(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164025
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20231102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20231102BHJP
A61P 9/00 20060101ALN20231102BHJP
A61P 1/00 20060101ALN20231102BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
A61K31/343
A61P43/00
A61K31/404
A61P25/00
A61P9/00
A61P1/00
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075319
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】399015388
【氏名又は名称】学校法人九州文化学園
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】水口 峰之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】横山 武司
(72)【発明者】
【氏名】植田 光晴
(72)【発明者】
【氏名】安東 由喜雄
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明は、新規トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物、および同医薬組成物に用いられる新規化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、下記式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物:
【化1】
式中、
R
aは、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
R
bおよびR
cは、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、
R
dおよびR
fは、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
R
eは、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
Xは、酸素、硫黄、およびNR
gで示される基からなる群から選ばれ、
前記NR
gにおけるR
gは、水素、または-(CH
2)
yCH
3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
【請求項2】
RbおよびRcの少なくとも一方が、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
Rbが水素、Rcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
RbおよびRcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
RbおよびRcが水素である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
RdおよびRfが電子吸引性基であり、Reがヒドロキシである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
電子吸引性基が、ハロゲン、炭素数1~4のハロゲン化アルキル、炭素数2~4のアシル、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、炭素数1~4のアルキルオキシカルボニル
(-CO2R;Rはアルキルを示す)、アルデヒド(-CHO)、フェニル、および炭素数1~4のアルキルスルホニル(-SO2R;Rはアルキルを示す)からなる群から選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
電子吸引性基がハロゲンである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
Xが酸素、硫黄、またはNHである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
下記式(I)’で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩:
【化2】
式中、
R
a’は、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
R
b’およびR
c’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、R
b’およびR
c’の少なくとも一方は、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基であり、
R
d’およびR
f’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
R
e’は、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
X’は、酸素、硫黄、およびNR
gで示される基からなる群から選ばれ、
前記NR
gにおけるR
gは、水素、または-(CH
2)
yCH
3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
【請求項11】
Rb’が水素、Rc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Rb’およびRc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
Rd’およびRf’が電子吸引性基であり、Re’がヒドロキシである、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
電子吸引性基がハロゲンである、請求項10に記載に記載の化合物。
【請求項15】
X’が酸素、硫黄、またはNHである、請求項10に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規医薬組成物、特に新規トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物、および同医薬組成物に用いられる新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスサイレチンアミロイドーシスは、トランスサイレチンのアミロイド線維が神経、心臓、消化管、眼等の臓器に蓄積することで多様な症状を生じる難病である。その治療では、トランスサイレチンを安定化し、アミロイド線維の形成を抑制することが有効である。現在、トランスサイレチン安定化剤のタファミディス(ビンダケル)が、トランスサイレチンアミロイドーシスの治療薬として使用されている(非特許文献1)。
【0003】
タファミディスは症状の進行を抑制するが、進行を完全に止めることはできない。また、眼や脳におけるトランスサイレチンのアミロイド形成を阻害する効果はない。したがって、より治療効果の高い薬剤の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bulawa et al., Tafamidis, a potent and selective transthyretin kinetic stabilizer that inhibits the amyloid cascade. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012, 109, 9629-9634.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の状況を鑑み、本発明は、新規トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物、および同医薬組成物に用いられる新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新規トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物、および同医薬組成物に用いられる新規化合物を開発することを目的として鋭意検討を行った。その結果、タファミディスよりも強くトランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する化合物の開発に成功した。本発明は、このような知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 下記式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物:
【0008】
【0009】
式中、
Raは、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
RbおよびRcは、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、
RdおよびRfは、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
Reは、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
Xは、酸素、硫黄、およびNRgで示される基からなる群から選ばれ、
前記NRgにおけるRgは、水素、または-(CH2)yCH3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
[2] RbおよびRcの少なくとも一方が、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、[1]に記載の医薬組成物。
[3] Rbが水素、Rcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4] RbおよびRcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[5] RbおよびRcが水素である、[1]に記載の医薬組成物。
[6] RdおよびRfが電子吸引性基であり、Reがヒドロキシである、[1]~[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7] 電子吸引性基が、ハロゲン、炭素数1~4のハロゲン化アルキル、炭素数2~4のアシル、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、炭素数1~4のアルキルオキシカル
ボニル(-CO2R;Rはアルキルを示す)、アルデヒド(-CHO)、フェニル、および炭素数1~4のアルキルスルホニル(-SO2R;Rはアルキルを示す)からなる群から選ばれる、[1]~[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8] 電子吸引性基がハロゲンである、[7]に記載の医薬組成物。
[9] Xが酸素、硫黄、またはNHである、[1]~[8]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10] 下記式(I)’で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩:
【0010】
【0011】
式中、
Ra’は、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
Rb’およびRc’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、Rb’およびRc’の少なくとも一方は、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基であり、
Rd’およびRf’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
Re’は、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
X’は、酸素、硫黄、およびNRgで示される基からなる群から選ばれ、
前記NRgにおけるRgは、水素、または-(CH2)yCH3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
[11] Rb’が水素、Rc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、[10]に記載の化合物。
