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特開2023-163995性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163995
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231102BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20231102BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075268
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 伸明
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 寛久
(72)【発明者】
【氏名】石井 利明
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146AA21
5B146DA00
5B146DJ14
5B146DJ15
5B146DL01
(57)【要約】
【課題】構造物の性能検証に用いられるデータと、構造物の3次元モデルとの間で不整合が生じるおそれがあり、両者の間の整合性の確認に時間や労力がかかる。
【解決手段】本開示に係る性能検証方法では、部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、性能検証システムにおいて、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、前記性能検証システムにおいて、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、
性能検証システムにおいて、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、
前記性能検証システムにおいて、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、
を行うことを特徴とする性能検証方法。
【請求項2】
請求項1に記載の性能検証方法であって、
前記計算ステップでの計算結果に基づいて、前記3次元モデルの前記設備データを再設定することを特徴とする性能検証方法。
【請求項3】
請求項1に記載の性能検証方法であって、
前記計算プログラムは、エネルギー消費性能計算プログラムであり、
前記計算ステップにおいて、前記構造物のエネルギー消費性能を検証する
ことを特徴とする性能検証方法。
【請求項4】
請求項3に記載の性能検証方法であって、
前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて入力シートを生成し、前記入力シートを前記エネルギー消費性能計算プログラムに入力することによって前記構造物のエネルギー消費性能を検証する
ことを特徴とする性能検証方法。
【請求項5】
請求項1に記載の性能検証方法であって、
前記計算プログラムは、CO排出量算定プログラムであり、
前記計算ステップにおいて、前記構造物のCO排出量を算出する
ことを特徴とする性能検証方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記3次元モデルには室に関する室データが含まれており、
前記3次元モデル設定ステップにおいて、
前記室データに基づいて前記設備機器を選定し、
選定された前記設備機器に関するデータを、前記設備データとして前記3次元モデルに設定する
ことを特徴とする性能検証方法。
【請求項7】
請求項6に記載の性能検証方法であって、
前記設備機器に関するデータを前記設備データとして前記3次元モデルに設定する際に、前記設備機器の選定に用いた前記室データと、前記3次元モデルに設定されている前記室データとを照合する
ことを特徴とする性能検証方法。
【請求項8】
性能検証システムに、
部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルから、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、
を実行させることを特徴とする性能検証プログラム。
【請求項9】
部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルから、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算部と、
を有することを特徴とする性能検証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の性能検証方法として、例えば建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令(平成28年経済産業省/国土交通省令第1号)の規定に基づく建築物のエネルギー消費性能の検証方法がある(非特許文献1)。また、同省令の規定に基づくエネルギー消費性能計算プログラムが公開されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】国土技術政策総合研究所資料 第973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BIM(Building Information Modeling)によりコンピューター上で構造物の3次元モデルを作成することが行われている。但し、構造物の3次元モデル(例えばBIMモデル)と、計算プログラム(例えばエネルギー消費性能計算プログラム)に入力するデータとのデータ連係が行われていないため、計算プログラムに基づく計算結果と、構造物の3次元モデルとの間で入力ミスや見落としによる不整合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明は、部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、性能検証システムにおいて、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、前記性能検証システムにおいて、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、を行うことを特徴とする性能検証方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の概要を示すフロー図である。
図2図2は、性能検証装置100の全体説明図である。
図3図3は、BIMモデルに設定された建築物1の表示画面である。
図4図4は、室仕様入力シート251の生成方法の説明図である。
図5図5は、変換表25Aの一例の説明図である。
図6図6は、空調ゾーン入力シート252の生成方法の説明図である。
図7図7は、空調設備設定部32Aが行う処理の説明図である。
図8図8A及び図8Bは、仮設定の室データに基づいて設備機器の設定を行う様子の説明図である。
図9図9は、判定部325の説明図である。
図10図10は、処理の流れを説明するフロー図である。
図11図11は、別の処理の流れを説明するフロー図である。
図12図12Aは、部材ごとの排出原単位の説明図である。図12Bは、設備機器ごとの排出源単位の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
態様1の性能検証方法は、部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、性能検証システムにおいて、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、前記性能検証システムにおいて、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、を行うことを特徴とする性能検証方法である。このような性能検証方法によれば、構造物の3次元モデルの情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0011】
態様2の性能検証方法は、態様1の性能検証方法であって、前記計算ステップでの計算結果に基づいて、前記3次元モデルの前記設備データを再設定する。これにより、要求される性能を満たす構造物が設計可能になる。
【0012】
態様3の性能検証方法は、態様1又は2の性能検証方法であって、前記計算プログラムは、エネルギー消費性能計算プログラムであり、前記計算ステップにおいて、前記構造物のエネルギー消費性能を検証する。これにより、エネルギー消費性能の検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【0013】
