(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164009
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】充放電装置、充放電装置の制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231102BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231102BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20231102BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20231102BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20231102BHJP
【FI】
H02J7/00 A
H02J7/00 P
H02J7/34 A
H02J7/04 C
B60L55/00
B60L53/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075290
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 涼
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503AA06
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB06
5G503CB07
5G503CB16
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC11
5H125AC24
5H125BC01
5H125BC05
5H125BC12
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE41
(57)【要約】
【課題】車両の蓄電池の適切な運用が可能となる充放電装置、充放電装置の制御方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する制御部を備える充放電装置であって、前記制御部は、前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付ける。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する制御部を備える充放電装置であって、
前記制御部は、
前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、
前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付ける
充放電装置。
【請求項2】
前記複数のパターンそれぞれに対し、前記パラメータの設定を記憶しておき、
前記複数のパターンの設定のうちの一のパターンと、他のパターンとでは、前記パラメータの少なくとも一部が異なる
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
前記複数のパターンの予約運転の設定はそれぞれ、予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻を含み、
前記制御部は、前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、前記予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻で規定される異なる時間帯毎に、設定されたパラメータによって、充電又は放電を実行する
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項4】
前記充放電に係るパラメータは、充電電力、放電電力、上限充電率、下限充電率、充電電流、放電電流、充電電力量、放電電力量、充電時間及び放電時間の内の少なくとも1つを含む
請求項1から3のいずれか1つに記載の充放電装置。
【請求項5】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置の制御方法であって、
前記充放電装置の制御部は、
前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、
前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付け、
前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、異なる時間帯毎に、前記複数のパターンそれぞれについて設定された前記パラメータによって、充電又は放電を実行する
充放電装置の制御方法。
【請求項6】
車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置に搭載されるコンピュータに、
前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、
前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付け、
