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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164002
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】新規ラクトバチルス属乳酸菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231102BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231102BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20231102BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E
A23L33/135
A61K35/747
A61P31/12
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075280
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】522173860
【氏名又は名称】友清 帝
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】230128875
【弁護士】
【氏名又は名称】原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】友清 帝
(72)【発明者】
【氏名】北澤 春樹
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018MF04
4B065AA30X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BD08
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA50
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA41
4C087MA43
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、高い免疫調節作用を有するラクトバチルス属に分類される新規乳酸菌株とその菌体を含有する医薬品、食品、飼料または化粧品を提供することを目的とする。
【解決手段】高い免疫調節作用を有する乳酸菌ラクトバチルス・ガセリTMT36株(受託番号:NITE P-03500)、ラクトバチルス・ガセリTMT39株(受託番号:NITE P-03501)、ラクトバチルス・ガセリTMT40株(受託番号:NITE P-03502)を提供する。また、当該乳酸菌を含有する医薬品、食品、飼料または化粧品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ガセリTMT36株(受託番号:NITE P-03500)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項2】
ラクトバチルス・ガセリTMT39株(受託番号:NITE P-03501)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項3】
ラクトバチルス・ガセリTMT40株(受託番号:NITE P-03502)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項4】
60℃以上の温度で加熱することによって製造する請求項1~3のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌を含有する医薬用組成物、食品用組成物、飼料用組成物または化粧料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・ガセリに分類される新規乳酸菌株及びその菌体を含有する食品、飼料、医薬品または化粧品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は極めて高い安全性を有する微生物であり、ヨーグルトなどの発酵乳製品や各種漬物など多くの加工食品において、味や風味の付与、栄養の強化、食品の保存性改善をはじめとした様々な目的で用いられてきた。また、乳酸菌の病原体に対する感染防御作用といった生理活性について近年注目が集まっており、精力的に研究が進められている。
【0003】
免疫系において重要な役割を担っているマクロファージなどの免疫細胞は、ウイルス感染時に、ウイルス由来RNA鎖や表層に存在するエンベロープといった分子をToll-like receptorをはじめとしたパターン認識受容体によって認識し、インターフェロン(IFN)-βに代表されるI型IFN及びλ3に代表されるIII型IFNを産生することが知られている。
【0004】
