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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164019
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/12 20060101AFI20231102BHJP
   B41F 16/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B41M3/12
B41F16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075312
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】松井 信晃
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA05
2H113BA18
2H113BA24
2H113BB22
2H113FA43
2H113FA55
(57)【要約】
【課題】転写が正常に行われているか否かの検査を効率的に行うことができる転写装置を提供する。
【解決手段】ニスデータ100に基づき、シート上の所定形状の領域に接着性のあるUVニス層Vを形成する。箔を保持する長尺のウェブ52をシートに接触させて、箔をシートのニス層形成領域に転写させる。転写後の箔をシート上に残してウェブ52とシートとを離間させ、離間後のウェブ52に残存した箔の残存形状を表す残存形状データ200を取得する。検査部90は、取得した残存形状データ200をニスデータ100と比較して、その結果に基づき正常な転写の成否を判断する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデジタル版データに基づき、シート上の所定形状の領域に被転写層を形成する被転写層形成部と、
転写材を保持する長尺のウェブを前記シートに接触させて、前記転写材を前記シートの被転写層形成領域に転写させる転写部と、
転写後の前記転写材を前記シート上に残して前記ウェブと前記シートとを離間させる離間部と、
離間後の前記ウェブに残存した前記転写材の残存形状を表す残存形状データを取得可能な残存形状取得手段と、
前記残存形状取得手段が取得した残存形状データと前記デジタル版データとを比較して、その結果に基づき正常な転写の成否を判断する検査部と、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記検査部は、前記残存形状データ及び前記デジタル版データの少なくとも一方を補正して、前記比較を行う請求項1記載の転写装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記デジタル版データの一部を切り出して、前記残存形状データと比較する請求項1記載の転写装置。
【請求項4】
前記デジタル版データの切り出し位置は補正可能である請求項3記載の転写装置。
【請求項5】
前記ウェブは幅方向に並べて複数装着可能であり、前記検査部は、装着されている前記ウェブの存在範囲を特定する請求項1記載の転写装置。
【請求項6】
前記検査部は、移動するウェブの長手方向に沿って、前記シートの長さよりも短い長さごとに分割された検査領域ごとに順次、前記比較を行う請求項1記載の転写装置。
【請求項7】
前記転写部は、前記ウェブと前記シートとが接触している状態と離間している状態を切替可能に構成され、
前記検査部により、正常な転写がなされなかった検査領域が検出された場合、当該シートへの転写完了前に前記ウェブと前記シートとを離間させる請求項6記載の転写装置。
【請求項8】
前記デジタル版データは、前記シートの搬送方向に直交する幅方向に離間して対に設けられたレジストレーションマークを、前記シートの搬送方向に沿って複数含み、
前記検査部は、前記デジタル版データに含まれる前記レジストレーションマークの位置と、前記残存形状データに含まれる前記レジストレーションマークに対応する転写跡の位置との相違に応じて、前記レジストレーションマークに対応する転写跡で囲まれた領域の前記残存形状データを補正して前記比較を行う請求項2または6記載の転写装置。
【請求項9】
前記被転写層形成部は、前記デジタル版データにおける前記レジストレーションマークを除いた前記被転写層形成部の存在範囲を囲むレジストレーションマーク以外のレジストレーションマークには被転写層を形成しない請求項8記載の転写装置。
【請求項10】
前記離間部のウェブ移動経路下流側に設けられ、前記ウェブを巻き取る巻取りロールと、
前記巻取りロールと前記離間部との間に設けられ、前記ウェブに接触するガイド部材とを有し、
前記残存形状取得手段は、前記離間部と前記ガイド部材との間に設けられている請求項1記載の転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートにニスを塗布するニス塗布装置と、シート上のニスに、ロール・ツー・ロールで搬送されるウェブから箔を転写させる箔押し装置と、を備える印刷システムが知られている。箔押し装置としては、例えば特許文献1に記載されるような箔押し装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:WO2021/157715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置を含め、従来の装置は、シートに対して箔の転写が正常に行われているか否かの検査を効率的に行うために改善の余地があった。本発明はこうした状況においてなされたものであり、シートに対して箔の転写が正常に行われているか否かの検査を効率的に行うことができる転写装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の転写装置は、所定のデジタル版データに基づき、シート上の所定形状の領域に被転写層を形成する被転写層形成部と、転写材を保持する長尺のウェブをシートに接触させて、転写材を前記シートの被転写層形成領域に転写させる転写部と、転写後の転写材をシート上に残してウェブとシートとを離間させる離間部と、離間後のウェブに残存した転写材の残存形状を取得可能な残存形状取得手段と、残存形状取得手段の取得結果とデジタル版データとを比較して、その結果に基づき正常な転写の成否を判断する検査部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートに対して箔の転写が正常に行われているか否かの検査を効率的に行うことができる転写装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の印刷システムを模式的に示す図である。
図2】実施の形態の印刷システムを模式的に示す図である。
図3】半硬化されたニス層を示す図である。
図4図1の箔押し装置の斜視図である。
図5図1の箔押し装置の側面図である。
図6図1の箔押し装置の側面図である。
図7】実施の形態の箔押し装置に係る部分の制御ブロック図である。
図8】実施の形態のニスデータ100を示す図である。
図9】実施の形態の残存形状データ200を示す図である。
図10】実施の形態の比較画像データ100Aを示す図である。
図11】実施の形態の残存形状データ300を示す図である。
図12】実施の形態の残存形状データ200を4等分に分割した図である。
図13図13(a)~(c)は、箔押しの動作を時系列で示す図である。
図14図14(a)~(c)は、箔押しの動作を時系列で示す図である。
図15】変形例1のニスデータ400を示す図である。
図16】変形例1の残存形状データ500を示す図である。
【0008】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0009】
図1、2は、実施の形態に係る転写装置が用いられる印刷システム10を模式的に示す図である。図1は側面図であり、図2は平面図である。印刷システム10は、シートを搬送しながらシートに所定の印刷を施す装置である。以降、シートが搬送される方向(図1、2において右から左に向かう方向)を「搬送方向」、搬送方向と直交する方向(図1において紙面に直交する方向、図2の上下方向)を「幅方向」と呼ぶ。さらにこの搬送方向と幅方向の両方に直交する方向を「鉛直方向」と呼ぶ。また、ウェブ移動経路に沿ったウェブの移動方向を「移動方向」と呼ぶ。シートまたはシート上の所定範囲の「搬送方向」の下流側の端縁、またはウェブ上の所定範囲の「移動方向」の下流側の端縁を「先端」、上流側の端縁を「後端」と呼ぶ。
