(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163990
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20231102BHJP
B25J 15/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B25J15/08 W
B25J15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075259
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】小河路 隆裕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES04
3C707ET02
3C707EV02
3C707KS34
3C707KV06
3C707KW03
3C707KX08
3C707LV10
3C707LV17
3C707MS30
(57)【要約】
【課題】複数の爪部材による把持力を検出することができると共に、爪部材のサイズを変更する自由度を大きくすることができるロボットハンドを提供する。
【解決手段】被把持部材(21)を把持する複数の爪部材(6A~6C)と、複数の爪部材(6A~6C)の一端部を揺動可能に保持する支持部材(5)と、複数の爪部材(6A~6C)を駆動するアクチュエータ(3)と、複数の爪部材(6A~6C)のそれぞれに設けられて、被把持部材(21)を把持した際の爪部材(6A~6C)の変形量を検出する複数のセンサと、を備えるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被把持部材を把持する複数の爪部材と、
複数の前記爪部材の一端部を揺動可能に保持する支持部材と、
複数の前記爪部材を駆動するアクチュエータと、
複数の前記爪部材のそれぞれに設けられて、前記被把持部材を把持した際の前記爪部材の変形量を検出する複数のセンサと、を備えた、
ことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記センサは、
前記爪部材の揺動方向における一方の面に配置されて、前記爪部材の長手方向の変形量を検出し、
前記爪部材は、
前記爪部材の揺動方向における他方の面に、前記爪部材の長手方向に対して直交する方向に沿って全幅に亘って形成された溝状の応力集中部を有し、
前記応力集中部は、前記センサに対向する位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記センサは、
前記爪部材の揺動方向外側の面に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記センサは、前記爪部材の長手方向に対して直交する方向の幅よりも狭い幅を有するピエゾ式センサを含むことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ハウジング内に収容されている直動アクチュエータにより、2本の爪の先端部を開閉動作させる構造のロボットハンドが記載されている。直動アクチュエータにより駆動される2本の直動軸は、ハウジングの側面に形成されている導出穴を介して外部に導出される。爪は、基部がハウジングの外部で直動軸に固定されており、ハウジングの導出穴と直動軸の間にはシール部材が介在している。
【0003】
そして、2本の直動軸にそれぞれの爪の基部が固定されている部位は、2本の爪の先端部を間に挟む位置にある。また、導出穴の少なくとも一方は、爪の先端部よりも下方に設けられている。従って、2本の直動軸にそれぞれの爪の基部が固定されている部位は、2本の爪の先端部を間に挟む位置にあるので、サイズがハウジングの側方寸法よりも小さいワークであっても、先端部によって容易に把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなロボットハンドでは、小さいワークであっても、2本の爪の先端部で把持できるが、ワークを把持する把持力を検出することができない。そのため、把持する力加減によっては、ワークを傷つけてしまう可能性がある。一方、2本の爪の先端に触覚センサを装着して把持力を検出することができるが、触覚センサのサイズに爪のサイズが依存してしまい、爪を細くするなど、爪のサイズを自由に変更することが難しくなる。
【0006】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、複数の爪部材による把持力を検出することができると共に、爪部材のサイズを変更する自由度を大きくすることができるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るロボットハンドは、複数の爪部材と、支持部材と、アクチュエータと、複数のセンサと、を備えている。複数の爪部材は、被把持部材を把持する。支持部材は、複数の前記爪部材の一端部を揺動可能に保持する。アクチュエータは、複数の前記爪部材を駆動する。複数のセンサは、複数の前記爪部材のそれぞれに設けられて、前記被把持部材を把持した際の前記爪部材の変形量を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数の爪部材による把持力を検出することができると共に、爪部材のサイズを変更する自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係るロボットハンドの構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す爪部材の一例を示す側面図である。
