(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163989
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】使用者装着型の汚物処理装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/451 20060101AFI20231102BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20231102BHJP
A61G 9/00 20060101ALI20231102BHJP
A61G 9/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61F5/451 V
A61F5/44 S
A61G9/00 E
A61G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075258
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504127681
【氏名又は名称】株式会社エイコウ
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】嶋澤 耀一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 弘
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 克也
【テーマコード(参考)】
4C098
4C341
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC31
4C098CD01
4C098CD03
4C098CD07
4C098CE01
4C098CE15
4C341JK04
4C341JK08
4C341JK12
(57)【要約】
【課題】介護者と被介護者の肉体的および精神的な負担をさらに軽減することできる使用者装着型の排泄物処理装置を提供すること。
【解決手段】使用者の股間に装着され汚物を受領する装着カップと、前記装着カップに浄水を供給する浄水ポンプと、汚物と前記装着カップに供給された浄水とを前記装着カップから排出させる回収ポンプと、前記浄水ポンプと連通する浄水収容部と、前記回収ポンプを介して排出される汚物を回収する汚物回収部とを備え、前記装着カップは、背臥位の使用者の股間に装着された状態において、臀部側に配置されて汚物を受領する臀部密着部と、前記臀部密着部に連設され汚物を前記回収ポンプへ導く排出路と、前記臀部密着部を介して前記排出路と対向する側に設けられ前記浄水を前記排出路へ噴出する噴出孔と、前記排出路を移動する汚物を砕く粉砕機構とを備え、前記粉砕機構は、駆動されて回転する回転羽根を有する、ことを特徴とする使用者装着型の汚物処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の股間に装着され汚物を受領する装着カップと、
前記装着カップに浄水を供給する浄水ポンプと、
汚物と前記装着カップに供給された浄水とを前記装着カップから排出させる回収ポンプと、
前記浄水ポンプと連通する浄水収容部と、
前記回収ポンプを介して排出される汚物を回収する汚物回収部とを備え、
前記装着カップは、背臥位の使用者の股間に装着された状態において、臀部側に配置されて汚物を受領する臀部密着部と、前記臀部密着部に連設され汚物を前記回収ポンプへ導く排出路と、前記臀部密着部を介して前記排出路と対向する側に設けられ前記浄水を前記排出路へ噴出する噴出孔と、前記排出路を移動する汚物を砕く粉砕機構とを備え、
前記粉砕機構は、駆動されて回転する回転羽根を有する、ことを特徴とする使用者装着型の汚物処理装置。
【請求項2】
前記装着カップ内の汚物を検知する汚物センサと、前記汚物センサの検知に基づいて前記浄水ポンプ、前記粉砕機構および前記回収ポンプを作動させる制御部とをさらに備え、
前記汚物センサは、前記臀部密着部の外面に検知電極が設けられた静電容量型の臀部センサからなり、
前記制御部は、前記臀部センサの検知に応じて前記浄水ポンプを作動させて前記噴出孔から浄水を噴出させ、前記粉砕機構を作動させ、前記回収ポンプを作動させる、請求項1に記載の汚物処理装置。
【請求項3】
前記装着カップは、前記臀部密着部に連設されて股間の鼠径部側に配置される鼠径部密着部と、前記浄水ポンプからの浄水を股間に向けて吐出させるよう前記鼠径部密着部に設けられた吐出孔とをさらに有する、請求項2に記載の汚物処理装置。
【請求項4】
前記粉砕機構は、前記回転羽根を回転駆動するモータをさらに有し、
前記回収ポンプは、前記モータの出力軸に連結されて回転駆動される羽根車を有する、請求項1に記載の汚物処理装置。
【請求項5】
前記モータの前記出力軸は、前記排出路に沿って前記排出路内に配置されており、
前記回転羽根は、前記出力軸における前記排出路の上流側の先端に設けられ、
前記回収ポンプは、前記排出路における前記回転羽根よりも下流側に設けられている、請求項4に記載の汚物処理装置。
【請求項6】
前記装着カップは、前記臀部密着部および前記鼠径部密着部を有する装着カップ本体と、前記排出路および前記粉砕機構を有する駆動部とを備え、
前記装着カップ本体と前記駆動部とが互いに分離・結合可能である、請求項3に記載の汚物処理装置。
【請求項7】
前記装着カップが背臥位の股間に装着された状態において、前記回転羽根は、下方にU字形またはフォーク形に開く形状を有し、上下方向の軸心を中心として回転する、請求項1に記載の汚物処理装置。
【請求項8】
前記粉砕機構が、互いに隣接しかつ逆回転する一対の回転羽根を有する、請求項7に記載の汚物処理装置。
【請求項9】
前記回収ポンプが、前記装着カップまたはその近傍に設けられた、請求項1~8のいずれか1つに記載の汚物処理装置。
【請求項10】
前記浄水ポンプと前記浄水収容部とを収納する筐体を有する装置本体と、前記回収ポンプが設けられた前記装着カップと、前記汚物回収部とを互いに分離して備える、請求項9に記載の汚物処理装置。
【請求項11】
前記浄水収容部が、底部に開閉可能な取水口を有する浄水容器と、前記浄水容器を着脱可能に支持して前記取水口から浄水が充填される容器受け部と、前記容器受け部内に設けられた浄水ヒータとを備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の汚物処理装置。
【請求項12】
前記容器受け部内の浄水中に浸漬される中空管を含み、前記浄水に代えて、前記中空管を経由して温められた空気を前記噴出孔または前記吐出孔から前記装着カップの内部に流入させる浄水/送風切替機構をさらに備える、請求項3を引用する請求項11に記載の汚物処理装置。
【請求項13】
前記装着カップの内壁が、親水性を有するように粗面仕上げされている、請求項1~8のいずれか1つに記載の汚物処理装置。
【請求項14】
前記臀部密着部および前記鼠径部密着部はそれぞれ凹部を有しており、
前記臀部密着部および前記鼠径部密着部の各凹部の開口端縁は滑らかに繋がっており、
前記臀部密着部の前記凹部の前記開口端縁と前記鼠径部密着部の前記凹部の前記開口端縁に沿って連続的に膨出部が設けられており、
前記装着カップの外面が硬度70~80のシリコーンゴムにて形成され、前記膨出部が硬度5~20のシリコーンゴムにて形成されている、請求項3に記載の汚物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者装着型の汚物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、起き上がって排泄することが困難な被介護者(例えば、老人、病人、怪我人等)はおしめを付けて排泄し、介護者は被介護者の排泄物の処理、股間の洗浄、おしめの交換等の作業を介護の一環として行っていた。
