(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164001
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20231102BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20231102BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231102BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20231102BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20231102BHJP
B60L 53/12 20190101ALN20231102BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075277
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】橋本 眞
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智清
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503GB06
5G503GB08
5G503GD06
5H105BB05
5H105DD10
5H105EE12
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125DD02
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】送電コイル及び受電コイルの体格増加を抑制しつつ、漏洩磁界を良好に低減することが可能な非接触電力伝送システムを実現する。
【解決手段】送電コイル111から受電コイル211に非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システム10は、送電コイル111及び受電コイル211のそれぞれは、水平方向に隣りあって配置する一対のコイルであるコイル部を含み、コイル部のそれぞれのコイルは、水平面で巻回された形状であって、電流によって発生する磁界の向きが互いに逆方向になるように構成されており、コイル部のそれぞれのコイルどうしを接続する繋ぎ部は、一対のコイルの互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側に設けられており、一対のコイルの各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように、繋ぎ部の略中央部を対称の中心として略点対称となるようコイルは屈曲され巻回されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルから受電コイルに非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システムであって、
前記送電コイル及び前記受電コイルのそれぞれは、水平方向に隣りあって配置する一対のコイルであるコイル部を含み、
前記コイル部のそれぞれの前記コイルは、水平面で巻回された形状であって、電流によって発生する磁界の向きが互いに逆方向になるように構成されており、
前記コイル部のそれぞれの前記コイルどうしを接続する繋ぎ部は、一対の前記コイルの互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側に設けられており、
一対の前記コイルの各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように、前記繋ぎ部の略中央部を対称の中心として略点対称となるよう前記コイルは屈曲され巻回されている、非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記送電コイル及び前記受電コイルのそれぞれは、前記コイル部のそれぞれの前記コイルが発生する磁界を誘導する一対のコアであるコア部を含み、
前記コア部のそれぞれの前記コアは、前記コイル部のそれぞれの前記コイルと一体的であって、距離を空けて配置される、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電コイルから受電コイルに非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システムでは、送電コイルが発生する磁界のうち受電コイルに鎖交しない磁界である漏洩磁界が大きくなると、電力の伝送効率が低下する。また漏洩磁界の拡がりが大きくなると、周囲の環境に影響を与えてしまうおそれがある。従来、漏洩磁界を低減するための様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、互いに磁束の向きが逆になるソレノイドコイルを巻き軸方向に対して交差する方向に平行配置した非接触電力伝送システムが公知である。この非接触電力伝送システムでは、送電コイルは、第1の面において互いに第1方向に間隔をあけて配置され、流れる電流が互いに逆位相となるように構成された第1単位コイル及び第2単位コイルを含み、受電コイルは、第1の面に平行な第2の面において互いに第1方向に間隔をあけて配置され、流れる電流が互いに逆位相となるように構成された第3単位コイル及び第4単位コイルを含む。そして、第1及び第2単位コイルの巻回軸線は、第1の面において第1方向に交差する方向に沿って平行に配置され、第3及び第4単位コイルの巻回軸線は、第2の面において第1方向に交差する方向に沿って平行に配置される。そして、第1単位コイルと第2単位コイルとの間の距離は、第1単位コイルと第3単位コイルとの間の距離よりも長く、第3単位コイルと第4単位コイルとの間の距離は、第2単位コイルと第4単位コイルとの間の距離よりも長い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された非接触電力伝送システムでは、第1単位コイルと第2単位コイルとの間の距離、及び第3単位コイルと第4単位コイルとの間の距離を、それぞれ第1単位コイルと第3単位コイルとの間の距離、及び第2単位コイルと第4単位コイルとの間の距離よりも大きくする必要がある。つまり、送電コイル及び受電コイルそれぞれに含まれる一対のコイルのコイル間距離を、送電コイルと受電コイルとの間の距離よりも大きくする必要があり、送電コイル及び受電コイルの体格増加を招いてしまう。逆に、送電コイル及び受電コイルの体格増加を抑えるために、送電コイル及び受電コイルそれぞれに含まれる一対のコイルのコイル間距離を送電コイルと受電コイルとの間の距離よりも小さくすると、一対のコイルの間で逆方向の磁束干渉が起きることで受電コイルへの鎖交磁束が減少し、送電コイルと受電コイルとの間の結合係数が低下し、ひいては送電効率が低下してしまう。
【0006】
したがって、送電コイル及び受電コイルの体格増加を抑制しつつ、漏洩磁界を良好に低減することが可能な非接触電力伝送システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下の通りである。
【0008】
(1)送電コイルから受電コイルに非接触で電力を伝送する非接触電力伝送システムであって、
前記送電コイル及び前記受電コイルのそれぞれは、水平方向に隣りあって配置する一対のコイルであるコイル部を含み、
前記コイル部のそれぞれの前記コイルは、水平面で巻回された形状であって、電流によって発生する磁界の向きが互いに逆方向になるように構成されており、