【
図3】
図1に示すロボットハンドを用いた嵌合作業の第1工程を説明する図である。
【
図4】
図1に示すロボットハンドを用いた嵌合作業の第2工程を説明する図である。
【
図5】
図1に示すロボットハンドを用いた嵌合作業の第3工程を説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るロボットハンドの構成の一例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係るロボットハンドの構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態1乃至実施形態3について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るロボットハンド1について
図1~
図5を参照しつつ説明する。先ず、ロボットハンド1の概略構成について
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るロボットハンド1の構成の一例を示す斜視図である。
図2は、爪部材6Aの一例を示す側面図である。
【0012】
[概略構成]
図1には、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を示している。従って、X軸方向とY軸方向は、Z軸方向を法線とする平面を構成する2つの直交する方向である。Z軸方向はロボットハンド1の中心軸P1と平行な方向であって、ロボットハンド1の先端から基端部側への方向をZ軸正方向とする。
【0013】
図1に示すように、ロボットハンド1は、アクチュエータ3と、支持部材5と、爪部材6A~6Cと、を含んでいる。アクチュエータ3は、爪部材6A~6Cを開閉するための駆動源であり、例えば、ステッピングモータであるが、これに限定されない。例えば、アクチュエータ3は、サーボモータ、空圧式または油圧式のシリンダ等で構成されてもよい。
図1では、アクチュエータ3の図示を簡略化している。
【0014】
支持部材5は、アクチュエータ3の先端部に取り付けられている。また、支持部材5の外周面の先端側には、断面矩形状の3つの溝部5A、5B、5Cが、Z軸方向に沿って形成されている。溝部5A~5Cは、Z軸に平行な中心軸P1を中心とした等角度間隔、すなわち、120度間隔で半径方向内側へ窪むように形成されている。溝部5A~5Cは、支持部材5の外周面の先端からZ軸方向の略中央部まで延びるように形成されている。
【0015】
溝部5A~5Cの周方向の幅は、同一に形成されて、各爪部材6A~6Cの幅よりも広くなるように形成されている。また、支持部材5の先端面の中央部には、中心軸P1が通過するように開口5Eが形成されている。開口5Eには、例えばカメラ等を実装することができる。
【0016】
各爪部材6A~6Cの一端側(
図1中、Z軸正方向の先端部)は、支持部材5の各溝部5A~5Cの奥側において揺動可能に支持されている。従って、爪部材6A~6Cは、Z軸に平行な中心軸P1を中心とした等角度間隔、すなわち、120度間隔で配置されている。各爪部材6A~6Cは、同一の部材であるが、説明の便宜上異なる符号を付している。また、各爪部材6A~6Cの材質は、アルミニウム、ステンレス等の金属や合成樹脂等、適宜選択される。
【0017】
図1及び
図2に示すように、各爪部材6A~6Cは、横断面が略矩形状で、側面形状が略弓形の細長形状に形成されている。各爪部材6A~6Cは、揺動可能に支持される基部11と、中間部12と、先端部13とからなる。基部11には、不図示の支持軸が摺動不能に嵌合される貫通孔11Aが形成されている。従って、各爪部材6A~6Cは、アクチュエータ3を介して、貫通孔11Aに嵌合された不図示の支持軸回りに揺動される。
【0018】
また、
図2に示すように、中間部12は、基部11から爪部材6A~6Cの長手方向の略中央部まで、略水平に延びている。続いて、中間部12は、爪部材6A~6Cの長手方向の略中央部から先端部まで、揺動方向(
図2中、矢印8方向)の内側へ斜めに延びている。従って、中間部12は、爪部材6A~6Cの長手方向の略中央部で、揺動方向外側へ突出するように曲がっている。そして、先端部13は、再度、中間部12の先端から基部11に対して略平行に延びている。
【0019】
また、中間部12の揺動方向内側の面には、爪部材6A~6Cの長手方向の略中央部において、断面略半円形の溝15が、爪部材6A~6Cの長手方向に対して直交する方向に沿って全幅に亘って形成されている。溝15の最大深さは、爪部材6A~6Cの厚さの約半分に設定されていてもよい。溝15の断面形状は、略半円形に限定されない。溝15の断面形状は、例えば略円弧状、略矩形状等でもよい。溝15は、溝状の応力集中部の一例として機能する。
【0020】
爪部材6A~6Cには、爪部材6A~6Cの変形量を検出するセンサが設けられている。本実施形態1では、
図1及び
図2に示すように、中間部12の揺動方向外側の面には、爪部材6A~6Cの長手方向の略中央部において、所定長さの公知のピエゾ式線状センサ18(特開2021-170032号公報参照)が、爪部材6A~6Cの長手方向に沿って接着等により固定されている。ピエゾ式線状センサ18は、ピエゾ式センサの一例であり、線状であることは必須ではない。ピエゾ式線状センサ18は、爪部材6A~6Cの長手方向に対して直交する方向において、爪部材6A~6Cの幅よりも狭い幅を有する。
