(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164000
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B60N2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075276
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 晋司
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 広一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アッパーレールの本体部が小さく、円滑なスライド動作が可能なシートスライド装置を提供する。
【解決手段】シートスライド装置は、間隙部85が上方となる姿勢で床に敷設されたロアレール8と、ロアレール8の内部に配置されてスライドする本体部12と、間隙部85を通して延出しシートクッションに固定された上延出部11を有するアッパーレールとを備える。ロアレール8は、間隙部85を間にして幅方向に対向配置された一対の天壁部84を有し、本体部12は、天壁部84の下面に対し当接摺動すると共に本体部12によって長手方向及び幅方向に位置決めされる摺動部22と、弾性を有し下面が本体部12に支持されると共に上部が摺動部22に係合して摺動部22を上方に付勢する支持部21と、を含む天壁案内部を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙部を有する略コ字状の断面形状で長手方向を有して形成され、前記間隙部が上方に位置する姿勢で車両の床に敷設されたロアレールと、前記ロアレールの内部に配置されて前記長手方向にスライドする本体部と、前記本体部から前記間隙部を通して外部に延出し前記車両のシートクッションに固定された上延出部を有するアッパーレールとを備え、
前記ロアレールは、
前記間隙部を間にして幅方向に対向配置された一対の天壁部を有し、
前記アッパーレールの前記本体部は、
前記天壁部の下面に対し当接摺動すると共に前記本体部によって前記長手方向及び前記幅方向に位置決めされる摺動部と、弾性を有し下面が前記本体部に支持されると共に上部が前記摺動部に係合して前記摺動部を上方に付勢する支持部と、を含む天壁案内部を有しているシートスライド装置。
【請求項2】
前記本体部は、内部に前記長手方向に延びるよう形成された肉抜き部と前記肉抜き部に上方から連通する収容孔とを有し、前記摺動部は、前記収容孔に収められて前記長手方向及び前記幅方向に位置決めされ上下方向の移動が許容されている請求項1記載のシートスライド装置。
【請求項3】
上面視において、前記支持部の外形形状は、前記摺動部の外形形状よりも小さく形成されている請求項1又は請求項2記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記天壁案内部を、前記長手方向の少なくとも一方の端部側に備えている請求項1又は請求項2記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両側に取り付けられた固定レール(以下、ロアレール)と、ロアレールに対してスライドする可動レール(以下、アッパーレール)とを備え、アッパーレールにロアレールの頂壁を付勢するローラなどが備えられているシートスライド装置が記載されている。
このアッパーレールは、ロアレールに係合した部分(以下、本体部)に、ローラと、ローラを一端側に回転自在に支持して幅方向に延びる回動軸まわりに回動するブラケットと、ローラがロアレールの頂壁を付勢するようブラケットの他端側を付勢して回動させる板ばねとを備えている。
これにより、特許文献1に記載されたシートスライド装置は、スライド動作においてローラが常にロアレールの頂壁を付勢して転動するので、アッパーレールとロアレールとは遊び(移動可能なガタつき)なく円滑にスライド動作し雑音も発生しにくい。
【0003】
特許文献2に、車両側に取り付けられたロアレールとシート側に取り付けられたアッパーレールとの間に、圧縮弾性を有する樹脂製のスライダが介装されているシートスライド装置が記載されている。
スライダは、アッパーレールの本体部に取り付けられており、ロアレールに対して圧縮された状態で摺動自在となっている。