態様4の性能検証方法は、態様3の性能検証方法であって、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて入力シートを生成し、前記入力シートを前記エネルギー消費性能計算プログラムに入力することによって前記構造物のエネルギー消費性能を検証する。これにより、エネルギー消費性能計算プログラムを用いて、構造物のエネルギー消費性能を検証することが可能である。
【0014】
態様5の性能検証方法は、態様1又は2の性能検証方法であって、前記計算プログラムは、CO排出量算定プログラムであり、前記計算ステップにおいて、前記構造物のCO排出量を算出する。これによりCO排出量の検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0015】
態様6の性能検証方法は、態様1~5のいずれかの性能検証方法であって、前記3次元モデルには室に関する室データが含まれており、前記3次元モデル設定ステップにおいて、前記室データに基づいて前記設備機器を選定し、選定された前記設備機器に関するデータを、前記設備データとして前記3次元モデルに設定する。これにより、室の条件に適した設備機器を選定することが可能になる。
【0016】
態様7の性能検証方法は、態様6の性能検証方法であって、前記設備機器に関するデータを前記設備データとして前記3次元モデルに設定する際に、前記設備機器の選定に用いた前記室データと、前記3次元モデルに設定されている前記室データとを照合する。これにより、性能検証の計算に用いられた室データと設備データ14とが不整合になることを抑制でき、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0017】
態様8の性能検証プログラムは、性能検証システムに、部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルから、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと、を実行させることを特徴とする性能検証プログラムである。このような性能検証プログラムによれば、構造物の3次元モデルの情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0018】
態様9の性能検証システムは、部材で構成される空間と、前記空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルから、前記空間及び前記部材の少なくとも一方に関する構造物データと前記設備機器に関する設備データとを抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した前記構造物データ及び前記設備データに基づいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算部と、を有することを特徴とする性能検証システムである。このような性能検証システムによれば、構造物の3次元モデルの情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0019】
===第1実施形態===
<概要>
図1は、本実施形態の概要を示すフロー図である。
【0020】
本実施形態では、まず、3次元モデル設定ステップが行われる(S1)。3次元モデル設定ステップでは、部材で構成される空間と、当該空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデルが設定される。この3次元モデル設定ステップによって、3次元モデルシステム10(後述;図2参照)を構成するコンピューターに、構造物の3次元モデルが設定されることになる。3次元モデルは、構造物の3次元データであり、例えばBIMモデルである。構造物は、例えば建築物であり、部材で構成される空間を有する。3次元モデルには、構造物の空間及び部材の少なくとも一方に関する構造物データ(後述する建築構造データ12)が含まれている。また、3次元モデルには、設備機器に関するデータ(配置、仕様、台数、制御などのデータ;設備データ)が含まれている。構造物データや設備データは、3次元形状情報(形状データ)や属性情報(属性データ)により構成されている。
【0021】
次に、抽出ステップが行われる(S3)。この抽出ステップでは、性能検証システム20(後述;図2参照)において、構造物データと設備データが3次元モデルから抽出される。この抽出ステップでは、コンピューターが抽出プログラムに基づいて、3次元モデルから所定の構造物データや設備データが抽出されることになる。このため、構造物の性能検証に必要なデータを効率良く、確実に収集できる。
【0022】
次に、計算ステップが行われる(S5)。この計算ステップでは、構造物の性能を検証するための計算プログラムに、前述の抽出ステップで抽出したデータを入力して計算することが行われる。これにより、構造物の3次元モデルと、所定の計算プログラムに入力するデータとの間でデータ連携を行うことができるため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0023】
なお、第1実施形態の計算ステップでは、建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令(平成28年経済産業省/国土交通省令第1号)の規定に基づくエネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)を用いた計算が行われる。但し、計算ステップでは、エネルギー消費性能に関する計算に限られない。例えば、後述する第2実施形態に示すように構造物のCO排出量に関する計算が行われても良いし、他の性能検証(例えば木造建築物で用いられる木材によるCO貯蔵量)に関する計算が行われても良い。
【0024】
計算ステップの後、出力ステップが行われる(S7)。出力ステップでは、計算ステップの計算結果が出力されることになる。出力ステップでは、例えば、計算結果をディスプレイに表示したり、計算結果を印刷したり、計算結果を保存したりすることが行われる。
【0025】
<性能検証装置の構成>
以下、図1の各処理を実現する性能検証装置の一例について説明する。
【0026】
図2は、性能検証装置100の全体説明図である。
性能検証装置100は、構造物(例えば建築物)の性能を検証するための装置である。性能検証装置100は、1台又は複数台のコンピューターで構成される。ここでは、性能検証装置100は、構造物のエネルギー消費性能の検証を行う。但し、性能検証装置100は、構造物のエネルギー消費性能の検証を行うものに限られず、エネルギー消費性能の検証とは別の性能検証(例えば後述するCO排出量等の検証など)を行っても良い。性能検証装置100は、3次元モデルシステム10と、性能検証システム20とを有する。
【0027】
3次元モデルシステム10は、構造物(例えば建築物)の3次元モデルデータを管理する。ここでは、3次元モデルシステム10は、BIMモデルを管理するBIMモデルシステムであり、1台又は複数台のコンピューターで構成される。3次元モデルシステム10は、3次元モデル11(ここではBIMモデル)を記憶するデータ記憶部を有し、3次元モデル11の管理を行う。3次元モデルシステム10は、BIM管理プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより、実現される。3次元モデル11は、構造物の仮想3次元データであり、構造物の建築構造データ12と、設備データ14とを有する。
【0028】
図3は、BIMモデルに設定された建築物1の表示画面である。BIMモデル上には、建築物の仮想3次元モデルが設定されている。仮想3次元モデルの建築物1は、柱、梁、外壁などの部材で構成されており、これらの部材で室などの空間が構成されている。また、仮想3次元モデルの建築物1には、部材で構成された空間(室)に設備機器3が設置されている。図3の建築物1を構成する柱、梁、外壁などの部材に関するデータや、当該部材で構成される空間(室)に関するデータは、主に建築構造データ12(図2参照)に含まれている。また、図3の設備機器3に関するデータは、主に設備データ14(図2参照)に含まれている。なお、図3の左側には、カーソルで選択された設備機器3に対応する設備データ(後述する空調データ14Aに相当)が示されている。
【0029】