【0021】
ピエゾ式線状センサ18は、爪部材6A~6Cの幅方向の略中央部において、爪部材6A~6Cの幅方向に対して直交するように固定されている。また、ピエゾ式線状センサ18は、略中央部が溝15の幅方向中央部、つまり、溝15の底面部に対向するように固定されるのが好ましい。
【0022】
ピエゾ式線状センサ18は、例えば、内部導体と外部導体との間にピエゾ材料が配置された線状センサである。そして、ピエゾ式線状センサ18に外部から力が加わったときに、ピエゾ材料の変形に応じた内部導体と外部導体との間に電圧が誘起される。その結果、ピエゾ式線状センサ18の内部導体と外部導体との間に誘起された電圧を計測することによって、爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。
【0023】
例えば、
図3に示すように、ロボットハンド1により丸軸状の被把持部材21を爪部材6A~6Cによって把持する。この場合には、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18の内部導体と外部導体との間に誘起された電圧を計測することによって、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。
【0024】
そして、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、各爪部材6A~6Cの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、3つの爪部材6A~6Cによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド1の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0025】
また、
図3に示すように、爪部材6A~6Cによって丸軸状の被把持部材21を把持した状態で、ロボットハンド1をZ軸負方向(
図3中、下方向)に移動させる。そして、爪部材6A~6Cによって把持された被把持部材21が被取付部材23に形成された貫通孔25の周縁部に接触した場合には、ロボットハンド1は、被把持部材21を介して外力F1を受ける。また、3つの爪部材6A~6Cは、中心軸P1回りに120度間隔で配置されている。
【0026】
その結果、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18の内部導体と外部導体との間に誘起された電圧を計測することによって、外力F1によって発生した各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。そして、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。
【0027】
[嵌合作業]
次に、上記のように構成されたロボットハンド1及びロボットアームを制御する不図示のコントローラが実行する嵌合作業の一例について
図3~
図5に基づいて説明する。不図示のロボットアームは、垂直多関節型ロボットアームを用いる。ロボットハンド1は、ロボットアームの先端に取り付けられている。
図3は、コントローラが実行する嵌合作業の第1工程を説明する図である。
図4は、コントローラが実行する嵌合作業の第2工程を説明する図である。
図5は、コントローラが実行する嵌合作業の第3工程を説明する図である。尚、
図3~
図5において、爪部材6Aを図示していない。
【0028】
[第1工程]
図3に示すように、不図示のコントローラが実行する嵌合作業は、丸軸状の被把持部材21を板状の被取付部材23に形成された貫通孔25に嵌め込む嵌合作業である。不図示のコントローラは、先ず、ロボットハンド1の爪部材6A~6Cによって丸軸状の被把持部材21の一端を把持する。そして、コントローラは、被把持部材21を貫通孔25のZ軸正方向側(
図3中、上側)へ移動させる。
【0029】
この際、被把持部材21と貫通孔25の位置合わせは、画像認識や事前の教示操作を利用することにより行う。被把持部材21と貫通孔25との間には、被把持部材21の供給位置のばらつきや画像認識の誤差により、位置や姿勢のずれが生じていることがある。すなわち、被把持部材21と貫通孔25は、必ずしも互いに正対しているとは限らない。
【0030】
続いて、不図示のコントローラは、不図示のロボットアームを動かして、ロボットハンド1をZ軸負方向(
図3中、下方向)へ移動させて、被把持部材21を貫通孔25に向かって略一定の力で押し付ける。そして、被把持部材21が貫通孔25の端縁と接触することにより、被把持部材21と被取付部材23との間に力F1が発生して、被把持部材21を介して各爪部材6A~6Cが、外力F1を受ける。
【0031】
その結果、不図示のコントローラは、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧を計測することにより、外力F1によって発生した各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出する。そして、不図示のコントローラは、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出する。