特許文献2に記載されたシートスライド装置は、圧縮されたスライダの弾性反発力によってスライダ自体の脱落が防止され、アッパーレールは、ロアレールに対し遊びのない状態で円滑にスライド動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5886961号
【特許文献2】特開2003-039996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたローラを用いたシートスライド装置は、ブラケットの付勢された回動でローラを固定レールの頂壁に圧接するようになっている。そのため、ローラの移動距離を大きく設定でき、ロアレールとアッパーレールとの隙間が大きくても遊びなくローラを確実に圧接させることができる。また、スライド動作を摺動ではなくローラの転動で案内するため、アッパーレールをロアレールに対し低抵抗で良好にスライド動作させることができる。
【0006】
しかしながら、ブラケットはアッパーレールの延在方向に長い部材となり、アッパーレールの本体部は、板ばね,ブラケット,及びローラからなるローラアッセンブリを搭載するために大型化する。
また、ローラアッセンブリは、本体部の長手方向の両端側それぞれに搭載されるのが、本体部の傾き防止のために好ましいが、その場合、本体部はさらに長く大型化してしまう。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたスライダを用いたシートスライド装置は、樹脂製のスライダのみで円滑なスライド動作が得られるため、部品点数が少なく本体部も小型化可能である。
しかしながら、樹脂製のスライダは弾性変形範囲を大きくしにくいため、ロアレールとアッパーレールとの間の隙間を精度よく小さくする必要があり、設計上及び部品管理上の制約が大きい。
【0008】
近年、自動車のシートアレンジは多彩でシートスライド範囲が長くなっている。そのため、アッパーレールの本体部はより短くコンパクトであることが望まれており、本体部の両端それぞれにローラアッセンブリを搭載することは設計上容易ではない。
このような状況下でシートスライド装置は、アッパーレールの本体部に対して小さなスペースで搭載可能であると共に弾性変形範囲が大きいスライダ相当の部材を用いて、本体部がより小さく、かつ円滑なシートスライド動作が可能になることが望まれている。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アッパーレールの本体部が小さく、円滑なスライド動作が可能なシートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の構成を有する。
1) 間隙部を有する略コ字状の断面形状で長手方向を有して形成され、前記間隙部が上方に位置する姿勢で車両の床に敷設されたロアレールと、前記ロアレールの内部に配置されて前記長手方向にスライドする本体部と、前記本体部から前記間隙部を通して外部に延出し前記車両のシートクッションに固定された上延出部を有するアッパーレールとを備え、
前記ロアレールは、
前記間隙部を間にして幅方向に対向配置された一対の天壁部を有し、
前記アッパーレールの前記本体部は、
前記天壁部の下面に対し当接摺動すると共に前記本体部によって前記長手方向及び前記幅方向に位置決めされる摺動部と、弾性を有し下面が前記本体部に支持されると共に上部が前記摺動部に係合して前記摺動部を上方に付勢する支持部と、を含む天壁案内部を有しているシートスライド装置である。
2) 前記本体部は、内部に前記長手方向に延びるよう形成された肉抜き部と前記肉抜き部に上方から連通する収容孔とを有し、前記摺動部は、前記収容孔に収められて前記長手方向及び前記幅方向に位置決めされ上下方向の移動が許容されている1)に記載のシートスライド装置である。
3) 上面視において、前記支持部の外形形状は、前記摺動部の外形形状よりも小さく形成されている1)又は2)に記載のシートスライド装置である。
4) 前記本体部は、前記天壁案内部を、前記長手方向の少なくとも一方の端部側に備えている1)又は2)に記載のシートスライド装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アッパーレールの本体部が小さく、円滑なスライド動作が可能である、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るシートスライド装置の実施例であるシートスライド装置SSの車両搭載例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、シートスライド装置SSのアッパーレール1を示す左側面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるS3-S3位置での断面図である。