建築構造データ12は、構造物(例えば建築物)を構成する部材や空間に関するデータであり、主に3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)とを有するデータである。建築構造データ12は、空間及び部材に関する構造物データに相当する。ここでは、建築構造データ12は、建築データ12Aと、構造データ12Bとを有する。建築データ12Aには、構造物全体に関するデータ(例えば建築物の名称、用途、所在地等に関するデータ;以下、「建物データ」)や、構造物の空間に関する空間データなどが含まれている。なお、空間データとして、室に関するデータ(例えば室の固有番号(ID番号)、名称(室名)、用途(室用途)、面積(室面積)、階高、天井高などを示すデータ;以下「室データ」)が含まれている。構造データ12Bには、構造物の空間を構成する部材(例えば、柱、梁、外壁部)に関する部材データなどが含まれている。なお、部材データとして、例えば外壁部に関するデータ(例えば、外壁部の固有番号(ID番号)、名称(外壁名称)、種類(壁の種類;外壁/接地壁)、壁仕様、壁面積、壁厚み、開口部仕様、開口部面積、方位などに関するデータ)が含まれている。
【0030】
設備データ14は、構造物に設置される設備に関するデータである。設備データ14には、設備機器の形状データ及び属性データが含まれている。設備データ14の属性データには、例えば設備機器の固有番号(ID番号)、名称、仕様、配置、台数、系統、制御方法などに関するデータなどの設備機器に関するデータが含まれている。なお、設備機器の配置に関するデータとして、例えば、室に対応付けたデータが含まれている。ここでは、設備データ14は、空調データ14Aと、衛生データ14Bと、電気データ14Cと、昇降機データ14Dとを有する。
【0031】
空調データ14Aは、空調設備に関するデータである。空調データ14Aには、空調設備の形状データ及び属性データが含まれている。空調データ14Aには、空調機器に関するデータ(空調機器データ)や、換気機器に関するデータが含まれている。空調機器に関するデータには、例えば空調機器の固有番号(ID番号)、名称、仕様、配置、台数、系統、制御方法などに関するデータが含まれている。なお、空調機器以外の他の設備機器(例えば換気機器や次述の給湯機器など)についても、当該機器に関するデータとして、当該機器の固有番号(ID番号)、名称、仕様、配置、台数、系統、制御方法などに関するデータが含まれている(以下、この点についての説明は省略する)。
衛生データ14Bは、構造物の衛生設備に関するデータである。衛生データ14Bには、給湯機器に関するデータや、給排水設備に関するデータが含まれている。
電気データ14Cは、構造物の電気設備に関するデータである。電気データ14Cには、照明機器に関するデータ、受変電設備に関するデータ、避雷設備に関するデータ、太陽光発電設備のような再生可能エネルギー設備に関するデータなどが含まれている。
昇降機データ14Dは、構造物の昇降機設備に関するデータである。
【0032】
なお、3次元モデル11(建築構造データ12や設備データ14)は、図中の設定部30によって設定される。設定部30による3次元モデル11の設定については、後述する。
【0033】
性能検証システム20は、構造物(例えば建築物)の性能を検証する。ここでは、性能検証システム20は、構造物のエネルギー消費性能の検証を行うコンピューターである。性能検証システム20は、1台又は複数台のコンピューターで構成される。また、性能検証システム20は、性能検証プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。性能検証システム20は、3次元モデルシステム10を構成するコンピューターとは別のコンピューターで構成されても良いし、3次元モデルシステム10を構成するコンピューターで構成されていても良い。性能検証システム20は、抽出部22と、計算部24と、出力部28とを有する。
【0034】
抽出部22は、3次元モデルシステム10の3次元モデル11(ここではBIMモデル)から所定のデータを抽出する。抽出部22は、図1の抽出ステップ(S3)を行う。抽出部22は、抽出プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。抽出部22は、構造物の空間(例えば室条件)や設備機器に関する条件を示す各種パラメータを3次元モデル11から抽出する。抽出部22は、抽出プログラムで予め定められた所定のデータを抽出することになる。このため、構造物の性能検証に必要なデータを効率良く、確実に収集できる。ここでは、抽出部22は、建築物のエネルギー消費性能の計算に必要な各データを3次元モデル11から抽出することになる。抽出部22が抽出する具体的なデータについては、後述する説明から明らかとなる。
【0035】
計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、構造物の性能を計算する。計算部24は、図1の計算ステップ(S5)を行う。ここでは、計算部24は、建築物(非住宅部分)のエネルギー消費性能を計算し、設計一次エネルギーEが、基準一次エネルギーESTを超えていないかを検証する。
【0036】
設計一次エネルギーEは、次式のように算出される。
=(EAC+E+E+E+EEV-E+E)×10-3
なお、EAC、E、E、E、EEV、E及びEは、それぞれ次の数値を表している。
AC 空気調和設備の設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
空気調和設備以外の機械換気設備の設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
照明設備の設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
給湯設備の設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
EV 昇降機の設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
エネルギーの効率的利用を図ることのできる設備又は器具による設計一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
その他一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
【0037】
基準一次エネルギーESTは、次式のように算出される。
ST=(ESAC+ESV+ESL+ESW+ESEV+E)×10-3
なお、ESAC、ESV、ESL、ESW、ESEV及びEは、それぞれ次の数値を表している。
SAC 空気調和設備の基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
SV 空気調和設備以外の機械換気設備の基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
SL 照明設備の基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
SW 給湯設備の基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
SEV 昇降機の基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
その他一次エネルギー消費量(単位 1年につきメガジュール)
【0038】
設計一次エネルギーE(EAC、E、E、E、EEV、E及びE)は、国土交通大臣が定める方法により算出することになる。ここでは、国土技術政策総合研修所及び建築研究所が提供するエネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)を用いて、設計一次エネルギーEを計算する。エネルギー消費性能計算プログラムを使用する場合には、18の入力シートで構成される「外皮・設備仕様入力シート」に外皮及び設備の仕様等のデータを入力することによってCSVファイル(入力データ)を生成し、このCSVファイルをエネルギー消費性能計算プログラムにアップロードすることによって設計一次エネルギーE及び基準一次エネルギーESTの算出結果を得ることができる。
【0039】
計算部24は、入力データ生成部25と、性能計算部26とを有する。
【0040】
入力データ生成部25は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、計算プログラムに入力するための入力データを生成する。入力データ生成部25は、入力データ生成プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。本実施形態では、入力データ生成部25は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、エネルギー消費性能計算プログラムに必要とされる入力シート(基本情報入力シート、室仕様入力シート、空調ゾーン入力シート、外壁構成入力シート、窓仕様入力シート、外皮仕様入力シート、熱源入力シート、空調機入力シート、換気対象室入力シート、給排気送風機入力シート、換気代替空調機入力シート、照明入力シート、給湯対象室入力シート、給湯機器入力シート、昇降機入力シート、太陽光発電システム入力シート、コージェネレーション設備入力シート及び非空調外皮仕様入力シートの18シート)を生成する。ここでは、入力データ生成部25による室仕様入力シート及び空調ゾーン入力シートの生成方法について説明する。