産生されたIFNは、周囲の細胞に発現するIFN受容体に結合する。刺激を受けた細胞は、細胞内シグナル経路の活性化を介して、抗ウイルスタンパク質として知られるRNaseLなどの発現を増強し、この結果として感染細胞周辺に強力な感染防御作用がもたらされる(非特許文献1)。したがって、ウイルスに対する感染を予防軽減するためには、IFN-βやRNaseL等の免疫因子の発現を促進する乳酸菌株が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Anthony J. Sadler and Bryan R. G. Williams. Interferon-inducible antiviral effectors. Nat Rev Immunol., 8(7):559-568(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、高い免疫調節作用を有するラクトバチルス属に分類される新規乳酸菌株とその菌体を含有する食品、飼料、医薬品または化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の発明者らは、ヒト由来の乳酸菌について検討を行った結果、特定の菌株にIFN-βやRNaseLをはじめとした免疫因子の発現を増強する等の高い免疫調節作用があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明新規ラクトバチルス属乳酸菌は、以下の構成を有することを特徴とする。
(1) ラクトバチルス・ガセリTMT36株(受託番号:NITE P-03500)であるラクトバチルス属乳酸菌。
(2) ラクトバチルス・ガセリTMT39株(受託番号:NITE P-03501)であるラクトバチルス属乳酸菌。
(3) ラクトバチルス・ガセリTMT40株(受託番号:NITE P-03502)であるラクトバチルス属乳酸菌。
(4) 60℃以上の温度で加熱することによって製造する(1)~(3)のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌を含有する医薬用組成物、食品用組成物、飼料用組成物または化粧料用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明新規ラクトバチルス属乳酸菌は、高い免疫調節作用を有することから、これを摂取することで生体の免疫が賦活化され、ウイルス感染症やその他免疫疾患等の予防及び/又は治療が可能となるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株によるIFN-β及びRNaseLの発現促進活性を評価した特性図である。
図2図2は、ラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株の非加熱及び加熱処理菌体によるIFN-β及びRNaseLの発現促進活性を比較評価した特性図である。
図3図3は、ラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株の加熱処理菌体と比較菌株の免疫調節作用を比較評価した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
<新規ラクトバチルス属乳酸菌>
本発明に係るラクトバチルス属に属する新規乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)である。特に、ラクトバチルス・ガセリに属する乳酸菌のうち、ラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株である。
【0012】
本発明のラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株は、令和3年7月29日に独立行政法人製品技術基盤機構特許微生物寄託センターに NITE P―03500、NITE P―03501、NITE P―03502としてそれぞれ寄託されている。
【0013】
本発明のラクトバチルス・ガセリTMT36、39、40株の形態的特徴や生理的性状などは、以下の表1のとおりである。
【表1】
【0014】
生理的性状(糖資化性):当該菌株及びラクトバチルス・ガセリの標準株であるJCM1131株の糖資化性は表2のとおりである。
【表2】
【0015】
表2において特筆すべきは、TMT36、39及び40株とJCM1131株間で、D-Turanoseの資化性が異なる点である。当該菌株の生理的形質は標準株のそれとは完全に一致しないことから、TMT36、39及び40株は、新規の乳酸菌株であると判断した。
【0016】
本発明に係るラクトバチルス属に属する新規乳酸菌は、当該乳酸菌の菌体及び/又は菌体を含む培養物を有効成分としている。「菌体」とは本発明の新規乳酸菌の生菌体および死菌体のいずれも含む意味である。また、「菌体」は、本発明の新規乳酸菌の生菌体及び/又は死菌体を凍結乾燥などの乾燥処理した乾燥菌体であってもよく、培養液から単離した湿潤菌体であってよいし、生菌体及び/又は死菌体を破砕した菌体破砕物でもよいし、菌体成分でもよい。
【0017】
一方、「培養物」とは、「菌体」を培養した培養液、及び、当該培養液に対して所定の処理を施した培養液処理物等を含む意味である。「菌体」の培養液に対する処理としては、特に限定されないが、乾燥処理、加熱処理、菌体死滅化処理、酵素処理、破砕処理、濾過処理、成分抽出処理等を挙げることができる。「培養物」としては、「菌体」の培養液そのもののみならず、当該培養液の凍結乾燥物、培養液の加熱処理物、培養液に対して放射線照射や抗生物質処理、化学物質処理した処理物、界面活性剤により細胞壁を溶解処理した処理物等が含まれる。「培養物」は、「菌体」を培養した培養液から生菌体または死菌体を除去した培養濾過液でもよいし、培養液から単離した「菌体」を懸濁した菌体懸濁液でもよい。「培養物」の形態としては、固形物、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状などいずれであってもよい。