【
図4】
図4は、シートスライド装置SSの天壁第1案内部GB1を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図3におけるS5-S5位置での断面図である。
【
図6】
図6は、シートスライド装置SSの天壁第2案内部GB2を示す図であって、
図6(a)は組み立て図であり、
図6(b)はアセンブリ図である。
【
図7】
図7は、天壁第2案内部GB2の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係るシートスライド装置を、実施例のシートスライド装置SSによって説明する。以下の説明における上下前後の各方向を、便宜的に
図1において矢印で規定した方向とする。また、
図1の紙面直交方向を左右方向とし、奥方向を右方向とし手前方向を左方向とする。
【0014】
図1は、車両Fの床FLに対しシートスライド装置SSによって前後方向にスライド移動する車両用シート91を示す側面図である。
車両Fは例えば自動車である。車両Fの床FLには、前後方向に延びるロアレール8が左右方向に平行に離隔して一対敷設されている。
それぞれのロアレール8には、前後方向に離隔して一対のアッパーレール1がスライド可能に係合している。
ロアレール8とアッパーレール1とを含んでシートスライド装置SSが構成されている。
【0015】
車両用シート91のシートクッション911には、枠状のシートクッションフレーム912が収容されており、シートクッションフレーム912は、四隅の部分が下方に延出している。
左右一対のロアレール8にスライド係合した合計4個のアッパーレール1は、それぞれ、シートクッションフレーム912における下方に延出した部分に固定されている。
これにより、車両用シート91は、車両Fの床FLに対しシートスライド装置SSを介して前後方向にスライド移動する。
【0016】
図2は、シートクッションフレーム912が固定されたアッパーレール1の左側面図である。
図3は、
図2におけるS3-S3位置での断面図であり、ロアレール8がアッパーレール1に係合してスライド移動可能な状態が示されている。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、アッパーレール1は、前後方向に延びる本体部12と、本体部12の上部の左右方向中央位置において上方に延出した上延出部11とを有する。アッパーレール1は、前後方向に延びる金属の押出材に対し2次加工で所定の切削加工が施されて形成されている。
本体部12は、内部に、前後方向に貫通する空間である肉抜き部121を有して筒状に形成されている。
すなわち、本体部12は、
図3に示されるように、底基部125と、底基部125の左右両縁から上方に立ち上がる側壁部126と、側壁部126の上部同士を連結し底基部125に対し離隔して対向する天壁部127とを有する。
【0018】
図3に示されるように、上延出部11は、本体部12における天壁部127の左右方向の中央部位から上方に延び出た部位である。天壁部127と上延出部11との入隅となる部分は、上延出部11に近づくほど上方に傾斜して厚さが増加する連結傾斜部123となっている。
上延出部11には、
図2に示されるように、前端部及び後端部において、車両用シート91が備えるシートクッションフレーム912がボルトナットなどの固定具KGにより固定されている。
【0019】
図3に示されるように、ロアレール8は、金属の押出材として左右対称形状に形成されている。ロアレール8は、間隙部85を有する略コ字状の断面形状で長手方向を有して形成されており、間隙部85が上方に位置する姿勢で床FLに敷設固定されている。
ロアレール8は、平板状の底壁81と、底壁81の左右両縁部から上方に立ち上げされた一対の側壁82と、一対の側壁82の上端部から内側に概ね水平に張り出した一対の天壁部84とを有する。すなわち、天壁部84は、間隙部85を間にしてロアレール8の幅方向に対向配置されている。
側壁82の下部には、内部に向かって突出する支持壁部83が形成されている。支持壁部83の上面である支持壁上面83aは、内部に向かうに従って下方になるよう傾斜した傾斜面となっている。