このような作業は介護者にとって負担が大きく、被介護者にとっても精神的ストレスとなっているため、被介護者の背臥位での排泄処理を自動化する排泄物処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この排泄物処理装置は、股間に密着状に当てる便器に、排泄物を粉砕する排泄物粉砕手段と、股間に向かって洗浄水を噴射する洗浄水噴出口と、排泄物を吸引する排泄物吸引口とが設けられている。また、洗浄水噴出口には、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、洗浄水を洗浄水噴出口に供給する送水ポンプとが連絡され、排泄物吸引口には、吸引ポンプと、吸引ポンプにより吸引した排泄物を貯留する排泄物タンクとが連絡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の排泄物処理装置において、便器は下部の奥部(排泄物吸引口側)に排泄物粉砕手段のスクリューとモータと減速ギア等を備えた構成であり、スクリューは横方向に延びている。そのため、便器は下部が横方向に広がって大型化し重量物となっている。それに加え、被介護者は少し腰を浮かせた状態で股間に便器を当てた排泄姿勢をとらなくてはならない。そのため、特許文献1の排泄物処理装置では、被介護者は股間に便器を当てたままの状態で就寝することが困難であり、排泄時毎に介護者が被介護者の股間に便器を当てる介助を必要とするため、介護者と被介護者の肉体的および精神的な負担をさらに軽減することが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、介護者と被介護者の肉体的および精神的な負担をさらに軽減することできる排泄物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用者の股間に装着され汚物を受領する装着カップと、
前記装着カップに浄水を供給する浄水ポンプと、
汚物と前記装着カップに供給された浄水とを前記装着カップから排出させる回収ポンプと、
前記浄水ポンプと連通する浄水収容部と、
前記回収ポンプを介して排出される汚物を回収する汚物回収部とを備え、
前記装着カップは、背臥位の使用者の股間に装着された状態において、臀部側に配置されて汚物を受領する臀部密着部と、前記臀部密着部に連設され汚物を前記回収ポンプへ導く排出路と、前記臀部密着部を介して前記排出路と対向する側に設けられ前記浄水を前記排出路へ噴出する噴出孔と、前記排出路を移動する汚物を砕く粉砕機構とを備え、
前記粉砕機構は、駆動されて回転する回転羽根を有する、
ことを特徴とする使用者装着型の汚物処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による使用者装着型の汚物処理装置によれば、装着カップは、便器のような大型の重量物(例えば、特許文献1参照)ではなく、背臥位の股間に装着可能な小型化および軽量化されたカップ形の装着部材であり、使用者(例えば、起き上がって排泄することが困難な被介護者)は股間に装着カップを当てたままの背臥位で就寝することが可能である。そのため、介護者と被介護者(使用者)の肉体的および精神的な負担のさらなる軽減が可能である。また、装着カップにおいて、噴出孔は臀部密着部を介して排出路と対向する側に設けられており、浄水を噴出孔から排出路へ向けて真っ直ぐ噴出することができる。したがって、噴出孔から噴出した浄水を汚物としての大便に当て、水圧と水流を最大限利用して大便を排出路の粉砕機構へ押し流し、粉砕機構にて効率よく大便を粉砕することができる。これによって、排出路内での大便の詰まりを抑制することができると共に、排出路の小径化が可能となる。
さらに、粉砕機構で大便を砕いてから回収ポンプを介して汚物回収部へ送るので、粉砕機構を有しない構成に比べて能力の小さい回収ポンプを使用でき、また静音化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の汚物処理装置を示す構成図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の汚物処理装置の構成および配管系を説明するブロック図である。
【
図3】第1実施形態の汚物処理装置の制御系を説明するブロック図である。
【
図4】第1実施形態の汚物処理装置の装置本体の内部構成を説明する側方から視た図である。
【
図5】第1実施形態の汚物処理装置の装置本体の内部構成を説明する上方から視た図である。
【
図6】第1実施形態の汚物処理装置の装置本体の内部構成を説明する別の側方から視た図である。
【
図7】第1実施形態の汚物処理装置の装置本体を上方から視た平面図である。
【
図8】第1実施形態の汚物処理装置の浄水収容部の構成を説明する概略縦断面図である。
【
図9】第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す概略右側断面図である。
【
図10】第1実施形態の汚物処理装置の装着カップにおける回収ポンプおよび粉砕機構の構成を説明する要部の縦断面図である。
【
図11】第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す正面側から視た斜視図である。
【
図12】第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す足側右斜めから視た斜視図である。
【
図13】第1実施形態の変形例としての装着カップの分割状態を示す概略右側断面図である。
【
図14】第2実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す右側面図である。
【
図15】第2実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す足側右斜めから視た斜視図である。
【
図16】第2実施形態の汚物処理装置の装着カップ内の排出路および粉砕機構を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、本発明を限定するものと解されるべきではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の汚物処理装置を示す構成図であり、
図2は本発明に係る第1実施形態の汚物処理装置の構成および配管系を説明するブロック図であり、
図3は第1実施形態の汚物処理装置の制御系を説明するブロック図である。
図1~3に示すように、この汚物処理装置1は、主として、股間に装着され汚物を受領する装着カップ60と、装着カップ60に浄水を供給する浄水ポンプ15と、汚物と装着カップ60に供給された浄水とを装着カップ60から排出させる回収ポンプ70と、浄水ポンプ15と連通する浄水収容部11と、回収ポンプ70を介して排出される汚物を回収する汚物回収部90とを備え、装着カップ60が使用者の背臥位の股間に装着された状態において、汚物(排泄物)を回収して股間および装着カップ60を洗浄する一連の処理を自動的に行うものである。
【0011】
本実施形態の場合、浄水収容部11および浄水ポンプ15は、回収ポンプ70および汚物回収部90を除くさらに別の複数の構成要素とともに箱形の筐体10x内に設けられて装置本体10を構成している。言い換えると、この汚物処理装置1は、浄水ポンプ15と浄水収容部11等を収納する筐体10xを有する装置本体10と、回収ポンプ70が設けられた装着カップ60と、汚物回収部90とを互いに分離して備える。よって、汚物回収部90は装置本体10から分離されている。
また、装置本体10と装着カップ60とは第1、第2、第3浄水パイプ41、43、45にて接続され、装着カップ60の回収ポンプ70と汚物回収部90とは汚物回収パイプ81にて接続されている。
【0012】
図2と
図4~7に示すように、装置本体10は、前記浄水収容部11および前記浄水ポンプ15の他に、浄水切替バルブ23と、局部洗浄切替バルブ25と、カップ洗浄切替バルブ27と、水抜きポンプ29と、浄水撹拌ポンプ31とを備える。
浄水ポンプ15は、接続パイプ2およびフィルタ13を介して浄水収容部11と接続されている。
浄水切替バルブ23は、下流側から接続パイプ、T字形継手19および逆止弁17等を介して浄水ポンプ15と接続されている。
第1浄水パイプ41は、その上流端が浄水切替バルブ23と直接接続されてもよいが、浄水切替バルブ23と第1浄水パイプ41とを着脱可能に接続するホースカップリング41aを設けてもよい。本実施形態の場合、ホースカップリング41aの雌型継手が筐体10xに設けられ、ホースカップリング41aの雄型継手が第1浄水パイプ41の上流端側に設けられている。