【0018】
本発明ラクトバチルス属乳酸菌は、単独で用いる事もできるし、2種以上の乳酸菌を組み合わせて用いてもよい。また、他の乳酸菌と併用してもよい。
【0019】
他の乳酸菌としては、特に限定されず、例えばラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する従来公知の種を広く適用することができる。ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する微生物としては、例えば、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・へルベティカス(Lactobacillus helveticus) 、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・亜種・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp.bulgaricus)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス・亜種・サリバリウス(Lactobacillus salivarius ssp.salivarius)、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)、ラクトバチルス・デルブルッキー・亜種・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii ssp.lactis)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)等を挙げることができる。
【0020】
ラクトバチルス・ガセリTMT36(NITE P-03500)、TMT39(NITE P-03501)、TMT40(NITE P-03502)は優れた免疫調節作用を有する。特に、他のラクトバチルス・ガセリ(例えばラクトバチルス・ガセリJCM1131等)に比べて、IFN-β、IFN-λ3、RNaseL等の免疫因子の発現誘導能が高いことを特徴とする。
【0021】
本発明の乳酸菌は、乳酸菌培養の常法に従って任意の条件で培養することができる。培養方法については特に限定されず、従来公知の方法を適宜選択して使用することができる。
【0022】
培養温度は一般的に20~43℃が望ましく、37~39℃がより望ましいが、菌が生育する温度であれば他の温度条件でも良い。培養中の培地のpHは3.0~8.0に維持することが望ましく、5.5~5.8に維持することがより望ましいが、菌が生育するpHであれば他のpH条件でも良い。培養時間は通常12~72時間が好ましいが、菌が生育することができる時間であれば、他の培養時間でも良い。乳酸菌を培養するための培地としては、特に限定されないが、乳酸菌の培養に通常用いられる培地が使用される。すなわち、主炭素源のほか窒素源、無機物質、その他の栄養素を程よく含有する培地ならばいずれの培地も使用可能である。炭素源としては、グルコース、ラクトース、スクロース、フルクトース、デンプン加水分解物、廃糖蜜等が使用できる。窒素源としてはカゼインの加水分解物、大豆タンパク質の加水分解物、馬鈴薯の加水分解物などが使用できる。他に増殖促進剤として肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス、オレイン酸などが用いられる。
【0023】
特に、本発明に係るラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)TMT36、TMT39およびTMT40株の菌体及び/又はその培養物は、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理を施したこれらの乳酸菌の菌体及び/又はその培養物による免疫因子の発現は、加熱処理する前と比較して大きく増強される。これにより、加熱処理を施した上記各乳酸菌の菌体及び/又はその培養物には、ウイルス感染症やその他免疫疾患等を予防軽減に導くより優れた効果が期待できる。
【0024】
加熱処理としては、特に限定されないが、60℃以上の温度で加熱することが好ましく、80~100℃の温度で加熱することが特に好ましい。
【0025】
また、加熱処理時間は、加熱温度や圧力等の条件によって異なるが、例えば0.1~60分間が好ましく、5分間~40分間がより好ましい。
【0026】
<医薬用組成物>
本発明に係る乳酸菌は、一例として医薬用組成物に適用することができる。医薬用組成物としては、特に限定されないが、生理学的に許容された担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合することにより製剤化して使用することができる。具体的に、本発明に係る医薬用組成物の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、および点鼻剤などを挙げることができる。製剤化に当たっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、安定剤、嬌味嬌臭剤、希釈剤、界面活性剤、または注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0027】