前記コイル部のそれぞれの前記コイルどうしを接続する繋ぎ部は、一対の前記コイルの互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側に設けられており、
一対の前記コイルの各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように、前記繋ぎ部の略中央部を対称の中心として略点対称となるよう前記コイルは屈曲され巻回されている、非接触電力伝送システム。
(2)前記送電コイル及び前記受電コイルのそれぞれは、前記コイル部のそれぞれの前記コイルが発生する磁界を誘導する一対のコアであるコア部を含み、
前記コア部のそれぞれの前記コアは、前記コイル部のそれぞれの前記コイルと一体的であって、距離を空けて配置される、上記(1)に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の効果】
【0009】
本出願に係る発明者らは、送電コイル及び受電コイルそれぞれに含まれる一対のコイルを水平面で巻回されたサーキュラー型の形状とし、一対のコイルのそれぞれのコイルどうしを接続する繋ぎ部を、一対のコイルの互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側に設け、一対のコイルの各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように、繋ぎ部の略中央部を対称の中心として略点対称となるようコイルが屈曲され巻回されている構成とすることで、送電コイル及び受電コイルの体格増加を抑制しつつ、繋ぎ線で生じる磁界不平衡を抑制して漏洩磁界を良好に低減できることを見出した。
【0010】
本開示によれば、送電コイル及び受電コイルの体格増加を抑制しつつ、漏洩磁界を良好に低減することが可能な非接触電力伝送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10の回路構成を示す回路図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る送電回路110の構成を説明するための概念図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る受電回路210の構成を説明するための概念図である。
【
図4】送電回路110及び受電回路210の配置を説明するための概念図(その1)である。
【
図5】送電回路110及び受電回路210の配置を説明するための概念図(その2)である。
【
図6】本開示の実施形態に係る送電装置100の複数のインバータ130の駆動及び制御の処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】比較対象1の非接触電力伝送システムの送電コイルC111の構成を示す概念図である。
【
図8】比較対象1の非接触電力伝送システムの受電コイルC211の構成を示す概念図である。
【
図9】比較対象1の送電コイルC111のコア及び本開示の実施形態の送電コイル111のコアにおける30kW送電時のX方向(車両進行方向)の磁束密度分布を示す図である。
【
図10】非接触電力伝送システムにおけるX方向遠方漏洩磁界の測定点を示す図である。
【
図11】比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)と本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)における
図10に示したX方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
【
図12】比較対象2の非接触電力伝送システムの送電コイルC311の構成を示す概念図である。
【
図13】比較対象2の非接触電力伝送システムの受電コイルC411の構成を示す概念図である。
【
図14】非接触電力伝送システムにおけるY方向遠方漏洩磁界の測定点を示す図である。
【
図15】比較対象2の非接触電力伝送システム(
図12及び
図13)と本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)における
図14に示したY方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
【
図16】比較対象2の送電コイルC311のコア及び本開示の実施形態の送電コイル111のコアにおける30kW送電時のY方向(車幅方向)の磁束密度分布を示す図である。
【
図17】本開示の実施形態2に係る送電回路110の構成を説明するための概念図である。
【
図18】本開示の実施形態2に係る受電回路210の構成を説明するための概念図である。
【
図19】比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)と本開示の実施形態2に係る非接触電力伝送システム10(
図17及び
図18)における
図10に示したX方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、非接触電力伝送システムについて説明する。以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成などは、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。また、各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図示される形態は実施をするための1つの例であり、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
1.構成
1-1.回路構成
図1は、本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10の回路構成を示す回路図である。本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10は、送電装置100と、受電装置200と、電源300と、バッテリ400と、を含んでいる。
【0014】
送電装置100及び電源300は、典型的には、地面、路面、床面等に定置される。受電装置200及びバッテリ400は、典型的には、充電の対象となる移動体(車両、スマートフォン等)に搭載される。
【0015】
本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10は、送電装置100に含まれる送電コイル111と、受電装置200に含まれる受電コイル211と、が互いに磁界共振することにより、送電コイル111から受電コイル211に電力を伝送する。つまり、磁界共振方式による電力伝送が行われる。これにより、電源300から送電装置100に供給される電力が受電装置200に伝送されることで、受電装置200はバッテリ400の充電を行う。
【0016】
なお
図1には、1つの受電装置200及びバッテリ400が示されているが、充電の対象となる移動体が複数ある場合には、それぞれの移動体に
図1に示す受電装置200及びバッテリ400が搭載される。そして、複数の移動体は、同一の送電装置100により電力の伝送及びバッテリ400の充電が行われてもよい。
【0017】
電源300は、送電装置100と接続し、送電装置100に電力を供給する。電源300は、3相の交流電源である。例えば、相電圧200Vの系統電源である。ただし、電源300は、単相の交流電源であってもよい。
【0018】
バッテリ400は、受電装置200と接続し、受電装置200により電力が充電される。バッテリ400は、典型的には、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の再充電可能な直流電源である。