【0013】
局部洗浄切替バルブ25は、下流側から接続パイプおよびクロス継手21等を介してT字形継手19と接続されている。
第2浄水パイプ43は、その上流端が局部洗浄切替バルブ25と直接接続されてもよいが、局部洗浄切替バルブ25と第2浄水パイプ43とを着脱可能に接続するホースカップリング43aを設けてもよい。本実施形態の場合、ホースカップリング43aの雌型継手が筐体10xに設けられ、ホースカップリング43aの雄型継手が第2浄水パイプ43の上流端側に設けられている。
【0014】
カップ洗浄切替バルブ27は、下流側から接続パイプを介してクロス継手21に接続されている。
第3浄水パイプ45は、その上流端がカップ洗浄切替バルブ27と直接接続されてもよいが、カップ洗浄切替バルブ27と第3浄水パイプ45とを着脱可能に接続するホースカップリング45aを設けてもよい。本実施形態の場合、ホースカップリング45aの雌型継手が筐体10xに設けられ、ホースカップリング45aの雄型継手が第3浄水パイプ45の上流端側に設けられている。
【0015】
浄水撹拌ポンプ31は、取水口31aおよび吐出口31bを有し、取水口31aと吐出口31bがそれぞれ接続パイプ3、4を介して浄水収容部11と接続されている。
水抜きポンプ29は、吸気口29aおよび排気口29bを有し、吸気口29aは第1空気循環パイプ47を介して装着カップ60と接続され、排気口29bは第2空気循環パイプ49を介してクロス継手21と接続されている。
浄水ポンプ15および浄水撹拌ポンプ31としては市販の電動ウォータポンプを用いることができ、水抜きポンプ29としては市販の電動エアーポンプを用いることができる。
第1空気循環パイプ47、水抜きポンプ29、第2空気循環パイプ49、クロス継手21および局部洗浄切替バルブ25等は、後述する浄水/送風切替機構を構成している。
【0016】
図8は第1実施形態の汚物処理装置の浄水収容部の構成を説明する概略縦断面図である。
図2と8に示すように、浄水収容部11は、底部11aaに開閉可能な取水口11abを有する浄水容器11aと、浄水容器11aの上方開口部を開閉可能に覆う蓋体11bと、浄水容器11aを着脱可能に支持して取水口11abから浄水Wが充填される容器受け部11cと、容器受け部11c内に設けられた浄水ヒータ11dとを備える。
【0017】
本実施形態の場合、浄水容器11aの取水口11abは、底部11aaの中央部に設けられている。また、底部11aaの中央部には、取水口11abを上方から覆う筒状収納部11vaと、筒状収納部11va内に設けられた付勢部材11vbと、付勢部材11vbの下端に設けられたゴムプレートからなる弁本体11vcとを有してなる開閉弁11vが設けられている。
【0018】
筒状収納部11vaは、その周壁における底部11aaの近傍に1つ以上の通水孔11vaaを有している。
付勢部材11vbは、筒状収納部11va内で弁本体11vcを下方へ付勢する部材であり、本実施形態では圧縮コイルバネが用いられているが、板バネやスポンジ状の弾性発泡体でもよい。
浄水容器11aの周壁上端には複数のロック部材11rが設けられており、浄水容器11aに被せられた蓋体11bの外周端部を解除可能にロックすることができる。
【0019】
容器受け部11cは、浄水容器11aをほぼ隙間なく収納できる形状およびサイズを有する容器であり、底部11caと、底部11caよりも上方の空間を上下二分に区画する区画壁11cbとを有している。
また、本実施形態の場合、区画壁11cbの上面中央部には凸部11cbaが設けられると共に、区画壁11cbの周囲部には1つ以上の通水孔11cbbが設けられている。なお、凸部11cbaは、取水口11abに挿入可能なサイズの円錐台形、角錐台形、円柱形、角柱形等の形状とすることができる。
【0020】
浄水Wを収容した浄水容器11aは、容器受け部11cから持ち上げられた状態では、付勢部材11vbにて弁本体11vcが底部11aaへ押し付けられて取水口11abを塞ぐため、取水口11abから浄水Wが漏れることはない。
浄水Wを収容した浄水容器11aを容器受け部11cの上部空間に収納することにより、容器受け部11cの凸部11cbaが浄水容器11aの取水口11abに下方から挿入され、付勢部材11vbの付勢力に抗して弁本体11vcが凸部11cbaによって押し上げられ、凸部11cbaと取水口11abとの間に隙間が形成される。なお、浄水容器11aの底部11aaの下面外周部に沿って脚部11acが設けられているため、浄水容器11aの底部11aaと容器受け部11cの区画壁11cbとの間にも隙間が形成される。
【0021】
これにより、浄水容器11a内の浄水Wは、凸部11cbaと取水口11abとの間の隙間から、底部11aaと区画壁11cbとの間の隙間内に流入し、区画壁11cbの複数の通水孔11cbbを通って容器受け部11cの下部空間に落下して貯水される。
容器受け部11cの下部空間には、中空管としての前記第1空気循環パイプ47の一部が容器受け部11c内の浄水W中に浸漬されている。
容器受け部11cの下部空間には、さらに前記浄水ヒータ11dが設けられている。浄水ヒータ11dとしては、防水仕様のヒータを用いることができ、本実施形態ではシーズヒータを用いている。
【0022】
容器受け部11c内の浄水W全体を効率よく加温することができるよう、浄水ヒータ11dは底部11caの近傍に配置されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
容器受け部11c内の浄水Wの温度が一定範囲内(例えば、34~38℃程度)となるよう、温度センサ55(
図3参照)にて容器受け部11c内の浄水Wの温度が検知され、温度センサ55の検知に応じて後述の制御部51が浄水ヒータ11dのON/OFF制御を行う。
【0023】
容器受け部11cの下部空間は、接続パイプ2およびフィルタ13を介して浄水ポンプ15と接続されると共に、接続パイプ3、4を介して浄水撹拌ポンプ31と接続されている。
容器受け部11c内のできるだけ多くの浄水Wを浄水ポンプ15に供給できるよう、接続パイプ2は底部11caの近傍に接続されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
容器受け部11c内の加温された上層の浄水Wを浄水撹拌ポンプ31に取り込んで下層に吐出することにより容器受け部11c内の浄水Wを水流により撹拌し、それによって容器受け部11c内の浄水Wの温度が効率よく均一化するよう、接続パイプ3は区画壁11cb側に配置され、接続パイプ4は底部11ca側に配置されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
この汚物処理装置1は、
図3と9に示す制御系を備えている。
この制御系は、装置本体10に設けられた制御部(メイン回路)51と、装着カップ60に設けられた汚物センサ53と、装置本体10の浄水収容部11に設けられた浄水センサ54と、前記温度センサ55とを備える。
本実施形態の場合、浄水センサ54は、浄水収容部11の容器受け部11cの外面(
図8参照)に一対の検知電極が設けられた静電容量型センサであり、制御部51と導線を介して電気的に接続されている。
【0025】
図3~7に示すように、装置本体10には、図示しない電源コード(商用電源に接続可能な受電プラグ付きコード)と着脱可能に接続するマルチコネクタ59と、電源コードからの電力を制御系および各種駆動部品等に供給する電源回路50と、警告ランプ56と、操作パネル58とが設けられており、警告ランプ56は導線を介して制御部51と電気的に接続されている。
制御部51は、容器受け部11c内の浄水Wの貯水量によって変化する浄水センサ54の検知に応じて(貯水量(水位)が所定値以下となったときの検知に応じて)、警告ランプ56を点灯、点滅または色変化(例えば青色から赤色)させる。これによって、使用者に付きそう人(使用者が被介護者であるときの介護者)に浄水Wの補給を促すことができる。
制御部51は、さらに、汚物センサ53の検知に応じて浄水ポンプ15を作動させて後述の噴出孔65(
図9参照)から浄水を噴出させ、後述の粉砕機構66を作動させ、回収ポンプ70を作動させる。制御系について、さらに詳しくは後述する。
