(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164034
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20231102BHJP
H01Q 1/20 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q1/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075331
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田口 淳
(72)【発明者】
【氏名】門間 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 久
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一成
(72)【発明者】
【氏名】岸上 良文
(72)【発明者】
【氏名】若原 忍
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 剛司
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA07
5J047AA14
5J047AA19
5J047EF04
5J047EF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所要時間の増加やコストアップ、重量アップを招くことなく、アンテナ素子がケース(筐体)にぶつかり発生する異音を低減することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】1または2以上のアンテナ素子11A、11Bと、アンテナ素子が内面に接合された状態で装着される壁体22を有する筐体20と、一方の面にアンテナ素子の脚部が接続されることでアンテナ素子が実装されるプリント基板とを備え、筐体20の内側にプリント基板が収納されてなるアンテナ装置において、筐体の壁体の内面には、所定の間隔をおいてアンテナ素子を筐体の壁体との間に挟み込む複数の押え片23a~23hが形成される。複数の押え片は、筐体が振動した際の壁体のたわみ量とアンテナ素子のたわみ量との差が所定値(例えば0.01mm)以下になるように、各々のサイズと相互間の間隔を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上のアンテナ素子と、前記アンテナ素子が内面に接合された状態で装着される壁体を有する筐体と、一方の面に前記アンテナ素子の脚部が接続されることで当該アンテナ素子が実装されるプリント基板と、を備え、前記筐体の内側に前記プリント基板が収納されてなるアンテナ装置であって、
前記筐体の壁体の内面には、所定の間隔をおいて前記アンテナ素子を当該筐体の壁体との間に挟み込む複数の押え片が形成され、
前記複数の押え片は、前記筐体が振動した際の前記壁体のたわみ量とアンテナ素子のたわみ量との差が所定値以下になるように、各々のサイズと相互間の間隔とが設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ素子には前記押え片が挿通可能な開口が形成され、前記複数の押え片のいずれかが前記開口の縁部を前記壁体との間に挟み込むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
1つの前記アンテナ素子に対応して設けられる前記複数の押え片は、同一の方向を向くように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記プリント基板の前記一方の面と反対側の面に対向するように設けられ当該プリント基板と所定の間隔をおいて離間され接地電位が印加されるグランド基板を備え、