【0041】
図4は、室仕様入力シート251の生成方法の説明図である。
室仕様入力シート251には、階、室名、建物用途、室用途、室面積、階高、天井高、4種類の計算対象室(空調計算対象室、換気計算対象室、照明計算対象室、給湯計算対象室)の選択、モデル建物、備考の欄が設けられており、入力データ生成部25は、室仕様入力シート251の各欄にデータを入力することになる。以下、室仕様入力シート251の各欄の入力方法について説明する。
【0042】
入力データ生成部25は、3次元モデル11の建築データ12Aの室データから抽出した「階」、「室名」、「室面積」、「階高」及び「天井高」のデータに基づいて、室仕様入力シート251の「階」、「室名」、「室面積」、「階高」及び「天井高」の欄に各データを入力する。なお、建築データ12Aの室データから抽出した「階」及び「室名」について、同一の「階」に同じ「室名」が複数存在する場合には、入力データ生成部25は、抽出した「室名」の後に1,2,3・・・の数字を付加した室名を、室仕様入力シート251の「室名」の欄に入力する。例えば、1階に「更衣室」が2室ある場合、入力データ生成部25は、室データから抽出した「更衣室」を「更衣室1」及び「更衣室2」に変更して、室仕様入力シート251の「室名」の欄に入力する。これにより、同一階での室名の重複を避けることができる。
【0043】
同様に、入力データ生成部25は、建築データ12Aの建物データから抽出した建築物の「用途」のデータに基づいて、室仕様入力シート251の「建物用途」の欄にデータを入力する。また、入力データ生成部25は、建築データ12Aから抽出した室データに基づいて、室仕様入力シート251の「室用途」の欄にデータを入力する。
【0044】
ところで、室仕様入力シート251の「室用途」で選択可能な「室用途」の種類は、「建物用途」の種類に応じて、予め定められている。例えば、「建物用途」が「事務所等」の場合には、選択可能な「室用途」は19種類(非主要室を含むと20種類)である。また、3次元モデル11の室データに設定された「室用途」(若しくは「室名」)が、室仕様入力シート251で選択可能な「室用途」と一致しないおそれがある。そこで、入力データ生成部25は、「建物用途」の種類に応じた複数の変換表25Aを備えている。
【0045】
図5は、変換表25Aの一例の説明図である。
【0046】
入力データ生成部25は、建築データ12Aの建物データから抽出した建築物の「用途」のデータに基づいて「建物用途」が「事務所等」であると決定した場合、複数の変換表25Aの中から「建物用途」に応じた変換表25Aを選択する。次に、入力データ生成部25は、選択した変換表25Aを参照し、建築データ12Aから抽出した室データ(ここでは「室名」)に対応する「室用途」を決定する。例えば、入力データ生成部25は、室名が「風除け室」の場合には、図中の変換表25Aを用いて「風除け室」に対応する室用途として「廊下」を決定し、室仕様入力シート251の「室用途」の欄に「廊下」を入力する。
【0047】
上記の入力データ生成部25は、建築データ12Aの室データから抽出した「室名」に基づいて、変換表25Aを用いて室仕様入力シート251の「室用途」を決定している。但し、建築データ12Aの室データの「室名」と、エネルギー消費の計算時に想定している室の使用条件とが、合致しないことがある。例えば、「事務所等」の「廊下」は給湯の計算対象にならないが、建築データ12Aの室データから抽出した「室名」が「廊下」であるにも関わらず、設計している廊下が、給湯設備を利用する可能性がある人が存在する居室を含む場合、建築データ12Aの室データの「室名」が、エネルギー消費の計算時に想定している室の使用条件と合致しないことになる。そこで、入力データ生成部25は、建築データ12Aの室データだけでなく、設備データ14に基づいて、室仕様入力シート251の「室用途」のデータを決定しても良い。例えば、入力データ生成部25は、建築データ12Aの室データから抽出した「室名」が「廊下」であるが、対象となる室に対応付けられた設備機器の設備データ14(例えば設備データ14に含まれる設備機器の制御方法(例えば空調時間、内部発熱量、新鮮外気導入量、換気運転時間、基準設定換気回数、照明点灯時間、基準設定照度、給湯日数、基準設定給湯量等)に関するデータ)に基づいて、「廊下」よりも「ロビー」が適切と判定した場合には、室仕様入力シート251の「室用途」に入力するデータを、「廊下」から「ロビー」に変更しても良い。これにより、この室の給湯の計算を行うことが可能になる。
【0048】
また、入力データ生成部25は、「建物用途」と「室用途」に基づいて、変換表25Bを用いて、4種類の計算対象室(空調計算対象室、換気計算対象室、照明計算対象室、給湯計算対象室)の選択を行う。なお、変換表25Bには、「建物用途」及び「室用途」と、4種類の計算対象室のそれぞれの選択の要否とが対応付けられている。入力データ生成部25は、既に決定した「建物用途」と「室用途」に基づいて変換表25Bを参照し、室仕様入力シート251の4種類の計算対象室の所定の欄に黒四角マークを入力する。
【0049】
図6は、空調ゾーン入力シート252の生成方法の説明図である。
空調ゾーン入力シート252には、室の仕様(階、室名、建物用途、室用途、室面積、階高、天井高)、空調ゾーン(階、空調ゾーン名)及び空調機器名称(室負荷処理、外気負荷処理)の欄が設けられており、入力データ生成部25は、空調ゾーン入力シート252の各欄にデータを入力することになる。以下、空調ゾーン入力シート252の各欄の入力方法について説明する。
【0050】
入力データ生成部25は、前述の室仕様入力シート251で入力したデータに基づいて、空調ゾーン入力シート252の室の仕様(階、室名、建物用途、室用途、室面積、階高、天井高)の各欄に入力する。なお、入力データ生成部25は、前述の室仕様入力シート251で入力した室の中から空調計算の対象となる室について、空調ゾーン入力シート252の各欄にデータを入力する。つまり、入力データ生成部25は、前述の室仕様入力シート251の「空調計算対象室」の欄に黒四角印が入力された室を対象として、空調ゾーン入力シート252の室の仕様のデータを入力する。
【0051】
既に説明した通り、前述の室仕様入力シート251で入力された室の仕様(階、室名、建物用途、室用途、室面積、階高、天井高)のデータは、建築データ12Aの室データから抽出したデータに相当する。このため、空調ゾーン入力シート252の室の仕様の欄に入力されたデータは、抽出部22が3次元モデル11から抽出したデータに相当する。
なお、入力データ生成部25は、前述の室仕様入力シート251で入力したデータを転記することによって空調ゾーン入力シート252の室の仕様の欄にデータを入力する代わりに(言い換えると、抽出部22が抽出したデータを間接的に用いて空調ゾーン入力シート252にデータを入力する代わりに)、抽出部22が3次元モデル11から抽出したデータを直接用いて空調ゾーン入力シート252の室の仕様の欄にデータを入力しても良い。同様に、他の入力シートについても、或る入力シートに入力したデータを転記可能な場合には、入力データ生成部25は、或る入力シートに入力したデータを転記しても良いし(抽出部22が抽出したデータを間接的に用いても良いし)、抽出部22が3次元モデル11から抽出したデータを直接的に入力しても良い。
【0052】
入力データ生成部25は、設備データ14の空調データ14Aに基づいて、空調ゾーン入力シート252の空調ゾーンの「階」及び「空調ゾーン名」の欄にデータを入力する。例えば、図6の右上に示すように、設備データ14の空調データ14Aには、空調機器に関するデータ(空調機器データ)として、「基準レベル」及び「系統(室名)」のデータがある。空調データ14A(空調機器データ)の「基準レベル」は「階」に相当するデータで構成されている。また、空調データ14Aの「系統(室名)」が同一の場合には同一の空調機群により冷温熱が供給される連続した空間になるため、空調データ14Aの「系統(室名)」は「空調ゾーン名」に相当するデータで構成されている。そこで、入力データ生成部25は、設備データ14の空調データ14Aから抽出した「基準レベル」及び「系統(室名)」に基づいて、空調ゾーン入力シート252の「階」及び「空調ゾーン名」の欄にそれぞれデータを入力する。
【0053】