[12] Rb’およびRc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である、[10]に記載の化合物。
[13] Rd’およびRf’が電子吸引性基であり、Re’がヒドロキシである、[10]~[12]のいずれかに記載の化合物。
[14] 電子吸引性基がハロゲンである、[10]~[13]のいずれかに記載に記載の化合物。
[15] X’が酸素、硫黄、またはNHである、[10]~[14]のいずれかに記載の化合物。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、新規トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物、および同医薬組成物に用いられる新規化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、V30M変異-TTRに対する強い結合を有する化合物を選択するためのANS(1-anilinonaphthalene-8-sulphonic acid)競合結合アッセイによる評価結果を示す図である。
【
図2】
図2は、V30M変異-TTRに対する強い結合を有する化合物を選択するためのANS(1-anilinonaphthalene-8-sulphonic acid)競合結合アッセイによる評価結果を示す図である。
【
図3】
図3は、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のアミロイド阻害活性の評価結果を示す図である。
【
図4】
図4は、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のアミロイド阻害活性の評価結果を示す図である。
【
図5】
図5は、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のV30M変異-TTRに対する相互作用における熱力学的パラメーターのITC(Isothermal Titration Calorimetry)による評価結果を示す図である。
【
図6】
図6は、ex vivoにおける、蛍光プローブを用いた競合結合アッセイによる評価結果を示す図である。
【
図7】
図7は、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のヒト血漿中のトランスサイレチンに対する結合力の評価結果を示す図である。
【
図8】
図8は、ベンズブロマロン誘導体のin vivo薬物動態試験(ラット血漿中濃度推移)の結果を示す図である。
【
図9】
図9は、ベンズブロマロン誘導体のin vivo薬物動態試験(経口投与後ラット血漿・眼球・脳内濃度推移)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。ただし、本発明は、以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書において、数値範囲を「下限~上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。
【0015】
本明細書において「炭化水素基」とは、炭素原子と水素原子からなる炭化水素の任意の炭素原子から1または複数個の水素原子を除去してなる基を意味する。
炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル等であってよい。
【0016】
本明細書において「アルキル」とは、直鎖、分岐または環状の飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、2,3-ジメチルプロピル、ヘキシル、およびシクロヘキシル等が挙げられる。
「炭素数1~4のアルキル」とは、直鎖、分岐または環状の炭素数が1~4個の飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、イソブチル等が挙げられる。
「炭素数1~2のアルキル」とは、直鎖状の炭素数が1または2個の飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味し、例えば、メチル、エチル等が挙げられる。
【0017】
本明細書において「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素間の二重結合を有する直鎖、分岐または環状の不飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味する。例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、1-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、1-メチリデンブチル、2-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、2-メチリデンブチル、3-メチル-1-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、1-メチリデンペンチル、2-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、2-メチリデンペンチル、3-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、3-メチリデンペンチル、4-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、およびデセニルが挙げられる。
「炭素数2~4のアルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素間の二重結合を有する直鎖、分岐または環状の炭素原子数が2~4個の不飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味し、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル等が挙げられる。
【0018】
本明細書において「アルキニル」とは、1以上の炭素-炭素間の三重重結合を有する直鎖、分岐、または環状の不飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味する。例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、フェニルエチニル等を挙げることができる。
「炭素数2~4のアルキニル」とは、1以上の炭素-炭素間の三重重結合を有する直鎖、分岐、または環状の炭素原子数が2~4個の不飽和炭化水素の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去してなる一価の基を意味し、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル等が挙げられる。
【0019】
本明細書において「炭素数1~4のアルコキシ」とは、前述の「炭素数1~4のアルキル」が酸素原子(O)を介して結合する基である。
【0020】
本明細書において「ハロゲン化アルキル」とは、ハロゲンで置換されたアルキルであり
、「炭素数1~4のハロゲン化アルキル」とは、ハロゲンで置換された炭素数1~4のアルキルを意味する。置換するハロゲンの数としては、例えば、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、3個、2個、または1個とすることができる。例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、イオドメチル、ジイオドメチル、トリイオドメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリクロロエチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、ブロモエチル、ジブロモエチル、トリブロモエチル、イオドエチル、ジイオドエチル、トリイオドエチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、イオドメチル、ジイオドメチル、トリイオドメチル、クロロプロピル、ジクロロプロピル、トリクロロプロピル、フルオロプロピル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、ブロモプロピル、ジブロモプロピル、トリブロモプロピル、イオドプロピル、ジイオドプロピル、トリイオドプロピル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、イオドメチル、ジイオドメチル、トリイオドメチル、クロロブチル、ジクロロブチル、トリクロロブチル、フルオロブチル、ジフルオロブチル、トリフルオロブチル、ブロモブチル、ジブロモブチル、トリブロモブチル、イオドブチル、ジイオドブチル、およびトリイオドブチル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において「アシル」とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはヘテロアリールがカルボニル基(>C=O)を介して結合する基であり、「炭素数2~4のアシル」とは、炭素数1~3のアルキル、アルケニルまたはアルキニルがカルボニル基を介して結合する基である。
【0022】
本明細書において「炭素数1~4のアルキルオキシカルボニル」とは、前述の「炭素数1~4のアルコキシ」がカルボニル基(>C=O)を介して結合する基である。
【0023】
本明細書において「炭素数1~4のアルキルチオ」とは、前述の「炭素数1~4のアルキル」が硫黄原子(S)を介して結合する基である。「炭素数1~4のアルキルスルフィ
ニル」とは、前述の「炭素数1~4のアルキルチオ」における硫黄原子が1個の酸素原子(=O)と結合している基である。「炭素数1~4のアルキルスルホニル(-SO2R)
」とは、前述の「炭素数1~4のアルキルチオ」における硫黄原子が2個の酸素原子(=O)と結合している基である。
【0024】
本明細書において「アリール」とは、単環または縮合多環式の芳香族炭化水素基のことであり、アリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択される1種類以上のヘテロ原子を少なくとも1個含む単環式複素環基または縮合複素環基を意味する。ヘテロアリールが含有するヘテロ原子の数は、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、2個、1個であってよい。例えば、窒素原子を1個含む複素環基、窒素原子を2個含む複素環基、窒素原子を3個含む複素環基、酸素原子1個を含む複素環基、酸素原子を2個含む複素環基、酸素原子1個と窒素原子1個を含む複素環基、硫黄原子を1個含む複素環基等様々な組み合わせが存在する。複素環基は、芳香族性であっても、非芳香族性であってもよい。単環式複素環基は、好ましくは、5~6員環である。縮合複素環基は、好ましくは、8~10員環である。ヘテロアリールとしては、例えば、ピペリジル、ピペラジル、モルホリル、キヌクリジル、ピロリジル、アゼチジル、オキセチル、アゼチジン-2-オン-イル、アジリジニル、トロパニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、オキサゾ
リル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、ピラニル、ピリジル、ピペリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、オキサジニル、モルホリニル、チアジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロイソベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、フタラジニル、プテリジニル、クマリル、クロモニル、1,4-ベンゾジアゼピニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾイル、ベンゾフリル、プリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾジオキソラニル、ベンゾジオキサニルクロメニル、クロマニル、イソクロマニル、クロマノニル、シンノリニル、キノキサリニル、インドリジニル、キノリジニル、イミダゾピリジル、ナフチリジニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリノニル、ジヒドロベンゾオキサジノニル、およびベンゾチオキサニル等を挙げることができる。
【0026】
<トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物>
