(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164032
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】分注装置および脱離プレート
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075328
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕之
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED20
2G058ED36
(57)【要約】
【課題】ユーザビリティを向上し、確実にチップを離脱させることが可能な分注装置および脱離フレームを提供する。
【解決手段】分注装置100は、複数のシリンジ20、脱離フレーム10およびチップ取付領域を含む。複数のシリンジ20は、下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される。脱離フレーム10は、複数のシリンジ20が挿通される貫通孔が形成された板状を有し、複数のシリンジ20に対して相対的に昇降可能に設けられる。脱離フレーム10は、下面に当該脱離フレーム10に対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、第1の領域と第2の領域とが第1の方向に交互に並ぶ。チップ取付領域では、貫通孔を通して脱離フレーム10よりも下方に突出する複数のシリンジ20の各々の下端部にチップ1が取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジと、
前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、前記複数のシリンジに対して相対的に昇降可能に設けられる脱離フレームと、
前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域とを備え、
前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並ぶ、分注装置。
【請求項2】
前記脱離フレームを前記複数のシリンジに対して相対的に下方に移動させるアクチュエータをさらに備える、請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記複数のシリンジの各々はプランジャを含み、
前記アクチュエータは、さらに前記プランジャを対応するシリンジに対して相対的に昇降させる、請求項2記載の分注装置。
【請求項4】
前記脱離フレームは、前記複数のシリンジに対して相対的に上方に付勢される、請求項3記載の分注装置。
【請求項5】
前記脱離フレームは、前記下面に前記第1の方向に並び、かつ互いに異なる高さ位置にある合計3以上の前記第1の領域および前記第2の領域を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の分注装置。
【請求項6】
前記複数のシリンジは、前記第1の方向と、前記上下方向および前記第1の方向に交差する第2の方向とに配列され、
前記脱離フレームは、前記第2の方向に並ぶ複数の前記貫通孔を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の分注装置。
【請求項7】
下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジを含む分注装置に用いられる脱離フレームであって、
前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、
前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域が配置され、
前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並ぶ、脱離フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置および脱離プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
所定のプレートから試料を吸引して別のプレートに吐出する装置として、分注装置が知られている。例えば、特許文献1には、分注ヘッドを有する高速自動分注装置が記載されている。分注ヘッドは、複数のピペットおよび脱離板を備える。各ピペットの先端には、使い捨てのチップが装着される。
【0003】