前記グランド基板が前記筐体の開口側に複数個のネジによって結合されることで、前記筐体の内側に前記プリント基板が収納されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記プリント基板の前記グランド基板と対向する面の接地点となる位置には、導電性の板バネからなるバネ接点の一方の端部が接続され、当該バネ接点の他端が前記グランド基板の対向する部位に接続されていることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記所定値は0.01mmであることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上に実装されたアンテナ素子を備えたアンテナ装置に関し、例えば車両搭載用のアンテナ装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて所定の周波数帯の無線通信信号を送受信するアンテナ装置は小型であることが要望されるため、アンプやフィルタなどの電子部品が実装されたプリント基板あるいは地板上にアンテナ素子(アンテナエレメント)を実装したデバイスが実用化されている。一方、近年、自動車の分野においては、ハイブリッド化、電気自動車化によりエンジン音が静かな車が増えてきていることから、快適な車内空間を維持するためには製品から発生する異音対策は急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、車載用のアンテナ装置においては、アンテナ素子を主に両面テープあるいはネジ留めといった固定用部品を用いた方法でケースに固定していた。一方、固定用部品を用いない方法としては、接着剤による固着や熱溶着といった方法もあるが、いずれの方法であっても周囲の温度環境による収縮/膨張の影響や部品の精度、振動による部品のたわみ等の観点からアンテナ素子に消音テープを貼りつけるなどの消音対策をした上で、上記手法によりアンテナ素子をケースに固定していた。
【0005】
また、接着剤や熱溶着による固定方法では、作業後に硬化時間や冷却時間を確保する必要があるため、製品完成までの所要時間が長くなる。さらに、接着剤の場合には環境変化により接着力が劣化するという課題が、また熱溶着など熱を利用した固定方法は、熱硬化性樹脂製のケースには使用できないため、材料の選択肢が狭くなるという課題があった。
一方、振動による部品のたわみに起因した、部品同士がぶつかり発生する異音に対する対策としては、部品そもそもの剛性を上げるため剛性の高い材質に変更をしたり、部品を厚くしたりするなどの対策を施す場合もあるが、その場合には、部品コストの上昇、製品重量の増加といった課題がある。
【0006】
なお、両面テープによりアンテナ素子を固定する方法における経年変化による粘着力の低下を回避するための考案として特許文献1に記載されているものがある。特許文献1の考案は、矩形状をなすアンテナ素子の側面に接触する4つの支持部(支持片)を給電用基板に設けて、アンテナ素子を外側から弾性力で固定支持するように構成したものである。この考案によれば、アンテナ素子の横方向への振動は抑制できるものの、4つの支持部のみでは上下方向への振動を抑制するのは困難であり、アンテナ素子が給電用基板にぶつかって異音が発生するのを充分に防止することができない。
【0007】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、製品完成までの所要時間の増加やコストアップ、重量アップを招くことなく、アンテナ素子がケース(筐体)にぶつかり発生する異音を低減することができるアンテナ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ケース材料の選択肢を広げることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
1または2以上のアンテナ素子と、前記アンテナ素子が内面に接合された状態で装着される壁体を有する筐体と、一方の面に前記アンテナ素子の脚部が接続されることで当該アンテナ素子が実装されるプリント基板と、を備え、前記筐体の内側に前記プリント基板が収納されてなるアンテナ装置において、
前記筐体の壁体の内面には、所定の間隔をおいて前記アンテナ素子を当該筐体の壁体との間に挟み込む複数の押え片が形成され、
前記複数の押え片は、前記筐体が振動した際の前記壁体のたわみ量とアンテナ素子のたわみ量との差が所定値(例えば0.01mm)以下になるように、各々のサイズと相互間の間隔とが設定されているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有するアンテナ装置によれば、アンテナ素子と筐体(ケース)の壁体とに隙間が発生して互いにぶつかり合ったとしても異音が発生しないか、発生しても非常に小さく聞き取れない程度に低減させることができる。