【0026】
次に、装着カップ60について説明する。
図9は第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す概略右側断面図であり、
図10は第1実施形態の汚物処理装置の装着カップにおける回収ポンプおよび粉砕機構の構成を説明する要部の縦断面図である。
図11は第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す正面側から視た斜視図であり、
図12は第1実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す後方右斜めから視た斜視図である。
図9、11、12中の矢印は、装着カップを背臥位の股間に装着したときの上下方向、左右方向、頭側方向および足側方向を示しており、装着カップはこれらの方向に基づいて説明される。
【0027】
図1~3、9~12に示すように、装着カップ60は、使用者の背臥位(仰向け)の股間に装着された状態において、股間の臀部側に配置されて汚物を受領する臀部密着部61と、股間の鼠径部側に配置されて局部を覆うように臀部密着部61に連設された鼠径部密着部62と、股間の下腹部側に配置されるように鼠径部密着部62に連設された下腹部密着部63とを有する、右側面視(
図9参照)が略コの字形に形成されたカップ体である。ここで、股間の鼠径部とは、股間における両足の付け根部分(局部の両側部分)を意味する。装着カップ60の左右方向の幅寸法は、左右方向と直交する方向の長さ寸法(装着時の使用者の身長の方向)または高さ寸法(装着時の上下方向)と比べて小さく、幅寸法をW、長さ寸法をL、高さ寸法をHとすると、例えば、W:L:H=1:2~5:2~5程度に幅寸法Wを薄くすることができる。そのため、装着カップ60を股で挟んだ状態で股間に装着しやすくなっている。
【0028】
装着カップ60の股間への装着状態において、臀部密着部61は下方に窪んだ凹部61aを有し、鼠径部密着部62は足側へ窪んだ凹部62aを有し、下腹部密着部63は上方に窪んだ凹部63aを有しており、これらの凹部61a、62a、63aは滑らかに繋がっている。また、装着カップ60の外面を構成する臀部密着部61の外面と鼠径部密着部62の外面と下腹部密着部63の外面は、例えば、硬度70~80のシリコーンゴムにて形成されている。
臀部密着部61の凹部61aは頭側から足側に向かって延びており、凹部61aの左右方向の幅は大人の使用者の局部が完全に収まる程度の幅とされている。
鼠径部密着部62の凹部62aは凹部61aから上方へ向かって延びており、凹部62aの左右方向の幅は凹部61aの幅と同程度とされている。
下腹部密着部63の凹部63aは凹部62aから頭側へ延びており、凹部63aの左右方向の幅は凹部62aの幅と同程度とされている。
これらの凹部61a、62a、63aにて構成される装着カップ60の内壁(内面)は、親水性を有するように粗面仕上げされている。これにより、後述のカップ洗浄孔(第2の吐出孔)69からの浄水が装着カップ60の内壁の各所に行き渡りやすくなり、付着した汚物が浄水にて流れ落ちやすくなる。
【0029】
また、これらの凹部61a、62a、63aの開口端縁も滑らかに繋がっており、臀部密着部61の凹部61aの開口端縁と鼠径部密着部62の凹部62aの開口端縁に沿って弾性を有する材料にて連続的に形成された膨出部61abが設けられている。この膨出部61abは、例えば、硬度5~20のシリコーンゴムにて形成されている。装着カップ60の外面を硬度70~80程度のシリコーンゴムにて形成し、かつ、膨出部61abを硬度5~20のシリコーンゴムにて形成することにより、装着カップ60の形状を維持しながら、装着カップ60を股間に装着したときに股間の臀部および鼠径部に膨出部61abが密着しやすくなって装着カップ60内から外部へ液漏れしにくくなる。なお、膨出部61abは、軟質樹脂の袋体内に空気を充填したエアチューブの形態であってもよい。
【0030】
装着カップ60は、さらに、臀部密着部61に連設され汚物を回収ポンプ70へ導く排出路64と、臀部密着部61を介して排出路64と対向する位置に設けられ浄水を排出路64へ噴出する前記噴出孔65と、排出路64を移動する汚物を砕く前記粉砕機構66とを備える。
排出路64は、臀部密着部61の凹部61aの一端側(足側)に開口部64aを有すると共に、開口部64aと反対側が回収ポンプ70の流入口72a(
図10参照)と接続されている。
回収ポンプ70の排出口(不図示)は接続筒部64bと接続されている。
噴出孔65は、臀部密着部61の凹部61aの他端側(頭側)に設けられている。噴出孔65の数は、1つでも複数でもよく、
図12には複数の噴出孔65が示されている。
さらに、臀部密着部61は、凹部61aの他端側(頭側)であって、噴出孔65の上方位置に1つまたは複数の吸気口68を有している(
図12参照)。
【0031】
臀部密着部61の凹部61aを構成する他端側(頭側)の壁部内には、1つまたは複数の噴出孔65と連通する下中空部61dと、1つまたは複数の吸気口68と連通する上中空部61uが設けられている。
さらに、臀部密着部61の他端側(頭側)の外面には下中空部61dおよび上中空部61uと接続する接続筒部61x、61yが設けられ、接続筒部61xは第1浄水パイプ41と接続され、接続筒部61yは第1空気循環パイプ47と接続されている。
ここで、第1空気循環パイプ47について説明すると、本実施形態の場合、上述したように装置本体10内に設けられた第1空気循環パイプ47(47x)の一部は容器受け部11c内の浄水W中に浸漬されており(
図2と8参照)、その第1空気循環パイプ47xの一端は水抜きポンプ29の吸気口29aに接続され、第1空気循環パイプ47xの他端は筐体10xに設けたホースカップリング47aの雌型継手に接続されている。さらに、装置本体10の外部に設けられた第1空気循環パイプ47yの一端がホースカップリング47aの雄型継手に接続され、その第1空気循環パイプ47yの他端が前記接続筒部61yに接続されている(
図2、9、11参照)。
【0032】
図9と10に示すように、粉砕機構66は、回転羽根66aと、回転羽根66aを回転駆動するモータ66bとを有する。なお、モータ66bは、装置本体10の制御部51(
図3参照)にて駆動制御される。
粉砕機構66において、モータ66bは、排出路64の開口部64aとは反対の出口側に設けられている。
詳しく説明すると、本実施形態の場合、粉砕機構66と回収ポンプ70とはユニット化されており、モータ66bと回転羽根66aとの間に回収ポンプ70が設けられている。
この場合、回収ポンプ70は、モータ66bの出力軸66baに連結されて回転駆動する羽根車71と、羽根車71を回転可能に収納するケース部72とを有している。ケース部72はその内部と外部とを連通する排出孔(不図示)と、排出孔に設けられた接続筒部64b(
図9参照)とを有する。なお、接続筒部64bは汚物回収パイプ81を介して汚物回収部90と接続されている(
図2と9参照)。
【0033】
モータ66bの出力軸66baの回収ポンプ70を貫通した先端にはブレード形の回転羽根66aが固定されている。回収ポンプ70のケース部72の回転羽根66a側には、流入口72aが設けられると共に、装着カップ60の排出路64の出口と接続する筒状の接続部材74が設けられている。接続部材74は排出路64の一部を構成しており、接続部材74内に突出した出力軸66baの先端に回転羽根66aが連結されている(
図10参照)。
【0034】
このように、モータ66bの出力軸66baは、排出路64に沿って排出路64内に配置されており、回転羽根66aは出力軸66baにおける排出路64の上流側の先端に設けられ、回収ポンプ70は排出路64における回転羽根66aよりも下流側に設けられている。すなわち、排出路64の長手方向に沿って一列に回転羽根66aと回収ポンプ70とモータ66bが配置されている。
【0035】
図11に示すように、鼠径部密着部62の凹部62aにおいて、上部にはカップ洗浄孔(第2の吐出孔)69が設けられ、上部の下方近傍には吐出孔(第1の吐出孔)67が設けられている。カップ洗浄孔69および吐出孔67のそれぞれの数は、1つでもよいが好ましくは複数である。
図11には複数のカップ洗浄孔69および吐出孔67が示されている。
また、