前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、異なる時間帯毎に、前記複数のパターンそれぞれについて設定された前記パラメータによって、充電又は放電を実行する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置、充放電装置の制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に備えられている蓄電池の電池容量は比較的大容量である。これらの車両の蓄えられた電力を、電気自動車の駆動以外に、例えば家庭内の負荷へ供給することを可能とするV2H(Vehicle to Home )を実現する技術が提案されている。V2Hに限らず、より規模の大きい建物への電力供給を可能とするV2B(Vehicle to Building )、電力網への供給を可能とするV2G(Vehicle to Grid )を含むV2Xを実現する技術が提案されている。これらの技術により、災害発生によって停電状態となったとしても、移動が可能な電気自動車に蓄えられた電力を供給して生活を維持したり、工場の稼働を維持したりすることが期待できる。
【0003】
V2Xの実現には、車両の蓄電池に接続される充放電用ケーブルを有し、車両における充放電の制御と、上位装置からの制御との間で、充放電制御を実施することができる充放電装置の配備が必要になる。充放電装置は、固有の車種の車両に対応するのみならず、多様なメーカ製の電気自動車の略全てに対応し、上位装置からの制御と、車両内での蓄電池における充放電を制御する多様な車載制御装置との間を仲介する必要がある。
【0004】
特許文献1には、多様な車種について、上位装置(EMS)に対する充放電の即応性を発揮するため、車載制御装置との間の通信接続状態を維持する充放電装置が開示されている。特許文献1には、充放電装置は、通信接続状態を維持するための制御内容を車種に応じて変えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
V2Xの実現のため、充放電装置は、接続される車両の蓄電池からいつでも、必要な電力を得られるように制御する。しかしながら、車両に備えられている蓄電池は基本的に、車両の駆動のために用いられるものであり、蓄電池の劣化を抑制して使用されることが望ましい。
【0007】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、車両の蓄電池の適切な運用が可能となる充放電装置、充放電装置の制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する制御部を備える充放電装置であって、前記制御部は、前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付ける。
【0009】
本開示の充放電装置では、車両の蓄電池と、電力源又は負荷との間における充放電の予約を、複数のパターンで受け付けることができる。そしてその際に、複数の予約パターン毎に、予約運転時の充放電に係るパラメータの設定が可能である。
【0010】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記複数のパターンそれぞれに対し、前記パラメータの設定を記憶しておき、前記複数のパターンの設定のうちの一のパターンと、他のパターンとでは、前記パラメータの少なくとも一部が異なる。
【0011】
本開示の充放電装置では、複数の予約パターン毎に、予約運転時の充放電に係るパラメータの少なくとも一部を受け付ける際に、異なる設定を受け付けることができる。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記複数のパターンの予約運転の設定はそれぞれ、予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻を含み、前記制御部は、前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、前記予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻で規定される異なる時間帯毎に、設定されたパラメータによって、充電又は放電を実行する。
【0013】
本開示の充放電装置では、複数の予約パターンの設定は、異なる予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻を含む。異なる時間帯別に、異なる充放電に係るパラメータを適切に設定して車両の蓄電池を運用することが可能になる。
【0014】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記充放電に係るパラメータは、充電電力、放電電力、上限充電率、下限充電率、充電電流、放電電流、充電電力量、放電電力量、充電時間及び放電時間の内の少なくとも1つを含む。
【0015】
本開示の充放電装置では、前記充放電に係るパラメータは、充電電力、放電電力、上限充電率、下限充電率、充電電流、放電電流、充電電力量、放電電力量、充電時間及び放電時間等の充放電に係るパラメータのいずれか一部でも、パターン毎に異なる値によって設定可能である。勿論、同一の値で設定されてもよい。
【0016】
充電電力(充電出力ともいう)は、電力源からの電力(電流)に対して上限として設定可能な値である。例えば、電力源からの電力が過大となって過電流遮断器が作動しないように、この上限を設定することも可能である。車両側で設定されている最大充電電力に、この上限が設定されるようにしてもよい。最小充電電力(下限)が設定されてもよい。「充電電力」の設定により、設定された範囲内(上限以下)での充放電が実行される。充電電流も同様である。
【0017】
放電電力(給電出力ともいう)は、放電(給電)電力の上限として設定可能な値である。電力系統へ逆潮流を起こさないように、この上限を設定することも可能である。車両側で設定される最大放電電力に設定されるようにしてもよい。最小放電電力(下限)が設定されてもよい。「放電電力」の設定により、設定された範囲内(上限以下)での充放電が実行される。放電電流も同様である。
