(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163975
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】開閉構造
(51)【国際特許分類】
E06B 3/50 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
E06B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075238
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】500345504
【氏名又は名称】株式会社星野民藝
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 主直
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014GB05
2E014GB06
(57)【要約】
【課題】誤って触っても誤動作することが防止できる開閉構造を提供する。
【解決手段】開閉構造は、被取付部である家具本体に取り付けられ、円形状の開口部が形成されたベース板20と、ベース板20に基端部31が連結され、円弧状に形成された羽根板30と、羽根板の先端部32を半径方向に沿って放射状に延びるガイド孔41hにより回転と共に移動させる操作板40とを備えている。そして、羽根板30の先端部32は、ガイド孔41hに移動可能に連結部80により連結されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部に取り付けられ、円形状の開口部が形成されたベース板と、
前記ベース板に基端部が連結され、円弧状に形成された羽根板と、
前記羽根板の先端部を半径方向に沿って放射状に延びるガイド孔により回転と共に移動させる操作板とを備え、
前記羽根板の先端部は、前記ガイド孔に移動可能に連結部により連結された開閉構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記ベース板に形成されたねじ孔から挿入されたねじと、前記ガイド孔を貫通した前記ねじの軸部に設けられた抜け止め部材とを備えた請求項1記載の開閉構造。
【請求項3】
前記軸部には、前記ガイド孔の孔壁に摺動する軸受部材が設けられた請求項2記載の開閉構造。
【請求項4】
前記羽根板は、前記ベース板と連結する前記基端部と、前記操作板と連結する前記先端部との残余が、前記基端部と前記先端部とより薄い薄板状に形成された請求項1から3のいずれかの項に記載の開閉構造。
【請求項5】
前記羽根板の先端部における内周側も、薄板状に形成された請求項4記載の開閉構造。
【請求項6】
前記羽根板が閉じた状態のときに開口部が形成される請求項1記載の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構を用いた開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラの絞りに用いられる絞り機構は、リング状のベース板に円弧状の羽根板の基端部が接続され、リング状に形成された操作板が円周方向に回転すると、操作板に放射状に開設されたガイド孔を羽根板の先端部が移動することで、取り込む光量を調整する。
【0003】
このような絞り機構を、物品を出し入れする扉に使用したものとして、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の歯科用穿削器具の紫外線消毒器は、透明石英ガラス管よりなる保持管の開口端に合わせて消毒器本体前面に、写真機の絞り機構に類似する開閉機構を取り付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載の歯科用穿削器具の紫外線消毒器における開閉機構は、扇形の片の根本部分が同一の内リングに軸支され、この軸支部より外側へ突出する部分に形成した長穴が外リングのピンに係合している。
従って、開閉機構における扇形の片の先端部を外側から内側に向かって押すと、扇形の片が、重なり合う片から外れ、内側に向かって曲がって入り込んでしまう。
【0007】
紫外線消毒器の扉に絞り機構を用いる場合には子供が触れる機会は少ないと思われるが、家具の扉に絞り機構を用いる場合には、家具は一般家庭に設置されるので、子供が触れる機会が多いかと思われる。そうなると、子供がいたずらに扇形の片を押し込んでしまうことがある。
【0008】