図9に示すように、凹部62aを構成する壁部内には複数のカップ洗浄孔69と連通する上中空部62uおよび複数の吐出孔67と連通する下中空部62dが設けられ、上中空部62uおよび下中空部62dはそれぞれ接続筒部62x、62yと接続されている。さらに、接続筒部62xは第3浄水パイプ45と接続され、接続筒部62yは第2浄水パイプ43と接続されている(
図2参照)。
【0036】
図3と9に示すように、装着カップ60は臀部密着部61にて受領した汚物を検知する前記汚物センサ53を備えており、具体的には、臀部密着部61の凹部61aとは反対側の外面に第1汚物センサ53aと第2汚物センサ53bとが設けられている。なお、
図9に示すように、臀部密着部61の外側には第1よおび第2汚物センサ53a、53bを保護するカバー部材が設けられている。
また、本実施形態の場合、第1汚物センサ53aは噴出孔65側に設けられ、第2汚物センサ53bは排出路64側に設けられており、第1および第2汚物センサ53a、53bのそれぞれは一対の検知電極が設けられた静電容量型の第1および第2臀部センサ53a、53bである。第1および第2臀部センサ53a、53bは導線を介して装置本体10内の制御部51に電気的に接続されている。
【0037】
粉砕機構66のモータ66b(
図3参照)は導線を介して装置本体10内の制御部51に電気的に接続されている。
図12に示すように、装着カップ60に接続された第1浄水パイプ41および第1空気循環パイプ47yは足側へ折り曲げられて第2浄水パイプ43および第3浄水パイプ45と一緒に締結部材Tにて括られてもよく、モータ駆動回路52と装置本体10とを電気的に接続する導線(不図示)も一緒に締結部材Tにて括られてもよい。また、足側に折り曲げた第1浄水パイプ41および第1空気循環パイプ47yをベルトBを用いて装着カップ60側に押さえつけてもよい。
【0038】
汚物回収部90は、装着カップ60から汚物回収パイプ81を介して送られた汚物を溜める容器本体を備える。この容器本体は、汚物を受け入れる投入口と、溜まった汚物を廃棄場所に排出する排出口とを有する。例えば、投入口にはホースカップリングの雌型継手を設け、汚物回収パイプ81の端部にはホースカップリングの雄型継手を設け、投入口と汚物回収パイプ81とを着脱可能としてもよい。また、排出口には、着脱可能な蓋体を設けてもよく、あるいは開閉蓋を設け、開閉蓋は通常閉じており、汚物排出時に開閉蓋が開くようにしてもよい。
【0039】
(汚物処理装置の使用方法および動作について)
図1~12を参照しながら、上述のように構成された汚物処理装置1の使用方法および動作について説明する。
汚物処理装置1は、例えば、マットレス上に背臥位で横たわる使用者(例えば、自立して排泄が困難な被介護者)の股間に装着カップ60を装着することにより使用可能となる。この際、例えば、装着カップ60を装着した股間におむつを被せて、装着カップ60を股間に固定するようにしてもよい。また、マットレスに凹部を形成し、この凹部内におむつをした股間が位置するように使用者が横たわるようにしてもよく、これによって腰に負担がかかりにくい姿勢とすることができる。
【0040】
装置本体10に設けられた操作パネル58の電源スイッチをONすることにより、浄水収容部11の容器受け部11c内の浄水ヒータ11dが加熱して浄水Wが所定温度範囲内(例えば、34~38℃程度)に加温される。また、電源スイッチONと同時にあるいは所定時間(例えば、2~3分)遅れて、浄水撹拌ポンプ31が作動して容器受け部11c内の浄水Wを取り込み、取り込んだ浄水Wを再び容器受け部11c内に噴出することにより、容器受け部11c内の浄水Wが循環して温度が均一化される。浄水ヒータ11dは、浄水容器11a内の浄水を含めた浄水収容部11全体の浄水を加温するよりも、その一部である浄水受け部11c内の浄水を加温するように浄水受け部11内に設けられている。よって、全体の浄水を加温する場合に比べると短時間かつ少ない電力での加温が可能である。なお、装着カップ60を装着する前に、予め容器受け部11c内の浄水Wを加温しておいてもよい。
【0041】
装着カップ60を装着した使用者が排泄をすると、臀部密着部61の凹部61aにて汚物を受領すると共に、汚物センサ53が汚物を検知し、その検知信号が制御部51に送信される。このとき、第1臀部センサ53aおよび第2臀部センサ53bの検知に応じて、浄水ポンプ15を作動させて噴出孔65から浄水を噴出させ、粉砕機構66および回収ポンプ70を作動させる。
具体的には、例えば、使用者が大便をした場合、大便は第1臀部センサ53a側から排泄されるため、第1臀部センサ53aが検知する静電容量変化は第2臀部センサ53bが検知する静電容量変化よりも大きくなる。このように汚物センサ53が大便を検知すると、制御部51は浄水ポンプ15を作動させる。このとき、浄水切替バルブ23が開き、局部洗浄切替バルブ25およびカップ洗浄切替バルブ27は閉じている。したがって、装着カップ60の噴出孔65から加温された浄水Wが噴出し、水圧および水流によって凹部61a上の大便が排出路64側へ直線的に押し流される。
【0042】
粉砕機構66では、モータ66bが駆動することによって、略U字形に折れ曲がったブレード形の回転羽根66aが回転する。このとき、水によって排出路64へ流されてきた大便が回転する回転羽根66aによって小さく粉砕され、粉砕物が水とともに回収ポンプ70および汚物回収パイプ81を介して汚物回収部90に流れ込む。
装着カップ60の臀部密着部61の凹部61a内から大便が汚物回収部90へ排出され、凹部61a内に水が溜まった状態となると、この状態を第1臀部センサ53aおよび第2臀部センサ53bが検知する。このとき、第1臀部センサ53aおよび第2臀部センサ53bはどちらも同程度の静電容量を検知し、それによって制御部51は、モータ66bを停止させ、浄水切替バルブ23を閉じ、かつ、局部洗浄切替バルブ25を開く。これによって、装着カップ60の複数の吐出孔67から加温された浄水Wが所定時間(例えば、10~30秒程度)噴出して股間(局部および肛門周り)を洗浄する。
【0043】
次に、制御部51は、局部洗浄切替バルブ25を閉じ、かつ、カップ洗浄切替バルブ27を開く。これによって、装着カップ60の複数のカップ洗浄孔69から加温された浄水Wが所定時間(例えば、10~20秒程度)噴出して臀部密着部61の凹部61aおよび鼠径部密着部62の凹部62aを洗浄する。
次に、制御部51は、浄水ポンプ15および回収ポンプ70を同時、または回収ポンプ70を浄水ポンプ15よりも所定時間(例えば、10秒程度)遅らせて停止させ、水抜きポンプ29を所定時間(例えば、1~3分程度)作動させる。
【0044】
これにより、クロス継手21、カップ洗浄切替バルブ27および第3浄水パイプ45を含む流路内に、浄水収容部11の容器受け部11c内の加温された浄水Wによって加温された第1空気循環パイプ47x内の空気を、第2空気循環パイプ49を介して送り込んで流路内に残留した浄水Wを装着カップ60内に押し出す。その後、加温された空気がカップ洗浄孔69から装着カップ60内に噴出して股間を乾燥させ、装着カップ60内の空気は臀部密着部61の吸気口68を通って第1空気循環パイプ47y、47xを介して水抜きポンプ29へ送られて循環する。この間、第1空気循環パイプ47x中の空気は加温される。このように、この汚物処理装置1は、容器受け部11c内の浄水W中に浸漬される中空管(第1空気循環パイプ47x)を含み、浄水Wに代えて、中空管を経由して温められた空気をカップ洗浄孔(第2の吐出孔)69から装着カップ60の内部に流入させる浄水/送風切替機構を備えている。なお、第1の吐出孔67から加温された空気が噴出するようにしてもよい。あるいは、噴出孔65から加温された空気が装着カップ60内に噴出し、第1の吐出孔67または第2の吐出孔69を通る経路で空気が循環するようにしてもよい。
【0045】
制御部51は、水抜きポンプ29を所定時間作動させた後に停止させる。ここまでが、大便のみを排泄した場合(大便処理時)の一連の自動処理工程である。
小便のみを排泄した場合(小便処理時)の一連の自動処理工程は、大便のみを排泄した場合の一連の自動処理工程と概ね同様であるが、次の点が異なる。