【0018】
上限充電率は、車両の蓄電池における充電率の上限であって、それ以上は充電しないように設定される。上限充電電力量に代替されてもよい。同様にして下限充電率は、車両の蓄電池における充電率の下限であって、それ以上は放電しないように設定される。下限充電電力量に代替されてもよい。
【0019】
充電電力量は、指定の電力量に達したら、充電を終了させるためのパラメータとして設定可能である。放電電力量も同様である。充電時間も、指定の充電時間に達したら充電を終了させるためのパラメータとして設定可能であり、放電時間も指定の放電時間に達したら放電を終了させるためのパラメータとして設定可能である。
【0020】
本開示の一実施形態の充放電装置の制御方法は、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置の制御方法であって、前記充放電装置の制御部は、前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付け、前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、異なる時間帯毎に、前記複数のパターンそれぞれについて設定された前記パラメータによって、充電又は放電を実行する。
【0021】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた蓄電池と接続され、前記蓄電池と電源又は負荷との間で充放電を制御する充放電装置に搭載されるコンピュータに、前記蓄電池への充電、及び前記蓄電池からの放電の両方又はいずれか一方の予約運転の設定を、複数のパターンで受け付け、前記予約運転における充放電に係るパラメータを、前記複数のパターンそれぞれについて受け付け、前記複数のパターンの予約運転の設定に基づき、異なる時間帯毎に、前記複数のパターンそれぞれについて設定された前記パラメータによって、充電又は放電を実行する処理を実行させる。
【0022】
本開示の充放電装置の制御方法及びコンピュータプログラムでは、車両の蓄電池と、電力源又は負荷との間における充放電の予約を、複数のパターンで受け付けることができる。そしてその際に、複数の予約パターン毎に、予約運転時の充放電に係るパラメータの設定が可能である。複数の予約の時間帯を分けることで、時間帯別に、異なるパラメータを適切に設定して車両の蓄電池を運用することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、予約に基づく充放電における出力電力、充電率の上限、又は下限等の充放電に係るパラメータの詳細な設定が、異なる予約パターン毎に可能であるため、異なる時間帯毎に、出力電力を変えたり、充電率を所定の高さに維持したり、車両の蓄電池の適切な運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】充放電装置を含む充放電システムの概要図である。
【
図2】充放電装置及び車両の接続構成を示すブロック図である。
【
図3】制御部による予約の受付処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】予約設定の受付画面の内容例を説明する図である。
【
図6】予約パターンの記憶内容例を説明する図である。
【
図7】充放電装置による制御結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、充放電装置1を含む充放電システム200の概要図である。充放電システム200は、充放電装置1と、充放電装置1を介して供給可能な電力を使用する家庭、事業所等の建物の負荷21とを含む。充放電システム200は、電力線PLにより、電力源である電力系統Eと接続されている。電力源は電力系統Eに限らず、直流電力網であってもよい。電力源からの供給電力は、分電盤28で負荷21及び充放電装置1へ分岐される。充放電システム200は、公共施設である駐車場に設置された複数の充放電装置1を含む構成であってもよい。充放電システム200は、その他、燃料電池を含んでもよい。
【0027】
充放電装置1には、蓄電装置を内蔵する車両Vが接続され、車両Vの蓄電装置への充電が可能であると共に、車両Vの蓄電装置を電力源として負荷21へ給電することも可能である。
【0028】
充放電システム200は、
図1に示すように、充放電装置1及び負荷21のみならず、連系装置である蓄電装置22又は発電装置23等を含んでもよいし、通信線CLを介して上位装置29と接続されていてもよい。上位装置29は接続されている場合、電力源からの負荷21への電力の授受、及び発電装置23からの負荷21群への電力授受、充放電装置1への車両Vにおける充放電を制御する。上位装置29は、サーバ装置として外部に設けられているものでもよいし、分電盤28に設置されて公共施設内での発電充放電を制御するものであってもよいし、充放電装置1それぞれに内蔵されて充放電を制御するものであってもよい。
【0029】
図2は、充放電装置1及び車両Vの接続構成を示すブロック図である。車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle )である。
【0030】
車両Vは、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載制御装置32とを備える。電力線VPLには、車両V側の充放電回路に含まれるDCリレー33が介装されており、車載制御装置32がDCリレー33のON及びOFFを制御する。コネクタ35には車載制御装置32と通信接続するための通信端子が含まれている。