また、筐体(ケース)の壁体に一体に設けられた押え片によってアンテナ素子を壁体との間に挟み込んでケースに固定する構成であるので、固定用部品を用いる必要がない。そのため、コストアップ、重量アップを招くことないとともに、接着剤や熱溶着によらないため、製品完成までの所要時間を短縮することができる。さらに、熱溶着によらないため、ケース材料の選択肢を広げることができるという利点がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアンテナ装置によれば、製品完成までの所要時間の増加やコストアップ、重量アップを招くことなく、アンテナ素子がケースにぶつかり発生する異音を低減することができる。また、ケース材料の選択肢を広げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は本発明を適用したアンテナ装置の一実施形態の要部(アンテナ素子を装着したケース)を示す斜視図、(B)は(A)におけるB-B線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図2】実施形態のアンテナ装置において押え片の間隔を変えた場合のアンテナ素子とケースの壁体との隙間量(アンテナ素子のたわみ量-ケース壁体のたわみ量)を示すグラフである。
【
図3】実施形態のアンテナ装置のケースを除いた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線に沿った断面構造を示すアンテナ装置の断面図である。
【
図5】(A)はケースとグランド基板とを結合した状態を示す底面図、(B)はケースとグランド基板とを結合した状態を示す斜視図である。
【
図6】実施形態のアンテナ装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態の要部の斜視図を示す。なお、以下の説明においては、
図1(A)に示すアンテナ装置の左上側を前端側、右下側を後端側と称する。
本実施形態のアンテナ装置は、一面が開口したケース(筐体)と、一対のアンテナ素子が実装され上記ケース内に収納される回路基板と、上記ケースの開口側に接合されて開口を閉塞する平板状のブラケットとから構成される。
図1(A)には、このうちケース20の内側の構成が斜視図として示されている。また、
図1(B)には、
図1(A)におけるB-B線に沿った断面構造が示されている。
【0013】
図1(A)に示すように、ケース20は、矩形状をなす凹部を形成する枠体21と、該枠体21と一体に形成され一方の開口を覆う壁体22と、を有し合成樹脂で構成されており、枠体21の一側面には後述のコネクタに対応して膨出部21aが形成されている。
そして、上記壁体22の内面には、導電性金属板からなる一対のアンテナ素子11A,11Bをケース内部に固定するためスナップフィット構造の固定手段を構成する複数の押え片23が形成されている。
【0014】
特に限定されるものでないが、本実施形態のアンテナ装置においては、2個のアンテナ素子11A,11Bは対称形状を有し同一周波数帯の信号(電波)を受信するように形成されている。また、それぞれのアンテナ素子11A,11Bは、板状部材で構成されており、後述の回路基板と平行をなす水平部11aと、この水平部11aの一つの辺から上方へ折曲した垂直部11bと、該垂直部11bから後方へ90度折曲された折返し部11cと、折返し部11cから下方へ向って折曲された脚部11dとより構成され、所定の間隔をおいて水平部11aが上記壁体22の内面に接した状態で取り付けられている。
【0015】
アンテナ素子11Bを壁体22の内面に固定するための複数個(例えば6個)の押え片23a~23fは、
図1(B)に示すように、壁体22の内面と所定の間隔を有しアンテナ素子11Bを差し込む隙間を形成するように、水平部と脚部とから断面形状を有している。また、押え片23a~23fは、
図1(A)に示すように、すべて同一方向(図では斜め左下方向)を向くように形成されている。なお、アンテナ素子11Aを壁体22の内面に固定するための押え片23g,23h……も、押え片23a~23fと同一の形状で同一個数(6個)設けられ、ケース20の中心線を挟んで上記押え片23a~23fと線対称の位置に、逆の方向(斜め右上方向)を向くように形成されている。
【0016】
上記のように、押え片23a~23fを、同一方向を向くように形成したことによって、組立て時に、先ずアンテナ素子11Bを壁体22の内面に接合させた後、面に沿ってスライドさせることで、押え片23a~23fと壁体22の内面との隙間に圧入してケース20の内面の所定位置に装着することができる。なお、押え片23a~23fと壁体22の内面とのもともとの隙間は、アンテナ素子11Bの板厚よりもやや狭くなるように設定されており、差し込まれた状態では、押え片23a~23fの弾性復元力で、アンテナ素子11Bを押圧して固定するように構成されている。
