(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163978
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20231102BHJP
H02S 30/20 20140101ALI20231102BHJP
H02S 30/10 20140101ALI20231102BHJP
H02S 20/22 20140101ALI20231102BHJP
H02S 20/26 20140101ALI20231102BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
E04D13/18
H02S30/20
H02S30/10
H02S20/22
H02S20/26
E04F13/08 Z ETD
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075243
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】522173778
【氏名又は名称】宮里 直也
(71)【出願人】
【識別番号】522173789
【氏名又は名称】株式会社TRA・K
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】宮里 直也
(72)【発明者】
【氏名】宋 浩
(72)【発明者】
【氏名】法月 篤
(72)【発明者】
【氏名】宮里 光一
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬士
(72)【発明者】
【氏名】田川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 仁
(72)【発明者】
【氏名】永峰 馨
【テーマコード(参考)】
2E108
2E110
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM05
2E108NN07
2E110AA41
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110CA04
2E110CC04
2E110CC17
2E110CC22
2E110DC12
5F151JA09
5F151JA13
5F251JA09
5F251JA13
(57)【要約】
【課題】屋根又は外壁の表面形状に拘わらず、フレキシブル太陽電池モジュールが所定の発電量を得ることができ、大型の場合でも搬入性と施工性を向上できる太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】太陽光発電システム1は、屋根9又は外壁の外側に配置されて使用される。太陽光発電システム1は、可撓性を有するフレキシブル太陽電池モジュール2と、フレキシブル太陽電池モジュール2が取り付けられる膜材3と、膜材3を支持する複数の支持線状体4と、複数の支持線状体4を所定の形状に維持するように固定される接続金具5とを備える。太陽光発電システム1では、複数の支持線状体4が所定の形状に維持されることにより、膜材3が所定の形状に保持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根又は外壁の外側に配置されて使用される太陽光発電システムであって、
可撓性を有するフレキシブル太陽電池モジュールと
前記フレキシブル太陽電池モジュールが取り付けられる膜材と、
前記膜材を支持し、可撓性を有する複数の支持線状体と、
前記複数の支持線状体を所定の形状に維持するように固定される接続金具と、を備え、
前記複数の支持線状体が所定の形状に維持されることにより、前記膜材が所定の形状に保持される太陽光発電システム。
【請求項2】
前記膜材は、前記複数の支持線状体を挿通可能な貫通路が形成された挿通部を有し、
前記複数の支持線状体は、前記貫通路に挿通されていない部分が前記接続金具に係止される、請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記屋根面又は外壁面において前記複数の支持線状体が延設された一方向に対して前記一方向と異なる方向に延設され、可撓性を有する押圧線状体をさらに備え、
前記複数の支持線状体は、前記膜材と前記屋根又は外壁との間に配置された状態で前記膜材を支持し、
前記押圧線状体は、前記膜材における前記複数の支持線状体が配置された裏面側と反対側の表面側に配置され、前記複数の支持線状体との間に前記膜材を挟み込むことにより前記膜材を所定の形状に保持する、請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記押圧線状体を所定の形状に維持するように固定される押圧線状体接続金具をさらに備え、