各チップがマザープレートに設けられた液体に浸漬するよう挿入された状態で、チップ内に液体が吸引される。次に、各チップがディスペンスプレートの試験管内に挿入され、チップ内の液材が試験管に排出される。その後、チップ廃棄位置の上方で、チップ脱離板が下降されることにより、各ピペットからチップが脱離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分注装置は、ピペットの数よりも多い分注位置に試料を分注することが可能である。例えば、特許文献1には、8行12列に配列された96のピペットを用いて、ディスペンスプレートにおいて16行24列に配列された384の試験管に試料を分注することが記載されている。しかしながら、複数のピペットを用いて、ピペットの数よりも少ない試験管に試料を分注することはできない。そのため、分注装置のユーザビリティが低下する。
【0006】
また、分注装置に接続されているチップの本数が多いと、チップを取り外す際に大きな力が必要になる。そのため、トルクを大きくする機構が必要となる。また、トルクが不足する場合、チップが外せない事態が発生する。
【0007】
本発明の目的は、ユーザビリティを向上し、確実にチップを離脱させることが可能な分注装置および脱離フレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジと、前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、前記複数のシリンジに対して相対的に昇降可能に設けられる脱離フレームと、前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域とを備え、前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並ぶ、分注装置に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジを含む分注装置に用いられる脱離フレームであって、前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域が配置され、前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並ぶ、脱離フレームに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分注装置のユーザビリティを向上し、確実にチップを離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る分注装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図1の脱離フレームの構成を示す平面図である。
【
図7】脱離フレームによるチップの脱離動作を説明するための図である。
【
図8】脱離フレームによるチップの脱離動作を説明するための図である。
【
図9】脱離フレームによるチップの脱離動作を説明するための図である。
【
図10】第1の変形例に係る脱離フレームの構成を示す平面図である。
【
図11】第2の変形例に係る脱離フレームの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)分注装置
以下、本発明の実施の形態に係る分注装置および脱離プレートについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る分注装置の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の分注装置100を示す側面図である。
図1および
図2に示すように、分注装置100は、脱離フレーム10、複数のシリンジ20、保持部30、複数(本例では4個)のロッド40および駆動部50を備える。
図2においては、駆動部50の図示が省略されている。また、
図2においては、視認を容易にするため、複数のロッド40にハッチングパターンが付されている。後述する
図8においても同様である。
【0013】
本例では、96個のシリンジ20が、下方を向く状態で、8行12列に配列される。各シリンジ20は、バレル21、プランジャ22およびノズル23を含む。バレル21は、円筒形状を有する。バレル21の内部には、図示しないピストンが設けられる。プランジャ22は、棒状を有し、バレル21の上部からバレル21の内部に挿通される。プランジャ22の下端部は、ピストンに連結される。ノズル23は、円筒形状を有し、バレル21の下部に取り付けられる。
【0014】
保持部30は、固定プレート31,32および可動プレート33,34を含む。固定プレート31,32は、上下方向に並ぶように図示しない基台に固定され、各シリンジ20のバレル21の下部および上部をそれぞれ保持する。可動プレート33,34は、各シリンジ20のプランジャ22を昇降可能に保持する。可動プレート34は、可動プレート33の上方に配置される。
【0015】
脱離フレーム10は、矩形板形状を有する。脱離フレーム10には、複数の貫通孔が形成される。脱離フレーム10の詳細については後述する。脱離フレーム10は、固定プレート31の下方において、図示しない複数のバネ部材により上方に付勢される状態で固定プレート31に接続される。各シリンジ20のノズル23は、脱離フレーム10の貫通孔に挿通される。脱離フレーム10の下方にチップ取付領域が設けられる。チップ取付領域において、脱離フレーム10から下方に突出する各ノズル23の下端部には、使い捨てのチップ1が取り付けられる。