【0017】
また、本実施形態のアンテナ装置においては、押え片23a~23fのうち1つ(23d)に対応して、アンテナ素子11Bの水平部11aの基部側に開口11wが形成され、この開口11w内に押え片23eが挿通され、開口11wの縁部を押え片23eが押圧して固定するように構成されている。このように、開口11wと押え片23eを設けることで、アンテナ素子11Bの基部がケース20の壁体22の内面から局所的に浮き上がり隙間が生じないようにすることができる。
【0018】
さらに、本実施形態のアンテナ装置においては、ケース20に固定されるアンテナ素子11A,11Bがたわむことに起因して、アンテナ素子とケースが接触することで発生する異音を抑制するために、ケースが振動した際のケース20の壁体22とアンテナ素子11A,11Bのそれぞれのたわみ量の差が0.01mm以下になるように、押え片23a~23fの厚みと、幅および長さ、間隔が、ケース20の素材の弾性係数を考慮して設定されている。
【0019】
ここで、ケースが振動した際のケース20の壁体22とアンテナ素子11A,11Bのそれぞれのたわみ量の差が0.01mm以下になるように設定した理由について説明する。
図1に示すような構成のアンテナ装置においては、ケースが振動する際、ケースとアンテナ素子がたわむことになるが、それぞれのたわみ量が異なるため、ケースとアンテナ素子が接触することに起因して異音が発生する。異音が発生しないためにはケースとアンテナ素子が、A.加速度が加わった際であっても常に離れている状態か、B.常に接触し合い、加速度が加わった際にもたわみ量が追従し続ける、のいずれかであれば良い。
【0020】
しかし、条件Aではアンテナの性能の観点から常に接触しない状況を作り出すのは難しい。条件Bでは、それぞれの材質や厚みが異なることで異なるたわみ量が発生するものの、それぞれのたわみ量の差がある閾値以下であれば隙間が発生して互いにぶつかり合ったとしても異音が発生しないか、発生しても非常に小さく聞き取れない程度となることが、本発明者による事前検討によって、明らかになったためである。
【0021】
そして、事前検討で、異音が発生しないと判断した際の隙間量(閾値)は0.01mmであり、本発明者らは、厚みが0.6mm、長さが49.4mmであるアンテナ素子に対して、ケース20の素材がポリカABS樹脂で、押え片23a~23cの厚みが1mm、幅が6mm、長さが5mmの場合に、押え片23a,23b,23cの各間隔と、ケースとアンテナ素子たわみ量との差(隙間量)との関係をシミュレーションによって検証した。
【0022】
その結果、
図2に示すような結果が得られた。
図2より、押え片23a,23b,23cの各間隔を20mm以下とすることで、隙間量を上記閾値である0.01mm以下に抑えることができることを確認した。従って、上述した本実施形態のアンテナ装置によれば、アンテナ素子がケースの壁面にぶつかることで発生する異音を聞き取れない程度まで抑えることができる。なお、実施形態における押え片23のサイズは上記寸法に限定されるものではなく、アンテ素子とケースとの隙間量を0.01mm以下に抑えるように、押え片23のサイズおよび間隔を設定することとなる。また、ケース20の素材はポリカABS樹脂に限定されるものでない。
【0023】
また、
図1に示す構成は、アンテナ装置の全ての部品を表わしたものではなく、
図1のアンテナ素子11A,11Bは、回路基板に実装されてケース20内に収納され、さらにケース20の開口部を覆うようにブラケットが結合されて完成品となる。以下、アンテナ装置全体の構成について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3に示すように、本実施形態のアンテナ装置10は、2個のアンテナ素子11A,11Bと、これらのアンテナ素子11A,11Bが実装される回路基板12と、回路基板12の下方に配設され当該回路基板12の下面側にボルトにて結合される導電性金属からなる平板状のブラケット13とを備え、ブラケット13には接地電位が印加され、グランド基板として機能する。なお、ブラケット13は、回路基板12よりも一回り大きな矩形状をなし、回路基板12の下面側を保護する筐体としての機能も有している。
【0024】