小便のみを排泄した場合、小便は第2臀部センサ53b側に排泄されるため、第2臀部センサ53bが検知する静電容量変化は第1臀部センサ53aが検知する静電容量変化よりも大きくなる。このように汚物センサ53が小便を検知すると、制御部51は浄水ポンプ15を作動させ、噴出孔65から浄水Wを噴出して小便を排出路64へ流し、吐出孔67から浄水Wを吐出して股間を洗浄した後、カップ洗浄孔69から浄水Wを吐出して凹部61a、62aを洗浄する。この際、浄水切替バルブ23の開閉の間隔、局部洗浄切替バルブ25の開閉の間隔、カップ洗浄切替バルブ27の開閉の間隔、浄水ポンプ15の作動時間および回収ポンプ70の作動時間が、大便処理時よりも短くなっており、それによって浄水収容部11内の浄水Wを節水している。この間、粉砕機構66のモータ66bは停止している。なお、小便処理時は、噴出孔65からの浄水Wの噴出は省略してもよい。
【0046】
小便と大便が同時または前後して排泄された場合は、大便排泄処理に準じて処理される。
浄水収容部11の浄水容器11a内に浄水Wがある間は、容器受け部11c内の区画壁11cbの下方スペースには浄水Wが補給されるが、浄水容器11aが空になると容器受け部11c内の浄水Wが減少する。容器受け部11c内の浄水Wが所定水位まで下がると浄水センサ54が検知し、それによって制御部51が警告ランプ56を点灯させる。このため、浄水容器11aに浄水を補給する必要があることを、例えば介護者に認識させることができる。
【0047】
汚物回収部90に汚物が回収された後は、汚物回収部90内の汚物を適切に廃棄処理する。汚物回収部90の回収容器の容量は、例えば、浄水容器11aの容量(例えば、5~10L)と同等以上としてもよい。そのため、1回の排泄処理毎に回収容器内の汚物を廃棄処理する必要はないが、例えば、浄水容器11aへの浄水Wの補給と概ね同じタイミングで汚物の廃棄処理を行えばよい。したがって、この汚物処理装置1を夜間に使用することで、夜間に介護者が被介護者の排泄の状況を確認し、さらには汚物処理とおむつの交換といった作業が不要となるため、介護者と被介護者の肉体的および精神的な負担を軽減することができる。
【0048】
汚物回収部90の回収容器内の汚物の量を目視にて確認してもよいが、回収容器の外面の所定高さ位置に、例えば静電容量型の回収汚物センサを設け、回収容器内に汚物が一定量溜まると回収汚物センサが検知し、それによって制御部51が警告ランプ56を点滅させるようにしてもよい。
汚物処理装置1を夜間に使用した場合、日中に汚物処理装置1のメンテナンスや、被介護者のおむつ交換等を行うことができる。
汚物処理装置1のメンテナンスでは、例えば、装着カップ60に残留した汚物を除去する洗浄除菌作業や、噴出孔65、吐出孔67、吸気口68およびカップ洗浄孔69の詰まり除去、汚物回収部90内の汚物の廃棄処理、汚物回収部90の洗浄、浄水収容部11への浄水Wの補給等が行われる。メンテナンス時に第1浄水パイプ41や第2浄水パイプ43等が装置本体10から離脱している間、電源ON状態であっても浄水ポンプ15が作動しないようセンサおよび制御部51にて制御してもよい。
【0049】
(第1実施形態の変形例1)
図13は第1実施形態の変形例1としての装着カップの分割状態を示す概略右側断面図である。なお、
図13において、
図9中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
図13に示す第1実施形態の変形例1としての装着カップ60xは、第1実施形態の装着カップ60(
図9参照)の構成と基本的に同じ構成を備えているが、装着カップ60xが2つに分割可能である点が異なる。この装着カップ60xは、装着カップ本体60xaと、駆動部60xbとを備え、これらが分離・結合可能となっている。
装着カップ本体60xaは、臀部密着部61と、鼠径部密着部62と、下腹部密着部63とを有してなり、装着カップ60xの頭側部分を構成する。
駆動部60xbは、排出路64と、接続筒部62x、62yと、粉砕機構66と、回収ポンプ70とを有してなり、装着カップ60xの足側部分を構成する。
【0050】
装着カップ本体60xaと駆動部60xbとの境界は、装着カップ本体60xaの臀部密着部61の凹部61aと駆動部60xbの排出路64との境界であり、かつ、装着カップ本体60xaの吐出孔67およびカップ洗浄孔69と駆動部60xbの接続筒部62x、62yとを繋ぐ流路の中間部分である。
さらに、装着カップ本体60xaと駆動部60xbとの間にはそれらの間から浄水や汚物が漏れ出ないようにシールするシール部材(不図示)が設けられている。具体的には、装着カップ本体60xaと駆動部60xbとの結合状態における、凹部61aと排出路64との接合部分、および、吐出孔76およびカップ洗浄孔69に通じる流路と接続筒部62x、62yに通じる流路との接合部分にシール部材が設けられる。
【0051】
さらに、装着カップ本体60xaと駆動部60xbとは、それらの外面に設けられた図示しないロック機構によって係合状態が解除可能にロックされる。このロック機構は、例えば、装着カップ本体60xaの後端外面に設けた係止凹部と、この係止凹部に係脱可能なように駆動部60xbの上端外面に設けたフック部と、駆動部60xbの下端外面に設けた係止部と、この係止部と係脱可能なように装着カップ本体60xaの下端外面に揺動可能に設けられた係止爪および係止爪を係止部に係止させる方向に付勢する付勢部材とを備える。互いに分離した装着カップ本体60xaと駆動部60xbとを結合させる場合は、フック部を係止凹部に引っ掛けた後、フック部を支点として駆動部60xbを装着カップ本体xa側へ揺動して係止爪を係止部へ係止させる。係止爪の反対側には解除押しボタンが設けられており、付勢部材の付勢力に抗して解除押しボタンを押すと係止爪が係止部から離脱するため、結合状態の装着カップ本体60xaと駆動部60xbとを分離することができる。
【0052】
装着カップ60xは、ロック機構に加えて、ロックする際に装着カップ本体60xaと駆動部60xbとの結合部分が互いに嵌合して位置決めする嵌合構造を備えてもよい。嵌合構造は、例えば、装着カップ本体60xaの足側の端部外周部に沿って設けられたリブの内側に駆動部60xbの頭側の端部が嵌り込む構造、あるいはこれとは逆の構造とすることができる。
【0053】
この変形例1によれば、装着カップのメンテナンス時に装着カップ本体と駆動部とを分離することができるため、汚物と接触した可能性がある装着カップ本体の凹部、駆動部の排出路、粉砕機構、回収ポンプ等の洗浄や消毒作業を容易に行うことができる。
なお、このような装着カップ60xの分割構造は、回収ポンプ70が装着カップ60xとは個別に設けられた場合でも可能である。この場合、回収ポンプ70の位置に粉砕機構66の回転羽根66aを回転させるためのモータが設けられる。
【0054】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の装着カップ60およびその変形例1の装着カップ60xにおいて、下腹部密着部63は省略されてもよい。この場合、下腹部密着部63の代わりに、鼠径部密着部62が使用者の下腹部側の局部周囲から左右の鼠径部に亘る範囲に密着する。
【0055】
(第2実施形態)
図14は第2実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す右側面図であり、
図15は第2実施形態の汚物処理装置の装着カップを示す足側右斜めから視た斜視図であり、
図16は第2実施形態の汚物処理装置の装着カップ内の排出路および粉砕機構を示す要部正面図である。なお、
図14~16において、第1実施形態(
図9~11等)と同様の構成には同一の符号を付している。
第2実施形態の汚物処理装置は、装着カップと粉砕機構と回収ポンプの構成が第1実施形態とは異なり、第2実施形態におけるその他の構成は第1実施形態と概ね同様である。以下、第2実施形態における第1実施形態とは異なる点を主に説明する。
【0056】
図14~16に示すように、装着カップ160はその内部に、粉砕機構166および回収ポンプ170を備える。
装着カップ160の排出路64の開口部64aと反対側に回収ポンプ170の流入口が接続されている。
回収ポンプ170の排出口は接続筒部64bと接続されている。接続筒部64bは汚物回収パイプ81を介して汚物回収部90(
図2参照)と接続されている。