本発明の一態様は、下記式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」ということがある)、またはその薬理学的に許容可能な塩(以下、これらをまとめて、「化合物(I)等」ということがある)を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物(以下、「本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物」ということがある)に関する。
また、本発明の別の一態様は、下記式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス阻害剤である。
【0027】
本発明者らは、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物に用いられる化合物を求めて鋭意検討した。その結果、尿酸排泄剤であるベンズブロマロンやその誘導体が、このような作用を有することを知見した。ベンズブロマロンの誘導体を合成し、アミロイド線維形成阻害活性、トランスサイレチンに対する結合親和性、ヒト血漿中のトランスサイレチンに対する結合力を評価した結果、タファミディスよりも血漿中の結合力がはるかに高い化合物を見出した。本発明はこのようにして完成されたものである。
【0028】
≪式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩≫
本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物は、有効成分として、式(I)で示される化合物を含有する。
【0029】
【0030】
式中、
Raは、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
RbおよびRcは、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、
RdおよびRfは、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
Reは、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
Xは、酸素、硫黄、およびNRgで示される基からなる群から選ばれ、
前記NRgにおけるRgは、水素、または-(CH2)yCH3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
【0031】
ここで、Raは、炭素数1~2の炭化水素基を示す。
炭素数1~2の炭化水素基としては、例えば、直鎖状の炭素数1~2のアルキル、炭素数2のアルケニル、炭素数2のアルキニル等であり、好ましくは直鎖状の炭素数2のアルキルである。
【0032】
RbおよびRcは、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示す。
【0033】
電子吸引性基は、置換した原子団から、電子を吸引する基である。本発明において、電子吸引性基は、ベンゼン環等より電子を吸引する。電子吸引性基は、このような作用を有するものであれば限定されない。電子吸引性基は、限定されないが、例えば、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)、ヨウ素(-I)等のハロゲン、トリフルオロメチル(-CF3)等の炭素数1~4のハロゲン化アルキル、炭素数2~4のアシル、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、炭素数1~4のアルキルオキシカルボニル(-CO2R;Rはアルキルを示す)、アルデヒド(-CHO)、フェニル、炭素数1~4のアルキルスルホニル(-SO2R)等が挙げられる。好ましくは、ハロゲンである。
【0034】
炭素数1~4の炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐または環状の炭素数1~4(好ましくは1~2、より好ましくは1)のアルキル、炭素数2~4(好ましくは2)のアルケニル、炭素数2~4(好ましくは2)のアルキニル等であり、好ましくは、直鎖状の炭素数1のアルキルである。
【0035】
化合物(I)の一態様では、RbおよびRcの少なくとも一方が、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。
化合物(I)の一態様では、Rbが水素、Rcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。化合物(I)の別の一態様では、Rbが水素、Rcがハロゲン、またはアルキルである。
化合物(I)の一態様では、RbおよびRcが電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。化合物(I)の別の一態様では、RbおよびRcがハロゲンである。
化合物(I)の一態様では、RbおよびRcが水素である。
【0036】
RdおよびRfは、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示す。電子吸引性基の具体例としては、RbおよびRcに前記したものと同様である。
【0037】
Reは、ヒドロキシ、炭素数1~4(好ましくは1~2、より好ましくは1)のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれる。Reとして、好ましくは、ヒドロキシが挙げられる。
【0038】
化合物(I)の一態様では、RdおよびRfが電子吸引性基であり、Reがヒドロキシである。化合物(I)の別の一態様では、RdおよびRfがハロゲンであり、Reがヒド
ロキシである。
【0039】
Xは、酸素、硫黄、およびNRgで示される基からなる群から選ばれる。前記NRgにおけるRgは、水素、または-(CH2)yCH3で示される基であり、yは、0~3(好ましくは0~1、より好ましくは0)の整数を示す。Xとして、好ましくは、酸素、硫黄、またはNHが挙げられ、より好ましくは、酸素が挙げられる。
【0040】
化合物(I)として、限定されないが、例えば、後記実施例に示される化合物が挙げられる。化合物(I)としては、それらのうち、アミロイド線維形成阻害活性、トランスサイレチンに対する結合親和性、ヒト血漿中のトランスサイレチンに対する結合力等の観点から、下記式で示される構造の化合物が好ましい。
【0041】
【0042】
化合物(I)は、後記実施例を参照し、公知の合成方法により合成することができる。
【0043】
本明細書における「薬理学的に許容可能な塩」とは、無機または有機の塩基または酸と結合して形成した塩であって、医薬として体内に投与することが許容可能な塩のことである。このような塩は、例えば、Bergeら、J.Pharm.Sci.66:1-19(1977)等に記載されている。ヒドロキシ基、カルボン酸基等の酸性基との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、メタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;またはリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩を形成することができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩);メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ギ酸、プロピオン酸塩、酢酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、トシル酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等との塩(有機酸塩);またはアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩等を挙げることができる。これらの塩の調製は慣用手段によって
行なうことができる。なお、以上の例示は、「薬理学的に許容可能な塩」が限定解釈されるために用いられるべきではない。即ち、「薬理学的に許容可能な塩」は、広義に解釈されるべきであり、各種の塩を含む用語である。本明細書における化合物は、それが明らかに適さない場合を除き、明示されていない場合にも、当該化合物またはその塩の水和物または溶媒和物をも含む。
【0044】
≪医薬組成物≫
アミロイドーシスは、局所または全身の臓器における、様々な種類のタンパク質に由来する不溶性アミロイド線維の細胞外沈着を特徴とする遺伝性または後天性難治性疾患である。トランスサイレチン(TTR; Transthyretin)は主要なアミロイド形成タンパク質である。TTRは、シグナルペプチドである20個のアミノ酸を含む147個のアミノ酸からな
るタンパク質として主に肝臓で産生され、細胞外に分泌される前にシグナルペプチドは切断される。127個のアミノ酸で構成される血清タンパク質として、血流中では二量体-二量体配置をもつホモ四量体を形成する。血中のTTRは四量体を形成し甲状腺ホルモン(T4)等の運搬に関与している。TTRは、組織内に病原性アミロイド沈着物を形成し、2つの主要なタイプの難治性全身性トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR; TTR-mediated
amyloidosis)を引き起こす。
【0045】
1つは、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP; familial amyloid polyneuropathy)として知られている、まれな遺伝性TTR(ATTRm)アミロイドーシスである。そのほとんどが高度にアミロイド形成性であり、TTR遺伝子において140を超える異なる点突然
変異が同定されている。これらの変異のうち、世界的に、ATTR Val30Met(p.Val50Met)
が最も一般的なATTRmアミロイドーシスの遺伝子型である。ATTR Val30Met(p.Val50Met)アミロイドーシスをもつ患者は、感覚運動性多発ニューロパチー、自律神経機能障害、心不全、および他の全身症状を有し、それらが治療されない場合、通常、発症から10年以内に死亡する。
【0046】
もう一つのタイプのATTRアミロイドーシスは、以前は老人性全身性アミロイドーシス(SSA; senile systemic amyloidosis)として知られていた野生型(WT)TTR(ATTRwt)ア
ミロイドーシスであり、今後ますます注目される。ATTRwtアミロイドーシスは、肝臓から分泌される野生型TTRによって引き起こされる非遺伝性の加齢に伴う全身性アミロイドー
シスであり、高齢患者における心不全および両側手根管症候群に関連することがよくある。ATTRwtアミロイドーシスの病理学的メカニズムはほとんど不明のままであり、ATTRwtアミロイドーシスのための具体的な疾患適用療法はこれまで確立されていない。
【0047】
肝臓移植は、ATTRmアミロイドーシスを治療するために利用されてきた治療法であり、
肝臓で合成される不安定な変異型TTRを、血流中に見られるより安定な野生型TTRで置き換えるものである。しかしながら、移植された肝臓移植片によって合成された野生型TTRは
、肝臓移植後でさえもある種の患者においてはアミロイド沈着物を形成し続けたと報告されている。TTRの酸誘導変性を用いたインビトロ研究で、TTRの四量体構造の単量体への解離がTTRアミロイド形成の初期段階における重要なステップであり得ることが示唆され、TTRの四量体が単量体へと解離することがアミロイド形成過程に重要であると考えられている。そして、突然変異型TTRの四量体構造の不安定性は、遺伝性のATTRアミロイドーシス
において極めて重要であると理解されている。そのため、アミロイドーシスの治療薬として四量体の安定化剤が開発されてきた。いくつかの治療化合物、例えば、ジフルニサル、タファミディス、AG10、およびトルカポンは、四量体TTR構造を安定化することが知られ
ている。しかしながら、タファミディス等の症状の進行抑制効果も十分なものとは言えなかった。本発明者により見出された化合物は、トランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する化合物であり、一態様では、タファミディスよりも強くトランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する。したがって、本発明によりトラン
スサイレチンアミロイドーシス治療作用が見出された化合物(I)等を有効成分とした、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物を提供することができる。
【0048】
本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物は、「トランスサイレチンアミロイドーシス」全般に効果を奏するものであり、治療対象の臓器や組織等も特に制限されない。ここで、臓器や組織としては、脳、神経、肺、肝臓、腎臓、心臓、腸(大腸、小腸、結腸等)、膵臓、骨(骨髄)、皮膚、眼等を挙げることができ、これらの中でも脳または眼を好適に例示することができる。また、全身を治療対象とすることもできる。