【0010】
印刷システム10は、シートを1枚ずつ給紙する給紙装置12と、1枚ずつ給紙されるシートにニスを塗布するニス塗布装置14と、ニスのタック性を利用してシート上のニスに箔を転写する箔押し装置16と、シートを蓄積するスタッカ18と、印刷システム10を統合的に制御する制御装置20と、を備える。給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16、スタッカ18は、搬送方向に上流側(図1、2では右側)からこの順に一列に並ぶ。制御装置20は、給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16およびスタッカ18とネットワーク2を介して接続される。ウェブ検出装置は、印刷システム10の構成要素のうち、制御装置20と、箔押し装置16の第1センサ68および第2センサ70とによって構成される。
【0011】
給紙装置12は、フィーダ22と、レジスト部24と、コロナ処理部26と、を備える。フィーダ22は、テーブル28と、吸着ヘッド30と、を含む。テーブル28にはシートが積載される。テーブル28は、昇降可能に構成される。吸着ヘッド30は、テーブル28に積載されたシートを上から順に1枚ずつ送り出す。
【0012】
レジスト部24は、レジスト基準ガイド32に突き当てることによって、フィーダ22が送り出したシートの幅方向の位置を揃える。
【0013】
コロナ処理部26は、搬送路34の上方に配置される電極36と、電極36と上下で対向するように搬送路34の下方に配置される誘電ローラ38と、を含む。コロナ処理部26は、電極36と誘電ローラ38との間のコロナ放電により、シートの表面改質を行う。なお、エア吸引部40によってシートを搬送路34に吸着させた状態で搬送すると、電極36とシートとの距離が一定となり、コロナ放電が安定する。エア吸引部40は、不図示の排気用ブロワーの吸引口の一つを配置して負圧を発生させるものであるが、吸引ファンを配置して負圧を発生させる構成としてもよい。誘電ローラ38は、コロナ処理部26の筐体に対して回転可能でもよいし、固定でもよい。さらに、電極36との間にコロナ放電を生じさせるものであれば、その形状はローラ状に限らない。
【0014】
ニス塗布装置14は、シートセンサ42と、一対のCCDセンサ44と、ニス吐出部46と、半硬化用紫外線ランプ48と、本硬化用紫外線ランプ50と、を含む。一対のCCDセンサ44、ニス吐出部46、半硬化用紫外線ランプ48、本硬化用紫外線ランプ50は、この順に上流側から並ぶように配置される。CCDセンサ44はCMOSセンサであってもよい。図示の例では、ニス塗布装置14は3つのニス吐出部46を含んでいるが、これには限定されず、ニス塗布装置14は幅方向の全域にわたって延在する1つのニス吐出部46を含んでもよいし、2つまたは4つ以上のニス吐出部46を含んでもよい。半硬化用紫外線ランプ48および本硬化用紫外線ランプ50には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば、電球や蛍光灯などの他の光源であってもよい。光源は出力調整が可能になっている。
【0015】
シートセンサ42は、給紙装置12から給紙されたシートを検出する。
【0016】
ニス吐出部46は、特に限定しないがライン型のインクジェットヘッドである。ニス吐出部46は、シートセンサ42によるシートの先端エッジの検出をトリガとして、ニスデータにしたがって紫外線硬化性ニスを吐出し、シートに紫外線硬化性ニスを塗布する。ニスデータは、シート上のニスを塗布すべき領域である塗布領域を示すデジタル版データである。
【0017】
給紙装置12が給紙するシートには、予め、下地画像と、下地画像の位置を特定する基準となる複数のレジストレーションマークと、が印刷されていてもよい。ニス塗布装置14は、シートにおけるニスの塗布部分を規定するニスデータにしたがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布するものであり、例えば下地画像に重なるように、ニスを塗布してもよい。
【0018】
ここで、シートの下地画像がずれていたり歪んでいたりすることもあり得る。したがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布する場合は、ずれや歪みを考慮してニスデータを補正しておく必要がある。例えば、CCDセンサ44が、シートセンサ42によるシートの検出をトリガとしてシートを撮像し、制御装置20がCCDセンサ44による撮像データを画像解析し、複数のレジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニスデータを補正してもよい。なお、当該補正には、本出願人が先に出願した特開2016-083898号公報に記載の方法を適用できる。
【0019】
半硬化用紫外線ランプ48は、シート上のニスに出力が比較的抑制された紫外線を照射し、ニスを半硬化させる。半硬化は、ニスの流動性を低下させつつも完全には硬化させない程度に軽く(例えばさらに硬化させることができる状態に)硬化させることをいう。半硬化状態のニスは、箔押し装置16において本硬化される。本硬化用紫外線ランプ50は、シートに塗布されたニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。
【0020】
シートに箔押しするときは、半硬化用紫外線ランプ48によってニスを半硬化させ、箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66によって半硬化状態のニスを本硬化させる。この場合、本硬化用紫外線ランプ50はオフにする。シートを箔押ししないすなわちシートにニスを塗布するだけのときは、本硬化用紫外線ランプ50でニスを本硬化させる。この場合、半硬化用紫外線ランプ48および箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66はオフにする。
【0021】
図3は、ニス吐出部46によってシートS上に塗布され、半硬化用紫外線ランプ48によって半硬化されたニス層Vを示す図である。Vaは硬化した硬化部分、Vbは硬化が十分ではない未硬化部分である。硬化部分Vaはニス層Vの内部を占め、未硬化部分Vbはニス層Vの表層部を占める。外気に触れる表層部の方が、酸素阻害の影響により硬化しにくいためである。
【0022】
図3は、ニス層Vがすべて硬化しない程度に紫外線の出力を抑制して形成された半硬化状態である。ニス層Vは表層部は流動はしないものの完全に硬化はしておらず、タック性を有した状態になっている。このニス層Vに箔が適用されたときに、このタック性により箔が接着し、箔が転写される。したがってこのニス層Vは、この部分に箔が転写される被転写層として機能する。なお、箔の、被転写層に接着される側の面にあらかじめ接着機能が付与されている場合は、被転写層がタック性を有している必要はない。この場合は例えば完全に硬化したニス層や、その他の方法で形成した層が被転写層として機能する。箔が転写される被転写面である被転写層の上面がシートの上面よりも高い位置に形成されることにより、箔は被転写層のみに接着することになる。
【0023】
半硬化状態のニスは、箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66において、改めて紫外線が照射され、本硬化される。本硬化とは、ニス層Vの全ての部分が完全に硬化されることをいう。半硬化状態のニス層Vは、シートSに接着している部分はそのほとんどが硬化部分Vaが占めるため、接着部が安定する。したがって、本硬化までの間に、ニス層VがシートS上に滲んでシート面方向(矢印A方向)に広がるのを抑制できるため、ニス層VのシートSの面方向の形状が安定する。
【0024】