【0032】
また、不図示のコントローラは、外力F1によって発生した各爪部材6A~6Cのいずれかの長手方向の変形量を検出した場合、不図時のロボットアームの動作を停止させる。そして、不図示のコントローラは、不図示のロボットアームを動かして、ロボットハンド1をZ軸正方向(
図3中、上方向)へ所定距離、例えば、5mm程度移動させ、被把持部材21と貫通孔25とを離間させる。
【0033】
[第2工程]
次に、不図示のコントローラは、ロボットハンド1に作用するX軸とY軸の2軸方向の力成分FX、FYをそれぞれゼロに近づけるX軸方向とY軸方向へ所定距離L1(例えば、0.2mm)ずつロボットハンド1を移動させる。また、不図示のコントローラは、ロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZをそれぞれゼロに近づけるX軸回り方向とY軸回り方向とZ軸回り方向へ所定角度θ1(例えば、0.3度)ずつロボットハンド1を回転させる。
【0034】
そして、
図4に示すように、不図示のコントローラは、不図示のロボットアームを動かして、ロボットハンド1をZ軸負方向(
図4中、下方向)へ移動させて、被把持部材21を貫通孔25に向かって略一定の力で押し付ける。そして、被把持部材21が貫通孔25の端縁と接触することにより、被把持部材21と被取付部材23との間に力F2が発生して、被把持部材21を介して各爪部材6A~6Cが、外力F2を受ける。
【0035】
その結果、不図示のコントローラは、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧を計測することにより、外力F2によって発生した各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出する。そして、不図示のコントローラは、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出する。
【0036】
また、不図示のコントローラは、外力F2によって発生した各爪部材6A~6Cのいずれかの長手方向の変形量を検出した場合、不図時のロボットアームの動作を停止させる。そして、不図示のコントローラは、不図示のロボットアームを動かして、ロボットハンド1をZ軸正方向(
図4中、上方向)へ所定距離、例えば、5mm程度移動させ、被把持部材21と貫通孔25とを離間させる。
【0037】
[第3工程]
次に、不図示のコントローラは、ロボットハンド1に作用するX軸とY軸の2軸方向の力成分FX、FYをそれぞれゼロに近づけるX軸方向とY軸方向へ所定距離L1の1/2の距離(例えば、0.1mm)ずつロボットハンド1を移動させる。また、不図示のコントローラは、ロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZをそれぞれゼロに近づけるX軸回り方向とY軸回り方向とZ軸回り方向へ所定角度θ1の1/2の角度(例えば、0.15度)ずつロボットハンド1を回転させる。
【0038】
そして、
図5に示すように、不図示のコントローラは、不図示のロボットアームを動かして、ロボットハンド1をZ軸負方向(
図5中、下方向)へ移動させて、被把持部材21を貫通孔25に向かって略一定の力で押し付ける。また、不図示のコントローラは、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧を計測する。
【0039】
そして、被把持部材21が貫通孔25の端縁と接触しないで進入した場合は、不図示のコントローラは、丸軸状の被把持部材21を貫通孔25に押し込む。つまり、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧が増加しない場合は、不図示のコントローラは、丸軸状の被把持部材21を貫通孔25に押し込み、嵌合作業を終了する。
【0040】
以上詳細に説明した通り、実施形態1に係るロボットハンド1では、各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面にピエゾ式線状センサ18を長手方向に沿って接着等によって固定する。これにより、各爪部材6A~6Cに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧を計測することによって、外力Fによって発生した各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。
【0041】
従って、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、各爪部材6A~6Cの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、3つの爪部材6A~6Cによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド1の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0042】
また、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド1に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。その結果、ロボットハンド1を用いて軸状の被把持部材21を貫通孔25に嵌め込む等の嵌合作業を行うことができる。
