(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163999
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両用乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/045 20060101AFI20231102BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60R21/045 332
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075275
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴喜
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC03
3D022CD12
3D022CD14
3D022CD17
3D022CD27
(57)【要約】
【課題】下肢部に対する保護性能を向上する。
【解決手段】ニーボルスター装置30では、回転軸66が、グローブボックス40のロック機構42に係合し、グローブボックス40の蓋部40Aの上端部に連結されている。また、サポートパネル部62が押出機構50に連結されている。車両Vの前面衝突時には、押出機構50によって、回転軸66及びサポートパネル部62が後側へ押し出されて、グローブボックス40が閉位置から後側へ回転して開位置に配置される。これにより、前面衝突時に前側へ移動する助手席乗員90における下肢部92の膝部96をグローブボックス40によって前側から拘束することができる。また、サポートパネル部62がグローブボックス40の蓋部40Aに対して上側へ突出する。これにより、助手席乗員90における下肢部92の膝部96をサポートパネル部62によって前側から拘束することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席乗員の下肢部の車両前側に配置され、下端部が車幅方向を軸方向としてインストルメントパネルに開閉可能に設けられたグローブボックスと、
前記グローブボックスの蓋部の上端部に連結された下肢部拘束機構と、
前記下肢部拘束機構に連結されると共に、前面衝突時に作動する押出機構と、
を備え、
前記押出機構の作動時には、前記押出機構によって、前記下肢部拘束機構が車両後側へ押し出されて、前記グローブボックスが閉位置から車両後側へ回転した開位置へ配置されると共に、前記下肢部拘束機構の一部が前記蓋部から上側へ突出して前記助手席乗員の下肢部を車両前側から拘束する車両用乗員保護装置。
【請求項2】
前記下肢部拘束機構は、
前記グローブボックスの車両上側に設けられ、前記押出機構に連結されたサポート部と、
前記蓋部の上端部の車両前側において車幅方向に延在され、前記サポート部に固定された回転軸と、
を含んで構成され、
前記グローブボックスには、ロック機構が設けられており、前記ロック機構が前記回転軸に係合することで、前記グローブボックスが、閉位置に保持され且つ前記下肢部拘束機構に連結され、前記ロック機構の前記回転軸への係合が解除されることで、前記グローブボックスの閉位置から開位置への回転が許可され、
前記押出機構の作動時には、前記押出機構によって、前記サポート部及び前記回転軸が、車両後側へ押し出されると共に、前記回転軸の軸回りに前記ロック機構に対して相対回転して、前記サポート部が前記蓋部から車両上側へ突出した拘束位置に配置される請求項1に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項3】
前記サポート部には、カム面を有する押し部が設けられており、
前記押し部は、前記サポート部及び前記押出機構に車幅方向を軸方向として回転可能に連結されており、
前記押出機構の作動時には、前記押出機構により前記押し部が回転することで、前記カム面によって前記サポート部及び前記回転軸が前記回転軸の軸回りに前記ロック機構に対して相対回転する請求項2に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項4】
前記押出機構は、
シリンダと、
一端部が前記押し部に連結され、他端部が前記シリンダ内に収容されると共に、前記シリンダ内にガスが供給されることで前記押し部を車両後側へ押出すピストンと、
を含んで構成されている請求項3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項5】