箔押し装置16は、ウェブ52をロール・ツー・ロールで搬送する。ウェブ52は、フィルムに転写材として箔(例えば金属箔)が保持された箔保持フィルムである。箔押し装置16では、シート上の半硬化状態のニスのタック性を利用して、当該ニスにウェブ52が保持する箔を接着させる。そして、箔がウェブ52に保持され、かつ、シート上のニスに接着した状態で、箔押し用紫外線ランプ66によって、箔が接着した半硬化状態のニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。これにより、ウェブ52が箔を保持する力よりも本硬化したニスが箔を接着する力の方が強い状態となる。この状態でシートとウェブ52とを分離させることで、ウェブ52に保持されていた箔を、シート上のニスが塗布された部分に転写できる。
【0025】
スタッカ18は、箔押し装置16から搬出されたシートを蓄積する。
【0026】
制御装置20は、例えばPCなどの情報処理端末である。制御装置20は、印刷ジョブの定義についての入力を受け付ける。制御装置20は、所定のジョブ管理画面を表示し、当該ジョブ管理画面を介して、ジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、印刷を施すシートの枚数(印刷部数)、印刷を施すシートのシートサイズ、ニスデータ、箔押しの有無、が含まれる。制御装置20は、ジョブの定義に基づいて、給紙装置12、ニス塗布装置14および箔押し装置16を制御する。
【0027】
制御装置20は、箔押しを行う場合は、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対し、半硬化用紫外線ランプ48と、箔押し用紫外線ランプ66により紫外線を照射とする。箔押しを行わない場合は、ニス吐出部46によりニスが吐出されたシートに対し、本硬化用紫外線ランプ50のみにより紫外線を照射する。
【0028】
以上が印刷システム10の基本構成である。
【0029】
変形例として、印刷システム10は、給紙装置12に代えて、シートに下地画像とレジストレーションマークを印刷するプリンタを備え、プリンタから1枚ずつシートを給紙してもよい。
【0030】
また、印刷システム10は、箔押し装置16とスタッカ18との間に、シートを切断したり綴じたりする後処理装置や、箔表面を保護するための第2のニス塗布部、表面保護目的の合紙挿入機、シートを所定形状に打抜いてカートン材料等を作成する打ち抜き機、合い紙などの表面保護目的の後処理機等を備えてもよい。
【0031】
つづいて、箔押し装置16の構成について詳細に説明する。図4~6は、箔押し装置16を示す図である。図4は斜視図であり、図5、6は側面図である。図5は、ニップローラ等が上昇位置にあるときを示し、図6は、ニップローラ等が下降位置にあるときを示す。
【0032】
箔押し装置16は、複数の搬送ローラ54と、巻出し軸56と、巻取り軸58と、複数のガイドローラ60(図4では不図示)と、ウェブ駆動ローラ対61(図4では不図示)と、第1ニップローラ62と、第2ニップローラ64と、箔押し用紫外線ランプ66と、シート検知センサ77と、ラインセンサ80と、を備える。
【0033】
複数の搬送ローラ54はすべて、不図示の搬送駆動モータM3により回転駆動される。複数の搬送ローラ54は、紙押さえコロ72または硬化後搬送ローラ73との間でシートを挟みつつ、シートを搬送方向下流側(図5図6では左側)に向けて搬送する。複数の搬送ローラ54は、図4に示すように、いずれもローラ部がシートの幅よりも大きく幅方向に延びる形状である。搬送ローラ54の軸の少なくとも1つには、その回転量を検出するエンコーダE1(図7参照)が取り付けられている。エンコーダE1が発信するパルスにより、シートの現在位置を算出できるようになっている。
【0034】
紙押さえコロ72は、図4に示すように球状であり、一つの搬送ローラ54に対して幅方向に離間した一対の紙押さえコロ72が配置される。一対の紙押さえコロ72のうちの少なくとも一方は、搬送するシートの幅に応じて幅方向に移動可能な構成となっている。この構成により、搬送するシートの幅方向の両端部のみを紙押さえコロ72と搬送ローラ54とで挟んで搬送する。紙押さえコロ72がシートの幅方向の両端部のみを押さえることで、半硬化状態のニスに搬送部材が接触してニスの塗布状態が乱れたり、搬送部材が汚れたりする不具合の発生を抑止できる。
【0035】
一方、硬化後搬送ローラ73は、図4に示すように、幅方向に延びる一本の回転軸に対して複数のローラ部73aが配置された部材である。複数のローラ部73aは、幅方向(軸方向)に移動しない構成となっている。箔押し用紫外線ランプ66よりも下流側のシートの上面のニスは、箔押し用紫外線ランプ66によって本硬化されているため、硬化後搬送ローラ73のローラ部73aが接触しても上述した不具合が生じることなく、シートを搬送できる。
【0036】
巻出し軸56は、未使用のウェブのロール(以下、巻出しロール74と呼ぶ)を支持する。巻出し軸56は、フリクションシャフトにより構成される。複数のガイドローラ60、ウェブ駆動ローラ対61、第1ニップローラ62および第2ニップローラ64は、ウェブ52に接触してその経路を規定するガイド部材として機能する。
【0037】
第2ニップローラ64は、第1ニップローラ62よりも搬送方向下流側に位置する。第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間で、ウェブ52とシートとが接触し、シート上の半硬化状態のニス形成領域(被転写層)に、ウェブ52から箔が転写される箔転写部F(転写部)が形成される。箔転写部Fにおいては、シート上のニスとウェブ52とが一時的に接着するため、シートはウェブ52と同じ速度で送られる。
【0038】
ウェブ駆動ローラ対61は、箔転写部Fのウェブ52の移動方向下流側に設けられ、ウェブ52を挟んで回転する。ウェブ駆動ローラ対61の少なくとも一方のローラは、ウェブ駆動モータM2により回転駆動されるとともに、回転駆動されるローラの回転量を出力可能なエンコーダE2(図7参照)が設けられている。
【0039】
第2ニップローラ64の搬送方向下流側では、シートは搬送ローラ54と硬化後搬送ローラ73に挟持されて、下流側(図5、6における左方)に搬送される一方、ウェブ52は第2ニップローラ64およびウェブ駆動ローラ対61により上方に案内される。ウェブ52は転写後の箔をシート上に残してシートから離間される(離間部)。
【0040】
箔転写部Fの搬送ローラ54は、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間でウェブ52との間でシートを挟みつつ、シートを搬送方向下流側(図5図6では左側)に向けて搬送する。第2ニップローラ64に対向する搬送ローラ54は、シートの幅よりも短いローラ部が、幅方向に間欠的に配置された形状としてもよい。
【0041】
搬送駆動モータM3により、すべての搬送ローラ54が回転駆動される。搬送駆動モータM3により駆動される搬送ローラ54の周速は、ウェブ駆動モータM2により駆動されるウェブ52の移動速度よりもわずかに遅い。搬送ローラ54には駆動軸との間にワンウェイクラッチが介装されている。したがって、箔転写部Fを通過するシートに搬送ローラ54が連れ回りすることにより、ウェブ52と同じ速度でシートが箔転写部Fを通過することが可能である。
【0042】
巻取り軸58は、使用済みのウェブ52、すなわちフィルムおよびフィルムに残存した箔をロール状に巻き取る。以下、巻取り軸58が巻き取ったロール状のウェブ52を、巻取りロール76と呼ぶ。巻取り軸58は、フリクションシャフトにより構成される。フリクションシャフトは、その軸方向(すなわち幅方向)の位置により、回転速度を異ならせることが可能な構造を有する。巻取り軸58は、不図示の駆動源に駆動されて回転する。
【0043】
箔転写部Fでは、ウェブ52は、その外周面の箔がシートまたは搬送ローラ54の表面に接触する。シートは、これらの表面との連れ回りによって、搬送方向の下流側に移動する。制御装置20は、エンコーダE2による検出結果に基づいてウェブ52の移動速度を算出し、巻出しロール74からのウェブ52の送り出し速度が算出されたウェブ52の移動速度よりも遅くなるように巻出し軸56の回転数を制御する。このとき、巻出し軸56の回転による送り出しよりもウェブ52の移動速度の方が速くなるが、フリクションシャフトからなる巻出し軸56の周面が駆動入力軸に対して回転し、周面が駆動入力軸よりも速く回転することで、ウェブ52を張った状態を保ちつつ、箔転写部Fでのシートの移動速度と同速となるように、ウェブ52を送り出すことができる。
【0044】