特に限定されるものでないが、本実施形態のアンテナ装置10においては、2個のアンテナ素子11A,11Bは対称形状を有し同一周波数帯の信号(電波)を受信するように形成されている。また、それぞれのアンテナ素子11A,11Bは、回路基板12と平行をなす水平部11aと、この水平部11aの一つの辺から回路基板12へ向かって垂下する垂直部11bと、該垂直部11bから後方へ90度折曲された折返し部11cと、折返し部11cから下方へ向って折曲された脚部11dとよりフック状をなすように形成され、所定の間隔をおいて配設されている。
【0025】
さらに、アンテナ素子11A,11Bの脚部11dの下端に複数(例えば2個)の係合突起11eが設けられ、この係合突起11eが回路基板12の所定部に形成されているスリット状の係合穴に係合することでアンテナ素子11A,11Bが回路基板12に結合される。また、上記2個の係合突起11eは半田付けによって回路基板12に結合され、2個の係合突起11eのうち、基板の側方側に位置する係合突起11eは、半田付けによって回路基板12に接着され、当該部位とコネクタの端子との間を電気的に接続するように形成されている給電用のスリトップラインと電気的に接続され、アンテナ素子11A,11Bへの給電点となるように構成されている。
【0026】
上記回路基板12は、導電層からなる配線パターンを有するプリント基板により構成されており、図示しないが、分配器やアンプ、フィルタ、アッテネータなどを構成する電子部品が実装されている。そして、回路基板12の下面であってアンテナ素子11A,11Bの垂直部11b間の近傍位置には、下方へ向かって突出するように、後方から見たときにZ字状をなす導電材の板バネからなるバネ接点14が固定されている。具体的には、バネ接点14は、上部水平片と該上部水平片の端部から斜め下方へ突出する傾斜片と、該傾斜片から水平方向へ折り返す下部水平片を有しており、上部水平片が回路基板12の下面に接続されている。なお、バネ接点14の形状はZ字状に限定されるものではない。
【0027】
また、回路基板12の下面のアンテナ素子結合側の縁部には、チューナーなどを有するヘッドユニットと呼ばれる機器に繋がる同軸ケーブル(以下、ケーブルと略す)の端部が下方より挿入されて接続されるコネクタ15が設けられている。なお、コネクタ15は、その上面の両側部に上向きに突出し先端に爪を有する複数の係止片15aが形成されており、これらの係止片15aが回路基板12の所定部に形成されている係合穴に挿入されることで、回路基板12に結合されている。そして、回路基板12には、コネクタ15のケーブル内導体が接続される端子と前記アンテナ素子11A,11Bの給電点との間を接続する線状の配線パターン(ストリップライン)が形成されている。
【0028】
さらに、回路基板12には、このバネ接点14の設置位置を含み、上記電子部品間および電子部品とコネクタ間を電気的接続する配線パターン(ストリップライン)を除く大部分の領域に亘って導電層が形成されている。そして、この導電層に電気的接続された状態で上記バネ接点14が回路基板12に接続され、バネ接点14の傾斜片の下端の下部水平片が、
図4に示すように、前記ブラケット13に結合されるように高さが設定されている。
【0029】
上記のように、バネ接点14が接地電位のブラケット13に接続されることによって、回路基板12の上記導電層に接地電位が印加された状態になる。つまり、バネ接点14が回路基板12の接地点となる。
一方、ブラケット13には、上記コネクタ15に対応する部位に開口13aが形成され、この開口13aの内側にコネクタ15が挿通されている。また、ブラケット13の複数箇所(図では4箇所)には、当該ブラケット13の一部を切り起こして前面視で「ユ」の字状に折曲した台座部13bが形成されている。
【0030】
そして、上記4つの台座部13bの上面に上記回路基板12の下面が接合されるとともに、台座部13bの上部水平片と回路基板12の対応する部位に形成されているネジ挿通穴12bに、
図5(A)に示すように、ネジ16を挿通してケース20の内側に設けられているボス部24(
図1参照)に螺合させることによって、ケース20と回路基板12およびブラケット13が一体化され、完成品となるように構成されている。
図5(B)には、
図5(A)の完成状態のアンテナ装置が示されている。
【0031】
なお、
図3に示すような構成のアンテナ装置においては、アンテナ素子11A,11Bと回路基板12との間隔はアンテナの受信感度に影響し間隔が大きい方が良いが、回路基板12とブラケット13との間隔はアンテナの受信感度に影響しないので、台座部13bをなくして回路基板12の下面とブラケット13の上面とを接合させるように構成することも可能である。にもかかわらず、上記のように、ブラケット13に台座部13bを設けているのは、使用するコネクタ15の高さを充分に小さくことが難しい一方、