前記膜材は、前記押圧線状体接続金具を挿通可能に形成された接続孔を有し、
前記押圧線状体接続金具は、前記接続孔を通じて前記膜材の前記表面側に突出した状態で前記押圧線状体を係止する、請求項3に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記接続金具は、地面に立設された少なくとも2つの支柱に取り付けられており、
前記複数の支持線状体は、前記接続金具により、前記少なくとも2つの支柱のうち一方の支柱と他方の支柱との間に、前記屋根又は外壁の外側を通過するように張設される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記複数の支持線状体により支持された前記膜材が、巻き取り及び繰り出しが可能なロールスクリーン状に形成されている、請求項1に記載の太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図20に示すように、可撓性を有するフィルム状の基板に光電変換層が成膜された太陽電池セル511と、太陽電池セル511を封止するための封止材512及び樹脂フィルム513と、を備えたフレキシブル太陽電池モジュール500が開示されている。また、特許文献2には、
図21に示すように、枠部材608、連結金具605、固定金具606を備え太陽電池モジュール602を支持する支持構造が形成された太陽光発電システム600が開示されている。この太陽光発電システム600では、太陽電池モジュール602を支持するための支持部である枠部材608が複数のアルミ部材により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-4835号公報
【特許文献2】特開2014-15835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフレキシブル太陽電池モジュール500は建造物の屋根又は外壁に取り付けられて使用される。しかしながら、このフレキシブル太陽電池モジュール500が、凹凸面のある屋根又は外壁に取り付けられる場合には、フレキシブル太陽電池モジュール500が曲がってしまい、所定の発電量を得られないという課題がある。
【0005】
また、特許文献2のような大型の太陽光発電システム600を屋根に取り付ける場合には、屋根の上に複数のアルミ部材を各々搬入し、屋根上にて枠部材608を組み立てた後に、枠部材608に太陽電池モジュール602を取り付ける必要がある。このため、大型の太陽電池モジュール602を屋根に設置する場合には、アルミ部材の数が多くなるだけでなく、屋根の上での組立作業が必要となり、施工に多大な手間と時間を要する。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、屋根又は外壁の表面形状に拘わらずフレキシブル太陽電池モジュールが所定の発電量を得ることができ、大型の場合でも搬入性と施工性を向上できる太陽光発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における太陽光発電システムは、屋根又は外壁の外側に配置されて使用される太陽光発電システムである。前記太陽光発電システムは、可撓性を有するフレキシブル太陽電池モジュールと、前記フレキシブル太陽電池モジュールが取り付けられる膜材と、前記膜材を支持し可撓性を有する複数の支持線状体と、前記複数を所定の形状に維持するように固定される接続金具と、を備えている。前記太陽光発電システムでは、前記複数の支持線状体が所定の形状に維持されることにより、前記膜材が所定の形状に保持される。
【0008】
このように構成された太陽光発電システムでは、所定の形状に維持された複数の支持線状体により膜材が支持されることにより、フレキシブル太陽電池モジュールが取り付けられた膜材が支持線状体に支持されることにより所定の形状に保持される。このため、屋根又は外壁の表面形状に拘わらず、所定の形状が保持されたフレキシブル太陽電池モジュールにより所定の発電量を得ることができる。
【0009】
また、膜材、可撓性を有する支持線状体及び接続金具により構成された支持構造は、複数のアルミ部材により構成された支持構造と比べて重量が軽いため、構造物の屋根などの設置場所により容易に搬入できる。また、太陽光発電システムの支持構造は、複数のアルミ部材により構成された支持構造と比べて構成が簡単であり、組立てが容易なため、施工作業の効率を向上できる。
【0010】