また、制御装置20は、ウェブ52の移動速度よりも巻取りロール76によるウェブ52の巻取り速度が速くなるように巻取り軸58の回転数を制御する。このとき、巻出し軸56の回転による巻取りよりもウェブ52の移動速度の方が遅くなるが、フリクションシャフトからなる巻取り軸58の周面が駆動入力軸に対して回転し、周面に対して駆動入力軸が空回りする状態となることで、ウェブ52を張った状態を保ちつつ、箔転写部Fでのシートの移動速度と同速となるように、ウェブ52を巻き取ることができる。
【0045】
箔押し用紫外線ランプ66は、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64との間のウェブ経路の上方に設けられる。
【0046】
ラインセンサ80は、シートから離間された直後のウェブ52に対向して設けられる。ラインセンサ80は幅方向に反射型光学センサが並列して設けられたラインセンサである。センサの並列範囲は、箔が存在する可能性がある範囲である存在可能範囲を幅方向で全て包含する範囲である。
【0047】
ラインセンサ80は、シートから離間されて送られるウェブ52に投光し、その反射光を検出する。ウェブ52は、箔が残った部分は光を反射し、箔がシートに転写されて、もはや残っていない部分は光を反射しない。したがって、送られるウェブ52の反射光を順次検出することにより、ウェブ52の箔の残存形状を取得できる。したがって、ラインセンサ80は、残存形状取得手段として機能する。
【0048】
ラインセンサ80は、ウェブ52がシートから離間する離間部と、離間部と巻取りロール76との間に位置するガイドローラ60との間に設けられる。ガイドローラ60はウェブ52と接触してウェブ52を案内する。したがってウェブ52は、ラインセンサ80が対向する部分では、巻取りロール76の径に関わらず、同じ経路を通過する。ウェブ52が幅方向に複数設けられていて、互いに巻取りロール76の径が異なっていても、ラインセンサ80が対向する部分では、同じ経路を通過する。その経路に対向する位置にラインセンサ80を固定配置すればよいので、安定して残存形状が取得できる。
【0049】
好ましくは、ラインセンサ80は、ウェブ52がシートから離間する離間部と、ウェブ52の移動経路下流側に最初に設けられたガイドローラ60との間に設けられる。この構成により、ラインセンサ80は離間部のより近くに設けられる。
【0050】
第1ニップローラ62、第2ニップローラ64、箔押し用紫外線ランプ66、ウェブ駆動ローラ対61、ラインセンサ80および一部のガイドローラ60はそれぞれ、図5の上昇位置と、図6の下降位置との間を上下動可能に構成される。上昇位置は、ウェブ52が搬送中のシートと接触し得ない位置である。下降位置は、ウェブ52が搬送中のシートであってウェブ52に隣接並行するシートと接触し得る位置である。制御装置20は、シートに箔押ししない場合はニップローラ等を上昇位置に位置させ、シートに箔押しする場合はニップローラ等を下降位置に位置させる。ニップローラ等の上下動は、上下動駆動源M1(図7参照)を駆動することにより、不図示の駆動伝達機構を介して行われる。上下動駆動源M1は電気モータ、エアシリンダ、油圧シリンダ等、公知の駆動源が用いられる。
【0051】
第1ニップローラ62、第2ニップローラ64等が上昇位置から下降位置に移動すると、巻出しロール74から巻取りロール76までのウェブ52の移動経路が長くなる。このとき、巻出し軸56の駆動入力軸に対して周面がより速く回転し、移動経路が長くなった分のウェブ52が巻き出される。一方、上述した部材が下降位置から上昇位置に移動すると、巻出しロール74から巻取りロール76までのウェブ52の移動経路が短くなる。このとき、巻取り軸58の駆動入力軸が空回りすることなく周面がより速く回転し、移動経路が短くなった分のウェブ52を巻き取り、ウェブ52が撓むことを抑止できる。
【0052】
シート検知センサ77は、箔転写部Fでの転写タイミング、およびラインセンサ80の残存形状取得タイミングを検出するセンサである。シート検知センサ77は、検知位置でのシートの有無を検知するものであり、検知結果に基づいて、シートの先端の通過タイミングや後端の通過タイミングを検出できる。ニップローラ等が上昇位置にあるときに、箔押しを行うシートの先端がシート検知センサ77の検知位置を通過したことを検出した後の所定の第1タイミングで、ウェブ52の送り駆動を開始するとともに、ニップローラ等を下降位置に向けて移動させる。その後の所定の第2タイミングで、ラインセンサ80による残存形状取得を開始する。その後の所定の第3タイミングで、ニップローラ等を下降位置から上昇位置に向けて移動させる。その後の所定の第4タイミングで、ラインセンサ80による残存形状取得を終了するとともに、ウェブ52の送り駆動を停止する。なお第3、第4タイミングは、箔押しを行うシートの後端がシート検知センサ77の検知位置に通過したことを検出した後の所定のタイミングであってもよい。
【0053】
図7は実施の形態の印刷システム10のうち、箔押し装置16に係る部分の制御ブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCP(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0054】
制御装置20内には、検査部90が設けられる。検査部90には、ラインセンサ80による取得された残存形状と、ニスデータ100とを比較し、その結果に基づいて正常な転写の成否を判断する。判断結果は、制御装置20が備えるディスプレイや操作パネル等に表示してユーザに通知する。また、判断結果に基づいて必要に応じ、上下動駆動源M1を駆動し、ニップローラ等を上昇させる。
【0055】
制御装置20は、上下動駆動源M1と、ウェブ駆動ローラ対61を駆動するウェブ駆動モータM2と、搬送ローラ54を駆動する搬送駆動モータM3とを駆動制御可能とされている。
【0056】
制御装置20には、シート検知センサ77の検知信号が入力される。制御装置20にはさらに、搬送ローラ54に設けられたエンコーダE1および、ウェブ駆動ローラ対61に設けられたエンコーダE2の発生するパルス信号が制御装置20に入力される。制御装置20は、エンコーダE1、E2のパルス信号とシート検知センサ77の検知信号とを組み合わせ、搬送されるシート、およびウェブ52の現在位置を把握し、その現在位置に基づいて、上下動駆動源M1を駆動し、ラインセンサ80の残存形状の取得を開始または終了させる。
【0057】
ニスデータ100は、作業前にあらかじめユーザによりPCや操作パネル等を介してユーザにより制御装置20に入力される。制御装置20はニスデータ100に基づいて、ニス吐出部46の吐出制御を行う。
【0058】
図8は、ニスデータ100を示す図である。ニスデータ100はシート上に形成するニス層V(被転写層)の領域を示すデジタル版データである。図8の例は、ニス層Vを形成すべき領域を黒色で示し、ニス層Vを形成しない領域を白色で示した画像データである。ニス層Vを形成すべき処理領域として、オブジェクト102、104、106が黒色で示されている。R1は搬送方向において、ニス層Vを形成すべき処理領域を示す(本実施の形態では、ニスデータ100およびシート上の双方において、ニス層Vを形成すべき搬送方向の範囲を処理領域R1と呼ぶ)。R2は搬送方向において、ラインセンサ80により取得された残存形状と比較すべき比較領域を示す。外枠108はニスデータ100の範囲を示すもので、ニス層Vを形成すべき領域を示したものではない。ニスデータ100の範囲は通常、ニス層Vを形成すべきシートのサイズと一致する。R3はニス層Vを形成すべきシートの先端に相当する端部から、比較領域R2までの距離を示す。
【0059】
ニス吐出部46は、ニスを吐出する多数のノズルが幅方向に多数列設されたインクジェットヘッドである。制御装置20はニスデータ100のうち、オブジェクト102、104、106として黒色で示された座標部分にニスが塗布されるように、シート上の対応箇所の到来タイミングに応じてニスを吐出するよう各々のノズルを制御する。ニスデータ100はラスタ画像の各々の画素が黒であるか否かに応じ、シート上の各々の座標に応じてニス塗布の要否が判断される。ニスデータ100がラスタ画像でない場合は、吐出制御に先立ってRIP処理を行ってラスタ画像に変換する。なお、塗布領域によって吐出するニスの量を変え、形成されるニス層Vの厚さを変更してもよい。この場合、ニスデータ100においては、ニス層Vの厚さに応じて、グレースケールの濃淡や、色相を変更して表すようにしてもよい。