前記インストルメントパネルの裏側には、車両用エアバッグ装置が設けられており、
前記車両用エアバッグ装置は、
ガスの供給を受けることで前記助手席乗員の前側で膨張展開されるエアバッグと、
前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備えており、
前記シリンダが、前記インフレータに連結されており、前記インフレータの作動時には、前記インフレータから前記シリンダへガスが供給される請求項4に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項6】
前記サポート部及び前記エアバッグがテザーによって連結され、前記テザーによって前記サポート部が前記インストルメントパネルに保持されており、
前記エアバッグの膨張展開時には、前記テザーによる前記サポート部に対する保持状態が解除される請求項5に記載の車両用乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車両用乗員保護装置では、アクティブニーボルスターがインストルメントパネルに設けられている。アクティブニーボルスターは、下肢拘束部と、アクチュエータと、を有している。そして、車両の前面衝突時には、アクチュエータのモータが作動して、下肢拘束部が、乗員側へ向けて後傾するように回転する。これにより、下肢拘束部が、乗員の膝部を車両前斜め上側から拘束する。その結果、前面衝突時における乗員の膝部の跳ね上がりを下肢拘束部によって防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用乗員保護装置では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、上記車両用乗員保護装置では、下肢拘束部によって、前面衝突時における乗員の膝部の跳ね上がりを拘束できるものの、下肢拘束部が乗員の膝部を斜め上側から拘束するため、車両の床部及び下肢拘束部によって下肢部が挟まれるようになる。このため、乗員の下肢部に対する傷害値が悪化する可能性がある。よって、上記車両用乗員保護装置では、下肢部に対する保護性能を向上するという点において、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、下肢部に対する保護性能を向上することができる車両用乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、助手席乗員の下肢部の車両前側に配置され、下端部が車幅方向を軸方向としてインストルメントパネルに開閉可能に設けられたグローブボックスと、前記グローブボックスの蓋部の上端部に連結された下肢部拘束機構と、前記下肢部拘束機構に連結されると共に、前面衝突時に作動する押出機構と、を備え、前記押出機構の作動時には、前記押出機構によって、前記下肢部拘束機構が車両後側へ押し出されて、前記グローブボックスが閉位置から車両後側へ回転した開位置へ配置されると共に、前記下肢部拘束機構の一部が前記蓋部から上側へ突出して前記助手席乗員の下肢部を車両前側から拘束する車両用乗員保護装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、下肢部に対する保護性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るニーボルスター装置が適用された車両のインストルメントパネルの左部を模式的に示す後側から見た後面図である。
【
図2】本実施形態に係るニーボルスター装置が適用された車両のキャビンの前部における左側部を模式的に示す左側から見た側面図である。
【
図3】
図2に示されるニーボルスター装置の周辺を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図1に示されるロック機構におけるロックレバーの周辺を示す左側から見た側面図である。
【
図5】
図3に示されるニーボルスター装置の作動後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る車両用乗員保護装置としてのニーボルスター装置30について説明する。なお、図面に適宜示される矢印UPは、ニーボルスター装置30が適用された車両(自動車)Vの車両上側を示し、矢印FRは車両前側を示し、矢印LHは車両左側(車幅方向一方側)を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。
【0010】
図1~
