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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164035
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】導入補助器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/954 20130101AFI20231102BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61F2/954
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075337
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森 健作
【テーマコード(参考)】
4C267
4C601
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA28
4C267AA41
4C267BB45
4C267CC10
4C601DD14
4C601EE11
4C601FE04
4C601FF11
(57)【要約】
【課題】血管の分枝に対して医療器具を導入する手技を容易にすることができる導入補助器具を提供すること。
【解決手段】導入補助器具(11)は、近位端(11P)から側孔(Hs)に至り、且つ、医療器具を挿通させる通路(P2)を有するチューブ(アウターシース111)と、撮影対象断面(PCS)における断層画像を撮像する超音波探触子(12)と、を備えている。導入補助器具(11)において、超音波探触子(12)は、撮影対象断面(PCS)がチューブ(アウターシース111)の縦断面と平行になるように、且つ、側孔(Hs)の少なくとも一部を撮影対象断面(PCS)内の画角に含むように設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の分枝に対して棒状の医療器具を導入するときに用いる導入補助器具であって、
側壁に側孔が設けられており、且つ、近位端から前記側孔に至る通路であって前記医療器具を挿通させる通路を有するチューブと、
撮影対象断面における断層画像を撮像する超音波探触子と、を備え、
前記超音波探触子は、前記撮影対象断面が前記チューブの縦断面と平行になるように、且つ、前記側孔の少なくとも一部を前記撮影対象断面内の画角に含むように、設けられている、
ことを特徴とする導入補助器具。
【請求項2】
前記医療器具を前記通路に挿通させ、当該医療器具の先端を前記側孔から突出させた状態において、前記超音波探触子は、前記画角に前記側孔から突出した前記先端を含まれるように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の導入補助器具。
【請求項3】
前記側孔を平面視した場合に、超音波探触子は、側孔の輪郭内に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助器具。
【請求項4】
前記チューブの前記近位端の近傍には、当該チューブの中心軸の軸回りにおける前記撮影対象断面の方位を示す目盛り及び目印の少なくとも何れかが付されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助器具。
【請求項5】
前記近位端から前記通路に導入された可撓性を有するインナーチューブであって、先端が前記側孔に至るインナーチューブを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助器具。
【請求項6】
前記インナーチューブの前記先端の近傍は、前記通路に導入されていない状態において、段差が生じないように連続的且つ滑らかに曲げられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の導入補助器具。
【請求項7】
前記チューブの前記近位端から突出している前記インナーチューブには、前記側孔から当該インナーチューブが突出している突出量に対応する目盛りが付されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の導入補助器具。
【請求項8】
前記チューブの遠位端は、先細った形状を有し、
前記通路を医療器具用通路として、
前記チューブは、前記近位端から前記遠位端に至るガイドワイヤー用通路であってガイドワイヤーを挿通させるガイドワイヤー用通路を更に有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助器具。
【請求項9】
前記チューブの遠位端は、先細った形状を有し、
前記通路を医療器具用通路として、
前記チューブは、前記医療器具用通路から分岐したうえで前記遠位端に至るガイドワイヤー用通路であってガイドワイヤーを挿通させるガイドワイヤー用通路を更に有し、
前記医療器具用通路は、前記近位端から前記ガイドワイヤー用通路との分岐点までの区間において、前記医療器具に加えて前記ガイドワイヤーを挿通させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導入補助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入するときに用いる導入補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入するときに、特許文献1の図1に示されているような導入補助器具を用いる場合がある。分枝は、特許文献1において、側枝管状器管と呼ばれている。
【0003】
この導入補助器具は、先端部、本体部、及びバックアップ提供部を含み、且つ、可撓性を有する管状体を備えている。
【0004】
先端部は、管状体の両端部のうち、導入補助器具の操作者からみて遠い側の端部(以下において遠位端とも称する)を構成する。本体部は、管状体の主たる区間を構成する。この主たる区間は、管状体の両端部のうち、導入補助器具の操作者からみて近い側の端部から、先端部の近傍までに区間である。バックアップ提供部は、先端部と本体部との間に設けられている。特許文献1に記載の導入補助器具において、バックアップ提供部は、分枝近傍の血管の形状に応じて湾曲されている。また、湾曲されたバックアップ提供部の側壁の一部には、管状体の内部に設けられた内部通路とつながった開口部(以下において、側孔と称する)が設けられている。
【0005】
この導入補助器具は、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入するときに、側孔が分枝の入口の方角を向くように配置される(特許文献1の図3図7参照)。そのうえで、分枝をめがけて側孔から医療器具を突出させることにより、手技を行う作業者は、導入補助器具を用いて、分枝に医療器具を導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-036393号公報
【特許文献2】特表2017-520348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような導入補助器具を用いた手技では、血管内における医療器具の位置や、血管における分枝の位置などを把握するために、リアルタイムでX線透視を行いながら手技を行うことが多い。医療器具を挿通している血管に対して分枝がなす角度は、ケースバイケースで様々である。また、医療器具の直径と、分枝の直径とを比較すると、医療器具の直径の方が小さいものの、直径同士の差は、小さい場合が多い。これらに起因して、分枝に医療器具を導入することは容易ではなく、延いては手技時間が長くなりがちである。手技時間が長くなることは、患者への負担(例えばX線の被曝量)が増大することを意味するので好ましくない。
【0008】
血管の状態を把握するための技術として、超音波探触子を血管内に挿入したうえで血管の断層イメージングを行う技術が知られている。この技術は、血管内超音波(IVUS)と呼ばれている。IVUSにおいては、血管の断面であって、血管が延伸されている軸に対してほぼ直交する断面(以下において横断面と称する)におけるエコーイメージを生成する。以下においては、エコーイメージのことを単にイメージと称する。
【0009】