【0060】
ニスデータ100に基づいてニス層Vが形成されたシートは、搬送方向に(図5図6の右方から左方へ)搬送される。シートの先端がシート検知センサ77に到達した後の所定の第1タイミングで、ニップローラ62,64が下降し、ウェブ52とシートとが重なって接触する。箔転写部Fにおいてウェブ52はシートとともに搬送されながら、シート上のニス層Vが形成された部分に箔が転写される。
【0061】
ラインセンサ80は、箔転写部Fにおいて、ニスデータ100の比較領域R2のシート上の対応領域と重なったウェブ52の部分である取得領域R4における残存形状を取得する。ニップローラ62,64が下降した後の、所定の第2タイミングで、ラインセンサ80のデータの取得が開始される。第2タイミングは、ウェブ52の取得領域R4の先端がラインセンサ80に到来するタイミングである。
【0062】
ラインセンサ80のデータの取得開始後の所定の第3タイミングで、ラインセンサ80のデータの取得を終了する。第3タイミングは、ウェブ52の取得領域R4の後端がラインセンサ80に到来するタイミングである。ラインセンサ80はデータ取得開始から終了までの間に取得されたデータを蓄積し、取得領域R4における箔の残存形状データとして画像化する。
【0063】
図9は画像化された残存形状データ200を示す図である。黒い部分は箔が残っていない部分、白い部分は箔が残っている部分である。残存形状データ200は取得領域R4における箔の残存形状を示している。取得領域R4は、シート上の処理領域R1と重なっていた領域、すなわち箔が転写されるべき転写領域R5を完全に包含するように、転写領域R5の先端のわずかに下流側から、後端のわずかに上流側までの範囲に設定される。
【0064】
検査部90は、この残存形状データ200と、ニスデータ100の比較領域R2を表す比較画像データ100Aとを比較し、両者が一致しているか否かを判断する。図10は比較領域R2を表す比較画像データ100Aを示す図である。比較領域R2は、取得領域R4と対応するように、処理領域R1の先端のわずかに下流側から、後端のわずかに上流側までの範囲に設定される。制御装置20はニスデータ100における処理領域R1の位置と距離R3(図8参照)に基づき、比較領域R2の位置を特定して比較画像データ100Aとして切り出す。
【0065】
残存形状データ200と比較画像データ100Aとが一致していれば、正常に転写されたと判断し、不一致箇所があれば、転写不良が起きていると判断する。判断は、互いの画像データの画素ごとに、白、黒が一致しているか否かによって行う。画素全てを比較してもよいが、所定間隔で間引いて抽出して比較すれば、記憶容量および判定時間を節約できる。
【0066】
図9(a)は正常に転写された場合の残存形状データである。箔が転写された跡であるオブジェクト202、204、206の形状は、比較画像データ100Aのオブジェクト102、104、106と一致する。図9(b)は転写不良があった場合の残存形状データである。オブジェクト202には欠き202a、オブジェクト204には欠き204aを含み、この部分で、比較画像データ100Aのオブジェクト102、104と異なっている。オブジェクト102、104は被転写層としてのニス層Vを形成すべき部分であり、被転写層は箔が転写されることを意図して形成されるものであるから、欠き202a、204aは、箔が転写されて無くなっているべき部分である。しかし、欠き202a、204aは、その部分に実際には箔が残っていることを示すので、これらの部分は転写がされなかった転写不良部分と考えられる。
【0067】
なお残存形状データ200は転写後のウェブ52を直接スキャンしているため、ニスデータ100とは必然的に、ウェブ52の伸びや歪み等により細かい相違が生じる。したがって転写不良による不一致のみを検出するため、画素ごとの座標データを解析し、不一致の画素が所定数以上集中している領域を特定した場合に転写不良と判定し、その領域を転写不良領域としてもよい。
【0068】
転写不良と判定した場合は、制御装置20はディスプレイに警告メッセージを表示する。必要に応じて装置を停止させてもよい。このとき操作パネル等に残存形状データ200を表示し、特定した転写不良領域を丸囲み、あるいは色を変えるなどして、ユーザにわかりやすく表示する。
【0069】
箔は多くの場合、装飾のために用いられるため、金色や銀色等の高反射面を形成する。これに対しシートが黒色等の低反射面であるとは限らず、例えばシートが白色で箔が銀色であるケース等、シート面と箔面とのコントラストに乏しい場合がある。そのような場合、反射センサでは箔とシートとを区別しづらく、転写不良の検知は困難であり、高性能の撮像手段および、大量のサンプルデータの取得、複雑な画像解析を必要とする。したがって検査装置が高価格であり、その導入を回避して目視による検査を行わなれるケースがあった。導入したとしても検知の困難性による見逃しを防ぐため、目視検査を排除できないことがあった。
【0070】
本実施の形態は、シートから離間後のウェブに残存した箔の残存形状を取得することとした。箔転写後のウェブ52は多くの場合透明であり、箔が残存した部分と転写済みの部分とで明確なコントラストがあるので、安価なセンサで容易に残存形状が取得できる。
【0071】
また従来、箔押し装置は、あらかじめ転写形状に成形し、加熱した型を、箔とシートに押し付けて、箔をシートに定着させるものが主流であったが、本実施の形態は、デジタル版データであるニスデータを用いたインクジェット印刷により、転写形状に対応した被転写層を形成し、箔を転写する 刷 比較対象として、基準画像を別途作成して予め入力しておくことが必要であり、その作成と入力に手間がかかるという問題があった。さらに、その残存形状をデジタル版データとを比較して、その結果に基づき正常な転写の成否を判断することとした。もともとニス層を形成するためのデータであるデジタル版データを基準画像として利用することとしたので、基準画像を別途予め作成しておく必要がなく、手間のかからない使い勝手の良い装置が得られる。本実施の形態はデジタル版データに基づき、インクジェットにより被転写層であるニス層Vを形成しているが、デジタル版データを利用して印刷するものであれば、他の方法でもよい。例えば、電子写真方式でトナーにより被転写層を形成するものなどが考えられる。
【0072】
ウェブ52の伸びや歪み等により生じる相違を軽減するため、検査部90は比較の前に、残存形状データ200を適宜補正してもよい。たとえば、転写後のウェブ52がその張力によって長手方向に伸び、その分幅が狭くなることが考えられる。これを考慮して、残存形状データ200の拡縮補正を行ってもよい。具体的には、シートの搬送方向(ウェブ52の長手方向)の寸法を縮小補正してもよい。さらに、残存形状データ200の幅方向の寸法を拡大補正してもよい。この拡縮補正を段階的に行った補正後データを複数作成し、すべてニスデータ100と比較し、一致度が最も高いものを採用してもよい。この一致度に応じて次回以降の補正量と方向を決定し、次回以降は決定した量と方向で補正を行ってもよい。
【0073】
また、部品誤差等により、シート検知センサ77の検知タイミングから特定したウェブ52の取得領域R4が、比較画像データ100Aに対してウェブ移動方向にずれてしまうことも考えられる。このずれを考慮して、残存形状データ200のオブジェクト202、204、206の位置を、ウェブ移動方向にオフセットさせる残存形状オフセット補正を行ってもよい。オフセット量と方向が異なる複数の補正後データをすべて比較画像データ100Aと比較し、一致度が最も高いものを採用してもよい。この一致度に応じて次回以降の補正量と方向を決定し、次回以降は決定した量と方向で補正を行ってもよい。
【0074】
また、ニスデータ100からの比較画像データ100Aの切り出し位置をウェブ移動方向にオフセットさせる比較画像オフセット補正を行ってもよい。オフセット量と方向が異なる複数の補正後データをすべて残存形状データ200と比較し、一致度が最も高いものを採用してもよい。この一致度に応じて次回以降の補正量と方向を決定し、次回以降は決定した量と方向で補正を行ってもよい。
【0075】
上記の複数の補正後データの作成は毎回行うと時間がかかるため、1枚目のシートに箔押し処理を行う場合のみ、あるいは所定の枚数のシートに箔押し処理を行う場合のみ行うこととしてもよい。
【0076】