さらに、太陽光発電システムの支持構造は、可撓性を有する支持線状体と膜材により比較的軽く柔軟に構成されているため、比較的大きな形状のフレキシブル太陽電池モジュールが屋根などに取り付けられる場合でも、支持線状体と膜材を予め組み立ててロール状に巻いた状態で、一度に屋根に搬入することができる。これにより、支持構造を構成する複数の部材が、各々屋根に搬入されてから組み立てられる場合と比べて、施工作業の効率をさらに向上できる。
【0011】
前記太陽光発電システムにおいて、前記膜材は、前記複数の支持線状体を挿通可能な貫通路が形成された挿通部を有していてもよく、前記複数の支持線状体は、前記貫通路に挿通されていない部分が前記接続金具に係止されてもよい。
【0012】
この態様では、支持線状体が挿通部の貫通路に挿通された状態で、膜材が支持線状体により支持されるとともに、支持線状体における貫通路に挿通されていない部分が固定金具に係止される。このため、比較的簡易な構成により、接続金具に係止された支持線状体により膜材を支持することができる。
【0013】
前記太陽光発電システムは、前記屋根面又は外壁面において前記複数の支持線状体が延設された一方向に対して前記一方向と異なる方向に延設され可撓性を有する押圧線状体をさらに備えてもよい。前記太陽光発電システムにおいて、前記複数の支持線状体は、前記膜材と前記屋根又は外壁との間に配置された状態で前記膜材を支持してもよく、前記押圧線状体は、前記膜材における前記複数の支持線状体が配置された裏面側と反対側の表面側に配置されてもよく、前記複数の支持線状体との間に前記膜材を挟み込むことにより前記膜材を所定の形状に保持してもよい。
【0014】
この態様では、膜材が、膜材の裏面側に配置された複数の支持線状体と、膜材の表面側に配置された押圧線状体と、に挟み込まれた状態で、支持される。このため、膜材と屋根又は外壁との間に風が吹き込んだ場合でも、支持線状体によって膜材を支持されるだけでなく、押圧線状体によって表面側から膜材を押さえることができる。したがって、膜材が支持線状体のみによって支持される場合と比べて、膜材の裏面側に吹き込こんだ風による膜材の変形や飛散を抑制できる。
【0015】
前記太陽光発電システムは、前記押圧線状体を所定の形状に維持するように固定される押圧線状体接続金具をさらに備えてもよい。前記太陽光発電システムにおいて、前記膜材は、前記押圧線状体接続金具を前記裏面側から前記表面側に挿通可能に形成された接続孔を有してもよく、前記押圧線状体接続金具は、前記接続孔を通じて前記膜材の前記表面側に突出した状態で前記押圧線状体を係止してもよい。
【0016】
この態様では、押圧線状体が、膜材の接続孔を通じて膜材の表面側に突出した状態の押圧線状体接続金具により係止される。このため、膜材の表面側に配置されている押圧線状体を、比較的簡単な構成により屋根又は外壁に固定できる。
【0017】
前記太陽光発電システムにおいて、前記接続金具は、地面に立設された少なくとも2つの支柱に取り付けられていてもよく、前記複数の支持線状体は、前記接続金具により、前記少なくとも2つの支柱のうち一方の支柱と他方の支柱との間に、前記屋根又は外壁の外側を通過するように張設されてもよい。
【0018】
この態様では、支持線状体が、少なくとも2つの支柱に取り付けられた接続金具により、屋根又は外壁の外側を通過するようにして、少なくとも2つ支柱の間に張設される。このため、接続金具が屋根又は外壁に取り付けられない場合で、接続金具を支柱に取り付けることにより、支持線状体を屋根又は外壁の外側に配置することができる。
【0019】
前記太陽光発電システムにおいて、前記複数の支持線状体により支持された前記膜材が、巻き取り及び繰り出しが可能なロールスクリーン状に形成されていてもよい。
【0020】
この態様では、支持線状体に支持された膜材が、開閉状態が切り替え可能なロールスクリーン状に形成されているため、時間帯や気候条件等に応じて開閉状態を切り替えて使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示における太陽光発電システムによれば、屋根又は外壁の表面形状に拘わらずフレキシブル太陽電池モジュールが所定の発電量を得ることができ、大型の場合でも搬入性と施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る太陽光発電システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1の太陽光発電システムの(a)平面図と(b)正面図である。
【
図3】
図1の太陽光発電システムの(a)挿通部を示す斜視図と、(b)挿通部の変形例を示す斜視図である。
【
図4】
図1の太陽光発電システムの端部接続金具を示す(a)正面図と(b)側面図である。
【
図5】
図1の太陽光発電システムの中間部接続金具を示す(a)正面図と(b)側面図である。
【
図6】
図1の太陽光発電システムの押圧線状体端部金具を示す(a)正面図と(b)側面図である。
【