【0049】
トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物とは、標的の疾病ないし病態である、トランスサイレチンアミロイドーシスに対する治療的または予防的効果を示す医薬組成物のことをいう。治療的効果には、トランスサイレチンアミロイドーシスに特徴的な症状または随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。なお、予防的効果の典型的なものは、トランスサイレチンアミロイドーシスに特徴的な症状の再発発現(発症)を阻止ないし遅延することである。なお、トランスサイレチンアミロイドーシスに対して何らかの治療的効果または予防的効果、あるいはこの両者を示す限り、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物に該当する。また、化合物(I)
等またはその併用剤がもたらすトランスサイレチンアミロイドーシスに対する治療的または予防的効果は、トランスサイレチンアミロイドーシスの合併症の改善を含んでいてもよい。すなわち、本明細書における「トランスサイレチンアミロイドーシス治療」や「抗トランスサイレチンアミロイドーシス」とは、アミロイド線維そのものに対して形成を効果的に抑制または阻害等の効果を奏することに加えて、合併症を改善することを含んでいてもよい。
【0050】
本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物の製剤化は、有効成分である化合物(I)、またはその薬理学的に許容可能な塩を配合すること以外は、常法に従って行うことができる。「式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する」とは、化合物(I)およびその薬理学的に許容可能な塩から選ばれる1種以上を含むものであってよい。すなわち、化合物(I)およびその薬理学的に許容可能な塩から選ばれる1種のみまたは任意の2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0051】
製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、稀釈剤、被覆剤、糖衣剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、pH調製剤、等張剤、可溶化剤、香料、着色剤、溶解補助剤、生理食塩水等)を含有させることができる。製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、注射剤、外用剤、吸入剤、点鼻剤、点眼剤および座剤である。本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物には、期待される治療効果(または予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を、例えば、約0.01質量%~約99.9質量%の範囲内で設定し得る。
【0052】
本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物は、その剤形に応じて、経口投与または非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、または腹腔内注射
、経皮、経鼻、経粘膜等)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時にまたは所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。全身投与によらず、局所投与することにしてもよい。ドラッグデリバリーシステム(DDS)を利用して標的組織特異的に有効成分が送達されるように投与してもよい。ここでの「対象」は特に限定されず、トランスサイレチンアミロイドーシスの治療または予防が必要なヒトおよびヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物等を含む。具体的には、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である。)を含む。好ましい一態様では、適用対象はヒトである。
【0053】
本発明のさらなる態様として、本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物を使用した、トランスサイレチンアミロイドーシスに対する治療方法または予防方法(以下、これら二つの方法をまとめて「治療方法等」という)が提供される。本発明の治療方法等は、上記本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物を、トランスサイレチンアミロイドーシスに罹患するまたはトランスサイレチンアミロイドーシスの兆候を認める患者に投与するステップを含む。投与経路は特に限定されず、例えば、経口、静脈内、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、経鼻、経粘膜等を挙げることができる。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる。トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物の投与量は一般に、患者の症状、年齢、性別、および体重等によって変動し得るが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。限定されないが、例えば、経口投与では、成人に対して、例えば、1日約0.01mg~1000mgを1回、または数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、例えば、1回約0.01mg~1000mgを皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって投与することができる。投与スケジュールとしては例えば1日1回~数回、2日に1回、あるいは3日に1回等を採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の症状や有効成分の効果持続時間等を考慮することができる。
【0054】
なお、本発明に用いられる化合物である化合物(I)等は、単独で、上記効果等を発揮し得る。そのため、本発明のトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物は、これらの効果および/または作用を有する他の成分を含まなくとも、その所望の効果を発揮することができるが、薬理作用を有する他の成分が含有されていてもよい。
【0055】
本発明の別の一態様は、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物を製造するための、化合物(I)等の使用を含む。あるいは、本発明の別の一態様は、トランスサイレチンアミロイドーシス治療の治療若しくは予防のための化合物(I)等の使用を含む。さらに、本発明の別の一態様は、化合物(I)等を、必要な対象に投与することを含む、トランスサイレチンアミロイドーシスの治療方法若もしくは予防方法に関する。
【0056】
<新規化合物>
式(I)で示される化合物のうち、式(I)’で示される化合物等は、本発明者らによって開発された新規化合物である。すなわち、本発明の別の一態様は、下記式(I)’で示される化合物(以下、「本発明の化合物」、または「化合物(I)’」ということがある)、およびその薬理学的に許容可能な塩(以下、まとめて、「化合物(I)’等」ということがある)に関する。トランスサイレチンアミロイドーシスにおけるアミロイド線維は、トランスサイレチンの四量体構造の分解・単量体化、ミスフォールデングされた単量体の凝集により形成されると考えられている。したがって、化合物(I)等および化合物(I)’等は、トランスサイレチンの四量体に結合し、その構造を安定性させることで、アミロイド線維の形成を抑制、および/または阻害活性を有し、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物の有効成分として用いることができると考えられる。化合
物(I)等を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物については、上記したとおりである。化合物(I)’等を有効成分として含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物についても、任意成分、投与量、対象疾患となるトランスサイレチンアミロイドーシス、予防または治療対象等については、上記<トランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物>の項で説明した内容を適用することができる。
【0057】
【0058】
式中、
Ra’は、炭素数1~2の炭化水素基を示し、
Rb’およびRc’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、炭素数1~4の炭化水素基、または水素を示し、Rb’およびRc’の少なくとも一方は、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基であり、
Rd’およびRf’は、それぞれ独立に、電子吸引性基、または水素を示し、
Re’は、ヒドロキシ、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ、および水素からなる群から選ばれ、
X’は、酸素、硫黄、およびNRgで示される基からなる群から選ばれ、
前記NRgにおけるRgは、水素、または-(CH2)yCH3で示される基であり、
yは、0~3の整数を示す。
【0059】
ここで、Ra’~Re’、およびX’のそれぞれの基の具体例は、化合物(I)におけるRa~Re、およびXで説明されたものと同様である。
【0060】
化合物(I)’の一態様では、Rb’およびRc’の少なくとも一方が、電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。
化合物(I)’の一態様では、Rb’が水素、Rc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。化合物(I)’の別の一態様では、Rb’が水素、Rc’がハロゲン、またはアルキルである。
化合物(I)’の一態様では、Rb’およびRc’が電子吸引性基、または炭素数1~4の炭化水素基である。化合物(I)’の別の一態様では、Rb’およびRc’がハロゲンである。
【0061】
化合物(I)’の好ましい化合物としては、例えば、化合物BZ-15、36、37、38、およ
び40である。
化合物(I)’は、後記実施例を参照し、公知の合成方法により、合成することができる。
【実施例0062】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
1.ベンズブロマロン誘導体を基にした化合物の合成
<方法>
予備的に見出したトランスサイレチンアミロイドーシス治療活性を有するベンズブロマロン骨格を有する化合物をリード化合物とし、誘導体化合物を以下の方法により合成した。
【0064】
【0065】
[ベンゾフラン3の一般合成法]
Ar雰囲気下、サリチルアルデヒド1 (1.00 mmol) のアセトン (5 mL) 溶液に対して、対応する塩素体 (1.20 mmol) および炭酸カリウム (173 mg, 1.25 mmol) を室温下、順次加えた後、加熱還流下20時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去した後、得られた残渣に水 (5 mL) を加えた。その水溶液をジクロロメタン (2 mL × 3)
で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレー
ターを用いて溶媒を留去し、対応する粗ケトン2を得た。得られた粗ケトン2は精製することなく、次の反応に用いた。Ar雰囲気下、粗ケトン2のエチレングリコール (5 mL) 溶液
に対して、ヒドラジン一水和物 (0.19 mL, 4.00 mmol) および水酸化カリウム (168 mg, 3.00 mmol) を室温下、順次加えた後、160℃で3時間撹拌した。放冷後、反応液に水 (3 mL) を加え、ジクロロメタン (2 mL × 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 30 : 1 ~ 15 : 1) に
より精製することで目的とするベンゾフラン3を得た。
Ref: M. F. Wempe, et al. J. Med. Chem., 2011, 54, 2701-2713.