【0043】
また、各爪部材6A~6Cの揺動方向内側の面において、ピエゾ式線状センサ18の略中央部に対向する位置に、断面略半円形の溝15が、爪部材6A~6Cの長手方向に対して直交する方向に沿って全幅に亘って形成されている。これにより、爪部材6A~6Cによって被把持部材21を把持した際に、爪部材6A~6Cのピエゾ式線状センサ18が配置された位置での長手方向における変形量を溝15によって増大させることができる。その結果、ピエゾ式線状センサ18のセンサ出力を大きくすることができ、爪部材6A~6Cの変形量の検出精度を向上させることができる。
【0044】
また、ピエゾ式線状センサ18は、各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に配置されている。これにより、ロボットハンド1を分解することなく、ピエゾ式線状センサ18の取り換え作業等を迅速に行うことができる。尚、ピエゾ式線状センサ18を各爪部材6A~6Cの揺動方向内側の面に配置し、溝15を各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に設けるようにしてもよい。
【0045】
また、ピエゾ式線状センサ18は、細径化することが可能なため、爪部材6A~6Cを細くする等、爪部材6A~6Cのサイズを変更する自由度を大きくすることができる。その結果、爪部材6A~6Cが細くても、ピエゾ式線状センサ18によって、被把持部材21を把持した際の各爪部材6A~6Cの変形量を検出することができる。
【0046】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係るロボットハンド31の概略構成について
図6に基づいて説明する。
図6は、実施形態2に係るロボットハンド31の構成の一例を示す斜視図である。
【0047】
図6に示すように、ロボットハンド31は、実施形態1に係るロボットハンド1とほぼ同じ構成である。但し、支持部材5の外周面に溝部5Cが形成されていない。また、支持部材5の外周面の先端側には、断面矩形状の2つの溝部5A、5Bが、Z軸に平行な中心軸P1に対して対称な位置、すなわち、180度間隔で半径方向内側へ窪むように形成されている。また、支持部材5の先端面の中央部には、中心軸P1が通過するように開口5Eが形成されている。開口5Eには、例えばカメラ等を実装することができる。
【0048】
各爪部材6A、6Bの一端側(
図6中、Z軸正方向の先端部)は、支持部材5の各溝部5A、5Bの奥側において揺動可能に支持されている。つまり、爪部材6A、6Bは、Z軸に平行な中心軸P1に対して対称な位置、すなわち、180度間隔でX軸方向に相対向して配置されている。従って、2つの爪部材6A、6Bは、アクチュエータ3を介して、X軸方向に揺動駆動されて開閉される。各爪部材6A、6Bは、同一の部材である。また、各爪部材6A、6Bの材質は、アルミニウム、ステンレス等の金属や合成樹脂等、適宜選択される。また、各爪部材6A、6Bの長手方向の略中央部には、揺動方向外側の面にピエゾ式線状センサ18が長手方向に沿って接着等により固定されている。
【0049】
上記のように構成されたロボットハンド31では、アクチュエータ3を介して、丸軸状の被把持部材21(
図3参照)を2つの爪部材6A、6Bによって把持する。この場合には、各爪部材6A、6Bに取り付けられたピエゾ式線状センサ18の内部導体と外部導体との間に誘起された電圧を計測することによって、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量を検出することができる。
【0050】
そして、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、各爪部材6A、6Bの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、2つの爪部材6A、6Bによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド31の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0051】
また、
図3に示す上記実施形態1に係るロボットハンド1と同様に、2つの爪部材6A、6Bによって丸軸状の被把持部材21を把持した状態で、ロボットハンド31をZ軸負方向(
図3中、下方向)に移動させてもよい。そして、爪部材6A、6Bによって把持された被把持部材21が被取付部材23に形成された貫通孔25の周縁部に接触した場合には、ロボットハンド31は、被把持部材21を介して外力F1を受ける。また、2つの爪部材6A、6Bは、中心軸P1回りに180度間隔で相対向して配置されている。
【0052】
その結果、各爪部材6A、6Bに取り付けられたピエゾ式線状センサ18の内部導体と外部導体との間に誘起された電圧を計測することによって、外力F1によって発生した各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量を検出することができる。そして、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド31に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。
【0053】