しかしながら、導入補助器具から医療器具が突出する位置(すなわち側孔の位置)と、分枝の入口の位置とは、同じ横断面内に位置しない場合がほとんどである。このことは、1つの横断面におけるイメージには、導入補助器具の側孔、あるいは、当該側孔から突出する医療器具と、分枝の入口とが含まれていないことを意味する。したがって、特許文献1に記載の導入補助器具と、IVUSとを併用したとしても、導入補助器具の側孔、あるいは、当該側孔から突出する医療器具と、分枝の入口との相対関係を把握することはできない。換言すれば、横断面におけるイメージは、導入補助器具の側孔から分枝の入口へ向かう経路を把握するための助けにはならない。そのため、導入補助器具とIVUSとを併用したとしても、上述した手技は依然として難しい。
【0010】
また、特許文献2には、超音波探触子を備え、且つ、医療器具を突出させるための側孔が設けられた肝内シャントのためのデバイスが記載されている(例えば、図4~6及び図8参照)。このデバイスは、特許文献1に記載の導入補助器具に超音波探触子を付け加えたような構成である。なお、特許文献2では、超音波探触子のことをIVUSトランスデューサと称している。
【0011】
特許文献2においては、超音波探触子の方式として、ローテーショナル型及びソリッドステート型(合成アパーチャフェーズドアレイとしても知られる)の2つが挙げられている。ローテーショナル型及びソリッドステート型の各々は、それぞれ、機械走査型及び電子スキャン型とも呼ばれる。これらの方式のIVUSトランスデューサは、何れも血管の横断面におけるイメージを生成する。
【0012】
したがって、特許文献2に記載のデバイスは、特許文献1に記載の導入補助器具と、超音波探触子とを1つのデバイスにまとめることができる。ただし、得られる1つのイメージに導入補助器具の側孔、あるいは、当該側孔から突出するカテーテルと、分枝の入口とを含めることはできない。したがって、特許文献2に記載のデバイスを用いたとしても、導入補助器具の側孔、あるいは、当該側孔から突出する医療器具と、分枝の入口との相対関係を把握することはできない。そのため、特許文献2に記載のデバイスを用いたとしても、上述した手技は依然として難しい。
【0013】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入する手技を容易にすることができる導入補助器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る導入補助器具は、血管の分枝に対して棒状の医療器具を導入するときに用いる導入補助器具である。上記の課題を解決するために、本導入補助器具は、側壁に側孔が設けられており、且つ、近位端から前記側孔に至る通路であって前記医療器具を挿通させる通路を有するチューブと、撮影対象断面における断層画像を撮像する超音波探触子と、を備えている。本導入補助器具において、前記超音波探触子は、前記撮影対象断面が前記チューブの縦断面と平行になるように、且つ、前記側孔の少なくとも一部を前記撮影対象断面内の画角に含むように、設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入する手技を容易にすることができる導入補助器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る導入補助システムの平面図である。
図2】(a)は、図1に示した導入補助システムの導入補助器具が備えているアウターシースの近位端を拡大した平面図である。(b)は、図1に示した導入補助システムの導入補助器具が備えているアウターシースの遠位端及び側孔を拡大した平面図である。
図3】(a)は、図1に示した導入補助システムの導入補助器具が備えているインナーシースの平面図である。(b)~(e)は、それぞれ、前記導入補助器具が備えているアウターシースにおける架橋区間の拡大断面図である。
図4】(a)~(c)は、それぞれ、図1に示した導入補助システムを用いて大動脈の分枝にカテーテルを導入する場合の模式図である。
図5】(a)は、図1に示した導入補助システムを用いて大動脈の分枝にカテーテルを導入する場合の模式図である。(b)は、(a)の導入補助システムが備えている導入補助器具の超音波探触子を用いて生成されたイメージの模式図である。
図6】(a)~(c)は、それぞれ、図1に示した導入補助器具の第1の変形例~第3の変形例が備えているアウターシースの遠位端及び側孔を拡大した平面図である。
図7】(a)~(c)は、それぞれ、図1に示した導入補助器具の第4の変形例を用いて大動脈の分枝にカテーテルを導入する場合の模式図である。
図8】(a)は、図1に示した導入補助器具の第5の変形例が備えているアウターシースの近位端を拡大した平面図である。(b)は、第5の変形例が備えているアウターシースの遠位端及び側孔を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔導入補助システム〕
本発明の一実施形態に係る導入補助システム10について、図1図3を参照して説明する。図1は、導入補助システム10の平面図である。図2の(a)は、導入補助システム10の導入補助器具11の近位端11Pを拡大した平面図である。図2の(b)は、導入補助器具11の遠位端11E及び側孔Hsを拡大した平面図である。図3の(a)は、導入補助器具11が備えているインナーシース115の平面図である。図3の(b)~(e)は、それぞれ、導入補助器具11が備えているアウターシース111おける架橋区間の拡大断面図である。
【0018】
図1に示すように、導入補助システム10は、導入補助器具11と、ガイドワイヤー21と、カテーテル22と、を備えている。導入補助器具11は、本発明の一実施形態でもある。
【0019】
<導入補助システムの概要>
導入補助システム10は、大動脈瘤(腹部大動脈瘤及び胸部大動脈瘤)に代表される血管疾患の検査及び治療の少なくとも何れかに用いることを想定している。導入補助システム10は、血管疾患を有している患者の血管(例えば腹部大動脈)の分枝に対して医療器具(例えばカテーテル)を導入するときに用いる導入補助システムである。同様に、導入補助器具11は、血管の分枝に対して選択的に医療器具を導入するときに用いる導入補助器具である。本実施形態では、分枝に導入する医療器具としてカテーテルを用い、カテーテルを腹部大動脈の分枝に導入する場合を例にして、導入補助システム10及び導入補助器具11について説明する。以下において、腹部大動脈のことを大動脈Aと称する。
【0020】
導入補助器具11の遠位端11Eは、患者の所定の部位(例えば大腿部の付け根)から大動脈Aに導入され、腹部大動脈瘤である大動脈瘤AAを通り過ぎる位置まで大動脈A中を押し進められる(図4参照)。なお、導入補助システム10の使用方法については、図4を参照して後述する。なお、導入補助システム10及び導入補助器具11は、腹部大動脈瘤だけでなく胸部大動脈瘤にも適用できる。また、導入補助システム10及び導入補助器具11は、大動脈疾患において、大動脈瘤だけでなく大動脈解離、及び、大動脈ステントグラフト留置後にも使用可能である。また、導入補助システム10及び導入補助器具11は、上大静脈又は下大静脈の分枝に対して選択的に医療器具を導入する場合にも適用できる。また、導入補助システム10及び導入補助器具11は、下大静脈から右心房内を経て上大静脈に遠位端11Eを到達させ、右心房を介して心臓内に医療器具を導入する場合にも適用できる。
【0021】
<ガイドワイヤー>
ガイドワイヤー21は、金属製のワイヤーである。ガイドワイヤー21としては、医療用として販売されているワイヤーのうち、直径や硬さなどの仕様が適切なものを選択すればよい。ガイドワイヤー21は、近位端11Pのうち分岐部112から通路P1を経て遠位端11Eの先まで挿通されている。図1に示すように、ガイドワイヤー21のうち遠位端11Eから突出した部分は、柔軟であり丸められている。
【0022】
ガイドワイヤー21の先端が柔軟で丸められていることにより、遠位端11Eが大動脈A中を大動脈瘤AAまで押し進められる間、及び、カテーテル22を分枝Bに導入する間、ガイドワイヤー21の先端が血管損傷を生じさせるリスクを低減することができる。また、ガイドワイヤー21の先端が遠位端11Eから突出していることにより、遠位端11Eの先端が血管壁に対して直接接触することを防ぐため、遠位端11Eの先端が血管損傷を生じさせるリスクを低減することができる。
【0023】
<カテーテル>
カテーテル22は、樹脂製のカテーテルである。カテーテル22としては、医療用として販売されているカテーテルのうち、外径や、内径や、硬さや、形状などの仕様が適切なものを選択すればよい。カテーテル22は、近位端11Pのうち固定部114から通路P2を経て側孔Hsまで挿通されている。
【0024】
なお、固定部114から側孔Hsに至る通路P2には、まずインナーシース115が挿通されている(図1参照)。インナーシース115の先端は、側孔Hsから突出している。そのうえで、カテーテル22は、インナーシース115の内部を挿通されている。図1に示した状態において、インナーシース115の先端は、側孔Hsから突出しており、且つ、カテーテル22の先端は、インナーシース115の先端から突出している。ただし、これらの突出量は、手術を実施する作業者が、固定部114から突出しているインナーシース115及びカテーテル22の位置を調整することによって制御することができる。