また、入力データ生成部25は、空調機入力シート253の「空調機群名称」の欄に入力したデータを、空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の欄に入力する。なお、空調機入力シート253の「空調機群名称」の欄には、建築構造データ12及び設備データ14から抽出したデータに基づいて、データが入力されることになる。具体的には、図6の右上に示すように、設備データ14の空調データ14Aには、空調機器に関するデータ(空調機器データ)として、「符号(機器番号)」及び「記号」のデータがある。この「符号(機器番号)」及び「記号」を組み合わせると、空調機群を識別可能なデータになる。そこで、入力データ生成部25は、設備データ14の空調データ14Aから抽出した「符号(機器番号)」及び「記号」に基づいて、空調機入力シート253の「空調機群名称」の欄にデータを入力する。また、入力データ生成部25は、空調機入力シート253の「空調機群名称」の欄に入力したデータを、空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の欄に入力(転記)する。例えば、空調データ14Aの或る空調機器に対応する空調機器データの「符号(機器番号)」が「ACP」であり記号が「1-1-2」である場合には、入力データ生成部25は、空調機入力シート253及び空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の欄に「ACP1-1-2」と入力することになる。既に説明したように、入力データ生成部25は、抽出部22が空調データ14Aから抽出した「符号(機器番号)」及び「記号」を直接的に用いて、空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の欄にデータを入力しても良い。
【0054】
なお、空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の欄には、「室負荷処理」及び「外気負荷処理」の2つの欄がある。つまり、空調ゾーン入力シート252では、「空調機群名称」を、室負荷を処理する空調機群と、外気負荷を処理する空調機群とを分けて定める必要がある。ここでは、室負荷処理と外気負荷処理を同じ空調機群で処理するため、入力データ生成部25は、空調ゾーン入力シート252の「空調機群名称」の「室負荷処理」及び「外気負荷処理」のそれぞれの欄に、同じデータを入力する。
【0055】
上記のように、入力データ生成部25は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、室仕様入力シート251及び空調ゾーン入力シート252を生成する。また、同様に、入力データ生成部25は、抽出部22が抽出したデータ(室データを含む空間データ、部材データ及び設備データ等)に基づいて、他の入力シート(基本情報入力シート、外壁構成入力シート、窓仕様入力シート、外皮仕様入力シート、熱源入力シート、空調機入力シート、換気対象室入力シート、給排気送風機入力シート、換気代替空調機入力シート、照明入力シート、給湯対象室入力シート、給湯機器入力シート、昇降機入力シート、太陽光発電システム入力シート、コージェネレーション設備入力シート及び非空調外皮仕様入力シートの18シート)を生成する。他の入力シートを生成する場合おいても、入力データ生成部25は、抽出部22が抽出したデータを直接的又は間接的に用いて、入力シートの各欄にデータを入力することになる。入力データ生成部25は、18の入力シートにデータを入力することによって、エネルギー消費性能計算プログラムに必要なCSVファイル(入力データ)を生成する。
【0056】
性能計算部26(図2参照)は、入力データ生成部25が生成した入力データに基づいて、構造物の性能を計算する。性能計算部26は、性能計算プログラム(ここではエネルギー消費性能計算プログラム)をプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。ここでは、性能計算部26は、入力データ生成部25が生成した18の入力シートに基づくCSVファイルをエネルギー消費性能計算プログラムにアップロードすることによって、建築物のエネルギー消費性能を示す設計一次エネルギーE及び基準一次エネルギーESTを算出することになる。
【0057】
出力部28は、計算部24から計算結果を取得し、計算部24の計算結果を出力する。出力部28は、図1の出力ステップ(S7)を行う。出力部28は、出力プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。例えば、出力部28は、計算部24の計算結果をディスプレイに表示する。また、出力部28は、計算部24の計算結果に基づいて、計算報告書の作成・印刷や、帳票の作成・印刷等を行う。
【0058】
出力部28は、計算部24の計算結果において設計一次エネルギーEが基準一次エネルギーESTを超えた場合には、警告を表示することが望ましい。これにより、作業者(設計者)に3次元モデル11の設備データ14の再設定を促すことができる。また、この場合、出力部28は、空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備及び昇降機の設計一次エネルギー消費量EAC、E、E、E及びEEVと、基準一次エネルギーESAC、ESV、ESL、ESW及びESEVとをそれぞれ対比することによって、設計一次エネルギーが基準一次エネルギーを超えている設備が空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備及び昇降機のうちのいずれの設備であるかを特定して、警告を表示することが望ましい。これにより、再設定すべき設備を示すことができる。
【0059】
なお、計算部24の計算結果において設計一次エネルギーEが基準一次エネルギーESTを超えた場合には、3次元モデル11の設備データ14の再設定が行われることになる(再設定ステップ)。3次元モデル11の設備データ14の再設定を行う場合(再設定ステップ)、設備の仕様を変更するように設備データ14が再設定されても良いし、設備の仕様を変更せずに設備の制御方法を変更するように設備データ14が再設定されても良い。3次元モデル11の設備データ14が再設定されることにより、要求される性能を満たす構造物が設計可能になる。
【0060】
3次元モデル11の設備データ14の再設定が行われた後(再設定ステップの後)、性能検証システム20は、構造物の性能を再度検証する。すなわち、抽出部22は、再設定された後の3次元モデル11(ここではBIMモデル)から所定のデータを再度抽出し、計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、構造物の性能を再度計算する。
【0061】
<3次元モデルの設定1>
設定部30(図2参照)は、3次元モデル11の設定を行う。設定部30は、図1の設定ステップ(S1)を行う。例えば、作業者(設計者)は、設定部30を用いて、構造物の空間条件を設定することによって、建築データ12Aの室データを設定することになる。また、設定部30は、構造計算部31を有する。構造計算部31は、構造物の構造計算を行う。構造計算部31は、いわゆる構造計算プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。作業者は、構造計算部31を用いて、構造物を構成する部材(柱、梁、壁など)を設定するとともに、当該部材により構成された構造物の構造計算を行うことによって、3次元モデル11の建築構造データ12(主に構造データ12B)を設定する。
【0062】
設定部30は、構造物に設置される設備機器を検討するための設備設定部32を有している。設備設定部32は、図1の設定ステップ(S1)において、設備機器に関するデータ(設備データ14)の設定を行う。図2には、設備設定部32が有する各種機能が示されている。設備設定部32は、例えば、設備機器メーカーが提供するプログラム(選定支援プログラム)をプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。設備設定部32は、例えば、空調設備設定部32Aと、換気設備設定部32Bと、効率化設備設定部32Cと、給湯設備設定部32Dと、照明設備設定部32Eと、再生エネルギー設備設定部32Fと、昇降機設定部32Gとを有する。ここでは、空調設備設定部32Aについて説明する。
【0063】
図7は、空調設備設定部32Aが行う処理の説明図である。
空調設備設定部32Aは、空調機器の設定を行う。空調設備設定部32Aは、条件設定部321と、選定部322とを有する。
【0064】
条件設定部321は、構造体に設置される設備機器の各種条件を設定する。ここでは、条件設定部321は、空調に関する各種条件(空調条件)を設定する。例えば、条件設定部321は、熱負荷計算のための条件や、空調時間等のような設備機器の制御のための条件等が設定される。また、条件設定部321は、空調系統(空調ゾーンに相当)の設定や、設定した各種条件と室(又は空調ゾーン)との対応付け等を設定する。