【0019】
送電装置100は、送電回路110と、イミタンスフィルタ120と、インバータ130と、ACDCコンバータ140と、を含んでいる。送電回路110と、イミタンスフィルタ120と、インバータ130と、ACDCコンバータ140と、はそれぞれ従属接続するように構成されている。
【0020】
ACDCコンバータ140は、電源300から供給される交流電力を整流及び変圧し、インバータ130へ直流電力を出力する。ACDCコンバータ140は、典型的には、ダイオード及びコンデンサを含んだ整流回路と、半導体スイッチング素子(IGBTやMOSFET等)を含んだ昇降圧回路により構成される。ACDCコンバータ140は、図示しない制御装置により半導体スイッチング素子が制御されることで、出力電圧、駆動、及び停止の制御が行われる。制御装置は、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。制御装置は、論理演算ユニットまたは数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。制御装置は、ソフトウェアプログラムに基づいて、各種処理を実行する。
【0021】
インバータ130は、ACDCコンバータ140から出力される直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、イミタンスフィルタ120を介して送電回路110へ交流電力を出力する。インバータ130は、出力する交流電力の周波数が、後述する送電回路110の共振周波数と同等となるように直流電力を変換する。インバータ130が出力する交流電力の周波数(送電回路110の共振周波数)は、例えば、85kHz程度の高周波である。
【0022】
インバータ130は、典型的には、半導体スイッチング素子を含む単相フルブリッジ回路により構成される。インバータ130は、図示しない制御装置によりパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)等によるスイッチング制御が行われることで、直流電力を所定周波数の交流電力に変換する。またインバータ130は、制御装置により、駆動及び停止の制御が行われる。
【0023】
イミタンスフィルタ120は、インバータ130の出力電力の電磁ノイズを低減する。イミタンスフィルタ120は、
図1に示すようにコイルとコンデンサにより構成されており、ローパスフィルタとして機能し送電装置100のインピーダンスを調整する。
【0024】
送電回路110は、送電コイル111と、コンデンサC11及びC12と、により構成される共振回路である。送電コイル111内のコイルL11及びL12は、それぞれの一端にコンデンサC11及びC12が接続している。コンデンサC11、コイルL11、コイルL12、及びコンデンサC12が、この順に直列に接続しており、送電回路110は直列共振回路となっている。コンデンサC11及びC12は、共振回路(送電回路110)のキャパシタンスを与える共振コンデンサである。コンデンサC11及びC12のキャパシタンスは同程度である。送電回路110及び送電コイル111の詳細については後述する。
【0025】
送電回路110の共振周波数は、インバータ130の出力電力の周波数と同等である。送電コイル111は、インバータ130から共振周波数で出力される電力によって、後述する受電コイル211と磁界共振する。そして、送電コイル111から受電コイル211に電力が伝送される。
【0026】
移動している移動体を対象として電力を伝送する場合、移動体の移動経路に沿って複数の送電コイル111(ひいては送電回路110)が配置される。例えば、走行している車両を対象として電力を伝送する場合、車両の走行経路に沿って複数の送電コイル111が道路上に配置される。このとき、移動体の移動に従って送電を行う送電コイル111を適切に切り替えることが必要となる。このため、送電回路110に加え、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130が、移動経路に沿って複数配置される。一方で、ACDCコンバータ140は、出力する直流電力が複数のインバータ130それぞれに供給されればよく、複数配置しなくてもよい。
【0027】
図1では、このことを示すために、送電装置100が、送電回路110、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130をそれぞれ複数含む場合を示している。
図1に示すように、送電回路110、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130それぞれが従属接続した複数の回路が、ACDCコンバータ140の出力端に並列に接続している。なお、複数の送電回路110、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130それぞれは、上述する内容において説明したものと同等である。また、複数の送電回路110、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130それぞれを区別するために、それぞれの符号に記号(A,B,・・・)を附している。ただし、本実施形態に係る送電装置100は、1つの送電回路110、イミタンスフィルタ120、及びインバータ130により構成されていてもよい。
【0028】
受電装置200は、受電回路210と、イミタンスフィルタ220と、整流回路230と、平滑コンデンサC24と、を含んでいる。受電回路210と、イミタンスフィルタ220と、整流回路230と、はそれぞれ従属接続するように構成されている。平滑コンデンサC24は、整流回路の出力端に接続されている。
【0029】
受電回路210は、受電コイル211と、コンデンサC21及びC22と、により構成される共振回路である。受電コイル211内のコイルL21及びL22は、それぞれの一端にコンデンサC21及びC22が接続している。コンデンサC21、コイルL21、コイルL22、及びコンデンサC22が、この順に接続しており、受電回路210は直列共振回路となっている。コンデンサC21及びC22は、共振回路(受電回路210)のキャパシタンスを与える共振コンデンサである。コンデンサC21及びC22のキャパシタンスは同程度である。受電回路210及び受電コイル211の詳細については後述する。
【0030】
受電回路210の共振周波数は、インバータ130の出力電力の周波数(送電回路110の共振周波数)と同等である。受電コイル211は、送電コイル111と磁界共振し、送電コイル111から伝送される電力を受電する。
【0031】
イミタンスフィルタ220は、受電回路210が受電した電力の電磁ノイズを低減する。イミタンスフィルタ220は、
図1に示すようにコイルとコンデンサにより構成されており、ローパスフィルタとして機能し受電装置200のインピーダンスを調整する。
【0032】
整流回路230は、受電回路210が受電した電力を直流電力に変換して出力する。整流回路230は、典型的には、単相全波整流回路である。
【0033】
平滑コンデンサC24は、整流回路230が出力する直流電力を平滑化する。平滑コンデンサC24により平滑化された直流電力が、バッテリ400の充電電力となる。
【0034】
1-2.送電回路、受電回路
1-2-1.送電回路
図2は、本開示の実施形態に係る送電回路110の構成を説明するための概念図である。
図2は、水平面(XY面)に位置する送電回路110について、鉛直方向(Z軸方向)から見た平面図と、水平縦方向(X軸方向)から見た側面図と、斜視図とを示している。送電回路110は、上述したように、送電コイル111と、コンデンサC11及びC12と、により構成される共振回路である。
【0035】