【0025】
<導入補助器具>
図1及び図2に示すように、導入補助器具11は、アウターシース111と、分岐部112と、継手部113と、固定部114と、インナーシース115と、継手部116と、アウターシースフラッシュポート117と、インナーシースフラッシュポート118と、止血弁119と、止血弁11aと、継手部11bと、を備えている。
【0026】
分岐部112、継手部113、固定部114、及びインナーシース115は、手術中において患者の血管外に位置し、作業者が操作することができる。したがって、分岐部112、継手部113、固定部114、及びインナーシース115のことを導入補助器具11の近位端11Pと称する。
【0027】
(アウターシース)
アウターシース111は、一方の端部から他方の端部に至る貫通孔であって、通路P1として機能する貫通孔が形成された樹脂製のチューブである。通路P1は、ガイドワイヤー用通路の一例である。アウターシース111の外形は、先細りのテーパー形状に成型された遠位端11Eを除いて、径が均一な円柱状である。また、遠位端11Eは、円錐状である。したがって、アウターシース111には、中心軸AC1が存在する。図1では、中心軸AC1と平行な方向をz軸正方向と定めている。また、z軸方向に直交するxy平面に含まれる方向のうち、後述する側孔Hsの法線方向と平行な方向をx軸方向と定めている。また、x軸方向及びz軸方向とともに直交座標系を構成する軸の方向をy軸方向と定めている。なお、図1では、z軸方向において、近位端11Pから遠位端11Eへ向かう方向をz軸正方向と定め、x軸方向において、中心軸AC1から側孔Hsの開口部へ向かう方向をx軸正方向と定め、x軸正方向及びz軸正方向とともに左手系の直交座標系を構成する方向をy軸正方向と定めている。また、以下において、アウターシース111の断面のうち、中心軸AC1を含む断面のことを縦断面と呼び、中心軸AC1に直交する断面のことを横断面と呼ぶ。なお、図2及び図3に図示される座標系も、図1に図示される座標系と同様に定められている。
【0028】
アウターシース111の典型的な長さは、60cm程度である。本実施形態では、アウターシース111の長さを60cmとし、遠位端11Eの長さL1を5cmとし、アウターシース111から側孔Hsの先端までの長さL2を20cmとし、側孔Hsの長さL3を6cmとし、側孔Hsの先端からアウターシース111の根本までの長さL4を40cmとしている(図1参照)。ただし、アウターシース111における各部の長さL1,L2,L3,L4は、これに限定されない。なお、遠位端11E及び側孔Hsについては、後述する。
【0029】
また、アウターシース111の典型的な外径は、4mm(12フレンチ)程度である。アウターシース111の外径は、これに限定されないものの、大腿動脈から大動脈Aに至る挿入経路の内径を下回る範囲内で当該内径に近い値に設定されていることが好ましい。この構成によれば、バックアップ力を高めることができる。また、大動脈Aの内部において、アウターシース111が大動脈Aの血管壁方向に撓む余地を減らすことができるので、カテーテル22を分枝Bに導入するときに生じる位置ずれを抑制することができる。
【0030】
アウターシース111の外径及び硬度および側孔の位置は、大動脈瘤AA形成されている位置や、患者の大腿動脈から大動脈Aに至る挿入経路の太さなどに応じて、適宜設計することができる。例えば、腹部大動脈瘤用のアウターシース111の場合、アウターシース111の外径を大きく、硬度を高く、且つ長さL2を長く、長さL4を短く(すなわち、図1の状態において側孔Hsの位置をより上側すなわち近位側に)設計してもよい。また、胸部大動脈瘤用のアウターシース111の場合、アウターシース111の外径を小さく、硬度を低く、且つ長さL2を短く、長さL4を長く(すなわち、図1の状態において側孔Hsの位置をより下側すなわち遠位側に)設計してもよい。また、アウターシース111の外径及び硬度は、アウターシース111の全区間を通じて一定であってもよいし、予め定められた区間毎に異なっていてもよい。例えば、後述する遠位端11E及び側孔Hsを含む架橋区間は、高い硬度を有し、アウターシース111の根本から前記架橋区間までの区間は、低い硬度を有する構成を採用してもよい。ここで、架橋区間とは、遠位端11Eを大動脈瘤AAよりも先まで導入した場合に、図4に示す大動脈瘤AAを架橋する区間である。この構成によれば、導入部位(例えば大腿部付け根)から分枝Bまでに存在する途中の血管(例えば腹部大動脈)に与え得るストレスを過剰に増大させることなく、バックアップ力を高めることができる。なお、本実施形態では、アウターシース111の先端から40cmまでの区間を架橋区間と呼ぶ。これは、大動脈瘤AAの長さは最大で10~15cm程度であり、側孔の位置をその上端から下端まで移動させることができ、且つ側孔がいかなる位置にあっても大動脈Aを跨いで上下の5cm程度の大動脈壁への接地部分を確保するためである。ただし、架橋区間の長さは、これに限定されず、長さL2と長さL3との和(本実施形態においては、26cm)を上回る範囲において適宜定めることができる。架橋区間の長さは、例えば、30cmであってもよい。
【0031】
架橋区間の軸方向に沿ってみた場合の形状は、大動脈瘤AAの近傍における大動脈Aの形状に対応していることが好ましい。大動脈瘤AAが腹部大動脈瘤である場合、大動脈瘤AAの近傍における大動脈Aは、直線状に延伸されている場合がおおい。したがって、本実施形態においては、架橋区間の形状として直線状を採用している(図3の(b)~(e)参照)。ただし、架橋区間の形状は、曲線状であってもよい。大動脈瘤AAとして胸部大動脈瘤を想定する場合、大動脈瘤AAの近傍における大動脈Aが曲がっている場合もあるためである。
【0032】
アウターシース111の両端のうち根本(図1に示した状態における上側の端部)は、近位端11Pの一部を構成する分岐部112に接続されている。また、アウターシース111の両端のうち先端(図1に示した状態における下側の端部)は、何にも接続されていない自由端である。
【0033】
アウターシース111の先端を含む一部区間は、手術中において患者の血管内に導入される。アウターシース111の先端から所定の長さL1の区間は、先細りのテーパー形状に成型されている(図3の(b)参照)。以下においては、テーパー形状に成型されている区間を遠位端11Eと称する。遠位端11Eの長さL1は、適宜定めることができるが、一例として5cmである。アウターシース111における遠位端11E及びその近傍の形状は、ダイレーターの形状に近い。
【0034】
以上のように、通路P1は、導入補助器具11の近位端11Pから遠位端11Eに至るように形成されている。通路P1の直径は、ガイドワイヤー21の直径を上回っていればよく、特に限定されない。遠位端11Eが大動脈Aに導入された場合に、大動脈Aから通路P1へ流入する血液の量を抑制するためには、通路P1の直径は、ガイドワイヤー21の直径を上回る範囲内で小さいほうが好ましい。
【0035】
また、アウターシース111には、通路P1として機能する貫通孔とは別の貫通孔であって、通路P2として機能する貫通孔が形成されている。通路P2として機能する貫通孔は、近位端11Pに接続されている根本から側孔Hsに至るように形成されている。側孔Hsは、アウターシース111の側壁に設けられた開口であり、通路P2と連通している(図2の(b)及び図3の(b)参照)。通路P2は、通路の一例であり、医療器具用通路の一例でもある。
【0036】
通路P2の直径は、後述するインナーシース115の直径を上回っていればよく、特に限定されない。遠位端11Eが大動脈Aに導入された場合に、大動脈Aから通路P2へ流入する血液の量を抑制するためには、通路P2の直径は、インナーシース115の直径を上回る範囲内で小さいほうが好ましい。また、図3には図示を省略しているものの、側孔Hsには、血管の一例である大動脈Aから通路P2への血液の流入を抑制する逆止弁が設けることもできる。
【0037】
側孔Hsが設けられている位置は、架橋区間のうち遠位端11Eを除いた区間において適宜定めることができる。すなわち、図1及び図3の(b)に示すように、長さL2は、長さL1(本実施形態では、5cm)を上回り、直線状の形態を呈する大動脈の部分(胸部下行大動脈~腹部大動脈、大動脈A)の全長(凡そ40cm)を下回る区間内において適宜定めることができる。また、成人の大動脈Aを想定した場合、長さL2は、5cm以上25cm以下であることが好ましい。本実施形態では、長さL2の一例として、20cmを採用している。
