更新の必要性を判断する。そして、演算部4は、ステップS12の判断が「Yes」の場合つまり防災タイムラインの修正が必要な場合、ステップS8を再度実行して水害ステージ及びトリガーを訓練情報に沿うように再調整する。
【0053】
演算部4は、この再調整された水害ステージ及びトリガーに基づいてステップS9を再度実行することにより防災タイムラインを再作成(更新)する。なお、ステップS12の判断が「No」の場合つまり防災タイムラインの修正が必要ない場合には、水害ステージ及びトリガーの再調整及び防災タイムラインを再作成(更新)が実行されることなく、防災行動関連表及び防災タイムラインの作成が終了する。
【0054】
本実施形態によれば、医療施設が存在する対象地域の防災情報及び医療施設の施設情報に基づいて防災行動関連表が作成され、また当該防災行動関連表に基づいて医療施設の水害に対する防災タイムラインが作成される。したがって、本実施形態によれば、従来よりも実用性の高い防災計画の作成を支援することが可能な防災支援装置A及び防災支援装置Aを用いた防災支援方法を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、防災支援情報として防災タイムラインを作成するだけでなく防災行動関連表をも作成する。したがって、本実施形態によれば、医療施設の各施設職員がどの防災行動をどのタイミングで行うべきかを把握できるだけでなく、施設職員同士の連携がどのようになっているのかをも把握できるので、より実用性の高い防災計画の作成を支援することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、地域医療を担う医療施設を防災対象施設とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、医療施設以外の様々な施設に適用することが可能である。
【0057】
(2)上記実施形態では、各種の災害のうち水害に対する防災行動関連表及び防災タイムラインの作成について説明してが、本発明はこれに限定されない。本発明は、発生前の防災行動が可能な災害があれば、水害以外の災害にも適用可能である。
【0058】
(3)上記実施形態では、外部サーバBから防災情報を取得し、また施設サーバCから施設情報を取得したが、本発明はこれに限定されない。防災情報及び施設情報の取得方法には様々な形態が想定されるので、例えば事前に取得して記憶部2に記憶させておいてもよい。また、防災行動関連表の作成に必要な情報(必要情報)を防災情報と施設情報とに区分けすることなく、一体の情報としてもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、防災行動関連表の一例を図4に、また防災タイムラインの一例を図5に示したが、防災行動関連表及び防災タイムラインは、図4及び図5に限定されない。
【符号の説明】
【0060】
A 防災支援装置
B 外部サーバ
C 施設サーバ
1 通信部(施設情報取得部、防災情報取得部)
2 記憶部
3 操作部
4 演算部(支援情報作成部)
5 表示部
図1
図2
図3
図4
図5