そこで本発明は、誤って触っても誤動作することが防止できる開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開閉構造は、被取付部に取り付けられ、円形状の開口部が形成されたベース板と、前記ベース板に基端部が連結され、円弧状に形成された羽根板と、前記羽根板の先端部を半径方向に沿って放射状に延びるガイド孔により回転と共に移動させる操作板とを備え、前記羽根板の先端部は、前記ガイド孔に移動可能に連結部により連結されたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の開閉構造によれば、羽根板がベース板方向に押されても、羽根板の先端部がガイド孔に移動可能に連結部により連結されているため、羽根板が脱落してしまうことが防止できる。
【0011】
前記連結部は、前記ベース板に形成されたねじ孔から挿入されたねじと、前記ガイド孔を貫通した前記ねじの軸部に設けられた抜け止め部材とを備えたものとすることができる。連結部のねじがガイド孔を貫通し、軸部に抜け止め部材が設けられていることで、羽根板がベース板の方向に押されても抜け止め部材が操作板に当って抜けを防止することができる。
【0012】
前記軸部には、前記ガイド孔の孔壁に摺動する軸受部材が設けられたものとすることができる。羽根板の先端部が操作板のガイド孔に案内されて半径方向に移動するときに、軸部には、ガイド孔の孔壁に摺動する軸受部材が設けられているので、ねじの軸部をスムーズに移動させることができる。
【0013】
前記羽根板は、前記ベース板と連結する前記基端部と、前記操作板と連結する前記先端部との残余が、前記基端部と前記先端部とより薄い薄板状に形成されたものとすることができる。羽根板を開くときに、羽根板が重なり合う面積が広くなるが、羽根板の重なり合う部分を薄板部であるため、重なり合う羽根板の厚みを減少させることができる。従って、羽根板の移動に対する抵抗が高くなり、開き難くなることを軽減することができる。
【0014】
前記羽根板の先端部における内周側も、薄板状に形成されたものとすることができる。
羽根板の先端部における内周側の角部が薄板部であるため、基端部を除くそれぞれの羽根板の内周側は均等な厚みの薄板部が重なり合うように見えるので、意匠性を高めることができる。
【0015】
前記羽根板が閉じた状態のときに開口部が形成されるものとすることができる。
そうすることで、開口部から羽根板の向こう側を視認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開閉構造は、羽根板の先端部が操作部に連結部により連結して、羽根板の脱落が防止できるので、誤って触っても誤動作することが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る開閉機構を家具の扉として用いた例を示すものであり、(A)は扉が閉じた状態の正面図、(B)は扉が開いた状態の正面図である。
【
図2】
図1に示す扉からカバー部を取り除いた状態の図であり、(A)は扉が閉じた状態の正面図、(B)は扉が開いた状態の正面図である。
【
図3】
図2に示す扉から操作板を取り除いた状態の図であり、(A)は扉が閉じた状態の正面図、(B)は扉が開いた状態の正面図である。
【
図4】
図2に示す扉のベース板を説明するための図であり、(A)はベース板の正面図、(B)はベース板の側面図である。
【
図5】
図2に示す扉の羽根板を説明するための斜視図である。
【
図6】
図2に示す扉の操作板を説明するための図であり、(A)は操作板の正面図、(B)は操作板の側面図である。
【
図7】
図1に示す扉のカバー部を説明するための図であり、(A)はカバー部の背面図、(B)は操作板の側面図である。
【
図8】羽根板とベース板とを連結する連結部と、羽根板と操作板とを連結する連結部とを説明するための一部拡大図である。
【
図9】
図8に示す羽根板と操作板とを連結する連結部を説明するための拡大図である。
【
図10】
図9に示す連結部を説明するための透視した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る開閉構造を図面に基づいて説明する。
図1(A)および同図(B)に示す開閉構造は、家具の扉に絞り機構を用いた一例である。家具としては収納箱、例えば、ワインセラーや、仏壇とすることができる。なお、
図1~
図3においては、扉のみを図示しており、物品を収納する箱状の収納部は図示していない。
本実施の形態に係る開閉構造を用いた扉10は、木材により形成されている。
図1から
図3に示すように、扉10は、リング状のベース板20と、回転に伴い開閉する羽根板30と、羽根板30の開閉動作を案内する操作板40と、羽根板30と操作板40とが収納されたベース板20を覆うカバー部50とを備えている。
【0019】
図3および