図5に示されるように、ニーボルスター装置30は、車両Vの車両用乗員保護システムSの一部を構成しており、車両用乗員保護システムSは、車両用エアバッグ装置10及びニーボルスター装置30を含んで構成されている。車両用エアバッグ装置10は、車両Vのキャビンにおける前部の左部に配置された助手席シート80に着座する助手席乗員90の頭部及び上体を保護する装置として構成されている。また、ニーボルスター装置30は、助手席乗員90の下肢部92(脛部94及び膝部96)を保護する装置として構成されている。以下、先に、車両用エアバッグ装置10の構成について説明し、次いで、ニーボルスター装置30の構成について説明する。
【0011】
(車両用エアバッグ装置10について)
車両用エアバッグ装置10は、上側へ開放された略矩形箱状のモジュールケース12と、モジュールケース12内に折畳み状態で収納されたエアバッグ14と、ガスを噴出してエアバッグ14にガスを供給するインフレータ16と、を含んで構成されている。
【0012】
車両用エアバッグ装置10は、助手席シート80の前側で且つインストルメントパネル82の裏側に配置されている。具体的には、車両用エアバッグ装置10は、インストルメントパネル82の上部を構成する上側パネル部82Aの下側に配置されており、インストルメントパネル82の骨格部材であるインストルメントパネルサポートビーム(図示省略)等に支持されている。上側パネル部82Aには、モジュールケース12を覆う部位において、エアバッグドアが形成されている。なお、インストルメントパネル82には、上側パネル部82Aよりも後側へ突出したサポート部としてのサポートパネル部62が設けられており、サポートパネル部62が、後述するニーボルスター装置30の一部を構成している。
【0013】
エアバッグ14は、一例として複数の基布の外周部を縫製することにより袋状に形成されている。エアバッグ14は、後述するインフレータ16からガスの供給を受けると、モジュールケース12の開口部から後側へ膨張展開して、助手席乗員90の前側に配置される(
図2において2点鎖線にて示されるエアバッグ14を参照)。詳しくは、エアバッグ14の幅方向(左右方向)中央部が助手席乗員90の前側に位置して、前面衝突時に前側へ移動する助手席乗員90の頭部及び上体をエアバッグ14によって拘束する。
【0014】
インフレータ16は、エアバッグ14の前端部に内蔵されている。インフレータ16は、上下方向を軸方向とする中空の略円柱状に形成されて、モジュールケース12の底壁に固定されている。インフレータ16はエアバッグECU20(広義には、衝突判定部として把握される要素であり、
図2参照)に電気的に接続されている。そして、車両Vの前面衝突時には、エアバッグECU20によってインフレータ16が作動し、インフレータ16の上部から噴出されるガスが、エアバッグ14内に供給され、エアバッグ14が膨張展開されるようになっている。
【0015】
エアバッグECU20には、衝突センサ22(
図2参照)が電気的に接続されている。衝突センサ22は、車両Vのウインドシールドガラス等に設けられたステレオカメラや、車両Vの前端部に設けられたレーダ装置等によって構成されている。エアバッグECU20は、衝突センサ22からの情報に基づいて、車両Vに対する前面衝突を検知又は予測し、前面衝突を検知又は予測すると、インフレータ16を作動させるようになっている。すなわち、車両Vの前面衝突時とは、エアバッグECU20が、車両Vの前面衝突を予測した場合を含んでいる。
【0016】
(ニーボルスター装置30について)
ニーボルスター装置30は、グローブボックス40と、左右一対の押出機構50と、下肢部拘束機構60と、を含んで構成されている。
【0017】
(グローブボックス40について)
グローブボックス40は、上側へ開放された略箱形状に形成されて、インストルメントパネル82の下部に形成された開口部82B内において、開閉可能に配置されている。詳しくは、グローブボックス40は、サポートパネル部62の下側で且つ助手席乗員90の下肢部92における脛部94の前側に離間して配置されている。グローブボックス40の後壁を構成する蓋部40Aは、側面視で、上側へ向かうに従い後側へ傾斜しており、蓋部40Aの上端部がサポートパネル部62の前端部の下側に配置されている。グローブボックス40の下端部には、左右方向を軸方向とする連結軸40Bが設けられており、連結軸40Bが、インストルメントパネル82の下端部に回転可能に連結されている。具体的には、グローブボックス40が、閉位置(
図2において実線にて示される位置)と、閉位置から後側へ回転した開位置(