図7】第2実施形態に係る太陽光発電システムの(a)平面図と(b)正面図である。
【
図8】
図7の太陽光発電システムの押圧線状体接続金具を示す(a)正面図と(b)側面図と(c)平面図である。
【
図9】第3実施形態に係る太陽光発電システムの平面図である。
【
図10】第4実施形態に係る太陽光発電システムを示す正面図である。
【
図12】
図10の太陽光発電システムの接続金具を説明するための(a)平面図と(b)側面図である。
【
図15】
図10の太陽光発電システムの接続金具を説明するための(a)側面図と(b)平面図である。
【
図16】
図15の接続金具の変形例を示す(a)側面図と(b)平面図である。
【
図17】
図15の接続金具の変形例を示す(a)側面図と(b)平面図である。
【
図18】第5実施形態に係る太陽光発電システムを示す(a)正面図と(b)側面図である。
【
図19】
図18の太陽光発電システムの下端部を説明するための図である。
【
図20】特許文献1のフレキシブル太陽電池モジュールの一部を示す概略的な断面図である。
【
図21】特許文献2の太陽光発電システムの一部を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本考案の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の太陽光発電システム1は、屋根9に取り付けることにより屋根9の外側に配置された状態で使用される。太陽光発電システム1は、可撓性を有するフレキシブル太陽電池モジュール2と、フレキシブル太陽電池モジュール2が取り付けられる膜材3と、膜材3を支持し可撓性を有する複数の支持線状体4と、複数の支持線状体4を所定の形状に維持する接続金具5と、を備えている。この太陽光発電システム1では、複数の支持線状体4が所定の形状に維持されることにより、膜材3が所定の形状に保持される。これにより、フレキシブル太陽電池モジュール2は所定の形状に維持される。
【0025】
屋根9は、複数の折り曲げられた板金を接続することにより形成された縦葺きの折板屋根であり、水平面に対して所定の角度をなして一方向に延びる溝が前記一方向に直交する方向に複数並設された凹凸面を有している。以下の説明では、前記一方向を長手方向と称し、水平面において長手方向に対して直交する方向を幅方向と称し、長手方向における水の流れ方向の上流側を水上側、下流側を水下側と称する。
【0026】
フレキシブル太陽電池モジュール2は、可撓性を有する矩形状のフィルム基板と、この基板上に配置された太陽光を光電変換する太陽電池セルと、光電変換により得た電気を外部に伝達する出力部と、により構成されている(いずれも図示省略)。以下の説明では、フレキシブル太陽電池モジュール2が屋根9に設置されたときに、フレキシブル太陽電池モジュール2における屋根9と対向する面を下面と称し、下面と反対の面を上面と称する。フレキシブル太陽電池モジュール2の上面には、太陽電池セルにより図略の受光面が形成されている。フレキシブル太陽電池モジュール2は、受光面に光を受けることにより電気を得るように構成されている。
【0027】
フレキシブル太陽電池モジュール2は、厚みの薄い矩形状に形成されるとともにフレキシブル太陽電池モジュール2の下面が膜材3の上面に当接するように配置されて、両面テープにより膜材3に取り付けられている。膜材3の上面には、
図2(a)(b)に示すように、幅方向に長い複数のフレキシブル太陽電池モジュール2が、長手方向に互いに間隔をあけて並設されている。なお、
図2(a)に、3つのフレキシブル太陽電池モジュール2が配置された膜材3を示すが、膜材3には、3つ以外の数のフレキシブル太陽電池モジュール2が取り付けられてもよい。
【0028】
膜材3は、厚みの薄い樹脂製の部材により矩形状に形成されており、膜材3の上面は、フレキシブル太陽電池モジュール2を取り付けるための支持面3aとなっている。膜材3は、複数の支持線状体4によって所定の張力が付与された状態で、複数の支持線状体4により支持されている。膜材の素材には、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂が採用される。膜材3は、複数の支持線状体4により所定の張力が付与されることにより姿勢が保持され、膜材3の支持面3aは、ほぼ平らになる。
【0029】
複数の支持線状体4は、たとえば、軽量であり可撓性を有する樹脂製ロープや、軽量であり可撓性を有し高強度な鋼線や炭素繊維材やアラミド繊維を撚り合わせて形成されたワイヤロープ、可撓性を有する鋼線材により構成される。前記鋼線材としては、たとえば、直径7.1mm以下の鋼線材が採用される。
【0030】