【0038】
また、図3の(b)~(e)に示すように、側孔Hsにおいて、遠位端11E側を構成する内壁がなだらかなスロープを形成する。この構成によれば、インナーシース115を通路P2に容易に挿通させることができる。また、図4の(a)に示すように、インナーシース115の曲げ角が小さい方向にもカテーテル22を導くことができる。インナーシース115の曲げ角については、後述する。なお、側孔Hsの内壁の一部を構成するスロープの部分は、側孔Hsを平面視した場合に、側孔Hsから見える。このように構成されたスロープの部分は、側孔Hsの底壁を構成するとも言える。
【0039】
また、インナーシース115には、側孔Hsから突出した部分の曲げ角を変化させるための機械的な機構が設けられていてもよい。この機構は、曲げ角調整機構として機能する。このような機構は、すでに市場に出回っているので、インナーシース115に適用可能である。この構成によれば、作業者は、曲げ角調整機構を調整することにより、カテーテル22の方向を分枝Bの方向に一致させることができる。このような曲げ角調整機構を備えている導入補助器具については、図7を参照して後述する。
【0040】
また、アウターシース111には、通路P1として機能する貫通孔、及び、通路P2として機能する貫通孔の何れとも異なる貫通孔であって、通路P3として機能する貫通孔が形成されている。すなわち、アウターシース111は、3孔式のチューブである。通路P3として機能する貫通孔は、近位端11Pに接続されている根本から側孔Hsの近傍に至るように形成されている。本実施形態においては、図2の(b)に示すように、通路P3として機能する貫通孔は、近位端11Pに接続されている根本から、側孔Hsにおけるスロープの部分の近傍に至るように形成されている。ただし、側孔Hsと通路P3との間は、側孔Hsにおけるスロープの部分を構成する底壁により隔てられている。したがって、血液は、側孔Hsから通路P2には浸入するものの、通路P3には侵入しない。したがって、通路P3の近位端11P側の端部である継手部11bには、止血弁は不応である。
【0041】
通路P3には、超音波探触子12に接続されているケーブル12cが挿通されている(図2の(b)参照)。ケーブル12cは、近位端11Pのうち継手部11bから通路P3を経て側孔Hs内に設置された超音波探触子12まで挿通されている。なお、本実施形態では、通路P3の直径がケーブル12cの外形よりも大きく、ケーブル12cの外壁と通路P3の内壁との間に隙間が生じている構成を採用している。ただし、ケーブル12cの外壁と通路P3の内壁との間に隙間はなく、ケーブル12cがアウターシース111中に埋設されている構成を採用することもできる(例えば、図8に記載の導入補助器具11F参照)。この場合、アウターシース111を単体で見た場合、アウターシース111を3孔式のチューブと見做すことができる。一方で、製品である導入補助器具11を見た場合、通路P3は、ケーブル12cにより充填されている。したがって、製品である導入補助器具11において、アウターシース111は、2孔式のチューブと見做すことができる。
【0042】
超音波探触子12は、超音波信号を用いたイメージングデバイスであり、撮影対象断面PCSにおける断層画像を撮像するイメージングデバイスである。超音波探触子12は、超音波信号を撮影対象断面PCS内に向かって出射する信号源と、周囲の組織により反射された超音波信号を検出する検出部と、を備えている。検出部により検出された超音波信号は、ケーブル12cを介して、コンピュータに出力される。コンピュータは、入力された超音波信号に基づいて、周囲の組織の様子を表す断層画像を生成する。この断層画像は、エコー画像あるいは超音波画像とも呼ばれる。このような超音波探触子12を用いてイメージングを行う技術は、血管内超音波(IVUS)と呼ばれている。換言すれば、超音波探触子12を含む導入補助器具11と、コンピュータとは、IVUSシステムを構成する。
【0043】
本実施形態の超音波探触子12において、信号源は、超音波探触子12の円柱状のパッケージ中に収容されている。より具体的には、信号源は、円柱状パッケージの中心軸AC2上に設けられている。そのうえで、信号源は、パッケージの側面に直交し、且つ、中心軸AC2を通る平面である撮影対象断面PCSに沿って、超音波信号を出射する。図2の(b)に図示した状態において、撮影対象断面PCSは、zx平面と平行であり、且つ、中心軸AC1及び中心軸AC2を通る平面である。また、検出部は、周囲の組織により反射され、おおよそ撮影対象断面PCSに沿って伝搬してくる超音波信号を検出する。したがって、コンピュータは、アウターシース111の縦断面に沿う断層画像を生成する。
【0044】
図2の(b)に示すように、超音波探触子12は、中心軸AC2が中心軸AC1に対して仰角θ12を有するように、上述したスロープの一部に設けられた貫通孔内に設置されている。本実施形態において、仰角θ12は、30°である。ただし、仰角θ12の大きさは、これに限定されず、超音波探触子12の画角の大きさや、ターゲットとする分枝Bの位置などに応じて、適宜定めることができる。例えば、仰角θ12の好ましい例としては、15°≦θ12≦30°が挙げられる。
【0045】
また、本実施形態において、仰角θ12は、30°に固定されている。ただし、本発明の一態様において、超音波探触子12は、コンピュータからの制御信号に応じて、仰角θ12を調整可能なように、スロープの一部の設けられた貫通孔に設置されていてもよい。例えば、超音波探触子12における仰角θ12の調整範囲としては、0°≦θ12≦30°が挙げあれる。この構成によれば、撮影対象断面PCSにおける超音波探触子12の画角を変更することなく、撮像可能な範囲を拡大することができる。
【0046】
以下において、撮影対象断面PCSに含まれる方向のうち、中心軸AC2に直交し、且つ、中心軸AC2から側孔Hsに向かう方向を主ビーム方向DMBと称する。主ビーム方向DMBは、超音波探触子12が出射する超音波信号の強度が最も高い方向である。なお、以下において、超音波探触子12及びコンピュータは、撮影対象断面PCSに含まれる方向のうち、主ビーム方向DMBを基準として±θの範囲について断層画像を生成することができるように構成されている。すなわち、超音波探触子12を含むIVUSシステムにおいて、超音波探触子12の画角は、2θである。本実施形態では、θ=45°であるため、超音波探触子12の画角は、90°である。ただし、超音波探触子12の画角の大きさは、これに限定されず、適宜定めることができる。
【0047】
このように、超音波探触子12は、撮影対象断面PCSがアウターシース111の縦断面と平行になるように設けられている。そのため、超音波探触子12を含むアウターシース111を血管内に導入した場合に、血管の断面であって、血管が延伸されている軸に対してほぼ平行する断面(以下において縦断面と称する)における断層画像を生成する。そのうえで、超音波探触子12は、上述したように側孔Hsのスロープの一部に設けられた貫通孔内に設置されているため、側孔Hsの少なくとも一部を撮影対象断面PCS内の画角に含むように、設置されている。
【0048】
また、本実施形態においては、インナーシース115及びカテーテル22を通路P2に挿通させ、カテーテル22の先端を側孔Hsから突出させた状態において、超音波探触子12は、撮影対象断面PCSに側孔Hsから突出したカテーテル22の前記先端を含むように設けられている(図2の(b)参照)。また、より詳しくは、超音波探触子12は、撮影対象断面PCSにおける画角内に、カテーテル22の前記先端を含むように設けられている。
【0049】
また、本実施形態においては、アウターシース111の側孔Hsを平面視した場合に、すなわち、x軸正方向の側からx軸負方向に向かって側孔Hsを平面視した場合に、超音波探触子12は、側孔Hsの輪郭内に設けられている。これは、図示していないものの、側孔Hsのスロープの一部に設けられた貫通孔内に超音波探触子12が設置されているためである。
【0050】
なお、本実施形態においては、アウターシース111の根本の近傍に、目盛りSC1を付している(図2の(a)参照)。アウターシース111の根本は、手術中において患者の血管外に位置する区間であり、作業者が手術中にも目視することができる区間である。
【0051】
目盛りSC1は、アウターシース111の中心軸の軸回りにおける側孔Hsが設けられている方位を示す。目盛りSC1は、例えば、側孔Hsが設けられている方位を基準方位として、30度毎に付された12個の目盛りにより構成することができる。また、目盛りSC1は、例えば、側孔Hsが設けられている方位を基準方位として、90度毎に付された目盛りにより構成することもできる。また、目盛りの代わりに文字(例えば、前後左右を表すA,L,R,P)などのオブジェクトを目印として用いることもできる。