【0020】
ロアレール8は、一対の天壁部84の先端同士が離隔することで形成される前後方向に延びるスリット状の間隙部85を有する。
このように、ロアレール8は、横断面形状が、天壁部84の中央に間隙部85を有する矩形で左右対称形状の略管状を呈する。
【0021】
図3に示されるように、アッパーレール1は、本体部12がロアレール8の内部に収められ、上延出部11がロアレール8の間隙部85を通過して上方の外部に延出し、ロアレール8に対し前後方向にスライド移動可能とされている。
このスライド移動を円滑にするために、シートスライド装置SSは、一対の接地ローラ13,14と、天壁案内部として天壁第1案内部GB1及び天壁第2案内部GB2とを備えている。
【0022】
接地ローラ13,14は、
図2に示されるように、本体部12の下部の前後に離隔した位置に配置されている。接地ローラ13,14は、本体部12において、左右方向に延びる回転軸線CL13,CL14まわりに回転自在に支持され、下端が本体部12の下端よりも下方に突出して、ロアレール8に対し接地位置LN1で接地している。
接地ローラ13,14は同じ形状であるので接地ローラ13を代表として説明する。
【0023】
図3において、接地ローラ13は、左右一対の車輪131と、一対の車輪131を一体的に連結する軸部132とを有する。
車輪131には、外方に向かうに従って小径となるよう傾斜した円錐表面の一部としての接地面131aが形成されている。
接地面131aは、ロアレール8における支持壁部83の支持壁上面83aに接触し支持される。
この傾斜した支持壁上面83aで車輪131を支持することにより、アッパーレール1は、ロアレール8に対し車輪131が転動して滑らかにスライド移動し、スライド移動での姿勢が常に一定になるよう自動的に修正される。
【0024】
天壁第1案内部GB1及び天壁第2案内部GB2は、
図2に一点鎖線で示された上接触位置LN2でロアレールに当接してアッパーレール1のロアレール8に対する上方の遊び(移動可能なガタつき)をなくし、アッパーレール1の上方への移動を規制する。
天壁第1案内部GB1及び天壁第2案内部GB2は、本体部12において前後に離隔した位置に配置されている。例えば、本体部12の前後方向の両端部側それぞれに配置されている。
図2に示された例において、天壁第1案内部GB1は、接地ローラ14の直前に配置され、天壁第2案内部GB2は、接地ローラ13の直後に配置されている。
【0025】
天壁第1案内部GB1について、
図2及び
図4を参照して説明する。天壁第1案内部GB1は、補助ローラ61,ブラケット62,及び付勢部63を含み構成されている。
ブラケット62は、前後に長い板状部材である。ブラケット62は、本体部12の連結傾斜部123に、長手方向の中央部位が左右方向に延びる回動軸線CL62まわりに回動可能となるよう支持されている。
付勢部63は、連結傾斜部123において下向きに固定されており、ゴムなどの弾性部材によって形成されて上方への圧縮弾性を有する部材である。
付勢部63の下部は、ブラケット62の第1端部となる前端部に係合している。
補助ローラ61は、ブラケット62の第1端部の反対側の第2端部となる後端部に、左右方向に延びる回転軸線CL61まわりに回転自在に支持されている。
【0026】
ロアレール8に対しアッパーレール1を、
図3に示されるように接地ローラ13,14が支持壁上面83aを転動してスライド可能な状態にしたときに、補助ローラ61は、ロアレール8の天壁部84の下面84a(以下、天壁下面84a)に接触する。そして、このときのブラケット62の回動姿勢は、前端部が付勢部63を圧縮するようになっている。そのため、ブラケット62は、付勢部63から矢印DR2で示される下向きの力を受けて矢印DR3のように反時計回り方向に回動するので、補助ローラ61は天壁下面84aを矢印DR4のように上方に付勢する。
【0027】
付勢部63は、樹脂の成形品ではなくゴム部材であるため弾性的に圧縮可能な距離が大きく、仮に天壁下面84aの位置が上下方向に変化しても、補助ローラ61は、天壁下面84aに対し確実に追従し、天壁下面84aを上方に付勢しながら接触を維持する。
【0028】
次に、天壁第2案内部GB2について、
図3,及び
図5~
図7を参照して説明する。
天壁第2案内部GB2は、この例において摺動アッセンブリ2である。摺動アッセンブリ2は、支持部21と摺動部22とが組み合わされて構成されている。
図3及び