複数の支持線状体4は、膜材3の長手方向の長さと同等かそれよりも長く、両端部が膜材3から水上側及び水下側に突き出るように、膜材3の下面側に配置されている。複数の支持線状体4はそれぞれ、接続金具5により所定の張力が付与された状態で屋根9に固定されており、所定の張力に耐え得る強度を有している。複数の支持線状体4は、所定の張力が付与されることにより、屋根9に対して長手方向に延びる形状が維持される。
図2(a)の膜材3は、5つの支持線状体4によって支持されている。なお、膜材3は、5つ以外の数の支持線状体4によって支持されてもよい。
【0031】
太陽光発電システム1は、膜材3を上面側から押さえるためにの可撓性を有する押圧線状体6を備えている。押圧線状体6は、支持線状体4と同様に、たとえば、軽量であり可撓性を有し高強度な鋼線や炭素繊維材やアラミド繊維を撚り合わせて形成されたワイヤロープ、可撓性を有する鋼線材により構成される。前記鋼線材としては、たとえば、直径7.1mm以下の鋼線材が採用される。
【0032】
押圧線状体6は、膜材3の上面側において、フレキシブル太陽電池モジュール2が配置されていない領域(すなわち、複数のフレキシブル太陽電池モジュール2同士の間)に、支持線状体4の延設方向(長手方向)に対して直交する方向(幅方向)に延設される。なお、押圧線状体6は、支持線状体4の延設方向に対して直交していなくてもよい。たとえば、押圧線状体6は、支持線状体4の延設方向と、支持線状体4の延設方向に対する直交方向との間の方向に延設されてもよい。
【0033】
膜材3は、膜材3の裏面側の支持線状体4と、膜材3の表面側の押圧線状体6とに挟み込まれる。押圧線状体6は、膜材3に固定されておらず、膜材3の幅方向の長さよりも長い形状であり、両端部が膜材3の幅方向の両端部から突き出して配置されている。なお、押圧線状体6は、押圧線状体6と膜材3との間に塗布された接着剤等により膜材3に固定されていてもよい。また、
図2(a)の膜材3の上面側には、2つの押圧線状体6が配置されているが、これに限らない。たとえば、膜材3の上面側には、2つ以外の数の押圧線状体6が配置されてもよい。
【0034】
膜材3には、
図3(a)に示すように、膜材3を支持線状体4に係止するため、支持線状体4を挿通可能な貫通路32を形成する挿通部31が設けられている。挿通部31は、各支持線状体4に対応して設けられる。挿通部31は、長手方向に長い膜片33を膜材3との間に空間を形成するように膜材3に取り付けることにより形成される。膜材3と膜片33との間の空間は貫通路32として機能し、長手方向の両端に開口する。
【0035】
また、複数の挿通部31のうち膜材3の幅方向における両端側に配置された挿通部31は、
図3(b)に示すように、膜材3の幅方向の両端部において膜材3に連続するように設けられた膜材縁部34を下面側に折り返すことにより形成されてもよい。この場合、折り返された膜材縁部34と膜材3との間の空間が貫通路32として機能し、膜材3を支持線状体4に係止するため挿通部31が形成される。
【0036】
接続金具5は、
図2(a)(b)に示すように、屋根9に固定されている。接続金具5には、各支持線状体4の両端部それぞれを屋根9に固定するための複数の端部接続金具51と、各支持線状体4の中間の部位を屋根9に固定するための複数の中間部接続金具52と、が含まれる。
【0037】
端部接続金具51は、
図4(a)(b)に示すように、各支持線状体4の端部に設けられたネジエンド型のエンドクランプ41を係止するための係止部53と、係止部53を屋根9に固定するための固定部54と、を備える。固定部54は、屋根9の凸面9aに沿うような凸形状を形成するような一対の脚部を有し、凸面9aに当接した状態で凸面9aに対してボルト止めされる。係止部53は、固定部54の上面から上側に延設されている。エンドクランプ41には、エンドクランプ41を係止部53に固定するためのクランプナット42が嵌め込まれている。
【0038】
係止部53には、長手方向に貫通する貫通孔55が形成されている。エンドクランプ41が貫通孔55に挿通した状態で、クランプナット42を所定の位置まで締めることにより、エンドクランプ41が係止部53に固定される。このとき、クランプナット42の締め具合を調節することにより、各支持線状体4に付与される張力を調節できる。
【0039】
中間部接続金具52は、
図5(a)(b)に示すように、各支持線状体4における貫通路32に挿通されていない部分を係止する係止部56と、係止部56を屋根9に固定するための固定部54と、を備える。固定部54は、端部接続金具51の固定部54と同様に構成されている。
【0040】
係止部56は、固定部54の上側に配置されたブロック状の基部57と、基部57の上面に配置され基部57との間に支持線状体4を挟み込むU字金具58と、を含んでいる。係止部56は、基部57とU字金具58との間に支持線状体4を挟み込むことにより、支持線状体4を係止する。このとき、支持線状体4は、幅方向及び上下方向の移動が規制され且つ長手方向の移動が許容される。支持線状体4は、支持線状体4における線状体が露出している露出部分4aが係止部56に係止された状態で、中間部接続金具52に支持される。