【0016】
4個のロッド40は、脱離フレーム10における四隅の近傍からそれぞれ上方に延び、固定プレート31,32および可動プレート33を貫通する。各ロッド40の上端部は、可動プレート33よりも上方に突出する。通常状態においては、各ロッド40の上端部と可動プレート34の下面とは所定距離だけ離間する。
【0017】
駆動部50は、アクチュエータ51、移動部52および連結アーム53を含む。アクチュエータ51は、例えばステッピングモータであり、回転軸を有する。
図1には、アクチュエータ51の回転軸のみが図示されている。アクチュエータ51は、回転軸が下方に延びる状態で、図示しない基台に固定される。移動部52は、直動ボールねじ部を含み、アクチュエータ51の回転軸に取り付けられる。連結アーム53は、移動部52と、可動プレート34の上面とを連結する。
【0018】
アクチュエータ51の回転軸が回転することにより、移動部52が回転軸に沿って上下方向に移動する。この場合、連結アーム53および可動プレート34を介して、各シリンジ20のプランジャ22が上下方向に移動する。これにより、各バレル21の内部でピストンが上下方向に摺動する。ピストンが上方に摺動した場合、対応するチップ1内に試料が吸引される。ピストンが下方に摺動した場合、対応するチップ1内に吸引された試料が吐出される。
【0019】
(2)脱離フレーム
図3は、
図1の脱離フレーム10の構成を示す平面図である。
図4は、
図3の脱離フレーム10の斜視図である。
図3および
図4に示すように、脱離フレーム10は、矩形板形状を有する。平面視において、脱離フレーム10の一対の辺が延びる方向をD1方向と呼び、脱離フレーム10の他の一対の辺が延びる方向をD2方向と呼ぶ。
【0020】
脱離フレーム10には、D1方向に延びる複数(本例では8個)の貫通孔11が形成される。複数の貫通孔11は、等間隔でD2方向に並ぶように配列される。D2方向における貫通孔11の幅は、
図1のノズル23の外径よりも大きく、チップ1の外径よりも小さい。各貫通孔11には、D1方向に並ぶ複数(
図1の例では12個)のシリンジ20のノズル23が上方から挿通される。
【0021】
図5は、
図3の脱離フレーム10の側面図である。
図5に示すように、脱離フレーム10の下面12は、D1方向にこの順で並ぶ複数(本例では12個)の領域12A~12Lに区画される。複数の領域12A~12Lは、D1方向に並ぶ複数のシリンジ20にそれぞれ対応する。領域12A,12C,12E,12G,12I,12Kは、脱離フレーム10に対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある。一方、領域12B,12D,12F,12H,12J,12Lは、高さしきい値よりも高い位置にある。
【0022】
このように、脱離フレーム10の下面12においては、高さしきい値よりも低い位置にある領域12A,12C,12E,12G,12I,12Kと、高さしきい値よりも高い位置にある領域12B,12D,12F,12H,12J,12Lとが、D1方向に交互に並ぶ。本例では、領域12A~12Fの高さ位置は互いに異なり、領域12G~12Lの高さ位置は互いに異なる。また、領域12G~12Lの高さ位置は、領域12A~12Fの高さ位置とそれぞれ同じである。以下、領域12A~12Fの高さ位置について説明する。
【0023】
図6は、
図5の脱離フレーム10の部分拡大図である。
図6に示すように、領域12A~12Fは、脱離フレーム10に対して定められた所定の基準位置(本例では脱離フレーム10の上面13)に対してそれぞれ高さ位置H1~H6にある。ここで、高さ位置H6,H4,H2,H5,H3,H1は、この順で上方に位置する。高さしきい値Htは、高さ位置H2と高さ位置H5との間に定められる。なお、基準位置は、脱離フレーム10の上面13に限定されない。また、脱離フレーム10の上面13の形状は平面に限定されない。
【0024】
(3)チップの脱離動作
図7~
図9は、脱離フレーム10によるチップ1の脱離動作を説明するための図である。
図1および
図2のように、各ロッド40の上端部と可動プレート34の下面とが離間する範囲で、アクチュエータ51の回転軸が回転されることにより、試料の吸引動作または吐出動作が行われる。
【0025】
また、
図7および
図8に示すように、アクチュエータ51の回転軸が一方向に一定角度以上回転されると、可動プレート34が比較的大きく下方に移動し、各ロッド40の上端部と可動プレート34の下面とが接触する。この状態で、アクチュエータ51の回転軸が一方向にさらに回転されると、各ロッド40とともに脱離フレーム10が複数のシリンジ20に対して下方に移動する。
【0026】
ここで、
図9に示すように、D1方向に順に並ぶ複数のシリンジ20をそれぞれシリンジ20A~20Lと呼ぶ。また、シリンジ20A~20Lのノズル23にそれぞれ取り付けられた複数のチップ1をそれぞれチップ1A~1Lと呼ぶ。脱離フレーム10が下方に移動することにより、最も下方に位置する脱離フレーム10の下面12の領域12A,12Gが、最初にチップ1A,1Gの上端面に接触する。この状態で、脱離フレーム10がさらに下方に移動することにより、シリンジ20A,20Gからチップ1A,1Gがそれぞれ取り外される。