【0066】
[アシル体4の一般合成法]
Ar雰囲気下、ベンゾフラン3 (1.00 mmol (R4=Me以外のとき)) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に対して、4-メトキシベンゾイルクロリド (188 mg, 1.10 mmol) および塩化アル
ミニウム (173 mg, 1.30 mmol)、あるいはベンゾフラン3 (1.00 mmol (R4=Meのとき)) の二硫化炭素 (3 mL) 溶液に対して、4-メトキシベンゾイルクロリド (188 mg, 1.10 mmol)
および塩化スズ (IV) (1M in CH2Cl2, 1.30 mL, 1.30 mmol) を室温下、順次加えた後、室温にて20時間撹拌した。反応終了後、反応液に飽和重曹水 (5 mL) を加え、ジクロロメタン (2 mL × 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロ
ータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 15 : 1 ~ 5 : 1) により精製することで目的とするアシル体4を得た。
Ref: (a) B. Bhushan, et al. Bioorg. Med. Chem., 2018, 26, 2984-2991. (AlCl3) (b)
M. F. Wempe, et al.J. Med. Chem., 2011, 54, 2701-2713. (SnCl4)
【0067】
[フェノール誘導体5の一般合成法]
Ar雰囲気下、アシル体4 (1.00 mmol) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に対して、三臭化ホウ素 (1M in CH2Cl2, 3.00 mL, 3.00 mmol) を氷冷下、加えた後、室温にて20時間撹拌した。反応終了後、反応液に水 (5 mL) を加え、ジクロロメタン (2 mL × 3) で抽出し
た。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン :
酢酸エチル = 10 : 1 ~ 1 : 1) により精製することで目的とするフェノール誘導体5を
得た。
Ref: W. Huang, et al. J. Org. Chem., 2019, 84, 2941-2950.
【0068】
[ジブロモBZ誘導体の一般合成法]
フェノール誘導体5 (1.00 mmol) の酢酸 (1.5 mL) および水 (1.5 mL) から成る混合溶液に対して、臭素 (5滴) を室温下、加えた後、室温にて15時間撹拌した。反応終了後、
反応液をジクロロメタン (2 mL × 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1 ~ 1 : 1) により
精製することで目的とするジブロモBZ誘導体を得た。
Ref: M. F. Wempe, et al. J. Med. Chem., 2011, 54, 2701-2713.
【0069】
[ジヨードBZ誘導体の一般合成法]
Ar雰囲気下、フェノール誘導体5 (1.00 mmol) のエタノール (5 mL) 溶液に対して、炭酸カリウム (415 mg, 3.00 mmol) およびヨウ素 (1.02 g, 4.00 mmol) を室温下、順次加えた後、加熱還流下20時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてエタノールを留去した後、得られた残渣に10% 塩酸 (1 mL) を加え、その水溶液をジクロロメタン (2 mL
× 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエ
バポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1 ~ 1 : 1) により精製することで目的とするジヨ
ードBZ誘導体を得た。
Ref: W. Ou, et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2020, 60, 6357-6361.
【0070】
【0071】
[アシル体7の一般合成法]
Ar雰囲気下、インドール6 (1.00 mmol (X=NH)) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に対し
て、4-メトキシベンゾイルクロリド (188 mg, 1.10 mmol) および塩化アルミニウム (173
mg, 1.30 mmol)、あるいはベンゾチオフェン6 (1.00 mmol (X=S)) の二硫化炭素 (3 mL)
溶液に対して、4-メトキシベンゾイルクロリド (188 mg, 1.10 mmol) および塩化スズ (IV) (1M in CH2Cl2, 1.30 mL, 1.30 mmol) を室温下、順次加えた後、室温にて20時間撹
拌した。反応終了後、反応液に飽和重曹水 (5 mL) を加え、ジクロロメタン (2 mL × 3)
で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレ
ーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 10 : 1 ~ 7 : 1) により精製することで目的とするアシル体7
を得た。
Ref: (a) B. Bhushan, et al. Bioorg. Med. Chem., 2018, 26, 2984-2991. (AlCl3) (b)
M. F. Wempe, et al.J. Med. Chem., 2011, 54, 2701-2713. (SnCl4)
【0072】
[フェノール誘導体8の一般合成法]
Ar雰囲気下、アシル体7 (1.00 mmol) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に対して、三臭化ホウ素 (1M in CH2Cl2, 3.00 mL, 3.00 mmol) を氷冷下、加えた後、室温にて20時間撹拌した。反応終了後、反応液に水 (5 mL) を加え、ジクロロメタン (2 mL × 3) で抽出し
た。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン :
酢酸エチル = 5 : 1 ~ 1 : 1) により精製することで目的とするフェノール誘導体8を得た。
Ref: W. Huang, et al. J. Org. Chem., 2019, 84, 2941-2950.