図1に示すアンテナ装置全体を収納するケースの下面よりのコネクタ15の突出量がユーザの仕様により規定されているためである。従って、条件によっては、ブラケット13に台座部13bを設けないようにしても良い。
【0032】
さらに、上記4箇所の台座部13bのうちコネクタ15の左右に位置する2個の台座部に対応する回路基板12のネジ挿通穴12bの周囲には、回路基板12内の前記導電層が延設されている。これにより、台座部のネジ挿通穴と対応する回路基板12のネジ挿通穴12bに導電性を有するネジを挿通して回路基板12とブラケット13を結合すると、ネジを介して回路基板12とブラケット13とが電気的に接続されるようになっている。
【0033】
一方、4箇所の台座部13bのうちコネクタ15から遠い側に位置する2個の台座部に対応する回路基板12のネジ挿通穴12bの周囲には、前記導電層が延設されていない。つまり、回路基板12の前記導電層に対する接地電位の印加は、前記バネ接点14およびコネクタ15の左右に位置する2個の台座部13bに限定されることとなる。
このようにしているのは、本実施形態のアンテナ装置においては、コネクタ15から遠い側に位置する2個の台座部の上方にアンテナ素子11A,11Bの一部が存在しており、この部位まで回路基板12の前記導電層を延設すると、アンテナ素子11A,11Bと導電層との距離が小さくなって受信感度が低下してしまうためである。
【0034】
これに対して、コネクタ15の左右に位置する2個の台座部13bの上方にはアンテナ素子11A,11Bがないので、回路基板12の導電層とブラケット13との間を接続したとても受信感度が低下することはない。そのため、コネクタ15の左右に位置する2個の台座部においても接地電位との接続を行うことができる。そして、ここでの接続では接地電位の印加が不足するので、本実施形態においては、別途バネ接点14を設けることで接地電位の印加が不足する事態を回避するようにしている。
【0035】
なお、弾性変形可能なバネ接点14の代わりに、弾性変形しないネジのような部材で回路基板12の前記導電層とコネクタ15との接続を行うようにしても良いし、バネ接点14やネジは金属製に限定されるものでなく、導電性材料であれば樹脂など金属以外の材料であっても良い。また、本実施形態のアンテナ装置10においては、同一周波数帯の信号(電波)を受信する2個のアンテナ素子11A,11Bを設けているが、長さを変えることでアンテナ素子11Aと11Bが異なる周波数帯の信号(電波)を受信するように構成しても良い。
【0036】
なお、
図1に示されている実施形態のアンテナ装置においては、アンテナ素子11A,11Bをそれぞれ中心側から側方へスライドさせることによって、押え片23a~23fとケース20の内面との隙間に圧入することでアンテナ素子11A,11Bをケース20に装着する構成である説明したが、これに限定されるものでない。例えば、
図6に示すように、アンテナ素子11Bを中心側から側方(Y方向)へスライドさせた後、前方(X方向)へスライドさせることで押え片23a~23fとケース20の内面との隙間に差し込んで装着するように構成しても良い。そして、このように構成する場合、押え片23a~23fのうち23eは、他の押え片と向きを90度変えて後方を向くように形成しても良い。他方のアンテナ素子11Aについても同様である。
【0037】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、回路基板12の接地点とブラケット13との接続をバネ接点のような物理的に接触する手段で行なっているが、接地点は例えば対向電極や金属層同士が向かい合ってキャパシタのように振る舞う構造によって高周波的に接続されていればよく、物理的に接触している必要はない。
【0038】
また、前記実施形態においては、回路基板12上に2つのアンテナ素子11A,11Bを実装しているものを示したが、アンテナ素子の数は2つに限定されるものでなく、1つあるいは3つ以上であっても良い。アンテナ素子の形状も、
図1に示すものに限定されず、他の形状を有するアンテナ素子を回路基板に実装したアンテナ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10…アンテナ装置、11A,11B…アンテナ素子、12…回路基板(プリント基板)、12b…ネジ挿通穴、13…ブラケット(グランド基板)、13b…台座部、14…バネ接点(接地点)、15…ケーブルのコネクタ、16…締結用のネジ、20…ケース(筐体)、21…枠体、22…壁体、23…押え片、24…ボス部