【0041】
中間部接続金具52は、
図2(a)に示すように、支持線状体4と押圧線状体6とが交差する位置に配置されている。これにより、中間部接続金具52に支えられた支持線状体4と押圧線状体6との間に膜材3を挟み込むことができる。なお、中間部接続金具52の位置は、支持線状体4と押圧線状体6とが交差する位置に配置されていなくてもよく、たとえば、フレキシブル太陽電池モジュール2の下に配置されてもよい。
【0042】
太陽光発電システム1は、
図2(a)(b)及び
図6(a)(b)に示すように、屋根9に固定されており、押圧線状体6を所定の形状に維持するように押圧線状体6を屋根9に固定する押圧線状体端部金具7をさらに備える。押圧線状体端部金具7は、各押圧線状体6の両端部に固定されたネジエンド型のエンドクランプ41を屋根9に固定するものであり、押圧線状体6のエンドクランプ41を挿通させる貫通孔55を有する係止部53と、係止部53を屋根9に固定する固定部54とを含む。ただし、押圧線状体端部金具7は、貫通孔55が幅方向に延びて形成されている点において、端部接続金具51とは異なっている。各押圧線状体6は、押圧線状体端部金具7により、所定の張力が付与された状態で所定の形状に維持されるように屋根9に固定される。
【0043】
(作用効果)
このように構成された太陽光発電システム1では、屋根9に固定された可撓性を有する複数の支持線状体4によって膜材3が支持されることにより、フレキシブル太陽電池モジュール2が取り付けられた膜材3が所定の形状に保持される。このため、屋根9の表面形状に拘わらず、接続金具5と複数の支持線状体4と膜材3とにより、フレキシブル太陽電池モジュール2が所定の形状に維持されるため、フレキシブル太陽電池モジュール2は所定の発電量を得ることができる。
【0044】
また、膜材3、支持線状体4及び接続金具5により構成された支持構造は、複数のアルミ部材により構成された支持構造と比べて重量が軽いため、構造物の屋根などの設置場所により容易に搬入できる。また、太陽光発電システム1の支持構造は、複数のアルミ部材により構成された支持構造と比べて構成が簡単であり、組立てが容易なため、施工作業の効率を向上できる。
【0045】
さらに、太陽光発電システム1の支持構造は、支持線状体4と膜材3により比較的軽く可撓性を有しているため、比較的大きな形状のフレキシブル太陽電池モジュール2を屋根9に取り付けられる場合でも、支持線状体4と膜材3とを予め組み立ててロール状に巻いた状態で、一度に屋根9に搬入することができる。これにより、支持構造を構成する複数の部材を各々屋根9に搬入してから組み立てる場合と比べて、施工作業の効率をさらに向上できる。
【0046】
また、複数の支持線状体4が膜材3の挿通部31の貫通路32に挿通された状態で、膜材3が複数の支持線状体4に支持される。これにより、比較的簡易な構成により、複数の支持線状体4が膜材3を支持できる。
【0047】
また、膜材3が、膜材3の裏面側に配置された複数の支持線状体4と、膜材3の表面側に配置された押圧線状体6と、に挟み込まれた状態で支持される。このため、膜材3と屋根9との間に風が吹き込んだ場合でも、支持線状体4によって膜材を支持されるだけでなく、押圧線状体6によって表面側から膜材3を押さえることができる。したがって、膜材3が支持線状体4のみによって支持される場合と比べて、膜材3の裏面側に吹き込こんだ風による膜材3の変形や飛散を抑制できる。
【0048】
(第1実施形態の変形例)
なお、太陽光発電システム1は屋根9に取り付けて使用されるが、これに限らない。たとえば、太陽光発電システム1は構造物の外壁等に取り付けられて使用されてもよい。
【0049】
また、フレキシブル太陽電池モジュール2は、膜材3の上面に両面テープにより接合されているが、これに限らない。たとえば、フレキシブル太陽電池モジュール2は、接着剤または面ファスナーにより膜材3に取り付けられてもよいし、フレキシブル太陽電池モジュール2の一部が膜材3の上面に設けられたポケット内に係止されることにより膜材3に取り付けられてもよい。
【0050】
また、フレキシブル太陽電池モジュール2は、フレキシブル太陽電池モジュール2が膜材3上に印刷または塗布されて形成されることにより膜材3に取り付けられてもよい。
【0051】
また、各支持線状体4及び各押圧線状体6の両端部は、