なお、下地画像に付与されたレジストレーションマークをCCDセンサ44で撮像してその画像を解析し、レジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニスデータを補正した場合には、補正後のニスデータを残存形状との比較に用いるのが望ましい。補正後のニスデータの方が、下地画像印刷の際に生じた歪みやずれを反映していると考えられるからである。補正の範囲がニスデータ全体の一部である場合は、連結して全体のニスデータとして比較に用いてもよいし、その一部領域に相当する領域の残存形状と比較するようにしてもよい。
【0077】
箔押し装置16は、巻出し軸56と巻取り軸58に、幅方向に異なるウェブ52のロールを複数本ずつ掛け、1枚のシートに各々のウェブ52から箔を転写させることができる。図11は、幅方向に互いに異なる箔ロールを2本掛けた場合に取得された残存形状データ300を示す図である。残存形状データ300の幅方向の両端部と、オブジェクト302とオブジェクト303との間に、先端から後端まで黒となった帯状領域310が存在する。検査部90は、残存形状データ300は画素ごとのデータを参照し、先端から後端まで、搬送方向に沿ってすべて黒となった帯状領域310は、ウェブ52が無い部分であると判断する。検査部90は帯状領域310を白色に変換してニスデータ100との比較を行ってもよいし、帯状領域310における比較結果をすべて無効としてもよい。さらに検査部90は、帯状領域310に挟まれた領域であって、オブジェクト302を含む第1領域312と、オブジェクト304、306を含む第2領域314とは、それぞれ別々のウェブ52が存在する範囲であると特定するとともに、特定されたウェブの存在範囲ごとに、個別に拡縮補正あるいはオフセット補正を行ってもよい。
【0078】
検査部90は、移動するウェブ52の長手方向に沿って、シートの長さよりも短い長さごとに分割された検査領域ごとに順次、比較を行ってもよい。図12は、残存形状データ200をシートの搬送方向すなわち移動するウェブ52の長手方向に沿って、搬送方向下流側から順に、検査領域200A、200B、200C、200Dの4等分に分割した図である。オブジェクト202は、検査領域200A、200B、200Cに含まれるそれぞれオブジェクト202A、202B、202Cに分割されている。オブジェクト204は、検査領域200A、200B、200Cに含まれるそれぞれオブジェクト204A、204B、204Cに分割されている。オブジェクト206は検査領域200Dにのみ含まれている。
【0079】
検査部90は各々の検査領域における残存形状データを、比較画像データ100Aの対応部分と比較する。ラインセンサ80は、ウェブ52が送られるのに応じて、検査領域200A、200B、200C、200Dの順に残存形状データを取得する。検査部90は、各々の検査領域の残存形状データが取得され次第、比較画像データ100Aから対応する部分を切り出して比較する。
【0080】
図12に示すように、検査領域200Aには欠き202Aaが含まれており、比較画像データ100Aの対応部分との比較によりこれを特定することができるので、すべての残存形状データ200を取得するよりも前に、転写不良を発見することができる。制御装置20が転写不良を特定後ただちに上下動駆動源M1を駆動し、転写完了前に第1ニップローラ62、第2ニップローラ64を上昇させれば、転写を中断することができ、箔の無駄遣いを防ぐことができる。
【0081】
検査領域200Aに続いて、200B、200Cについても、残存形状データが取得され次第、比較画像データ100Aの対応部分と比較する。各々の比較の際に、残存形状データの拡縮補正を行ってもよい、拡縮率の異なる複数の残存形状データをすべて比較してもよい。また、各検査領域の境界をウェブ移動方向にオフセットさせる調整を行ってもよい。また、比較画像データ100Aからの対応部分の切り出し位置をウェブ移動方向にオフセットする補正を行ってもよいし、切り出し位置をウェブ移動方向にずらした複数の対応部分のデータと比較してもよい。これらの補正により、ウェブ52の伸びや歪み等による残存形状の変形に対応することができる。
【0082】
(箔押しの動作)
分割された検査領域ごとに順次比較を行うケースを例にとり、箔押しの動作を説明する。図13(a)~(c)、図14(a)~(c)は、箔押しの動作を時系列で示す図である。図13(a)は、シートS1の先端がシート検知センサ77に到達した段階である。この段階ですでに、シートS1は給紙装置12から1枚ずつ給紙され、ニス塗布装置14においてニスが塗布され、半硬化用紫外線ランプ48により半硬化が行われた状態である。第1ニップローラ62と第2ニップローラ64は上昇位置にある。箔転写部Fは箔を保持したウェブ52がシートSと接触し、箔がシートに転写される部分である。シートS1は搬送ローラ54(図5、6参照)と紙押さえコロ72により矢印方向に移動している。
【0083】
図13(b)は、シートS1が移動し、処理領域R1の先端が箔転写部Fに入る直前に、上下動駆動源M1が駆動し、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64とが下降位置に下降したところであり、すなわち第1タイミングを示す。この第1タイミングは、シート検知センサ77がシートS1の先端を検知してから、エンコーダE1により取得したパルスがP1を計数した段階である。パルスP1は、装置寸法と、シートS1の先端から処理領域R1の先端までの距離に基づいて決められる。
【0084】
またこの下降と同時または直前に、ウェブ駆動モータM2が駆動開始し、ウェブ駆動ローラ対61が回転開始し、ウェブ52の送りを開始する。シートS1がさらに移動すると、半硬化状態のニスのタック性によりウェブ52と接着する。ウェブ52は搬送ローラ54の周速よりもわずかに速い速度であるので、シートS1はウェブ52につられてウェブ52と同じ速度で搬送される。搬送ローラ54はワンウェイクラッチが介装されているので、シートS1に連れ回りする。処理領域R1は箔押し用紫外線ランプ66の下方を通過し、ニス層Vが硬化する。
【0085】
図13(c)はウェブ52の取得領域R4の先端がラインセンサ80に到達したところであり、すなわち第2タイミングを示す。ラインセンサ80はここから取得領域R4の残存形状の取得を開始する。この第2タイミングは、第1タイミングから、エンコーダE2により取得したパルスがP2を計数した段階である。パルスP2は、装置寸法に基づいて予め決まった数値が記憶されている。
【0086】
図14(a)は、検査領域200Aがラインセンサ80の検知ラインを通過完了した段階である。図12のように4分割された検査領域ごとに順次比較を行う場合は、この時点で、検査部90が検査領域200Aの残存形状データと、比較画像データ100Aの対応部分とを比較し、転写不良の有無を判定する。転写不良があれば応じて直ちにニップローラ62、64を上昇させることができる。この時点で、処理領域R1が箔転写部Fの通過を完了する前の段階であるので、箔の無駄遣いを防ぐことができる。
【0087】
検査領域200Aがラインセンサ80を通過完了したタイミングは、第2タイミングから、エンコーダE2により取得したパルスがP31を計数した段階である。パルスP31は、検査領域200Aの搬送方向の長さ(取得領域R4の搬送方向長さを4等分した長さ)に基づいて決められる。この後、シートS1が搬送されるにつれ、検査領域200B、200Cが各々ラインセンサ80を通過した時点に対応したエンコーダE2のパルス数P32,P33を計数した時点で、各々の検査領域の残存形状データを取得し、検査部90が各検査領域の残存形状データと、ニスデータ100の対応部分とを比較し、転写不良の有無を判定する。分割することなく、残存形状データ200と比較画像データ100Aの全体同士を比較する場合は、図14(a)の時点での比較は行われない。
【0088】
図14(b)は、処理領域R1の後端が、箔転写部Fから出た直後に、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64とが上昇位置に上昇したところであり、すなわち第3タイミングである。上昇のタイミングは、第1ニップローラ62と第2ニップローラ64とが下降した第2タイミングから、エンコーダE2により取得したパルスがP3を計数した段階である。パルスP3は、装置寸法と、処理領域R1の搬送方向の長さに基づき決められる。この時点で、ウェブ駆動ローラ対61は回転駆動されており、引き続きウェブ52が送られる。第1ニップローラ62と第2ニップローラ64が上昇しても、ウェブ52は巻取り軸58の駆動回転により巻取りロール76に巻き取られるので、ウェブ52がたるむことはない。