【0031】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、車両通信部12、電源部13、操作部14、及び上位通信部16を備える。充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ15と接続されるDCリレー10aと、電力系統Eと接続される電力線PLに介装された解列リレー10bとを含む。充放電回路10は、DCリレー10aを介してコネクタ15と電力線PLによって接続されている。
【0032】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30に対する充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性メモリを含み、CPUは不揮発性メモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行して充放電回路10を制御する。
【0033】
制御部11の不揮発性メモリに記憶されているコンピュータプログラム1Pは、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体9に記憶されていたコンピュータプログラム9PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0034】
車両通信部12は、コネクタ15及びコネクタ35を介して車載制御装置32と通信接続が可能である。車両通信部12の通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ15,35に対応する充放電方式に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。本実施形態では車両通信部12は、CAN(Controller Area Network)によって車載制御装置32と通信する。PLC(Power Line Communication)によって通信が実現されてもよい。
【0035】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E、発電装置23又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0036】
操作部14は、ディスプレイ、ディスプレイ内蔵タッチパネル、及び物理ボタンを含む。操作部14は、充放電装置1の外装に露出してユーザからのタッチパネル操作を受け付ける。操作部14は、充放電装置1の本体とは隔離された構成としてよく、例えば、建物内のリモートコントーラとして構成されてもよい。操作部14は、ユーザ(又は管理者)が所持するスマートフォン又はタブレット端末等の通信端末の操作インタフェースで受け付けた操作情報を、無線通信を介して受け付ける構成であってもよい。制御部11は、操作部14にて受け付けられた操作に基づいて後述する予約処理を実行する。操作部14は、ランプを含み、状態に応じた色又はパターンで点灯するように制御部11によって制御されてもよい。
【0037】
上位通信部16は、上位装置29と通信線CLを介して又は無線通信を介して通信を実現する。上位通信部16は例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。上位通信部16は、PLCにより通信を実現してもよい。上位通信部16は、WiFi(登録商標)、 Bluetooth(登録商標)又はキャリア通信に対応する無線通信モジュールであってもよい。
【0038】
上述のように構成される充放電装置1の充放電回路10は、
図1及び
図2に示すように、コネクタ15が車両Vのコネクタ35と接続された状態において、DCリレー10a及び車両V側のDCリレー33を介して車両Vの蓄電装置30と電力線PLにより接続されている。充放電回路10は、
図1及び
図2に示すように、解列リレー10b及び分電盤28を介して電力系統E、及び連系機器(蓄電装置22、発電装置23等)と電力線PLによって接続されている。充放電装置1は、電力系統Eと、車両Vの蓄電装置30、及び連系機器との間の電力の授受を制御する。充放電回路10は、解列リレー10b、DCリレー10a、及びDCリレー33が全てONの状態の場合に、電力線PLを介して蓄電装置30の蓄電装置22や負荷への放電、又は電力系統Eからの蓄電装置30への充電を実施できる。
【0039】
充放電装置1の制御部11は、車両通信部12を介して車載制御装置32と情報を送受信し、その情報に基づいて充放電回路10を制御する。制御部11は、上位通信部16を介して送受信される上位装置29からの情報に基づいて制御を実行してもよい。充放電装置1の制御部11は特に、充放電を実行する前に、車載制御装置32との間で所定の接続シーケンスを実行し、充放電開始が可能な状態となる。所定の接続シーケンスは例えば、CHAdeMO (登録商標)等の充放電制御規格で規定されている。
【0040】
本実施形態の充放電装置1の制御部11による充放電は、ユーザの操作部14に対する操作に基づいて予約運転が可能である。
図3は、制御部11による予約の受付処理手順の一例を示すフローチャートである。充放電装置1の操作部14のディスプレイに表示されている操作画面に対し、ユーザが設定メニューの予約設定を選択すると、以下の処理が開始される。ユーザは、充放電装置1のコネクタ15を車両Vのコネクタ35に接続させてから操作してもよい。なお、以下の予約の受付手順は、操作部14のみならず、通信を介した上位装置29からの指示に基づいて実行されてもよい。上位装置29に設けられる操作部にて予約設定を受け付けた場合に実行されてもよいし、上位装置29がスケジューラに基づき自動的に予約設定を実行した場合に、以下の処理が開始されてもよい。