【0027】
脱離フレーム10がさらに下方に移動することにより、2番目に下方に位置する脱離フレーム10の下面12の領域12C,12Iが、次にチップ1C,1Iの上端面に接触する。この状態で、脱離フレーム10がさらに下方に移動することにより、シリンジ20C,20Iからチップ1C,1Iがそれぞれ取り外される。同様に、脱離フレーム10がさらに下方に移動すると、シリンジ20E,20Kからチップ1E,1Kがそれぞれ取り外される。
【0028】
また、脱離フレーム10がさらに下方に移動すると、シリンジ20B,20Hからチップ1B,1Hがそれぞれ取り外される。脱離フレーム10がさらに下方に移動すると、シリンジ20D,20Jからチップ1D,1Jがそれぞれ取り外される。脱離フレーム10がさらに下方に移動すると、シリンジ20F,20Lからチップ1F,1Lがそれぞれ取り外される。
【0029】
したがって、チップ1の使用後、上記のチップ1の脱離動作が実行されることにより、D1方向に並ぶ全部のシリンジ20からチップ1が順番に取り外される。これにより、全部のチップ1を同時に取り外す場合と比較して、小さな力でチップ1の全部を取り外すことが可能である。また、チップ1が取り外された後、アクチュエータ51の回転軸が逆方向に回転されることにより、可動プレート33,34が上方に移動する。また、脱離フレーム10は、図示しない複数のバネ部材により上方に移動する。これにより、分注装置100が通常状態に戻る。
【0030】
また、本実施の形態においては、シリンジ20E,20Kからチップ1E,1Kがそれぞれ取り外された時点で、チップ1の脱離動作を終了することが可能である。この場合、6個のシリンジ20A,20C,20E,20G,20I,20Kからチップ1A,1C,1E,1G,1I,1Kがそれぞれ取り外される。一方、6個のシリンジ20B,20D,20F,20H,20J,20Lに取り付けられたチップ1B,1D,1F,1H,1J,1Lは残存する。チップ1が除去された6個のシリンジ20は、試料の吸引動作および吐出動作には用いられない。
【0031】
上記の状態においては、チップ1が残存しかつ等間隔に並んだ6個のシリンジ20により、6個の試験管、試料瓶またはウェル等の分注位置にそれぞれ分注が行われる。すなわち、シリンジ20の数よりも少ない分注位置に分注することが可能になる。例えば、D1方向に並ぶ6個のシリンジ20をD2方向に相対的にかつ離散的に3回移動させることにより、3行6列に配列されたウェルに分注を行うことができる。この場合でも、チップ1の使用後、チップ1の脱離動作が行われることにより、シリンジ20B,20D,20F,20H,20J,20Lからチップ1B,1D,1F,1H,1J,1Lがそれぞれ取り外される。
【0032】
なお、各シリンジ20からチップ1が取り外された後、各シリンジ20に新しいチップ1が取り付けられる。チップ1の取り付け動作においては、交換用の新しい複数のチップ1を収容するラックが準備される。ラックにおいては、例えば、96個のチップ1が8行12列に配列される。ラックが複数のシリンジ20の下方に配置された状態で、図示しないアクチュエータによりシリンジ20が下方に移動されることにより、ラックに収容された複数のチップ1が複数のシリンジ20のノズル23の下端部にそれぞれ取り付けられる。
【0033】
(4)変形例
本実施の形態において、脱離フレーム10には、D1方向に延びる複数(本例では8個)の貫通孔11が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。
図10は、第1の変形例に係る脱離フレーム10の構成を示す平面図である。
図10に示すように、脱離フレーム10には、D1方向およびD2方向に配列された複数の貫通孔11が形成されてもよい。
図10の例では、8行12列に配列された96個の円形状を有する貫通孔11が脱離フレーム10に形成される。複数の貫通孔11は、複数のシリンジ20にそれぞれ対応する。
【0034】
また、本実施の形態において、脱離フレーム10の領域12A~12Fの高さ位置は互いに異なり、領域12G~12Lの高さ位置は互いに異なるが、実施の形態はこれに限定されない。
図11は、第2の変形例に係る脱離フレーム10の部分拡大図である。
図11に示すように、本例に係る脱離フレーム10においては、領域12A,12C,12E,12G,12I,12Kは同じ高さ位置にあり、領域12B,12D,12F,12H,12J,12Lは同じ高さ位置にある。
【0035】
図11の例では、領域12A,12C,12Eは高さ位置H1にあり、領域12B,12D,12Fは高さ位置H1よりも上方の高さ位置H2にある。なお、領域12G~12Lの高さ位置は、領域12A~12Fの高さ位置とそれぞれ同じである。高さしきい値Htは、高さ位置H1と高さ位置H2との間に定められる。
【0036】
(5)効果