【0089】
図14(c)はウェブ52の取得領域R4の後端が、ラインセンサ80に到達したところであり、すなわち第4タイミングである。この第4タイミングは、第3タイミングから、エンコーダE2により取得したパルスがP4を計数した段階である。パルスP4は、装置寸法に基づいて予め決まった数値が記憶されている。この第4タイミングにおいて、ラインセンサ80による残存形状の取得が完了する。残存形状データ200と比較画像データ100Aの全体同士を比較する場合は、この時点で比較を行う。4分割された検査領域ごとに順次比較を行う場合は、この時点で最後の検査領域200Dの比較を行う。またこの第4タイミングでウェブ駆動モータM2の駆動も停止し、ウェブ52の送りも停止する。比較の結果、転写不良と判定した場合は、制御装置20はディスプレイに警告メッセージを表示し、必要に応じて装置を停止させてもよい。
【0090】
こうしてニスが塗布された部分に箔が接着されたシートS1がスタッカ18(図1,2参照)に排出され、シートS1の箔押し処理が完了するとともに、転写不良があれば操作パネル等に転写不良領域を丸囲み、あるいは色を変えるなどして表示させ、ユーザに報知することができる。
【0091】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0092】
(変形例1)
実施の形態では、残存形状データの拡縮補正やオフセット補正について説明したが、変形例1では、補正の基準としてレジストレーションマークを用いて補正を行うものである。図15は、この変形例1のニスデータ400を示す図である。ニスデータ400は、10個のレジストレーションマークRG1~RG10(今まとめてレジストレーションマークRGともいう)を含む。レジストレーションマークRGは、円形に十字を重ねた形状である。すなわちその十字の中心座標を特定可能な形状である。座標を特定可能であれば他の形状でもよい。例えば円形等であってもよい。
【0093】
ニスデータ400の先端辺近傍の幅方向の両端辺近傍に、レジストレーションマーク対RG1,RG2が設けられる。ニスデータ400の後端辺近傍の幅方向の両端辺近傍に、レジストレーションマーク対RG9,RG10が設けられる。レジストレーションマーク対RG1,RG2と、RG9,RG10との間の部分の幅方向の両端辺近傍に、3つのレジストレーションマーク対RG3、RG4と、RG5,RG6と、RG7,RG8が設けられる。レジストレーションマークRG1,RG2,RG3,RG4に囲まれた範囲に領域AR1、レジストレーションマークRG3,RG4,RG5,RG6に囲まれた範囲に領域AR2、レジストレーションマークRG5,RG6,RG7,RG8に囲まれた範囲に領域AR3、レジストレーションマークRG7,RG8,RG9,RG10に囲まれた範囲に領域AR4が形成されている。
【0094】
オブジェクト402、404は、領域AR1、AR2,AR3にまたがって形成されている。オブジェクト406は、領域AR3にのみ形成されている。オブジェクトを含む領域AR1,AR2,AR3を囲むレジストレーションマークを含む範囲が、比較領域R2とされている。このニスデータ400に基づき、ニス吐出部46は、これらのオブジェクトに加え、レジストレーションマークRGにも、その形状の通りのニス層Vをシート上に形成する。なお、オブジェクトの存在範囲である領域AR1,AR2,AR3を囲むレジストマーク以外のレジストマーク(RG9、RG10)にはニス層Vを形成しなくてもよい。
【0095】
図16は、変形例1のニスデータ400により形成されたニス層Vに対し、箔を転写させた後のウェブ52から取得された残存形状データ500は、比較領域R2に対応する取得領域R4における残存形状を表す。残存形状データ500には、オブジェクト402、404、406に対応して、箔が転写された跡であるオブジェクト502、504、506が形成されている。これに加えて、レジストレーションマークRG1、RG2,RG3,RG4,RG4,RG6に対応して、箔が転写された転写跡であるレジストレーションマークRG101、RG102、RG103、RG104、RG105、RG106が形成されている。レジストレーションマークRG101,RG102,RG103,RG104に囲まれた範囲に領域AR101、レジストレーションマークRG103,RG104,RG105,RG106に囲まれた範囲に領域AR102、レジストレーションマークRG105,RG106,RG107,RG108に囲まれた範囲に領域AR103が形成されている。
【0096】
検査部90は、領域AR101,AR102、AR103の各々の残存形状を、それぞれニスデータ400の領域AR1、AR2、AR3と比較する。各々の比較の前に、レジストレーションマークRGを使用して、残存形状データ500の比較対象の領域を補正する。具体的には、領域AR101については、これを囲むレジストレーションマークRG101、RG102、RG103、RG104の座標位置を、残存形状データ500に画像処理を施して特定する。特定は、ブロブ解析法、特徴点抽出法、明暗比較法、パターンマッチング、形状寸法演算比較法等によって行われる。レジストレーションマークらしい画像の重心を求めてレジストレーションマークの座標位置を数値として導き出してもよい。制御装置20には、ニスデータ400に含まれるレジストレーションマークRGの座標位置は予め記憶されているので、画像処理はその周辺の範囲のみ行ってもよい。
【0097】
検査部90は、領域AR1を囲む各レジストレーションマークRG1,RG2,RG3,RG4の、記憶済みの座標位置と、残存形状データ500から画像処理で特定したレジストレーションマークRG101、RG102、RG103、RG104との座標位置の相違に基づいて、領域AR101の残存形状データを補正し、補正後のデータをニスデータ400の領域AR1と比較する。この比較により、欠き502aが転写不良として特定される。領域AR102、AR103についても同様に補正して比較する。この比較により、欠き504aが転写不良として特定される。
【0098】
領域AR101の補正は、残存形状データ500の全ての取得を待たず、レジストレーションマーク対RG3、RG4の残存形状を取得した時点でただちに行ってもよい。同様に、領域AR102の補正は、レジストレーションマーク対RG5、RG6の残存形状を取得した時点で直ちに行ってもよい。そうすればすべての残存形状データ500を取得するよりも前に転写不良を特定し、転写完了前にニップローラ62、64を上昇させることができ、箔の無駄遣いを防ぐことができる。
【0099】
この変形例1によれば、領域の四隅を囲むレジストレーションマークにより補正を行うため、ウェブ移動方向と幅方向の両方に係る歪みにも対応できるので、より正確な検査が可能となる。また、これらのレジストレーションマークRGは、ニス塗布の際に下地画像に付され、CCDセンサ44により取得されるレジストレーションマークと、形状とシート内における位置が同一であってもよい。そうすれば、下地画像データに基づいたニスデータ作成が容易になる。また、ニス塗布の下地画像のレジストレーションマークに囲まれた領域のニスデータを補正した場合、その補正後のニスデータと、同一の領域に相当する残存形状とを比較することができるので、より正確な検査が可能になる。
【0100】
(変形例2)
実施の形態では、検査部90は比較の前に、残存形状データ200を適宜補正して、ウェブ52の伸びや歪み等により生じる相違を軽減することとしているが、ニスデータ100を補正することとしてもよい。すなわちニスデータ100を適宜補正して変形させ、転写後のウェブ52の形状に近づけるように補正する。たとえば、転写後のウェブ52がその張力によって長手方向に伸び、その分幅が狭くなった場合は、ニスデータ100の、シート搬送方向を拡大し、幅方向を縮小すればよい。この拡縮補正を段階的に行った補正後データを複数作成し、すべて残存形状データ200と比較し、一致度が最も高いものを採用してもよい。この一致度に応じて次回以降の補正量と方向を決定し、次回以降は決定した量と方向で補正を行ってもよい。ニスデータ100と残存形状データ200の形状が互いに近づくように、双方の補正を行ってもよい。