図2において2点鎖線にて示される位置)と、の間を回転可能に構成されている。
【0018】
グローブボックス40の蓋部40Aの上端部には、ロック機構42が設けられている。ロック機構42は、操作レバー44(
図1参照)と、左右一対のロックレバー46(
図1及び
図4参照)と、操作レバー44及びロックレバー46を連結するワイヤ48(
図1及び
図4参照)と、を含んで構成されている。操作レバー44は、左右方向を軸方向としてグローブボックス40の蓋部40Aの上端部に回転可能に設けられると共に、蓋部40Aから後側へ操作可能に露出している。
【0019】
図4に示されるように、ロックレバー46は、グローブボックス40における蓋部40Aの上端部の前側に設けられている。ロックレバー46は、左右方向を厚み方向とし且つ一部が下側へ開放された略円板状に形成されている。すなわち、ロックレバー46には、径方向外側(下側)へ開放されたロック溝46Aが形成されており、ロック溝46Aの底部が、ロックレバー46の中央部に位置している。ロック溝46Aの底部には、後述する下肢部拘束機構60の回転軸66が挿入されている。また、図示は省略するが、ロックレバー46は、回転軸66の軸線回りに回転可能に、蓋部40Aに連結されている。これにより、ロックレバー46(ロック機構42)が、回転軸66に前後方向に係合して、閉位置におけるグローブボックス40の後側(開位置側)への回転が制限されて、グローブボックス40が閉位置に保持されている。
【0020】
ワイヤ48は、可撓性を有する紐状に形成されている。ワイヤ48は操作レバー44及びロックレバー46を連結しており、ワイヤ48によって、ロックレバー46が、操作レバー44の回転操作に連動して回転するように構成されている。具体的には、操作レバー44が回転操作されると、ロックレバー46が、左側から見て時計回り(
図4の矢印D方向側)に略90度回転して、ロック溝46Aが前側へ開放する位置に配置される(
図4において、2点鎖線にて示されるロックレバー46を参照)。これにより、閉位置におけるグローブボックス40の後側への回転が許可されて、グローブボックス40を開位置へ回転できるように構成されている。なお、操作レバー44の回転操作時には、操作レバー44がグローブボックス40の蓋部40Aに係合して、操作レバー44の操作後の状態が保持されるようになっている。また、ロックレバー46は、回転軸66に設けられたトーションバネなどの付勢部材(図示省略)によって閉位置側へ付勢されている。これにより、グローブボックス40の閉位置において、操作レバー44と蓋部40Aとの係合状態を手動操作によって解除することで、付勢部材の付勢力によりロックレバー46が回転してロックレバー46が回転軸66と前後方向に再度係合するようになっている。
【0021】
(押出機構50について)
図1~
図3に示されるように、左右一対の押出機構50は、グローブボックス40の上方側にそれぞれ配置されると共に、左右方向に所定の間隔を空けて配置されている。押出機構50は、シリンダ52と、ピストン54と、を含んで構成されている。シリンダ52は、略前後方向を軸方向とする円筒状に形成されて、インストルメントパネルサポートビーム(図示省略)等に固定されている。具体的には、シリンダ52は、側面視で、前側へ向かうに従い上側へ若干傾斜している。シリンダ52の前端部には、ガスホース56の一端部が連結され、ガスホース56の他端部は、車両用エアバッグ装置10のインフレータ16に連結されている。具体的には、ガスホース56は、インフレータ16の底部から延出され、長手方向中間部において二股状に分岐して、ガスホース56の一端部がシリンダ52の前端部に連結されている。これにより、インフレータ16の作動時には、インフレータ16によって発生したガスが、シリンダ52の前端部からシリンダ52内に供給されて、押出機構50が作動するようになっている。
【0022】
ピストン54は、シリンダ52の軸方向に沿って延在されている。ピストン54の前端部がシリンダ52内に相対移動可能に収容されており、ピストン54の後端部(一端部)がシリンダ52から後側へ突出している(
図3に示される位置であり、このピストン54の位置を格納位置と称する)。そして、押出機構50の作動時には、インフレータ16によって発生したガスがシリンダ52内に供給され、シリンダ52内のガス圧によって、ピストン54が格納位置からシリンダ52の軸方向に沿って後方側へ移動する(
図5に示される位置であり、このピストン54の位置を押出位置と称する)。
【0023】
(下肢部拘束機構60について)
