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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163992
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20231102BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20231102BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B41M5/337 230
B41M5/337 214
B41M5/40 220
B41M5/337 212
G09F3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075263
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 邦男
(72)【発明者】
【氏名】池澤 善実
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026DD32
2H026DD48
2H026DD53
2H026FF29
(57)【要約】
【課題】感熱記録層の欠落及び欠点の発生を抑える耐欠落性及び耐欠点性、並びに感熱記録材料のブロッキング及び粘着性の悪化を防止する耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性を有する感熱記録材料を提供する。
【解決手段】課題は、感熱記録層と、支持体と、再湿潤性糊層とをこの順番で少なくとも有し、前記感熱記録層が、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有する感熱記録材料によって帰結できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録層と、支持体と、再湿潤性糊層とをこの順番で少なくとも有し、前記感熱記録層が、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有する感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の表面に対して感熱記録層及び支持体の裏面に対して再湿潤性糊層を有する感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも、再湿潤性糊とスルホン変性ポリビニルアルコールとを含有する再湿潤性糊層、支持体、並びにロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を順次有する感熱記録材料は、既に公知である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されるが如くの感熱記録材料は、再湿潤性糊層を再湿潤させた際の粘着力と、再湿潤性糊層の被着体への接着力に優れる。一方、特許文献1に記載されるが如くの前記感熱記録材料に関しては、感熱記録層用塗液の助剤の一例として消泡剤を記載するのみである。
【0003】
感熱記録材料と消泡剤とについては、例えば、ロイコ染料と顕色剤としてのフェノール性化合物を主成分とし、結合剤として非セルロースエーテル系水溶性高分子化合物とヒドロキシエチルメチルセルロースとを併用し、前記ヒドロキシエチルメチルセルロース100重量部に対し、鉱物油-非イオン系活性剤を主成分とする消泡剤を0.005重量部以上1.0重量部以下添加することを特徴とする感熱記録材料が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-085030号公報
【特許文献2】特開昭58-142892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感熱記録層は、通常、電子供与性染料、染料前駆体、塩基性染料及びロイコ染料などの発色性の染料、電子受容性化合物又は呈色剤などとも称する顕色剤、並びに結合剤を含む水などの媒体に分散して分散体を調製し、前記分散体を紙などの支持体に塗工及び乾燥して得ることができる。しかしながら、顕色剤は分散性が悪いために分散には分散剤を使用する。分散体は分散剤及び結合剤の影響を受けて、泡立ち易い。そこで、特許文献2に記載されるが如くの消泡剤を使用する。
消泡剤を含む分散体では、支持体及び下塗り層などに対して分散体を塗工及び乾燥する際に支持体及び下塗り層などに対する接着性が低下する。結果、消泡剤を含む分散体を支持体及び下塗り層などに対して塗工及び乾燥して得た感熱記録層は、支持体及び下塗り層などからの欠落を発生する場合がある。また、消泡剤を含む分散体では、発色性の染料、顕色剤及び結合剤に対して消泡剤が相溶性を悪化させる。結果、消泡剤を含む分散体を支持体及び下塗り層などに対して塗工及び乾燥して得た感熱記録層は、感熱記録層の面に欠点を発生する場合がある。
【0006】
特許文献1に記載されるが如くの感熱記録材料は、例えば、物流ラベル用途に好適である。物流ラベルは、通常、ロール紙状で保管又は記録機器内部に装填される。支持体の表面に対して感熱記録層及び支持体の裏面に対して再湿潤性糊層を有する感熱記録材料は、ロール紙状であると、感熱記録層と再湿潤性糊層とが接する状態になる。一般的に、再湿潤性糊層の糊剤には、クロロプレンゴム類、ポリビニルアルコール類、澱粉類、酢酸ビニル系共重合体、デキストリン、アラビアゴム、ニカワ、及びポリアクリルアミドなどが用いられる。
支持体の表面に対して感熱記録層及び支持体の裏面に対して再湿潤性糊層を有する感熱記録体は、例えば、高湿度環境及び予期せぬ吸湿などのように環境及び状況に依存して再湿潤性糊層が粘着性を発現する場合がある。結果、感熱記録材料は、ブロッキングを発生する。よって、この様なブロッキングを軽減する必要がある。また、感熱記録材料がロール紙状であると、消泡剤を含む分散体を塗工及び乾燥して得た感熱記録層では、消泡剤成分が再湿潤性糊層にマイグレーションする。結果、再湿潤性糊層の粘着性を悪化する場合がある。
【0007】
以上から、本発明の目的は、感熱記録層の欠落及び欠点の発生を抑える耐欠落性及び耐欠点性、並びに感熱記録材料のブロッキング及び粘着性の悪化を防止する耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性を有する感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、結合剤と消泡性を有する組成物との組み合わせを鋭意検討した結果、下記の発明を見出した。上記の課題は下記の発明によって解決される。