【0101】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様1]
態様1は、所定のデジタル版データに基づき、シート上の所定形状の領域に被転写層を形成する被転写層形成部と、転写材を保持する長尺のウェブをシートに接触させて、転写材をシートの被転写層形成領域に転写させる転写部と、転写後の転写材をシート上に残してウェブとシートとを離間させる離間部と、離間後のウェブに残存した転写材の残存形状を表す残存形状データを取得可能な残存形状取得手段と、残存形状取得手段が取得した残存形状データとデジタル版データとを比較して、その結果に基づき正常な転写の成否を判断する検査部と、を有する転写装置である。
【0102】
態様1によれば、高性能の撮像手段や、複雑な画像解析を用いることなく、かつ、目視検査のような手間をかけることなく、正常な転写の成否を判断できる。所定のデジタル版データに基づいて被転写層を形成し、転写後のウェブから取得した残存形状を、そのデジタル版データと比較するので、ニス層を形成するためのデータであるデジタル版データを基準画像として利用できる。基準画像を準備して予め入力しておく必要がないので、手間のかからない使い勝手の良い装置が得られる。
【0103】
被転写層は、実施の形態では紫外線硬化性ニスを半硬化させたニス層を挙げたが、これに限られない。ホット箔等、箔が接着機能を有する場合、シート面の上面よりも高い位置に被接着面が形成できるものであればよい。具体的には、ホットメルト材料やプライマー、トナー等で厚盛層を形成してもよいし、完全硬化したニス層であってもよい。コールド箔等、被転写面が接着機能を有する場合は、ホットメルト接着剤や、接着性トナー等であってもよい。
【0104】
また態様1によれば、被転写層を形成するための印刷の印刷データであるデジタル版データを基準画像として利用することとした。デジタル版データは被転写層形成部で利用されるものであるので、基準画像を別途予め作成しておく必要がなく、手間のかからない使い勝手の良い装置が得られる。検査部と被転写層形成部とを有線または無線通信手段で接続しておき、この回線を通じてデジタル版データを参照することとすることもできる。
【0105】
被転写層の形成には、実施の形態ではインクジェットヘッドを例示したが、これに限られず、所定のデジタル版データに基づいて被転写層を形成するものであればよく、例えば接着剤を微量吐出するニードルディスペンサや、接着トナー層を電子写真方式で形成するものであってもよい。実施の形態は、残存形状取得手段としてラインセンサを用いているが、エリアセンサやカメラ等による撮像であってもよい。
【0106】
[態様2]
態様2は、検査部は、前記残存形状データ及び前記デジタル版データの少なくとも一方を補正して、前記比較を行う転写装置である。この態様によれば、ウェブの伸びや歪み、部品誤差等により生じる相違を軽減し、より正確に正常な転写の成否を判断することができる。
【0107】
補正は、実施の形態では、ウェブ52の伸びを考慮して、残存形状データの搬送方向寸法の縮小、または幅方向寸法の拡大を例示したが、これに限られず、残存形状データの搬送方向寸法の拡大、または幅方向寸法の縮小を行ってもよいし、これらを組み合わせたり、残存形状データの一部領域のみに対して拡縮を行ってもよい。ウェブ52には温度変化による膨張収縮、箔が残存しているか否かによる変形しやすさの違い、ウェブ52の皺や弛み等により、残存形状には様々な変形が生じ得る。これらの変形に対して適宜、適切な補正を行えばよい。
【0108】
また、実施の形態では、補正を段階的に行った補正後データを複数作成してすべてニスデータと比較し、一致度が最も高いものを採用する例を記載したが、例えば転写を複数回繰り返す場合は、過去の補正において一致度が高かった補正を、後の補正に採用してもよいし、過去の補正を参照することにより、比較する補正後データの数を減らしてもよい。転写を繰り返すごとに過去の補正後データを学習することにより、その後の検査がより適切に行われるようにしてもよい。
【0109】
[態様3]
態様3は、検査部は、デジタル版データの一部を切り出して、残存形状データと比較する態様1または2記載の転写装置である。この態様によれば、切り出した部分に対応する残存形状データが取得され次第、比較を行うことができるため、正常な転写が行われていない場合には、転写の途中であってもこれを中断することができる。
【0110】
[態様4]
態様4は、デジタル版データの切り出し位置は補正可能である態様3記載の転写装置である。この態様によれば、ウェブ52の伸びや歪み等による残存形状の変形に対応することができる。
【0111】
[態様5]
態様5は、ウェブは幅方向に並べて複数装着可能であり、検査部は、装着されているウェブの存在範囲を特定する態様1から4いずれか1つに記載の転写装置である。この態様によれば、巻出し軸と巻取り軸に、幅方向に異なるウェブのロールを複数本ずつ掛けた場合であっても、適切に残存形状データを取得し、基準画像と比較することができる。また、特定されたウェブの存在範囲ごとに、ニスデータの補正、または残存形状データの補正、デジタル版データの切り出し位置の補正を行うようにすれば、複数のウェブの各々に生じた変形に応じて補正することができ、より正確な検査が可能になる。
【0112】
[態様6]
態様6は、検査部は、移動するウェブの長手方向に沿って、シートの長さよりも短い長さごとに分割された検査領域ごとに順次、前記比較を行う態様1から5のいずれか1つに記載の転写装置である。この態様によれば、分割された各々の検査領域の残存形状データが取得され次第、デジタル版データから対応する部分を切り出して比較することができる。
【0113】
[態様7]
態様7は、転写部は、ウェブとシートとが接触している状態と離間している状態を切替可能に構成され、検査部により、正常な転写がなされなかった検査領域が検出された場合、当該シートへの転写完了前にウェブとシートとを離間させる態様6記載の転写装置である。この態様によれば、すべての残存形状データを取得するよりも前に、転写不良を発見することができるので、転写を中断することができ、箔の無駄遣いを防ぐことができる。
【0114】
[態様8]
態様8は、デジタル版データは、シートの搬送方向に直交する幅方向に離間して対に設けられたレジストレーションマークを、シートの搬送方向に沿って複数含み、検査部は、デジタル版データに含まれるレジストレーションマークの位置と、残存形状データに含まれるレジストレーションマークに対応する転写跡の位置との相違に応じて、レジストレーションマークに対応する転写跡で囲まれた領域の残存形状データを補正して比較を行う態様1から7のいずれか1つに記載の転写装置である。この態様によれば、領域の四隅を囲むレジストレーションマークにより補正を行うため、ウェブ移動方向と幅方向の両方に係る歪みにも対応できるので、より正確な検査が可能となる。
【0115】
[態様9]
態様9は、被転写層形成部は、デジタル版データにおけるレジストレーションマークを除いた被転写層形成部の存在範囲を囲むレジストレーションマーク以外のレジストレーションマークには被転写層を形成しない態様8記載の転写装置である。この態様によれば、レジストレーションマーク以外に被転写層形成部が存在しないのに、そのレジストレーションマークのためだけに、被転写層形成材料や箔が使われる無駄を防ぐことができる。
【0116】
[態様10]
態様10は、離間部のウェブ移動経路下流側に設けられ、ウェブを巻き取る巻取りロールと、巻取りロールと離間部との間に設けられ、ウェブに接触するガイド部材とを有し、残存形状取得手段は、離間部と前記ガイド部材との間に設けられている態様1から9のいずれか1つに記載の転写装置である。箔押し作業を行うにともない、巻き取りロールに巻き取られたウェブの外径が増加するので、巻き取りロールに巻き取られる直前のウェブの移動経路が変化する。この態様によれば、巻き取りロールが径変化してもウェブの移動経路に変化がない部分で残存形状が取得されるので、簡単な構造で安定して残存形状を取得することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 印刷システム、 52 ウェブ、 77 シート検知センサ、 80 ラインセンサ、 100 ニスデータ、 200 残存形状データ、 R1 処理領域、 R2 比較領域、 R4 取得領域
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