下肢部拘束機構60は、インストルメントパネル82の一部を構成するサポートパネル部62と、回転軸66と、を含んで構成されている。サポートパネル部62は、略上下方向を厚み方向とし且つ左右方向を長手方向とする略長尺パネル状に形成されている。サポートパネル部62は、インストルメントパネル82の上側パネル部82Aの後端部に対して後側へ突出し、グローブボックス40の前側開口部を上側から覆う位置に配置されている(
図3に示される位置であり、以下、このサポートパネル部62の位置を初期位置という)。また、サポートパネル部62の前端部が、インストルメントパネル82の上側パネル部82Aに保持されている。具体的には、可撓性を有する略長尺紐状のテザー70の一端部によって、サポートパネル部62が上側パネル部82Aに保持されており、テザー70の他端部が、前述の車両用エアバッグ装置10のエアバッグ14に連結されている。これにより、サポートパネル部62が初期位置に保持されている。一方、車両用エアバッグ装置10及びニーボルスター装置30の作動時には、膨張展開するエアバッグ14によってテザー70が引っ張られることで、テザー70によるサポートパネル部62の保持状態が解除されるように構成されている。
【0024】
サポートパネル部62の下側には、押し部64が設けられている。押し部64は、側面視でシリンダ52の軸方向を長手方向とする略楕円状に形成されており、押し部64の後端部における上下方向の寸法が後側へ向かうに従い小さくなるように設定されている。押し部64の外周部は、カム面64Aとして構成されており、カム面64Aがサポートパネル部62の下面に当接可能に構成されている。そして、押し部64の後端部が、左右方向を軸方向とする支持ピン72によって、サポートパネル部62に回転可能に連結されており、押し部64の前端部が、左右方向を軸方向とする支持ピン74によって、ピストン54の後端部に回転可能に連結されている。また、支持ピン72は、支持ピン74よりも下側に配置されている。
【0025】
回転軸66は、左右方向に延在された略円柱状に形成されている。回転軸66は、サポートパネル部62の前端部の下側に配置されており、回転軸66の長手方向両端部が、ヒンジ62Aによってサポートパネル部62に固定されている。そして、前述のように、回転軸66がロックレバー46のロック溝46A内に挿入され、回転軸66とロックレバー46とが前後方向に係合して、グローブボックス40が閉位置に保持されると共に、グローブボックス40と下肢部拘束機構60とが連結されている。
【0026】
また、詳細については、後述するが、ニーボルスター装置30の作動時には、押出機構50によってサポートパネル部62及び回転軸66が後側へ押し出されて、グローブボックス40が開位置へ回転するようになっている。また、このときには、押し部64によって、回転軸66及びサポートパネル部62がロック機構42に対して回転軸66の軸回りに相対回転して、サポートパネル部62がグローブボックス40の蓋部40Aから上側へ突出(延出)すると共に、助手席乗員90の下肢部92における膝部96の前側に配置される設定になっている(
図5に示される位置であり、以下、このサポートパネル部62の位置を拘束位置という)。すなわち、ニーボルスター装置30の作動時には、ロックレバー46が、回転軸66を回転可能に支持する支持部材として機能するようになっている。
【0027】
(作用効果)
次に、本実施の形態の作用及び効果を説明する。
【0028】
上記のように構成されたニーボルスター装置30では、
図3に示されるように、ニーボルスター装置30の非作動状態において、押出機構50のピストン54が格納位置に配置され、サポートパネル部62が初期位置に配置されている。また、グローブボックス40のロック機構42が回転軸66に係合して、グローブボックス40が閉位置に保持されている。
【0029】
車両用乗員保護システムSのエアバッグECU20が、衝突センサ22からの信号に基づいて車両Vへの前面衝突を検知又は予測すると、エアバッグECU20によって車両用エアバッグ装置10のインフレータ16が作動する。これにより、インフレータ16から噴出したガスが、エアバッグ14内に供給される。ガスの供給を受けたエアバッグ14は、インストルメントパネル82に設定されたエアバッグドアを開裂して、モジュールケース12の開口部から後側へ膨張展開される。これにより、エアバッグ14が、助手席乗員90の前側で膨張展開される。
【0030】
また、車両Vの前面衝突時には、助手席乗員90が、慣性力によって前方へ移動する。具体的には、シートベルト84(