図4に示すようなネジエンド型のエンドクランプ41により端末加工が施されているが、これに限らない。たとえば、各線状体の端部は、ソケット型やアイクランプ型のエンドクランプ等により端末加工が施されてもよい。その場合、端部接続金具51や押圧線状体端部金具7は、各線状体の端部の形状に対応して形成されてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る太陽光発電システム1は、
図7(a)(b)に示すように、押圧線状体6の中間部を屋根9に固定するための押圧線状体接続金具65を有している点において、第1実施形態に係る太陽光発電システム1とは異なっている。押圧線状体接続金具65は、押圧線状体6と支持線状体4との交点のうちのいずれかの交点に配置されている。膜材3には、押圧線状体6の中間部を押圧線状体接続金具65に係止するために、押圧線状体接続金具65を裏面から表面に挿通させる接続孔66が形成されている。
【0053】
押圧線状体接続金具65は、
図8(a)(b)(c)に示すように、接続孔66を通じて膜材3の上面側に突出した状態で、押圧線状体6を係止するための押圧線状体係止部67と、押圧線状体係止部67に接続されており支持線状体4を係止するための本体部68と、本体部68を屋根9に固定する固定部69と、を有している。本体部68は、固定部69の上側に配置されたブロック状であり、本体部68の一側面(
図8(a)における右側面)において支持線状体4を配設するための長手方向に延びる溝70が形成されている。押圧線状体接続金具65において、支持線状体4が溝70内に配置されることにより、支持線状体4の上下方向の移動が規制される。
【0054】
本体部68の上部は、接続孔66を通過して膜材3の上面側に突き出している。押圧線状体係止部67は、本体部68の上側に配置されたU字金具により構成されている。このU字金具は、本体部68の上面との間に押圧線状体6を挟み込むように構成されている。押圧線状体6がU字金具と本体部68の上面に挟み込まれることにより、押圧線状体6の上下方向及び長手方向の移動が規制された状態で。押圧線状体6は押圧線状体接続金具65に固定される。
【0055】
このように構成された太陽光発電システム1では、押圧線状体6が、膜材3の接続孔66を通じて膜材3の表面側に突出した押圧線状体接続金具65の押圧線状体係止部67に係止される。このため、膜材3の表面側に配置されている押圧線状体6を、比較的簡単な構成により屋根9に固定できる。
【0056】
なお、第2実施形態に係る太陽光発電システム1では、
図7(a)(b)に示すように、押圧線状体6と支持線状体4との交点のうちの2つの交点に押圧線状体接続金具65が配置されているが、これに限らない。たとえば、押圧線状体接続金具65は、押圧線状体6と支持線状体4との交点のうちの1つ又は3つの交点に配置されてもよい。膜材3には、複数の押圧線状体接続金具65に応じた数の接続孔66が形成される。
【0057】
また、押圧線状体接続金具65は、押圧線状体6に対応した位置であり且つ押圧線状体6と支持線状体4との交点以外の位置に配置されてもよい。この場合、押圧線状体接続金具65における支持線状体4を係止するための本体部68及び溝70が省略される。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る太陽光発電システム1は、
図9に示すように、押圧線状体6及び押圧線状体端部金具7が省略され、膜材3が複数の支持線状体4のみにより支持されている点において、第1実施形態に係る太陽光発電システム1とは異なっている。
【0059】
本実施形態では、押圧線状体6が配置されていないため、挿通部31は1つの支持線状体4に対して膜材3の長手方向に連続するように形成される。
【0060】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る太陽光発電システム1は、
図10及び
図11に示すように、支持線状体4が、接続金具5により、地面に立設された支柱72に接続される点において、実施形態1の太陽光発電システム1とは異なっている。この場合、端部接続金具51、中間部接続金具52は省略される。
【0061】
第4実施形態に係る太陽光発電システム1は、折板屋根やスレート屋根のような凹凸面を有する比較的軽量の屋根10の外側に取り付けられる。接続金具5は、屋根10を有する構造物11の両側において地面に立設された支柱72の上面に取り付けられる。接続金具5は、支持線状体4のエンドクランプ41を挿通させる貫通孔76を有する板状であり、ボルト止めや溶接等により支柱72の上面に固定されている。
【0062】
接続金具5には、
図12(a)(b)に示すように、エンドクランプ41が貫通孔76に挿通された状態で、クランプナット42を所定の位置まで締め込むことにより、エンドクランプ41が接続金具5に固定され、所定の張力を付与された状態の支持線状体4が、長手方向又は幅方向に延びた姿勢で屋根10の上側に架け渡される。このような支持線状体4により、膜材3は所定の形状に維持された状態で屋根10の一部を覆うようにして屋根10の上側に配置される。