【0052】
(分岐部)
図2の(a)に示すように、分岐部112は、近位端11Pのうちアウターシース111に接続される部分を構成し、先端側から手元側に向かって径が拡大する円錐台形状の部材である。本実施形態において、分岐部112は、アウターシース111よりも高い剛性を有する樹脂製である。図2の(a)に示した状態において、円錐台形状である分岐部112の一対の底面のうち、先端側の底面(面積が狭い底面)にアウターシース111の根本が接続されている。以下においては、上述した一対の底面のうち、先端側の底面(面積が狭い底面)を第1底面と呼び、手元側の底面(面積が広い底面)を第2底面と呼ぶ。
【0053】
アウターシース111と同様に、分岐部112の内部には通路P1と通路P2と通路P3とが形成されている。分岐部112の第1底面において、通路P1と通路P2と通路P3とは、アウターシース111における場合と同様に近接している。
【0054】
分岐部112は、アウターシース111において並走している通路P1と通路P2と通路P3とを、互いに独立した別個の接続ポートに分岐するように構成されている。したがって、通路P1と通路P3との間隔、及び、通路P2と通路P3との間隔は、分岐部112の第1底面から第2底面へ近づくにしたがって広がる。
【0055】
(インナーシース及びカテーテルの経路における継手部)
図2の(a)に示すように、継手部113は、分岐部112におけるインナーシース115及びカテーテル22の経路である通路P2の接続ポートに接続された筒状部材である。本実施形態において、継手部113は、樹脂製である。継手部113の内部には、通路P2が形成されている。本実施形態においては、継手部113の側面には通路P2に連通するアウターシースフラッシュポート117と活栓とを接続可能な接続機構が設けられている。分岐部112にアウターシースフラッシュポート117が設けられていることにより、通路P2をフラッシュ(ヘパリン加生理食塩水を注入)することができる。
【0056】
なお、継手部113の長さは、適宜定めることができる。また、継手部113は、省略することもできる。継手部113を省略する場合、分岐部112の接続ポートには、後述する固定部114を接続すればよい。
【0057】
(固定部)
図2の(a)に示すように、固定部114は、継手部113の両端のうち分岐部112とは逆側の端部(手元側の端部)に接続されている。固定部114の内部には通路P2が形成されている。そのうえで、固定部114は、通路P2を挿通しているインナーシース115との間に生じる摩擦力をオン又はオフに切り替えることができる。上述した継手部113と固定部114とは、通路P2における導入ポートである。
【0058】
インナーシース115の位置は、当該摩擦力がオンである状態において固定部114に対して固定され、当該摩擦力がオフである状態において固定部114に対して開放される。固定部114において上述した摩擦力を切り替える機構は、プッシュ式であってもよいし、回転式であってもよい。このように構成された固定部114は、近位端11Pの一部に設けられた固定機構であって、通路P2におけるインナーシース115の位置の固定及び開放を切り替える固定機構の一例である。
【0059】
また、本実施形態においては、固定部114の内部には、通路P2から固定部114の外部へ血液が漏れ出すことを抑制する止血弁が設けられている。このように、固定部114は、固定機構の一例であり、近位端11Pの一部に設けられた第1止血弁であって、大動脈Aから通路P2へ流入した血液を止血する第1止血弁の一例でもある。なお、本実施形態では、固定部114として固定機構と第1止血弁とが一体化されている。ただし、固定機構と、第1止血弁とは、継手部113の手手元側の端部に別個に設けられていてもよい。
【0060】
また、固定部114は、継手部113の両端のうち分岐部112とは逆側の端部と一体に成型されていてもよい。
【0061】
(インナーシース)
インナーシース115は、一方の端部から他方の端部に至る貫通孔が形成された樹脂製のチューブである。インナーシース115は、可撓性を有する樹脂製である。インナーシース115の硬度は、アウターシース111の硬度を下回る範囲内において適宜定めることができる。インナーシース115は、近位端11Pに設けられた導入ポートである継手部113及び固定部114から通路P2に導入されたインナーチューブの一例である。
【0062】
本実施形態において、インナーシース115の手元側の端部には、継手部が設けられている(図2の(a)参照)。この継手部の内部には、インナーシース115の貫通孔に連通する通路が形成されている。本実施形態においては、この継手部の側面には上述した貫通孔に連通するインナーシースフラッシュポート118と活栓とを接続可能な接続機構が設けられている。この分岐部にインナーシースフラッシュポート118が設けられていることにより、インナーシース115の貫通孔をフラッシュすることができる。
【0063】
また、上述した継手部の手元側の端部には、止血弁119が接続されている。止血弁119は、インナーシース115の近位端に設けられた第2止血弁であって、大動脈Aからインナーシース115に流入した血液を止血する第2止血弁の一例である。インナーシース115の手元側の端部に設けられた継手及び止血弁119は、インナーシース115における導入ポートである。
【0064】
図1及び図2の(b)に示した状態において、インナーシース115の先端は、アウターシース111の側壁に設けられた側孔Hsから僅かに突出している。
【0065】
図3の(a)に示すように、インナーシース115の先端の近傍は、通路P2に導入されていない状態において、段差が生じないように連続的且つ滑らかに曲げられている。ここで、「インナーシース115が滑らかに曲げられている状態」とは、インナーシース115を図3の(a)に示すように平面視した場合において、インナーシース115の輪郭を表す関数を想定したときに、その関数が連続的微分可能な状態であることを意味する。なお、連続的微分可能とは、ある関数fに導関数f’が存在し、且つ、そのf’が連続関数となることを意味する。図3の(b)においては、インナーシース115の曲げられていない区間における中心軸が延伸されている方向を矢印A1で示し、インナーシース115の先端における中心軸の接線方向であって、インナーシース115の内部から外部へ向かう方向を矢印A2で示している。なお、図3の(b)においては、通路P3と、側孔Hsのスロープの一部に設けられた貫通孔であって、超音波探触子12が設置されている貫通孔の図示を省略している。図が煩雑になることを防ぐための対応である。この対応は、図3の(c)~(e)の各々においても同様である。矢印A1と矢印A2とのなす角をインナーシース115の曲げ角とすると、本実施形態では、曲げ角として180度を採用している。ただし、通路P2に導入されていない状態におけるインナーシース115の先端の曲げ角は、これに限定されない。例えば、曲げ角が異なる複数種類のインナーシース115を予め用意しておき、大動脈瘤AAにおける分枝Bの方向に応じて、適切な曲げ角を有するインナーシース115を選択してもよい。
【0066】
一方、インナーシース115を通路P2に挿通させ、インナーシース115の先端を側孔Hsから突出させた場合、インナーシース115の曲げ角は、インナーシース115における前記側壁からの突出量を調整することにより制御することができる(図3の(b)~(e)参照)。図3の(b)~(e)の各々は、インナーシース115の曲げ角が、それぞれ、45度、90度、135度、及び180度の場合を示している。図3の(b)~(e)に示すように、インナーシース115の曲げ角は、前記突出量が大きくなればなるほど、180度以下の範囲内において大きくなる。
【0067】
なお、図3の(b)に示した状態において、インナーシース115の先端は、アウターシース111の側壁よりも引っ込んでいるので、この場合における突出量は、負である。このように、突出量は、負であってもよい。
【0068】
なお、インナーシース115の前記突出量は、作業者が固定部114に対するインナーシース115の相対位置を調整することにより制御することができる。
【0069】
本実施形態では、インナーシース115のうち、近位端11Pの一部を構成する固定部114から突出する側の一部区間には、目盛りSC2が付されている。目盛りSC2は、インナーシース115の前記突出量に対応する目盛りである。固定部114から突出する部分における目盛りSC2の値と、インナーシース115の曲げ角とを予め対応付けておくことにより、作業者は、大動脈瘤AA内における矢印A2の向かう方角を把握することができる。