送電コイル111は、一対のコイルである第1コイル部(コイルL11及びL12)と、一対のコアである第1コア部(コアMM11及びMM12)と、アルミプレートPL1と、を含んでいる。また、コイルL11及びL12と、コアMM11及びMM12とは、図示しない樹脂部材等で保持される。
【0036】
第1コイル部のそれぞれのコイルL11及びL12は、
図2に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルL11及びL12は、それぞれの一端が繋ぎ部A1によって接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。つまり、コイルL11は、鉛直方向(Z軸方向)に対して例えば上向きの磁界を発生し、コイルL12は、鉛直方向(Z軸方向)に対して例えば下向きの磁界を発生する。
【0037】
第1コイル部のコイルL11とコイルL12は、それぞれ、コイル長辺(
図2では長軸方向であるX軸方向に沿うコイル辺)を2つ有し、コイル短辺(
図2では短軸方向であるY軸方向に沿うコイル辺)を2つ有する。そして、第1コイル部のコイルL11とコイルL12とは、繋ぎ部A1によって、各コイルL11及びL12の対向する外径側かつコイル長辺の位置で接続されている。すなわち、繋ぎ部A1は、一対のコイルL11及びL12の互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側(コイルL11とコイルL12とで挟まれた領域内)に設けられる。
【0038】
第1コイル部のコイルL11及びL12のコイル短辺がX方向磁界を生じさせるので、仮に繋ぎ部がコイル短辺にあると、コイルL11及びL12が発生させるX方向磁界がアンバランスになり、遠方漏洩磁界が増加してしまう。そこで、本開示の実施形態では、コイルL11とコイルL12とを接続する繋ぎ部A1を、コイル短辺ではなくコイル長辺に設ける構成とする。これにより、繋ぎ部A1が設けられないコイル短辺で発生するX方向磁界は、コイルL11とコイルL12とで同じ大きさかつ向きが逆となり、X方向遠方漏洩磁界の増加を良好に抑制することができる。
【0039】
また、一対のコイルL11及びL12のコイル長辺に繋ぎ部A1を構成する場合、対抗するコイル長辺のコイル幅(WI11及びWI12)と対向していないコイル長辺のコイル幅(WO11及びWO12)とで略同等になるように、すなわち一対のコイルL11及びL12の各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように(WO11=WI11=WI12=WO12)、繋ぎ部A1の略中央部を対称の中心(対象点)として略点対称となるよう繋ぎ部A1の近傍のコイル長辺の一部を適宜屈曲させる。これによりコイルL11及びコイルL12のコイル長辺で発生するY方向磁界は、コイルL11とコイルL12とで同じ大きさかつ向きが逆となり、Y方向遠方漏洩磁界の増加を良好に抑制することができる。
【0040】
第1コア部のそれぞれのコアMM11及びMM12は、第1コイル部のそれぞれのコイルL11及びL12が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアMM11及びMM12は、典型的には、フェライトで構成される。
【0041】
また、第1コア部のそれぞれのコアMM11及びMM12は、第1コイル部のそれぞれのコイルL11及びL12と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離AW1(「第1コア間距離AW1」と称する。)を空けて隣り合って配置されている。
【0042】
アルミプレートPL1は、コイルL11及びL12とコアMM11及びMM12の下に配置され、送電回路110に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0043】
1-2-2.受電回路
図3は、本開示の実施形態に係る受電回路210の構成を説明するための概念図である。
図3は、水平面(XY面)に位置する受電回路210について、鉛直方向(Z軸方向)から見た平面図と、水平縦方向(X軸方向)から見た側面図と、斜視図とを示している。受電回路210は、前述したように、受電コイル211と、コンデンサC21及びC22と、により構成される共振回路である。
【0044】
受電コイル211は、一対のコイルである第2コイル部(コイルL21及びL22)と、一対のコアである第2コア部(コアMM21及びMM22)と、アルミプレートPL2と、を含んでいる。また、コイルL21及びL22と、コアMM21及びMM22とは、図示しない樹脂部材等で保持される。
【0045】
第2コイル部のそれぞれのコイルL21及びL22は、
図3に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルL21及びL22は、それぞれの一端が繋ぎ部A2によって接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。これにより、第2コイルのコイルL21及びL22は、第1コイル部のコイルL11及びL12のそれぞれから発生する互いに逆方向の磁界を適切に受電することができる。
【0046】
第2コイル部のコイルL21とコイルL22は、それぞれ、コイル長辺(
図3では長軸方向であるX軸方向に沿うコイル辺)を2つ有し、コイル短辺(
図3では短軸方向であるY軸方向に沿うコイル辺)を2つ有する。そして、第2コイル部のコイルL21とコイルL22とは、繋ぎ部A2によって、各コイルL21及びL22の対向する外径側かつコイル長辺の位置で接続されるのが好ましい。すなわち、繋ぎ部A2は、一対のコイルL21及びL22の互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側(コイルL21とコイルL22とで挟まれた領域内)に設けられる。
【0047】
第2コイル部のコイルL11及びL22のコイル短辺がX方向磁界を生じさせるので、仮に繋ぎ部がコイル短辺にあると、コイルL21及びL22が受け取るX方向磁界がアンバランスになり、遠方漏洩磁界が増加してしまう。そこで、本開示の実施形態では、コイルL21とコイルL22とを接続する繋ぎ部A2を、コイル短辺ではなくコイル長辺に設ける構成とする。これにより、繋ぎ部A2が設けられないコイル短辺が受け取るX方向磁界は、コイルL21とコイルL22とで同じ大きさかつ向きが逆となり、X方向遠方漏洩磁界の増加を良好に抑制することができる。
【0048】
また、一対のコイルL21及びL22のコイル長辺に繋ぎ部A2を構成する場合、対抗するコイル長辺のコイル幅(WI21及びWI22)と対向していないコイル長辺のコイル幅(WO21及びWO22)とで略同等になるように、すなわち一対のコイルL21及びL22の各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように(WO21=WI21=WI22=WO22)、繋ぎ部A2の略中央部を対称の中心(対象点)として略点対称となるよう繋ぎ部A2の近傍のコイル長辺の一部を適宜屈曲させる。これによりコイルL21及びコイルL22のコイル長辺のY方向磁界は、コイルL21とコイルL22とで同じ大きさかつ向きが逆となり、Y方向遠方漏洩磁界の増加を良好に抑制することができる。
【0049】
なお、送電コイル111の第1コイル部(コイルL11及びL12)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL21及びL22)とは対面するように配置される。したがって、
図2及び