本実施の形態に係る分注装置100においては、脱離フレーム10が複数のシリンジ20に対して十分に下降されることにより、複数のシリンジ20の各々の下端部に取り付けられたチップ1が取り外される。一方、脱離フレーム10が複数のシリンジ20に対して所定距離だけ下降されることにより、一部のシリンジ20の下端部に取り付けられたチップ1が取り外される。
【0037】
他のシリンジ20の下端部に取り付けられたチップ1は、取り外されずに残存する。また、チップ1が残存するシリンジ20は、規則的に整列している。そのため、チップ1が残存するシリンジ20を用いて、分注装置100に設けられたシリンジ20の数よりも少ない分注位置に分注することが可能になる。これにより、分注装置100のユーザビリティを向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、シリンジ20の駆動と、チップ1の取り外しとが共通のアクチュエータ51により行われる。これにより、分注装置100を小型化することができる。また、分注装置100のコストを低減させることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態においては、脱離フレーム10の下面12の領域12A~12Fは互いに異なる高さ位置にあり、領域12G~12Lは互いに異なる高さ位置にある。この場合、複数のシリンジ20からのチップ1の取り外しが段階的に行われるので、各シリンジ20からチップ1を取り外す際に、脱離フレーム10に大きい力を加える必要がない。したがって、より小型のアクチュエータ51により脱離フレーム10を駆動することが可能になる。これにより、分注装置100を小型化するとともに、脱離フレーム10のコストを低減させることができる。
【0040】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、脱離フレーム10にはD2方向に並ぶように複数の貫通孔11が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。脱離フレーム10には、D1方向に延びる1個の貫通孔11が形成されてもよい。あるいは、脱離フレーム10には、D1方向に配列された複数(例えば12個)の貫通孔11が形成されてもよい。
【0041】
(b)上記実施の形態において、各ロッド40は脱離フレーム10から上方に延びるように設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。各ロッド40は、可動プレート34から下方に延びるように設けられてもよい。この場合、通常状態においては、各ロッド40の下端部と脱離フレーム10の上面13とは所定距離だけ離間する。
【0042】
(c)上記実施の形態において、シリンジ20の駆動とチップ1の取り外しとが共通のアクチュエータ51により行われるが、実施の形態はこれに限定されない。シリンジ20の駆動とチップ1の取り外しとは、別個のアクチュエータにより行われてもよい。この場合、分注装置100にはロッド40が設けられなくてもよく、脱離フレーム10が上方に付勢されなくてもよい。
【0043】
(d)上記実施の形態において、分注装置100は脱離フレーム10を下方に移動させるアクチュエータ51を含むが、実施の形態はこれに限定されない。脱離フレーム10が手動で下方に移動される場合には、分注装置100はアクチュエータ51を含まなくてもよい。
【0044】
(e)上記実施の形態において、脱離フレーム10が複数のシリンジ20に対して下方に移動されるが、実施の形態はこれに限定されない。脱離フレーム10は、複数のシリンジ20に対して相対的に下方に移動されればよい。したがって、複数のシリンジ20が脱離フレーム10に対して上方に移動されてもよい。
【0045】
(f)上記実施の形態において、96個のシリンジ20が8行12列に配列されるが、実施の形態はこれに限定されない。シリンジ20が複数である限り、任意の数のシリンジ20が任意に配列されてもよい。また、脱離フレーム10に設けられる貫通孔11および下面12の領域の数および配置は、シリンジ20の配列に対応して変更されてもよい。
【0046】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0047】
(第1項)一態様に係る分注装置は、
下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジと、
前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、前記複数のシリンジに対して相対的に昇降可能に設けられる脱離フレームと、
前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域とを備え、
前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並んでもよい。
【0048】