【0070】
(ガイドワイヤーの経路における継手部)
図2の(a)に示すように、継手部116は、分岐部112におけるガイドワイヤー21の経路である通路P1の接続ポートに接続された筒状部材である。本実施形態において、継手部116は、樹脂製である。継手部116の内部には、通路P1が形成されている。本実施形態においては、継手部116の両端部のうち分岐部112とは逆側の端部(手元側の端部)には、後述する止血弁11aが接続されている。
【0071】
(ガイドワイヤーの通路における止血弁)
図2の(a)に示すように、止血弁11aは、継手部116の手元側の端部に固定されている。止血弁11aの内部には、通路P1が形成されている。止血弁11aは、近位端11Pの一部に設けられた第3止血弁であって、大動脈Aから通路P1へ流入した血液を止血する第3止血弁の一例である。
【0072】
(ケーブルの経路における継手部)
図2の(a)に示すように、継手部11bは、分岐部112におけるケーブル12cの経路である通路P3の接続ポートに接続された筒状部材である。本実施形態において、継手部11bは、樹脂製である。継手部11bの内部には、通路P3が形成されている。上述したように、通路P3には血液が浸入しないため、継手部11bに、止血弁11aのような止血弁は不要である。
【0073】
〔使用方法〕
導入補助システム10及び導入補助器具11の使用方法について、図1と、図4及び図5と、を参照して説明する。図4の(a)~(c)は、それぞれ、導入補助器具11を用いて大動脈Aの分枝Bにカテーテル22を導入する場合の模式図である。図4の(a)~(c)は、それぞれ、大動脈瘤AAに対する分枝Bの角度が異なる場合を示している。図5の(a)は、導入補助システム10を用いて大動脈の分枝にカテーテルを導入する場合の模式図である。図5の(b)は、図5の(a)の導入補助システム10が備えている導入補助器具11の超音波探触子12を用いて生成された断層画像の模式図である。
【0074】
導入補助システムの概要の項に上述したように、本実施形態では、大動脈Aの分枝Bに導入する医療器具としてカテーテル22を用い、カテーテル22を分枝Bに導入する場合を例にして、導入補助システム10及び導入補助器具11について説明する。なお、図4においては、分枝Bに大動脈瘤AAが形成されている状態を模擬的に示している。また、図4の(a)~(c)においては、導入補助器具11の構成の一部である通路P2、通路P3、及びケーブル12cの図示を省略している。
【0075】
本使用方法は、第1の導入工程と、方位決定工程と、方向決定工程と、第2の導入工程と、を含んでいる。
【0076】
第1の導入工程は、導入補助器具11の遠位端11Eを含む架橋区間を大動脈瘤AAに対する所定の位置まで導入する工程である。まず、患者の所定の部位(例えば大腿部の付け根)から、大動脈Aのうち大動脈瘤AAをこえた部分まで、ガイドワイヤー21の先端を導入する。そのうえで、ガイドワイヤー21の手元側の端部からかぶせる形で、導入補助器具11の先端から通路P1にガイドワイヤー21を挿通させる。先端が細まった遠位端11Eを用いて大腿動脈壁を押し広げつつ導入補助器具11を大動脈Aに導入し、前記所定の位置まで大動脈A中を押し進める。前記所定の位置は、図4の各図に示すように、遠位端11Eが大動脈瘤AAを通り過ぎた位置である。遠位端11Eが大動脈瘤AAを通り過ぎることにより、架橋区間が大動脈瘤AAを架橋し、側孔Hsが大動脈瘤AA内に位置する。
【0077】
方位決定工程は、超音波探触子12を用いてコンピュータが生成する血管の縦断面の断層画像を参照しながら、導入補助器具11をアウターシース111の中心軸AC1の軸回りに回転させ、中心軸AC1に対する分枝Bの方位を決定する工程である。
【0078】
方向決定工程は、側孔Hsからインナーシース115の先端を突出させる工程である。まず、導入補助器具11の通路P2にインナーシース115を挿通させ、且つ、インナーシース115の貫通孔にカテーテル22を挿通する。ここで、側孔Hsからのインナーシース115の先端の突出量を調整することにより、図3の(b)に示した矢印A2の方向を分枝Bの方向と一致させる(図4の(a)~(c)参照)。導入補助システム10を用いる場合、方向決定工程においても、血管(ここでは大動脈瘤AA)の縦断面の断層画像を参照しながら矢印A2の方向を分枝Bの方向と一致させることができる。
【0079】
図5の(a)には、図4の(c)に図示した大動脈瘤AAを一例として用い、第1の導入工程、方位決定工程、及び方向決定工程を実施した後の大動脈瘤AAを模式的に図示している。図5の(a)に示した状態において、撮影対象断面PCSの画角内に分枝Bが含まれている状態の大動脈瘤AA及び導入補助器具11を図示している。図5の(b)には、図5の(a)に示した状態における大動脈瘤AAの一部の縦断面の断層画像を模式的に図示している。図5の(b)においては、超音波信号をより強く反射する領域をより白く図示し、超音波信号をより弱く反射する領域をより黒く図示している。具体的には、超音波信号を強く反射するインナーシース115及びカテーテル22は、白く図示され、超音波信号を弱く反射する血液が充填されている領域(すなわち、大動脈瘤AA及び分枝B)は、黒く図示されている。大動脈瘤AAの外部の領域は、白と黒との中間階調で図示されている。
【0080】
第2の導入工程は、インナーシース115の先端からカテーテル22の先端を突出させることにより、カテーテル22の先端を分枝Bに導入する工程である。第2の導入工程においても、血管(ここでは大動脈瘤AA)の縦断面の断層画像を参照しながらカテーテル22の先端を分枝Bに導入することができる。第2の導入工程においては、カテーテル22の貫通孔に挿通させたガイドワイヤーを、カテーテル22とともに分枝Bに導入する場合もある。ガイドワイヤー及びカテーテル22を分枝Bに導入する場合、カテーテル22にガイドワイヤーを挿通させ、ガイドワイヤーを分枝Bに挿入したのちにカテーテル22をかぶせて挿入する場合が多い。矢印A2の方向と分枝Bの方向とが一致しておらずカテーテル22の先端を分枝Bに導入できない場合、第2の導入工程においても前記突出量を微調整し、矢印A2の方向を分枝Bの方向と一致させることもできる。
【0081】
特許文献1の導入補助器具(例えば、特許文献1の図3図7参照)と比較して、導入補助器具11は、遠位端11Eを含む区間(特許文献1におけるバックアップ区間)が大動脈瘤AAを架橋した状態において、大動脈Aの血管壁に当接する側壁の長さが長い。そのため、導入補助システム10及び導入補助器具11は、バックアップ力を増強させるために可塑性を低下させ硬性を高めても、当接する血管(例えば腹部大動脈)に与え得るストレスを過剰に増大させることなく、側孔Hsから分枝Bへ医療器具を導入することができる。この効果は、遠位端11Eを含む区間が大動脈瘤AA近傍の大動脈Aの形状に近い形状(すなわち直線状)に成型されており、且つ、アウターシース111の外径が導入経路の血管の内径を下回る範囲内で当該内径に近い値に設定されていることにより得られる。また、側孔の長軸方向の高さや短軸方向の角度を先端が血管に突き当たることがなく、安全に変更可能である。この効果は導入補助器具11が2孔性で第1経路を通過したガイドワイヤーが常に先端を通過している構造により得られる。
【0082】
〔導入補助器具の変形例〕
図6の(a)~(c)を参照して、導入補助器具11の第1の変形例~第3の変形例である導入補助器具11A~11Cについて、説明する。図6の(a)~(c)の各々は、それぞれ、導入補助器具11A~11Cが備えているアウターシース111A~111Cの遠位端及び側孔Hsを拡大した平面図である。なお、図6の(a)においては、ガイドワイヤー21の図示を省略している。
【0083】
第1の変形例である導入補助器具11Aにおいては、超音波探触子12Aが主ビーム方向DMBを、撮影対象断面PCS内において、可変角θの範囲内で可変できるように構成されている。主ビーム方向DMBを可変させるためには、超音波信号を走査する技術を用いることができる。この構成によれば、超音波探触子12の設置角度(図2の(b)に図示する仰角θ12)を固定したままで、撮影対象断面PCSにおける超音波探触子12の画角を変更することなく、撮像可能な範囲を拡大することができる。
【0084】
第2の変形例である導入補助器具11Bにおいては、導入補助器具11と比較して、通路P1及びガイドワイヤー21が省略されている。なお、導入補助器具11Bが備えているアウターシース111Bは、アウターシース111と同様の形状に成型されている。すなわち、アウターシース111Bの遠位端11EBは、先細りのテーパー形状を有する。なお、遠位端11EBは、作業者の操作に応じて、その先端部の向きがx軸方向及びy軸方向に可変するように構成されていてもよい。この構成によれば、通路P1及びガイドワイヤー21が省略されている場合であっても、第1の導入工程を容易に実施することができる。