[1]感熱記録層と、支持体と、再湿潤性糊層とをこの順番で少なくとも有し、前記感熱記録層が、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有する感熱記録材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、感熱記録層の欠落及び欠点の発生を抑える耐欠落性及び耐欠点性、並びに感熱記録材料のブロッキング及び粘着性の悪化を防止する耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性を有する感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の内容を具体的に説明する。
【0011】
感熱記録材料は、感熱記録層と、支持体と、再湿潤性糊層とをこの順番で少なくとも有する。すなわち、感熱記録材料は、支持体と、前記支持体の表面に対して感熱記録層及び前記支持体の裏面に対して再湿潤性糊層を有する。ここで、支持体の表面及び裏面とは、支持体の面を区別するために便宜的な記載であって、支持体の物理的乃至化学的な違いに依存する様な表面及び裏面を示さない。
【0012】
いくつかの実施態様において、感熱記録材料は、支持体と感熱記録層との間及び/又は支持体と再湿潤性糊層との間に下塗り層を有する。この理由は、支持体を熱及び水分から保護できる、又は感熱記録層の接着性を向上できるからである。前記下塗り層は、感熱記録材料分野で従来公知のものであって、顔料及び結合剤を含む。
【0013】
下塗り層が含む顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。顔料は、例えば、ケイソウ土、タルク、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質珪酸カルシウム、シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リトポン、ゼオライト及び加水ハロイサイトなどを挙げることができる。
【0014】
結合剤は、塗工紙分野で従来公知の水溶性樹脂又は水分散性樹脂である。結合剤は、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン、カゼインなどのプロテイン、アルギン酸ソーダ、澱粉及びその変性物などの澱粉類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドアクリル酸エステル共重合体などのポリ(メタ)アクリル酸エステルの各種共重合体、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸及びその塩、スチレン(無水)マレイン酸共重合体及びイソブチレン(無水)マレイン酸共重合体並びにそれらの塩などの各種(無水)マレイン酸共重合体、アクリルアミドアクリル酸エステル共重合体、アクリルアミドアクリル酸エステル(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩、イソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレンイソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩などの水溶性樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、並びにスチレンブタジエン(メタ)アクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの水分散性樹脂を挙げることができる。
【0015】
さらに、下塗り層は、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、分散剤、界面活性剤、着色染料、蛍光染料、滑剤、ワックス、消泡剤、紫外線吸収剤、硬化剤及び架橋剤などを挙げることができる。
【0016】
いくつかの実施態様において、感熱記録材料は、支持体を基準として感熱記録層の外側に保護層を有する。この理由は、感熱記録材料の耐ブロッキング性を良化又は感熱記録層を保護することができるからである。前記保護層は、感熱記録材料分野で従来公知のものであって、結合剤、並びに必要に応じて顔料及び各種添加剤を含む。添加剤は、例えば、界面活性剤、着色染料、蛍光染料、滑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、硬化剤及び架橋剤などを挙げることができる。結合剤及び顔料は、下塗り層で例示したものと同様であって、ここでは説明を割愛する。また、いくつかの実施態様において、保護層は、ワックス類及び/又は脂肪酸金属塩類を含む。この理由は、耐ブロッキング性をより良化することができるからである。
【0017】
下塗り層及び保護層は、各材料を含有する塗工液を従来公知の塗工装置を用いて塗工及び従来公知の乾燥装置を用いて乾燥することで得ることができる。
【0018】
支持体は、感熱記録材料分野で従来公知のものである。支持体は、例えば、塗工紙及び非塗工紙などの紙、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、金属箔、セラミック紙及びガラス板、並びにこれらを組み合わせた複合体又は積層体を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、支持体は、木材及び/又は非木材を原料として得たセルロースを含有する塗工紙及び非塗工紙などの紙である。この理由は、他の支持体に比べて環境への負荷が少ないからである。
【0019】
感熱記録材料の感熱記録層は、発色性の染料を含有した発色する層であって、感熱記録材料分野で従来公知のものである。いくつかの実施態様において、感熱記録層は、発色性の染料である染料前駆体と、顕色剤、顔料及び結合剤とを含有する。また、いくつかの実施態様において、感熱記録層は、必要に応じて増感剤及び各種添加剤を含有する。
【0020】
染料前駆体は、感熱記録材料分野で従来公知であって、例えば、トリアリール系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、フェノチアジン系、スピロ系、スピロピラン系、ラクタム系、フルオラン系、オーラミン系及びインドリノフタリド系などのロイコ体を挙げることができる。染料前駆体は、それぞれ固有の発色色調を有し、前記発色色調の例としては、黒、赤、赤紫、オレンジ、青、緑及び黄色などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、染料前駆体は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0021】