【0057】
粉砕機構166は、排出路64(開口部64aと回収ポンプ170との間)に設けられて駆動され回転する回転羽根166aと、回転羽根166aを回転駆動するモータ166bとを有する。本実施形態の場合、さらに具体的には
図13と15に示すように、粉砕機構166は、互いに隣接しかつ逆回転する一対の回転羽根166aと、モータ166bと、モータ166bの出力を一対の回転羽根166aに互いに逆回転かつ減速するよう伝達する減速機構166cとを有する。
【0058】
一対の回転羽根166aは同一の形状およびサイズに形成されている。本実施形態の場合、回転羽根166aは、装着カップ160が背臥位の股間に装着された状態において、下方にフォーク形に開く形状の羽根本体部166aaと、羽根本体部166aaから上方に延びる軸部166abとを有し、上下方向の軸部166abの軸心を中心として回転する。なお、羽根本体部166aaの形状は、3本のピン形回転部分を有する下方に開くフォーク形以外に、2本のピン形回転部分を有する下方に開くU字形であってもよい。
【0059】
一対の回転羽根166aの軸部166abは、減速機構166cと連結している。
減速機構166cは、モータ166bの出力軸に設けられた出力ギア(不図示)と噛合する第1減速ギア(不図示)と、一対の回転羽根166aの軸部166abにそれぞれ設けられた第2減速ギア(不図示)とを有する。
第1減速ギアは出力ギアよりも歯数が多く、各第2減速ギアは第1減速ギアよりも歯数が多く、各第2減速ギアの歯数は同じである。また、一方の第2減速ギアが、他方の第2減速ギアと第1減速ギアとに噛合することにより、出力ギアの回転時に一対の第2減速ギアが互いに逆方向にかつ減速して回転する。この場合、一対の第2減速ギアのそれぞれの回転方向は、臀部密着部61の凹部61aによって受けられた汚物としての大便を、互いに逆回転する一対の回転羽根166aがそれらの間に掻き込む方向である。
【0060】
第2実施形態の場合、大便処理において、粉砕機構166では、モータ166bが駆動することによって減速機構166cを介して一対の回転羽根166aが互いに逆回転する。このとき、水によって排出路64へ流されてきた大便が一対の回転羽根166aの間に掻き込まれることによって小さく粉砕され、粉砕物が水とともに回収ポンプ170および汚物回収パイプ81を介して汚物回収部90に流れ込む。この際、一対の回転羽根166aにて粉砕された大便の欠片が回転羽根166aに付着しても浄水にて流されやすくなり、装着カップ160内を清潔に保ちやすくなる。さらに、互いに逆回転する一対の回転羽根166aにて大便をより細かく粉砕することができる。
【0061】
第2実施形態の汚物処理装置は、一対の回転羽根166aを有する粉砕機構166によって上述のように大便を粉砕すること以外は、基本的に第1実施形態の汚物処理装置と同様の制御シーケンスで汚物処理を行う。
【0062】
(第2実施形態の変形例1)
第2実施形態の装着カップ160は、第1実施形態の変形例1と同様に、装着カップ160が2つに分割可能に構成されてもよい。
【0063】
(第2実施形態の変形例2)
第2実施形態の装着カップ160およびその変形例1の装着カップは、第1実施形態の変形例2と同様に、下腹部密着部63が省略されてもよい。
【0064】
(第3実施形態)
第1実施形態では、カップ洗浄孔69から浄水Wを吐出して装着カップ60内を洗浄するように構成した場合を例示したが、カップ洗浄孔69を吐出孔67に変えてもよい。つまり、カップ洗浄孔69の領域まで吐出孔67を設けてもよい。この場合、カップ洗浄切替バルブ27を含むクロス継手21から装着カップ60までの流路を省略することができる。またこの構成によれば、カップ洗浄時に吐出孔67から浄水が噴出し、乾燥時に吐出孔67から温風が噴出する。なお、第2実施形態についても同様である。
【0065】
(第4実施形態)
第2実施形態では、装着カップ60の内部に回収ポンプ70を設けた場合を例示したが、回収ポンプ70を汚物回収パイプ81における装着カップ60の近傍位置に設けてもよい。この場合、例えば、装着カップ160の接続筒部64bに回収ポンプ170を接続してもよい。
。この構成によれば、回収ポンプ70が装着カップ60と一体化される。装置本体10との配線についても、回収ポンプ70への配線と装着カップ60内のモータ駆動回路52や汚物センサ53への配線を一つに束ねることができるので、回収ポンプ70が装着カップ60と別の場合に比べて取り扱いが容易になる。
【0066】
(第5実施形態)
回収ポンプ70は、装置本体10内に設けてもよい。さらにこの場合、回収ポンプ70としてチューブポンプを使用してもよい。この構成によれば、装着カップ60の排出路64側の構成または汚物回収パイプ81側の構成を簡素化することができると共に、チューブポンプによって装着カップ60内の汚物回収時の動作音を小さくすることができる。
【0067】
以上に述べたように、
(1)本発明による汚物処理装置は、使用者の股間に装着され汚物を受領する装着カップと、
前記装着カップに浄水を供給する浄水ポンプと、
汚物と前記装着カップに供給された浄水とを前記装着カップから排出させる回収ポンプと、
前記浄水ポンプと連通する浄水収容部と、
前記回収ポンプを介して排出される汚物を回収する汚物回収部とを備え、
前記装着カップは、背臥位の使用者の股間に装着された状態において、臀部側に配置されて汚物を受領する臀部密着部と、前記臀部密着部に連設され汚物を前記回収ポンプへ導く排出路と、前記臀部密着部を介して前記排出路と対向する側に設けられ前記浄水を前記排出路へ噴出する噴出孔と、前記排出路を移動する汚物を砕く粉砕機構とを備え、
前記粉砕機構は、駆動されて回転する回転羽根を有する、
ことを特徴とする使用者装着型の汚物処理装置である。
【0068】
この構成によれば、装着カップは、便器のような大型の重量物(例えば、特許文献1参照)ではなく、背臥位の股間に装着可能な小型化および軽量化されたカップ形の装着部材であり、使用者(例えば、起き上がって排泄することが困難な被介護者)は股間に装着カップを当てたままの背臥位で就寝することが可能である。そのため、介護者と被介護者(使用者)の肉体的および精神的な負担のさらなる軽減が可能である。また、装着カップにおいて、噴出孔は臀部密着部を介して排出路と対向する位置に設けられており、浄水を噴出孔から排出路へ向けて真っ直ぐ噴出することができる。したがって、噴出孔から噴出した浄水を汚物としての大便に当て、水圧と水流を最大限利用して大便を排出路の粉砕機構へ押し流し、粉砕機構にて効率よく大便を粉砕することができる。これによって、排出路内での大便の詰まりを抑制することができると共に、排出路の小径化が可能となる。
【0069】
さらに、本発明の好ましい態様について説明する。
(2)前記装着カップ内の汚物を検知する汚物センサと、前記汚物センサの検知に基づいて前記浄水ポンプ、前記粉砕機構および前記回収ポンプを制御する制御部とをさらに備え、
前記汚物センサは、前記臀部密着部の外面に検知電極が設けられた静電容量型の臀部センサからなり、
前記制御部は、前記臀部センサの検知に応じて前記浄水ポンプを作動させて前記噴出孔から浄水を噴出させ、前記粉砕機構を作動させ、前記回収ポンプを作動させてもよい。
この構成によれば、装着カップを装着した使用者が汚物としての大便を排泄すると、装着カップ内の臀部密着部に浄水が噴出して汚物を排出路へ向けて流し、粉砕機構にて粉砕された汚物を含む汚水を排出路を介して汚物回収部に回収する処理を自動的に行うことができる。また、静電容量型の臀部センサは、臀部密着部の外面に設けられるため、汚物(大便)や浄水と接触することによる腐食を回避して検知精度を維持するのに有利となる。
なお、このような自動的な汚物処理を実行させる開始ボタンを設け、開始ボタンを押すと制御部が汚物処理を開始させるようにしてもよく、この場合、汚物センサを省略してもよい。
【0070】
(3)前記装着カップは、前記臀部密着部に連設されて股間の鼠径部側に配置される鼠径部密着部と、前記浄水ポンプからの浄水を股間に向けて吐出させるよう前記鼠径部密着部に設けられた吐出孔とをさらに有してもよい。