図3に示すように、受電コイル211においてコイルL21から繋ぎ部A2を経てコイルL22へ向かうコイル配線は、第1コイル部(コイルL11及びL12)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL21及びL22)が対面したときに、送電コイル111においてコイルL11から繋ぎ部A1を経てコイルL12へ向かうコイル配線と対応して似たような引き回し形状になるようにする。同様に、
図2及び
図3に示すように、受電コイル211の第2コイル部(コイルL21及びL22)からコンデンサC21及びコンデンサC22のそれぞれに続く各引き出し線は、第1コイル部(コイルL11及びL12)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL21及びL22)が対面したときに、送電コイル111の第1コイル部(コイルL11及びL12)からコンデンサC11及びコンデンサC12のそれぞれに続く各引き出し線と対応して似たような引き回し形状になるようにする。これにより、X方向遠方漏洩磁界及びY方向遠方漏洩磁界の増加をより一層良好に抑制することができる。
【0050】
また、第1コイル部の長軸方向(
図2ではX軸方向)の長さは、第2コイル部の長軸方向(
図3ではX軸方向)の長さより長くなっている。一方で、第1コイル部と第2コイル部の短軸方向(
図2及び
図3ではY軸方向)の長さは同等である。これにより、受電コイル211が受電する電力の脈動を抑えることができる。
【0051】
第2コア部のそれぞれのコアMM21及びMM22は、第2コイル部のそれぞれのコイルL21及びL22が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアMM21及びMM22は、典型的には、フェライトで構成される。
【0052】
また、第2コア部のそれぞれのコアMM21及びMM22は、第2コイル部のそれぞれのコイルL21及びL22と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離AW2(「第2コア間距離AW2」と称する。)を空けて隣り合って配置している。
【0053】
ここで、伝送効率の向上のため、第2コア間距離AW2は、第1コア間距離AW1と略同等であることが望ましい。以下、第1コア間距離AW1と第2コア間距離AW2は略同等であるとする。
【0054】
アルミプレートPL2は、コイルL21及びL22とコアMM21及びMM22の下に配置され、受電回路210に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0055】
1-2-3.配置
第1コイル部(コイルL11及びL12)と第2コイル部(コイルL21及びL22)は対面するように配置される。
図4及び
図5は、送電回路110及び受電回路210の配置を説明するための概念図である。
図4は、斜視図を示している。
図5は、鉛直方向(Z軸方向)から見た平面図と、水平縦方向(X軸方向)から見た断面図と、水平横方向(Y軸方向)から見た断面図と、を示している。また
図4及び
図5は、送電装置100が複数の送電回路110を含む場合を示しており、一例として5つの第1コイル部が示されている。つまり、移動している移動体に対して電力の伝送を行う場合の配置を示している。なお、
図4及び
図5では、
図2及び
図3において説明した送電回路110及び受電回路210の構成のうち、一部の部分を省略して示している。
【0056】
図5に示すように、第1コイル部と第2コイル部とは、鉛直方向に距離AG(以下、「送受電距離AG」とも称する。)を隔てて対面している。また
図4に示すように、複数の第1コイル部は、アルミプレートPL1に連なって取り付けられ、地面、路面、床面等に定置される。第1コイル部が連なる方向(X軸方向)は、典型的には、移動体の移動経路の進行方向である。第2コイル部は、アルミプレートPL2に取り付けられ、充電の対象となる移動体に搭載される。面FLは、第2コイル部が搭載される移動体の部分を示す。面FLは、例えば、移動体が車両である場合、車両のボデーの底部である。
【0057】
上述したように、複数の第1コイル部の1ピッチ当たりの長さは、第2コイル部の長軸方向(X軸方向)の長さより長くなっている。これにより、1ピッチ当たりに対する受電コイル211が受電する電力の脈動を抑えることができる。
【0058】
2.動作
移動している移動体に対して電力の伝送を行うためには、複数の送電コイル111に係るインバータ130それぞれを移動体の位置に応じて適切に制御することが必要となる。
図6は、本開示の実施形態に係る送電装置100の複数のインバータ130の駆動及び制御の処理の例を示すフローチャートである。
【0059】
図6に示す処理は、インバータ130に係る制御装置により実行される。また、1番目のインバータ130を駆動する条件が満たされたときに
図6に示す処理を開始する。ここで、1番目のインバータ130とは、移動体に対して最初に電力の伝送を行う送電コイル111に係るインバータ130である。これは、例えば、移動体が車両であって、送電コイル111が道路上に連なって配置されている場合、車両が最初に通過する送電コイル111に係るインバータ130である。1番目のインバータ130を駆動する条件とは、例えば、最初に通過することとなる送電コイル111の位置の手前の地点であって、送電コイル111を通過するまでの間に分岐がない地点を通過したことが検出された場合等である。
【0060】
ステップS100において、制御装置は、制御の対象とするインバータ130を示す値であるNを1に設定する。Nは、連なって配置する送電コイル111に係るインバータ130の順番に対応しており、N=1は、移動体に対して最初に電力の伝送を行う送電コイル111に係るインバータ130に対応する。ステップS100の後、処理はステップS110に進む。
【0061】
ステップS110において、制御装置は、N番目のインバータ130を小電圧出力で駆動する。処理の開始直後は、N=1となるから、1番目のインバータ130を小出力電圧で駆動する。ステップS110の後、処理はステップS120に進む。
【0062】
ステップS120において、制御装置は、N番目のインバータ130に係る出力電流(インバータ電流)が所定値を超えるか否かを判定する。ここで、インバータ電流は、受電コイル211が送電コイル111に近づくほど増加し、遠ざかるほど減少する特性がある。このため、移動体が送電コイル111を通過する場合、移動体が送電コイル111に最接近する位置まではインバータ電流が増加し、その後減少することとなる。つまり、N番目のインバータ電流が所定値を超えたことにより、移動体がN番目のインバータ130に十分近づいたことを判断することができる。なお所定値は、プログラムに予め与える値であり、実験等により最適に定められる値である。
【0063】
N番目のインバータ電流が所定値を超える場合(ステップS120;Yes)、処理はステップS130に進む。N番目のインバータ電流が所定値を超えない場合(ステップS120;No)、次の実行周期において再度ステップS120の処理を実行する。
【0064】
ステップS130において、制御装置は、N番目のインバータ130の出力電圧を増加させる。これは、移動体がN番目のインバータ130に十分に近づいており、N番目のインバータ130に係る送電コイル111による電力の伝送を十分に行うためである。ステップS130の後、処理はステップS140に進む。
【0065】
ステップS140において、制御装置は、N番目のインバータ電流が所定値を下回るか否かを判定する。前述したように、N番目のインバータ電流が所定値を下回ったことにより、移動体がN番目のインバータ130から一定程度離れたことを判断することができる。なお所定値は、プログラムにあらかじめ与えられる値であり、実験等により最適に定められる値である。またステップS120における所定値と同等であっても異なっていてもよい。
【0066】