黒色発色を与える染料前駆体の例としては、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-アミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-メチル〕アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2,6-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2,4-ジメチル-6-(4-ジメチルアミノアニリノ)フルオラン、及び3-(N-シクロヘキシル-N-メチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランなどを挙げることができる。
赤色系に発色する染料前駆体の例としては、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(p-ニトロ)アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(o-クロロ)アニリノラクタム、3-ジメチルアミノ-7-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンゾフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,8-ジメチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-tert-ブチルフルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-7-メチルフルオラン、3-(N-エチル-N-トリル)アミノ-7-エチルフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチル)アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、および3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-7,8-ベンゾフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7,8-ベンゾフルオラン、3-トリルアミノ-7-メチルフルオラン、3-トリルアミノ-7-エチルフルオラン、2-(N-アセチルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-プロピオニルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-ベンゾイルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-カルボブトキシアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-ホルミルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-ベンジルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(N-アリルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、および2-(N-メチルアニリノ)-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェノキシフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-7-フェノキシフルオラン、3,3′-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3′-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3′-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、7-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-3-メチル-1-フェニルスピロ〔(1,4-ジヒドロクロメノ〔2,3-c〕ピラゾール)-4,3′-フタリド〕、7-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-3-メチル-1-p-メチルフェニルスピロ〔(1,4-ジヒドロクロメノ〔2,3-c〕ピラゾール)-4,3′-フタリド〕、及び7-(N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ)-3-メチル-1-フェニルスピロ〔(1,4-ジヒドロクロメノ〔2,3-c〕ピラゾール)-4,3′-フタリド〕などを挙げることができる。
青色発色を与える染料前駆体の例としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、及び3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオランなどを挙げることができる。
緑色発色を与える染料前駆体の例としては、3-(N-エチル-N-n-ヘキシル)アミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3,3-ビス(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-〔p-(p-アニリノアニリノ)アニリノ〕-6-メチル-7-クロロフルオラン、及び3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3′-(6′-ジメチルアミノ)フタリドなどを挙げることができる。
黄色系統の発色を与える染料前駆体の例としては、3,6-ジメトキシフルオラン、及び1-(4-n-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-2-(2-キノリル)エチレンなどを挙げることができる。
【0022】
顕色剤は、感熱記録材料分野で従来公知のものであって、温度の上昇によって液化又は溶解する性質を有して染料前駆体と接触して染料前駆体を発色させる性質を有する材料である。顕色剤には、例えば、フェノール系化合物及び芳香族カルボン酸系化合物、並びにこれらの化合物の多価金属塩など有機酸系化合物などを挙げることができる。顕色剤は、複合微粒子又はマイクロカプセルの中に存在することができる。また、顕色剤は、固体分散微粒子の状態で存在することができる。
【0023】