以上詳細に説明した通り、実施形態2に係るロボットハンド31では、各爪部材6A、6Bの揺動方向外側の面にピエゾ式線状センサ18を長手方向に沿って接着等によって固定する。これにより、各爪部材6A、6Bに取り付けられたピエゾ式線状センサ18に誘起された電圧を計測することによって、外力Fによって発生した各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量を検出することができる。
【0054】
従って、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、各爪部材6A、6Bの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、2つの爪部材6A、6Bによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド31の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0055】
また、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド31に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。その結果、ロボットハンド31を用いて軸状の被把持部材21を貫通孔25(
図3参照)に嵌め込む等の嵌合作業時に、被把持部材21と貫通孔25の接触などを検出して嵌合作業を行うことが可能となる。
【0056】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3に係るロボットハンド41の概略構成について
図7に基づいて説明する。
図7は、実施形態3に係るロボットハンド41の構成の一例を示す斜視図である。
【0057】
図7に示すように、ロボットハンド41は、実施形態1に係るロボットハンド1とほぼ同じ構成である。但し、各爪部材6A~6Cには、ピエゾ式線状センサ18に替えて、公知の略細長四角形状の歪検出素子43が接着などにより固定されている点で異なっている。歪検出素子43は、例えば、金属薄膜歪ゲージおよび半導体歪ゲージなどの歪ゲージが含まれる。実施形態3では、歪検出素子43は、例えば金属薄膜歪ゲージである。
【0058】
歪ゲージは、爪部材6A~6Cが長手方向に変形したときに抵抗の変化を生じる素子である。歪ゲージには、公知のものを用いることができ、その例には、金属薄膜の配線パターンと、それを覆う可撓性を有する樹脂フィルムとを有する金属薄膜歪ゲージ、および、半導体薄膜で構成される半導体歪ゲージが含まれる。金属薄膜の金属の例には、Cu(銅)-Ni(ニッケル)系合金、および、Ni-Cr(クロム)系合金、が含まれる。樹脂の例には、ポリイミド及びエポキシ樹脂が含まれる。
【0059】
歪ゲージは、接着剤で各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に貼り付けられてもよい。あるいは、スパッタリング法または真空蒸着法によって金属薄膜または半導体薄膜の配線を各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に直接作製することによって、歪ゲージを配置してもよい。
【0060】
また、
図7に示すように、略細長四角形状の歪検出素子43は、爪部材6A~6Cの幅方向の略中央部において、爪部材6A~6Cの幅方向に対して直交するように接着等により固定されている。また、歪検出素子43は、略中央部が溝15の幅方向中央部、つまり、溝15の底面部に対向するように固定されるのが好ましい。
【0061】
上記のように構成されたロボットハンド41では、例えば、アクチュエータ3を介して、丸軸状の被把持部材21(
図3参照)を爪部材6A~6Cによって把持する。この場合には、各爪部材6A~6Cに取り付けられた歪検出素子43の抵抗の変化を計測することによって、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。
【0062】
そして、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、各爪部材6A~6Cの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、3つの爪部材6A~6Cによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド41の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0063】
また、前記実施形態1に係るロボットハンド1と同様に、不図示のロボットアームの先端にロボットハンド41を取り付ける。そして、上記
図3に示すように、ロボットハンド41の爪部材6A~6Cによって丸軸状の被把持部材21を把持した状態で、ロボットハンド41をZ軸負方向(
図3中、下方向)に移動させてもよい。そして、爪部材6A~6Cによって把持された被把持部材21が被取付部材23に形成された貫通孔25の周縁部に接触した場合には、ロボットハンド41は、被把持部材21を介して外力F1を受ける。また、3つの爪部材6A~6Cは、中心軸P1回りに120度間隔で配置されている。
【0064】