N番目のインバータ電流が所定値を下回る場合(ステップS140;Yes)、処理はステップS150に進む。N番目のインバータ電流が所定値を下回らない場合(ステップS140;No)、次の実行周期において再度ステップS140の処理を実行する。
【0067】
ステップS150において、制御装置は、N番目のインバータ130の出力電圧を低下させる。これは、移動体がN番目のインバータ130から一定程度離れており、N番目のインバータ130に係る送電コイル111による電力の伝送の効果が小さいためである。このとき、N番目のインバータ130を停止し、N番目のインバータ130に係る送電コイル111による電力の伝送を止めてもよい。ステップS150の後、処理はステップS160に進む。
【0068】
ステップS160において、制御装置は、N番目のインバータ130が終端であるか否かを判定する。これは、例えば、配置する送電コイル111の個数kを、プログラムにあらかじめ与えておく、あるいは取得し、Nがkとなるか否かを判定することにより行う。N番目のインバータ130が終端である場合(ステップS160;Yes)、処理は終了する。N番目のインバータ130が終端でない場合(ステップS160;No)、処理はステップS170に進む。
【0069】
ステップS170において、制御装置は、Nのインクリメントを行う。ステップS170の後、次の実行周期においてステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0070】
以上説明した処理により、移動体の位置に応じて複数のインバータ130それぞれの制御を行うことができる。なお
図6に示す処理は一例であり、本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10が適応される環境等に応じて適切な処理が与えられてもよい。
【0071】
3.特性
本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10では、送電コイル111及び受電コイル211それぞれに含まれる一対のコイルを水平面で巻回されたサーキュラー型の形状とし、一対のコイルのそれぞれのコイルどうしを接続する繋ぎ部A1及びA2を、一対のコイルの互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側に設け、一対のコイルの各コイル長辺のコイル幅が略同等になるように、繋ぎ部A1及びA2の略中央部を対称の中心として略点対称となるようコイルが屈曲され巻回されている構成とすることで、漏洩磁界を良好に低減することができる。
【0072】
以下、本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10における漏洩磁界と、一対のコアと一体的な1対のコイルを用いない非接触電力伝送システムにおける漏洩磁界と、の比較を示す。本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10は、送電回路110及び受電回路210が
図1~
図5に示す構成及び配置であるとする。
【0073】
図7は、比較対象1の非接触電力伝送システムの送電コイルC111の構成を示す概念図である。また、
図8は、比較対象1の非接触電力伝送システムの受電コイルC211の構成を示す概念図である。
【0074】
図7に示すように、比較対象1の非接触電力伝送システムの送電コイルC111は、一対のコイルである第1コイル部(コイルCL11及びCL12)と、一対のコアである第1コア部(コアCMM11及びCMM12)と、アルミプレートCPL1と、を含んでいる。コイルCL11及びCL12は、
図7に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルCL11及びCL12は、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。つまり、コイルCL11は、鉛直方向(Z軸方向)に対して上向きの磁界を発生し、コイルCL12は、鉛直方向(Z軸方向)に対して下向きの磁界を発生する。第1コイル部のコイルCL11とコイルCL12とは、繋ぎ部A3によって、各コイルCL11及びCL12の内径側で接続されている。
【0075】
図8に示すように、比較対象1の非接触電力伝送システムの受電コイルC211は、一対のコイルである第2コイル部(コイルCL21及びCL22)と、一対のコアである第2コア部(コアCMM21及びCMM22)と、アルミプレートCPL2と、を含んでいる。コイルCL21及びCL22は、
図8に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルCL21及びCL22は、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。第2コイル部のコイルCL21とコイルCL22とは、繋ぎ部A4によって、各コイルCL21及びCL22の内径側で接続されている。
【0076】
図9は、比較対象1の送電コイルC111のコア及び本開示の実施形態の送電コイル111のコアにおける30kW送電時のX方向(車両進行方向)の磁束密度分布を示す図である。
図9に示すように、比較対象1の送電コイルC111のコアでは、各コイルCL11及びCL12の内径側に設けられた繋ぎ部A3の影響で、一対のコイルCL11及びCL12が生じるX方向磁界が異なる大きさで向きが逆となっており、非対称(アンバランス)である。これに対して、本開示の実施形態の送電コイル111のコアでは、一対のコイルL11及びL12が生じるX方向磁界が同じ大きさで向きが逆となっており、対称である。
【0077】
図10は、非接触電力伝送システムにおけるX方向遠方漏洩磁界の測定点を示す図である。例えば、充電の対象となる移動体が車両であり、送電コイル(第1コイル部)が車両の走行経路となる道路上に連なって配置している場合において、送電コイルの中心を起点として車両の進行方向(X軸方向)に例えば10m程度離れた位置である遠方地点を、X方向遠方漏洩磁界の測定点として設定する。
図11は、比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)と本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)における
図10に示したX方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
図11に示すように、本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)は、比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)より遠方漏洩磁界を約7dB低減できていることが分かる。
【0078】
図12は、比較対象2の非接触電力伝送システムの送電コイルC311の構成を示す概念図である。また、
図13は、比較対象2の非接触電力伝送システムの受電コイルC411の構成を示す概念図である。
【0079】
図12に示す比較対象2の非接触電力伝送システムの送電コイルC311は、一対のコイルCL31及びCL32の各コイル長辺のコイル幅が略同等になるようにする屈曲部は設けない点で、本開示の実施形態の非接触電力伝送システム10の送電コイル111とは異なる。
【0080】
図12に示すように、比較対象2の非接触電力伝送システムの送電コイルC311は、一対のコイルである第1コイル部(コイルCL31及びCL32)と、一対のコアである第1コア部(コアCMM31及びCMM32)と、アルミプレートCPL1と、を含んでいる。コイルCL31及びCL32は、