【0065】
選定部322は、構造体に設置される設備機器の選定を行う。選定部322は、3次元モデル11から取得した室データ121Aと、条件設定部321に設定された条件とに基づいて、設備機器の選定を行う。ここでは、選定部322は、3次元モデル11から取得した室データ121Aと、条件設定部321から取得した空調条件とに基づいて、例えば熱負荷計算を行い、室の条件や制御条件に適した設備機器の配置、仕様、台数、系統、制御などを選定する。選定部322は、3次元モデル11から室データ121Aを取得したり、条件設定部321から各種条件を取得したりするだけでなく、設備機器の形状データや属性データなどを設備機器メーカーのサーバー40から取得しても良い。また、選定部322は、作業者(設備機器の選定等を行う設計者)の入力結果に基づいて、設備機器の配置、仕様、台数、系統、制御方法などを選定しても良い。選定部322は、選定結果322A(例えば設備機器の配置、仕様、台数、系統、制御方法など)を設備データ14(設備機器データ)として、3次元モデル11に設定する。ここでは、選定部322は、空調機器の選定結果322Aを空調データ14Aの空調機器データ141Aとして、3次元モデル11に設定することになる。
【0066】
他の設備設定部(換気設備設定部32B、効率化設備設定部32C、給湯設備設定部32D、照明設備設定部32E、再生エネルギー設備設定部32F、昇降機設定部32G;図2参照)も、空調設備設定部32Aと同様に、条件設定部321と、選定部322とを有する。そして、これらの他の設備設定部も、空調設備設定部32Aと同様に、3次元モデル11から取得した室データ121Aと、条件設定部321に設定された条件とに基づいて、設備機器の設定を行い、3次元モデル11に設備データ14(設備機器データ)を設定することになる。例えば、換気設備設定部32Bは、3次元モデル11から取得した室データ121Aと、条件設定部321に設定された換気条件とに基づいて換気設備の選定を行い、換気設備の選定結果322Aを換気機器データとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定することになる。給湯設備設定部32Dは、3次元モデル11から取得した室データ121Aと、条件設定部321に設定された給湯条件とに基づいて給湯設備の選定を行い、給湯設備の選定結果322Aを給湯機器データとして3次元モデル11の衛生データ14Bに設定することになる。なお、他の設備設定部については、同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
<3次元モデルの設定2>
図8A及び図8Bは、仮設定の室データに基づいて設備機器の設定を行う様子の説明図である。
【0068】
構造物の設計初期段階で設備機器の設計検討が行われる場合、設備機器の選定に用いた室データと、3次元モデル11に設定されている室データとが不一致になることがある。例えば、図8Aに示すように、作業者(設備機器の選定担当者)が仮設定部323を用いて構造物の室データ324A(室の固有番号、名称、用途、面積、階高、天井高などを示すデータ)を設備設定部32(ここでは空調設備設定部32A)の記憶部324に仮設定することによって、3次元モデル11の室データ121Aとは別の室データ324Aが仮設定され、選定部322が、仮設定された室データ324Aと、条件設定部321に設定された条件とに基づいて、設備機器の選定を行うことがある。若しくは、図8Bに示すように、3次元モデル11で仮設定された室データ121A’が設備設定部32(ここでは空調設備設定部32A)の記憶部324に取り込まれ、選定部322が室データ324A(121A’)と条件設定部321に設定された条件とに基づいて設備機器の選定を行った後に、3次元モデル11の仮設定の室データ121A’が別の室データ121に変更されることがある。これらの場合、設備機器の選定に用いられた室データ324Aと、3次元モデル11に設定されている室データ121Aとが不一致になる。このような場合、選定部322の選定結果322Aがそのまま空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定されてしまうと、3次元モデル11の室データ121Aに適合していない空調機器データ141Aが3次元モデル11に設定されるおそれがある。また、この結果、性能検証(例えば前述のエネルギー消費性能の検証)の計算に用いられる室データ121Aと空調機器データ141Aとが不整合になるおそれがある。このため、設定部30は、次に説明する判定部325を備えることが望ましい。
【0069】
図9は、判定部325の説明図である。図10は、処理の流れを説明するフロー図である。図10の処理は、設備設定部32の選定結果322Aを空調機器データとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する時(言い換えると、設備設定部32で設定した設備機器データ(選定結果322A)を3次元モデル11にバインドする時)、設備設定部32(ここでは空調設備設定部32A)によって行われる。なお、図10に示す各処理は、設備設定部32(ここでは空調設備設定部32A)を構成するコンピューターのプロセッサーがプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0070】
判定部325は、設備設定部32の選定結果322Aを空調機器データとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する時(言い換えると、設備設定部32で設定した設備機器データ(選定結果322A)を3次元モデル11にバインドする時)、設備設定部32の記憶部324の室データ324A(設備機器の選定に用いた室データ)と、3次元モデル11に設定されている室データ121A(最新の室データ)とを照合する(図10のS101)。判定部325は、設備設定部32の記憶部324の室データ324Aと、3次元モデル11の室データ121Aとが一致する場合(S102でYES)、選定部322の選定結果322Aを空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する(S103)。一方、判定部325は、設備設定部32の記憶部324の室データ324Aと、3次元モデル11の室データ121Aとが不一致の場合(S102でNO)、判定部325は、選定部322の選定結果322Aを3次元モデル11に設定させずに、警告を表示する(S104)。これにより、3次元モデル11の室データ121Aに適合していない設備機器データ(選定結果322A)が3次元モデル11に設定されるおそれがあることを作業者に報知することができる。その後、設備設定部32は、設備機器の再選定を行う(S105)。なお、S105の設備機器の再選定において、設備設定部32は、図7に示すように、3次元モデル11に設定されている室データ121A(最新の室データ)を設備設定部32に再取得させ、再取得した室データ(最新の室データ)と、条件設定部321で設定された計算条件とに基づいて、改めて選定部322に設備機器を選定させることになる(すなわち、改めて設備機器の選定をやり直すことになる)。その後、設備設定部32は、再選定による選定結果322Aを空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する(S106)。これにより、3次元モデル11の室データ121Aに適合した設備機器データ(選定結果322A)を3次元モデル11に設定することができる。
【0071】
図11は、別の処理を説明するためのフロー図である。設備設定部32は、設備設定部32の記憶部324の室データ324Aと、3次元モデル11の室データ121Aとが不一致の場合(S102でNO)、3次元モデル11に設定されている室データ121A(最新の室データ)を設備設定部32に再取得させる(S111)。3次元モデル11の室データ121A(最新の室データ)を再取得した後(S111)、選定部322は、選定部322の選定結果322Aが室データ121A(最新の室データ)に適合しているか否かを判別する(S112)。選定部322の選定結果322Aが室データ121A(最新の室データ)に適合している場合(S113でYES)、既存の選定結果322Aが流用可能であるので、選定部322は、選定結果322Aを空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する(S103)。一方、選定部322の選定結果322Aが室データ121A(最新の室データ)に適合していない場合、図10のS105の処理と同様に、設備設定部32は、S111で3次元モデル11から再取得した室データ121A(最新の室データ)に基づいて設備機器の再選定を行い(図7参照)、再選定による選定結果322Aを空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する(S105)。なお、S105の処理後、設備設定部32は、再選定による選定結果322Aを空調機器データ141Aとして3次元モデル11の空調データ14Aに設定する(S106)。これにより、3次元モデル11の室データ121Aに適合した設備機器データ(選定結果322A)を3次元モデル11に設定することができる。