顕色剤は、例えば、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、3-(3-トシルウレイド)フェニル-p-トルエンスルホナート、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-オクチルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-ドデシルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-ベンジルオキシジフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシ-4′-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4-ビス(フェニルスルホニル)フェノール、p-フェニルフェノール、p-ヒドロキシアセトフェノン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス〔2-(p-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、1,3-ビス〔2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(p-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4-[4-(4-{4-[4-(イソプロポキシ)フェニルスルホニル]フェノキシ}ブトキシ)フェニルスルホニル]フェノール、4,4′-[オキシビス(エチレンオキシ-p-フェニレンスルホニル)]ジフェノール、4,4′-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5-クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸、4-〔2′-(4-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、3-(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N-(4-ヒドロキシフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフタレンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ナフタレンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシナフチル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシナフチル)-1-ナフタレンスルホンアミド、N-(4-ヒドロキシナフチル)-2-ナフタレンスルホンアミド、N-(3-ヒドロキシフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(3-ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(3-ヒドロキシフェニル)-1-ナフタレンスルホンアミド、N-(3-ヒドロキシフェニル)-2-ナフタレンスルホンアミド、4,4′-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-(2-{[(4-メチルフェニル)カルバモイル]アミノ}フェニル)ベンゼンスルホンアミド、4-メチル-N-{2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル}ベンゼンスルホンアミド、4-メチル-N-(2-{[(4-メチルフェニル)カルバモイル]アミノ}フェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-ブチルブチル-4-[3-(p-トルエンスルホニル)ウレイド]ベンゾエート、3,3′-(4,4′-メチレンジフェニル)ビス(ウレイド p-トリススルホン)、ビス{3-[3′-(p-トルエンスルホニル)ウレイド]ベンゾエート}、1,5-(3-オキソペンチレン)ビス{3′-[3′-(p-トルエンスルホニル)ウレイド]ベンゾエート}、及びN-フェニルスルホニル-N′-フェニルウレアの誘導体などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、顕色剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0024】
感熱記録層が含有する顔料及び結合剤は、下塗り層で例示したものと同様であって、ここでは説明を割愛する。
【0025】
増感剤は、低融点の熱可溶成分などの感熱記録材料分野で従来公知のものであって、感熱記録材料の発色性を向上させる化合物である。増感剤は、例えば、ジフェニルスルホン、ステアリン酸モノアミド、N-ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N-ステアリル尿素、ベンジル-2-ナフチルエーテル、p-トルエンスルホンアミド、m-ターフェニル、4-ベンジルビフェニル、2,2′-ビス(4-メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α′-ジフェノキシ-o-キシレン、ビス(4-メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、蓚酸ジベンジル、蓚酸ビス(4-メチルベンジル)エステル、蓚酸ビス(4-クロロベンジル)エステル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4-アリルオキシフェニル)スルホン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、4-アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、及び脂肪酸アニリド類などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、増感剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0026】
感熱記録層が必要に応じて含有する添加剤は、従来公知のものであって、例えば、分散剤、界面活性剤、着色染料、蛍光染料、滑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、硬化剤及び架橋剤などを挙げることができる。また、添加剤は、例えば、結合剤に対する併用樹脂としてコアシェル構造の共重合体を挙げることができる。
【0027】