図5に示されるように、アッパーレール1の本体部12における連結傾斜部123には、肉抜き部121の内部空間に連通するよう上下方向に収容孔122が形成されている。摺動アッセンブリ2は、この収容孔122に上方から収容配置されている。
【0029】
図6(a)に示されるように、支持部21は、概ね直方体のベース部211と、ベース部211の上面の中央部位において上方に向け低い柱状に延出した支柱部212と、支柱部212の上部に連結して前後方向に延びた係合凸部213とを有する。支柱部212及び係合凸部213は、左右方向からの側面視で略T字状を呈する。支持部21は、ゴムなどの弾性部材により形成されている。
【0030】
摺動部22は、摺動基部221,ガイド部222,側壁部223,及び内張り出し部226を有し、硬質の樹脂によって形成されている。樹脂は、摺動性に優れたものが好ましく、例えばポリアセタール樹脂(POM)である。
摺動基部221は、前後方向に延び、上面221aは、左右方向の中央が最も突出して前後に延びる稜線となるように湾曲している。
ガイド部222は、摺動基部221の前端部及び後端部それぞれに接続し、前方及び後方に向かうに従って下方に向かうように傾斜して形成された一対の部位である。ガイド部222の上面222aと摺動基部221の上面221aとは、滑らかに接続している。
側壁部223は、一対のガイド部222それぞれの先端に接続し、下方に向け延出した一対の部位である。
側壁部223の左面及び右面には、上下方向に延びそれぞれ左方及び右方に突出するリブ部225が形成されている。
内張り出し部226は、一対の側壁部223それぞれの下端から、互いに接近するように内側に張り出した部位である。
一方の内張り出し部226の先端の左端部及び右端部には、さらに内側に向け突出した突起部224aが形成されている。
【0031】
摺動基部221と、一対の側壁部223と、一対の内張り出し部226とで囲まれた係合凹部224は、支持部21が係合する係合空間Vである。係合空間Vは、左右からの側面視において略T字状を呈する。
この空間部分は、支持部21の支柱部212及び係合凸部213の側面視形状と対応している。
【0032】
係合空間Vには、係合凸部213がわずかな強嵌合で係合するようになっている。詳しくは、作業者が係合凸部213を係合凹部224の係合空間Vに押し込むことで、摺動部22よりも軟らかい支持部21の係合凸部213が若干圧縮して係合空間V内に収められる。これにより、支持部21と摺動部22とが一体化した摺動アッセンブリ2が天壁第2案内部GB2として得られる。
支柱部212の左右方向の幅は、摺動部22の一方の側壁部223それぞれの左右端に形成された一対の突起部224aの間に収まるようになっている。
そのため、係合空間Vに収められた支柱部212及び係合凸部213が通常の使用時に係合空間Vから抜け出て、支持部21と摺動部22とが分離することはない。
これにより、摺動アッセンブリ2の一体態様は安定して維持される。
【0033】
既述のように、
図3及び
図5において、アッパーレール1の連結傾斜部123には、上方視で前後方向に長い矩形の収容孔122が、上下方向に貫通して形成されている。
収容孔122は、前後方向の長さが摺動アッセンブリ2の摺動部22の前後方向長さよりもわずかに大きく、左右方向の幅が、支持部21における左右のリブ部225の先端間の左右方向距離よりもわずかに大きく形成されている。また、収容孔122を通して上方から底基部125の肉抜き部上面121aが望まれる。
【0034】
これにより、収容孔122には、摺動アッセンブリ2が上方から挿入して収容可能となっている。収容孔122に収められた摺動アッセンブリ2は、支持部21のベース部211における下面211aが、アッパーレール1の本体部12における底基部125の上面である肉抜き部上面121aに当接して上下方向の位置が決められてアッパーレール1に支持されている。
摺動アッセンブリ2の前後方向及び左右方向は、既述のように収容孔122が摺動部22の前後端距離及び左右のリブ部225の先端間距離に対応してわずかな隙間で形成されていることで位置決めされる。
摺動部22は、収容孔122に対し上下方向の移動のみが許容されている。
【0035】
アッパーレール1に外力が付与されない自然状態において、接地ローラ13,14の接地位置と摺動部22における摺動基部221の上面221aとの間の上下方向の距離(高さ)は、
図5に示される接地ローラ13,14が接触するロアレール8の支持壁上面83aと、天壁下面84aとの間の上下方向の距離H8よりも大きくなっている。