図4に示すように、ベース板20は、被取付部となる家具の箱部の開口部に取り付けられるものである。ベース板20は、収納のためや取り出しのための円形状の開口部が形成されたリング状(ドーナツ状)のベース本体部21と、ベース本体部21の外周縁から起立した外周壁22が形成されている。外周壁22には、後述するハンドル部の回転を邪魔しないよう90°の範囲に切り欠き部22aが形成されている。
外周壁22には、操作板40を配置させ、操作板40とベース本体部21との間に隙間を確保する段差部22s(
図4(A)および
図8参照)が形成されている。本実施の形態では、ベース板20の内径が約450mmであり、外径が約600mmに形成されている。
【0020】
羽根板30は、円弧状に形成されている。本実施の形態では、羽根板30を基準位置となるベース板20から20°を傾斜角度として操作板40と連結することで、18枚の羽根板30により開閉動作する。羽根板30は、内周側がΦ450mmであり、外周側がΦ550mmである。
図3および
図5に示す羽根板30は、ベース板20と連結する基端部31と、操作板40と連結する先端部32との残余の範囲における一面側が切削されることで薄板部33が形成されている。
【0021】
図5に示すように、本実施の形態では、ベース板20との連結位置となる基端部31は、幅方向全体が板厚部31tに形成されており、操作板40により案内されて移動する先端部32は、内周側の角部が薄板部33であり、外周側の角部が板厚部32tに形成されている。
板厚部31t,32tの厚みは、約3mmに形成されている。薄板部33の厚みは、約約1.5mmに形成されている。
【0022】
基端部31の内周側には、ベース板20と連結するための連結部70(
図4(A)参照)が配置される。また、先端部32の外周側には、操作板40と連結するための連結部80(
図3参照)が配置される。
【0023】
図2および
図6に示すように、操作板40は、リング状(ドーナツ状)に形成された操作本体部41と、操作者が操作本体部41を回転させるためのハンドル部42とを備えている。操作本体部41には、半径方向に沿って円中心から放射状に延びる長孔によるガイド孔41hが形成されている。ハンドル部42は、操作本体部41の円周面から外方へ向かって延びるように取り付けられている。
【0024】
図1および
図7に示すように、カバー部50は、リング状(ドーナツ状)に形成されたカバー本体部51と、カバー本体部51の外周縁から起立した外周壁52と、内周縁から起立した内周縁から起立した内周壁53とにより、環状溝54とが形成されている。
【0025】
このようにして、ベース板20と羽根板30と操作板40とにより絞り構造が構成されている。
【0026】
ここで、ベース板20と羽根板30との連結構造、および羽根板30と操作板40との連結構造について図面に基づいて説明する。
ベース板20と羽根板30との連結構造について、本実施の形態では、羽根板30とベース板20との連結位置に配置された連結部70は、
図8に示すように、ねじ71(平ねじ)による軸部71sがベース板20に設けられ、羽根板30に軸部71sが挿入される軸受孔34が形成されている。反対に、羽根板30に軸部が設けられ、ベース板20に軸受孔が形成されていてもよい。
【0027】
なお、本実施の形態では、軸部71sには、ねじの頭部を受けるワッシャー71wと、ねじの抜け止めするナット71nを備えている。
【0028】
羽根板30と操作板40との連結構造について、本実施の形態では、ガイド孔41hに位置する連結部80は、
図9に示すように、ガイド孔41hを移動可能に連結するものである。連結部80は、ベース板20のねじ孔の開口部に形成された皿穴(ざぐり)に頭部81tが収納され、軸部81sが操作板40のガイド孔41hを貫通する平ねじによるねじ81を備えている。
【0029】
軸部81sは、ワッシャー82を介してガイド孔41hに挿入されている。また、軸部81sには軸受部材としてベアリング83が設けられている。ベアリング83は、内輪が軸部81sを貫通させることができ、外輪がガイド孔41hの孔壁と摺動するサイズに形成されている。本実施の形態では、ベアリング83を2段重ねて軸部81sに設けられているが、ベアリングの外輪の幅とガイド孔41hの孔壁との関係により、十分にガイド孔41h内を安定して移動可能とすることができれば、ベアリングは1個でもよいし、3個以上を重ねてもよい。
【0030】
軸部81sの先端部には、ワッシャー84を介してナット85が、ねじ81の抜け止め部材して設けられている。
【0031】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る扉10の使用状態について図面に基づいて説明する。
図1(A)に示すように扉10は閉じた状態である。扉10が閉じた状態であるが、羽根板30の重なり合いによって中央部はわずかに開いた状態であり、開口部11ができる。従って、扉10を閉めた状態でも、中の状態を把握することができる。例えば、扉10を仏壇に用いたときには、扉10が閉まった状態でも、正面に位置する仏像等の姿を外部から視認できる。