【0085】
また、第3の変形例である導入補助器具11Cのように、アウターシース111Cの遠位端11ECは、半球状に成型されていてもよい。側孔Hsから遠位端11ECの先端部までの長さが短くなることにより、第2の導入工程において生じ得るバックアップ力が弱くなるが、縦断面の断層画像を参照しながら第2の導入工程を実施することにより、カテーテル22を分枝Bに導入することができる。
【0086】
また、図7の(a)~(c)を参照して、導入補助器具11の第4の変形例である導入補助器具11Dについて説明する。図7の(a)~(c)は、それぞれ、導入補助器具11Dを用いて大動脈AAの分枝Bにカテーテル22を導入する場合の模式図である。なお、図7の(a)~(c)においては、図4の(a)~(c)と同様に、分枝Bに大動脈瘤AAが形成されている状態を模擬的に示している。また、図4の(a)~(c)においては、導入補助器具11の構成の一部である通路P2、通路P3、及びケーブル12cの図示を省略している。
【0087】
導入補助器具11Dは、導入補助器具11をベースにし、インナーシース115の代わりにインナーシース115Dを採用し、単一の超音波探触子12の代わりに2つの超音波探触子12D1,12D2を採用し、側孔Hsの開口部の長さであって、アウターシース111の軸方向に平行な長さ(図1に図示する長さL3に対応する長さ)を短くすることによって得られる。
【0088】
インナーシース115Dは、側孔Hsから突出した部分の曲げ角を能動的に変化させるための機械的な機構、すなわち、曲げ角調整機構を備えている。このような曲げ角調整機構は、すでに市場に出回っているので、インナーシース115Dに適用可能である。この構成によれば、作業者は、曲げ角調整機構を調整することにより、カテーテル22の方向を分枝Bの方向に一致させることができるので、カテーテル22を容易に分枝Bに導入することができる。
【0089】
なお、このような曲げ角調整機構は、側孔Hsから突出したインナーシース115Dの曲げ角が、撮影対象断面PCS内においてのみ変化可能なように構成されていることが好ましい(図7の(a)~(c)参照)。この構成によれば、側孔Hsから突出したインナーシース115Dを撮影対象断面PCS外に曲げてしまうことがない。したがって、作業者は、大動脈瘤AAにおいて分枝Bが様々な方角に接続されている場合であっても、作業者は、更に容易にカテーテル22を分枝Bに導入することができる。
【0090】
なお、このような曲げ角調整機構を採用する場合、側孔Hsの長さであって、導入補助器具11Dの軸方向に平行な長さ(図1に図示された長さL3に対応する長さ)を、導入補助器具11の場合よりも短くすることが好ましい。インナーシース115Dの直径に対して当該長さが長すぎる場合、インナーシース115Dの側孔Hsから突出する部分が動きやすくなる。その結果、側孔Hsから突出したインナーシース115Dの曲げ角を所望の角度に調整したにも関わらず、カテーテル22の先端がふらついてしまい、カテーテル22を分枝Bへ導入することが難しくなるためである。
【0091】
また、導入補助器具11Dは、2つの超音波探触子12D1,12D2を備えている。超音波探触子12D1,12D2は、何れも、撮影対象断面PCSがアウターシース111Dの縦断面と平行になるように設けられている。この点について、超音波探触子12D1,12D2は、導入補助器具11の超音波探触子12と同様である。
【0092】
そのうえで、超音波探触子12D1は、導入補助器具11の超音波探触子12と同様に、大動脈瘤AAにおける近位端11P側(図7の各図においては下側)の範囲を画角に含むことができるように、設けられている。一方、超音波探触子12D2は、大動脈瘤AAにおける遠位端11E側(図7の各図においては上側)の範囲を画角に含むことができるように、設けられている。図7の各図においては、超音波探触子12D1,12D2の各々の画角を二点鎖線で図示している。
【0093】
このように、複数の超音波探触子を用いることによって、導入補助器具11Dの縦断面と平行になるように定められた撮影対象断面PCSにおける断層画像を、導入補助器具11と比較してより広い画角で撮像することができる。その結果、図7の(a)に示すように、大動脈瘤AAの遠位端11E側の領域に分枝Bが存在している場合であっても、作業者は、側孔Hsと、カテーテル22の先端と、分枝Bとが含まれる断層画像を参照しながら、カテーテル22を分枝Bに導入することができる。
【0094】
なお、導入補助器具11Dが備える超音波探触子は、撮影対象断面PCSがアウターシース111Dの縦断面と平行になるように、且つ、側孔Hsの少なくとも一部を撮影対象断面PCS内の画角に含むように設けられていればよく、超音波探触子の数は、限定されない。
【0095】
また、図8の(a)及び(b)を参照して、導入補助器具11の第5の変形例である導入補助器具11Fについて説明する。図8の(a)は、導入補助器具11Fが備えているアウターシース111Fの近位端11PFを拡大した平面図である。図8の(b)は、アウターシース111Fの遠位端11EF及び側孔Hsを拡大した平面図である。
【0096】
導入補助器具11Fは、導入補助器具11をベースにして、以下の4つの変形を施すことによって得られる。
第1の変形:アウターシース111Fの根本から側孔Hsの近傍までの区間において、通路P1と通路P2とが1つの通路を共有している(図8の(a)及び(b)参照)。
第2の変形:アウターシース111Fの根本と近位端11PFとの境界に、通路P1と通路P2とを分岐する近位端側分岐PBPが設けられている(図8の(a)参照)。
第3の変形:側孔Hsの底壁の一部に、通路P1と通路P2とを分岐する遠位端側分岐PBEが設けられている(図8の(b)参照)。遠位端側分岐PBEにおいて分岐された通路P1は、遠位端11EFに至る。
第4の変形:ケーブル12cがアウターシース111F中に埋設されている。換言すれば、ケーブル12cの外壁と通路P3の内壁との間に隙間がなく、通路P3にはケーブル12cが充填されている。
【0097】
すなわち、アウターシース111Fは、側壁に側孔Hsが設けられており、且つ、近位端11PFから側孔Hsに至る通路であってカテーテル22を挿通させる通路P2と、通路P2から分岐したうえで遠位端11EFに至る通路P1であって、ガイドワイヤー21を挿通させる通路P1と、を備えている。本変形例において、通路P1は、ガイドワイヤー用通路の一例であり、通路P2は、医療器具用通路の一例である。また、図8の(b)に図示する遠位端側分岐PBEは、ガイドワイヤー用通路と、医療器具用通路との分岐点の一例である。アウターシース111Fのうち近位端11PFから遠位端側分岐PBEまでの区間において、通路P2は、カテーテル22に加えてガイドワイヤー21を挿通させる。このように構成されたアウターシース111Fは、アウターシース111Fの根本から側孔Hsの近傍までの区間において、1孔式のチューブと見做すことができる。以上のように、導入補助器具のアウターシースに設ける通路の数(すなわち孔数)は、通路P1と通路P2とで通路を共有するか否かに応じて、また、ケーブル12cの外壁と通路P3の内壁との間に隙間を設けるのか否かに応じて、適宜選択することができる。また、孔数は、4つ以上であってもよい。
【0098】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係る導入補助器具は、血管の分枝に対して棒状の医療器具を導入するときに用いる導入補助器具である。本導入補助器具は、側壁に側孔が設けられており、且つ、近位端から前記側孔に至る通路であって前記医療器具を挿通させる通路を有するチューブと、撮影対象断面における断層画像を撮像する超音波探触子と、を備えている。本導入補助器具において、前記超音波探触子は、前記撮影対象断面が前記チューブの縦断面と平行になるように、且つ、前記側孔の少なくとも一部を前記撮影対象断面内の画角に含むように、設けられている。
【0099】
上記の構成によれば、血管内に導入補助器具を導入した場合に、超音波探触子を用いてチューブの縦断面と平行な撮影対象断面における断層画像を得ることができる。すなわち、上記の構成によれば、血管の縦断面における断層画像を得ることができる。血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入する手技において、本導入補助器具を用いる場合、チューブを軸回りに回転させて血管の縦断面の断層画像であって、画角内に分枝が含まれる断層画像を得ることにより、チューブの軸に対する分枝の方位を容易に把握することができる。延いては、導入補助器具の側孔、あるいは、当該側孔から突出する医療器具と、分枝の入口とが共に含まれる血管の縦断面の断層画像を得ることができる。したがって、前記断層画像を参照することにより、作業者は、導入補助器具の側孔から分枝の入口へ向かう経路を把握することができる。このように、本導入補助器具は、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入する手技を容易にすることができる。