【0073】
[ジヨードBZ誘導体の一般合成法]
Ar雰囲気下、フェノール誘導体8 (1.00 mmol) のエタノール (5 mL) 溶液に対して、炭酸カリウム (415 mg, 3.00 mmol) およびヨウ素 (1.02 g, 4.00 mmol) を室温下、順次加えた後、加熱還流下20時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてエタノールを留去した後、得られた残渣に10% 塩酸 (1 mL) を加え、その水溶液をジクロロメタン (2 mL
× 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエ
バポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1 ~ 1 : 2) により精製することで目的とするジヨ
ードBZ誘導体を得た。
Ref: W. Ou, et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2020, 60, 6357-6361.
【0074】
<結果>
合成した化合物のNMRスペクトル値を以下に示す。
【0075】
(2-Butylbenzofuran-3-yl)(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)methanone (BZ-01)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.50-7.48 (1H, m), 7.40-7.38 (1H, m), 7.32-7.29 (1H, m), 7.26-7.21 (1H, m), 6.36 (1H, br), 2.89 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.82-1.74 (2H, m), 1.42-1.33 (2H, m), 0.89 (3H, t, J = 7.2 Hz).
【0076】
(2-Butyl-5-chlorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-02)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (2H, s), 7.46 (1H, d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.41 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.27 (1H, dd, J = 9.0, 2.4 Hz), 6.21 (1H, s), 2.82 (2H, t, J =
7.6 Hz), 1.76 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.35 (2H, sext, J = 7.6 Hz), 0.91 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0077】
(2-Butyl-5-chlorobenzofuran-3-yl)(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)methanone (BZ-03)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.46 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.40 (1H, d, J = 7.2 Hz), 7.27 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.18 (1H, br), 2.82 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.75 (2H, quint, J = 7.2 Hz), 1.35 (2H, sext, J = 7.2 Hz), 0.90 (3H, t, J = 7.2 Hz).
【0078】
(2-(Cyclohexylmethyl)benzofuran-3-yl)(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)methanone (BZ-04)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.93 (2H, s), 7.55 (1H, dd, J = 8.0, 1.6 Hz), 7.31 (1H, td, J = 8.0, 1.6 Hz), 7.30 (1H, dd, J = 8.0, 1.6 Hz), 7.25 (1H, td, J = 8.0,
1.6 Hz), 6.20 (1H, s), 2.81 (2H, d, J = 7.2 Hz), 1.84-1.77 (1H, m), 1.68-1.59 (5H, m), 1.28-0.97 (5H, m).
【0079】
(6-Chloro-2-(cyclohexylmethyl)benzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-05)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.51 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.27 (1H, d,
J = 8.4 Hz), 7.21 (1H, dd, J = 8.4, 2.0 Hz), 6.20 (1H, s), 2.77 (2H, d, J = 8.4
Hz), 1.88-1.83 (1H, m), 1.70-1.62 (5H, m), 1.28-0.88 (5H, m).
【0080】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(6-fluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-06)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.18-7.16 (2H, m), 7.08-7.03 (1H, m), 6.36 (1H, s), 2.92 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0081】
(2-Ethyl-6-fluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-07)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.38 (1H, dd, J= 8.4, 5.2 Hz), 7.19 (1H, dd, J= 8.4, 2.4 Hz), 6.99 (1H, td, J= 8.4, 2.4 Hz), 6.25 (1H, s), 2.82 (2H, q
, J = 8.0 Hz), 1.35 (3H, t, J = 8.0 Hz).
【0082】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(6-chloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-08)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.96 (2H, s), 7.52 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.34 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 8.6, 2.0 Hz), 6.35 (1H, br), 2.88 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0083】
(6-Chloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-09)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.51 (1H, d, J= 1.6 Hz), 7.36 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 8.4, 1.6 Hz), 6.20 (1H, s), 2.87 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0084】
(2-Ethyl-6-methylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-10)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.27 (1H, s), 7.25 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.16 (1H, br), 2.85 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.32 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0085】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(2-ethyl-6-methylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-11)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.97 (2H, s), 7.29 (1H, s), 7.24 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz), 7.04 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.38 (1H, br), 2.88 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.34 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0086】
(2-Ethyl-4-fluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-12)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.20 (2H, s), 7.33 (1H, dd, J= 8.4, 0.8 Hz), 7.27 (1H, td, J= 8.4, 5.2 Hz), 6.94 (ddd, J = 8.8, 8.4, 0.8 Hz), 6.20 (1H, br), 2.86 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0087】
(7-Chloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-13)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.17 (2H, s), 7.34 (1H, d, J= 8.8 Hz), 7.32 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.26 (1H, s), 7.18 (1H, t, J= 8.8 Hz), 6.23 (1H, s), 2.85 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0088】
(5-Chloro-2-ethylbenzofurany-3-l)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-14)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.17 (2H, s), 7.48 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.41 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.27 (1H, dd, J = 8.8, 2.0 Hz), 6.23 (1H, s), 2.91 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.39 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0089】
(4-Chloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-15)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.21 (2H, s), 7.43, (1H, dd, J= 7.6, 1.6 Hz), 7.25 (1H, t, J= 7.6 Hz), 7.22 (1H, dd, J = 7.6, 1.6 Hz), 6.24 (1H, br), 2.75 (2H, q, J
= 7.6 Hz), 1.31 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0090】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(4-fluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-16)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99 (2H, s), 7.33 (1H, d, J= 8.0 Hz), 7.30-7.22 (1H, m), 6.94 (1H, dd, J = 10.4, 8.0 Hz), 6.32 (1H, s), 2.87 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0091】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(5-chloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-17)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.96 (2H, s), 7.46 (1H, d, J= 2.4 Hz), 7.42 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.27 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz), 6.37 (1H, br), 2.86 (2H, q, J= 7.6
Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0092】
(2-Ethyl-7-fluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-18)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.18 (2H, s), 7.20 (1H, dd, J= 8.0, 2.0 Hz), 7.16 (1H, td, J= 8.0, 4.4 Hz), 7.05 (1H, ddd, J= 10.8, 8.0, 2.0 Hz), 6.23 (1H, br), 2.90 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0093】
(6-Bromo-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-19)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.67 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.37 (1H, dd,
J = 8.8, 2.0 Hz), 7.30 (1H, d, J = 8.8 Hz), 2.87 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.35 (3H,
t, J = 7.6 Hz).