【0072】
図11に示す処理フローによれば、選定部322の選定結果322Aが室データ121A(最新の室データ)に適合している場合(S113でYES)に、設備機器の再選定(S104)を行わなくて済むため、図10の処理フローと比べて作業を軽減させることが可能になる。すなわち、図11に示す処理フローによれば、選定部322の選定結果322Aが室データ121A(最新の室データ)に適合している場合(S113でYES)に、既存の選定結果322Aを流用することによって、改めて設備機器の選定をやり直さなくても良くなるため、図10の処理フローと比べて作業を軽減させることが可能になる。
【0073】
上記の通り、設備設定部32(若しくは検証性能装置)が判定部325を備えることにより、3次元モデル11の室データ121Aと設備データ14の設備機器データ(例えば空調機器データ141A)との不整合を防止できる。この結果、構造物の性能検証の際に、性能検証の計算に用いられた室データと設備データ14とが不整合になることを防止でき、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0074】
===第2実施形態===
第1実施形態では、計算ステップ(S5)において、建築物のエネルギー消費性能に関する計算が行われていた。但し、構造物の性能検証の対象は、エネルギー消費性能に限られるものではない。第2実施形態では、構造物の性能検証として、建築物のCO排出量(二酸化炭素排出量)を計算する例について説明する。
【0075】
図12Aは、部材ごとの排出原単位の説明図である。図12Bは、設備機器ごとの排出源単位の説明図である。
【0076】
第2実施形態の3次元モデル11には、構造物を構成する部材(例えば、柱、梁、外壁部)に関するデータ(部材データ)が含まれている。部材データには、部材の属性データとして、「排出原単位」が含まれている。図12Aには、部材の固有番号(ID番号)に対応付けられた「排出原単位」が示されている。排出原単位は、単位当たりのCO排出量である。排出原単位は、部材(部材の固有番号)に応じて異なる値及び単位となる。なお、図中のBx(B1,B2,・・・、B11,B12,B13,・・・)には、実際には数値が設定されている。以下の説明では、CO排出量を重量(単位:kg)で示すが、CO排出量は他の単位(例えば体積:m)で示されても良い。
また、3次元モデル11には、構造物の設備に関する設備データ14が含まれている。設備データ14においても、設備機器の属性データとして、設備機器の「排出原単位」が含まれている。図12Bには、設備機器の固有番号(ID番号)に対応付けられた「排出原単位」が示されている。排出原単位は、設備機器に応じて異なる値及び単位となる。なお、設備機器の属性データには、設備機器の固有番号(ID番号)に対応付けて、設備機器の単位時間当たりのエネルギー消費量を示す「消費電力」や設備機器の使用時間を示す「制御方法」なども含まれている。
【0077】
第2実施形態の抽出部22は、所定のデータを抽出することによって、CO排出量の計算に必要な各データを3次元モデル11から抽出することになる。抽出部22が抽出するデータについては、後述する説明から明らかとなる。
【0078】
第2実施形態の計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、CO排出量計算プログラムを用いて、構造物のCO排出量を計算する。ここでは、計算部24は、建築資材のCO排出量を算出する。計算部24は、「排出原単位」に「使用量」を乗じることによって、建築資材のCO排出量(単位:kg-C)を算出する。
【0079】
例えば、或る部材の「排出原単位」の単位が「kg-C/m」の場合には、計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、当該部材の体積(単位:m)を算出し、当該部材の「排出原単位」に当該部材の体積(使用量に相当)を乗じることによって、当該部材によるCO排出量(単位:kg-C)を算出する。なお、部材の体積は、例えば、3次元モデル11に含まれる当該部材の3次元形状データから算出しても良いし、3次元モデル11に含まれる当該部材の属性データ(例えば壁面積及び壁厚み)から算出しても良い。
また、別の或る部材の「排出原単位」の単位が「kg-C/m」の場合には、計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、当該部材の面積(単位:m)を算出し、当該部材の「排出原単位」に当該部材の面積(使用量に相当)を乗じることによって、当該部材によるCO排出量(単位:kg-C)を算出する。なお、部材の面積は、例えば、3次元モデル11に含まれる室データ(例えば室面積)から算出しても良いし、3次元モデル11に含まれる当該部材の属性データ(例えば壁面積)から算出しても良い。
【0080】
また、或る設備機器の「排出原単位」の単位が「kg-C/台」の場合には、計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、当該設備機器の「排出原単位」に当該設備機器の台数(使用量に相当)を乗じることによって、当該設備機器によるCO排出量(単位:kg-C)を算出する。なお、設備機器の台数(単位:台)は、3次元モデル11の設備データ14に含まれている。
また、或る設備機器(例えば空調設備における配管)の「排出原単位」の単位が「kg-C/m」の場合には、抽出部22が抽出したデータに基づいて、当該設備機器の長さ(単位:m)を算出し、当該設備機器の「排出原単位」に当該設備機器の長さ(使用量に相当)を乗じることによって、当該設備機器によるCO排出量(単位:kg-C)を算出する。なお、部材の長さは、例えば、3次元モデル11に含まれる当該設備機器の3次元形状データから算出しても良いし、3次元モデル11に含まれる当該部材の属性データから算出しても良い。
【0081】
上記のように、計算部24は、各部材の「排出原単位」に「使用量」を乗じることによって、各部材のCO排出量(単位:kg-C)をそれぞれ算出する。そして、計算部24は、全ての部材のCO排出量(単位:kg-C)の総和を算出することによって建築物全体の建築資材のCO排出量(単位:kg-C)を算出する。
【0082】
なお、計算部24が算出するCO排出量は、建築資材のCO排出量に限られるものではない。例えば、次に説明するように、計算部24は、建築物の使用時のCO排出量と算出しても良い。
【0083】
建築物の使用時のCO排出量を算出する場合においても、計算部24は、「排出原単位(B)」に「使用量(A)」を乗じることによって、建築物の使用時のCO排出量(単位:kg-C/年)を算出する。
【0084】
計算部24は、予め、エネルギー(電気、ガス、石油など)の種類と「排出原単位」とを対応付けたテーブルを備えている。また、既に説明した通り、3次元モデル11には、設備機器の属性データとして、設備機器の単位時間当たりのエネルギー消費量を示す「消費電力」や設備機器の使用時間を示す「制御方法」などのデータが含まれている。
【0085】
例えば、電力を消費する設備機器の使用時のCO排出量を計算する場合、計算部24は、電気に対応する「排出原単位(単位:kg-C/kWh)」をテーブルから取得する。また、計算部24は、抽出部22が抽出したデータに基づいて、当該設備機器の「消費電力(単位:W)」と、当該設備機器の「制御方法」に含まれる当該設備機器の「使用時間」と、当該設備機器の「台数」とに基づいて、当該設備機器による1年間の「電気使用量(単位:kWh/年)」を算出する。そして、計算部24は、テーブルから取得した電気の「排出原単位(単位:kg-C/kWh)」に当該設備機器の1年間の「電気使用量(単位:kWh/年)」を乗じることによって、建築物を1年間使用する場合の当該設備機器による電力消費に応じたCO排出量(単位:kg-C/年)を算出する。
同様に、計算部24は、電力を消費する他の設備機器についても、テーブルから取得した電気の「排出原単位(単位:kg-C/kWh)」に、抽出部22が抽出したデータに基づいて算出した当該設備機器の1年間の「電気使用量(単位:kWh/年)」を乗じることによって、建築物を1年間使用する場合の当該設備機器による電力消費に応じたCO排出量(単位:kg-C/年)を算出する。