図2参照)が助手席乗員90に装着されているため、助手席乗員90の上体が、助手席乗員90の腰部を中心として前側へ傾倒するようになる。よって、前方側へ移動する助手席乗員90の頭部及び上体をエアバッグ14の後面によって受け止めて拘束する。
【0031】
一方、車両用エアバッグ装置10のエアバッグ14が膨張展開することで、テザー70が引っ張られて、テザー70によるサポートパネル部62に対する保持状態が解除される。また、インフレータ16が作動することで、インフレータ16から噴出したガスが、ガスホース56によってシリンダ52の前端部からシリンダ52内に供給される。これにより、シリンダ52内のガス圧によってピストン54が格納位置から後方側(
図3の矢印A方向側)へ押し出されて、押出位置に配置される。
【0032】
ピストン54の後端部は、下肢部拘束機構60におけるサポートパネル部62の押し部64の前端部に連結されている。また、サポートパネル部62には、回転軸66が固定されており、回転軸66には、グローブボックス40のロック機構42が連結されている。このため、ピストン54の格納位置からの移動時には、ピストン54によって押し部64が後側へ押し出されて、サポートパネル部62及び回転軸66がピストン54と共に後方側へ変位すると共に、グローブボックス40が閉位置から開位置へと回転する。
【0033】
また、ピストン54による押し部64の後側への押し出時には、グローブボックス40の回転軌跡に応じて、サポートパネル部62及び回転軸66が、後斜め下方側へ変位する。すなわち、押し部64を支持するための支持ピン72も後斜め下方側へ変位する。一方、押し部64の前端部は、ピストン54によって後側へ押し出されている。このため、押し部64が、左側から見て、支持ピン72を中心として時計回りに(
図3の矢印B方向側へ)回転する。このとき、押し部64のカム面64Aが、サポートパネル部62の下面に当接して、当該下面を上斜め後方側へ押圧する。これにより、回転軸66及びサポートパネル部62が、左側から見て、回転軸66の軸回りに時計回りに(
図3の矢印C方向側)回転すると共に、グローブボックス40におけるロック機構42のロックレバー46に対して相対回転する。その結果、
図5に示されるように、サポートパネル部62が、拘束位置に配置される。具体的には、サポートパネル部62が、グローブボックス40の蓋部40Aの上端部に対して起立するように、蓋部40Aから上側へ突出する。よって、ニーボルスター装置30の作動後には、グローブボックス40の蓋部40Aが助手席乗員90の脛部94の前側へ配置されると共に、サポートパネル部62が助手席乗員90の膝部96の前側に配置される。その結果、前方側へ移動する助手席乗員90の下肢部92をサポートパネル部62及びグローブボックス40によって受け止めて拘束する。
【0034】
以上、説明したように、ニーボルスター装置30では、下肢部拘束機構60の回転軸66が、グローブボックス40のロック機構42に係合して、グローブボックス40の蓋部40Aの上端部に連結されている。また、下肢部拘束機構60のサポートパネル部62が押出機構50に連結されている。そして、車両Vの前面衝突時には、押出機構50によって、下肢部拘束機構60の回転軸66及びサポートパネル部62が後側へ押し出されて、グローブボックス40が、閉位置から後側へ回転し、開位置に配置される。これにより、前面衝突時に前側へ移動する助手席乗員90における下肢部92の膝部96をグローブボックス40によって前側から拘束することができる。しかも、このときには、閉位置から後傾するグローブボックス40の蓋部40Aに対して、サポートパネル部62が上側へ突出する。これにより、助手席乗員90の下肢部92を拘束する領域を、サポートパネル部62によって、上側へ拡大して、助手席乗員90における下肢部92の膝部96をサポートパネル部62によって前側から拘束することができる。その結果、サポートパネル部62及びキャビンの床部が助手席乗員90の下肢部92を上下方向両側から挟み込むことを抑制しつつ、助手席乗員90の下肢部92をグローブボックス40及びサポートパネル部62によって前側から拘束することができる。したがって、下肢部92に対する傷害値を低くすることができると共に、下肢部92に対する保護性能を向上することができる。
【0035】