特に、本発明に係る乳酸菌を使用した医薬用組成物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む。)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、外用剤(例えば、経鼻製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。また、本発明に係る乳酸菌を使用した医薬用組成物は、他の医薬、例えば免疫賦活剤等を併用してもよく、当該医薬用組成物の投与時期は特に限定されない。
【0028】
<食品用組成物>
本発明に係る乳酸菌の用途は、食品用組成物(ヒト用)にも適用することができる。食品用組成物としては、特に限定されず、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品及び栄養補助食品(サプリメント)などを挙げることができる。食品用組成物の具定例として、ジュース、清涼飲料水、茶飲料、ドリンク剤、ゼリー状飲料及び機能性飲料等の各種飲料;蒸留酒、清酒及びビール等のアルコール飲料;米飯類、麺類、パン類及びパスタ類等の炭水化物含有食品;カマボコ及び竹輪等の水産練り製品;ハム及びソーセージ等の畜産加工品;カレー、あんかけ及び中華スープ等のレトルト製品;スープ類;牛乳、乳飲料、アイスクリーム、チーズ及びヨーグルト等の乳製品;みそ、納豆、乳酸菌発酵飲料及び漬物等の発酵製品;豆製品、ビスケット及びクッキーなどの洋菓子類;饅頭及び羊羹等の和菓子類;キャンディー類;ガム類;グミ、ゼリー及びプリンなどの冷菓や氷菓などの菓子類;インスタントスープ及びインスタントみそ汁等のインスタント食品;電子レンジ対応食品;マヨネーズ、ドレッシング及び味付け調味料液等の調味料を挙げることができる。
【0029】
<飼料用組成物>
一方、本発明に係る乳酸菌の用途としては、上述したヒト用の食品用組成物に限定されず、ヒトを除く動物に対して与える飼料用組成物(飼料又は飼料添加物)を挙げることができる。ここで飼料とは、ヒトを除く動物に供される食物(ペットフードを含む。)を意味し、飼料添加物とはヒトを除く動物用のサプリメントを含む意味である。
【0030】
飼料を供する対象の動物としては、脊椎動物、具体的にはヒトを除く哺乳動物、例えば、霊長類(サル、チンパンジー等)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、家禽類等)、ペット動物(「愛がん動物」ともいう)(イヌ、ネコ等)、実験動物(マウス、ラット等)、競技用動物(ウマ等)、その他、爬虫類、鳥類(ニワトリ等)、甲殻類(エビ、カニ等)、昆虫類(コオロギ、バッタ等)等がある。
【0031】
また、飼料は、上述した乳酸菌の他に、トウモロコシ粉、米粉、糠などの穀粉、粕類、糠類、魚粉、骨粉、油脂類、脱脂粉乳、ホエー、鉱物質飼料、酵母類、無機質、アミノ酸、タンパク質、ビタミン類、脂質などを含んでいても良い。具体的には、日本標準飼料成分表(2009年版、農業・食品産業技術総合研究機構編)に記載されるような成分が含まれていても良い。
【0032】
さらに、飼料用組成物は、例えば、タブレット状や粉末状の剤形として動物用、特にペット動物のサプリメントとしても良い。
【0033】
あるいは、本発明に係る飼料は、青刈り作物や生の牧草等の飼料作物をサイロに詰め、上述した乳酸菌(一例としてラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及び/又はTMT40株)により乳酸発酵させたサイレージであってもよい。
【0034】
<化粧料用組成物>
本発明に係る乳酸菌は、化粧料用組成物にも適用することができる。
「化粧料」とは、皮膚や粘膜等の上皮組織に接触させることにより、所望の効果を達成する、皮膚や粘膜に対して使用する製剤をいう。特に長時間継続的に皮膚や粘膜に接触させる用途に本発明は有効である。
【0035】
本発明による化粧料用組成物は化粧料に配合されるが、配合対象となる化粧料については特に制限はなく、たとえば、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリーム、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石けん、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリーム、ケーキ等の皮膚又は毛髪用化粧料、練歯磨、湿潤歯磨、液状歯磨、洗口剤、口中清涼剤などの口腔用化粧料が挙げられる。
【0036】
また、化粧品も化粧料に含まれる。化粧品としては、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け用化粧品、日焼け止め用化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、アイシャドウ化粧品、チーク、口唇化粧品、口腔化粧品などに分類され、そのいずれの用途にも本発明は有効である。
【0037】
さらに、化粧料は、医薬品又は医薬部外品であってもよい。例えば、薬学的に有効な成分を含む軟膏に本発明による化粧料組成物を配合することもできる。
【0038】
本発明の乳酸菌は、医薬用、食品用、飼料及び/又は化粧料用組成物に加工・配合させて使用する場合、該乳酸菌の配合割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与・使用量にあわせて適宜調節すればよい。投与・使用対象者の症状、年齢、体重、用途等を考慮してそれぞれ個別に決定されるが、通常成人の場合、該乳酸菌の培養物などを一日当たり1~200g、菌体自体を一日当たり1.0×1010個~1.0×1011個、あるいは乾燥重量として0 .001~90%になるように配合量などを調整すればよく、このようにして摂取することにより所望の効果を発揮することができる。