【0100】
また、本発明の第2の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記医療器具を前記通路に挿通させ、当該医療器具の先端を前記側孔から突出させた状態において、前記超音波探触子は、前記画角に前記側孔から突出した前記先端を含まれるように設けられている、構成が採用されている。
【0101】
上記の構成によれば、側孔から突出する医療器具と、分枝の入口とを、確実に血管の縦断面の断層画像内に含めることができる。
【0102】
また、本発明の第3の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様又は第2の態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記側孔を平面視した場合に、超音波探触子は、側孔の輪郭内に設けられている、構成が採用されている。
【0103】
上記の構成によれば、側孔から医療器具が突出する位置の近くに超音波探触子を設けることができるため、超音波探触子の画角を有効に使うことができる。したがって、複数の患者の様々な病変に対応する場合に、各患者の病変に応じて、超音波探触子に対する分枝の入口の相対位置が様々に変化し得る手技においても、本導入補助器具は、柔軟に対応することができる。
【0104】
また、本発明の第4の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記チューブの前記近位端の近傍には、当該チューブの中心軸の軸回りにおける前記撮影対象断面の方位を示す目盛り及び目印の少なくとも何れかが付されている、構成が採用されている。
【0105】
上記の構成によれば、作業者は、チューブの中心軸の軸回りにおける撮影対象断面の方位を示す目盛り及び目印の少なくとも何れかを手がかりに、撮影対象断面の方位を直感的に把握することができる。そのため、血管の縦断面における断層画像を参照しながらチューブを中心軸の軸回りに回転させることにより分枝の入口を探しているような状況において、作業者は、目盛り及び目印の少なくとも何れかを手がかりにして、分枝の入口が存在する方位を直感的に記憶することができる。その結果、本導入補助器具は、血管の分枝に対してカテーテルに代表される医療器具を導入する手技を更に容易にすることができる。
【0106】
また、本発明の第5の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記近位端から前記通路に導入された可撓性を有するインナーチューブであって、先端が前記側孔に至るインナーチューブを更に備えている、構成が採用されている。
【0107】
上記の構成によれば、通路に導入されたインナーチューブを、医療器具を通すためのインナーシースとして用いることができる。したがって、通路の内部で引っかかりが生じないので、医療器具を容易に差し替えることができる。
【0108】
また、本発明の第6の態様に係る導入補助器具においては、上述した第5の態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記インナーチューブの前記先端の近傍は、前記通路に導入されていない状態において、段差が生じないように連続的且つ滑らかに曲げられている、構成が採用されている。
【0109】
上記の構成によれば、段差が生じないように連続的且つ滑らかにインナーチューブの先端の近傍が曲げられているので、インナーチューブに医療器具を挿通するときに引っかかることなく容易に挿通できる。さらに、側孔から突出させるインナーチューブの突出量を調整することにより、インナーチューブの先端の向きを調整することができる。したがって、インナーチューブの突出量を調整することにより、インナーチューブの先端から突出する医療器具の向きを調整することができる。
【0110】
また、本発明の第7の態様に係る導入補助器具においては、上述した第6の態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記チューブの前記近位端から突出している前記インナーチューブには、前記側孔から当該インナーチューブが突出している突出量に対応する目盛りが付されている、構成が採用されている。
【0111】
上記の構成によれば、作業者は、チューブの近位端から突出しているインナーチューブに付された目盛りを読み取ることにより、インナーチューブの側孔からの突出量を把握することができる。側孔から突出するインナーチューブの向き(すなわち、インナーチューブの先端から突出する医療器具の向き)は、突出量とおおよそ対応しているので、作業者は、目盛りを読み取ることにより側孔から突出するインナーチューブの向きを把握することができる。
【0112】
また、本発明の第8の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記チューブの遠位端は、先細った形状を有し、前記通路を医療器具用通路として、前記チューブは、前記近位端から前記遠位端に至るガイドワイヤー用通路であってガイドワイヤーを挿通させるガイドワイヤー用通路を更に有する、構成が採用されている。
【0113】
特許文献1に記載された従来の導入補助器具の場合、先細った形状を有する遠位端が導入補助器具の先端を構成する。このように、従来の導入補助器具では先細った遠位端が血管内に露出するため、分枝にアプローチする際に血管損傷を生じさせるリスクが高い。特に、分枝の位置に合わせて側孔の位置及び向きを調整する際には、導入補助器具の先端を構成する遠位端が血管壁に突き刺さりかねないため、危険である。また、バックアップ力を高めるために遠位端を構成する材料の可撓性を低下させた場合には、上述したリスクは、一層高まる。
【0114】
上記の構成によれば、導入補助器具の近位端からガイドワイヤー用通路を経て遠位端より先まで金属製のガイドワイヤーを通すことができる。そのため、本導入補助器具の先端は、遠位端ではなくガイドワイヤーにより構成される。その結果、分枝にアプローチする際に導入補助器具の先細った先端が血管壁に突き当たることなく、安全に側孔の位置を変えることができる。
【0115】
同時に、ガイドワイヤー用通路の内部をガイドワイヤーが通ることによって、単体の場合と比較してチューブの硬性を増すことができる。したがって、本導入補助器具は、分枝へ医療器具を導入するときに発揮するバックアップ力を高めることができる。
【0116】
また、本発明の第9の態様に係る導入補助器具においては、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係る導入補助器具の構成に加えて、前記チューブの遠位端は、先細った形状を有し、前記通路を医療器具用通路として、前記チューブは、前記医療器具用通路から分岐したうえで前記遠位端に至るガイドワイヤー用通路を更に有し、前記医療器具用通路は、前記近位端から前記ガイドワイヤー用通路との分岐点までの区間において、前記医療器具に加えて前記ガイドワイヤーを挿通させる、構成が採用されている。
【0117】
第9の態様に係る導入補助器具は、上述した第8の態様に係る導入補助器具をベースにして、チューブの近位端及び遠位端以外の区間のうちの近位端からガイドワイヤー用通路との分岐点までの区間において、医療器具用通路と、ガイドワイヤー用通路とを一体化することにより得られる。本導入補助器具は、第8の態様に係る導入補助器具と同様の効果を奏する。
【0118】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
10 導入補助システム
11 導入補助器具
11P 近位端
11E 遠位端
111 アウターシース
Hs 側孔
112 分岐部
113 継手部
114 固定部
115 インナーシース
116 継手部
117 アウターシースフラッシュポート
118 インナーシースフラッシュポート
119 止血弁
11a 止血弁
11b 継手部
12 超音波探触子
12c ケーブル
P1 通路(ガイドワイヤー用通路)
P2 通路(医療器具用通路)
P3 通路
SC1 目盛り
SC2 目盛り
21 ガイドワイヤー
22 カテーテル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8