また、同様に、計算部24は、電力以外のエネルギー(ガス、石油など)を消費する他の設備機器についても、テーブルから取得した「排出原単位」に、抽出部22が抽出したデータに基づいて算出した1年間のエネルギーの「使用量」を乗じることによって、建築物を1年間使用する場合の当該設備機器によるエネルギー消費に応じたCO排出量(単位:kg-C/年)を算出する。
【0086】
上記のように、計算部24は、各設備機器の「排出原単位」に「使用量」を乗じることによって、建築物を1年間使用する場合の当該設備機器によるエネルギー消費に応じたCO排出量(単位:kg-C/年)をそれぞれ算出する。そして、計算部24は、全ての設備機器のCO排出量(単位:kg-C/年)の総和を算出することによって、建築物を1年間使用する場合のCO排出量(単位:kg-C/年)を算出する。
【0087】
なお、計算部24は、建築物を1年間使用する場合のCO排出量(単位:kg-C/年)に、使用年数を乗算することによって、当該使用年数における建築物の使用時のCO排出量(単位:kg-C)を算出しても良い。また、計算部24は、前述の建築資材のCO排出量(単位:kg-C)と、建築物の使用時のCO排出量(単位:kg-C)との合計を、建築物のCO排出量として算出しても良い。また、計算部24は、建築資材のCO排出量や建築物の使用時のCO排出量を算出するだけでなく、更に、建築物の別のCO排出量(例えば、建築資材の輸送時のCO排出量や、建築物の施工時のCO排出量)等を3次元モデル11の建築構造データ12(構造物データ)や設備データ14に基づいて算出しても良い。
【0088】
第2実施形態においても、計算部24の計算結果においてCO排出量が要求される値を超えた場合には、3次元モデル11の設備データ14の再設定が行われることになる(再設定ステップ)。3次元モデル11の設備データ14が再設定されることにより、要求される性能を満たす構造物が設計可能になる。また、3次元モデル11の設備データ14の再設定が行われた後(再設定ステップの後)、性能検証システム20は、構造物の性能を再度検証することが望ましい。
【0089】
===小括===
態様1に相当する前述の第1実施形態及び第2実施形態に示す性能検証方法では、部材で構成される空間と当該空間に設けられる設備機器とを有する構造物の3次元モデル11を3次元モデルシステム10に設定する3次元モデル設定ステップと(図1のS1)、性能検証システム20において建築構造データ12(空間及び部材の少なくとも一方に関する構造物データ)と設備データ14とを3次元モデル11から抽出する抽出ステップと(図1のS3)、性能検証システム20において抽出ステップ(S3)で抽出した建築構造データ12及び設備データ14に基づいて構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う計算ステップと(図1のS5)、が行われている。このような性能検証方法によれば、構造物の3次元モデル11の情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0090】
また、態様2に相当する前述の実施形態では、計算ステップでの計算結果に基づいて、3次元モデル11の設備データ14を再設定する。3次元モデル11の設備データ14が再設定されることにより、要求される性能を満たす構造物が設計可能になる。
【0091】
また、態様3に相当する前述の第1実施形態では、計算ステップ(図1のS5)で用いられる計算プログラムは、エネルギー消費性能計算プログラムであり、計算ステップにおいて、構造物のエネルギー消費性能を検証する。これにより、構造物の3次元モデル11の情報と構造物のエネルギー消費性能の検証に用いられるデータとを連係させることによって、エネルギー消費性能の検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0092】
また、態様4に相当する前述の第1実施形態では、抽出ステップ(図1のS3)で抽出した建築構造データ12(構造物データ)及び設備データ14に基づいて入力シートを生成し(図4図6参照)、入力シートをエネルギー消費性能計算プログラムに入力することによって構造物のエネルギー消費性能を検証する。これにより、国土技術政策総合研修所及び建築研究所が提供するエネルギー消費性能計算プログラムを用いて、構造物のエネルギー消費性能を検証することが可能である。
【0093】
態様5に相当する前述の第2実施形態では、計算ステップ(図1のS5)で用いられる計算プログラムは、CO排出量算定プログラムであり、計算ステップにおいて、構造物のCO排出量を算出する。これにより、構造物の3次元モデル11の情報と構造物のCO排出量の検証に用いられるデータとを連係させることによって、CO排出量の検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0094】
態様6に相当する前述の第1実施形態では、図7に示すように、前述の3次元モデル11には、室に関する室データ121Aが含まれている。そして、3次元モデル設定ステップにおいて(図1のS1)、図7に示すように、設定部30は、3次元モデル11に設定されている室データ121Aに基づいて設備機器を選定し、選定された設備機器に関するデータ(設定結果322A)を設備データ14(例えば空調機器データ141A)として3次元モデル11に設定する(図7参照)。これにより、室の条件(例えば室面積など)に適した設備機器(例えば空調機器)を選定することが可能になるとともに、3次元モデル11の室データ121Aに適合した設備データを3次元モデル11に設定することができる(3次元モデル11の室データ121Aと設備データとが整合する)。
【0095】
態様7に相当する前述の第1実施形態では、設備機器に関するデータ(選定結果322A)を3次元モデル11に設定する際に、図10及び11のS101に示すように、設備機器の選定に用いた室データ324Aと、3次元モデル11に設定されている室データ121Aとを照合することが望ましい。これにより、性能検証の計算に用いられる室データと設備データ14とが不整合になることを抑制できる。
【0096】
態様8に相当する前述の性能検証プログラムは、抽出プログラムと、計算プログラムとを備えている。抽出プログラムは、コンピューターで構成された性能検証システム20に、3次元モデル11から建築構造データ12(空間及び部材の少なくとも一方に関する構造物データ)と設備データ14とを抽出する抽出ステップ(図1のS3)を実行させる。また、計算プログラムは、性能検証システム20に、抽出ステップ(S3)で抽出した建築構造データ12及び設備データ14に基づいて構造物の性能を検証するための計算を行う計算ステップ(図1のS5)を実行させる。このような性能検証プログラムによれば、構造物の3次元モデル11の情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0097】
態様9に相当する前述の性能検証システム20は、抽出部22と、計算部24とを備えており、抽出部22は、3次元モデル11から建築構造データ12(空間及び部材の少なくとも一方に関する構造物データ)と設備データ14とを抽出し、計算部24は、抽出ステップ(S3)で抽出した建築構造データ12及び設備データ14に基づいて、構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いた計算を行う。このような性能検証システム20によれば、構造物の3次元モデル11の情報と構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ、かつ、不整合を無くし、確実性向上を図ることができる。
【0098】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0099】
1 構造物、3 設備機器、
10 3次元モデルシステム、11 3次元モデル、
12 建築構造データ、12A 建築データ、12B 構造データ、
14 設備データ、14A 空調データ、14B 衛生データ、
14C 電気データ、14D 昇降機データ、
20 性能検証システム、22 抽出部、
24 計算部、25 入力データ生成部、
25A,25B 変換表、251 室仕様入力シート、
252 空調ゾーン入力シート、253 空調機入力シート、
26 性能計算部、28 出力部、
30 設定部、31 構造計算部、
32 設備設定部、32A 空調設備設定部、
32B 換気設備設定部、32C 効率化設備設定部、
32D 給湯設備設定部、32E 照明設備設定部、
32F 再生エネルギー設備設定部、32G 昇降機設定部、
321 条件設定部、322 選定部、
323 仮設定部、324 記憶部、325 判定部、
40 サーバー、100 性能検証装置
図1
図2
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図12