感熱記録層は、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物、並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有する。
【0028】
鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物とは、例えば、消泡成分(疎水性シリカ)の拡散性を高めるために鉱物油をキャリヤー成分(溶媒)として使用したオイル系消泡剤の一種である消泡剤であって、鉱物油に対して疎水性シリカを配合した組成物である。鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物は、例えば、アデカ社、サンノプコ社及び旭化成ワッカーシリコーン社などから市販される。
鉱物油は、油剤分野で従来公知のものであって、ミネラルオイル、ワセリン、パラフィン及び流動パラフィンなどを挙げることができる。鉱物油は、液状鉱物油又は固形鉱物油(ワックス)である。いくつかの実施態様において、鉱物油は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
疎水性シリカは、塗料分野で従来公知のものであって、シリカゾル中のシリカ表面のシラノール基を高級アルコールと反応させてエステルを形成する方法、四エチルケイ酸を加水分解しシリカヒドロゲルを調製して、これを水酸化ナトリウムでpH11に調整した水中で100℃で水熱処理する方法、シリカヒドロゲルとメトキシシランカップリング剤とを反応させる方法、アルキルクロルシラン若しくはアルコキシクロルシランと反応させる方法、カチオン性界面活性剤とアニオン性コロイダルシリカとから脱水反応を利用して疎水性オルガノコロイダルシリカを製造する方法、並びにシリカと各種シリコン油を高温で処理する方法などによって得ることができる表面を疎水性化したシリカである。
【0029】
いくつかの実施態様において、感熱記録層における鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物の含有量は、感熱記録層を形成する総固形分に対して0.1質量%以上0.4質量%以下である。この理由は、感熱記録材料の耐ブロッキング性及び/又は耐粘着悪化性が良化するからである。
【0030】
コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体は、核粒子となるシードエマルションの存在下で、(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミドと共重合可能な単量体とを共重合させて得られるものである。コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体は、例えば、三井化学社などから市販される。
核粒子となるシードエマルションは、従来公知の重合体であって、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系、スチレンブタジエン系、スチレン(メタ)アクリル酸エステル系、(メタ)アクリル酸エステルブタジエン系、(メタ)アクリロニトリル系、(メタ)アクリロニトリルブタジエン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系などを挙げることができる。
(メタ)アクリルアミドと共重合可能な単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル、N-メチロール(メタ)アクリル酸アミドなどのN-置換不飽和カルボン酸アミド、酢酸ビニル、ビニルエステル、並びに(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有単量体などを挙げることができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体は、アクリロニトリル[コア]/(メタ)アクリルアミド[シェル]共重合体及びアクリロニトリル[コア]/スチレン(メタ)アクリルアミド共重合体[シェル]などのコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体である。この理由は、感熱記録材料の耐欠落性、耐欠点性、及び/又は耐ブロッキング性が良化するからである。
【0032】
いくつかの実施態様において、感熱記録層におけるコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体の含有量は、感熱記録層を形成する総固形分に対して5質量%以上35質量%以下である。この理由は、感熱記録材料の耐欠落性及び/又は耐欠点性が良化するからである。
【0033】
感熱記録層が、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有することで、感熱記録層を形成するための塗工液が鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物並びにコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体を含有することになり、感熱記録層を形成するための塗工液が良好に消泡され感熱記録層における欠点の発生を抑える。なおかつ、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物とコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体との組み合わせは、支持体に対する接着性を阻害しないために感熱記録層の欠落の発生を抑える。
さらに、裏面に再湿潤性糊層を有する感熱記録材料であっても、鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物とコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体との組み合わせは、耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性をもたらすことができる。
【0034】
感熱記録材料において、感熱記録層は、従来公知の方法で支持体に対して又は下塗り層に対して設けることができる。例えば、感熱記録層は、染料前駆体、顕色剤、顔料及び結合剤、並びに必要に応じて増感剤及び各種添加剤を含有する感熱記録層を形成するための分散体を従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて支持体に対して又は下塗り層に対して塗工及び乾燥することで得ることができる。