【実施例0039】
以下に、実施例として試験例及び処方例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0040】
<試験例1>
新規乳酸菌のIFN-β及びRNaseL遺伝子発現促進作用
1-1.試験方法
(1)新規乳酸菌の菌体調製
ラクトバチルス・ガセリに属する各菌株をMRS培地(Difco)に接種し、37℃で16時間培養した。培養後、滅菌0.15 M塩化ナトリウム-0.01 Mリン酸緩衝液(PBS、pH 7.2)で3回洗浄し、菌数が2.5×10個/mLになるようにPBSで懸濁した。
(2)試験手順
次に、ブタ肺胞マクロファージ(3D4/31細胞)をRPMI-1640培地(Wako社)で2.0×10個/mLになるように懸濁し、これを12穴プレートの各ウェルに1mLずつ播種し、一晩培養した。培地交換後に菌体を5.0×10個/mLとなるように添加し、2日間培養した。コントロールとして、PBSを添加したwell(図中では、with poly(I:C)と表記)を作製した。培養後、100ng/mLとなるようにRNAウイルスの模倣物質であるpoly(I:C)を添加したRPMI-1640培地に交換後、3および12時間培養した。
刺激終了後、PBSで2回洗浄し、各wellにTRIzol reagent(Invitrogen)を添加して細胞溶解液を回収し、フェノール-クロロホルム抽出、エタノール沈殿にてRNAを抽出した。得られたRNAからPrimeScript RT reagent Kit(タカラバイオ社)を用いてcDNAを合成した。
得られたcDNAを鋳型として、Platinum SYBR Green qPCR Super Mix-UDG with ROX(Invitrogen)を用いた定量的Real-time PCR(qPCR)法によりIFN-β及びRNaseLの遺伝子発現解析を行なった。
【0041】
1-2.試験結果
図1は、新規乳酸菌の中からIFN-β及びRNaseLの発現促進作用を有する菌株を選抜するために、ラクトバチルス・ガセリに属する乳酸菌を3D4/31細胞に添加し、IFN-β及びRNaseLの遺伝子発現量を解析した結果である。
poly(I:C)による3時間および12時間の刺激に対して、ラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株は、IFN-β及びRNaseLの発現誘導能が他の株と比較して強いことが示された。
【0042】
<試験例2>
加熱処理したラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株のIFN-β及びRNaseL遺伝子発現促進作用
1-1.試験方法
(1)加熱処理菌体の調製
試験例1に記載の培養方法に従って培養したラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株を65、90または121℃で30分間加熱処理後、菌数が2.5×10個/mLになるようにPBSで懸濁した。
(2)試験手順
試験例1に記載の試験手順に従って、各加熱条件で調整したTMT36、TMT39またはTMT40株を3D4/31細胞に添加し、2日間培養後、poly(I:C)で刺激した。
刺激終了後、cDNAを合成し、qPCR法によりIFN-β及びRNaseLの遺伝子発現解析を行なった。
【0043】
1-2.試験結果
図2は、当該菌株が有するIFN-β及びRNaseL遺伝子発現誘導能における加熱特性を検討するために、加熱処理したラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株を添加した3D4/31細胞におけるIFN-β及びRNaseLの遺伝子発現量を生菌体と比較解析した結果である。
全ての当該菌株に関して、加熱処理菌体のIFN-β及びRNaseLの発現誘導能は生菌体と比較して同等以上だった。とりわけ、90℃/30分間の加熱処理を行なった場合、総じてIFN-β及びRNaseLの発現誘導能が増強されることが示された。
【0044】
<試験例3>
加熱処理菌体と標準株の免疫調節能に関する比較
1-1.試験方法
(1)加熱処理菌体の調製
試験例1に記載の培養方法に従って、培養したラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株を90℃で30分間加熱処理後、菌数が2.5×10個/mLになるようにPBSで懸濁した。また、同様の条件で加熱処理したラクトバチルス・ガセリJCM1131を対照区として用いた。なお、図中では、加熱処理をHT(Heat-treated)と記載した。
(2)試験手順
試験例1に記載の試験手順に従って、加熱処理を施したTMT36、TMT39またはTMT40株の菌体を3D4/31細胞に添加し、2日間培養後、poly(I:C)で刺激した。
刺激終了後、cDNAを合成し、qPCR法により各種免疫因子の発現解析を行なった。
【0045】
1-2.試験結果
図3は、加熱処理したラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株とラクトバチルス・ガセリの標準株であるJCM1131株の免疫調節能を比較解析した結果である。