また、下肢部拘束機構60は、インストルメントパネル82の一部を構成するサポートパネル部62と、サポートパネル部62に固定された回転軸66と、を含んで構成されている。そして、グローブボックス40におけるロック機構42のロックレバー46が回転軸66に係合することで、グローブボックス40が、閉位置に保持されると共に、下肢部拘束機構60に連結される。一方、手動操作によってロック機構42を作動させてロック機構42と回転軸66との係合を解除することで、グローブボックス40の閉位置から開位置への回転が許可される。これにより、グローブボックス40の通常使用時では、回転軸66をロック機構42に係合する部材として機能させて、回転軸66によってグローブボックス40を閉位置に保持することができる。一方、押出機構50の作動時には、サポートパネル部62及び回転軸66が、後側へ押し出される。また、このときには、サポートパネル部62及び回転軸66が、回転軸66の軸回りにロック機構42に対して相対回転して、サポートパネル部62がグローブボックス40の蓋部40Aから上側へ突出した拘束位置に配置される。このため、ニーボルスター装置30の作動時では、回転軸66を、サポートパネル部62及びグローブボックス40を連結する部材として機能させつつ、サポートパネル部62をグローブボックス40に対して相対回転させる軸部材として機能させることができる。すなわち、ニーボルスター装置30においてサポートパネル部62を回転させるための回転軸66を活用して、閉位置のグローブボックス40を保持することができる。これにより、ニーボルスター装置30の部品点数の削減を図ることができると共に、ニーボルスター装置30の省スペース化を図ることができる。
【0036】
また、サポートパネル部62には、押し部64が回転可能に設けられている。押し部64の後端部は、支持ピン72によって回転可能にサポートパネル部62に連結されており、押し部64の前端部は、支持ピン74によって、押出機構50のピストン54の後端部に回転可能に連結されている。また、押し部64の外周部は、カム面64Aとして構成されており、押出機構50の作動時には、ピストン54によって押し部64が回転すると共に、カム面64Aがサポートパネル部62の下面を押圧して、サポートパネル部62が回転軸66の軸回りに回転する。これにより、カム面64Aの形状を適宜設定することで、サポートパネル部62を回転軸66の軸回り回転させて、グローブボックス40の蓋部40Aの上側へ突出した拘束位置に配置させることができる。すなわち、押し部64によって、サポートパネル部62の姿勢を容易に変更して、拘束位置に配置させることができる。
【0037】
また、押出機構50は、シリンダ52と、シリンダ52内に収容されたピストン54と、を含んで構成されており、ピストン54の後端部が、サポートパネル部62の押し部64に連結されている。そして、シリンダ52内にガスが供給されることで、ピストン54が、格納位置から後側へ移動して、押し部64を後側へ押し出す。これにより、車両Vの前面衝突時に、ニーボルスター装置30を瞬時に作動させて、グローブボックス40及びサポートパネル部62を助手席乗員90の下肢部92の前側に移動させることができる。
【0038】
また、シリンダ52は、車両用エアバッグ装置10のインフレータ16に連結されており、インフレータ16の作動時には、インフレータ16によって発生したガスがシリンダ52に供給される。これにより、車両用エアバッグ装置10のインフレータ16を活用して、シリンダ52にガスを供給することができる。よって、車両用乗員保護システムSにおける部品点数の削減に寄与することができる。また、車両Vの前面衝突時に、車両用エアバッグ装置10及びニーボルスター装置30を同時に作動させることができる。
【0039】
また、テザー70がサポートパネル部62及びエアバッグ14を連結しており、テザー70によってサポートパネル部62がインストルメントパネル82に保持されている。そして、車両用エアバッグ装置10の作動時には、エアバッグ14が膨張展開することで、テザー70が引っ張られて、テザー70によるサポートパネル部62への保持状態が解除される。これにより、簡易な構成で、初期位置のサポートパネル部62を保持することができると共に、ニーボルスター装置30の作動時においてサポートパネル部62の保持状態を解除することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 車両用エアバッグ装置
14 エアバッグ
16 インフレータ
30 ニーボルスター装置(車両用乗員保護装置)
40 グローブボックス
40A 蓋部
42 ロック機構
50 押出機構
52 シリンダ
54 ピストン
60 下肢部拘束機構
62 サポートパネル部(サポート部)
64 押し部
66 回転軸
70 テザー
82 インストルメントパネル
90 助手席乗員
92 下肢部