図12に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルCL31及びCL32は、それぞれの一端が接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。つまり、コイルCL31は、鉛直方向(Z軸方向)に対して上向きの磁界を発生し、コイルCL32は、鉛直方向(Z軸方向)に対して下向きの磁界を発生する。第1コイル部のコイルCL31とコイルCL32とは、一対のコイルCL31及びCL32の互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側(コイルCL31とコイルCL32とで挟まれた領域内)で接続されている。
【0081】
比較対象2の送電コイルC311は、本開示の実施形態のような屈曲部を設けないので、コイル長辺にコイルCL31とコイルCL32とを繋ぐ箇所が存在することに起因して、対向していないコイル長辺のコイル幅(WO31及びWO32)は、対抗するコイル長辺のコイル幅(WI31及びWI32)よりも大きくなる。
【0082】
第1コア部のそれぞれのコアCMM31及びCMM32は、第1コイル部のそれぞれのコイルCL31及びCL32が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアCMM31及びCMM32は、典型的には、フェライトで構成される。
【0083】
また、第1コア部のそれぞれのコアCMM31及びCMM32は、第1コイル部のそれぞれのコイルCL31及びCL32と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離を空けて隣り合って配置されている。
【0084】
アルミプレートCPL1は、コイルCL31及びCL32とコアCMM31及びCMM32の下に配置され、送電コイルC311に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0085】
図13に示す比較対象2の非接触電力伝送システムの受電コイルC411は、一対のコイルCL41及びCL42の各コイル長辺のコイル幅が略同等になるようにする屈曲部は設けない点で、本開示の実施形態の非接触電力伝送システム10の受電コイル211とは異なる。
【0086】
図13に示すように、比較対象2の非接触電力伝送システムの受電コイルC411は、一対のコイルである第2コイル部(コイルCL41及びCL42)と、一対のコアである第2コア部(コアCMM41及びCMM42)と、アルミプレートCPL2と、を含んでいる。コイルCL31及びCL32は、
図13に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルCL41及びCL42は、それぞれの一端が接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。第2コイル部のコイルCL41とコイルCL42とは、一対のコイルCL41及びCL42の互いに対向して隣りあうコイル長辺における互いに対向するコイル外径側(コイルCL41とコイルCL42とで挟まれた領域内)で接続されている。
【0087】
比較対象2の受電コイルC411は、本開示の実施形態のような屈曲部を設けないので、コイル長辺にコイルCL41とコイルCL42とを繋ぐ箇所が存在することに起因して、対向していないコイル長辺のコイル幅(WO41及びWO42)は、対抗するコイル長辺のコイル幅(WI41及びWI42)よりも大きくなる。
【0088】
第2コア部のそれぞれのコアCMM41及びCMM42は、第2コイル部のそれぞれのコイルCL41及びCL42が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアCMM41及びCMM42は、典型的には、フェライトで構成される。
【0089】
また、第2コア部のそれぞれのコアCMM41及びCMM42は、第2コイル部のそれぞれのコイルCL41及びCL42と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離を空けて隣り合って配置されている。
【0090】
アルミプレートCPL2は、コイルCL41及びCL42とコアCMM41及びCMM42の下に配置され、受電コイルC411に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0091】
図14は、非接触電力伝送システムにおけるY方向遠方漏洩磁界の測定点を示す図である。例えば、充電の対象となる移動体が車両であり、送電コイル(第1コイル部)が車両の走行経路となる道路上に連なって配置している場合において、送電コイルの中心を起点として車両の進行方向(X軸方向)とは90度ずれた車幅方向(Y軸方向)に例えば10m程度離れた位置である遠方地点を、Y方向遠方漏洩磁界の測定点として設定する。
図15は、比較対象2の非接触電力伝送システム(
図12及び
図13)と本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)における
図14に示したY方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
図15に示すように、本開示の実施形態に係る非接触電力伝送システム10(
図1~
図5)は、各コイルのコイル長辺のコイル幅が同等であるので、比較対象2の非接触電力伝送システム(
図12及び
図13)より遠方漏洩磁界を約7dB低減できていることが分かる。
【0092】
図16は、比較対象2の送電コイルC311のコア及び本開示の実施形態の送電コイル111のコアにおける30kW送電時のY方向(車幅方向)の磁束密度分布を示す図である。本開示の実施形態の送電コイル111のコアでは、コイルL11のコイル幅WO11とコイルL12のコイル幅WI12とが略同等になっているので、
図16に示すように一対のコイルL11及びL12が生じる磁界がほぼ同じ大きさで向きが逆となっており、非対称性は小さい。これに対し、コイルCL31のコイル幅WO31とコイルCL32のコイル幅WI22とが異なるので、一対のコイルCL31及びCL32が生じる磁界が異なる大きさで向きが逆となっており、隣り合うコイルCL31及びCL32間における逆磁界の打ち消し効果が小さくなり、非対称性が大きく、アンバランスである。
【0093】
4.実施形態2
続いて、繋ぎ部が、一対のコイルL11及びL12のコイル短辺に設けられる本開示の実施形態2について説明する。
【0094】
4-1.送電回路、受電回路
4-1-1.送電回路
図17は、本開示の実施形態2に係る送電回路110の構成を説明するための概念図である。
図17は、水平面(XY面)に位置する送電回路110について、鉛直方向(Z軸方向)から見た平面図と、水平縦方向(X軸方向)から見た側面図と、斜視図とを示している。送電回路110は、送電コイル111と、コンデンサC11及びC12と、により構成される共振回路である。
【0095】
送電コイル111は、一対のコイルである第1コイル部(コイルL31及びL32)と、一対のコアである第1コア部(コアMM31及びMM32)と、アルミプレートPL1と、を含んでいる。また、コイルL31及びL32と、コアMM31及びMM32とは、図示しない樹脂部材等で保持される。
【0096】
第1コイル部のそれぞれのコイルL31及びL32は、
図17に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルL31及びL32は、それぞれの一端が繋ぎ部A5によって接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。つまり、コイルL31は、鉛直方向(Z軸方向)に対して例えば上向きの磁界を発生し、コイルL32は、鉛直方向(Z軸方向)に対して例えば下向きの磁界を発生する。