【0063】
このように構成された太陽光発電システム1では、支柱72に接続された接続金具5により、複数の支持線状体4が屋根10の外側に配置される。このため、接続金具5の取り付けが難しい屋根10においても、支持線状体4が所定の形状を保持した状態で支柱72間に張設できる。
【0064】
なお、
図10及び
図11には押圧線状体6が示されていないが、太陽光発電システム1は、膜材3を表面側から押さえるための押圧線状体6と、押圧線状体6を支柱72に固定するための端部金具を備えていてもよい。
【0065】
また、
図12(a)(b)の支持線状体4は、両端部にネジエンド型のエンドクランプ41が施されているが、これに限らない。たとえば、
図13(a)(b)に示すようなソケット型のエンドクランプ41が施されてもよいし、
図14(a)(b)に示すようなアイクランプ型のエンドクランプ41が施されてもよい。この場合、接続金具5はエンドクランプ41に応じて好適に構成される。
【0066】
また、接続金具5は、構造物11の両側に配置された支柱72の上面に取り付けられているが、これに限らない。たとえば、接続金具5は、支柱72の側壁や、構造物の外壁に取り付けられてもよい。この場合、接続金具5には、
図15(a)(b)に示すような、アイクランプ型のエンドクランプ41が施された支持線状体4が接続される。なお、エンドクランプ41には、
図16(a)(b)に示すような、一対の楔形締結部材により構成されたスクラムクランプや、
図17(a)(b)に示すような、U字型ボルトと座金により構成されたグリップ型クランプが採用されてもよい。
【0067】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る太陽光発電システム1は、
図18(a)(b)及び
図19(a)(b)に示すように、複数の支持線状体4により支持された膜材3は、巻き取り及び繰り出しが可能なロールスクリーン状に形成されている点において、実施形態1とは異なっている。
【0068】
第5実施形態に係る太陽光発電システム1は、フレキシブル太陽電池モジュール2、膜材3及び支持線状体4がロールスクリーン状に構成されており、構造物の外壁12に取り付けられて使用される。具体的に、太陽光発電システム1は、フレキシブル太陽電池モジュール2、膜材3及び支持線状体4によって巻き取り可能に構成されたロールスクリーン本体81と、巻いた状態のロールスクリーン本体81を収納する収納ケース82と、収納ケース82内に配置されておりロールスクリーン本体81を巻き上げるための軸部83と、外壁12に固定された支持部84と、を備える。支持部84は、軸部83が回転可能な状態で、軸部83の両端部を支持している。この太陽光発電システム1は、軸部83が支持部84により支持されることにより、外壁12に固定されている。
【0069】
軸部83を
図19(b)の矢印の方向に回転させることにより、ロールスクリーン本体81は軸部83に巻き上げられて、ロールスクリーン本体81が収納ケース82内に収納された閉状態になる。一方で、軸部83を前記矢印の方向と反対方向に回転させることにより、収納ケース82内に収納されているロールスクリーン本体81は外壁12に沿って繰り出されて、ロールスクリーン本体81が外部に露出された開状態になる。
【0070】
ロールスクリーン本体81の下端部には、
図20(a)(b)に示すように、ロールスクリーン本体81を外壁12に係止するための係止穴85が設けられている。外壁12には、開状態のロールスクリーン本体81における係止穴85に対応する位置に、係止穴85を係止可能に構成された留め具86が配設されている。ロールスクリーン本体81が開状態のときに、係止穴85を留め具86に係止することにより、ロールスクリーン本体81を開状態のまま維持できる。
【0071】
このように構成された太陽光発電システム1では、支持線状体4に支持された膜材3が、開閉状態が切り替え可能なロールスクリーン状に形成されているため、時間帯や気候条件等に応じて開閉状態を切り替えて使用することができる。
【0072】
なお、第5実施形態に係る太陽光発電システム1は、構造物の外壁12に取り付けられて使用されるが、これに限らない。たとえば、太陽光発電システム1は構造物の屋根等に取り付けられてもよい。
【0073】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 太陽光発電システム
2 フレキシブル太陽電池モジュール
3 膜材
4 支持線状体
5 接続金具
6 押圧線状体
9 屋根
31 挿通部
32 貫通路
65 押圧線状体接続金具
66 接続孔
72 支柱