【0041】
充放電装置1の制御部11は、複数の予約パターンのうちのいずれかの選択を受け付ける(ステップS101)。本実施形態の充放電装置1では、複数の予約パターン、例えば5つの予約パターンの予約が可能である。
【0042】
制御部11は、選択された予約パターンに対する予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻を受け付ける(ステップS102)。制御部11は、予約運転開始時刻から予約運転終了時刻までの間の運転内容を受け付ける(ステップS103)。ステップS103において制御部11は、例えば、接続されている車両Vの蓄電装置30への充電を実行する「充電」、及び、接続されている車両Vの蓄電装置30から負荷21への給電(放電)を実行する「給電」から選択可能である。制御部11は、更に、負荷21における状況等によって適宜、充放電を実行する「自動」、あるいは、特定の課金充電を行なう「充電2」が選択可能であってもよい。
【0043】
制御部11は、受け付けた予約運転開始時刻、予約運転終了時刻、及び運転内容を含む予約パターンを、予約パターンの識別データに対応付けてメモリに記憶する(ステップS104)。
【0044】
制御部11は、選択された予約パターンによる予約運転の登録及び解除のうちのいずれかの選択を受け付け(ステップS105)、選択された登録及び解除のいずれかを、予約パターンの識別データに対応付けてメモリに記憶する(ステップS106)。ステップS105,S106において、予約運転の登録が選択されて記憶された場合、予約パターンの予約開始時刻が到来すると、制御部11は、運転内容に基づいて充放電を実行する。解除が選択された場合、制御部11は、対象の予約パターンに対して受け付けた予約運転開始時刻、予約運転終了時刻、及び運転内容をメモリに記憶したままとするが、実行しない。メモリは不揮発性メモリであって、記憶された予約パターンは、書き換えられない限り、操作に応じて登録あるいは解除の選択が可能である。
【0045】
制御部11は、拡張設定が選択されたか否かを判断する(ステップS107)。拡張設定が選択されたと判断した場合(S107:YES)、制御部11は、充放電に係るパラメータの入力を受け付ける(ステップS108)。制御部11は、入力されたパラメータを、予約パターンの識別データに対応付けてメモリに記憶し(ステップS109)、受付処理手順を終了する。ステップS108において制御部11は例えば、充電出力(充電電力)、給電出力(放電電力)、上限充電率、及び下限充電率の内の少なくとも1つの入力を受け付ける。ステップS109において制御部11は、入力されなかった充電出力、給電出力、上限充電率、又は下限充電率として、予め設定されているデフォルト値を記憶する。
【0046】
ステップS108において制御部11は、上述のパラメータに限らず、充電電流値、給電電流値(放電電流値)、充電電力量、給電電力量(放電電力量)、充電時間及び給電時間(放電時間)等を受け付けてもよい。
【0047】
拡張設定が選択されていないと判断された場合(S107:NO)、制御部11は、充放電に係るパラメータとして、予め設定されているデフォルト値を、予約パターンの識別データに対応付けてメモリに記憶し(ステップS110)、受付処理手順を終了する。
【0048】
図3のフローチャートに示した処理手順において、異なる予約パターン同士で、予約運転開始時刻から予約運転終了時刻までの期間が重複している場合、制御部11は、設定中の予約パターンについて、時刻の設定をし直すように警告するなどの報知を行なってもよい。
【0049】
図4は、予約設定の受付画面140の内容例を説明する図である。受付画面140は、予約パターンの選択インタフェース141、登録/解除ボタン142、時刻設定インタフェース143、運転内容インタフェース144、及び、拡張設定ボタン145を含む。
【0050】
予約パターンの選択インタフェース141は、切り替えボタンを含み、切り替えボタンが選択される都度、対象の予約パターンが巡回的に切り替わる。
図4の設定受付画面140では、1つ目の「予約1」が選択されている。
【0051】
登録/解除ボタン142は、登録ボタンと解除ボタンとを含み、いずれかを選択する都度に、登録中と解除中との間で状態が切り替わる。
図4の設定受付画面140では、「登録」が選択され、このまま予約実行がされる状態になっている。
【0052】
時刻設定インタフェース143は、選択されると、予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻への数字の入力画面がそれぞれ表示され、時刻を設定することが可能である。
図4の設定受付画面140では、時刻は設定されていない。
【0053】
運転内容インタフェース144は、切り替えボタンを含み、切り替えボタンが選択される都度、「充電」、「給電」、「自動」及び「充電2」に巡回的に切り替わる。
図4に示す例では、「充電」に切り替わっている。
【0054】
拡張設定ボタン145が選択されると、拡張設定画面146が表示される。
図5は、拡張設定画面146の内容例を説明する図である。拡張設定画面146は、充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率の欄147を含み、欄147の中のいずれかが選択されると、数字の入力画面が表示され、出力、又は充電率の数値を入力することが可能である。拡張設定画面146は、設定ボタン148を含み、設定ボタン148が選択されると、充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率の欄147に入力されている数値が、制御部11により受け付けられる(S108)。
【0055】