全ての当該加熱処理菌体は、poly(I:C)のみと比較して、各種免疫因子(IFN-β、IFN-λ3及びRNaseL)を増強し、その活性は標準株であるJCM1131株よりも高かった。以上の結果から、ラクトバチルス・ガセリTMT36、TMT39及びTMT40株による免疫調節作用は、他のラクトバチルス・ガセリよりも優れていることが示された。
【0046】
<処方例1>
ラクトバチルス・ガセリTMT36含有医薬用組成物(顆粒)の製造
ラクトバチルス・ガセリTMT36株を食用可能な合成培地(0.5% 酵母エキス、0.1% トリプチケースペプトン添加) に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。回収した菌体を凍結乾燥し、前記菌体の凍結乾燥粉末を得た。この凍結乾燥粉末1gを乳糖5gと混合し、顆粒状に成形して本発明の医薬用組成物(顆粒)を得た。
【0047】
<処方例2>
ラクトバチルス・ガセリTMT39含有医薬用組成物(散剤)の製造
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記処方例1と同様の方法で得られたラクトバチルス・ガセリTMT39株の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の医薬用組成物(顆粒)を得た。
【0048】
<処方例3>
ラクトバチルス・ガセリTMT40含有食品用組成物(ゼリー)の製造
上記処方例1と同様の方法で得られたラクトバチルス・ガセリTMT40株20g、果糖2,000 g 、グラニュー糖1,500g、水飴500g、寒天100g、香料10g、脱イオン水5,870gを混合し、TKホモミクサー(TK ROBO MICS;特殊機化工業社製)にて、6,000rpmで10分間撹拌混合し、50℃ に加熱して溶解した後、100gずつ容器へ充填して冷却することで、本発明の食品用組成物(ゼリー)を得た。
【0049】
<処方例4>
ラクトバチルス・ガセリTMT36含有食品用組成物(清涼飲料水)の製造
上記処方例1と同様の方法で得られたラクトバチルス・ガセリTMT36株200mg、50%乳酸0.75kg、エリスリトール5.7kg、香料1kg、脱イオン水42.55kgを混合し、40℃ まで加熱後、TKホモミクサー(TK ROBO MICS;特殊機化工業社製)にて、6,000rpmで10分間撹拌混合した。この溶液を90℃で10分間殺菌後10℃以下まで冷却することで、本発明の食品用組成物(清涼飲料水)を得た。
【0050】
<処方例5>
ラクトバチルス・ガセリTMT39含有飼料用組成物の製造
大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、処方例1と同様の方法で得られたラクトバチルス・ガセリTMT39株10kgを配合して、本発明の飼料用組成物を得た。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明新規ラクトバチルス属乳酸菌は、高い免疫調節作用を有することから、これを摂取することで生体の免疫が賦活化され、ウイルス感染症やその他免疫疾患等の予防及び/又は治療が可能となり、これを医薬品、食品、飼料、化粧料等に応用することができるものである。
【受託番号】
【0052】
[寄託生物材料への言及]
1.ラクトバチルス・ガセリTMT36
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和3年7月29日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-03500
2.ラクトバチルス・ガセリTMT39
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和3年7月29日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-03501
3.ラクトバチルス・ガセリTMT40
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和3年7月29日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-03502

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ガセリTMT36株(受託番号:NITE P-03500)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項2】
ラクトバチルス・ガセリTMT39株(受託番号:NITE P-03501)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項3】
ラクトバチルス・ガセリTMT40株(受託番号:NITE P-03502)であるラクトバチルス属乳酸菌。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌を60℃以上の温度で加熱することによって製造されたラクトバチルス属乳酸菌の加熱処理菌体
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のラクトバチルス属乳酸菌を含有する医薬用組成物、食品用組成物、飼料用組成物または化粧料用組成物。
【請求項6】
請求項に記載のラクトバチルス属乳酸菌の加熱処理菌体を含有する医薬用組成物、食品用組成物、飼料用組成物または化粧料用組成物。