【0094】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(6-fluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-20)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.18-7.16 (2H, m), 7.08-7.03 (1H, m), 6.36 (1H, s), 2.92 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0095】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(6-bromo-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-21)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.96 (2H, s), 7.68 (1H, d, J= 1.2 Hz), 7.37 (1H, dd,
J = 8.4, 1.2 Hz), 7.29 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.35 (1H, br), 2.88 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0096】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(2-ethyl-5-methylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-22)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.99 (2H, s), 7.36 (1H, d, J= 8.4 Hz), 7.24 (1H, s),
7.11 (1H, d, J= 8.4 Hz), 6.34 (1H, s), 2.85 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.34 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0097】
(2-Ethyl-4,7-difluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-23)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.19 (2H, s), 6.99 (1H, td, J= 9.6, 3.6 Hz), 6.85 (1H, td, J= 9.6, 3.6 Hz), 6.23 (1H, s), 2.87 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0098】
(2-Ethyl-5-methylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-24)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.20 (2H, s), 7.36 (1H, d, J= 8.4 Hz), 7.26 (1H, s),
7.11 (1H, dd, J= 8.4, 1.2 Hz), 6.20 (1H, s), 2.85 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.40 (3H, s), 1.34 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0099】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(2-ethyl-7-methylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-25)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.21 (1H, dd, J= 7.2, 1.2 Hz), 7.14 (1H, t, J= 7.2 Hz), 7.10 (1H, dd, J = 7.2, 1.2 Hz), 6.31 (1H, s), 2.92 (2H, q, J= 7.6 Hz), 2.55 (3H, s), 1.37 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0100】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(5,6-dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-26)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.95 (2H, s), 7.62 (1H, s), 7.59 (1H, s), 6.38 (1H, br), 2.84 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.34 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0101】
(5,6-Dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-27)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.62 (1H, s), 7.61 (1H, s), 6.23 (1H,
s), 2.83 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0102】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(4,5-dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-28)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.41 (1H, d, J= 8.8 Hz), 7.38 (1H, d, J = 8.8 Hz), 6.39 (1H, br), 2.74 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.30 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0103】
(4,5-Dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-29)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.20 (2H, s), 7.41 (1H, d, J= 8.8 Hz), 7.37 (1H, d, J = 8.8 Hz), 6.24 (1H, br), 2.72 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0104】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(4,7-difluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-30)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (2H, s), 7.04 (1H, td, J= 9.6, 3.6 Hz), 6.85 (1H, td, J= 9.6, 3.6 Hz), 6.36 (1H, br), 2.88 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J=
7.6 Hz).
【0105】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(6,7-difluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone (BZ-31)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.96 (2H, s), 7.16-7.05 (2H, m), 6.47 (1H, br), 2.87
(2H, q, J = 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0106】
(2-Ethyl-6,7-difluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-32)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.16-7.07 (2H, m), 6.26 (1H, br), 2.86
(2H, q, J = 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0107】
(3,5-Dibromo-4-hydroxyphenyl)(7-chloro-5-fluoro-2-ethylbenzofuran-3-yl)methanone
(BZ-33)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.95 (2H, s), 7.10 (1H, dd, J= 8.8, 2.8 Hz), 7.07 (1H, dd, J= 8.0, 2.8 Hz), 6.39 (1H, br), 2.89 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0108】
(7-Chloro-2-ethyl-5-fluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-34)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.12-7.07 (2H, m), 2.88 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0109】
(6,7-Dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-35)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.34 (1H, d, J= 8.6 Hz), 7.28 (1H, d, J = 8.6 Hz), 6.22 (1H, s), 2.90 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.39 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0110】
(2-Ethyl-4-methylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-36)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.25 (2H, s), 7.35 (1H, d, J= 8.0 Hz), 7.22 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.03 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.23 (1H, br), 2.65 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.23 (3H, s), 1.28 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0111】
(4-Bromo-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-37)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.21 (2H, s), 7.48 (1H, dd, J= 8.0, 0.8 Hz), 7.40 (1H, d, J= 8.0 Hz), 7.19 (1H, t, J = 8.0 Hz), 2.72 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0112】
(2-Ethyl-4-iodobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-38)
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.23 (2H, s), 7.67 (1H, d, J= 8.0 Hz), 7.51 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.05 (1H, t, J = 8.0 Hz), 2.69 (2H, q, J = 7.5 Hz), 1.28 (3H, t, J = 7.5 Hz).
【0113】
(2-Ethyl-6-iodobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-39)
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.87 (1H, d, J= 1.5 Hz), 7.55 (1H, dd,
J = 8.5, 1.5 Hz), 7.18 (1H, d, J = 8.5 Hz), 2.87 (2H, q, J = 7.5 Hz), 1.35 (3H,
t, J = 7.5 Hz).
【0114】
(4,7-Dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-40)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.20 (2H, s), 7.27 (1H, d, J= 8.4 Hz), 7.17 (1H, d, J = 8.4 Hz), 2.78 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0115】
(5,7-Dichloro-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-41)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.41 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.33, (1H, d,
J = 2.0 Hz), 2.87 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.38 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0116】
(2-Ethyl-5,7-difluorobenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-42)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 6.98 (1H, ddd, J= 8.4, 2.4, 0.8 Hz), 6.86 (1H, ddd, J= 10.8, 9.2, 2.4 Hz), 2.87 (2H, q, J= 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0117】
(5,7-Dibromo-2-ethylbenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-43)
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 8.16 (2H, s), 7.62 (1H, d, J= 2.0 Hz), 7.61 (1H, d, J = 2.0 Hz), 2.87 (2H, q, J = 7.5 Hz), 1.38 (3H, t, J = 7.5 Hz).
【0118】
(5,7-Dichloro-2-ethyl-6-methoxybenzofuran-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-44)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.15 (2H, s), 7.46 (1H, s), 2.83 (2H, q, J = 7.6 Hz), 1.37 (3H, t, J= 7.6 Hz).
【0119】
(2-Ethylbenzo[b]thiophen-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-45)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.18 (2H, s), 7.83-7.81 (1H, m), 7.50-7.48 (1H, m), 7.36-7.29 (2H, m), 2.86 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.32 (3H, t, J = 7.2 Hz).
【0120】
(2-Ethyl-1H-indol-3-yl)(4-hydroxy-3,5-diiodophenyl)methanone (BZ-46)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.50 (1H, br), 8.14 (2H, s), 7.39 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.37 (1H, d, J= 6.8 Hz), 7.21 (1H, td, J = 6.8, 1.2 Hz), 7.13 (1H, td, J = 6.8, 1.2 Hz), 6.10 (1H, s), 3.00 (2H, q, J= 7.2 Hz), 1.36 (3H, t, J = 7.2 Hz).