塗工装置は、例えば、エアーナイフコーター、各種ブレードコーター、各種バーコーター、各種カーテンコーター及び各種ロールコーターなどを挙げることができる。塗工装置には、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーンなどの各種印刷方式による方法も含まれる。
乾燥装置は、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、及びマイクロ波などを利用した乾燥機などを挙げることができる。
【0035】
再湿潤性糊層は、湿潤することによって粘着性を発現する特性を有する糊剤を主成分として含有するものである。再湿潤性糊層に用いられる糊剤は、糊剤分野で従来公知のものである。糊剤は、例えば、クロロプレンゴム類、ポリビニルアルコール類、澱粉類、酢酸ビニルアクリル酸塩共重合体及び酢酸ビニルメタクリル酸塩共重合体などの酢酸ビニル系共重合体、デキストリン、アラビアゴム、ニカワ、及びポリアクリルアミドなどを挙げることができる。糊剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
いくつかの実施態様において、糊剤は、ポリビニルアルコール類及び澱粉類から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。この理由は、再湿潤性糊層と接する感熱記録層との関係で耐ブロッキング性が良化するからである。
【0036】
再湿潤性糊層は、糊剤の特性を阻害しない範囲で、糊剤以外に各種助剤を含有することができる。助剤は、例えば、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、抗菌剤、防黴剤、香料及び難燃剤などを挙げることができる。
【0037】
感熱記録材料において、再湿潤性糊層は、従来公知の方法で支持体に対して設けることができる。例えば、再湿潤性糊層は、糊剤を及び必要に応じて各種助剤を含有する再湿潤性糊層を形成するための塗工液を従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて支持体に対して塗工及び乾燥することで得ることができる。塗工装置及び乾燥装置は、感熱記録層と同じであり、ここでは説明を割愛する。
【0038】
下塗り層、感熱記録層、保護層及び/又は再湿潤性糊層は、カレンダー処理を施すことができる。カレンダー処理は、製紙分野で従来公知のカレンダー処理装置を用いて達成することができる。カレンダー処理の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【実施例0039】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。なお、実施例において、質量%及び質量部は乾燥固形分量又は実質成分量を表す。塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0040】
<実施例1>
(支持体)
支持体として、パルプ、填料、サイズ剤及び紙力剤を含有する坪量60g/mの上質紙を用いた。支持体に用いた上質紙は、ベック平滑度が表裏共に60秒及び灰分が10質量%であった。
【0041】
(感熱記録層を形成するための塗工液)
水を媒体として、染料前駆体の分散体、顕色剤及び増感剤の分散体、並びに顔料の分散体をそれぞれ調製し、これらを混合した。最終的に、水を媒体として下記材料を分散乃至溶解した塗工液とした。塗工液の濃度は26質量%とした。
染料前駆体 100質量部
分散剤(スルホン酸変性ポリビニルアルコール) 20質量部
顕色剤 200質量部
増感剤 200質量部
無水マレイン酸共重合体 40質量部
アセチレンジオール非イオン性界面活性剤 2.5質量部
鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物 1.7質量部
水酸化アルミニウム 125質量部
非晶質シリカ 125質量部
分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム) 2.5質量部
コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体 115質量部
シラノール変成ポリビニルアルコール 115質量部
ステアリン酸亜鉛 80質量部
【0042】
染料前駆体には、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランを用いた。顕色剤には、4-ヒドロキシ-4′-イソプロポキシジフェニルスルホンを用いた。増感剤には、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンを用いた。無水マレイン酸共重合体には、スチレン無水マレイン酸系共重合体である荒川化学工業社のポリマロン(登録商標)1318を用いた。鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物には、サンノプコ社のノプコ(登録商標)8034を用いた。コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体には、三井化学社のバリアスター(登録商標)BM1000を用いた。
【0043】
(感熱記録層)
支持体の表面に対して、感熱記録層を形成するための塗工液を塗工量で3.5g/mとなるように塗工及び乾燥し、続いてスーパーカレンダーを用いてカレンダー処理を行い、感熱記録層を形成した。
【0044】
(感熱記録材料)
支持体の表面に感熱記録層を設けた支持体の裏面に対して、ポリビニルアルコール(クラレ社のクラレポバール(登録商標)5-88)を塗工量で17g/mとなるように塗工及び乾燥して再湿潤性糊層を形成し、感熱記録材料を作製した。
【0045】
<実施例2>
実施例1において、実施例1の鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(サンノプコ社のノプコ8034)を鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(サンノプコ社のSNデフォーマー154)に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例2とした。
【0046】
<実施例3>
実施例1において、実施例1の鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(サンノプコ社のノプコ(登録商標)8034)を鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(アデカ社のアデカネート(登録商標)B-940)に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例3とした。
【0047】