その結果、各爪部材6A~6Cに取り付けられた各歪検出素子43の抵抗値を計測することによって、外力F1によって発生した各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量を検出することができる。そして、各爪部材6A~6Cの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド41に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。これにより、前記実施形態1に係るロボットハンド1と同様に、ロボットハンド41を用いて丸軸状の被把持部材21を貫通孔25(
図3参照)に嵌め込む等の嵌合作業を行うことができる。
【0065】
また、各爪部材6A~6Cの揺動方向内側の面において、歪検出素子43の略中央部に対向する位置に、断面略半円形の溝15が、爪部材6A~6Cの長手方向に対して直交する方向に沿って全幅に亘って形成されている。これにより、爪部材6A~6Cによって被把持部材21を把持した際に、爪部材6A~6Cの歪検出素子43が配置された位置での長手方向における変形量を溝15によって増大させることができる。その結果、歪検出素子43のセンサ出力を大きくすることができ、爪部材6A~6Cの変形量の検出精度を向上させることができる。
【0066】
また、歪検出素子43は、各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に配置されている。これにより、ロボットハンド1を分解することなく、歪検出素子43の取り換え作業等を迅速に行うことができる。尚、歪検出素子43を各爪部材6A~6Cの揺動方向内側の面に配置し、溝15を各爪部材6A~6Cの揺動方向外側の面に設けるようにしてもよい。
【0067】
[変形例1]
上記実施形態2に係るロボットハンド31は、各爪部材6A、6Bのピエゾ式線状センサ18(
図6参照)に替えて、歪検出素子43(
図7参照)が接着等により固定されるようにしてもよい。このように構成されたロボットハンド31では、例えば、アクチュエータ3を介して、丸軸状の被把持部材21(
図3参照)を爪部材6A、6Bによって把持する。この場合には、各爪部材6A、6Bに取り付けられた歪検出素子43の抵抗の変化を計測することによって、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量を検出することができる。
【0068】
そして、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、各爪部材6A、6Bの先端部が被把持部材21を押さえる力を算出することによって、2つの爪部材6A、6Bによる被把持部材21の把持力(保持力)を検出することができる。その結果、ロボットハンド31の被把持部材21を把持する把持力を調整して、被把持部材21を傷つけることを防ぐことが可能となる。
【0069】
また、
図3に示す上記実施形態1に係るロボットハンド1と同様に、2つの爪部材6A、6Bによって丸軸状の被把持部材21を把持した状態で、ロボットハンド31をZ軸負方向(
図3中、下方向)に移動させてもよい。そして、爪部材6A、6Bによって把持された被把持部材21が被取付部材23に形成された貫通孔25の周縁部に接触した場合には、ロボットハンド31は、被把持部材21を介して外力F1を受ける。また、2つの爪部材6A、6Bは、中心軸P1回りに180度間隔で相対向して配置されている。
【0070】
その結果、各爪部材6A、6Bに取り付けられた歪検出素子43の抵抗値を計測することによって、外力F1によって発生した各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量を検出することができる。そして、各爪部材6A、6Bの長手方向の変形量から、被把持部材21を介してロボットハンド31に作用するX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の力成分FX、FY、FZと、X軸、Y軸、Z軸の3軸を回転軸とするモーメント成分MX、MY、MZとを算出することができる。これにより、前記実施形態1に係るロボットハンド1と同様に、ロボットハンド41を用いて丸軸状の被把持部材21を貫通孔25(
図3参照)に嵌め込む等の嵌合作業を行うことができる。
【0071】
[変形例2]
上記実施形態1に係るロボットハンド1と実施形態2に係るロボットハンド31は、各ピエゾ式線状センサ18に替えて、各爪部材6A~6Cの長手方向に対して直交する方向の幅よりも狭い幅を有するフィルム状のピエゾ式センサを用いてもよい。このフィルム状のピエゾ式センサは、爪部材6A~6Cの幅方向の略中央部において、爪部材6A~6Cの幅方向に対して直交するように爪部材6A~6Cの長手方向に沿って接着等により固定されている。また、フィルム状のピエゾ式センサは、略中央部が溝15の幅方向中央部、つまり、溝15の底面部に対向するように固定されるのが好ましい。これにより、上記実施形態1に係るロボットハンド1と実施形態2に係るロボットハンド31と同様の効果を奏することができる。
【0072】
[変形例3]
上記実施形態1に係るロボットハンド1と実施形態2に係るロボットハンド31は、各ピエゾ式線状センサ18に替えて、MEMS技術で製作されたセンサを用いてもよい。これにより、小型のロボットハンドを製作することができる。
【0073】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1、31、41 ロボットハンド、3 アクチュエータ、5 支持部材、6A、6B、6C 爪部材、15 溝、18 ピエゾ式線状センサ、43 歪検出素子