図6は、予約パターンの記憶内容例を説明する図である。制御部11のメモリには、
図6に示すように、予約パターンテーブル112が記憶される。予約パターンテーブル112は、予約パターンの識別データ、登録/解除の状態を識別するデータ、予約運転開始時刻及び予約運転終了時刻、運転内容の識別データ、充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率を、予約パターン毎に含む。
【0056】
図示を省略するが、充放電に係るパラメータは上述したように充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率に限られず、充電電流値、給電電流値(放電電流値)、充電電力量、給電電力量(放電電力量)、充電時間及び給電時間(放電時間)を含んでもよい。
【0057】
図6の例では、識別データが「1」の予約パターンは、登録中、即ち予約が有効であって、予約運転開始時刻が22:00、予約運転終了時刻が翌5:00、運転内容は「充電」、充電出力は「4000W」、給電出力は「デフォルト(5000W)」、上限充電率は「85%」、下限充電率は「デフォルト(30%)」と記憶されている。
【0058】
識別データが「2」の予約パターンは、登録中であって、予約運転開始時刻が10:00、予約運転終了時刻が15:00、運転内容は「給電」、充電出力は「デフォルト(5000W)」、給電出力は「3500W」、上限充電率は「デフォルト(80%)」、下限充電率は「20%」と記憶されている。
【0059】
識別データが「3」の予約パターンは、登録中であって、予約運転開始時刻が16:00、予約運転終了時刻が21:00、運転内容は「自動」、充電出力は「3000W」、給電出力は「3000W」、上限充電率は「90%」、下限充電率は「50%」と記憶されている。
【0060】
図6の例では、識別データ「4」及び「5」の予約パターンは、未設定であって、予約運転開始時刻等は空欄である。
【0061】
図6に示すように、本実施形態の充放電装置1では、複数登録できる予約パターン毎に、充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率のうちの少なくとも1つを他と異なる値で記憶できる。これにより、ユーザは、時間帯を分けて充電と給電とを設定し、その際の充電出力、給電出力等を調整し、時間帯によって最適な充放電出力を設定することができる。また、車両Vを使用する時間帯(例えば識別データ「3」の予約パターン)は、下限充電率を高めに設定し、車両Vが使用できなくならないようにすることができる。更に、充放電が多い時間帯(例えば識別データ「2」の予約パターン)では、出力を制限して蓄電装置30の劣化を抑える運転とすることが可能となる。
【0062】
図4に示した受付画面140に対して操作部14での操作によって予約パターンがメモリに記憶されている状態で「予約運転」という運転モードが選択され、運転の開始が操作部14によって指示されると、制御部11は、車両Vとの接続を確認し、コネクタ15,35のロックを確認し、「予約運転」を開始する。「予約運転」のモードでは、制御部11は、予約パターンテーブル112を参照し、登録状態の予約パターンそれぞれの予約運転開始時刻までのタイマーを設定する。予約運転開始時刻が到来すると制御部11は、所定の接続シーケンスを実行し、対応する予約パターンの運転内容(充電又は給電)を実施する。制御部11は、運転内容が充電の場合、予約運転終了時刻になるまで、充電率が上限充電率を超えないように、設定された充電出力の範囲(例えば、設定された値以下)で適宜調整しつつ車両Vの蓄電装置30への充電を実施する。制御部11は、運転内容が給電の場合、予約運転終了時刻になるまで、充電率が下限充電率を超えないように、設定された給電出力の範囲(設定された値以下)で適宜調整しつつ車両Vの蓄電装置30からの給電を実施する。
【0063】
上述したように、複数の予約パターン毎に、充電出力、給電出力、上限充電率、及び下限充電率のうちの少なくとも1つを他と異なる値で設定できる構成により、結果として、充放電装置1によって以下のような制御が実現できる。
図7は、充放電装置1による制御結果を説明する図である。
図7は、横軸に時間の経過を示し、縦軸に充放電時の出力(左軸)を示し、充電率(右軸)の範囲を矩形で示す。
図7では、蓄電装置30の充電率の変化のグラフを曲線で示す。
図7では、
図6に示したような予約パターンそれぞれの設定に基づき、日中、電力ピーク時は、5000W以下の出力の給電を実施しつつ、夕刻に掛けて車両Vの使用の可能性が高い時間には、車両Vの充電率を50%未満に下げないように3000W以下で充放電を適宜行なうように制御ができる。また
図7においては、夜間の比較的コストが低い時間帯の予約運転により、5000Wを上限とした範囲で充電が適宜行なわれる。
【0064】
複数の予約パターンにそれぞれ異なる拡張設定ができることにより、
図7に示したように、電力の消費のピーク時には電力系統Eからの電力ではなく、夜間に充電された車両Vの蓄電装置30を電力源とした給電を実施し、ピーク外は車両Vへの充電に電力系統Eからの電力を用いる、といった電力のピークカットへの貢献が可能である。また、電力の料金プランは、充放電装置1のユーザ(管理者)毎に異なるため、上位装置29から一斉に制御するのではなく、充放電装置1にてプランに応じた個々の設定が行なえることで、省エネルギー、及び適正な価格を実現することが期待できる。
【0065】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 充放電装置
10 充放電回路
11 制御部
1P コンピュータプログラム
E 電力系統
V 車両
21 負荷
200 充放電システム
9 記憶媒体
9P コンピュータプログラム