【0121】
2.ANS競合結合アッセイ
<方法>
TTRに対する強い結合を有する化合物を選択するため、評価化合物についてANS競合結合アッセイを行った。
7.5 μM ANSおよび75 μM ANS存在下で、評価化合物であるベンズブロマロンおよびベ
ンズブロマロン誘導体について、ANS競合結合アッセイを行った。1 μM V30M-TTR、2 μM
評価化合物、50 mM Tris-HCl pH 8.0、150 mM NaClおよびANS (7.5 μM または75 μM)
を含むサンプル溶液を200 μLを96ウェル黒色マイクロプレートに分注し、1 時間常温で
静置した後、マイクロプレートリーダー(TECAN GENios)を用いて蛍光強度を測定した(励起波長360 nm、放射波長465 nm)。
【0122】
<結果>
結果を
図1および2に示す。ベンズブロマロンおよび複数のベンズブロマロン誘導体がTTRに対して結合活性を有し、特にベンズブロマロンおよび複数のベンズブロマロン誘導
体がタファミディスよりも高い結合活性を有することが示された。
【0123】
3.ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のアミロイド阻害活性の評価
<方法>
4 μMおよび10 μMの化合物存在下で、V30M-TTRに対する酸仲介凝集によりアミロイド
阻害活性を測定した。200 μL のサンプル(0.5 mg/mL V30M-TTR、4 μM または 10 μM ベンズブロマロンまたはベンズブロマロン誘導体および95 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5.2)をPCRチューブに作成した。サンプルは37℃で1週間静置した後、透明の96ウェルマ
イクロプレートに分取し、マイクロプレートリーダー(FilterMAX F5)を用いて 405 nm の吸光度を測定することによって凝集を定量した。V30M-TTRおよび化合物を含まないサンプルを100%対照実験とし、化合物を含まないサンプルを0%対照実験として阻害率を算出した。
【0124】
<結果>
結果を
図3および4に示す。ベンズブロマロンおよび複数のベンズブロマロン誘導体がアミロイド阻害活性を有し、特にベンズブロマロンおよび複数のベンズブロマロン誘導体がタファミディスよりも高いアミロイド阻害活性を有することが示された。
【0125】
4.熱力学的パラメーターの評価結果
<方法>
ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体のV30M変異-TTRに対する相互作用における熱力学的パラメーターを、ITCにより評価した。ITCはマイクロカロリーメーター(MicroCal iTC200)を用いて、セルに配置した化合物溶液にシリンジ内のタンパク質溶液を滴
定することで反応熱を検出した。化合物溶液とタンパク質溶液の成分を揃えるために、V30M-TTR溶液をリン酸ナトリウム緩衝液 (50 mM リン酸ナトリウム pH 7.5、50 mM NaCl、0.6% DMSO)で希釈、濃縮を繰り返すことによって緩衝液交換を行い、300 μM 濃度のV30M-TTRになるように調製した。化合物濃度は60 μM とし50 mM リン酸ナトリウム pH 7.5、50 mM NaClを含むように調製した。測定温度は25℃であった。サーモグラムピークをNITPICによって積分し、SEDPHATによってsingle binding-site modelにフィッティングするこ
とで解離定数および熱力学的パラメーターを得た。
【0126】
<結果>
結果を
図5に示す。ベンズブロマロンおよび複数のベンズブロマロン誘導体が、TTRに
対し、タファミディスよりも低いKd値を有することが示された。
【0127】
5.蛍光プローブを用いた競合結合アッセイ
<方法>
蛍光プローブとして、自身では蛍光性はないが、TTRのチロキシン結合サイトに結合す
るとリシン15(K15)を共有結合修飾し、蛍光性複合体を形成するプローブを用いた(
構造を
図6に示す)。
TTRのチロキシン結合サイトに結合するリガンドは、蛍光の減少により観察される蛍光
プローブの結合を低減させる。
化合物の濃度が2 mMになるようにDMSOに溶解し、この化合物溶液を5 μLとり、490 μLのヒト血清(Sigma, catalogue no. H4522; human male AB plasma, USA origin, sterile-filtered; TTR concentration: 5 μM)に加えた。蛍光プローブの濃度が0.36 mMとな
るようにDMSOに溶解し、この蛍光プローブ溶液5 μLをヒト血清と化合物の混合溶液495
μLに加えた。励起波長328 nm、蛍光波長384 nmで蛍光強度を室温で6時間測定した。
【0128】
<結果>
結果を
図6に示す。BZIおよびBZ-36は、タファミディスに比べ、蛍光の減少が観察され、TTRへより強く結合することが示された。
【0129】
6.ヒト血漿中のTTRに対する結合力の評価
<方法>
評価化合物非存在(DMSO)および存在(20 μM)下、6時間インキュベーションにおけ
る、前記プローブの蛍光強度を測定した。蛍光プローブは、ヒト血漿中のTTRのリシン1
5に共有結合修飾する。
【0130】
<結果>
結果を
図7に示す。20 μMのtafamidis存在下では蛍光強度がネガティブコントロール
(DMSO)の50%程度に低下し、過去の研究の結果と一致した(Millet et al., 2018)。20
μMのBZ-15, BZ-36, BZ-37, BZ-38, BZ-40が存在するときの蛍光強度はtafamidisが存在するときの蛍光強度よりも低く、この結果からBZ-15, BZ-36, BZ-37, BZ-38, BZ-40の血
清中TTRに対する結合がtafamidisよりも明らかに強いことが示された。
Miller M, Pal A, Albusairi W, Joo H, Pappas B, Haque Tuhin MT, Liang D, Jampala R, Liu F, Khan J, Faaij M, Park M, Chan W, Graef I, Zamboni R, Kumar N, Fox J,
Sinha U, Alhamadsheh M. Enthalpy-driven stabilization of transthyretin by AG10 mimics a naturally occurring genetic variant that protects from transthyretin amyloidosis. J Med Chem. 2018, 61, 7862-7876.
【0131】
7.ベンズブロマロン誘導体のin vivo薬物動態試験
<方法>
ivおよびpo投与によるベンズブロマロン誘導体のin vivo薬物動態(ラット血漿中濃度
推移)、およびpo投与によるベンズブロマロン誘導体のin vivo薬物動態(ラット血漿・
眼球・脳内濃度推移)を試験した。
具体的な実験条件および方法は、以下のとおりである。
・化合物:タファミディス、BZ-15、36、37、38、40のカセット投与
・動物:SDラット7週齢、オス、非絶食
・投与経路:単回、静脈内(iv)および経口投与(po)
・投与量:0.1 mg/kg(0.02 mg/mL, pH 8.5 0.1 Mリン酸緩衝液)
・採血時点:5(ivのみ)、15, 30 min, 1, 2, 4, 8 h
・採材組織および採材時点:脳、眼球、最終採血時点
・n数:各投与ルート、n=2、計4匹
【0132】
<結果>
結果を
図8および9に示す。In vivo薬物動態試験の結果、タファミディスの全身クリ
アランスが最も小さく、経口投与後の血漿中濃度の持続も長いことが判明した。なお、BZ
-15、37の経口投与では、タファミディスと同程度の血漿中濃度の持続が確認された。一
方、血漿中濃度推移を比較すると、BZ-15、36、37、38は、バイオアベイラビリティーが
タファミディスと同程度であり、眼球および脳内移行性もタファミディスと同程度であった。
【0133】
以上の結果より、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体は、トランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する薬剤として使用できることが知見された。一態様では、タファミディスよりも強くトランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する。また、一態様では、ベンズブロマロンおよびベンズブロマロン誘導体は、血漿中で選択的にトランスサイレチンに結合するため、有効なトランスサイレチンアミロイドーシス治療用医薬組成物として用いられる。
【0134】
すなわち、本発明により、トランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する薬剤を提供できる。一態様では、タファミディスよりも強くトランスサイレチンに結合し、アミロイド線維の形成を阻害する、より治療効果の高い薬剤を提供できると考えられる。また、一態様では、血漿タンパク質であるトランスサイレチンに、血漿中で選択的に結合する薬剤を提供できると考えられる。