<実施例4>
実施例1において、コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体(三井化学社、バリアスターBM1000)をコアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体(三井化学社、バリアスターOM1050)に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例4とした。
【0048】
<実施例5>
実施例1において、再湿潤性糊層の糊剤として部分ケン化ポリビニルアルコールをアラビアゴムに変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例5とした。
【0049】
<実施例6>
実施例1において、再湿潤性糊層の糊剤として部分ケン化ポリビニルアルコールを澱粉糊に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例5とした。
【0050】
<比較例1>
実施例1において、実施例1の鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(サンノプコ社のノプコ8034)を金属石鹸系の組成物(サンノプコ社のノプコDF-122)に変更する以外は実施例1と同様に行い、比較例1とした。
【0051】
<比較例2>
実施例1において、コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体(三井化学社、バリアスターBM1000)をコアシェル構造を有しないアクリロニトリル/アクリルアミド/アクリル酸3元共重合体に変更する以外は実施例1と同様に行い、比較例2とした。
【0052】
<比較例3>
実施例1において、実施例1の鉱物油及び疎水性シリカを含む組成物(サンノプコ社のノプコ8034)を無配合に変更する以外は実施例1と同様に行い、比較例3とした。
【0053】
<比較例4>
実施例1において、コアシェル構造を有する(メタ)アクリルアミド共重合体(三井化学社、バリアスターBM1000)を無配合に変更する以外は実施例1と同様に行い、比較例4とした。
【0054】
各実施例及び比較例の感熱記録材料について下記項目を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
<耐欠点性>
得た感熱記録材料をA4サイズに裁断し、A4サイズの感熱記録材料100枚に対して感熱記録層で認められる欠点の有無を観察した。耐欠点性は、観察結果から下記の基準で評価した。本発明において、感熱記録材料は、評価A及びBであれば耐欠点性を有するものとする。
A:100枚に欠点が認められず、良好。
B:100枚に1枚にのみ欠点が認められる程度で、良好。
C:100枚に2~3枚に欠点が認められる程度で、実製造の下限。
D:100枚に4枚以上欠点が認められる。
【0057】
<耐欠落性>
A4サイズの感熱記録材料を、感熱記録層と再湿潤性糊層とが接する状態で10枚積層し、これにA4サイズの金属板(1Kg)を載せて、23℃及び50%RHの環境下で3時間、静置した。静置後、積層を解いて感熱記録層の欠落を目視で観察した。耐欠落性は、観察結果から下記の基準で評価した。本発明において、感熱記録材料は、評価A及びBであれば耐欠落性を有するものとする。
A:欠落が認められず、良好。
B:欠落が認められず、表面の部分的に極僅か毛羽立ち有るものの概ね良好。
C:欠落が認められず、表面の部分的に毛羽立ち有るものの使用可能の下限。
D:欠落が認められる。
【0058】
<耐ブロッキング性>
A4サイズの感熱記録材料を、感熱記録層と再湿潤性糊層とが接する状態で10枚積層し、これにA4サイズの金属板(1Kg)を載せて、40℃及び90%RHの環境下で24時間静置した。その後、重ね合わせた状態のまま23℃及び50%RHの環境下で3時間静置して感熱記録材料の温度及び水分を緩和した。次に、積層を解いて、再湿潤性糊層に対向していた感熱記録層を観察した。耐ブロッキング性は、観察結果から下記の基準で評価した。本発明において、感熱記録材料は、評価A及びBであれば耐ブロッキング性を有するものとする。
A:ブロッキングに因る感熱記録層に傷みが認められない。
B:上記Aより劣るも、ブロッキングに因る感熱記録層に傷みが概ね認められない。
C:ブロッキングに因る感熱記録層に傷みが僅かに認められる。
D:ブロッキングに因る感熱記録層に傷みが認められる。
【0059】
<耐粘着悪化性>
A4サイズの感熱記録材料を、感熱記録層と再湿潤性糊層とが接する状態で10枚積層し、これにA4サイズの金属板(1Kg)を載せて、40℃及び90%RHの環境下で24時間静置した。その後、重ね合わせた状態のまま23℃及び50%RHの環境下で3時間静置して感熱記録材料の温度及び水分を緩和した。次に、積層を解いて、A4サイズの感熱記録材料を、さらに小さく、2.5cm×10cm大きさの紙片に裁断した。
紙片の再湿潤性糊層に水を含ませた。再湿潤性糊層に対する水の付与は20g/mとした。再湿性糊層が十分に水を含んだ後、発泡スチロールの表面に、再湿性接着層の面が接するように感熱記録材料を配置した。次に、発泡スチロールの表面に対して感熱記録材料を圧着することにより、発泡スチロールの表面に感熱記録材料を貼着した。感熱記録材料を圧着する際では、2Kgのハンドローラーを用いて移動速度10m/minで感熱記録材料の全長に渡って1往復した。発泡スチロールの表面に感熱記録材料を貼着した状態で23℃及び50%RHの環境下24時間放置した。その後、ISO 29862:2007「Self adhesive tapes - Determination of peel adhesion properties.」に準拠した方法によりにより、発泡スチロールの表面から感熱記録材料を剥離して剥離強度を測定した。耐粘着悪化性は、測定結果から下記の基準で評価した。本発明において、感熱記録材料は、評価A及びBであれば耐粘着悪化性を有するものとする。
A:0.32N/25mm以上。
B:0.27N/25mm以上0.32N/25mm未満。
C:0.22N/25mm以上0.27N/25mm未満。
D:0.22N/25mm未満。
【0060】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~6は、耐欠落性、耐欠点性、耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性を有する感熱記録材料であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~4は、耐欠落性、耐欠点性、耐ブロッキング性及び耐粘着悪化性のいずれかを得ることができない感熱記録材料であると分かる。