【0097】
第1コイル部のコイルL31とコイルL32は、それぞれ、コイル長辺(
図17では長軸方向であるX軸方向に沿うコイル辺)を2つ有し、コイル短辺(
図17では短軸方向であるY軸方向に沿うコイル辺)を2つ有する。そして、第1コイル部のコイルL31とコイルL32とは、繋ぎ部A5によって、一対のコイルL31及びL32の互いに対向するコイル外径側(コイルL31とコイルL32とで挟まれた領域内)の、コイル短辺の位置で接続されている。
【0098】
第1コア部のそれぞれのコアMM31及びMM32は、第1コイル部のそれぞれのコイルL31及びL32が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアMM31及びMM32は、典型的には、フェライトで構成される。
【0099】
また、第1コア部のそれぞれのコアMM31及びMM32は、第1コイル部のそれぞれのコイルL31及びL32と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離を空けて隣り合って配置されている。
【0100】
アルミプレートPL1は、コイルL31及びL32とコアMM31及びMM32の下に配置され、送電回路110に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0101】
4-1-2.受電回路
図18は、本開示の実施形態2に係る受電回路210の構成を説明するための概念図である。
図18は、水平面(XY面)に位置する受電回路210について、鉛直方向(Z軸方向)から見た平面図と、水平縦方向(X軸方向)から見た側面図と、斜視図とを示している。受電回路210は、前述したように、受電コイル211と、コンデンサC21及びC22と、により構成される共振回路である。
【0102】
受電コイル211は、一対のコイルである第2コイル部(コイルL41及びL42)と、一対のコアである第2コア部(コアMM41及びMM42)と、アルミプレートPL2と、を含んでいる。また、コイルL41及びL42と、コアMM41及びMM42とは、図示しない樹脂部材等で保持される。
【0103】
第2コイル部のそれぞれのコイルL41及びL42は、
図18に示すように、水平面(XY平面)で巻回されたサーキュラー型の形状となっている。また、コイルL41及びL42は、それぞれの一端が繋ぎ部A6によって接続されており、電流によって発生する磁界が互いに逆方向となるように巻回されている。これにより、第2コイルのコイルL41及びL42は、第1コイル部のコイルL31及びL32のそれぞれから発生する互いに逆方向の磁界を適切に受電することができる。
【0104】
第2コイル部のコイルL41とコイルL42は、それぞれ、コイル長辺(
図18では長軸方向であるX軸方向に沿うコイル辺)を2つ有し、コイル短辺(
図18では短軸方向であるY軸方向に沿うコイル辺)を2つ有する。そして、第2コイル部のコイルL41とコイルL42とは、繋ぎ部A6によって、一対のコイルL41及びL42の互いに対向するコイル外径側(コイルL41とコイルL42とで挟まれた領域内)の、コイル短辺の位置で接続されている。
【0105】
なお、送電コイル111の第1コイル部(コイルL31及びL32)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL41及びL42)とは対面するように配置される。したがって、
図17及び
図18に示すように、受電コイル211においてコイルL41から繋ぎ部A6を経てコイルL42へ向かうコイル配線は、第1コイル部(コイルL31及びL32)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL41及びL42)が対面したときに、送電コイル111においてコイルL31から繋ぎ部A5を経てコイルL32へ向かうコイル配線と対応して似たような引き回し形状になるようにする。同様に、
図17及び
図18に示すように、受電コイル211の第2コイル部(コイルL41及びL42)からコンデンサC21及びコンデンサC22のそれぞれに続く各引き出し線は、第1コイル部(コイルL31及びL32)と受電コイル211の第2コイル部(コイルL41及びL42)が対面したときに、送電コイル111の第1コイル部(コイルL31及びL32)からコンデンサC11及びコンデンサC12のそれぞれに続く各引き出し線と対応して似たような引き回し形状になるようにする。これにより、X方向遠方漏洩磁界及びY方向遠方漏洩磁界の増加をより一層良好に抑制することができる。
【0106】
また、第1コイル部の長軸方向(
図17ではX軸方向)の長さは、第2コイル部の長軸方向(
図18ではX軸方向)の長さより長くなっている。一方で、第1コイル部と第2コイル部の短軸方向(
図17及び
図18ではY軸方向)の長さは同等である。これにより、受電コイル211が受電する電力の脈動を抑えることができる。
【0107】
第2コア部のそれぞれのコアMM41及びMM42は、第2コイル部のそれぞれのコイルL41及びL42が発生する磁界を誘導する磁性材料である。コアMM41及びMM42は、典型的には、フェライトで構成される。
【0108】
また、第2コア部のそれぞれのコアMM41及びMM42は、第2コイル部のそれぞれのコイルL41及びL42と一体的となっており、水平方向(Y軸方向)に距離を空けて隣り合って配置している。ここで、伝送効率の向上のため、第2コア間距離は、第1コア間距離と略同等であることが望ましい。
【0109】
アルミプレートPL2は、コイルL41及びL42とコアMM41及びMM42の下に配置され、受電回路210に対する外部の磁界の影響を低減する。
【0110】
本開示の実施形態2では、
図17及び
図18に示すように対向する外径側に設けられた繋ぎ部A5及びA6で一対のコイル同士を繋いているので、
図7及び
図8に示した比較対象1における繋ぎ方よりも繋ぎ部における配線長さを短縮できるため、コイル短辺でX方向磁界のアンバランスの度合いを軽減できる。ただし、短辺コイルに繋ぎ部A5及びA6が位置しているため、
図1~
図5に示した実施形態に比べると、X方向磁界の不均一性が若干生じる。
【0111】
4-2.特性
図19は、比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)と本開示の実施形態2に係る非接触電力伝送システム10(
図17及び
図18)における
図10に示したX方向10m地点の遠方漏洩磁界の比較結果を示す図である。
図19に示すように、本開示の実施形態2に係る非接触電力伝送システム10(
図17及び
図18)は、比較対象1の非接触電力伝送システム(
図7及び
図8)より遠方漏洩磁界を約3dB低減できていることが分かる。
【0112】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記にした説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
10 非接触電力伝送システム
100 送電装置
110、110A、110B、110C、110D 送電回路
111 送電コイル
120 イミタンスフィルタ
130 インバータ
140 ACDCコンバータ
200 受電装置
210 受電回路
211 受電コイル
220 イミタンスフィルタ
230 整流回路
300 電源
400 バッテリ
A1、A2、A5、A6 繋ぎ部
AW1 第1コア間距離
AW2 第2コア間距離
AG 送受電距離
C24 平滑コンデンサ
L11、L12、L21、L22、L31、L32、L41、L42 コイル
MM11、MM12、MM21、MM22、MM31、MM32、MM41、MM42 コア
PL1、PL2 アルミプレート