そのため、アッパーレール1をロアレール8に対しその一方の端部から進入係合させる際に、天壁下面84aの端部がまず摺動部22のガイド部222に当接する。アッパーレール1の進入が継続すると、天壁下面84aの端部によって摺動部22が下方に押され支持部21が下方に圧縮する。天壁下面84aの端部が摺動部22の上面221aに達すると、支持部21の圧縮に対する反発力で摺動部22は、上面221aが天壁下面84aを上方に付勢しながら前後方向に当接摺動する。
【0036】
図7に示されるように、摺動アッセンブリ2は、摺動部22が例えばポリアセタール樹脂などの硬質の樹脂で形成され、支持部21が例えばゴム材などの弾性材で形成されていることから、摺動部22の上面221aに対し下方に力DRが付与された場合に摺動部22はほとんど変形せず、主に支持部21が圧縮変形する。より詳しくは、支持部21の支柱部212及び係合凸部213は、摺動部22に係合していることから変形せず、主に圧縮変形するのは、ベース部211である。
【0037】
ベース部211の下面211aは、肉抜き部上面121aに当接して下方への変形が規制されるため、ベース部211は、前後左右方向に膨れるように圧縮変形する。
収容孔122は、摺動部22の外形に対応して形成され、上面視において、ベース部211の外形形状は摺動部22の外形形状よりも小さく内側に入り込んでいる。
そのため、ベース部211は、前後方向及び左右方向へ膨れても他部材と干渉することはなく、圧縮変形量を大きく設定できる。
従って、
図7に示される下方への圧縮距離Haが大きく得られ、摺動アッセンブリ2である天壁第2案内部GB2は弾性変形範囲が大きい。これにより、シートスライド装置SSは、アッパーレール1がロアレール8に対し遊びなく円滑にスライド動作する。
【0038】
また、天壁第2案内部GB2である摺動アッセンブリ2は、アッパーレール1の長手方向に延びるブラケットなどの回動部材を備えていない。そのため、摺動アッセンブリ2を搭載するための占有スペースは、上方視で実質的に収容孔122の範囲のみとなる。そのため、アッパーレール1の本体部12をより小さくすることができる。
【0039】
上述のシートスライド装置SSは、前後に離隔した位置に天壁第1案内部GB1と天壁第2案内部GB2とを備え、一方の天壁第2案内部GB2を摺動アッセンブリ2としたので、天壁第1案内部GB1の補助ローラ61を備えた摺動部を一対配置するよりも、本体部12の前後方向の長さを短くできるので本体部12は小さくなる。
もちろん、天壁第1案内部GB1及び天壁第2案内部GB2の両方に摺動アッセンブリ2を搭載してもよく、この場合は、本体部12の前後方向の長さをさらに短くすることができるので、本体部12をより小さくできる。
【0040】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0041】
天壁第1案内部GB1と接地ローラ13との前後方向の位置、及び天壁第2案内部GB2と接地ローラ14との前後方向の位置は、それぞれ逆であってもよい。
すなわち、天壁第1案内部GB1が接地ローラよりも前方に配置されていてもよく、天壁第2案内部GB2が接地ローラ14よりも後方に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 アッパーレール
11 上延出部
12 本体部
121 肉抜き部
121a 肉抜き部上面
122 収容孔
123 連結傾斜部
125 底基部
126 側壁部
127 天壁部
13,14 接地ローラ
131 車輪
132 軸部
131a 接地面
2 摺動アッセンブリ
21 支持部
211 ベース部
211a 下面
212 支柱部
213 係合凸部
22 摺動部
221 摺動基部
221a 上面
222 ガイド部
222a 上面
223 側壁部
224 係合凹部
224a 突起部
225 リブ部
226 内張り出し部
61 補助ローラ
62 ブラケット
63 付勢部
8 ロアレール
81 底壁
82 側壁
83 支持壁部
83a 支持壁上面
84 天壁部
84a 天壁下面
85 間隙部
91 車両用シート
911 シートクッション
912 シートクッションフレーム
CL13,CL14,CL61 回転軸線
CL62 回動軸線
F 車両
FL 床
GB1 天壁第1案内部
GB2 天壁第2案内部
Ha 圧縮距離
H8 距離
KG 固定具
LN1 接地位置
LN2 上接触位置
SS シートスライド装置
V 係合空間