この構成によれば、装着カップを装着した使用者が汚物としての小便および/または大便を排泄すると、装着カップの鼠径部密着部の吐出孔から股間(例えば、局部から肛門に亘る範囲)に向けて浄水が吐出して股間を洗浄し、汚物を含む汚水を排出路を介して汚物回収部に回収する処理を自動的に行うことができる。この際、臀部センサが、大便を検知しなかった場合は粉砕機構は作動せず、大便を検知した場合は粉砕機構は作動するよう、制御部は臀部センサの検知に応じて粉砕機構を制御する。
【0071】
(4)前記粉砕機構は、前記回転羽根を回転駆動するモータをさらに有し、
前記回収ポンプは、前記モータの出力軸に連結されて回転駆動される羽根車を有してもよい。
この構成によれば、粉砕機構のモータを動力源として回収ポンプの羽根車を回転駆動することができるため、部品点数の低減とコストダウンを図ることができると共に、回収ポンプを装着カップと一体化しやすくなる。なお、部品点数の低減には、回収ポンプ用モータが不要であることと、回収ポンプ用モータと装置本体との電気配線が不要であることが含まれる。
【0072】
(5)前記モータの前記出力軸は、前記排出路に沿って前記排出路内に配置されており、
前記回転羽根は、前記出力軸における前記排出路の上流側の先端に設けられ、
前記回収ポンプは、前記排出路における前記回転羽根よりも下流側に設けられてもよい。
この構成によれば、回収ポンプを装着カップに一体化することができる。さらに、回収ポンプが装着カップと別に設けられた場合と比べて装着カップの取り扱いが容易になる。
【0073】
(6)前記装着カップは、前記臀部密着部および前記鼠径部密着部を有する装着カップ本体と、前記排出路および前記粉砕機構を有する駆動部とを備え、
前記装着カップ本体と前記駆動部とが互いに分離・結合可能であってもよい。
この構成によれば、装着カップのメンテナンス時に装着カップ本体と駆動部とを分離することができるため、汚物と接触した可能性がある装着カップ本体の凹部、駆動部の排出路、粉砕機構、回収ポンプ等の洗浄や消毒作業を容易に行うことができる。
【0074】
(7)前記装着カップが背臥位の股間に装着された状態において、前記回転羽根は、下方にU字形またはフォーク形に開く形状を有し、上下方向の軸心を中心として回転してもよい。
この構成によれば、回転羽根にて粉砕された大便の欠片が回転羽根に付着しても浄水にて流されやすくなり、装着カップ内を清潔に保ちやすくなる。
【0075】
(8)前記粉砕機構が、互いに隣接しかつ逆回転する一対の回転羽根を有するものであってもよい。
この構成によれば、互いに逆回転する一対の回転羽根にて大便をより細かく粉砕することができる。
【0076】
(9)前記回収ポンプが、前記装着カップまたはその近傍に設けられてもよい。
この構成によれば、浄水ポンプおよび浄水収容部を備えた装置本体の外部に、回収ポンプおよび汚物回収部を設けることができる。この結果、装置本体を小型化することができると共に、浄水収容部を備える装置本体内から汚物回収部を分離できて装置本体内を衛生的に構成することができる。
【0077】
(10)前記浄水ポンプと前記浄水収容部とを収納する筐体を有する装置本体と、前記回収ポンプが設けられた前記装着カップと、前記汚物回収部とを互いに分離して備えてもよい。
この構成によれば、回収ポンプが装着カップと一体化される。装置本体との配線についても、回収ポンプへの配線と装着カップ内のモータ駆動回路や汚物センサへの配線を一つに束ねることができるので、回収ポンプが装着カップと別の場合に比べて取り扱いが容易になる。
【0078】
(11)前記浄水収容部が、底部に開閉可能な取水口を有する浄水容器と、前記浄水容器を着脱可能に支持して前記取水口から浄水が充填される容器受け部と、前記容器受け部内に設けられた浄水ヒータとを備えてもよい。
この構成によれば、浄水容器内の浄水を容器受け部に供給し、容器受け部内の浄水を浄水ヒータにて温め、温めた浄水を用いて装着カップ内の汚物の排出および股間の洗浄に用いることができる。したがって、使用者に冷たい浄水がかかって不快感を与えることがない。
【0079】
(12)前記容器受け部内の浄水中に浸漬される中空管を含み、前記浄水に代えて、前記中空管を経由して温められた空気を前記噴出孔または前記吐出孔から前記装着カップの内部に流入させる浄水/送風切替機構をさらに備えてもよい。
この構成によれば、吐出孔から吐出した浄水にて股間を洗浄した後、噴出孔または吐出孔から装着カップの内部に流入させた温風にて股間および装着カップ内を乾燥させることができる。したがって、排泄後の使用者に股間が濡れたままの不快な状態をさせることがない。
【0080】
(13)前記装着カップの内壁が、親水性を有するように粗面仕上げされてもよい。
この構成によれば、装着カップの内壁(内面)に汚物が付着しても浄水にて流れやすくなり、装着カップの内壁が汚れにくくなる。
【0081】
(14)前記臀部密着部および前記鼠径部密着部はそれぞれ凹部を有しており、
前記臀部密着部および前記鼠径部密着部の各凹部の開口端縁は滑らかに繋がっており、
前記臀部密着部の前記凹部の前記開口端縁と前記鼠径部密着部の前記凹部の前記開口端縁に沿って連続的に膨出部が設けられており、
前記装着カップの外面が硬度70~80のシリコーンゴムにて形成され、前記膨出部が硬度5~20のシリコーンゴムにて形成されてもよい。
この構成によれば、装着カップの形状を維持しながら、装着カップを股間に装着したときに股間の臀部および鼠径部に膨出部が密着しやすくなって装着カップ内から外部へ液漏れしにくくなる。
【0082】
本発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、本発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、本発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。本発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0083】
1:汚物処理装置、 2、3、4:接続パイプ、 10:装置本体、 10x:筐体、 11:浄水収容部、 11a:浄水容器、 11aa:底部、 11ab:取水口、 11ac:脚部、 11b:蓋体、 11c:容器受け部、 11ca:底部、 11cb:区画壁、 11cba:凸部、 11cbb:通水孔、 11d:浄水ヒータ、 11r:ロック部材、 11v:開閉弁、 11va:筒状収納部、 11vaa:通水孔、 11vb:付勢部材、 11vc:弁本体、 13:フィルタ、 15:浄水ポンプ、 17:逆止弁、 19:T字形継手、 21:クロス継手、 23:浄水切替バルブ、 25:局部洗浄切替バルブ、 27:カップ洗浄切替バルブ、 29:水抜きポンプ、 29a:吸気口、 29b:排気口、 31:浄水撹拌ポンプ、 31a:取水口、 31b:吐出口、 41第1浄水パイプ、 41a、43a、45a、47a:ホースカップリング、 43:第2浄水パイプ、 45:第3浄水パイプ、 47、47x、47y:第1空気循環パイプ、 49:第2空気循環パイプ、 50:電源回路、 51:制御部(メイン回路)、 52:モータ駆動回路、 53:汚物センサ、 53a:第1汚物センサ(第1臀部センサ)、 53b:第2汚物センサ(第2臀部センサ)、 54:浄水センサ、 55:温度センサ、 56:警告ランプ、 58:操作パネル、 59:マルチコネクタ、 60、60x、160:装着カップ、 60a:カバー部材、 60xa:装着カップ本体、 60xb:駆動部、 61:臀部密着部、 61a、62a、63a:凹部、 61ab:膨出部、 61d:下中空部、 61u:上中空部、 61x、61y:接続筒部、 62:鼠径部密着部、 62d:下中空部、 62u:上中空部、 62x、62y:接続筒部、 63:下腹部密着部、 64:排出路、 64a:開口部、 64b:接続筒部、 65:噴出孔、 66、166:粉砕機構、 66a、166a:回転羽根、 166aa:羽根本体部、 166ab:軸部、 66b、166b:モータ、 66ba:出力軸、 166c:減速機構、 67:吐出孔、 68:吸気口、 69:カップ洗浄孔、 70、170:回収ポンプ、 71:羽根車、 72:ケース部、 72a:流入口、 73:接続筒部、 74:接続部材、 80:汚物回収部、 81:汚物回収パイプ、 90:汚物回収部、 B:ベルト、 T:締結部材、 W:浄水