【0032】
使用者は、操作板40のハンドル部42を掴み、操作本体部41を回転させる。
図1(A)では、反時計回りに回転させる。操作板40が回転しても、羽根板30の基端部31はベース板20との連結位置から移動しない。しかし、羽根板30の先端部32は、操作板40に連結しているため、操作板40の回転と共に、羽根板30の先端部32が円周方向に移動しながらガイド孔41hに沿って半径方向に移動する。そうすることで、羽根板30の基端部31を中心に外側に向かって円弧を描くように羽根板30が移動する。
【0033】
羽根板30の先端部32は、連結部80により操作板40に連結しており、操作板40のガイド孔41hの孔壁にはベアリング83が摺動しているので、大きな抵抗を伴うことなくスムーズにねじ81がガイド孔41hを移動することができる。
【0034】
図1から
図3に示すように、羽根板30が開きながら、ベース板20と操作板40との間に移動すると、羽根板30が重なり合う面積が広くなる。しかし、羽根板30の重なり合う部分は連結部分(板厚部31t,32t(
図5参照))より薄板状に形成された薄板部33であるため、羽根板30同士が重なり合う部分が増加しても、重なり合う羽根板30の厚みを減少させることができる。従って、羽根板30同士が重なり合い、重なり合う羽根板30の厚みが膨れ上がり、操作板40を押し上げることで、羽根板30の移動に対する抵抗が高くなり、開き難くなることを軽減することができる。
【0035】
羽根板30が開き、ベース板20と操作板40との間に収納されると、重なり合った羽根板30の長さ方向に沿った端面が扉10の開口部から見える。
図5に示すように、羽根板30の先端部32は、内周側の角部が薄板部33であるため、基端部31を除くそれぞれの羽根板30の内周側は均等な厚みの薄板部33が重なり合うように見える。従って、
図1に示す扉10の意匠性を高めることができる。
【0036】
図1(A)、
図2(A)および
図3(A)に示すように羽根板30の先端部32が中心に寄った状態となることで扉10が閉じた状態のときに、螺旋状に巻いた羽根板30の先端部を奥側に押してしまうことがある。
図9に示すように羽根板30の先端部32は、連結部80により操作板40にしっかりと連結しており、ねじ81に抜け止め部材としてのナット85が設けられている。
【0037】
従って、羽根板30がベース板20方向に押され、ねじ81の軸部81sが操作板40のガイド孔41hから外れようとしても、ナット85が操作板40に当って軸部81sの抜けを防止する。
そのため、扉10は、羽根板30の脱落が防止できるので、誤って触っても誤動作することが防止できる。
【0038】
なお、本実施の形態では、本発明の開閉機構を家具の扉として用いたものであるが、本発明の開閉機構は、被取付部を壁面部または屋根部とした窓の明り取りとしても用いることができきる。
【0039】
また、
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る扉10では、閉じた状態のときに、中央部に開口部11ができるが、この開口部11を塞ぎたい場合には、家具の奥壁から扉10の方向に延びるように設置された引き出しの前板により塞ぐことができる。また、その他として、扉10が閉じた状態のときに中央部の開口部11に位置し、羽根板30が開くと共に、中央部からベース板20の後ろ側に位置する可動板とすることも可能である。更に、奥壁から前方に延びたり、天井板から垂下したりする支持棒に繋がって中央部に位置する固定板とすることも可能である。
【0040】
更に、
図1に示すハンドル部42は、カバー部50の外周から外側にはみ出るように配置されているが、カバー部50に円弧状の切り欠きを形成して、切り欠きからハンドル部を突出させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の開閉機構は、扉として家具に用いたり、窓の明り取りとして天窓は壁面に取り付けたりすることに好適である。
【符号の説明】
【0042】
10 扉
11 開口部
20 ベース板
21 ベース本体部
22 外周壁
22a 切り欠き部
22s 段差部
30 羽根板
31 基端部
31t 板厚部
32 先端部
32t 板厚部
33 薄板部
34 軸受孔
40 操作板
41 操作本体部
41h ガイド孔
42 ハンドル部
50 カバー部
51 カバー本体部
52 外周壁
53 内周壁
54 環状溝
70 連結部
71 ねじ
71s 軸部
71n ナット
71w ワッシャー
80 連結部
81 ねじ
81t 頭部
81s 軸部
82 ワッシャー
83 ベアリング
84 ワッシャー
85 ナット