この分注装置においては、脱離フレームが複数のシリンジに対して相対的に十分に下降されることにより、複数のシリンジの各々の下端部に取り付けられたチップが取り外される。一方、脱離フレームが複数のシリンジに対して相対的に所定距離だけ下降されることにより、一部のシリンジの下端部に取り付けられたチップが取り外される。
【0049】
他のシリンジの下端部に取り付けられたチップは、取り外されずに残存する。また、チップが残存するシリンジは、規則的に整列している。そのため、チップが残存するシリンジを用いて、分注装置に設けられたシリンジの数よりも少ない分注位置に分注することが可能になる。これにより、分注装置のユーザビリティを向上させることができる。
【0050】
また、複数のシリンジからのチップの取り外しが段階的に行われる。そのため、各シリンジからチップを取り外す際に、脱離フレームに大きい力を加える必要がない。これにより、シリンジからチップをより確実に取り外すことができる。
【0051】
(第2項)第1項に記載の分注装置は、
前記脱離フレームを前記複数のシリンジに対して相対的に下方に移動させるアクチュエータをさらに備えてもよい。
【0052】
この場合、アクチュエータを駆動することにより、シリンジからチップを容易に取り外すことができる。
【0053】
(第3項)第2項に記載の分注装置において、
前記複数のシリンジの各々はプランジャを含み、
前記アクチュエータは、さらに前記プランジャを対応するシリンジに対して相対的に昇降させてもよい。
【0054】
この場合、シリンジの駆動と、チップの取り外しとが共通のアクチュエータにより行われる。これにより、分注装置を小型化することができる。また、分注装置のコストを低減させることができる。
【0055】
(第4項)第3項に記載の分注装置において、
前記脱離フレームは、前記複数のシリンジに対して相対的に上方に付勢されてもよい。
【0056】
この場合、簡単な構成で、シリンジの駆動と、チップの取り外しとを共通のアクチュエータにより行うことができる。
【0057】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の分注装置において、
前記脱離フレームは、前記下面に前記第1の方向に並び、かつ互いに異なる高さ位置にある合計3以上の前記第1の領域および前記第2の領域を有してもよい。
【0058】
この場合、複数のシリンジからのチップの取り外しがより多段階的に行われる。これにより、シリンジからチップをより容易に取り外すことができる。
【0059】
(第6項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の分注装置において、
前記複数のシリンジは、前記第1の方向と、前記上下方向および前記第1の方向に交差する第2の方向とに配列され、
前記脱離フレームは、前記第2の方向に並ぶ複数の前記貫通孔を有してもよい。
【0060】
この構成によれば、複数のシリンジが第1の方向および第2の方向に配列される場合でも、一部または全部のシリンジの下端部に取り付けられたチップを取り外すことができる。また、一部のシリンジの下端部に取り付けられたチップを取り外すことにより、分注装置に設けられたシリンジの数よりも少ない分注位置に分注することができる。
【0061】
(第7項)他の態様に係る脱離フレームは、
下方を向く状態で、上下方向に交差する第1の方向に配列される複数のシリンジを含む分注装置に用いられる脱離フレームであって、
前記複数のシリンジが挿通される貫通孔が形成された板状を有し、
前記貫通孔を通して前記脱離フレームよりも下方に突出する前記複数のシリンジの各々の下端部にチップが取り付け可能なチップ取付領域が配置され、
前記脱離フレームは、下面に当該脱離フレームに対して定められた所定の高さしきい値よりも低い位置にある第1の領域と、前記高さしきい値よりも高い位置にある第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域とが前記第1の方向に交互に並んでもよい。
【0062】
この脱離フレームが下降されることにより、一部または全部のシリンジの下端部に取り付けられたチップを取り外すことができる。また、一部のシリンジの下端部に取り付けられたチップを取り外すことにより、分注装置に設けられたシリンジの数よりも少ない分注位置に分注することができる。これにより、分注装置のユーザビリティを向上させることができる。
【0063】
また、複数のシリンジからのチップの取り外しが段階的に行われる。そのため、各シリンジからチップを取り外す際に、脱離フレームに大きい力を加える必要がない。これにより、シリンジからチップをより確実に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A~1L…チップ,10…脱離フレーム,11…貫通孔,12…下面,12A~12L…領域,13…上面,20,20A~20L…シリンジ,21…バレル,22…プランジャ,23…ノズル,30…保持部,31,32…固定プレート,33,34…可動プレート,40…ロッド,50…駆動部,51…アクチュエータ,52…移動部,53…連結アーム,100…分注装置